図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図である。図1において、車両10は、走行用の駆動力源として機能するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等のエンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間に設けられた動力伝達装置16とを備えている。動力伝達装置16は、非回転部材としてのハウジング18内において、エンジン12に連結された流体式伝動装置としての公知のトルクコンバータ20、トルクコンバータ20に連結された入力軸22、入力軸22に連結された無段変速部としての公知のベルト式の無段変速機24、同じく入力軸22に連結された前後進切替装置26、前後進切替装置26を介して入力軸22に連結されて無段変速機24と並列に設けられたギヤ伝動部としてのギヤ伝動機構28、無段変速機24及びギヤ伝動機構28の共通の出力回転部材である出力軸30、カウンタ軸32、出力軸30及びカウンタ軸32に各々相対回転不能に設けられて噛み合う一対のギヤから成る減速歯車装置34、カウンタ軸32に相対回転不能に設けられたギヤ36に連結されたデフギヤ38、デフギヤ38に連結された1対の車軸40等を備えている。このように構成された動力伝達装置16において、エンジン12の動力(特に区別しない場合にはトルクや力も同義)は、トルクコンバータ20、無段変速機24(或いは前後進切替装置26及びギヤ伝動機構28)、減速歯車装置34、デフギヤ38、及び車軸40等を順次介して1対の駆動輪14へ伝達される。
このように、動力伝達装置16は、エンジン12(ここではエンジン12の動力が伝達される入力回転部材である入力軸22も同意)と駆動輪14(ここでは駆動輪14へエンジン12の動力を出力する出力回転部材である出力軸30も同意)との間の動力伝達経路PTに並列に設けられた、ギヤ伝動機構28及び無段変速機24を備えている。よって、動力伝達装置16は、エンジン12の動力を入力軸22からギヤ伝動機構28を介して駆動輪14側(すなわち出力軸30)へ伝達する動力伝達経路(以下、第1動力伝達経路PT1という)と、エンジン12の動力を入力軸22から無段変速機24を介して駆動輪14側(すなわち出力軸30)へ伝達する動力伝達経路(以下、第2動力伝達経路PT2という)との複数の動力伝達経路PTを、入力軸22と出力軸30との間に並列に備えている。動力伝達装置16は、車両10の走行状態に応じてその第1動力伝達経路PT1とその第2動力伝達経路PT2とが切り替えられる。その為、動力伝達装置16は、動力伝達経路PTを、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2とで選択的に切り替える複数の係合装置を備えている。この係合装置は、第1動力伝達経路PT1を断接する係合装置(換言すれば係合されることで第1動力伝達経路PT1を形成する係合装置)である第1クラッチC1及び第1ブレーキB1と、第2動力伝達経路PT2を断接する係合装置(換言すれば、係合されることで第2動力伝達経路PT2を形成する係合装置)である第2クラッチC2とを含んでいる。第1クラッチC1、第1ブレーキB1、及び第2クラッチC2は、断接装置に相当するものであり、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる公知の油圧式摩擦係合装置(摩擦クラッチ)である。又、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1は、各々、後述するように、前後進切替装置26を構成する要素の1つである。
トルクコンバータ20は、入力軸22回りにその入力軸22に対して同軸心に設けられており、エンジン12に連結されたポンプ翼車20p、及び入力軸22に連結されたタービン翼車20tを備えている。動力伝達装置16は、ポンプ翼車20pに連結された機械式のオイルポンプ42を備えている。オイルポンプ42は、エンジン12により回転駆動されることにより、無段変速機24を変速制御したり、前記複数の係合装置を作動したり、動力伝達装置16の各部に潤滑油を供給したりする為の油圧を発生する(吐出する)。
前後進切替装置26は、第1動力伝達経路PT1において入力軸22回りにその入力軸22に対して同軸心に設けられており、ダブルピニオン型の遊星歯車装置26p、第1クラッチC1、及び第1ブレーキB1を備えている。遊星歯車装置26pは、入力要素としてのキャリヤ26cと、出力要素としてのサンギヤ26sと、反力要素としてのリングギヤ26rとの3つの回転要素を有する差動機構である。キャリヤ26cは入力軸22に一体的に連結され、リングギヤ26rは第1ブレーキB1を介してハウジング18に選択的に連結され、サンギヤ26sは入力軸22回りにその入力軸22に対して同軸心に相対回転可能に設けられた小径ギヤ44に連結されている。又、キャリヤ26cとサンギヤ26sとは、第1クラッチC1を介して選択的に連結される。よって、第1クラッチC1は、前記3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に連結する係合装置であり、第1ブレーキB1は、前記反力要素をハウジング18に選択的に連結する係合装置である。
ギヤ伝動機構28は、小径ギヤ44と、ギヤ機構カウンタ軸46回りにそのギヤ機構カウンタ軸46に対して同軸心に相対回転不能に設けられてその小径ギヤ44と噛み合う大径ギヤ48とを備えている。又、ギヤ伝動機構28は、ギヤ機構カウンタ軸46回りにそのギヤ機構カウンタ軸46に対して同軸心に相対回転可能に設けられたアイドラギヤ50と、出力軸30回りにその出力軸30に対して同軸心に相対回転不能に設けられてそのアイドラギヤ50と噛み合う出力ギヤ52とを備えている。出力ギヤ52は、アイドラギヤ50よりも大径である。従って、ギヤ伝動機構28は、入力軸22と出力軸30との間の動力伝達経路PTにおいて、所定の変速比(変速段)としての1つの変速比(変速段)が形成されるギヤ伝動機構である。ギヤ伝動機構28は、更に、ギヤ機構カウンタ軸46回りに、大径ギヤ48とアイドラギヤ50との間に設けられて、これらの間を選択的に断接する噛合式クラッチD1を備えている。噛合式クラッチD1は、前後進切替装置26(ここでは第1クラッチC1も同意)と出力軸30との間の動力伝達経路PTに配設された(換言すれば第1クラッチC1よりも出力軸30側に設けられた)、第1動力伝達経路PT1を断接する係合装置(換言すれば第1クラッチC1と共に係合されることで第1動力伝達経路PT1を形成する係合装置)として機能するものであり、前記複数の係合装置に含まれる。
具体的には、噛合式クラッチD1は、ギヤ機構カウンタ軸46回りにそのギヤ機構カウンタ軸46に対して同軸心に相対回転不能に設けられたクラッチハブ54と、アイドラギヤ50とクラッチハブ54との間に配置されてそのアイドラギヤ50に固設されたクラッチギヤ56と、クラッチハブ54に対してスプライン嵌合されることによりギヤ機構カウンタ軸46の軸心回りの相対回転不能且つその軸心と平行な方向の相対移動可能に設けられた円筒状のスリーブ58とを備えている。クラッチハブ54と常に一体的に回転させられるスリーブ58がクラッチギヤ56側へ移動させられてそのクラッチギヤ56と噛み合わされることで、アイドラギヤ50とギヤ機構カウンタ軸46とが接続される。更に、噛合式クラッチD1は、スリーブ58とクラッチギヤ56とを嵌合する際に回転を同期させる、同期機構としての公知のシンクロメッシュ機構S1を備えている。このように構成された噛合式クラッチD1では、フォークシャフト60が油圧アクチュエータ62によって作動させられることにより、フォークシャフト60に固設されたシフトフォーク64を介してスリーブ58がギヤ機構カウンタ軸46の軸心と平行な方向に摺動させられ、係合状態と解放状態とが切り替えられる。
第1動力伝達経路PT1は、噛合式クラッチD1と噛合式クラッチD1よりも入力軸22側に設けられた第1クラッチC1(又は第1ブレーキB1)とが共に係合されることで形成される。第1クラッチC1の係合により前進用動力伝達経路が形成され、第1ブレーキB1の係合により後進用動力伝達経路が形成される。動力伝達装置16では、第1動力伝達経路PT1が形成されると、エンジン12の動力を入力軸22からギヤ伝動機構28を経由して出力軸30へ伝達することができる動力伝達可能状態とされる。一方で、第1動力伝達経路PT1は、少なくとも第1クラッチC1及び第1ブレーキB1が共に解放されるか、或いは少なくとも噛合式クラッチD1が解放されると、動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)とされる。
無段変速機24は、入力軸22に設けられた有効径が可変のプライマリプーリ66と、出力軸30と同軸心の回転軸68に設けられた有効径が可変のセカンダリプーリ70と、それら各プーリ66,70の間に巻き掛けられた伝動ベルト72とを備え、各プーリ66,70と伝動ベルト72との間の摩擦力(ベルト挟圧力)を介して動力伝達が行われる。プライマリプーリ66では、プライマリプーリ66へ供給する油圧(すなわちプライマリ側油圧シリンダ66cへ供給されるプライマリ圧Pin)が電子制御装置90(図3,4参照)により駆動される油圧制御回路80(図3,4参照)によって調圧制御されることにより、各シーブ66a,66b間のV溝幅を変更するプライマリ推力Win(=プライマリ圧Pin×受圧面積)が付与される。又、セカンダリプーリ70では、セカンダリプーリ70へ供給する油圧(すなわちセカンダリ側油圧シリンダ70cへ供給されるセカンダリ圧Pout)が油圧制御回路80によって調圧制御されることにより、各シーブ70a,70b間のV溝幅を変更するセカンダリ推力Wout(=セカンダリ圧Pout×受圧面積)が付与される。無段変速機24では、プライマリ推力Win(プライマリ圧Pin)及びセカンダリ推力Wout(セカンダリ圧Pout)が各々制御されることで、各プーリ66,70のV溝幅が変化して伝動ベルト72の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γcvt(=プライマリプーリ回転速度Npri/セカンダリプーリ回転速度Nsec)が変化させられると共に、伝動ベルト72が滑りを生じないように各プーリ66,70と伝動ベルト72との間の摩擦力が制御される。
出力軸30は、回転軸68回りにその回転軸68に対して同軸心に相対回転可能に配置されている。第2クラッチC2は、無段変速機24よりも駆動輪14(ここでは出力軸30も同意)側に設けられており(すなわちセカンダリプーリ70と出力軸30との間に設けられており)、セカンダリプーリ70(回転軸68)と出力軸30との間を選択的に断接する。第2動力伝達経路PT2は、第2クラッチC2が係合されることで形成される。動力伝達装置16では、第2動力伝達経路PT2が形成されると、エンジン12の動力を入力軸22から無段変速機24を経由して出力軸30へ伝達することができる動力伝達可能状態とされる。一方で、第2動力伝達経路PT2は、第2クラッチC2が解放されると、ニュートラル状態とされる。
動力伝達装置16の作動について、以下に説明する。図2は、電子制御装置90により切り替えられる動力伝達装置16の各走行パターン(走行モード)毎の係合装置の係合表を用いて、その走行モードの切り替わりを説明する為の図である。図2において、C1は第1クラッチC1の作動状態に対応し、C2は第2クラッチC2の作動状態に対応し、B1は第1ブレーキB1の作動状態に対応し、D1は噛合式クラッチD1の作動状態に対応し、「○」は係合(接続)を示し、「×」は解放(遮断)を示している。
図2において、ギヤ伝動機構28を介してエンジン12の動力が出力軸30に伝達される走行モード(すなわちギヤ伝動機構28を介した第1動力伝達経路PT1を用いる走行モード)であるギヤ走行モードでは、第1クラッチC1及び噛合式クラッチD1が係合され且つ第2クラッチC2及び第1ブレーキB1が解放される。このギヤ走行モードでは前進走行が可能となる。尚、第1ブレーキB1及び噛合式クラッチD1が係合され且つ第2クラッチC2及び第1クラッチC1が解放される、ギヤ走行モードでは、後進走行が可能となる。
又、無段変速機24を介してエンジン12の動力が出力軸30に伝達される走行モード(すなわち無段変速機24を介した第2動力伝達経路PT2を用いる走行モード)であるCVT走行モード(ベルト走行モードともいう)では、第2クラッチC2が係合され且つ第1クラッチC1及び第1ブレーキB1が解放される。このCVT走行モードでは前進走行が可能となる。このCVT走行モードのうちでCVT走行(中車速)モードでは噛合式クラッチD1が係合される一方で、CVT走行(高車速)モードでは噛合式クラッチD1が解放される。このCVT走行(高車速)モードにて噛合式クラッチD1が解放されるのは、例えばCVT走行モードでの走行中のギヤ伝動機構28等の引き摺りをなくすと共に、高車速においてギヤ伝動機構28や遊星歯車装置26pの構成部材(例えばピニオンギヤ)等が高回転化するのを防止する為である。噛合式クラッチD1は、駆動輪14側からの入力を遮断する被駆動入力遮断クラッチとして機能する。
ギヤ走行モードは、例えば車両停止中を含む低車速領域において選択される。動力伝達装置16では、ギヤ伝動機構28を介した第1動力伝達経路PT1にて形成される変速比γgear(変速比ELともいう)は、無段変速機24を介した第2動力伝達経路PT2にて形成できる最大変速比(すなわち最低車速側の変速比である最ロー変速比)γmaxよりも大きな値(すなわちロー側の変速比)に設定されている。つまり、第2動力伝達経路PT2は、第1動力伝達経路PT1にて形成される変速比ELよりも高車速側(ハイ側)の変速比γcvtが形成される。例えば変速比ELは、動力伝達装置16における第1速変速段の変速比γである第1速変速比γ1に相当し、無段変速機24の最ロー変速比γmaxは、動力伝達装置16における第2速変速段の変速比γである第2速変速比γ2に相当する。その為、ギヤ走行モードとCVT走行モードとは、例えば公知の有段変速機の変速マップにおける第1速変速段と第2速変速段とを切り替える為の変速線に従って切り替えられる。又、CVT走行モードにおいては、例えば公知の手法を用いて、アクセル操作量papや車速Vなどの走行状態に基づいて変速比γcvtが変化させられる変速が実行される。
ギヤ走行モードからCVT走行(高車速)モード、或いはCVT走行(高車速)モードからギヤ走行モードへの切替えでは、図2に示すように、CVT走行(中車速)モードを経由する。例えばギヤ走行モードからCVT走行(高車速)モードへの切替えでは、第1クラッチC1を解放して第2クラッチC2を係合するようにクラッチを掛け替える変速(例えばクラッチツゥクラッチ変速(以下、CtoC変速という))が実行されてCVT走行(中車速)モードへ切り替えられ、その後、噛合式クラッチD1が解放される。又、例えばCVT走行(高車速)モードからギヤ走行モードへの切替えでは、ギヤ走行モードへの切替準備として噛合式クラッチD1が係合されてCVT走行(中車速)モードへ切り替えられ、その後、第2クラッチC2を解放して第1クラッチC1を係合するようにクラッチを掛け替える変速(例えばCtoC変速)が実行される。
図3は、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図3において、車両10は、例えば動力伝達装置16の制御装置を含む電子制御装置90を備えている。よって、図3は、電子制御装置90の入出力系統を示す図であり、又、電子制御装置90による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置90は、エンジン12の出力制御、無段変速機24の変速制御、動力伝達装置16の走行モードの切替制御等を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置90には、車両10が備える各種センサ(例えば各種回転速度センサ100,102,104,106、アクセル操作量センサ108、油圧センサ110、勾配センサ112など)による検出信号に基づく各種実際値(例えばエンジン回転速度Ne、入力軸回転速度Ninであるプライマリプーリ回転速度Npri、回転軸68の回転速度であるセカンダリプーリ回転速度Nsec、車速Vに対応する出力軸回転速度Nout、アクセル操作量pap、SL2圧Psl2の値であるSL2圧値VALpsl2、路面勾配θroadなど)が、それぞれ供給される。又、電子制御装置90からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、無段変速機24の変速に関する油圧制御の為の油圧制御指令信号Scvt、動力伝達装置16の走行モードの切替えに関連する第1クラッチC1、第1ブレーキB1、第2クラッチC2、及び噛合式クラッチD1を制御する為の油圧制御指令信号Sswt等が、それぞれ出力される。例えば、油圧制御指令信号Sswtとして、第1クラッチC1、第1ブレーキB1、第2クラッチC2、噛合式クラッチD1の各々の油圧アクチュエータへ供給される各油圧を調圧する各ソレノイド弁を駆動する為の指令信号(油圧指令)が油圧制御回路80へ出力される。
図4は、動力伝達装置16に備えられた油圧制御回路80のうちで無段変速機24と第1クラッチC1と第2クラッチC2と噛合式クラッチD1とに関わる油圧を制御する部分を説明する図である。油圧制御回路80は、プライマリプーリ66へ供給するプライマリ圧Pinを制御するプライマリ用電磁弁SLPと、セカンダリプーリ70へ供給するセカンダリ圧Poutを制御するセカンダリ用電磁弁SLSと、第1クラッチC1へ供給するクラッチ油圧としてのC1圧Pc1を制御するC1用電磁弁SL1と、第2クラッチC2へ供給するクラッチ油圧としてのC2圧Pc2を制御するC2用電磁弁SL2と、シンクロメッシュ機構S1を作動させる油圧アクチュエータ62へ供給するシンクロ制御圧Ps1を制御するシンクロ用電磁弁SLGと、プライマリ圧制御弁82と、セカンダリ圧制御弁84と、フェールセーフバルブ86とを備えている。又、油圧制御回路80においては、不図示のレギュレータ弁により、オイルポンプ42が吐出する油圧を基にしてライン圧PLが調圧される。
各電磁弁SLP,SLS,SL1,SL2,SLGは、何れも、電子制御装置90から出力される油圧制御指令信号(駆動電流)によって駆動されるリニアソレノイド弁である。プライマリ圧制御弁82は、プライマリ用電磁弁SLPから出力されるSLP圧Pslpに基づいて作動させられることで、ライン圧PLを元圧としてプライマリ圧Pinを調圧する。セカンダリ圧制御弁84は、セカンダリ用電磁弁SLSから出力されるSLS圧Pslsに基づいて作動させられることで、ライン圧PLを元圧としてセカンダリ圧Poutを調圧する。C1用電磁弁SL1は、ライン圧PLを元圧としてSL1圧Psl1を出力する。このSL1圧Psl1は、C1圧Pc1として直接的に第1クラッチC1へ供給される。従って、C1用電磁弁SL1は、C1圧Pc1を出力するクラッチ油圧出力装置として機能する。C2用電磁弁SL2は、ライン圧PLを元圧としてSL2圧Psl2を出力する。このSL2圧Psl2は、フェールセーフバルブ86を介してC2圧Pc2として第2クラッチC2へ供給される。従って、C2用電磁弁SL2は、C2圧Pc2を出力するクラッチ油圧出力装置として機能する。シンクロ用電磁弁SLGは、ライン圧PLを元圧としてSLG圧Pslgを出力する。このSLG圧Pslgは、シンクロ制御圧Ps1として直接的に油圧アクチュエータ62へ供給される。
図5は、フェールセーフバルブ86の構成を説明する図である。図5において、フェールセーフバルブ86は、スプリングSP、第1入力ポートPi1、第2入力ポートPi2、第1入力ポートPi1及び第2入力ポートPi2の何れかの入力ポートPiと択一的に連通する出力ポートPo、及び油室Pcを有している。フェールセーフバルブ86は、バルブボデー内において、所定の移動ストロークで摺動可能に収容され且つスプリングSPによって一方向に付勢されたスプール弁子SVを備え、そのスプール弁子SVが摺動ストロークの一端及び他端へ移動させられることに応じて、第1入力ポートPi1と出力ポートPoとを連通させるか、或いは第2入力ポートPi2と出力ポートPoとを連通させる型式の良く知られたスプール弁により構成されている。第1入力ポートPi1には、C2用電磁弁SL2の出力油圧であるSL2圧Psl2が供給される油路Lsl2が接続される。第2入力ポートPi2には、ライン圧PLが供給される油路Llが接続される。出力ポートPoには、C2圧Pc2を供給する油路Lc2が接続される。油室Pcには、例えばオンオフソレノイド弁である切替用電磁弁SSの出力油圧である切替圧Ponが供給される油路Lonが接続される。ライン圧PLは、SL2圧Psl2の元圧であって、C2用電磁弁SL2を介さない油圧である。従って、ライン圧PLは、第2クラッチC2を完全係合する油圧(C2圧Pc2の最大油圧)よりも高い油圧であり、第2クラッチC2を係合可能な油圧である。よって、油路Llは、SL2圧Psl2とは別の、第2クラッチC2を係合可能な油圧が供給される油路である。
このように構成されたフェールセーフバルブ86は、切替用電磁弁SSの出力油圧である切替圧Ponに基づいて、油路Lsl2を油路Lc2へ接続する第1弁位置としての通常弁位置(図5のNormal側弁位置参照)と、油路Llを油路Lc2へ接続する第2弁位置としてのフェールセーフ弁位置(図5のFailsafe側弁位置参照)とが択一的に切り替えられる。従って、切替用電磁弁SSは、フェールセーフ用電磁弁として機能する。
フェールセーフバルブ86において、スプリングSPは、スプール弁子SVを通常弁位置(Normal)に保持する為の付勢力を発生する。切替圧Ponは、スプリングSPの付勢力に抗して、スプール弁子SVをフェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替える為の推力を発生する。フェールセーフバルブ86は、切替圧Ponが作用させられると、フェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替えられる。例えば、フェールセーフバルブ86は、C2用電磁弁SL2が油圧(SL2圧Psl2)を出力しない故障(すなわちC2用電磁弁SL2のオフフェール)時に切替圧Ponが出力されると、フェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替えられる。これにより、油路Llが油路Lc2へ接続されることで第2クラッチC2へ強制的にライン圧PLが供給されてその第2クラッチC2が係合されるので、第2動力伝達経路PT2が形成される。よって、C2用電磁弁SL2のオフフェール時にも、CVT走行モードにて走行することができる。
図3に戻り、電子制御装置90は、エンジン出力制御手段すなわちエンジン出力制御部92、及び変速制御手段すなわち変速制御部94を備えている。
エンジン出力制御部92は、例えば予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された(すなわち予め定められた)関係(例えば駆動力マップ)からアクセル操作量pap及び車速Vに基づいて要求駆動力Fdemを算出し、その要求駆動力Fdemが得られる目標エンジントルクTetgtを設定し、その目標エンジントルクTetgtが得られるようにエンジン12を出力制御するエンジン出力制御指令信号Seをそれぞれスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置などへ出力する。
変速制御部94は、車両停止中には、ギヤ走行モードに備えて、油圧アクチュエータ62による噛合式クラッチD1の係合作動を行う指令を油圧制御回路80へ出力する。その後、変速制御部94は、シフトレバーが前進走行操作位置D(或いは後進走行操作位置R)に切り替えられた場合、第1クラッチC1(或いは第1ブレーキB1)を係合する指令を油圧制御回路80へ出力する。
又、変速制御部94は、CVT走行モードにおいて、例えば予め定められた関係(例えばCVT変速マップ、ベルト挟圧力マップ)にアクセル操作量pap及び車速Vを適用することで、無段変速機24のベルト滑りが発生しないようにしつつエンジン12の動作点が所定の最適ライン(例えばエンジン最適燃費線)上となる無段変速機24の目標変速比γtgtを達成する為のプライマリ圧Pin及びセカンダリ圧Poutの各油圧指令(油圧制御指令信号Scvt)を決定し、それら各油圧指令を油圧制御回路80へ出力して、CVT変速を実行する。
又、変速制御部94は、ギヤ走行モードとCVT走行モードとを切り替える切替制御を実行する。具体的には、変速制御部94は、例えばギヤ走行モードにおける変速比ELとCVT走行モードにおける最ロー変速比γmaxとを切り替える為の所定のヒステリシスを有したアップシフト線及びダウンシフト線に車速V及びアクセル操作量papを適用することで変速比γの切替えを判断し、その判断結果に基づいて走行モードを切り替える。
変速制御部94は、ギヤ走行モードでの走行中にアップシフトを判断してギヤ走行モードからCVT走行(中車速)モードへ切り替える場合、CtoC変速を実行する。これにより、動力伝達装置16における動力伝達経路PTは、第1動力伝達経路PT1から第2動力伝達経路PT2へ切り替えられる。変速制御部94は、CVT走行(中車速)モードからCVT走行(高車速)モードへ切り替える場合、油圧アクチュエータ62による噛合式クラッチD1の解放作動を行う指令を油圧制御回路80へ出力する。又、変速制御部94は、CVT走行(高車速)モードからCVT走行(中車速)モードへ切り替える場合、油圧アクチュエータ62による噛合式クラッチD1の係合作動を行う指令を油圧制御回路80へ出力する。変速制御部94は、CVT走行(中車速)モードでの走行中にダウンシフトを判断してギヤ走行モードへ切り替える場合、CtoC変速を実行する。これにより、動力伝達装置16における動力伝達経路PTは、第2動力伝達経路PT2から第1動力伝達経路PT1へ切り替えられる。ギヤ走行モードとCVT走行モードとを切り替える切替制御では、CVT走行(中車速)モードの状態を経由することで、CtoC変速によるトルクの受け渡しを行うだけで第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2とが切り替えられるので、切替えショックが抑制される。
ところで、フェールセーフバルブ86ではフェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替える際にはC2用電磁弁SL2による調圧が為されていない一定圧(ライン圧PL)が第2クラッチC2へ直接的に印加される為、走行中にフェールセーフバルブ86をフェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替えると大きなイナーシャショックが発生する可能性がある。その為、フェールセーフバルブ86のフェールセーフ弁位置(Failsafe)への切替えは、できるだけ走行中には行わず、停止時に行うことが望ましい。一方で、第2クラッチC2の係合によるCVT走行モードでの走行は、ギヤ走行モードでの走行と比べて燃費を向上させられるので、長い走行距離を確保し易い。その為、C2用電磁弁SL2のオフフェール時には、常に、CVT走行モードとしておくことが考えられる。しかしながら、CVT走行モードでは、登坂路での発進などのように平坦路に比べて大きな駆動力が必要な場合に、その駆動力を確保できない可能性がある。
そこで、電子制御装置90は、C2用電磁弁SL2のオフフェール時に、必要な駆動力が所定値Fpre以上の場合はギヤ伝動機構28を介した第1動力伝達経路PT1を用いて発進する一方で、必要な駆動力が所定値Fpre未満の場合は無段変速機24を介した第2動力伝達経路PT2を用いて発進する。つまり、CVT走行モードを確立するC2用電磁弁SL2がオフフェールした為に、正常にCVT走行モードを確立することができなくなった場合は、正常に作動するギヤ走行モードにて減速停止する。その後の発進は、路面勾配θroadなどに基づいて比較的大きな駆動力が必要な場合はギヤ走行モードにて発進する一方で、そうでない場合はリンプホーム性能を考慮し、フェールセーフバルブ86をフェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替えてCVT走行モードにて発進する。
より具体的には、図3に戻り、電子制御装置90は、故障判定手段すなわち故障判定部96、及び車両状態判定手段すなわち車両状態判定部98を更に備えている。
故障判定部96は、例えば第2クラッチC2を係合する為のC2用電磁弁SL2に対するSL2圧Psl2の油圧指令値とSL2圧値VALpsl2との差が所定差を超えているか否かに基づいて、C2用電磁弁SL2がオフフェールしているか否かを判定する。この所定差は、例えば油圧指令値と実油圧値との誤差や油圧指令値に対する実油圧値の応答遅れなどを考慮して、SL2圧Psl2の油圧指令値とSL2圧値VALpsl2とが一致していると判断できる為の予め定められた両者の差の上限値である。
変速制御部94は、走行中のギヤ走行モードからCVT走行モードへの切替えに際して、故障判定部96によりC2用電磁弁SL2がオフフェールしていると判定された場合には、第1クラッチC1の解放を完了して、動力伝達経路PTをニュートラル状態とする動力伝達装置16のニュートラルモードを確立する。つまり、変速制御部94は、走行中のギヤ走行モードからCVT走行モードへの切替えに際して、故障判定部96によりC2用電磁弁SL2がオフフェールしていると判定された場合には、フェールセーフバルブ86をフェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替えることによるCVT走行モードを確立しない。変速制御部94は、C2用電磁弁SL2がオフフェールした場合は、走行中にフェールセーフバルブ86がフェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替えられることによるショックの発生を回避する為に、車両停止まで、フェールセーフバルブ86をフェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替えない(すなわちCVT走行モードへの切替えを禁止する)。
変速制御部94は、ニュートラルモードでの減速走行中に車両状態判定部98により車速Vが所定値Vpre未満であると判定された場合には、第1クラッチC1を係合してギヤ走行モードを確立する。この第1クラッチC1の係合では、C1用電磁弁SL1による調圧されたC1圧Pc1(SL1圧Psl1)が第1クラッチC1へ供給されるので、ショックが抑制される。上記所定値Vpreは、例えば走行モードをCVT走行モードからギヤ走行モードへ切り替える為の予め定められたダウンシフト線における設定車速である。変速制御部94は、車両停止するまで(例えば車両状態判定部98により車速Vが零[km/h]であると判定されるまで)、このギヤ走行モードにて減速走行する。
車両状態判定部98は、C2用電磁弁SL2のオフフェール時であってギヤ走行モードでの停止中に、必要な駆動力が所定値Fpre未満であるか否かを判定する。具体的には、路面勾配θroadが大きければ必要な駆動力が大きくなる。又、発進時のアクセル操作量papが大きければ必要な駆動力が大きくなる。又、シフトレバーが手動変速操作位置やエンジンブレーキレンジにあれば必要な駆動力が大きくなる可能性がある。そこで、車両状態判定部98は、必要な駆動力に応じた動力伝達経路PTが適切に用いられる為に、路面勾配θroad、シフト操作、及びアクセル操作量papのうちの少なくとも一つに基づいて、必要な駆動力が所定値Fpre未満であるか否かを判定する。例えば、車両状態判定部98は、路面勾配θroadが所定値θpre未満であるか否かに基づいて、必要な駆動力が所定値Fpre未満であるか否かを判定する。所定値Fpre(又は所定値θpre)は、例えばCVT走行モードでも要求駆動力Fdemを実現することができることを判断する為の予め定められた必要な駆動力(又は路面勾配θroad)の上限値である。
変速制御部94は、車両状態判定部98により必要な駆動力が所定値Fpre以上であると判定された場合には、ギヤ走行モードを維持し、このギヤ走行モードにて発進する。このギヤ走行モードにて発進した場合、次の車両停止まで、ギヤ走行モードを維持し、CVT走行モードへの切替えを禁止するのが望ましい。一方で、変速制御部94は、車両状態判定部98により必要な駆動力が所定値Fpre未満であると判定された場合には、切替用電磁弁SSが切替圧Ponを出力する為の指令信号を油圧制御回路80へ出力してフェールセーフバルブ86をフェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替えることで、ギヤ走行モードに替えてCVT走行モードを確立し、このCVT走行モードにて発進する。
図6は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわちショックの発生を抑制しつつリンプホーム性能と駆動力の確保とを両立する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
図6において、先ず、変速制御部94に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、車両状態に基づいてギヤ走行モードとCVT走行モードとを切り替えて走行する通常制御が実行される。次いで、故障判定部96に対応するS20において、C2用電磁弁SL2がオフフェールしているか否かが判定される。このS20の判断が否定される場合は、上記S10に戻される。このS20の判断が肯定される場合は変速制御部94に対応するS30において、ニュートラルモードが確立される。次いで、車両状態判定部98に対応するS40において、車速Vが所定値Vpre未満であるか否かが判定される。このS40の判断が否定される場合は、上記S30に戻される。このS40の判断が肯定される場合は変速制御部94に対応するS50において、ギヤ走行モードが確立(形成)される。次いで、変速制御部94に対応するS60において、ギヤ走行モードにて減速走行中とされる。次いで、車両状態判定部98に対応するS70において、車速Vが零[km/h]であるか否かが判定される。このS70の判断が否定される場合は、上記S60に戻される。このS70の判断が肯定される場合は変速制御部94に対応するS80において、ギヤ走行モードにて車両停止中とされる。次いで、車両状態判定部98に対応するS90において、路面勾配θroadが所定値θpre未満であるか否かが判定される。このS90の判断が否定される場合は、上記S80に戻される。このS90の判断が肯定される場合は変速制御部94に対応するS100において、CVT走行モードが確立(形成)される。
上述のように、本実施例によれば、C2用電磁弁SL2のオフフェール時の発進には、比較的大きな駆動力が得られるギヤ伝動機構28を介した第1動力伝達経路PT1、及び比較的燃費が向上される無段変速機24を介した第2動力伝達経路PT2のうちの何れかの動力伝達経路PTが必要な駆動力に応じて用いられるので、比較的長い走行距離の自力走行にも対処することができ、又、比較的大きな駆動力が必要な場合にも対処することができる。加えて、フェールセーフ弁位置(Failsafe)へフェールセーフバルブ86が切り替えられることでの、無段変速機24を介した第2動力伝達経路PT2を用いた発進では、走行中にフェールセーフバルブ86がフェールセーフ弁位置(Failsafe)へ切り替えられることがない。よって、ショックの発生を抑制しつつリンプホーム性能と駆動力の確保とを両立することができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。尚、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の実施例1では、C2用電磁弁SL2のオフフェール時に必要な駆動力が所定値Fpre未満である場合には、CVT走行モードにて発進した。CVT走行モードでの発進後は、このCVT走行モードが維持されて走行する。一方で、CVT走行モードからギヤ走行モードへの切替えでは、C1用電磁弁SL1による調圧されたC1圧Pc1(SL1圧Psl1)が第1クラッチC1へ供給されることで第1クラッチC1が係合されるので、ショックが抑制される。つまり、無段変速機24を介した第2動力伝達経路PT2を用いた走行からギヤ伝動機構28を介した第1動力伝達経路PT1を用いた走行への切替えは正常なC1用電磁弁SL1を用いる為、C2用電磁弁SL2のオフフェールの影響を受けず、ショックが抑制された通常の変速制御(ダウンシフト制御)が可能である。そこで、電子制御装置90は、C2用電磁弁SL2のオフフェール時の、無段変速機24を介した第2動力伝達経路PT2を用いた走行中に、アクセル操作量papが所定値pappre以上の場合には、ギヤ伝動機構28を介した第1動力伝達経路PT1を用いた走行へ切り替える。
具体的には、変速制御部94は、C2用電磁弁SL2のオフフェール時のCVT走行モードでの走行中に、車両状態判定部98によりアクセル操作量papが所定値pappre以上であり、且つ、車速Vが所定値Vpre以下であると判定された場合には、切替用電磁弁SSが切替圧Ponを出力する為の指令信号の出力を停止してフェールセーフバルブ86をフェールセーフ弁位置(Failsafe)から通常弁位置(Normal)へ切り替えることで、CVT走行モードからギヤ走行モードへ切替え、このギヤ走行モードにて走行する。上記所定値pappreや上記所定値Vpreは、例えば走行モードをCVT走行モードからギヤ走行モードへ切り替える為の予め定められたダウンシフト線における設定値である。
図7は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわちC2用電磁弁SL2のオフフェール時のCVT走行モードでの発進後における制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
図7において、先ず、変速制御部94に対応するS110において、C2用電磁弁SL2のオフフェール時のCVT走行モードでの発進後にこのCVT走行モードが維持されて走行される。次いで、車両状態判定部98に対応するS120において、アクセル操作量papが所定値pappre以上であり、且つ、車速Vが所定値Vpre以下であるか否かが判定される。このS120の判断が否定される場合は、上記S110に戻される。このS120の判断が肯定される場合は変速制御部94に対応するS130において、フェールセーフバルブ86が通常弁位置(Normal)へ切り替えられる。次いで、変速制御部94に対応するS140において、CVT走行モードからギヤ走行モードへ切替えられる。次いで、変速制御部94に対応するS150において、ギヤ走行モードにて走行される。
上述のように、本実施例によれば、C2用電磁弁SL2のオフフェール時のCVT走行モードでの走行中にアクセル操作量papが所定値pappre以上の場合には、ギヤ走行モードでの走行へ切り替えるので、ショックの発生を抑制しつつドライバが要求する駆動力を実現することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、C2圧Pc2を出力するクラッチ油圧出力装置としてC2用電磁弁SL2を例示したが、これに限らない。例えば、電磁弁とその電磁弁の出力油圧によって作動させられる油圧制御弁との組合せによってC2圧Pc2を出力するクラッチ油圧出力装置であっても良い。
また、前述の実施例では、SL2圧Psl2とは別の、第2クラッチC2を係合可能な油圧としてライン圧PLを例示したが、これに限らない。例えば、この係合可能な油圧は、一定圧に調圧されたモジュレータ圧、又は、シフトレバーが前進走行操作位置Dにあるときに出力されるDレンジ圧などであっても良い。
また、前述の実施例1では、SL2圧Psl2の油圧指令値と油圧センサ110の値であるSL2圧値VALpsl2との差に基づいてC2用電磁弁SL2がオフフェールしているか否かを判定したが、これに限らない。例えば、SL2圧Psl2を検出する油圧スイッチを設け、その油圧スイッチの検出信号に基づいてC2用電磁弁SL2がオフフェールしているか否かを判定しても良い。
また、前述の実施例では、ギヤ伝動機構28は、無段変速機24の最大変速比γmaxよりもロー側の変速比となる1つの変速段が形成されるギヤ伝動機構であったが、これに限らない。例えば、ギヤ伝動機構28は、変速比が異なる複数の変速段が形成されるギヤ伝動機構であっても良い。つまり、ギヤ伝動機構28は2段以上に変速される有段変速機であっても良い。又、ギヤ伝動機構28は、無段変速機24の最小変速比γminよりもハイ側の変速比、及び最大変速比γmaxよりもロー側の変速比を形成するギヤ伝動機構であっても良い。
また、前述の実施例では、動力伝達装置16の走行モードを、所定の変速マップを用いて切り替えたが、これに限らない。例えば、車速Vとアクセル操作量papに基づいて運転者の駆動要求量(例えば要求トルク)を算出し、その要求トルクを満たすことができる変速比を設定することで、動力伝達装置16の走行モードを切り替えても良い。
また、前述の実施例では、駆動力源としてエンジン12を例示したが、これに限らない。例えば、前記駆動力源は、電動機等の他の原動機を単独で或いはエンジン12と組み合わせて採用することもできる。又、エンジン12の動力は、トルクコンバータ20を介して入力軸22へ伝達されたが、これに限らない。例えば、トルクコンバータ20に替えて、トルク増幅作用のない流体継手(フルードカップリング)などの他の流体式伝動装置が用いられても良い。或いは、この流体式伝動装置は必ずしも設けられなくても良い。又、噛合式クラッチD1は、シンクロメッシュ機構S1を備えていたが、このシンクロメッシュ機構S1は必ずしも備えられなくても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。