図1は本発明の定着装置の一例を示す構成図である。
この定着装置は主として次の部材により構成されている。無端ベルト形状の定着部材の一例として定着ベルト101。定着ベルト101の内側にあって定着ベルトを回転可能に保持しかつニップ形成面で定着ベルト101の内側面と摺接するニップ形成部材106。ニップ形成部材106の外表面を覆うように回転可能に設けられた無端ベルト形状の定着ベルト101。定着部材の一例としての定着ベルト101を介してニップ形成部材に付勢されて定着ベルト101を回転させる加圧ローラ103。定着ベルト101の一方の軸方向端部に当接し定着ベルト101の回転軸方向の位置を規制する寄り止め部材111。定着ベルト101を加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンヒータ102(この例では2本。)。定着装置に供給される記録媒体Pの幅に応じてハロゲンヒータ102A及び102Bから定着ベルト101へ供給される熱線を遮光する遮光部材110。
加圧回転体として加圧ローラ103と定着部材の一例としての定着ベルト101とを有し、加熱手段の一例としてのハロゲンヒータ102により定着ベルト101が内周側から直接加熱される。
図1の定着ベルト101内には、定着ベルト101を介して対向する加圧ローラ103とニップ部Nを形成するニップ形成部材106が配置され、定着ベルト101内側面に摺接する。なお、ニップ形成部材106の加圧ローラ103側に摺動シートを配し、この摺動シートを介して間接的に摺接させてもよい。
図1に示した例ではニップ形成部材106のニップ部に対する面が平面となっているが、凹形状面やその他の形状の面であってもよい。ここで、形成されるニップ部の形状が凹形状であると、記録紙先端のニップ部からの排出方向が加圧ローラ103寄りとなり、記録媒体の分離性が向上し、ジャムの発生が抑制される。
定着ベルト101は、熱容量および定着ベルト内側空間に収納される部材などを考慮して直径が15〜120mmの円筒形状が好ましく、厚さが1mm以内の薄肉で可撓性を有することが好ましい。また、回転軸方向に移動したとしても記録媒体P上のトナー画像Tを良好に定着できるように、少なくとも記録媒体Pに画像を定着する部分及びその近傍の形状、機械特性、熱特性などが均一、ないし、略均一であることが好ましい。
定着ベルト101は、内周側から順に基材層、弾性層、及び、表層が積層されてものが一般的である。ただし、無端ベルトの加熱手段としてIHコイル(誘導加熱用コイル)を用いる場合は基材層と弾性層の間に加熱層が形成される。また、画像品質に関する性能要求が高くない場合には弾性層を除き基材層、表層の2層構成とする場合もある。本実施形態例で定着ベルトは基材層、弾性層、表層の3層により定着ベルト101を構成し、直径を25mmとした。
基材層は可撓性と剛性の両立から、ポリイミド等の樹脂材料もしくはニッケル、ステンレスなどの金属材料から構成され、厚さが20〜100μmであることが好ましい。また、ニップ形成部材との摺動性および加熱手段の一例としての2本のハロゲンヒータ102からの輻射熱の吸収率を向上させるための塗料を基材層の内周面にコーティングしてもよい。摺動性の向上のために、フッ素系樹脂等のコーティングを施すことが好ましく、輻射熱の吸収率を向上させるには黒色塗料のコーティングが好ましい。
加熱層を設ける場合は、厚さを10μm程度とし、金属材料により形成するが、特に銅が好ましい。加熱層はIHコイルによる相互誘導加熱により発熱する。
弾性層は厚さが50〜300μmで、シリコーンゴムなどの耐熱性の高い弾性材料により構成することが好ましい。弾性層がない場合は定着ベルトの熱容量が小さくなり、定着性が向上する。しかし、未定着画像をニップ部Nで定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて、そのべた部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴムからなる弾性層を100μm以上設ける必要がある。弾性層により微小な凹凸が吸収されるので、ユズ肌画像の発生を防ぐことができる。また、記録媒体Pおよび定着ベルト1の表面に凹凸がある場合でも、弾性層により、ニップ部Nにおいて加圧力および熱伝導性の不均一を改善することができ、形成される画像の品質が向上する。
表層の厚さは通常、3〜50μmであり、トナーおよび記録媒体の剥離性が良好な材料が用いられる。例えばPFA(四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)などが用いられる。特にPFA、PTFEなどのフッ素系樹脂材料は摩擦係数が低く、トナー剥離性が良好であるために好ましい。
表層は、記録媒体Pや加圧ローラ103との接触による以外に、定着ベルト101に接触する、図示されていない温度センサや分離爪などの部材との接触によって摩耗する。表層が摩滅して弾性層が露出してしまうとトナー画像Tに定着不良が発生するため、厚さは慎重に決定する必要がある。上記を考慮し、本実施形態例では、定着ベルトは、厚さ40μmのSUS304(ステンレス)製基材を用い、弾性層を厚さが100μmのシリコーンゴム層、表層を厚さが7μmのPFA層からなる、三層構造とした。
定着ベルト101の内部には、支持部材(ステー)107を設け、加圧ローラ103により圧力を受けるニップ形成部材106を支持し、その撓みを防止して、軸方向で均一なニップ幅を得られるようにしている。この支持部材107は両端部で端部フランジ112によって支持されている。
端部フランジ112は、定着ベルト101内に挿入される円筒状部と円筒状部に定着ベルト101の直径よりも大きく円筒状部と同軸の円盤状部とから構成されている。端部フランジ112はその円筒状部の外側面が定着ベルト101の回転軸方向端部において定着ベルト1に内接し、摺接する定着ベルト101を円筒形状維持している。
寄り止め部材111は中空円盤形状であり、その中空部に端部フランジ112の円筒状部が挿入されて、定着ベルト101の軸方向端部と端部フランジ112の円盤状部の円筒状部側の面とに接触するように設置される。定着ベルト101が回転とともにその回転軸方向へ移動する「ベルト寄り」が発生することがあるが、寄り止め部材の定着ベルト101の側面に接する面が定着ベルト1の回転軸方向の位置を規制し、ベルト寄りを防止する。寄り止め部材の定着ベルト101に接する面が定着ベルト1の回転軸方向に対して垂直ないし略垂直であることで、当接する寄り止め部材111から受ける反力による定着ベルト101の側面の変形を抑制できる。
また、この定着装置は、加熱手段102と支持部材107の間に反射部材109を有し、加熱手段102からの輻射熱などにより支持部材107が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギー消費を抑制している。ここで反射部材109を備える代わりに支持部材7表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることか可能となる。
加熱手段102としては、この例で2本用いられているハロゲンヒータ以外に、IHヒータや抵抗発熱体(カーボンヒータ等)などを用いてもよい。
加圧ローラ103は芯金105の側面に弾性ゴム層104が形成されており、弾性ゴム層104の表面には、離型性を得るために表面に離型層(PFA層、PTFE層等)が設けられている。加圧ローラ103は画像形成装置に設けられた図示しないモータなどの駆動源から駆動力が伝達されて回転駆動される。また、加圧ローラ103はスプリングなどにより定着ベルト101に付勢されており、弾性ゴム層104が加圧により変形し、所定のニップ幅が形成されている。加圧ローラ103は中空のローラであっても良く、そのとき、その内部にハロゲンヒータなどの加加熱手段を有していてもよい。弾性ゴム層104はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ103内部にヒータがない場合には、多孔質ゴム(スポンジゴム)を用いてもよく、このとき、断熱性が高まり定着ベルト101の熱が加圧ローラ103に移行しにくいので好ましい。
定着ベルト101は加圧ローラ103により連れ回り回転する。図1に示した場合では加圧ローラ103が図示しない駆動源により回転し、ニップ部Nで駆動力が伝達されることにより定着ベルト101が回転する。定着ベルト101はニップ部N以外では両端部で端部フランジ112にガイドされて回転駆動される。
上記のような構成により、安価で、ウォームアップが速い定着装置が実現可能となる。
定着ベルト101の必要部分のみ加熱するように調整する遮光部材110は、略長方形の板状部材で、定着ベルト101軸方向の辺の一方に図2に示すように各記録媒体の幅に対応する段部を有する切りかき部が設けられている。遮光部材110は定着ベルト101の内側に沿って、定着ベルト101に非接触でかつ、回動するように配置され、各紙幅に対応した位置に移動されて加熱に不必要な領域を加熱手段102からの熱線から遮光する。これにより紙幅の狭い転写紙を連続通紙した場合でも、非通紙領域が過昇温状態になることがなく、過昇温領域を防止するために生産性を落とす等の制御が不要となる。
上記で示した定着装置において、図3(端部フランジ112、寄り止め部材111とその当接面111a、及び、定着ベルト101の軸方向端部101aの位置関係を示す、端部フランジ112付近の拡大断面図)を用いて、本発明について詳細に説明する。
ここで、定着ベルト101に対して寄り止め部材111を相対的に回転させることが必要である。この線速差により寄り止め部材111の当接面111aと当接する定着ベルト101の軸方向端部101aが磨耗する。定着ベルト101に対して寄り止め部材111を相対的に回転させる速度差発生手段としては、例えば、定着ベルト101を寄り止め部材111を相対的に回転させることで実現ができる。
具体的に、例えば、回転駆動される定着ベルト101と、この定着ベルト101に接触して連れ周りする寄り止め部材111とによっても、容易に、かつ、安価に実現できる。この方法で摩擦力を確実に制御するためには、寄り止め部材111において、定着ベルト101から受ける駆動力と、端部フランジ112から受ける摩擦力とのバランスが重要である。例えば、寄り止め部材111の内径と端部フランジ112の円筒形状部の外径とを適当なものとすることによって前記バランスを最適化することができる。また、前記バランスを最適化とする他の方法として、次のような方法が挙げられる。寄り止め部材111の端部フランジ112に面する側と端部フランジ112の円盤状部の寄り止め部材側の面とにおいて、摩擦力が生じるような凸部を設ける方法。これらの面の間に粘度の高いグリスを塗布、あるいは、供給する方法。
さらに、寄り止め部材111を端部フランジ112に固定してしまう方法も挙げられる。この方法であれば、寄り止め部材111と定着ベルト101と間の線速差を確実に一定に確保することができるので好ましい。フランジへの固定方法としては、たとえば寄り止め部材111を端部フランジ112と一体に構成してもよく、このとき、同一の材料から構成してもよい。また、寄り止め部材111を端部フランジ112に接着してもよい。
寄り止め部材111の定着ベルト101の一方の軸方向端部に当接する当接面を、定着ベルトの軸方向端部を構成している材料よりも硬い材料を使用して構成する。当接面のみならず、寄り止め部材111全体を硬い材料を使用して構成してもよい。
この実施態様例の場合、定着ベルト101は上記のようにSUS304、シリコーンゴム、PFAの3層構造で構成されており、最も硬度の高い材料はSUS304である。そのため寄り止め部材111の当接面(あるい。寄り止め部材111全体)は、それ以上の硬さを持つ材料を使用して構成する。具体的には、ステンレスのSUS630やSUS440等、より硬い材料で構成することが好ましい。
第一の材料は、定着ベルト101の一方の軸方向端部及びその付近を構成するすべての材料のうち、硬度が最も高い材料である。このような第一の材料よりも高い硬度を有する第二の材料が寄り止め部材の定着ベルト101に当接する当接面に配置されている構成により、次の効果が得られる。すなわち、定着ベルト101の端部が摩耗され、回転軸方向の長さが短くなることにより、記録媒体のエッジと接する箇所が自動的に変更され、形成される画質の低下が防止される。このように本発明の定着装置は、構成が簡単で、コストアップをきたすことなく、記録媒体のエッジによる定着部材の磨耗による光沢むらの発生を未然に防止することができる。
ここで硬度としては、例えばビッカース硬さで定義されるものが挙げられる。
また、例えば定着部材や寄り止め部材に、単一、若しくは、複数の添加物を添加する場合もある。例えば電気的特性、摩擦特性等の改良を行う場合によく使用される。このような添加物を添加する場合、定着部材と寄り止め部材の関係が下記に示すようになる必要がある。
上記の、一方の軸方向端部及びその端部付近を構成するすべての材料としては、この領域を構成する材料がフィラー含有の複合材料である場合、そのバインダー材料だけではなく、添加されている添加物、例えばフィラーや充填剤なども含む。これらすべての材料のうち、最も硬度が高い材料(第一の材料の一例)よりもさらに硬度が高い材料(第二の材料の一例)が寄り止め部材111の定着ベルト101と摺擦する当接面に配置されている必要がある。
第一の材料の硬度が低い場合には、第二の材料は第一の材料の硬度より高ければよく、この相対的なバランスが保たれていればよいので、第二の材料が必ずしも絶対的に硬度が高い材料である必要はない。
なお、定着ベルト101の他方の軸方向端部側にも、図示しない端部フランジと寄り止め部材とは配置されている。しかし、これらは、従来用いられていたものと同じものであり、その寄り止め部材は定着ベルトに対して相対的に回転されるものではなく、また、定着ベルトを摩耗させるものでもない。
そして、定着ベルト101の一方の軸方向端部を寄り止め部材111の当接面に当接させるために、例えば、他方の軸方向端部側の上記の端部フランジに対して不図示のバネなどの付勢手段により寄り止め部材111側に付勢してもよい。
図4に示したように、定着ベルトの回転軸方向に対して異なる硬度の材料を配置して、寄り止め部材111へ当接する軸方向端部及びの付近には硬度の比較的低い材料Bを第一の材料として配置する。そして、材料B部分よりも定着ベルト101の回転軸方向中央寄りに、材料Bよりも硬度の高い材料Aを第三の材料として配置する。これらにより、定着ベルト101が激しく摩耗し、短くなりすぎると極端な場合、通紙域まで削れたり、あるいは、フランジがその軸受けから脱落すると云うことの発生を抑制することができる。
なお、硬度の高い材料Aは第二の材料の硬度と同じか、より硬度が高い材料とすることが好ましいが、あまり高すぎると寄り止め部材111の方が摩耗してしまうので、材料Aの硬度は第二の材料の硬度と等しいことがより好ましい。
ここで、第三の材料は(材料A)は、定着ベルト101の通紙域内での材料であり、硬さ以外の特性により材料が決定されることが多い。第三の材料が例えば硬度の高い材料であった場合、それよりも硬い材料を寄り止め部材に使用しなければならないため、寄り止め部材のコストアップに繋がってしまうことがある。しかしこの問題は、下記に示すように材料を選定することで、解消できる。すなわち、材料Bを柔らかい材料を選定しておくことで、寄り止め部材は材料Bより硬く、材料Aよりも柔らかい、若しくは同じ硬さの材料を選定可能となる。これにより、材料選定の幅も広がり、コスト的に安い材料も使用可能になる。
ここで定着ベルト101の、回転軸方向中央部分は通紙域であり、その部分の材質は硬さ以外の、定着ベルトに求められる特性により決定される。通紙域内での材質が中央部軸方向端部と同じであり、かつ、硬度の高い材料であった場合、それよりもさらに硬い材料を寄り止め部材111に使用しなければならないなり、寄り止め部材111のコストアップに繋がってしまう。しかし、このような問題は、上記のように通紙域と軸方向端部付近との材質を変更し、軸方向端部と軸方向端部付近を硬度の低い材質のみで形成することにより、解消できる。第一の材料である材料Bを硬度の低い材料を選定しておくことで、寄り止め部材の第二の材料は材料Bより硬度が高く、第三の材料である材料Aよりも硬度の低い、若しくは同じ硬度の材料を選定することが可能となる。このように、材料選択の幅も広がり、コスト的に安い材料も使用できる。
定着ベルト101の磨耗効率を上げる、あるいは、磨耗を制御しやすくする方法として、例えば次に示す方法がある。
上記の定着ベルト101、寄り止め部材111において、定着ベルト101の寄り止め部材111側軸方向端部の表面粗さより、寄り止め部材の定着ベルト101に接触する当接面の表面粗さを粗くしておく。この構成により、定着ベルト101をより効率的に磨耗させることが可能になる。また、これら2つの表面粗さのバランスにより、磨耗速度も管理しやすくなる。
また、寄り止め部材111の上記軸方向端部に接触する当接面に、例えばヤスリ状の、凹凸を形成しておくことで、同様に、上記軸方向端部をより効率的に磨耗させることが可能となる。また、このとき、凹凸の形状を選択することで磨耗速度の管理も可能となる。
また、寄り止め部材111の定着ベルト101の軸方向端部に接触する当接面が、砥粒を接着や材料に混合・配合するなどの方法で有することで、上記と同様に定着部材軸方向端部をより効率的に磨耗させることが可能になる。また、磨耗速度の管理もしやすくなる。
定着ベルト101の磨耗により発生した磨耗粉は、そのまま放置しておくと、定着ユニットの内部を飛散し、ファンによる気流にのって、最終的には画像形成装置外部へ出て、周囲を汚染する懸念がある。そのために、磨耗粉を確実に回収する機構を備えておくことが好ましい。
定着ベルト101と寄り止め部材111との接触によって発生する磨耗粉は、例えば定着ベルト101と寄り止め部材111との間にグリスやオイル等(以下、これらを「オイル」と総称する)を塗布しておくことで、磨耗粉を飛散させずに回収が可能となる。定着ベルト101は実際の画像定着動作中には高温になるので、高温においても粘度が高いグリスやオイルを使用する。
ニップ形成部材106と定着ベルト101との間に摺動シート114を配置し、このような摺動シート114にオイルを塗布しているタイプの定着装置では、このオイルを利用して磨耗粉の飛散防止を可能とすることができる。
ここで摺動シート114が織物により構成されている例(図5)について説明する。オイルは、回転駆動される定着ベルト101内側面と摺動シート114の織り目とで誘導されて最終的に定着ベルト101の端に至る。このため、このオイルの流れ方向を寄り止め部材111が配置されている方向に合わせることで、定着ベルト101の軸方向端部と寄り止め部材111と間からオイル少しずつ漏出させ、磨耗粉の飛散防止が可能となる。
また、磨耗粉回収方法としてこのようなオイル塗布による方法が考えられるが、そのオイルが定着ベルト101の軸方向端部から漏出するような構成とした場合には、オイル回収機構が必要となる。
図5に示したオイル回収機構の例では、定着ベルト101の軸方向端部と寄り止め部材111の当接面との接触部付近からオイルを下方へ導く、例えば棒状の誘導部材を伝って、回収容器120にグリスやオイルを回収する。ここで、誘導部材は回転しない部材、例えばフランジに、あるいは、寄り止め部材が回転しないのであれば寄り止め部材に、設置することができる。ここでは棒状の誘導部材としたが、その他、例えば、糸や紐状のもので構成してもよい。ここで、図5に示すような回収容器を用いず、スポンジのような多孔性材料にオイルを吸収させて回収を行ってもよい。
定着ベルト101の軸方向端部を寄り止め部材111に常時、確実に接触させる方法として、上述のような付勢手段を用いる方法以外に、定着ベルト101の両端での回転にわずかに線速差を設けておけばよい。このように線速差を設ける方法について説明する。
図6は、上記の線速差を得ることができる定着装置を横から見た図である。図8(a)はカム115(符号1159はカム115の軸である。)を稼働させておらず、定着ベルト101の回転軸と加圧ローラ103の回転軸とが平行となっていることを示す図である。図6(b)はカム115を稼働させて、定着ベルト101の回転軸と加圧ローラ103の回転軸とをねじれの位置に保っている状態を示す。また、図7は図6(b)の状態の定着装置を加圧ローラ103側から見た状態を示す図である。
図6(b)に示すように、加圧ローラ103の軸を傾け(揺動させ)(この例では加圧ローラ103の手前側が奥側より高い位置となっている)、定着ベルト101と加圧ローラ103との回転軸をねじれの位置にさせておくことで、定着ベルト101の軸方向端部を、寄り止め部材111の接触面に必ず接触するようにできる。定着ベルト101が寄り止め部材111に接触させたい側の加圧ローラ103軸を、記録媒体の通過方向に対して上流側に移動することにより、定着ベルト101を寄り止め部材111に接触させることができる。ここで、加圧ローラ103軸の移動距離により定着ベルト101の軸方向端部の寄り止め部材111への接触荷重を制御することができる。
また、次のような方法も挙げられる。図8は上記線速差を得ることができる定着装置の他の例を示す図である。図8(b)はカム116(符号1169はカム116の軸である。)を稼働させておらず、定着ベルト101の回転軸と加圧ローラ103の回転軸とが平行となっていることを示す図である。図8(b)はカム116を稼働させて、定着ベルト101の回転軸と加圧ローラ103の回転軸を交差するように保っている状態を示す。また、図9は図8(b)の状態の定着装置を記録媒体の移動方向加硫側から見た状態を示す図である。
図8(b)に示す例では図9における軸間距離kを軸間距離lに比べて小さくしている。このように、加圧ローラ103の軸を傾け、定着ベルト101と加圧ローラ103との回転軸の少なくとも一方を揺動させて交差させることで、ニップ部の幅に軸方向の偏差を発生させる。そして、定着ベルト101の軸方向端部を寄り止め部材に接触させることができる。具体的には接触させたい側の、ニップ部の幅を小さくすることで、定着ベルト101軸方向端部を寄り止め部材111に接触させることができる。ここで、定着ベルト101と加圧ローラ103の回転軸の軸間距離を制御してことで、定着ベルト101軸方向端部の寄り止め部材への接触荷重を制御することができ、結果として磨耗速度を制御することが可能となる。
これら例において、カム115及び116は、定着ローラ101の回転軸と加圧ローラ103の回転軸との、少なくとも一方の軸を揺動させて、他方の軸に対する位置関係を変更させる軸揺動手段として機能している。
なお、常に定着ベルト101軸方向端部が磨耗するような状態にしていては、例えば通紙時間よりも通紙前後の時間が長いような使用状況においては、定着ベルト101を無駄に磨耗させるだけになってしまう。このような状況を防止する方法として、定着ベルト101と加圧ローラ103の軸位置を変更する構成を設けておき、定期的に、定着ベルト101軸方向端部と寄り止め部当接面が接触するようにしてもよい。ここで定期的に行うとは、例えば一定通紙枚数ごとに行う、あるいは、一定通紙距離ごとに行うなど、一定の規則に従って繰り返し行うことを意味する。
ここで、定着ベルト101と寄り止め部材111を接触させるタイミングは、一定通紙枚数ごとに、若しくは、一定通紙距離ごとに行うことが好ましい。さらには、記録媒体幅毎に通紙枚数、若しくは通紙距離をカウントし、ある用紙幅での積算通紙距離が規定値に達した場合に、定着ベルト101と寄り止め部材111とを接触させる構成とすることが好ましい。一度、定着ベルト101と寄り止め部材111を接触させた後は、全ての用紙幅での積算通紙距離をリセットすることで、定着ベルト101をより長く使用できるようになる。
このような揺動を定期的に行わせる揺動制御手段はCPU、カウンタ、ROM、RAM、I/Oポート等を備えた一般的な制御機器とステッピングモータや、各種アクチュエータなどにより構成することができる。
以上説明した定着装置の例は加熱手段の一例としてのハロゲンヒータ102を2本用いたものであったが、図10に示した定着装置の例では加熱手段はハロゲンヒータの1本で構成されている点でのみ異なる。
また、図11に示した定着装置の例では、加熱手段としてハロゲンヒータを3本を備えている。この例では、これら3本のハロゲンヒータは、それぞれ対象とする記録媒体のサイズが異なり、このような構成のため、この例では図1で示した定着装置で必要であった遮光部材は不要となっている。
これら、図10及び図11に示した定着装置は、どちらも、次の構成を有している。不図示の速度差発生手段を有する。そして、定着ベルトの一方の軸方向端部及びその軸方向端部付近を構成するすべての材料のうち、硬度が最も高い第一の材料よりも高い硬度を有する第二の材料が、寄り止め部材の前記軸方向端部に当接する当接面に配置されている。
図10及び図11に示した定着装置は、これら構成による効果を図1で示した定着装置同様に備えているために、図1に示した定着装置同様に次の効果を有している。すなわち、定着部材が寄り止め部材との接触する個所において、定着部材が磨耗し、その回転軸方向の長さが短くなることにより記録媒体のエッジと接する箇所が自動的に変更される。このために、構成が簡単で、コストアップをきたすことなく、記録媒体のエッジによる定着部材の磨耗による光沢むらの発生を未然に防止することができる。
ここで、図1に示した定着装置を有する画像形成装置の例について図12により説明する。
図12に示した画像形成装置は、複数の色画像を形成する作像部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式を用いるカラープリンタある。しかし、本発明はこの方式に限ることはなく、またプリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
図12において画像形成装置1000では、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkを並設したタンデム構造が採用されている。そして、これら感光体ドラムはイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体として機能する。
図12に示す構成の画像形成装置1000は、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対峙しながら矢印A1方向に移動可能な無端ベルトが用いられる中間転写体(以下、転写ベルトという)11を備えている。そして、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、この転写ベルト11に対して1次転写行程を実行してそれぞれの画像が重畳転写される。その後、記録シートなどが用いられる記録紙Sに対して2次転写行程を実行することで一括転写されるようになっている。
各感光体ドラムの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されており、ここで、ブラック画像形成を行う感光体ドラム20Bkを対象として説明する。感光体ドラム20Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Bk,現像装置40Bk、1次転写ローラ12Bkおよびクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電後に行われる書き込みは、光書込装置8が用いられる。
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対向して配設された1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkによる電圧印加によって、次のように行われる。すなわち、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んでA1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
画像形成装置1000は、次の構成を有している。色毎の画像形成処理を行う4つの画像ステーション。各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの上方に対向して配設され、転写ベルト11及び1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkを備えた転写ベルトユニット10。転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11に従動し、連れ回りする転写部材としての転写ローラである2次転写ローラ5。転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11上をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置13。これら4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置としての光書込装置8。
光書込装置8は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラーおよび偏向手段としての回転多面鏡などを装備している。各感光体ドラム20Y,20C,20M,20Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lbを出射して感光体ドラム20Y,20C,20M,20Bkに静電潜像を形成する構成とされている。なお、図12では、便宜上、ブラック画像の画像ステーションのみを対象として符号が付けてあるが、その他の画像ステーションも同様である。
画像形成装置1000には、次の構成が設けられている。感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間に向けて搬送される記録紙Sを積載した給紙カセットとしてのシート給送装置61。シート給送装置61から搬送されてきた記録紙Sを、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対4。記録紙Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサ。
画像形成装置1000は、また、次の構成を有している。トナー像が転写された記録紙Sにトナー像を定着させるためのローラ定着方式の定着ユニットとしての定着装置100。定着済みの記録紙Sを画像形成装置1000の本体外部に排出する排紙ローラ7と、画像形成装置1000の本体上部に配設されて排紙ローラ7により画像形成装置1000の本体外部に排出された記録紙Sを積載する排紙トレイ17。排紙トレイ17の下側に位置し、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9C、9M、9Bk。
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkの他に、転写ベルト11が掛け回されている駆動ローラ72及び従動ローラ73を有している。
従動ローラ73は、転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このため、従動ローラ73には、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット10と、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkと、2次転写ローラ5と、クリーニング装置13とで転写装置71が構成されている。
シート給送装置61は、画像形成装置1000の本体下部に配設されており、最上位の記録紙Sの上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ3を有している。給送ローラ3が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の記録紙Sをレジストローラ対4に向けて給送するようになっている。
転写装置71に装備されているクリーニング装置13は、詳細な図示を省略するが、転写ベルト11に対向、当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有している。転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
クリーニング装置13はまた転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための図示しない排出手段を有している。
このような画像形成装置1000において、定着装置100は図1に示した本発明の一例の定着装置となっている。
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の定着装置及び画像形成装置は上記実施形態の構成に限定されるものではない。
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の定着装置及び画像形成装置を適宜改変することができる。このような改変によってもなお本発明の定着装置及び画像形成装置の構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。