JP6232036B2 - 電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法に関する。
従来から、複数の絶縁線心を撚り合わせた電力ケーブルが提案されている。例えば、従来の電力ケーブルの一つ(以下「従来ケーブル」という。)は、複数の絶縁線心を撚り合わせて線心撚体を形成した後、その線心撚体を覆うように樹脂層を設け、その樹脂層を覆うようにシースを形成するようになっている。この従来ケーブルの樹脂層は、介在物としての機能と、絶縁線心の撚りを保持する保持体としての機能と、を担っている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3962172号公報
上述した従来ケーブルにおいては複数の絶縁線心を撚り合わせる具体的手法は特定されていないものの、複数の絶縁線心を撚り合わせる際、例えば、線心撚体の製造に関する設備の一部を一方向に回転させることにより、複数の絶縁線心を螺旋状に撚り合わせる(即ち、S撚り又はZ撚りの一方向撚りを行う)場合がある。一方向撚りを行う場合、例えば、撚り合わせ前の絶縁線心が巻き付けられたリール自体を回転させる構造、撚り合わされた線心撚体をリールと共に回転させる構造、又は、弓状の設備構成部品を回転させる構造などを要する。そのため、電力ケーブルの製造装置が大型化する。
更に、従来ケーブルを製造する際には、樹脂層を絶縁線心の周りに押出成形する工程と、樹脂層の周りにシースを押出成形する工程と、の2つの押出成形工程が必要となる。そのため、電力ケーブルの製造工程が煩雑となり、製造効率を高めにくい。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造装置の小型化および製造効率の向上が可能な電力ケーブル、及び、電力ケーブルの製造方法を提供することにある。
前述した目的を達成するために、本発明に係る電力ケーブルは、下記(1)及び(2)を特徴としている。
(1)
複数の絶縁線心及び介在物が交互撚りされた線心撚体と、前記線心撚体の周りに巻きつけられた保持糸と、前記線心撚体及び前記保持糸の周りを覆うシースと、を備えた電力ケーブルであって、
前記介在物は、
紙テープが長手方向に延びる複数の折り目に沿って折り曲がることによって紐状に絞られている紐状紙である、
電力ケーブルであること。
(2)
上記(1)に記載の電力ケーブルにおいて、
前記保持糸は、
前記線心撚体の周りに螺旋状に巻かれており且つ螺旋ピッチ長が前記線心撚体の直径の1〜3倍である、
電力ケーブルであること。
上記(1)の構成の電力ケーブルによれば、介在物が紐状紙であり、線心撚体を保持する撚り保持材が保持糸である。そのため、従来ケーブルのように介在物(樹脂層)を押出成形する必要がない。これにより、樹脂を押出成形する工程を少なくすることができ、電力ケーブルの製造効率を高めることができる。更に、介在物は、単なる紙テープではなく、長手方向に延びる複数の折り目に沿って折り曲がることによって紐状に絞られた紐状紙である。そのため、従来ケーブルの介在物(樹脂)に代えて紙製の介在物(紐状紙)を用いても、絶縁線心と介在物(紐状紙)とを撚り合わせる際に介在物が破断することがない。加えて、絶縁線心および介在物を交互撚りする(即ち、SZ撚りを行う)装置は、一般に、一方向撚りを行う(即ち、S撚り又はZ撚りを行う)装置に比べて小型である。そのため、電力ケーブルの製造装置を小型化できる。
したがって、本構成の電力ケーブルは、製造装置の小型化および製造効率の向上が可能である。
上記(2)の構成の電力ケーブルによれば、保持糸のピッチ(螺旋ピッチ長)を線心撚体の直径の1〜3倍としたことにより、保持糸を過剰に使用することなく線心撚体を十分な保持力で保持できる。具体的には、発明者が行った試験等(詳細は後述される。)によれば、保持糸の螺旋ピッチ長が線心撚体の直径の3倍よりも大きい場合、線心撚体が撚り合わされた状態を保持する力が弱まり、線心撚体のピッチ長(撚り合わせピッチ長)が設計値よりも拡大した状態となる。この場合、過度に撚り合わせピッチ長が拡大すると、設計上の品質を十分に満足できないため好ましくない。一方、保持糸の螺旋ピッチ長が線心撚体の直径の3倍以下である場合、設計上の品質を満たす観点において十分な程度に、撚り合わせピッチ長が保持される。しかし、螺旋ピッチ長を線心撚体の直径の1倍よりも小さくしても、線心撚体の保持性に実質的な向上がない。よって、保持糸の螺旋ピッチ長を線心撚体の1〜3倍とすることにより、線心撚体の保持性の向上と、保持糸の巻き付けに係るコストの低減と、を両立できる。
更に、上述した目的を達成するために、本発明に係る電力ケーブルの製造方法は、下記(3)〜(6)を特徴としている。
(3)
複数の絶縁線心及び介在物が交互撚りされた線心撚体と、前記線心撚体の周りに巻きつけられた保持糸と、前記線心撚体及び前記保持糸の周りを覆うシースと、を備えた電力ケーブルの製造方法であって、
前記介在物として、紙テープを長手方向に延びる複数の折り目に沿って折り曲げることによって紐状に絞り、紐状紙を形成する工程と、
前記複数の絶縁線心と前記介在物とを交互撚りして前記線心撚体を形成する工程と、
前記線心撚体の周りに前記保持糸を巻き付ける工程と、
前記線心撚体及び前記保持糸の周りにシースを形成する工程と、を備えた、
電力ケーブルの製造方法であること。
(4)
上記(3)に記載の電力ケーブルの製造方法において、
前記保持糸を巻き付ける工程において、前記保持糸を前記線心撚体の周りに螺旋状に且つ螺旋ピッチ長が前記線心撚体の直径の1〜3倍であるように巻き付ける、
電力ケーブルの製造方法であること。
(5)
上記(3)又は上記(4)に記載の電力ケーブルの製造方法において、
前記紐状紙を形成する工程が、
前記紙テープを、入口側開口部の開口面積よりも出口側開口部の開口面積が小さい筒形状を有するテープ絞りノズルを通過させることにより、前記紙テープを幅方向に絞った集約紙テープを形成する工程と、
前記集約紙テープを対向する2つのローラの間を通過させることにより、前記紐状紙を形成する工程と、を含む、
電力ケーブルの製造方法であること。
(6)
上記(3)〜上記(5)の何れか一項に記載の電力ケーブルの製造方法において、
前記紙テープが、クラフト紙から形成されている、
電力ケーブルの製造方法であること。
上記(3)の構成の電力ケーブルの製造方法によれば、上記(1)と同様、介在物が紐状紙であり、線心撚体を保持する撚り保持材が保持糸であるため、従来ケーブルのように介在物(樹脂層)を押出成形する必要がない。更に、介在物が単なる紙テープではなく紐状紙であるため、絶縁線心と介在物(紐状紙)とを撚り合わせる際に介在物が破断することがない。加えて、絶縁線心および介在物を交互撚りする(即ち、SZ撚りを行う)ため、電力ケーブルの製造装置を小型化できる。
したがって、本構成の電力ケーブルの製造方法は、製造装置の小型化および製造効率の向上が可能である。
上記(4)の構成の電力ケーブルの製造方法によれば、上記(2)と同様、保持糸を過剰に使用することなく線心撚体を十分な保持力で保持できる。
上記(5)の構成の電力ケーブルの製造方法によれば、電力ケーブルの線心撚体を交互撚り(SZ撚り)にて形成する際に破断することがない十分な強度を有する紐状紙を形成できる。
上記(6)の構成の電力ケーブルの製造方法によれば、介在物の原材料として収縮性に欠けるクラフト紙を用いても、線心撚体の形成過程にて破断し難い介在物を形成できる。具体的には、クラフト紙は、一般に、クレープ紙(皺を形成する加工を施された紙)に比べて安価であるものの、クレープ紙よりも収縮性に欠けるため引張応力下において破断し易い。しかし、本構成の製造方法によれば、クラフト紙を用いて紐状紙(介在物)を形成した後、その紐状紙(介在物)を用いて線心撚体を形成する。そのため、クラフト紙を用いても線心撚体の形成時に介在物が破断することがない。よって、介在物の原価(ひいては電力ケーブルの製造コスト)を低減できる。
本発明によれば、製造装置の小型化および製造効率の向上が可能な電力ケーブル、及び、電力ケーブルの製造方法を提供できる。
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
図1は、本実施形態に係る電力ケーブルにおけるシースの一部を取り除いた状態の側面図である。 図2は、本実施形態に係る電力ケーブルの内部構成を示す図であって、図2(a)は断面図、図2(b)は図2(a)におけるA部拡大図である。 図3は、電力ケーブルを製造する製造装置の概略構成図である。 図4は、電力ケーブルを製造する製造装置を構成する紙テープ加工部の概略構成図である。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法の実施の形態について説明する。
<電力ケーブルの構成>
図1及び図2(a),(b)に示すように、本実施形態に係る電力ケーブル11は、線心撚体12と、保持糸13と、シース14とを備えている。
線心撚体12は、複数の絶縁線心21と、介在物22とから構成されている。絶縁線心21は、導体の外周を絶縁体で被覆した電線である。なお、絶縁線心21は、例えば、2〜4本の電線を含んでいる。本例では、線心撚体12は、3本の絶縁線心21を備えている。介在物22は、紙テープが長手方向に延びる複数の折り目に沿って折り曲がることによって紐状に絞られた紐状紙により、形成されている。なお、介在物22を構成する紐状紙の数(本数)は特に制限されない。
線心撚体12は、複数の絶縁線心21と介在物22とが交互撚りされて(即ち、SZ撚りが行われて)束ねられている。具体的には、線心撚体12は、複数の絶縁線心21と介在物22とを、一方向(S方向)への撚り及び他方向(Z方向)への撚りを交互に繰り返すことによって交互撚りし(SZ撚りを行い)、一つの線心撚体12として束ねられている。これにより、線心撚体12は、長手方向に沿って、S撚り部Ts及びZ撚り部Tzが交互に設けられた状態となっている。本例において、線心撚体12は、S撚り部Ts及びZ撚り部Tzの長手方向の長さが同一であるように設計されている。なお、線心撚体12を構成する一線心(複数の絶縁線心21のうちの一つの線心)が1回転する際に進む長手方向の距離は、「撚り合わせピッチ長」と称呼される。
線心撚体12の周りには、保持糸13が巻き付けられている。保持糸13は、後述する保持糸巻付部44によって線心撚体12に巻き付ける際の遠心力によって作用する張力に耐え得る強度を有しており、例えば、ポリエステルやナイロンなどの耐熱性に優れた高強度繊維から構成されている。保持糸13は、線心撚体12の周りに螺旋状に巻かれており、その螺旋ピッチ長Pが線心撚体12の直径Dの1〜3倍となっている。このように巻かれた保持糸13により、線心撚体12の撚り合わせピッチ長が、線心撚体12の設計上の品質を満たす観点において十分な程度に保持されている(詳細は後述される。)。線心撚体12に巻き付ける保持糸13は、1本でも良く、2本以上でも良い。
線心撚体12及び保持糸13は、その周囲がシース14によって覆われている。シース14は、例えば、塩化ビニルなどの合成樹脂から形成される。シース14は、外周に保持糸13が巻かれた線心撚体12の外周に押出成形されることにより、線心撚体12の周りを覆っている。これにより、線心撚体12及び保持糸13がシース14によって保護されている。
図2(a)のA部の部分拡大図である図2(b)に示すように、絶縁線心21とシース14とは少なくとも一部において密着している。換言すると、絶縁線心21とシース14との間に介在物22が存在しない箇所が存在する。これにより、絶縁線心21とシース14との間に介在物22が存在する場合(例えば、従来ケーブル)に比べ、電力ケーブル11を小径化できる。また、法規制などによって線心撚体12の外径に対するシース14の厚さが定められている場合、線心撚体12の外径が小さくなる分、シース14の外径を小さくできるため、シース14を形成するための材料の使用量(材料コスト、ひいては電力ケーブル11の製造コスト)を低減できる。
<製造装置>
次いで、上記の電力ケーブル11を製造する製造装置について説明する。
図3は、電力ケーブル11を製造する製造装置の概略構成図である。図4は、電力ケーブルを製造する製造装置を構成する紙テープ加工部の概略構成図である。
図3に示すように、電力ケーブル11を製造する製造装置40は、絶縁線心供給部41及び紙テープ加工部42を備えている。絶縁線心供給部41は一般的なリール等であり、絶縁線心供給部41から複数の絶縁線心21が繰り出される。紙テープ加工部42(図4を参照。)から、紙テープが後述するように加工された紐状紙(介在物22)が繰り出される。
絶縁線心供給部41及び紙テープ加工部42の下流側には、SZ撚り部43が設けられている。SZ撚り部43には、絶縁線心供給部41から繰り出される複数の絶縁線心21及び紙テープ加工部42から繰り出される介在物22が送り込まれる。SZ撚り部43は、一般的なSZ撚り機構を有し、複数の絶縁線心21と介在物22とを交互撚り(SZ撚り)にて撚り合わせ、線心撚体12を形成するようになっている。
SZ撚り部43の下流側には、保持糸巻付部44及びシース形成部45が順に設けられている。保持糸巻付部44は、一般的な巻き付け機構を有し、SZ撚り部43から送り込まれる線心撚体12の周りに保持糸13を螺旋状に巻き付ける。シース形成部45は、一般的なシース形成機構を有し、保持糸13が巻き付けられた線心撚体12の周囲を覆うようにシース14を形成する。
紙テープ加工部42についてより詳細に説明すると、図4に示すように、紙テープ加工部42は、複数のリール51と、テープ絞りノズル52と、一対の形成ローラ53a,53bと、を備えている。複数のリール51には、紐状紙(介在物22)の原反である紙テープPTが巻回されており、これらリール51からテープ絞りノズル52へ紙テープPTが繰り出される。リール51は、紙テープPTが繰り出されることで、所定方向(図4の矢印B方向)へ回転される。紙テープPTは、クラフト紙から形成されている。なお、図4では2つの紙テープPTが紐状糸(介在物22)の原反として例示されているが、紙テープPTの数は、2以上であってもよく、紐状糸(介在物22)に求められる強度および柔軟性等を考慮して適宜定められ得る。
テープ絞りノズル52は、入口側開口部52aと、入口側開口部52aよりも開口面積が小さい出口側開口部52bと、を有する筒形状を有している。このような筒形状を有することにより、入口側開口部52aからテープ絞りノズル52に入った紙テープPTは、テープ絞りノズル52の内部にて幅方向に徐々に絞られ(例えば、幅方向に丸まるように潰され)、出口側開口部52bの開口面積に対応する太さの集約紙テープSPTに加工される。
更に、集約紙テープSPTは、形成ローラ53a,53bへ向けて送り出される。形成ローラ53a,53bは、互いに対向する位置に配置されており、それぞれ逆方向(図4中矢印C方向)へ回転する。形成ローラ53a,53bは、テープ絞りノズル52から送り出された集約紙テープSPTを挟持した状態にて回転し、集約紙テープSPTを押し潰すことによって紐状紙(介在物22)を形成する。このように形成される紐状紙(介在物22)は、原反である紙テープPTの長手方向に延びる複数の折り目に沿って折り曲がることによって紐状に絞られた形状を有している。
一対の形成ローラ53a,53bは、上側の形成ローラ53aが、クロムメッキが施された金属製であり、下側の形成ローラ53bが、ウレタンゴム等の樹脂製である。上側の形成ローラ53aは、エアシリンダ等の駆動手段によって昇降される。そして、この上側の形成ローラ53aが下降されることで、テープ絞りノズル52から送り出された集約紙テープSPTが形成ローラ53a,53bで挟み込まれて送り出される。下側の形成ローラ53bが高摩擦材料の樹脂製であるため、集約紙テープSPTの滑りを抑制することができ、介在物22を下流へ円滑に供給できる。なお、集約紙テープSPTの滑りが電力ケーブル11の製造上無視できる程度に軽微であれば、形成ローラ53a,53bは、いずれも金属製とし得る。
そして、紙テープ加工部42から送り出された紐状紙(介在物22)が、SZ撚り部43方向(図4の矢印D方向)へ向かう。
<製造方法>
次いで、上記の製造装置40を用いた電力ケーブル11の製造方法について説明する。
(紙テープ形成工程)
紙テープ加工部42において、複数のリール51から紙テープPTを繰り出し、これらの紙テープPTをテープ絞りノズル52で幅方向に折り曲がるように集約する。さらに、テープ絞りノズル52によって集約した集約紙テープSPTを、形成ローラ53a,53bによって押し潰し、紐状紙からなる介在物22を形成する。
(線心撚体形成工程)
絶縁線心供給部41から繰り出される複数の絶縁線心21と、紙テープ加工部42から繰り出される介在物22と、をSZ撚り部43によって交互撚り(SZ撚り)にて撚り合わせる。これにより、長手方向に沿ってS撚り部Ts及びZ撚り部Tzが交互に設けられた交互撚りの線心撚体12を形成する。その後、SZ撚り部43で形成した交互撚りの線心撚体12の周りに、保持糸巻付部44によって保持糸13を所定の螺旋ピッチ長Pによって螺旋状に巻き付ける。
(シース形成工程)
シース形成部45により、線心撚体12及び保持糸13の周りにシース14を押出成形によって形成する。
上述した紙テープ形成工程、線心撚体形成工程及びシース形成工程を経て、複数の絶縁線心21と介在物22とが交互撚りされた線心撚体12の周りに保持糸13が巻きつけられると共にその周りがシース14で覆われた電力ケーブル11が得られる。
以上に説明したように、本実施形態に係る電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法によれば、介在物22が紐状紙であり、線心撚体12を保持する撚り保持材が保持糸13であるため、従来ケーブルのように樹脂からなる介在物を押出成形する必要がない。そのため、樹脂の押出成形による製造工程を減らすことができ、電力ケーブル11の製造効率を高めることができる。更に、介在物22は、単なる紙テープではなく、長手方向に延びる複数の折り目に沿って折り曲がることによって紐状に絞られた紐状紙であるため、絶縁線心21との撚り合わせの際に破断することがない。加えて、絶縁線心21と介在物22とを交互撚り(SZ撚り)する装置は一般に一方向撚り(S撚り又はZ撚り)する装置に比べて小型であるため、装置を小型化できる。
更に、従来ケーブル(樹脂からなる介在物を押出成形すると共にその外側に樹脂からなるシースを押出成形したケーブル)と比べ、本実施形態の電力ケーブル11は、線心撚体12の絶縁線心21にシース14が直接接触する構造を有する(図2(b)参照)。換言すると、絶縁線心21とシース14との間に樹脂製の介在物が存在しない。よって、電力ケーブル11の小径化を図ることができる。
ここで、発明者は、異なる螺旋ピッチ長Pで線心撚体12に保持糸13を巻回した際の線心撚体12の保持状態を確認する試験を行った。具体的には、線心撚体12の設計上の撚り合わせピッチ長(換言すると、SZ撚り部43から送出された時点での保持糸13の巻き付け前の線心撚体12の撚り合わせピッチ長)と、保持糸13が巻き付けられた後の線心撚体12の実際の撚り合わせピッチ長(換言すると、保持糸巻付部44から送出された線心撚体12の撚り合わせピッチ長)と、に関し、螺旋ピッチ長Pが異なる複数のサンプルについて、直径D、螺旋ピッチ長P、直径Dに対する螺旋ピッチ長Pの比(P/D比)、及び、撚り合わせピッチ長の実際値を測定・算出した。
更に、保持糸13が巻き付けられた後の線心撚体12(ひいては電力ケーブル11)が設計上の品質をどの程度満たしているかの観点から、A〜Cの3段階にて評価した。本評価において、評価Aは設計上の品質を十分に満たしている(例えば、所定の評価値が基準値aを超える)ことを表し、評価Bは設計上の品質を満たしている(例えば、同評価値が基準値a以下であり基準値b以上である)ことを表し、評価Cは品質が若干劣る(例えば、同評価値が基準値b以下である)ことを表す。但し、評価Cの場合であっても、本実施形態に係る電力ケーブル11は製造可能であり、上述した従来ケーブルに対する優位性に問題はない。なお、上記評価値として、例えば、撚り合わせピッチ長の設計値と実際値との相違の小ささ等が用いられ得る。
上述した試験の結果を、以下の表1に示す。
Figure 0006232036
表1に示すように、発明者が行った試験の結果、サンプル番号8〜10のようにP/D比が3よりも大きい場合(即ち、保持糸13の螺旋ピッチ長Pが線心撚体12の直径Dの3倍よりも大きい場合)、撚り合わせピッチ長の設計値に対して実際値がやや大きい状態となることが確認された。この場合、サンプル番号8〜10は、サンプル番号1〜7に比べて品質の点で若干劣ること(評価C)が確認された。
一方、サンプル番号1〜7のようにP/D比が3以下である場合(即ち、保持糸13の螺旋ピッチ長Pを線心撚体12の直径Dの3倍以下とした場合)、撚り合わせピッチ長の設計値と実際値との相違が小さく、設計上の品質を満たす観点において十分な程度に、線心撚体12が撚り合わされた状態が保持されることが確認された。更に、サンプル番号1〜4と、サンプル番号5〜7と、の比較から明らかなように、P/D比が1に近付くほど、撚り合わせピッチ長の設計値と実際値との相違が小さくなり、線心撚体12の保持性が向上することが確認された。しかし、サンプル番号1〜4のようにP/D比を1より小さくしても(即ち、螺旋ピッチ長Pを線心撚体の直径の1倍よりも小さくしても)、線心撚体12の保持性に実質的な向上がないことも確認された。
なお、発明者は、直径Dを表1に示す値(10.0mm)とは異なる値に変更した複数のサンプルについても同様の試験を行った。その結果、表1に示す結果と同様、P/D比が3以下の場合には撚り合わせピッチ長の設計値と実際値との相違が小さく(評価A又は評価Bであり)、P/D比が1より小さい場合には線心撚体12の保持性に実質的な向上がないことが確認された。
以上の試験結果から、保持糸13の螺旋ピッチ長Pを線心撚体12の直径Dの1〜3倍とすることにより、線心撚体12の保持性の向上と、保持糸13の巻き付けに係るコストの低減と、を両立できることが明らかとなった。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
ここで、上述した本発明に係る電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(6)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
複数の絶縁線心(21)及び介在物(22)が交互撚りされた線心撚体(12)と、前記線心撚体の周りに巻きつけられた保持糸(13)と、前記線心撚体及び前記保持糸の周りを覆うシース(14)と、を備えた電力ケーブル(11)であって、
前記介在物(22)は、
紙テープ(PT)が長手方向に延びる複数の折り目に沿って折り曲がることによって紐状に絞られている紐状紙である、
電力ケーブル(11)。
(2)
上記(1)に記載の電力ケーブルにおいて、
前記保持糸(13)は、
前記線心撚体(12)の周りに螺旋状に巻かれており且つ螺旋ピッチ長(P)が前記線心撚体(12)の直径の1〜3倍である、
電力ケーブル(11)。
(3)
複数の絶縁線心(21)及び介在物(22)が交互撚りされた線心撚体(12)と、前記線心撚体の周りに巻きつけられた保持糸(13)と、前記線心撚体及び前記保持糸の周りを覆うシース(14)と、を備えた電力ケーブル(11)の製造方法であって、
前記介在物(22)として、紙テープ(PT)を長手方向に延びる複数の折り目に沿って折り曲げることによって紐状に絞り、紐状紙を形成する工程と、
前記複数の絶縁線心と前記介在物(22)とを交互撚りして前記線心撚体(12)を形成する工程と、
前記線心撚体(12)の周りに前記保持糸(13)を巻き付ける工程と、
前記線心撚体(12)及び前記保持糸(13)の周りにシース(14)を形成する工程と、を備えた、
電力ケーブルの製造方法。
(4)
上記(3)に記載の電力ケーブルの製造方法において、
前記保持糸(13)を巻き付ける工程において、前記保持糸(13)を前記線心撚体(12)の周りに螺旋状に且つ螺旋ピッチ長が前記線心撚体(12)の直径の1〜3倍であるように巻き付ける、
電力ケーブルの製造方法。
(5)
上記(3)又は上記(4)に記載の電力ケーブルの製造方法において、
前記紐状紙を形成する工程が、
前記紙テープ(PT)を、入口側開口部(52a)の開口面積よりも出口側開口部(52b)の開口面積が小さい筒形状を有するテープ絞りノズル(52)を通過させることにより、前記紙テープ(PT)を幅方向に絞った集約紙テープ(SPT)を形成する工程と、
前記集約紙テープ(SPT)を対向する2つのローラの間を通過させることにより、前記紐状紙(22)を形成する工程と、を含む、
電力ケーブルの製造方法。
(6)
上記(3)〜上記(5)の何れか一項に記載の電力ケーブルの製造方法において、
前記紙テープ(PT)が、クラフト紙から形成されている、
電力ケーブルの製造方法。
11 電力ケーブル
12 線心撚体
13 保持糸
14 シース
21 絶縁線心
22 介在物(紐状紙)
D 直径
P 螺旋ピッチ長
PT 紙テープ

Claims (6)

  1. 複数の絶縁線心及び介在物が交互撚りされた線心撚体と、前記線心撚体の周りに巻きつけられた保持糸と、前記線心撚体及び前記保持糸の周りを覆うシースと、を備えた電力ケーブルであって、
    前記介在物は、
    紙テープが長手方向に延びる複数の折り目に沿って折り曲がることによって紐状に絞られている紐状紙である、
    電力ケーブル。
  2. 請求項1に記載の電力ケーブルにおいて、
    前記保持糸は、
    前記線心撚体の周りに螺旋状に巻かれており且つ螺旋ピッチ長が前記線心撚体の直径の1〜3倍である、
    電力ケーブル。
  3. 複数の絶縁線心及び介在物が交互撚りされた線心撚体と、前記線心撚体の周りに巻きつけられた保持糸と、前記線心撚体及び前記保持糸の周りを覆うシースと、を備えた電力ケーブルの製造方法であって、
    前記介在物として、紙テープを長手方向に延びる複数の折り目に沿って折り曲げることによって紐状に絞り、紐状紙を形成する工程と、
    前記複数の絶縁線心と前記介在物とを交互撚りして前記線心撚体を形成する工程と、
    前記線心撚体の周りに前記保持糸を巻き付ける工程と、
    前記線心撚体及び前記保持糸の周りにシースを形成する工程と、を備えた、
    電力ケーブルの製造方法。
  4. 請求項3に記載の電力ケーブルの製造方法において、
    前記保持糸を巻き付ける工程において、前記保持糸を前記線心撚体の周りに螺旋状に且つ螺旋ピッチ長が前記線心撚体の直径の1〜3倍であるように巻き付ける、
    電力ケーブルの製造方法。
  5. 請求項3又は請求項4に記載の電力ケーブルの製造方法において、
    前記紐状紙を形成する工程が、
    前記紙テープを、入口側開口部の開口面積よりも出口側開口部の開口面積が小さい筒形状を有するテープ絞りノズルを通過させることにより、前記紙テープを幅方向に絞った集約紙テープを形成する工程と、
    前記集約紙テープを対向する2つのローラの間を通過させることにより、前記紐状紙を形成する工程と、を含む、
    電力ケーブルの製造方法。
  6. 請求項3〜請求項5の何れか一項に記載の電力ケーブルの製造方法において、
    前記紙テープが、クラフト紙から形成されている、
    電力ケーブルの製造方法。
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