以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、複合機(MFP:Multi Function Peripheral)としての画像形成装置を例として説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真方式による画像形成装置であり、感光体の露光タイミングを補正するための位置ずれ補正動作において描画されるパターンのうち、搬送方向に対して角度を有する斜線パターンの角度の最適化に特徴を有する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成に加えて、画像形成を実行するエンジンを有する。即ち、本実施形態に係る画像形成装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)11、ROM(Read Only Memory)12、エンジン13、HDD(Hard Disk Drive)14及びI/F15がバス18を介して接続されている。また、I/F15にはLCD(Liquid Crystal Display)16及び操作部17が接続されている。
CPU10は演算手段であり、画像形成装置1全体の動作を制御する。RAM11は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM12は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。エンジン13は、画像形成装置1において実際に画像形成を実行する機構である。
HDD14は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。I/F15は、バス18と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD16は、ユーザが画像形成装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部17は、キーボードやマウス等、ユーザが画像形成装置1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
このようなハードウェア構成において、ROM12やHDD14若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM11に読み出され、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る画像形成装置1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
次に、図2を参照して、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成について説明する。図2は、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、コントローラ20、ADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)110、スキャナユニット22、排紙トレイ23、ディスプレイパネル24、給紙テーブル25、プリントエンジン26、排紙トレイ27及びネットワークI/F28を有する。
また、コントローラ20は、主制御部30、エンジン制御部31、入出力制御部32、画像処理部33及び操作表示制御部34を有する。図2に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、スキャナユニット22、プリントエンジン26を有する複合機として構成されている。尚、図2においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙の流れを破線の矢印で示している。
ディスプレイパネル24は、画像形成装置1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが画像形成装置1を直接操作し若しくは画像形成装置1に対して情報を入力する際の入力インタフェース(操作部)でもある。ネットワークI/F28は、画像形成装置1がネットワークを介して他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。
コントローラ20は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM12に格納されたプログラムや、不揮発性メモリ、HDD14、光学ディスク等からRAM11にロードされたプログラムに従ったCPU10の演算によって構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ20が構成される。コントローラ20は、画像形成装置1全体を制御する制御部として機能する。
主制御部30は、コントローラ20に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ20の各部に命令を与える。エンジン制御部31は、プリントエンジン26やスキャナユニット22等を制御若しくは駆動する駆動手段としての役割を担う。入出力制御部32は、ネットワークI/F28を介して入力される信号や命令を主制御部30に入力する。また、主制御部30は、入出力制御部32を制御し、ネットワークI/F28を介して他の機器にアクセスする。
画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、入力された印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成する。この描画情報とは、画像形成部であるプリントエンジン26が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。また、印刷ジョブに含まれる印刷情報とは、PC等の情報処理装置にインストールされたプリンタドライバによって画像形成装置1が認識可能な形式に変換された画像情報である。操作表示制御部34は、ディスプレイパネル24に情報表示を行い若しくはディスプレイパネル24を介して入力された情報を主制御部30に通知する。
画像形成装置1がプリンタとして動作する場合は、まず、入出力制御部32がネットワークI/F28を介して印刷ジョブを受信する。入出力制御部32は、受信した印刷ジョブを主制御部30に転送する。主制御部30は、印刷ジョブを受信すると、画像処理部33を制御して、印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成させる。
画像処理部33によって描画情報が生成されると、エンジン制御部31は、生成された描画情報に基づいてプリントエンジン26を制御し、給紙テーブル25から搬送される用紙に対して画像形成を実行する。即ち、プリントエンジン26が画像形成部として機能する。プリントエンジン26によって画像形成が施された文書は排紙トレイ27に排紙される。
画像形成装置1がスキャナとして動作する場合は、ユーザによるディスプレイパネル24の操作若しくはネットワークI/F28を介して外部のPC等から入力されるスキャン実行指示に応じて、操作表示制御部34若しくは入出力制御部32が主制御部30にスキャン実行信号を転送する。主制御部30は、受信したスキャン実行信号に基づき、エンジン制御部31を制御する。
エンジン制御部31は、ADF21を駆動し、ADF21にセットされた撮像対象原稿をスキャナユニット22に搬送する。また、エンジン制御部31は、スキャナユニット22を駆動し、ADF21から搬送される原稿を撮像する。また、ADF21に原稿がセットされておらず、スキャナユニット22に直接原稿がセットされた場合、スキャナユニット22は、エンジン制御部31の制御に従い、セットされた原稿を撮像する。即ち、スキャナユニット22が撮像部として動作する。
撮像動作においては、スキャナユニット22に含まれるCCD等の撮像素子が原稿を光学的に走査し、光学情報に基づいて生成された撮像情報が生成される。エンジン制御部31は、スキャナユニット22が生成した撮像情報を画像処理部33に転送する。画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、エンジン制御部31から受信した撮像情報に基づき画像情報を生成する。画像処理部33が生成した画像情報はHDD14等の画像形成装置1に装着された記憶媒体に保存される。即ち、スキャナユニット22、エンジン制御部31及び画像処理部33が連動して、原稿読み取り部として機能する。
画像処理部33によって生成された画像情報は、ユーザの指示に応じてそのままHDD14等に格納され若しくは入出力制御部32及びネットワークI/F28を介して外部の装置に送信される。即ち、ADF21及びエンジン制御部31が画像入力部として機能する。
また、画像形成装置1が複写機として動作する場合は、エンジン制御部31がスキャナユニット22から受信した撮像情報若しくは画像処理部33が生成した画像情報に基づき、画像処理部33が描画情報を生成する。その描画情報に基づいてプリンタ動作の場合と同様に、エンジン制御部31がプリントエンジン26を駆動する。
次に、本実施形態に係るプリントエンジン26の構成について、図3を参照して説明する。図3に示すように、本実施形態に係るプリントエンジン26は、無端状移動手段である搬送ベルト105に沿って各色の画像形成部106が並べられた構成を備えるものであり、所謂タンデムタイプといわれるものである。すなわち、給紙トレイ101から給紙ローラ102により分離給紙される用紙(記録媒体の一例)104に転写するための中間転写画像が形成される中間転写ベルトである搬送ベルト105に沿って、この搬送ベルト105の搬送方向の上流側から順に、複数の画像形成部(電子写真プロセス部)106Y、106M、106C、106K(以降、総じて画像形成部106とする)が配列されている。
また、給紙トレイ101から給紙された用紙104は、レジストローラ103によって一度止められ、画像形成部106における画像形成のタイミングに応じて搬送ベルト105からの画像の転写位置に送り出される。
複数の画像形成部106Y、106M、106C、106Kは、形成するトナー画像、即ち顕色剤画像の色が異なるだけで内部構成は共通である。画像形成部106Kはブラックの画像を、画像形成部106Mはマゼンタの画像を、画像形成部106Cはシアンの画像を、画像形成部106Yはイエローの画像をそれぞれ形成する。尚、以下の説明においては、画像形成部106Yについて具体的に説明するが、他の画像形成部106M、106C、106Kは画像形成部106Yと同様であるので、その画像形成部106M、106C、106Kの各構成要素については、画像形成部106Yの各構成要素に付したYに替えて、M、C、Kによって区別した符号を図に表示するにとどめ、説明を省略する。
搬送ベルト105は、回転駆動される駆動ローラ107と従動ローラ108とに架け渡されたエンドレスのベルト、即ち無端状ベルトである。この駆動ローラ107は、不図示の駆動モータにより回転駆動させられ、この駆動モータと、駆動ローラ107と、従動ローラ108とが、無端状移動手段である搬送ベルト105を移動させる駆動手段として機能する。
画像形成に際しては、回転駆動される搬送ベルト105に対して、最初の画像形成部106Yが、ブラックのトナー画像を転写する。画像形成部106Yは、感光体としての感光体ドラム109Y、この感光体ドラム109Yの周囲に配置された帯電器110Y、光書き込み装置111、現像器112Y、感光体クリーナ(図示せず)、除電器113Y等から構成されている。光書き込み装置111は、夫々の感光体ドラム109Y、109M、109C、109K(以降、総じて「感光体ドラム109」という)に対して光を照射するように構成されている。
画像形成に際し、感光体ドラム109Yの外周面は、暗中にて帯電器110Yにより一様に帯電された後、光書き込み装置111からのブラック画像に対応した光源からの光により書き込みが行われ、静電潜像が形成される。現像器112Yは、この静電潜像をイエロートナーにより可視像化し、このことにより感光体ドラム109Y上にイエローのトナー画像が形成される。
このトナー画像は、感光体ドラム109Yと搬送ベルト105とが当接若しくは最も接近する位置(転写位置)で、転写器115Yの働きにより搬送ベルト105上に転写される。この転写により、搬送ベルト105上にイエローのトナーによる画像が形成される。トナー画像の転写が終了した感光体ドラム109Yは、外周面に残留した不要なトナーを感光体クリーナにより払拭された後、除電器113Yにより除電され、次の画像形成のために待機する。
以上のようにして、画像形成部106Yにより搬送ベルト105上に転写されたイエローのトナー画像は、搬送ベルト105のローラ駆動により次の画像形成部106Mに搬送される。画像形成部106Mでは、画像形成部106Yでの画像形成プロセスと同様のプロセスにより感光体ドラム109M上にマゼンタのトナー画像が形成され、そのトナー画像が既に形成されたイエローの画像に重畳されて転写される。
搬送ベルト105上に転写されたイエロー、マゼンタのトナー画像は、さらに次の画像形成部106C、106Kに搬送され、同様の動作により、感光体ドラム109C上に形成されたシアンのトナー画像と、感光体ドラム109K上に形成されたブラックのトナー画像とが、既に転写されている画像上に重畳されて転写される。こうして、搬送ベルト105上にフルカラーの中間転写画像が形成される。
給紙トレイ101に収納された用紙104は最も上のものから順に送り出され、その搬送経路が搬送ベルト105と接触する位置若しくは最も接近する位置において、搬送ベルト105上に形成された中間転写画像がその紙面上に転写される。これにより、用紙104の紙面上に画像が形成される。紙面上に画像が形成された用紙104は更に搬送され、定着器116にて画像を定着された後、画像形成装置の外部に排紙される。
このようなプリントエンジン26においては、感光体ドラム109Y、109M、109C及び109Kの軸間距離の誤差、感光体ドラム109Y、109M、109C及び109Kの平行度誤差、光書き込み装置111内でのLEDA130の設置誤差、感光体ドラム109Y、109M、109C及び109Kへの静電潜像の書き込みタイミング誤差等により、本来重ならなければならない位置に各色のトナー画像が重ならず、各色間で位置ずれが生ずることがある。
また、同様の原因により、転写対象である用紙において本来画像が転写される範囲から外れた範囲に画像が転写されることがある。このような位置ずれの成分としては、主にスキュー、副走査方向のレジストずれ等が知られている。また、装置内温度変化や経時劣化による搬送ベルトの伸縮が知られている。
このような位置ずれを補正するため、パターン検知センサ117が設けられている。パターン検知センサ117は、感光体ドラム109Y、109M、109C及び109Kによって搬送ベルト105上に転写された位置ずれ補正用パターン、及び濃度補正用パターンを読み取るための光学センサであり、搬送ベルト105の表面に描画されたパターンを照射するための発光素子及び補正用パターンからの反射光を受光するための受光素子を含む。図3に示すように、パターン検知センサ117は、感光体ドラム109Y、109M、109C及び109Kの下流側において、搬送ベルト105の搬送方向と直行する方向に沿って同一の基板上に支持されている。
また、画像形成装置1においては、画像形成部106Y、106M、106C、106Kの状態変化や、光書込み装置111の状態変化により、用紙104上に転写される画像の濃度が変動する可能性がある。このような濃度変動を補正するため、所定のルールに従って形成された濃度補正用パターンを検知し、その検知結果に基づいて画像形成部106Y、106M、106C、106Kの駆動パラメータや光書込み装置111の駆動パラメータを補正する濃度補正が実行される。
パターン検知センサ117は、上述した位置ずれ補正用パターンを検知することによる位置ずれ補正動作の他、濃度補正用パターンの検知にも用いられる。パターン検知センサ117の詳細及び位置ずれ補正の態様については、後に詳述する。
このような描画パラメータ補正において搬送ベルト105上に描画された補正用パターンのトナーを除去し、搬送ベルト105によって搬送される用紙が汚れないようにするため、ベルトクリーナ118が設けられている。ベルトクリーナ118は、図3に示すように、駆動ローラ107の下流側であって、感光体ドラム109よりも上流側において搬送ベルト105に押し当てられたクリーニングブレードであり、搬送ベルト105の表面に付着したトナーを掻きとる顕色剤除去部である。
次に、本実施形態に係る光書き込み装置111について説明する。図4は、本実施形態に係る光書き込み装置111と感光体ドラム109との配置関係を示す図である。図4に示すように、各色の感光体ドラム109Y、109M、109C、109K夫々に照射される照射光は、光源であるLEDA(Light‐emitting diode Array)130Y、130M、130C、130K(以降、総じてLEDA130とする)から照射される。
LEDA130は、発光素子であるLEDが、感光体ドラム109の主走査方向に並べられて構成されている。光書き込み装置111に含まれる制御部は、主走査方向に並べられている夫々のLEDの点灯/消灯状態を、コントローラ20から入力された描画情報に基づいて主走査ライン毎に制御することにより、感光体ドラム109の表面を選択的に露光し、静電潜像を形成する。
次に、本実施形態に係る光書き込み装置111の制御ブロックについて、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る光書き込み装置111を制御する光書き込み装置制御部120の機能構成と、LEDA130及びパターン検知センサ117との接続関係を示す図である。
図5に示すように、本実施形態に係る光書き込み装置制御部120は、発光制御部121、カウント部122、センサ制御部123、補正値算出部124、基準値記憶部125及び補正値記憶部126を含む。光書き込み装置制御部120が、光源であるLEDA130を制御して感光体上に静電潜像を形成させる光書き込み制御装置として機能する。
尚、本実施形態に係る光書き込み装置111は、図1において説明したようなCPU10、RAM11、ROM12及びHDD14等の情報処理機構を含む。そして、図5に示すような光書き込み装置制御部120は、画像形成装置1のコントローラ20と同様に、ROM12に格納されたプログラムやRAM11にロードされたプログラムに従って、CPU10が演算処理を行うことにより構成される。
発光制御部121は、コントローラ20のエンジン制御部31から入力される画像情報に基づいてLEDA130を制御する光源制御部である。発光制御部121は、所定のライン周期でLEDA130を発光させることにより、感光体ドラム109への光書き込みを実現する。
発光制御部121がLEDA130を発光制御するライン周期は画像形成装置1の出力解像度によって定まるが、上述したように用紙の搬送速度との比率に応じて副走査方向に変倍を行う場合、発光制御部121がライン周期を調整することによって副走査方向の変倍を行う。
また、発光制御部121は、エンジン制御部31から入力される描画情報に基づいてLEDA130を駆動する他、上述した描画パラメータ補正の処理において補正用のパターンを描画するために、LEDA130を発光制御する。
図4において説明したように、LEDA130は夫々の色に対応して複数設けられる。従って、図5に示すように、発光制御部121も、複数のLEDA130夫々に対応するように複数設けられる。描画パラメータ補正処理のうち位置ずれ補正処理の結果生成される補正値は、図5に示す補正値記憶部126に位置ずれ補正値として記憶される。発光制御部121は、この補正値記憶部126に記憶されている位置ずれ補正値に基づき、LEDA130を駆動するタイミングを補正する。
発光制御部121によるLEDA130の駆動タイミングの補正は、具体的には、エンジン制御部31から入力された描画情報に基づいてLEDA130を発光駆動するタイミングをライン周期単位で遅らせる、即ちラインをシフトさせることによって実現される。これに対して、エンジン制御部31からは、所定の周期に従って次々に描画情報が入力されるため、ラインをシフトさせて発光タイミングを遅らせるためには、入力された描画情報を保持しておき、読み出すタイミングを遅らせる必要がある。
そのため、発光制御部121は、主走査ライン毎に入力される描画情報を保持するための記憶媒体であるラインメモリを有し、エンジン制御部31から入力された描画情報をラインメモリに記憶させることによって保持する。尚、LEDA130の駆動タイミングの補正としては、ライン周期単位での調整の他、ライン周期毎の発光タイミングの微調整も行われる。
カウント部122は、上記位置ずれ補正処理において、発光制御部121がLEDA130を制御して感光体ドラム109Kの露光を開始すると同時にカウントを開始する。カウント部122は、センサ制御部123が、パターン検知センサ117の出力信号に基づいて位置ずれ補正用パターンを検知することにより出力する検知信号を取得する。また、カウント部122は、検知信号を取得したタイミングにおけるカウント値を補正値算出部124に入力する。即ち、カウント部122がパターンの検知タイミングを取得する検知タイミング取得部として機能する。
センサ制御部123は、パターン検知センサ117を制御する制御部であり、上述したように、パターン検知センサ117の出力信号に基づき、搬送ベルト105上に形成された位置ずれ補正用パターンが、パターン検知センサ117の位置にまで到達したことを判断して検知信号を出力する。即ち、センサ制御部123が、パターン検知センサ117によるパターンの検知信号を取得する検知信号取得部として機能する。
また、センサ制御部123は、濃度補正用パターンによる濃度補正に際しては、パターン検知センサ117の出力信号の信号強度を取得し、補正値算出部124に入力する。更にセンサ制御部123は、位置ずれ補正用パターンの検知結果に応じて、濃度補正用パターンの検知タイミングを調整する。
補正値算出部124は、カウント部122から取得したカウント値や、センサ制御部123から取得した濃度補正用パターンの検知結果の信号強度に基づき、基準値記憶部125に記憶された位置ずれ補正用及び濃度補正用の基準値に基づいて補正値を算出する。即ち、補正値算出部124が、基準値取得部及び補正値算出部として機能する。基準値記憶部125には、このような計算に用いるための基準値が格納されている。
次に、位置ずれ補正用パターンを用いた位置ずれ補正動作について説明する。先ず、本実施形態に係る位置ずれ補正動作の前提として、一般的な位置ずれ補正動作について説明する。図6は、一般的な位置ずれ補正動作において、発光制御部121によって制御されたLEDA130によって搬送ベルト105上に描画されるマーク(以降、位置ずれ補正用マークとする)を示す図である。
図6に示すように、一般的な位置ずれ補正用マーク400は、副走査方向に様々なパターンが並べられている位置ずれ補正用パターン列401が、主走査方向に複数(本実施形態においては2つ)並べられて構成されている。尚、図6において、実線が感光体ドラム109K、点線は感光体ドラム109Y、破線は感光体ドラム109C、一点鎖線は感光体ドラム109Mによって夫々描画されたパターンを示す。
図6に示すように、パターン検知センサ117は、主走査方向に複数(本実施形態においては2つ)のセンサ素子170を有し、夫々の位置ずれ補正用パターン列401は、夫々のセンサ素子170に対応した位置に描画されている。これにより、光書き込み装置制御部120は、主走査方向の複数の位置でパターンの検出を行うことが可能となり、描画される画像のスキューを補正することが可能となる。また、複数のセンサ素子170に基づく検知結果を平均することにより、補正精度を向上することができる。
図6に示すように、位置ずれ補正用パターン列401は、全体位置補正用パターン411とドラム間隔補正用パターン412を含む。また、図6に示すように、ドラム間隔補正用パターン412は、繰り返し描画されている。
全体位置補正用パターン411は、図6に示すように、感光体ドラム109Yによって描画された線であって主走査方向に平行な線である。全体位置補正用パターン411は、画像の全体の副走査方向のずれ、即ち用紙に対する画像の転写位置を補正するためのカウント値を得るために描画されるパターンである。また、全体位置補正用パターン411は、センサ制御部123が、ドラム間隔補正用パターン412や、後述する濃度補正用のパターンを検知する際の検知タイミングを補正するためにも用いられる。
全体位置補正用パターン411を用いた全体位置補正においては、光書き込み装置制御部120が、パターン検知センサ117による全体位置補正用パターン411の読取信号に基づき、書き込み開始タイミングの補正動作を行う。
ドラム間隔補正用パターン412は、各色の感光体ドラム109における描画タイミングのずれ、即ち、各色の画像が重ね合わせられる重ね合わせ位置を補正するためのカウント値を得るために描画されるパターンである。図6に示すように、ドラム間隔補正用パターン412は、横線パターンである副走査方向補正用パターン413及び斜線パターンである主走査方向補正用パターン414を含む。図6に示すように、ドラム間隔補正用パターン412は、CMYK各色のパターンが一組となって構成される副走査方向補正用パターン413及び主走査方向補正用パターン414が繰り返されることによって構成される。
光書き込み装置制御部120は、パターン検知センサ117による、副走査方向補正用パターン413の読取信号に基づき、感光体ドラム109K、109M、109C、109Y夫々の副走査方向の位置ずれ補正を行い、主走査方向補正用パターン414の読取信号に基づき、上記各感光体ドラムの主走査方向の位置ずれ補正を行う。
副走査方向補正用パターン413は、主走査方向に平行な水平パターンである。また、図6に示すように、ドラム間隔補正用パターン412が副走査方向に繰り返し描画されることにより、副走査方向補正用パターン413は、位置ずれ補正用マークにおいて副走査方向に異なる位置に複数含まれることとなる。
主走査方向補正用パターン414は、主走査方向に対して傾いた斜線パターンである。また、図6に示すように、ドラム間隔補正用パターン412が副走査方向に繰り返し描画されることにより、主走査方向補正用パターン414は、位置ずれ補正用マークにおいて副走査方向に異なる位置に複数含まれることとなる。
ここで、本実施形態に係るセンサ素子170によるパターンの検知態様について説明する。図7は、本実施形態に係るセンサ素子170の構成及びセンサ素子170がパターンを検知する際の状態を模式的に示す側断面図である。図7は、主走査方向に垂直な面であって且つセンサ素子170を含む面における断面図である。
図7に示すように、本実施形態に係るセンサ素子170は、発光素子171及び受光素子172を含む。発光素子171は、パターンを検知するためのビームを照射する光源である。本実施形態に係る発光素子171は、光ビームを照射するLED光源によって構成されている。
受光素子172は、発光素子171から照射されて搬送ベルト105によって反射された光を受光する受光部であり、図7に破線で示すように、発光素子171から照射されて搬送ベルト105において反射された正反射光が入射する位置及び角度において設けられている。このような構成により、本実施形態に係るセンサ素子170は、発光素子171から照射され、搬送ベルト105によって反射されて受光素子172に入射した光の強度に応じた信号を出力する。
本実施形態に係る搬送ベルト105は光を全反射する白色であり、発光素子171から照射された光が搬送ベルト105の表面に照射されている場合に、受光素子172に入射する光量が最大となる。そして、搬送ベルト105上に描画されたパターンが搬送され、発光素子171から照射されたビームのビームスポットを横切ると、ビームは搬送ベルト105表面ではなくその上に描画されたパターンによって反射されることとなり、受光素子172に入射する反射光の光量が減少する。この受光光量の減少を検知することにより、センサ素子170によってパターンが検知される。
次に、基準値記憶部125に記憶されている各色タイミング基準値について、図8を参照して説明する。図8は、パターン検知センサ117の出力する信号の信号強度と、全体位置補正用パターン411及びドラム間隔補正用パターン412の検知タイミングを示す図である。
図7において説明したように、センサ制御部123は、パターン検知センサ117が出力する検知信号の信号強度の落ち込みに基づいてパターンを検知する。図8に示すように、検知信号の落ち込みがピークとなったタイミングをパターンの到達タイミングとして検知することが理想的である。そのため、センサ制御部123には、検知信号の信号強度に対して所定の閾値が設定されており、パターン検知センサ117が出力する信号が閾値に達した際に検知信号を出力する。
その結果、補正値算出部124は、信号の落ち込みにより閾値を横切ったタイミングと、信号が落ち込んだ後に元に戻る際に閾値を横切ったタイミングにおけるカウント値をカウント部122から取得する。そして、補正値算出部124は、2つのタイミングの中間のタイミングを、夫々のパターンの到達タイミングとして認識する。
図8に示すように、全体位置補正用パターン411の検知期間tY0は、感光体ドラム109Yによって描画された夫々の線が読み取られる手前のタイミングである検知開始タイミングt0からの検知期間である。
また、ドラム間隔補正用パターン412に含まれる副走査方向補正用パターン413の検知期間t1Y、t1K、t1M、t1C及び主走査方向補正用パターン414の検知期間t2Y、t2K、t2M、t2Cは、一組のパターンが読み取られる手前のタイミングである検知開始タイミングt1、t2からの検知期間である。
基準値記憶部125には、図8に示す全体位置補正用パターン411の検知期間tY0や、副走査方向補正用パターン413及び主走査方向補正用パターン414の検知期間t1Y、t1K、t1M、t1C、t2Y、t2K、t2M、t2Cに対する基準値である。換言すると、基準値記憶部125には、画像形成装置各部の詳細な構成が設計通りである場合の全体位置補正用パターン411の検知期間tY0や、副走査方向補正用パターン413及び主走査方向補正用パターン414の検知期間tY、tK、tM、tCの理論値が基準値として格納されている。
即ち、補正値算出部124は、基準値記憶部125に記憶されている夫々の基準値と、図8に示す検知期間tY0、tY、tK、tM、tCとの差異を計算することにより、自身が搭載されている画像形成装置の設計値からのずれを求め、そのずれに基づいてLEDA130の発光タイミングを補正するための補正値を算出する。
また、全体位置補正用パターン411の検知期間tY0に対する基準値は、図8に示す検知開始タイミングt1、t2のタイミングを補正するためにも用いられる。即ち、補正値算出部124は、全体位置補正用パターン411の検知期間tY0と、それに対する基準値との差異に基づき、図8に示す検知開始タイミングt1、t2のタイミングを補正するための補正値を算出する。これにより、ドラム間隔補正用パターン412の検知期間の精度を向上することが可能である。
位置ずれ補正用マーク400は、所定のタイミングにおいて繰り返し実行される位置ずれ補正動作において毎回描画されるため、可能な限り描画範囲を小さくしてトナー消費を低減することが求められる。そのため、図6に示す夫々のパターンの主走査方向の幅を、センサ素子170の検知範囲に応じた幅とすることが理想的な状態となる。換言すると、位置ずれ補正用マーク400を構成する夫々のパターンを、センサ素子170の読み取り範囲に応じた幅で描画された狭幅パターンとすることが理想的である。
図9は、本実施形態に係る位置ずれ補正用マーク400´を示す図である。図9に示すように、位置ずれ補正用マーク400´に含まれる夫々のパターンは、図6において説明した位置ずれ補正用マーク400に含まれる夫々のパターンに対応している。図9においては、図6に示す夫々のパターンに対応するパターンの符号に“´”を付して示している。
図9に示すように、本実施形態に係る位置ずれ補正用マーク400´は、全てのパターンの主走査方向の幅が、センサ素子170の検知範囲に応じた幅である狭幅パターンである。これにより、上述したように、位置ずれ補正用マーク400´の描画に際して消費されるトナー量が低減される。尚、図9に示す位置ずれ補正用マーク400´の狭幅パターンに対して、図5に示す位置ずれ補正用マーク400を広幅パターンとする。
また、位置ずれ補正用マーク400´のように、センサ素子170の検知範囲に応じた幅のパターンの検知の場合、センサ素子170による検知に際しての拡散反射光の影響を低減することが出来る。従って、図6に示すように、センサ素子170の検知範囲に対して主走査方向にマージンを有するパターンを用いる場合に比べて拡散反射光の影響を低減した高精度な位置ずれ補正を行うことが可能となる。
次に、本実施形態に係る位置ずれ補正動作について図10のフローチャートを参照して説明する。図10に示すように、位置ずれ補正動作においては、光書き込み装置制御部120がパターンの描画を開始し(S1001)、パターン検知センサ117の検知信号によるパターンの検知を開始する(S1002)。これにより、補正値算出部124は、全体位置補正用パターン411及びドラム間隔補正用パターン412の検知結果、即ち、検知タイミングを示す値を順次取得する。
そして、補正値算出部124は、夫々取得した検知結果に基づき、副走査方向の位置ずれ補正のための補正値を算出する(S1003)。S1003において、補正値算出部124は、全体位置補正用パターン411及び副走査方向補正用パターン413の検知結果を、図8において説明した検知期間tY0についての基準値と比較することにより、副走査方向の位置ずれ補正量を求める。
また、補正値算出部124は、取得した検知結果に基づき主走査方向の位置ずれ補正のための補正値を算出する(S1004)。S1004において、補正値算出部124は、副走査方向補正用パターン413及び主走査方向補正用パターン414の検知結果を、図8において説明した検知期間tY、tK、tM、tCについての基準値と比較することにより、主走査方向の位置ずれ量を求める。このような処理により、本実施形態に係る位置ずれ補正動作が完了する。尚、描画されるパターンは、上述した広幅パターン及び狭幅パターンの両方の場合があり得る。
このような構成において、本実施形態に係る要旨は、斜線パターンである主走査方向補正用パターン414の角度と、センサ素子170の発光素子171から照射されたビームが搬送ベルト105表面に到達して生成されるビームスポットの形状との関係を最適化することにある。まず、ビームスポットの形状について説明する。
図7において説明したように、発光素子171から照射されるビームの光軸は、反射光が受光素子172に入射するように構成するため、搬送ベルト105のベルト面に対して傾いている。従って、発光素子171から照射されるビームが真円状であったとしても、ビームが搬送ベルト105のベルト面に到達して生成されるビームスポットは楕円形状となる。
また、図7に示すような発光素子171及び受光素子172の配置は、センサ素子170によって個体差がある。そして、上述したビームスポットの楕円形状において径が最大となる方向、即ち、楕円の長尺方向の角度は、このセンサ素子170の個体差に応じて異なる。
図11(a)は、搬送ベルト105表面における楕円状のビームスポットの例を破線で示す図である。図中に矢印で示すように、図中の上下方向が搬送ベルトの搬送方向である。そして、図中に一点鎖線で示すように、楕円の長尺方向Lは搬送方向に対して傾いている。このLの傾きが、センサ素子170の個体差に応じて異なる。
上述したLの傾きは、斜線パターンを検知する際の検知信号に影響する。具体的には、Lの傾きと斜線パターンの傾きとが近い場合、斜線パターンが搬送ベルト105によって搬送されてビームスポットの位置に到達した際に、ビームスポットを覆う範囲が広くなる。他方、Lの傾きと斜線パターンの傾きとが大きく異なる場合、斜線パターンが搬送ベルト105によって搬送されてビームスポットの位置に到達した際に、ビームスポットを覆う範囲が狭くなる。
図11(b)は、Lの傾きと斜線パターンの傾きとが近い場合を示す図である。図11(b)に示すように、Lの傾きと斜線パターンの傾きとが近ければ、斜線パターンがビームスポットに到達した際、楕円形状のビームスポットの大部分がカバーされることとなる。
図11(b)の右側に示すグラフは、横軸にパターンの搬送位置をとり、縦軸にセンサ素子170が出力する出力信号を実線で、パターンがビームスポットを覆う面積を破線でとったグラフである。グラフに示すように、パターンがビームスポットを覆う面積のピークが高く、その分、センサ素子170が出力する出力信号のピークが低くなっている。
このような波形であれば、発光素子171から照射されたビームが搬送ベルト105表面によって反射されている場合の受光電圧と、信号の落ち込みを検知するための閾値との差を大きくとることができ、S/N比を向上することが出来る。
図11(c)は、Lの傾きと斜線パターンの傾きとが大きく異なる場合を示す図である。図11(c)に示すように、Lの傾きと斜線パターンの傾きとが大きく異なる場合、斜線パターンがビームスポットに到達した際、楕円形状のビームスポットの範囲のうち、パターンがカバーしない範囲が広くなる。その結果、右側のグラフに示すように、パターンがビームスポットを覆う面積のピークが低く、その分、センサ素子170が出力する出力信号のピークが高くなっている。
このような波形であれば、発光素子171から照射されたビームが搬送ベルト105表面によって反射されている場合の受光電圧と、信号の落ち込みを検知するための閾値との差を大きくとることができず、S/N比が悪くなり、場合によっては信号の検知が不可能となる。
図11(d)に示すように、パターンの副走査方向の幅を広げることにより、ビームスポットの全体がパターンによってカバーされるようにすることが可能である。しかしながら、この場合、搬送ベルト105の搬送に対してパターンがビームスポットを横切る期間が長くなり、タイミングの検知精度が低下すると共に、トナー消費量が増大してしまう。従って、図11(b)に示すように、斜線パターンの角度とビームスポットの長尺方向の角度とが近い状態があらゆる面で理想的である。
そのため、本実施形態に係る光書き込み装置制御部120は、斜線パターンの角度を決定するための角度決定動作を行うことにより、夫々の画像形成装置1に搭載されたセンサ素子170の個体差に応じた斜線パターンの角度を決定する。以下、本実施形態に係る角度決定動作について説明する。
図12は、本実施形態に係る角度決定操作において描画されるマーク(以降、「角度決定用マーク」とする)の例を示す図である。この角度決定用マークが、斜線パターンの角度を調整するための角度調整用パターンとして用いられる。図12に示すように、本実施形態に係る角度決定用マークは、夫々角度の異なる斜線パターンが副走査方向に並べられて構成されている。このように夫々角度の異なるパターンがビームスポット170´に到達した際の検知信号の落ち込みに基づいて斜線パターンの角度を決定することが本実施形態に係る要旨である。
図11(b)、(c)において説明したように、パターンの角度とビームスポットの長尺方向の角度との関係により、パターン検知センサ117が出力する検知信号の変化量が変動する。従って、図12に示すような角度決定用マークを搬送ベルト105上に描画し、その検知信号を参照することにより、ビームスポット170´の長尺方向の角度に最も合致したパターンの角度を決定することが可能となる。
尚、図12の右側に示すように、パターンの搬送方向を基準軸とし、搬送方向下流側に向かって右側に開く方向をプラスの角度とすると、本実施形態に係る角度決定用マークに含まれる夫々の斜線パターンは、−0°から+90°の間の傾きを有する。この角度の値は、プラス方向、マイナス方向及び基準軸の取り方によるが、いずれにしても180°以上回転すると元に戻るため、180°の範囲で設定すればよい。
次に、図13のフローチャートを参照して、本実施形態に係る角度決定動作について説明する。図13に示すように、光書き込み装置制御部120は、まず図6において説明したパターン、即ち、センサ素子170の検知範囲に対してマージンを有する広幅パターンによる位置ずれ補正動作を行う(S1301)。
S1301の処理により、主走査方向の描画位置がずれていたとしても、センサ素子170の検知範囲に対するマージンにより、パターンの検知エラーを生じることなく主走査方向の位置ずれ補正を行うことが出来る。S1301の処理の詳細は、図10のS1001〜S1004と同様である。
次に、光書き込み装置制御部120は、図9において説明したパターン、即ち、主走査方向の幅が、センサ素子170の検知範囲に応じた幅である狭幅パターンによる位置ずれ補正動作を行う(S1302)。狭幅パターンを用いる場合、上述したように拡散反射光の影響を低減することができ、より高精度な位置ずれ補正を行うことができる。
S1302の処理は、S1301の処理により得られた位置ずれ補正値を適用して実行される。従って、描画される画像の主走査方向の位置は予め補正されており、図9に示すような狭幅パターンを用いる場合であっても、パターンの検知エラーは生じない。そして、S1301及びS1302の処理により、高精度な位置ずれ補正が完了し、次に実行する画像形成出力においては、位置ずれが高精度に補正されることとなる。
S1302までの処理が完了すると、光書き込み装置制御部120が、図12において説明した角度決定用マークの描画を開始し(S1303)、パターン検知センサ117の検知信号によるパターンの検知を開始する(S1304)。これにより、補正値算出部124は、図12に示すような夫々の角度の斜線パターンがビームスポット170´に到達した際の、パターン検知センサ117の検知信号の落ち込み量を順次取得する。
図14(a)〜(h)は、図12に示す夫々のパターン毎に、パターン検知センサ117の検知信号の例を示す図である。図14(a)〜(h)に示すように、夫々のパターンがビームスポットを通り過ぎる際にパターン検知センサ117が出力する検知信号の落ち込みの態様は、夫々のパターンの角度に応じて異なる。ここで、検知信号の落ち込み態様とは、落ち込みに係る信号強度及び信号が落ち込む幅である。
図11(b)、(c)において説明したように、検知信号の落ち込みは、信号強度が低いほどS/N比が良くなる。従ってセンサ制御部123から夫々の検知信号の信号強度を取得した補正値算出部124は、検知信号の落ち込みに係る信号強度を比較する(S1305)。夫々の検知信号の信号強度の検知に際しては、図14に破線で示すような多段階の閾値を設定し、どの閾値を超えたかを判断することによって行う。
S1305の処理により、補正値算出部124は、検知信号の落ち込みに係る信号強度が最も低いパターン角度、即ち、パターンの検知に際する信号の変化が最も大きいパターン角度を抽出する。信号の落ち込み量は、換言すると、パターンの検知強度である。
その結果、例えば図14(a)〜(c)のように、信号強度の落ち込みが達した最も低い閾値に係るパターン角度が複数ある場合、即ち、信号の落ち込みが飽和している場合(S1305/YES)、補正値算出部124は、もっとも信号の落ち込みが急峻なパターン角度を選択する(S1306)。信号の落ち込みが急峻なパターン角度とは、パターンがビームスポットに到達してからビームスポットを抜けるまでの期間がなるべく短いパターン角度である。換言すると、信号の落ち込みが急峻なパターン角度とは、搬送されるパターンによってパターン検知センサ11の信号出力が変化している期間がもっとも短いパターンの角度である。
即ち、パターンがビームスポットを覆うことによってパターン検知センサ117の出力信号が変化している期間を、パターンが搬送経路において検知されている期間とすると、検知されている期間が最もなるべく短い斜線パターン角度を選択する。
S1306に係る処理の意義は、信号の落ち込みに基づいてタイミングを検知する際の精度にある。図8において説明したように、パターンの検知タイミングは、パターンの検知信号の降下、上昇夫々において信号強度が閾値とクロスしたタイミングの中間のタイミングである。そのため、検知信号の落ち込み幅は狭い方が、検知タイミングを決定する上での誤差が少ない。従って、補正値算出部124は、最も落ち込みに係る信号強度が低いパターン角度が複数ある場合、最も落ち込み幅の狭いパターン角度を選択する。この処理の詳細については後述する。
他方、最も落ち込みに係る信号強度が低いパターン角度が1つである場合(S1305/NO)、補正値算出部124は、そのパターン角度を選択する(S1307)。S1306またはS1307の処理によりパターン角度を選択すると、補正値算出部124は選択した角度を、斜線パターンのパターン角度として決する(S1308)。即ち、補正値算出部124が、角度調整処理部として機能する。このような動作により、本実施形態に係る角度決定動作が完了する。
このような角度決定動作により、図12に示す夫々の斜線パターンの角度のうち、パターン検知センサ117の発光素子171によって生成されるビームスポットの長尺方向の角度に最も適した角度が選択される。図13の動作により決定されたパターン角度は、補正値記憶部126に記憶される。これにより、以降の位置ずれ補正動作において図6に示す位置ずれ補正用マーク400や、図9に示す位置ずれ補正用マーク400´が描画される際、そこに含まれる斜線パターンの角度として、決定された角度が用いられる。
次に、図13のS1306における急峻パターンの選択処理の詳細について説明する。図15は、S1306の処理の詳細な動作を示すフローチャートである。補正値算出部124は、信号強度の落ち込みが達した最も低い閾値に係るパターン角度夫々の検知信号を参照し、検知信号の落ち込みのピークタイミングを合わせた状態において、グラフ同士の交点を検知する(S1501)。グラフ同士の交点とは、グラフが交差する点である。
図16(a)〜(c)は、信号強度が飽和した2つの信号のピークタイミングを合わせた状態を示す図である。図16(a)、(b)は、2つの信号のグラフに交点がある場合を示し、図16(c)は、交点がない場合を示す。S1501の判断の結果、図16(c)に示すように交点がない場合(S1502/NO)、選択するべきパターン角度に係る検知信号のグラフ、即ち、落ち込みの急峻なグラフは、図16(c)において実線で示すグラフである。
ここで、図16(a)〜(c)に示す点線は、図8において説明した、信号の落ち込みに基づいて検知タイミングを判断するための閾値(以降、「タイミング判定用閾値」とする)である。そして、図16(c)に示す状態の場合、実線、破線夫々のグラフにおいて、グラフとタイミング判定用閾値との2つの交点の間隔(以降、「閾値交点幅」とする)tc1、tc2を比較すると、選択するべき実線のグラフの方が間隔が狭い。従って、補正値算出部124は、閾値交点幅の狭いグラフに係るパターン角度を選択し(S1506)、処理を終了する。
他方、交点が検知された場合(S1502/YES)、次に補正値算出部124は、グラフ同士の交点における信号強度がタイミング判定用閾値よりも大きいか小さいかを判定する(S1503)。その結果、交点における信号強度がタイミング判定用閾値よりも大きかった場合(S1503/YES)、グラフは図16(a)に示すような状態である。
図16(a)に示す状態において選択するべきグラフは実線で示すグラフである。この場合、閾値交点幅は選択するべき実線のグラフの方が広い。従って、補正値算出部124は、閾値交点幅の広いグラフに係るパターン角度を選択し(S1504)、処理を終了する。
また、交点における信号強度がタイミング判定用閾値よりも小さかった場合(S1503/NO)、グラフは図16(b)に示すような状態である。図16(b)に示す状態において選択するべきグラフは実線で示すグラフである。この場合、閾値交点幅は選択するべき実線のグラフの方が狭い。従って、補正値算出部124は、閾値交点幅の狭いグラフに係るパターン角度を選択し(S1505)、処理を終了する。このような処理により、図13のS1306における急峻パターンの選択処理が完了する。
尚、図15、図16に示すような閾値交点幅に基づいて判断する方法は、上述したような急峻なパターンの選択に限らず、例えば、S1305及びS1307の処理の代わり、即ち、検知電圧の落ち込みが最も大きいパターンの選択において用いても良い。この場合においても、図15と同様に、グラフ同士の交点の有無及び交点と閾値との関係に基づいて同様の判断を行うことにより、検知信号の落ち込みが最も大きいパターンを選択することが出来る。
次に、本実施形態に係る位置ずれ補正処理において、斜線パターンの検知結果に基づいて主走査方向の位置ずれ量を求める処理について説明する。図18は、本実施形態に係る主走査方向の位置ずれ補正における、パターンの検知結果の参照態様を示す図である。図18に示すように夫々の横線パターン413の検知タイミングは、Yci、Kci、Mci、Cciで示される。また、斜線パターン414の検知タイミングは、Ysi、Ksi、Msi、Csiで示される。ここで、“i”は、繰り返し描画される横線パターン413及び斜線パターン414の繰り返し回数の順番である。
そして、本実施形態に係る光書き込み装置制御部120は、第1の主走査位置ずれ補正用の検知結果として、夫々の色毎に、i番目の横線パターン413の検知タイミングから、i番目の斜線パターン414の検知タイミングまでの期間ΔYi、ΔKi、ΔMi、ΔCiを参照する。
画像が主走査方向にずれたとしても、横線パターン413の検知タイミングは変化しない。これに対して、上述したように、斜線パターン414の検知タイミングは、画像の主走査方向に従い、斜線の傾きに応じて変化する。従って、横線パターン413と斜線パターン414との間隔は、画像の主走査方向の位置ずれによって変化する。本実施形態に係る光書き込み装置制御部120は、この横線パターン413と斜線パターン414との間隔の変化に基づき、主走査方向の位置ずれ補正を行う。
即ち、基準値記憶部125には、副走査方向の位置ずれ補正用の基準値として、図8に示すYci、Kci、Mci、Cci夫々の基準値が記憶されている。そして、光書き込み装置制御部120は、横線パターン413の読み取り結果と、基準値記憶部125に記憶されている基準値との差分に基づき、画像の副走査方向の位置ずれ補正を行う。
また、基準値記憶部125には、主走査方向の位置ずれ補正用の基準値として、図8に示すΔYi、ΔKi、ΔMi、ΔCi夫々の基準値が記憶されている。そして、光書き込み装置制御部120は、横線パターン413及び斜線パターン414の読み取り結果と、基準値記憶部125に記憶されている基準値との差分に基づき、画像の主走査方向の位置ずれ補正を行う。
YMCK各色の横線−斜線パターン間距離の設計値はすべて等しいため、主走査方向に位置ずれが発生していない場合、上記ΔYi、ΔKi、ΔMi、ΔCi夫々は、以下の式(1)〜(5)によって示すことが出来る。
これに対して、YMCK夫々の色で主走査方向の位置ずれが発生した場合、斜線パターンの検知位置が変化し、その色の横線−斜線パターン間距離が変化する。本実施形態に係る斜線パターンの角度αのデフォルト値は45°である。そのため、例えばYの色が主走査方向にΔSYi、Kの色が主走査方向にΔSKi位置ずれした場合、Kに対するYの主走査位置ずれ量ΔSYKiは以下の式(6)〜(7)によって求めることが出来る。
このように、位置ずれ補正用パターンの主走査方向の位置ずれ量ΔSYKiは、KとYとのパターン間隔の差分から算出することが出来る。上記式(6)〜(8)の計算を他の全ての色で同様に計算することにより、Kに対するYMCの主走査位置ずれ量を算出して補正することが可能である。
そして、以下の式(9)〜(11)により、複数回連続して形成されるパターンの平均値をとることにより、各色の位置ずれ量を求めることが出来る。
以上は、斜線パターンの角度αが45度である場合、即ち、主走査方向の斜線パターンの位置ずれ量が、そのまま副走査方向の位置ずれ量に反映される場合の計算式である。これに対して、上述した角度調整動作によって斜線パターンの角度αが変化している場合、Kに対するYの主走査位置ずれ量ΔSYKiは以下の式(6)〜(7)によって求めることが出来る。
ΔSMKi、ΔSCKiについても、上記式(14)と同様の計算により求めることが可能である。このようなΔSYKi、ΔSMKi、ΔSCKiを上記式(9)〜(11)に適用することにより、角度調整動作によって斜線パターンの角度が調整されている場合であっても、斜線パターンの検知結果に基づいて主走査方向の位置ずれ量を求めることが可能である。
また、図12において説明したように、斜線パターンの角度は、センサ素子170に含まれる発光素子171から照射されるビームのビームスポットの角度に応じたものであるため、基本的にはYMCK各色同一である。しかしながら、例えば色による拡散反射特性の違いにより、YMCK夫々の角度が異なっても良い。その場合、YMCK各色の斜線パターンの角度を夫々αY、αM、αC、αKとすると、Kに対するYの主走査位置ずれ量ΔSYKiは以下の式(15)〜(17)によって求めることが出来る。
式(14)と同様に、Kに対するMの主走査位置ずれ量ΔSMKi及びKに対するCの主走査位置ずれ量ΔSCKiは、以下の式(18)、(19)によって求めることが出来る。
このようなΔSYKi、ΔSMKi、ΔSCKiを上記式(9)〜(11)に適用することにより、角度調整動作によって斜線パターンの角度が調整されており、各色の斜線パターンの角度が異なる場合であっても、斜線パターンの検知結果に基づいて主走査方向の位置ずれ量を求めることが可能である。
以上、説明したように、本実施形態に係る光書き込み装置111によれば、図12に示すように、夫々の角度の異なる斜線パターンを順次形成してパターン検知センサ117に検知させ、その検知信号に係る信号強度に基づいて最適なパターン角度を決定する。そのため、副走査方向のパターン幅を広くすることなく好適な検知信号を得ることが可能となり、画像形成位置を補正するための補正用パターンの描画に係るトナー消費量の低減及びパターンの検知精度の向上を実現することが可能となる。
尚、本実施形態に係る斜線パターン角度の調整機能は、図9において説明した狭幅パターンにおいて特に効果的である。狭幅パターンの場合、主走査方向の位置ずれが発生すると、ビームスポットに対してパターンの主走査方向の位置がずれることとなり、パターンがビームスポットをカバーする範囲が主走査方向に切れ、検知信号の落ち込み量が小さくなる。従って、パターンの角度を合わせることにより検知信号の落ち込み量を確保することは、狭幅パターンの場合に特に有意義である。
しかしながら、図11(b)、(c)において説明したような角度の違いによるビームスポットのカバー範囲の減少は、図6に示すような広幅パターンであっても同様に生じ得る。従って、狭幅パターンのみならず、広幅パターンの場合においても、本実施形態に係る斜線パターンの角度調整機能は有効である。