JP6228765B2 - ナノ粒子の製造方法 - Google Patents
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いっぽう、前記した粒子同士の凝集や不純物の問題に対応するため、物理的作用を利用してナノ粒子を生成する方法として、金属の溶液または気相状態の金属に対して高出力のプラズマを発生させて金属ナノ粒子を得る方法が、特許文献9−10に提案されている。また、金属塩溶液に対して高出力の超音波を照射することで金属のナノ粒子を製造する方法が、特許文献11−12に提案されている。更に、超音波を照射することによる金属のナノ粒子の製造方法は、水溶液に超音波を照射することによって生じるソノケミカル反応を利用したものであるが、液体へ超音波を照射することで、その間に生じる急激な撹拌効果や気泡の圧縮、膨張によるキャビテーションの反応を利用した技術が特許文献13に提案されている。
しかし、上記の物理的作用を利用した方法では、高出力のプラズマや超音波を発生させる必要があり、その実施には大きなエネルギーとコストを要するという課題がある。またプラズマや超音波が照射されている部分のみで物理的作用が起こるため、均一な強度のプラズマや超音波を広範囲の領域で発生させることに困難を伴い、工業的規模において、莫大な量の金属ナノ粒子を連続的に製造するのが困難であるという課題がある。また、前記方法では、溶液中で粒子を分散させるための分散剤や保護剤を用いていないため、製造の温度条件等によっては、溶液中で生成された粒子が安定せず、凝集、融合することで大きくなり、金属ナノ粒子を得ることが困難となるという課題もある。
しかし、前記の方法では、中間体である金属水酸化物が凝集して粒子を形成するため、得られる金属酸化物のナノ粒子の粒径が大きくなる問題がある。このため、凝集が抑制された金属酸化物のナノ粒子の製造方法が、特許文献14に提案されている。すなわち、無機酸化物担体の表面に担持された金属水酸化物を、無機酸化物担体と共に亜臨界状態または超臨界状態の水の存在下で水熱反応させる。また、水熱反応させる工程に先だって、無機酸化物担体と、金属酸化物を構成する金属原子を金属イオンとして含む金属塩とを、水を含む分散媒中で混合し、金属イオンを無機酸化物担体の表面に担持させる工程と、得られる分散液と塩基性物質とを混合し、金属イオンを金属水酸化物とする工程とを有することで、凝集が抑制された金属酸化物のナノ粒子を製造する製造方法が提案されている。
しかし、前記した高出力のプラズマや超音波を発生させて金属ナノ粒子を得る方法と同様に、水を亜臨界状態または超臨界状態とするために、大きなエネルギーとコストを要するという課題がある。さらに、中間体である金属水酸化物の凝集を解除させるために、前記した様々な工程が必要になり、製造コストが更に増大するため、工業的規模において、一定量の金属酸化物からなるナノ粒子を製造できたとしても、高価なナノ粒子になる。
本発明は、前記した3つの条件を満たす全く新たな製造方法によって、極めて安価に莫大な量のナノ粒子を製造する技術であって、従来技術におけるナノ粒子の製造に係わる課題を根本的に解決する技術である。
、大気雰囲気で前記有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する第4の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第5の工程とからなり、これら5つの工程を連続して実施することで、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりが製造される製造方法である。
第一の工程は、有機金属化合物を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二の工程は、有機金属化合物の分散液に、有機化合物の粉体の集まりを分散させるだけの処理である。第三の工程は、前記有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四および第五の工程は、前記有機化合物を大気雰囲気で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。
さらに、有機金属化合物は、汎用的な有機酸と金属とからなる化合物であって、合成が容易で安価な工業用薬品である。また、有機金属化合物が熱分解する温度は350℃程度と低い。さらに、有機化合物は、高くても400℃程度の気化点を持つ安価な工業用薬品である。従って、安価な原料を400℃程度の熱処理で、莫大な数のナノ粒子の集まりが製造できるため、極めて安価にナノ粒子の集まりが製造できる。
つまり、本製造方法において、粉体の1モルが気化すると、気体の体積が22.4リットルとして爆発的に膨張するという自然科学上の法則を、粉体の表面における化学物質の熱分解反応に結びつけた全く新規なナノ粒子の集まりを製造する技術である。すなわち、本製造方法は、ナノ粒子の原料となる有機金属化合物を有機化合物の粉体に吸着させ、粉体を昇温し、粉体の表面で有機金属化合物が熱分解し、粉体の表面にナノ粒子の集まりが析出する。この粉体の集まりを気化させ、析出したナノ粒子の集まりが飛散させ、飛散したナノ粒子の集まりを回収することで、莫大な数のナノ粒子を極めて容易に製造できる。
つまり、工業的観点から言えば、安価な材料を用いて、極めて簡単な処理を連続して実施することで、莫大な数のナノ粒子を製造する方法が、ナノ粒子を製造する理想的な工業的手法になる。本製造方法は、この理想的な工業的手法を現実に実現させる手段になる。
すなわち、第一に、大気雰囲気での熱処理で金属ないしは金属酸化物を析出する有機金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する。これによって、有機金属化合物が分散液中で均一に分散する。第二に、この分散液に、前記有機金属化合物が熱分解する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを投入する。これによって、有機化合物の粉体の表面に、均一に分散された有機金属化合物が接触する。第三に、前記有機溶剤を気化させる。これによって、前記有機化合物の粉体の表面に前記有機金属化合物が均一に吸着する。第四に、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気において前記有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する。これによって、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりが、前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に析出する。第五に、前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の集まりを、大気雰囲気において有機化合物の気化点を超える温度に昇温する。これによって、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の体積が爆発的に膨張し、前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に析出していたナノ粒子の集まりが飛散する。この飛散したナノ粒子の集まりを回収することで、莫大な数の金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が製造される。
第一の工程は、有機金属化合物を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二の工程は、有機金属化合物の分散液に有機化合物の粉体の集まりを投入するだけの処理である。第三の工程は、前記有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四および第五の工程は、前記有機化合物の粉体を大気雰囲気で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。従って、特殊な装置による特殊な条件による化学物質の処理や、特殊な環境下での化学物質の反応が一切不要な製造方法である。さらに、有機金属化合物の熱分解によってナノ粒子が析出する際に、ナノ粒子の凝集や粗大化は起こらない。
また、有機金属化合物は、汎用的な有機酸と金属とからなる化合物であり、合成が容易で安価な工業用の化学薬品である。この有機金属化合物は、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点を超えると、有機酸と金属ないしは金属酸化物に分解する。さらに温度が上がると、有機酸が気化熱を奪って気化し、有機酸の気化が完了した瞬間に、金属ないしは金属酸化物が析出する。このため、有機化合物の粉体の表面に吸着した有機金属化合物が熱分解すると、有機化合物の粉体の表面に金属ないしは金属酸化物からなる10−100nmの大きさの幅に収まる粒状のナノ粒子が一斉に析出する。大気雰囲気での熱処理でナノ粒子が析出する温度、つまり、有機金属化合物が熱分解する温度は400℃以下と低い。また、400℃程度で気化する有機化合物も、汎用的な安価な工業用の化学薬品である。従って、安価な有機金属化合物と安価な有機化合物とを原料とし、400℃程度の大気雰囲気での熱処理でナノ粒子の集まりが製造でき、極めて安価にナノ粒子の集まりが製造できる。なお、有機金属化合物の熱分解は、窒素雰囲気より大気雰囲気の方が進むため、有機金属化合物の熱処理は、より低温で熱分解が進む大気雰囲気で行うことが望ましい。
さらに、有機化合物の粉体の表面に析出するナノ粒子の数は、ナノ粒子の大きさに対する有機化合物の粉体の表面積の比率に応じる。例えば、有機化合物の粉体の平均粒径を100μmの球体とし、ナノ粒子の平均粒径を50nmの球体とすると、前記の比率は1600万に及ぶ。さらに、莫大な数からなる有機化合物の粉体を用いるため、極めて莫大な数のナノ粒子が同時に製造できる。例えば、前記した有機化合物の密度が1.25g/cm3であれば、1kgの有機化合物の粉体を用いると、1.53×109個の有機化合物の粉体を熱処理することになり、製造されるナノ粒子の数は2.45×1016個という膨大な数になる。ナノ粒子が50nmの球体の鉄のナノ粒子とすると、12.6gに相当する鉄のナノ粒子が一度に製造できる。
以上に説明したように、本製造方法は、第一に熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する有機金属化合物を有機溶剤に分散し、第二にこの分散液に有機化合物の粉体の集まりを投入し、第三に有機溶剤を気化して粉体の表面に有機金属化合物を吸着させ、第四に粉体を昇温し、粉体の表面で有機金属化合物が熱分解し、粉体の表面にナノ粒子の集まりが析出し、第五に粉体の集まりを気化して、析出したナノ粒子の集まりを飛散させ、飛散したナノ粒子の集まりを回収する5つの処理を連続して実施することで、莫大な数からなるナノ粒子が容易に製造される。このため、7段落で説明した3つの条件を満たしてナノ粒子が製造でき、3段落と4段落とで説明した従来技術の課題が根本的に解決される。
第一の工程は、2種類のカルボン酸金属化合物を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二の工程は、分散液に有機化合物の粉体の集まりを分散させるだけの処理である。第三の工程は、前記有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四および第五の工程は、前記有機化合物を大気雰囲気で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。このような簡単な処理によって、莫大な数の合金のナノ粒子が製造できる。
さらに、有機金属化合物は、汎用的な有機酸と金属とからなる化合物であり、合成が容易で安価な工業用薬品である。2種類の有機金属化合物が同時に熱分解する温度は、350℃程度である。また、有機化合物の沸点も400℃程度の安価な工業用薬品である。従って、安価な原料を400℃程度の熱処理で、莫大な数の合金のナノ粒子が製造できるため、安価に製造できるナノ粒子の領域が広がる。
すなわち、第一に、大気雰囲気での熱処理で金属を析出する有機金属化合物を、同一の有機酸からなる2種類の有機金属化合物で構成し、この2種類の有機金属化合物を有機溶剤に分散して分散液を作成する。第二に、この分散液に、2種類の有機金属化合物が熱分解する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを分散させる。第三に、前記有機溶剤を気化させ、前記有機化合物の粉体の表面に前記2種類の有機金属化合物を均一に吸着させる。第四に、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気において前記2種類の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温し、2種類の有機金属化合物の熱分解によって、2種類の金属が析出し、2種類の金属からなる合金のナノ粒子の集まりが、前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に析出する。第五に、前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の集まりを、大気雰囲気において有機化合物の気化点を超える温度に昇温し、この有機化合物の気化によって有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の体積が爆発的に膨張し、これによって、前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に析出していた合金のナノ粒子の集まりが飛散し、飛散した合金のナノ粒子の集まりを回収することで、莫大な数の合金からなるナノ粒子が製造される。
すなわち、第一の工程は、2種類の有機金属化合物を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二の工程は、2種類の有機金属化合物の分散液に有機化合物の粉体の集まりを投入させるだけの処理である。第三の工程は、前記有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四および第五の工程は、前記有機化合物の粉体を大気雰囲気で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。従って、特殊な装置による特殊な条件による化学物質の処理や、特殊な環境下での化学物質の反応が一切不要な製造方法である。さらに、2種類の有機金属化合物の熱分解によって合金のナノ粒子が析出する際に、ナノ粒子の凝集や粗大化は起こらない。
つまり、有機金属化合物を同一の有機酸からなる2種類の有機金属化合物で構成し、この2種類の有機金属化合物を有機化合物の粉体に吸着させ、この粉体の集まりを大気中で熱処理すると次の現象が起こる。熱処理温度が有機酸の沸点を超えると、2種類の有機金属化合物が同時に有機酸と金属とに分解する。さらに熱処理温度が上がると、有機酸が気化熱を奪って気化し、有機酸の気化が完了した瞬間に、2種類の有機金属化合物のモル濃度に応じた2種類の金属からなる合金のナノ粒子が、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状のナノ粒子として一斉に析出する。つまり、熱分解で析出した2種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、2種類の金属はこの2種類の金属からなる合金のナノ粒子を生成する。合金における2種類の金属の組成割合は、2種類の有機金属化合物のモル濃度に応じるため、合金における金属の組成割合は、自在に変えることができる。
なお、有機金属化合物を同一の有機酸からなる3種類の有機金属化合物で構成すれば、3種類の有機金属化合物のモル濃度に応じて3種類の金属が析出し、これら3種類の金属の析出割合に応じた金属の組成割合からなる3成分の合金のナノ粒子が生成される。
以上に説明した5つの簡単な処理を連続して実施することで、莫大な数からなる合金のナノ粒子の集まりが製造でき、7段落で説明した3つの条件を満たして合金のナノ粒子が製造できる。これによって安価に製造されるナノ粒子の領域が合金の領域に拡大される。
すなわち、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合によって結合するカルボン酸金属化合物は、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸の沸点を超える温度で、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が切れて、カルボン酸と金属とに分解する。さらにカルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、全てのカルボン酸が気化した瞬間に、金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などのカルボン酸金属化合物が挙げられる。なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって複数種類の金属酸化物、例えば、カルボン酸銅がオレイン酸銅の場合は、酸化銅Cu2Oと酸化銅CuOとが同時に析出し、酸化銅Cu2Oと酸化銅CuOとを、銅に還元するための処理費用を要する。特に、酸化銅Cu2Oは、酸素ガスの割合が大気雰囲気よりリッチな雰囲気で一度酸化銅CuOに酸化させた後に、再度、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、処理費用がかさむ。
このようなカルボン酸金属化合物を有機化合物の粉体に吸着させ、有機化合物の粉体の表面でカルボン酸金属化合物が熱分解すると、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状の金属ナノ粒子が一斉に析出する。この際、ナノ粒子の凝集と粗大化とは起こらない。また、カルボン酸金属化合物を同一のカルボン酸からなる2種類の有機金属化合物で構成し、この2種類の有機金属化合物を有機化合物の粉体に吸着させ、この粉体の集まりを大気中で熱処理すると次の現象が起こる。熱処理温度がカルボン酸の沸点を超えると、2種類の有機金属化合物が同時にカルボン酸と金属とに分解する。さらに熱処理温度が上がると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した瞬間に、2種類のカルボン酸金属化合物のモル濃度に応じた2種類の金属からなる合金のナノ粒子が、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状のナノ粒子として一斉に析出する。つまり、熱分解で析出した2種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、2種類の金属はこの2種類の金属からなる合金のナノ粒子を生成する。合金における2種類の金属の組成割合は、2種類の有機金属化合物のモル濃度に応じるため、合金における金属の組成割合は、自在に変えることができる。
さらに、カルボン酸金属化合物は、合成が容易で安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を、無機金属化合物と反応させることで、カルボン酸金属化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であるため、大気雰囲気において400℃以下の低い熱処理温度で金属が析出する。このため、熱処理費用が安価で済む。従って、安価な工業用の薬品を用いて、安価な熱処理費用で莫大な数のナノ粒子が製造できるため、カルボン酸金属化合物は、安価なナノ粒子を製造する原料になる。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、最も大きいイオン半径を有する金属イオンに配位子イオンである酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンと配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した瞬間に金属酸化物が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。
このようなカルボン酸金属化合物を有機化合物の粉体に吸着させ、有機化合物の粉体の表面でカルボン酸金属化合物を熱分解させると、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状の金属酸化物のナノ粒子が有機化合物の表面に一斉に析出する。この際、ナノ粒子の凝集と粗大化は起こらない。
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、いずれも容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、カルボン酸金属化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であるため、大気雰囲気においては350℃程度の比較的低い熱処理温度で金属酸化物のナノ粒子が析出する。
いっぽう、有機金属化合物の一種であるアセチルアセトン金属化合物は、アセチルアセトンC 5 H 8 O 2 の共役塩基であるアセチルアセトナートC 5 H 7 O 2 − を構成する酸素イオンが金属イオンに近づいて配位結合し、アセチルアセトナートが六員環を形成する錯体である。従って、アセチルアセトンの沸点を超えると、酸素イオンが金属イオンの反対側で結合するイオンとの結合部位が最初に切れる。これによって、金属イオンが酸素イオンと結合した金属酸化物とアセチルアセトンに分解し、アセチルアセトンの気化が完了すると、金属酸化物が析出する。
このような性質持つアセチルアセトン金属化合物を有機化合物の粉体に吸着させ、有機化合物の粉体の表面でアセチルアセトン金属化合物を熱分解すると、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状の金属酸化物のナノ粒子が一斉に有機化合物の表面に析出する。この際、ナノ粒子の凝集と粗大化は起こらない。
また、アセチルアセトン金属化合物、例えば、アセチルアセトン鉄は、塩化鉄の水溶液を沸騰水中に滴下さして水酸化鉄Fe(OH) 3 のコロイド液を作製し、この水酸化鉄の1モルとアセチルアセトンCH 3 C(O)CH 2 C(O)CH 3 の3モルとを反応させることで得られる。このように、アセチルアセトン金属化合物も合成が容易な有機金属化合物である。なおアセチルアセトンは、酢酸イソプロペ二ルCH 2 (CH 3 )COC(O)Meの熱転位で工業的に生産される有機物で、前記したカルボン酸に比べると高価な有機物であるが、アセチルアセトンの沸点が140℃と低く、アセチルアセトン金属化合物は熱分解温度が低い有機金属化合物であるため、前記したカルボン酸金属化合物より200℃程度低い温度で金属酸化物のナノ粒子の集まりが製造できる。
以上に説明したように、本製造方法によれば、7段落で説明した3つの条件を満たして金属酸化物のナノ粒子が製造でき、3段落と4段落とで説明した従来技術の課題を根本的に解決する。
また、芳香族カルボン酸に属するC 6 H 4 (COOH) 2 で化学式が示されるテレフタル酸は、大気中で融点が402℃で、融点を超えると昇華する。カルボン酸金属化合物、ないしは2種類のカルボン酸金属化合物のメタノールないしはn−ブタノール分散液に、テレフタル酸の粉体を分散し、メタノールないしはn−ブタノールを気化すれば、テレフタル酸の粉体の表面にカルボン酸金属化合物、ないしは2種類のカルボン酸金属化合物が吸着する。さらに、カルボン酸金属化合物の熱分解温度まで昇温すると、テレフタル酸の粉体の表面に、金属ないしは金属酸化物ないしは合金からなるいずれかのナノ粒子の集まりが一斉に析出する。さらにテレフタル酸の融点以上に昇温すると、テレフタル酸が昇華してナノ粒子の集まりが飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、莫大な数のナノ粒子が製造される。なお、テレフタル酸は、エチレングリコールと反応させてポリエチレンテレフタレートを合成する原料となり、ペットボトルや衣料の原材料となる安価な工業用の化学薬品である。
さらに、多環芳香族炭化水素、例えば、C 14 H 10 で化学式が示されるアントラセンは、ベンゼン環が3個縮合したアセン系多環芳香族炭化水素であり、融点が218℃で、気化点が342℃である。カルボン酸金属化合物、ないしは2種類のカルボン酸金属化合物のメタノールないしはn−ブタノール分散液に、アントラセンの粉体を分散し、メタノールないしはn−ブタノールを気化すれば、アントラセンの粉体の表面にカルボン酸金属化合物、ないしは2種類のカルボン酸金属化合物が吸着する。さらに、カルボン酸金属化合物の熱分解温度まで昇温すると、カルボン酸金属化合物、ないしは2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解し、金属ないしは金属酸化物ないしは合金からなるいずれかのナノ粒子の集まりが一斉に析出する。さらにアントラセンの気化点に昇温すると、アントラセンが気化してナノ粒子の集まりが飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、莫大な数のナノ粒子が製造される。なお、アントラセンは、コールタールから分離精製することで工業的に生産され、カーボンブラックの原料として用いられる安価な工業用の化学薬品である。
以上に説明したように、飽和脂肪酸ないしは芳香族カルボン酸ないしは多環芳香族炭化水素からなる有機化合物の中に、メタノールないしはn−ブタノールの沸点より高い融点を持つ有機化合物がある。こうした有機化合物の粉体の表面に、カルボン酸金属化合物を吸着させることができる。吸着したカルボン酸金属化合物を熱分解させると、これらの有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に、金属ないしは金属酸化物ないしは合金からなるいずれかのナノ粒子の集まりが析出する。さらに、有機化合物の気化点ないしは昇華点が、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より高ければ、有機化合物を気化させると、有機化合物の体積が爆発的に膨張し、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に析出していたナノ粒子の集まりが飛散し、飛散したナノ粒子を回収することで、莫大な数のナノ粒子が製造できる。このような簡単な処理を連続して実施して莫大な数のナノ粒子が製造でき、有機化合物は安価なナノ粒子を製造するうえで重要な役割を担う。
第一の工程は、無機金属化合物を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二の工程は、無機金属化合物の分散液に有機化合物の粉体を分散させるだけの処理である。第三の工程は、前記有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四および第五の工程は、前記有機化合物を熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。
さらに、金属錯体が還元する温度は200℃程度である。また、有機化合物の気化点も300℃程度である。従って、300℃程度の熱処理で莫大な数の付加価値の高い金属のナノ粒子が製造できるため、安価に製造できる金属のナノ粒子の領域が広がる。
つまり、本製造方法によれば、次に説明する5つ簡単な処理を連続して実施することによって、莫大な数の金属からなるナノ粒子が製造できる。なお、無機金属化合物が還元雰囲気の熱処理で析出する金属のナノ粒子には、9段落で説明した有機金属化合物の大気雰囲気の熱処理で析出する金属のナノ粒子とは異なる金属元素からなる金属のナノ粒子が製造できる。一例として白金族の金属のナノ粒子がある。これによって、製造できる金属のナノ粒子の領域が拡大される。なお、無機金属化合物は、9段落の有機金属化合物より高価な工業用の化学薬品である。このため、有機金属化合物の熱分解では析出しない付加価値の高い金属のナノ粒子を析出させる原料として用いるのが良い。
すなわち、第一に、還元雰囲気での熱処理で金属を析出する無機金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する。これによって、無機金属化合物が分散液中で均一に分散する。第二に、この分散液に、前記無機金属化合物が還元する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを分散させる。これによって、有機化合物の粉体の表面に、均一に分散された無機金属化合物が接触する。第三に前記有機溶剤を気化させる。これによって、前記有機化合物の粉体の表面に前記無機金属化合物が均一に吸着する。第四に、前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記無機金属化合物が還元する温度に昇温する。これによって、金属からなるナノ粒子の集まりが、前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に析出する。第五に、前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の集まりを、大気雰囲気で有機化合物の気化点を超える温度に昇温する。これによって、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の体積が爆発的に膨張し、前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に析出していたナノ粒子の集まりが飛散する。飛散したナノ粒子の集まりを回収することで、莫大な数の金属のナノ粒子が製造される。
つまり、第一の工程は、無機金属化合物を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二の工程は、無機金属化合物の分散液に有機化合物の粉体の集まりを分散させるだけの処理である。第三の工程は、前記有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四および第五の工程は、前記有機化合物の粉体を熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。このため、特殊な装置による特殊な条件による化学物質の処理や、特殊な環境下での化学物質の反応が一切不要な製造方法である。また、無機金属化合物の還元によって金属のナノ粒子が析出する際に、金属のナノ粒子の凝集や粗大化は起こらない。
無機金属化合物は、還元雰囲気で熱処理すると無機物と金属とに分解される。さらに、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物の気化が完了した瞬間に金属が析出する。このため、有機化合物の粉体の表面に吸着させた無機金属化合物が還元すると、有機化合物の粉体の表面に、金属からなる10−100nmの大きさの幅に収まる粒状のナノ粒子が一斉に析出する。なお、無機金属化合物は、9段落で説明した有機金属化合物より高価な工業用の化学薬品であるが、有機金属化合物の熱分解では析出しない付加価値の高い金属のナノ粒子を析出させる原料として用いるのが良い。これによって、製造できる金属のナノ粒子の領域が広がる。また、無機金属化合物は、200℃程度の温度で還元されるため、比較的低い温度での還元処理で莫大な数のナノ粒子の集まりが製造できる。
以上に説明したように、本製造方法によれば、7段落で説明した3つの条件を満たしてナノ粒子が製造でき、3段落と4段落とで説明した従来技術の課題を根本的に解決する。
つまり、第一の工程は、2種類の金属錯体を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二の工程は、分散液に有機化合物の粉体の集まりを分散させるだけの処理である。第三の工程は、前記有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四および第五の工程は、前記有機化合物を熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。
さらに、金属錯体が還元する温度は200℃程度である。また、有機化合物の気化点も300℃程度である。従って、300℃程度の熱処理で莫大な数の付加価値の高い合金のナノ粒子が製造できるため、安価に製造できるナノ粒子の領域が格段に広がる。
つまり、本製造方法によれば、次に説明する5つの簡単な処理を連続して実施することで、合金のナノ粒子の集まりが製造できる。なお、2種類の無機金属化合物が還元することで析出する合金のナノ粒子は、11段落で説明した2種類の有機金属化合物が熱分解することで析出する合金のナノ粒子とは異なる組成からなる合金のナノ粒子が製造できる。一例として白金族の金属からなる合金のナノ粒子がある。これによって、製造できる合金のナノ粒子の領域が拡大する。また、無機金属化合物の還元処理で析出する合金のナノ粒子は、有機金属化合物の熱分解で析出する合金のナノ粒子より付加価値の高い合金のナノ粒子が製造できる。
すなわち、第一に、同一の無機物が異なる金属イオンに共有結合する2種類の無機金属化合物を有機溶剤に分散して分散液を作成する。第二に、この分散液に、前記2種類の無機金属化合物が還元する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを分散させる。第三に、前記有機溶剤を気化させ、前記有機化合物の粉体の表面に、前記2種類の無機金属化合物を均一に吸着させる。第四に、前記有機化合物の粉体の集まりを、前記2種類の無機金属化合物が還元する温度に昇温し、2種類の無機金属化合物を還元する。この際、2種類の金属が、各々の無機金属化合物のモル濃度に応じて析出し、2種類の金属からなる合金のナノ粒子が、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状のナノ粒子として前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に一斉に析出する。第五に、前記有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の集まりを、有機化合物の気化点を超える温度に昇温し、該有機化合物の気化によって有機化合物の体積が爆発的に膨張し、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に析出していた合金のナノ粒子の集まりが飛散し、飛散した合金のナノ粒子の集まりを回収することで、莫大な数からなる合金のナノ粒子が製造される。いずれも極めて簡単な処理である。合金における2種類の金属の組成割合は、2種類の無機金属化合物のモル濃度に応じるため、合金における金属の組成割合は、自在に変えることができる。なお、無機金属化合物を同一の無機物からなる3種類の無機金属化合物で構成すれば、3種類の無機金属化合物のモル濃度に応じて3種類の金属が析出し、これら3種類の金属の析出割合からなる合金のナノ粒子が生成される。
すなわち、2種類の無機金属化合物は、同一の無機物が異なる金属イオンに共有結合する分子構造の特徴を持つため、2種類の無機金属化合物を還元雰囲気で熱処理すると、2種類の無機金属化合物が同時に無機物と金属とに分解され、無機物の気化が完了した瞬間に、各々の無機金属化合物のモル濃度に応じた2種類の金属が析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、2種類の金属からなる合金が生成され、合金からなるナノ粒子の集まりが、有機化合物の粉体ないしは融解した表面に析出する。この有機化合物を気化させると、析出していたナノ粒子の集まりが飛散し、飛散したナノ粒子の集まりを回収して、莫大な数の合金のナノ粒子が製造される。
なお、無機金属化合物は、有機金属化合物より高価な工業用薬品であるが、有機金属化合物の熱分解では析出しない付加価値の高い合金のナノ粒子を析出させる原料として用いるのが良い。これによって、製造できる合金のナノ粒子の領域が拡大される。例えば、2種類の無機金属化合物の一方が、白金族元素の金属からなる無機金属化合物であれば、触媒作用を持つ合金のナノ粒子が製造される。さらに、ナノ粒子は比表面積が大きいため効率の良い触媒作用を発揮する。また、2種類の無機金属化合物は、有機金属化合物が熱分解する温度より低い200℃程度で同時に還元される。このため、還元雰囲気の比較的低い温度での熱処理で、付加価値の高い合金のナノ粒子の集まりが製造できる。
以上に説明したように、本製造方法によれば、7段落で説明した3つの条件を満たしてナノ粒子が製造でき、3段落と4段落とで説明した従来技術の課題を根本的に解決する。
すなわち、金属錯体を構成するイオンの中で金属イオンが最も大きく、金属イオンと配位子との距離が最も長い。このため、金属錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解される。さらに温度が上がると無機物が気化熱を奪って気化し、全ての無機物が気化した瞬間に、金属が析出する。あるいは、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する2種類の金属錯体を還元雰囲気で熱処理すると、2種類の金属錯体が同時に還元され、2種類の金属錯体のモル濃度に応じて2種類の金属が析出し、2種類の金属からなる合金が生成される。
このような性質持つ金属錯体を有機化合物の粉体に吸着させ、有機化合物の粉体の表面で金属錯体を還元すると、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状の金属ナノ粒子が有機化合物の表面に一斉に析出する。また、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する2種類の金属錯体を有機化合物の粉体に吸着させ、有機化合物の粉体の表面で2種類の金属錯体を還元すると、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状の合金のナノ粒子が有機化合物の表面一斉に析出する。この際、ナノ粒子の凝集と粗大化は起こらない。
このような金属錯体として、アンモニアNH 3 が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン錯体、塩素イオンCl − が、ないしは塩素イオンCl − とアンモニアNH 3 とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ錯体、シアノ基CN − が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ錯体、臭素イオンBr − が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ錯体、沃素イオンI − が配位子イオンとなって金属イオンと配位結合するヨード錯体などの様々な金属錯体が挙げられる。これら金属錯体の中で、アンミン錯体とクロロ錯体は、他の金属錯体に比べて合成が相対的に容易であり、相対的に安価な金属錯体である。
なお、金属錯体は、13段落で説明したカルボン酸金属化合物より高価な工業用薬品であるが、カルボン酸金属化合物の熱分解では析出しない付加価値の高い金属ないしは合金のナノ粒子の集まりが製造できる。例えば、白金族の金属ないしは白金族の金属からなる合金のナノ粒子がある。さらに、金属錯体の還元処理温度は、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より200℃程度低い。従って、金属錯体は、付加価値の高い金属ないしは合金を安価に製造する原料になる。
また、芳香族カルボン酸、例えば、C6H4(COOH)2で化学式が示されるフタル酸は、融点が210℃で、融点を超えると加水分解して無水フタル酸になる。さらにC6H4(CO)2Oで化学式が示される無水フタル酸は、融点が131℃で沸点が284℃である昇華性の物質である。金属錯体、ないしは2種類の金属錯体のメタノールないしはn−ブタノール分散液に、フタル酸ないしは無水フタル酸の粉体を分散し、メタノールないしはn−ブタノールを気化すれば、フタル酸ないしは無水フタル酸の粉体の表面に金属錯体、ないしは2種類の金属錯体が吸着する。さらに、金属錯体の還元温度まで昇温すると、フタル酸ないしは無水フタル酸の粉体の表面に、金属ないしは合金のナノ粒子の集まりが一斉に析出する。さらに、フタル酸ないしは無水フタル酸を気化させれば、フタル酸ないしは無水フタル酸の粉体の表面に析出していたナノ粒子の集まりが飛散し、飛散したナノ粒子を回収して莫大な数の金属ないしは合金のナノ粒子が製造される。なおフタル酸ないしは無水フタル酸は、ポリエステル樹脂や可塑剤の原料として大量に製造されている安価な工業用の化学薬品である。
さらに、芳香族カルボン酸に属するC6H4(COOH)2で化学式が示されるテレフタル酸は、大気中で融点が402℃であり、融点を超えると昇華する。金属錯体、ないしは2種類の金属錯体のメタノールないしはn−ブタノール分散液に、テレフタル酸の粉体を分散し、メタノールないしはn−ブタノールを気化すれば、テレフタル酸の粉体の表面に金属錯体、ないしは2種類の金属錯体が吸着する。さらに、金属錯体の還元温度まで昇温すると、テレフタル酸の粉体の表面に、金属ないしは合金のナノ粒子の集まりが一斉に析出する。さらにテレフタル酸の融点以上に昇温すると、テレフタル酸が昇華してナノ粒子の集まりが飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、莫大な数のナノ粒子が製造される。テレフタル酸は、エチレングリコールと反応させてポリエチレンテレフタレートを合成する原料となり、ペットボトルや衣料の原材料となる安価な工業用の化学薬品である。
また、化学式がC6H5COOHで示される安息香酸は、融点が122℃で気化点が249℃である芳香族カルボン酸である。金属錯体、ないしは2種類の金属錯体のメタノールないしはn−ブタノール分散液に、安息香酸の粉体を分散し、メタノールないしはn−ブタノールを気化すれば、安息香酸の粉体の表面に金属錯体、ないしは2種類の金属錯体が吸着する。さらに、金属錯体の還元温度まで昇温すると、安息香酸の融解した粉体の表面に、金属ないしは合金のナノ粒子の集まりが一斉に析出する。さらに、安息香酸の気化点以上に昇温すると、安息香酸が気化してナノ粒子の集まりが飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、莫大な数の金属ないしは合金のナノ粒子が製造される。なお、安息香酸は、フタル酸やトルエンから合成される安価な工業用の化学物質である。
さらに、多環芳香族炭化水素、例えば、C14H10で化学式が示されるアントラセンは、ベンゼン環が3個縮合したアセン系多環芳香族炭化水素であって、融点が218℃であり、気化点が342℃である。金属錯体、ないしは2種類の金属錯体のメタノールないしはn−ブタノール分散液に、アントラセンの粉体を分散し、メタノールないしはn−ブタノールを気化すれば、アントラセンの粉体の表面に金属錯体、ないしは2種類の金属錯体が吸着する。さらに、金属錯体の還元温度まで昇温すると、金属錯体、ないしは2種類の金属錯体が還元し、金属ないしは合金のナノ粒子の集まりが一斉に析出する。さらにアントラセンの気化点に昇温すると、アントラセンが気化してナノ粒子の集まりが飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、莫大な数のナノ粒子が製造される。なおアントラセンは、コールタールから分離精製することで工業的に生産され、カーボンブラックの原料として用いられる安価な工業用の化学薬品である。
以上に説明したように、飽和脂肪酸ないしは芳香族カルボン酸ないしは多環芳香族炭化水素からなる有機化合物の中には、メタノールないしはn−ブタノールの沸点より高い融点を持つ有機化合物がある。こうした有機化合物の粉体の表面に、金属錯体を吸着させることができる。吸着した金属錯体を還元させると、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に、金属ないしは合金のナノ粒子の集まりが析出する。さらに、有機化合物の気化点ないしは昇華点が、金属錯体の還元温度より高ければ、有機化合物を気化させると、有機化合物の体積が爆発的に膨張し、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に析出していたナノ粒子の集まりが飛散し、飛散したナノ粒子を回収することで、莫大な数のナノ粒子が製造できる。このような簡単な処理を連続して実施して莫大な数のナノ粒子が製造できるため、有機化合物は安価なナノ粒子を製造するうえで重要な役割を担う。
第一の工程は、2種類のカルボン酸金属化合物を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二の工程は、カルボン酸金属化合物の分散液に有機化合物の粉体の集まりを分散させるだけの処理である。第三の工程は、前記有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四と第五と第六の工程は、いずれも前記有機化合物を大気雰囲気で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。
さらに、カルボン酸金属化合物は汎用的なカルボン酸と金属とからなる化合物で、合成が容易で安価な工業用薬品である。また、カルボン酸金属化合物の熱分解温度は350℃程度と低い。また、400℃程度の沸点を持つ有機化合物も、汎用的な安価な工業用薬品である。従って、安価な原料を400℃程度の大気雰囲気の熱処理で、莫大な数の2種類のナノ粒子の集まりが製造でき、安価に製造されるナノ粒子の領域がさらに広がる。
第一の工程と第五の工程は、カルボン酸金属化合物ないしは金属錯体を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二の工程と第六の工程は、分散液に有機化合物の粉体を分散させるだけの処理である。第三の工程と第七の工程は、有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四と第八と第九の工程は、有機化合物を熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。このような簡単な処理を連続して実施することで、2種類の金属のナノ粒子の集まりが製造できる。
第一の工程は、2種類の金属錯体を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二の工程は、金属錯体の分散液に有機化合物の粉体を分散させるだけの処理である。第三の工程は、前記有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四と第五と第六の工程は、前記有機化合物を熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。
また、金属のナノ粒子が析出する温度、つまり金属錯体が還元される温度は200℃程度である。さらに、有機化合物の沸点も300℃程度である。従って、300℃程度の熱処理で莫大な数の付加価値の高い2種類の金属のナノ粒子が製造できるため、安価に製造できる2種類の金属のナノ粒子の組み合わせが格段に広がる。
第一と第五工程は、カルボン酸金属化合物を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二と第六工程は、カルボン酸金属化合物の分散液に有機化合物の粉体の集まりを分散させるだけの処理である。第三と第七工程は、有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四と第八と第九工程は、いずれも有機化合物の集まりを大気雰囲気で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理であり、このような処理を連続して実施することによって、合金と金属ないしは金属酸化物からなる2種類のナノ粒子の集まりが安価に製造でき、これによって、安価に製造できる2種類のナノ粒子の組み合わせがさらに広がる。
第一と第五工程とは、カルボン酸金属化合物ないしは金属錯体を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二と第六工程とは、カルボン酸金属化合物ないしは金属錯体の分散液に有機化合物の粉体の集まりを分散させるだけの処理である。第三と第七工程とは、有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四と第八と第九工程とは、いずれも前記有機化合物の集まりを大気雰囲気ないしは還元雰囲気で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理であり、このような処理を連続して実施することで、合金と金属ないしは金属酸化物からなる2種類のナノ粒子の集まり製造が安価にでき、安価に製造できる2種類のナノ粒子の組み合わせがさらに広がる。
第一と第五工程とは、カルボン酸金属化合物ないしは金属錯体を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二と第六工程とは、分散液に、有機化合物の粉体の集まりを分散させるだけの処理である。第三と第七工程とは、有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四と第八と第九工程とは、いずれも前記有機化合物の集まりを熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理であり、これによって、2種類の合金のナノ粒子の集まりが安価に製造でき、安価に製造できる2種類のナノ粒子の組み合わせがさらに広がる。
、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する第二の2種類の金属錯体を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第五の工程と、前記分散液に、第四の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを投入する第六の工程と、前記分散液を、第五の工程で用いた前記有機溶剤の沸点に昇温する第七の工程と、第六の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記第二の2種類の金属錯体が還元する温度に昇温する第八の工程と、前記有機化合物の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第九の工程からなり、これら9つの工程を連続して実施することで
、2種類の合金からなるナノ粒子の集まりを製造する第二の製造方法である。
第一と第五工程は、2種類の金属錯体を有機溶剤に分散させるだけの処理である。第二と第六工程は、金属錯体の分散液に、有機化合物の粉体の集まりを分散させるだけの処理である。第三と第七工程は、有機溶剤を気化させるだけの処理である。第四と第八と第九工程は、いずれも前記有機化合物の集まりを熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理であり、これらの処理を連続して実施することで、2種類の合金のナノ粒子の集まりが製造でき、安価に製造できる2種類の合金のナノ粒子の組み合わせがさらに広がる。
本実施形態は、金属のナノ粒子を析出する原料に係わる第一の実施形態である。本発明におけるナノ粒子を製造する原理は、9段落で説明したように、第一にナノ粒子の原料を粉体の表面に吸着させる。第二に吸着した原料を、粉体の表面でナノ粒子の集まりに変化させる。第三に粉体の集まりを気化させる。この粉体の集まりが気化する際に、粉体の1モルが体積22.4リットルに相当する気体に爆発的に膨張するため、粉体の表面に析出していたナノ粒子の集まりが飛散し、飛散したナノ粒子を回収することで、莫大な数のナノ粒子を製造する。従って、金属のナノ粒子の原料は、第一に粉体の表面に吸着し、第二に粉体の表面でナノ粒子に変化しなければならない。
ナノ粒子の原料が粉体に吸着するには、ナノ粒子の原料が液相化され、液相化された原料に粉体の集まりを投入し、液相化された原料における液体を蒸発させると、ナノ粒子の原料が粉体の表面に吸着する。従って、ナノ粒子の原料は液相化されなければならない。
ここで、金属のナノ粒子の原料について、液相化できる金属化合物の実施形態を説明する。ここでは金属を鉄とし、鉄化合物を例として説明する。塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄などの無機鉄化合物は、液相化された無機鉄化合物中に鉄イオンが溶出してしまい、多くの鉄イオンが鉄のナノ粒子の析出に参加できなくなる。従って、鉄化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質を持つことが必要になる。また、アルコールなどの汎用的な有機溶剤に分散できれば、鉄化合物が溶剤中に均一に分散し、この分散液に鉄化合物の粉体を投入し、アルコールを気化させれば、粉体の表面に鉄化合物が均一に吸着する。酸化鉄、水酸化鉄、炭酸鉄などの無機鉄化合物はアルコール類に分散しない。このため、粉体の表面に吸着する鉄化合物は、無機鉄化合物ではなく有機鉄化合物が望ましい。
次に、有機鉄化合物は粉体の表面で鉄のナノ粒子の集まりに変化しなければならない。つまり、有機鉄化合物から鉄が生成される化学反応が、粉体の表面で起こる必要がある。有機鉄化合物から鉄が生成される化学反応の中で、最も簡単な処理による化学反応の一つに熱分解反応がある。つまり、有機鉄化合物を昇温するだけで、有機鉄化合物が熱分解して鉄が析出する。さらに、有機鉄化合物の合成が容易であれば、有機鉄化合物を安価に製造できる。こうした性質を兼ね備える有機鉄化合物に、カルボン酸鉄化合物がある。つまり、カルボン酸鉄化合物を構成するイオンの中で、最も大きいイオンは鉄イオンである。従って、カルボン酸鉄化合物におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、鉄イオンと共有結合すれば、鉄イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの距離が、カルボン酸鉄化合物の中で最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸鉄化合物を昇温させると、カルボン酸鉄化合物を構成するカルボン酸の沸点において、カルボン酸と鉄とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した瞬間に鉄が析出する。また、カルボン酸鉄化合物は合成が容易で、安価な有機鉄化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸鉄などの無機鉄化合物と反応させると、カルボン酸鉄化合物が生成される。カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄化合物が熱分解すると、複数種類の鉄の酸化物からなるナノ粒子が析出する。以下に、カルボン酸鉄化合物の実施形態を説明する。なお、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となって鉄イオンに近づき、酸素イオンが鉄イオンに配位結合するカルボン酸鉄化合物は、鉄イオンと酸素イオンとの距離が短くなるため、熱分解によって酸化鉄を生成する。この詳細は、実施形態3で説明する。
カルボン酸鉄化合物の組成式は、RCOO−Fe−COORで表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCmHnである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸鉄化合物を構成する物質の中で、組成式の中央に存在する鉄イオンFe2+が最も大きいイオンになる。従って、鉄イオンFe2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合する場合は、鉄イオンFe2+と酸素イオンO−との距離が最大になる。この理由は、鉄イオンFe2+の共有結合半径は116pmであり、酸素イオンO−の共有結合半径は63pmであり、炭素原子の共有結合半径は75pmであり、酸素原子の共有結合半径は57pmであることによる。このため、鉄イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸鉄化合物は、カルボン酸の沸点において、結合距離が最も長い鉄イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に切断され、鉄とカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸鉄を構成するカルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した瞬間に鉄が析出する。こうしたカルボン酸鉄化合物として、オクチル酸鉄(2−エチルヘキサン酸鉄ともいう)、ラウリン酸鉄(ドデカン酸鉄ともいう)、ステアリン酸鉄(オクタデカン酸鉄ともいう)などがある。
さらに、飽和脂肪酸で構成されるカルボン酸鉄化合物について、飽和脂肪酸の沸点が相対的に低ければ、カルボン酸鉄化合物は相対的に低い温度で熱分解し、鉄のナノ粒子の製造に関わる熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。従って、飽和脂肪酸の分子量が相対的に小さい飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄は、熱分解温度が相対的に低くなるので、鉄のナノ粒子の原料として望ましい。
また、飽和脂肪酸が分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸である場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点が相対的に低くなる。これによって、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄は、相対的に低い温度で熱分解温度する。さらに、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄化合物も極性を持ち、アルコールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。すなわち、オクチル酸は構造式がCH3(CH2)3CH(C2H5)COOHで示され、CHでCH3(CH2)3とC2H5とのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、前記したラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、鉄のナノ粒子の原料として、オクチル酸鉄が望ましい。
以上に説明したように、金属のナノ粒子の原料は、液相化できる有機金属化合物が望ましい。さらに、有機金属化合物の中で、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物が望ましい。さらに、飽和脂肪酸からなるカルボン酸で構成されるカルボン酸金属化合物が望ましい。さらに、直鎖が短い飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物が望ましい。さらに、分岐鎖構造を有する直鎖が短い飽和脂肪酸からなるオクチル酸金属化合物が望ましい。
なお、オクチル酸鉄は商品化されていないため、次の製法で新たに合成した。組成式がC7H15COOHで表されるオクチル酸(協和発酵ケミカル株式会社の製品)を水酸化ナトリウムNaOH(試薬一級品)の水溶液と反応させると、オクチル酸のカルボキシル基COOHを構成する水素が電離し、電離したカルボキシル基にナトリウムが結合し、C7H15COONaの組成式で表されるオクチル酸ナトリウムが析出する。このオクチル酸ナトリウムを水洗して、オクチル酸ナトリウムを精製する。次に、オクチル酸ナトリウムを硫酸鉄FeSO4(試薬一級品)の水溶液と反応させると、組成式がC7H15COO−Fe−C7H15COOで表されるオクチル酸鉄が析出する。析出したオクチル酸鉄を水洗して、オクチル酸鉄を精製する。合成したオクチル酸鉄は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了して鉄が析出し、メタノールやn−ブタノールなどに10重量%まで分散する。
いっぽう、複数種類のカルボン酸金属化合物を原料として用い、第一の金属のナノ粒子と第二の金属のナノ粒子とからなる複数種類の金属のナノ粒子の集まりを製造する場合はこの限りではない。つまり、第二の金属のナノ粒子の原料である第二のカルボン酸金属化合物は、第一の金属のナノ粒子の原料である第一のカルボン酸金属化合物より、熱分解温度が高いことが必要になる。このため、第二のカルボン酸金属化合物の熱分解温度は、第一のカルボン酸金属化合物の熱分解温度との間で温度差が必要になる。このような2種類の金属のナノ粒子を製造する場合は、長鎖飽和脂肪酸と金属からなるラウリン酸金属化合物は、前記した第二のカルボン酸金属化合物として用いることができる。
さらに、合金のナノ粒子を製造する原料として、同一の飽和脂肪酸から構成される2種類のカルボン酸金属化合物を用いることができる。つまり、2種類のカルボン酸金属化合物が、同一の飽和脂肪酸から構成されるため、飽和脂肪酸の沸点で2種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解し、飽和脂肪酸の気化が完了した瞬間に、各々のカルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて2種類の金属が析出する。2種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、2種類の金属からなる合金が生成される。
本実施形態は、金属のナノ粒子を析出する原料に係わる第二の実施形態である。つまり、49段落で説明したカルボン酸金属化合物の熱分解で析出しない、金属ないしは合金のナノ粒子を析出する原料に関する実施形態である。このような金属として、白金族元素の金属と銅を除く貴金属の金属などがある。こうし金属は、希土類金属を除くと、鉄族元素、クロム族元素、マンガン族元素、スズ族元素、アルミニウム族元素、マグネシウム族元素などに属する金属、および典型金属と銅などの金属に比べて付加価値が高い用途に用いられる。従って、莫大な数からなる高付加価値の金属のナノ粒子が製造できれば、ナノ粒子の原料は、49段落で説明したカルボン酸金属化合物のように安価であることが必須要件にはならない。以下の説明では、白金のナノ粒子の原料を例として説明する。
白金を析出する原料についても、49段落で説明したカルボン酸金属化合物と同様に、液相化できる性質を持つことが必要になる。また、熱分解によって白金を析出する性質を持つことが必要になる。こうした性質を兼備する白金化合物として、還元雰囲気での熱処理で白金に還元される白金錯体がある。白金錯体の中で、最も大きい物質は白金イオンPt2+ないしはPt4+である。ちなみに、白金原子の単結合における共有結合半径は123pmであり、酸素原子の単結合における共有結合半径である63pmの2倍に近い大きさを持つ。このため、白金錯体は49段落で説明したカルボン酸鉄と同様に、還元雰囲気での熱処理で白金が析出する。つまり、白金イオンが配位子イオンと結合する配位結合部が最初に切れ、白金が析出する。このような金属錯体として、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン錯体、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ錯体は、他の金属錯体に比べて相対的に合成が容易であるため、金属錯体の中でも相対的に安価な化学薬品である。こうした金属錯体は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の比較的低い温度で金属が析出する。また、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。
以上に説明したように、白金族元素の金属と銅を除く貴金属の金属からなるナノ粒子を製造する原料は金属錯体が望ましい。こうした金属錯体は、49段落で説明したカルボン酸金属化合物に比べて高価な原料になるが、付加価値の高い金属ないしは合金のナノ粒子が製造できるため、安価な金属ないしは合金のナノ粒子を製造する原料になる。
また、合金のナノ粒子を製造する原料としては、同一の配位子から構成される2種類の金属錯体を用いることができる。つまり、2種類の金属錯体が同一の配位子から構成されるため、2種類の金属錯体を還元処理すると、2種類の金属錯体が同時に無機物と金属とに熱分解し、無機物の気化が完了した瞬間に各々の金属錯体のモル濃度に応じて2種類の金属が析出する。2種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、2種類の金属からなる合金が生成される。
本実施形態は、金属酸化物のナノ粒子を析出する原料に係わる実施形態である。以下の説明では、鉄の酸化物からなるナノ粒子を析出する原料を例として説明する。
鉄の酸化物からなるナノ粒子を析出する原料も、49段落で説明した鉄のナノ粒子の原料と同様に、液相化できる性質を持つことが必要になり、有機鉄化合物が望ましい。
さらに、有機鉄化合物は、熱分解によって酸化鉄FeOを析出する性質を持つことが必要になる。つまり、酸化鉄FeOを大気中で昇温すると、酸化鉄FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+の一部が酸化して三価の鉄イオンFe3+になり、FeO・Fe2O3の組成式で表さられるマグネタイトFe3O4になる。マグネタイトFe3O4は、強磁性で導電性の酸化物であり、フェライトの原料としてよく知られている。さらに、大気中で昇温すると、2価の鉄イオンFe2+の全てが酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、酸化鉄Fe2O3のγ相であるマグへマイトγ−Fe2O3になる。このマグへマイトγ−Fe2O3は、強磁性で絶縁性の酸化物であり、磁気記録媒体の原料としてよく知られている。有機鉄化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質は鉄イオンFe2+である。いっぽう、鉄イオンFe2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合するカルボン酸鉄は、鉄イオンと酸素イオンとの距離が最大になるため、49段落で説明したように、熱分解によって鉄のナノ粒子を析出する。従って、熱分解によって酸化鉄FeOを析出する有機鉄化合物は、鉄イオンFe2+と結合する酸素イオンO−との距離が短く、酸素イオンO−が鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと結合する距離が長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。つまり、有機鉄化合物の熱分解が始まると、酸素イオンO−が鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、鉄イオンと結合した酸素イオン、つまり、酸化鉄FeOと有機酸とに分解する。このような分子構造上の特徴を持つ有機鉄化合物として、カルボキシル基を構成する酸素イオンO−が配位子になって鉄イオンFe2+に近づいて配位結合するカルボン酸鉄化合物がある。
また、有機金属化合物の中でカルボン酸金属化合物は、49段落で説明したように合成が容易で、有機酸の沸点が低いため熱分解温度が比較的低い。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、安価な化学薬品であり、熱処理費用も安価で済む。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などが挙げられる。なお、カルボン酸鉄化合物においては、酢酸鉄とカプリル酸鉄と安息香酸鉄とは、酸素イオンが鉄イオンに近づいて配位結合し、複核錯塩を形成するが、熱分解の途上においては不安定な物質であるため取り扱いが難しい。従って、酸化鉄FeOを析出するカルボン酸鉄としては、ナフテン酸鉄が望ましい。さらに、ナフテン酸鉄はn−ブタノールに対して10重量%近くまで分散する。
なお、有機酸のカルボキシル基が配位子になって、金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物は錯体の一種である。このようなカルボン酸金属化合物は、カルボン酸が金属と結合する有機金属化合物である。一方、50段落で説明した金属錯体は、無機物の配位子が金属イオンに配位結合する無機金属化合物である。
いっぽう、有機金属化合物の一種であるアセチルアセトン金属化合物は、アセチルアセトンC5H8O2の共役塩基である、アセチルアセトナートC5H7O2 −を構成する酸素イオンが配位子イオンとなって金属イオンに近づいて配位結合し、アセチルアセトナートが複素環を形成する錯体である。このため、熱分解においては、配位子イオンである酸素イオンが金属イオンの反対側で結合するイオンとの結合部位が最初に切れる。これによって、金属イオンが酸素イオンと結合した金属酸化物と、アセチルアセトンとに分解し、アセチルアセトンの気化が完了すると、金属酸化物が析出する。また、アセチルアセトン金属化合物、例えば、アセチルアセトン鉄は、塩化鉄の水溶液を沸騰水中に滴下して水酸化鉄Fe(OH)3のコロイド液を作製し、水酸化鉄の1モルとアセチルアセトンCH3C(O)CH2C(O)CH3の3モルとを反応させることで合成できる。このように、アセチルアセトン鉄も、合成が比較的容易な有機鉄化合物である。アセチルアセトンは、酢酸イソプロペ二ルCH2(CH3)COC(O)Meの熱転位で工業的に生産される有機物で、前記したカルボン酸に比べると高価な有機物であり、前記したカルボン酸鉄化合物より高価な有機鉄化合物になる。いぽう、アセチルアセトンの沸点が140℃と低く、アセチルアセトン金属化合物は熱分解温度が相対的に低い有機金属化合物である。このため、アセチルアセトン金属化合物は、34段落と35段落で説明した複数種類のナノ粒子を析出する原料として用いることができる。
以上に説明したように、熱分解によって金属酸化物を析出する原材料は、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などのカルボン酸金属化合物が望ましい。また、熱分解が相対的に低い原料として、アセチルアセトン金属化合物を用いることができる。
本実施例は、カルボン酸金属化合物の熱分解で金属のナノ粒子の集まりを製造する実施例である。本実施例では、オクチル酸鉄を原料として用い、鉄のナノ粒子の集まりを製造する。鉄のナノ粒子は有害物質を分解して無害化する性質を持つため、汚染された水や土壌の浄化やダイオキシンの分解などに適応できる。また、発熱体や軟磁性微粒子や各種合金の原料として用いることができる。鉄のナノ粒子の原料となるオクチル酸鉄は、49段落で説明した製法に基づいて合成した。また、有機化合物として、粉末のテレフタル酸(例えば、株式会社日立プラントテクノロジーの製品)を用いた。
図1に、鉄のナノ粒子を製造する製造工程を示す。オクチル酸鉄の1モルを3リットルのn−ブタノールに分散する(S10工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S11工程)。容器を120℃の焼成炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S12工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面にオクチル酸鉄が均一に吸着する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸鉄を熱分解する(S13工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面は鉄のナノ粒子で覆われる。さらに容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置して、テレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S14工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の表面に析出していた鉄のナノ粒子が容器内で飛散し、飛散した鉄のナノ粒子を回収した(S15工程)。鉄のナノ粒子の重量は56gである。
S13工程で作成した試料について、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。電子顕微鏡による観察は次の3つの手法によった。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、テレフタル酸の表面を観察した。試料には、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められないため、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面の粒状粒子を構成する元素を分析した。鉄原子のみが存在していることが確認できた。
これらの結果から次のことが分かった。テレフタル酸の粉体の表面に、オクチル酸鉄を吸着させて熱分解すると、40−60nmの大きさからなる鉄のナノ粒子の集まりが、テレフタル酸の表面を覆う。この後、テレフタル酸を気化させると、テレフタル酸の表面に析出していた鉄のナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収して鉄のナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例では、オクチル酸鉄を熱分解して鉄のナノ粒子の集まりを製造した。製造できる金属のナノ粒子は、鉄のナノ粒子に限定されない。つまり、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物は、金属のナノ粒子の原料になり、様々な金属元素からなる金属のナノ粒子の集まりが製造できる。
本実施例は、有機金属化合物の熱分解で金属酸化物のナノ粒子の集まりを製造する第一の実施例である。本実施例は、ナフテン酸鉄を原料として用い、鉄の酸化物であるマグへマイトγ−Fe2O3のナノ粒子の集まりを製造する。マグへマイトは鉄の酸化物Fe2O3のγ相であり、強磁性で電気絶縁性の性質を持ち、モース硬度が5.5の硬い物質である。このため、これらの特性を活かした各種被膜への適応や磁気記録材料として用いることができる。マグへマイトの原料は、熱分解で酸化鉄FeOを析出する(C11H7COO)2Feで化学式が示されるナフテン酸鉄(例えば、東栄化工株式会社の製品)を用いた。また、ナフテン酸鉄を吸着させる有機化合物として、実施例1と同様にテレフタル酸を用いた。
図2に、マグへマイトのナノ粒子を製造する製造工程を示す。ナフテン酸鉄の1モルを4リットルのn−ブタノールに分散する(S20工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S21工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S22工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面にナフテン酸鉄が均一に吸着する。さらに、容器を大気雰囲気の330℃の熱処理炉に10分間放置し、ナフテン酸鉄を熱分解する(S23工程)。これによって、酸化鉄FeOのナノ粒子が、テレフタル酸の粉体の表面に析出する。この後、熱処理炉の温度を330℃から1℃/分の昇温速度で390℃まで昇温し、390℃に容器を30分間放置する(S24工程)。この際、ナフテン酸鉄の熱分解で生成された酸化鉄FeOを構成する鉄イオンFe2+がFe3+に酸化され、マグへマイトγ−Fe2O3が生成される。さらに、大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を昇華させ、昇華したテレフタル酸は回収装置で回収する(S25工程)。テレフタル酸が昇華する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していたマグへマイトのナノ粒子が容器内に飛散し、飛散したマグへマイトのナノ粒子を回収する(S26工程)。マグへマイトのナノ粒子の重量は160gであった。
S24工程で作成した試料について、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、テレフタル酸の表面を観察した。試料には、40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体を覆っていることが分かった。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面の粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。鉄原子と酸素原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化鉄からなる粒状のナノ粒子であることが分かった。さらに、極低加速電圧SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、結晶構造の解析を行なった。この結果、テレフタル酸の表面に形成された粒状のナノ粒子が酸化鉄のγ相であるマグへマイトγ−Fe2O3であることが確認できた。
これらの結果から次のことが分かった。テレフタル酸の粉体の表面に、ナフテン酸鉄を吸着させて熱分解すると、40−60nmの大きさからなる酸化鉄FeOのナノ粒子の集まりが析出し、テレフタル酸の粉体の表面を覆う。この後、大気中で昇温すると、酸化鉄FeOを構成する鉄イオンFe2+が酸化してFe3+になり、酸化Fe2O3のγ相であるマグへマイトγ−Fe2O3になる。さらに、テレフタル酸を昇華させると、テレフタル酸の粉体の表面に析出していたマグへマイトのナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、マグへマイトのナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例は、有機金属化合物の熱分解で金属酸化物のナノ粒子の集まりを製造する第二の実施例である。本実施例では、テトラアセチルアセトネートチタンを原料として用い、金属酸化物である酸化チタンTiO2のナノ粒子の集まりを製造する。酸化チタンのナノ粒子は、食品、衣料品、化粧品などの着色剤の材料として、また、光触媒やオフセット印刷の感光体の材料に適応できる。なお酸化チタンの原料は、熱分解で酸化チタンTiO2を析出する化学式が(C5H8O2)4Tiで示されるテトラアセチルアセトネートチタン(例えば、マツモトファインケミカル株式会社の製品)を用いた。また、テトラアセチルアセトネートチタンを吸着させる有機化合物は、粉末のフタル酸(例えば、JFEケミカル株式会社の製品)を用いた。
図3に、酸化チタンのナノ粒子を製造する製造工程を示す。テトラアセチルアセトネートチタンの1モルを4リットルのn−ブタノールに分散する(S30工程)。この分散液を容器に充填し、フタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S31工程)。この後、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S32工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面にテトラアセチルアセトネートチタンが均一に吸着する。さらに、容器を大気囲気の190℃に昇温された熱処理炉に5分間入れて、テトラアセチルアセトネートチタンを熱分解する(S33工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面は、酸化チタンのナノ粒子で覆われる。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S34工程)。フタル酸が気化する際に、表面に析出していた酸化チタンのナノ粒子が容器内に飛散し、飛散した酸化チタンのナノ粒子を回収した(S35工程)。酸化チタンのナノ粒子の重量は80gであった。
S33工程で作成した試料について、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、フタル酸の粉体の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。チタン原子と酸素原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化チタンからなる粒状のナノ粒子であることが分かった。さらに、極低加速電圧SEMの機能にEEBSP解析機能を付加し、結晶構造の解析を行なった。この結果から、フタル酸の表面に形成された粒状のナノ粒子が、正方晶のアナターゼ型の酸化チタンTiO2であることが確認できた。
これらの結果から次のことが分かった。フタル酸の粉体の表面に、テトラアセチルアセトネートチタンを吸着させ、大気雰囲気で熱分解すると、40−60nmの大きさからなる酸化チタンTiO2のナノ粒子の集まりが析出し、フタル酸の粉体の表面を覆う。さらに、フタル酸を気化させると、フタル酸の粉体の表面に析出していた酸化チタンのナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、酸化チタンのナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例は、有機金属化合物の熱分解で金属酸化物のナノ粒子の集まりを製造する第三の実施例である。本実施例は、ナフテン酸亜鉛を原料として用い、酸化亜鉛ZnOのナノ粒子の集まりを製造する。酸化亜鉛のナノ粒子は、白色顔料、ゴムの添加剤、塗料、UVカット繊維、化粧品、フェライトやバリスタや蛍光体の電子材料に適応できる。酸化亜鉛の原料は、熱分解で酸化亜鉛ZnOを析出する化学式が(C6H5COO)2Znで示されるナフテン酸亜鉛(例えば、東栄化工株式会社の製品)を用いた。また、ナフテン酸鉄を吸着させる有機化合物は、実施例1と2で用いた粉末のテレフタル酸を用いた。
図4に、酸化亜鉛のナノ粒子を製造する製造工程を示す。ナフテン酸亜鉛の1モルを4リットルのn−ブタノールに分散する(S40工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S41工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S42工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面にナフテン酸亜鉛が均一に吸着する。さらに、容器を大気雰囲気の330℃の熱処理炉に5分間放置し、ナフテン酸亜鉛を熱分解させる(S43工程)。これによって、酸化亜鉛のナノ粒子がテレフタル酸の粉体の表面に析出する。さらに、大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を昇華させ、昇華したテレフタル酸は回収装置で回収する(S44工程)。テレフタル酸が昇華する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していた酸化亜鉛のナノ粒子が容器内で飛散し、飛散した酸化亜鉛のナノ粒子を回収した(S45工程)。酸化亜鉛のナノ粒子の重量は81gであった。
S43工程で作成した試料を、電子顕微鏡で表面の観察と分析を行なった。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、テレフタル酸の粉体の表面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。亜鉛原子と酸素原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化亜鉛からなる粒状のナノ粒子であることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。テレフタル酸の粉体の表面にナフテン酸亜鉛を吸着させて大気雰囲気で熱分解すると、40−60nmの大きさからなる酸化亜鉛ZnOのナノ粒子の集まりが析出し、テレフタル酸の表面を覆う。さらに、テレフタル酸を気化させると、テレフタル酸の粉体の表面に析出していた酸化亜鉛のナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、酸化亜鉛のナノ粒子の集まりが得られる。
実施例2−4において、金属酸化物のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明した。製造できる金属酸化物のナノ粒子が、3つの実施例に限定されることはない。つまり、カルボン酸金属化合物ないしはアセチルアセトン金属化合物は金属酸化物のナノ粒子の原料となり、カルボン酸金属化合物ないしはアセチルアセトン金属化合物を構成する様々な金属イオンからなる金属酸化物のナノ粒子の集まりが製造できる。
本実施例は、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解によって、2種類の金属からなる合金を製造する第一の実施例で、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとを原料として用い、鉄−ニッケル合金のナノ粒子の集まりを製造する。鉄−ニッケル合金は、合金の組成割合によって様々な性質を持つ。例えば、本実施例における鉄とニッケルが1対1の組成割合からなる合金は、パーマロイと呼ばれる極めて大きな透磁率を有する軟磁性材料である。また、ニッケルが42%の組成割合からなる合金は、42アロイと呼ばれる低膨張率の合金で、ICリードフレームなどに用いられている。さらに、ニッケルが36%の組成割合からなる合金は、インバーと呼ばれる高強度の低膨張率の合金である。
本実施例では、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとを等しいモル数で用い、鉄とニッケルとの析出量を同一のモル数とし、鉄とニッケルとが1対1の組成割合からなる鉄−ニッケル合金のナノ粒子を製造する。本実施例のように、2種類のオクチル酸金属化合物を熱分解するため、双方が同時に熱分解され、2種類の金属が析出し、2種類の金属からなる合金が生成される。このため、2種類のオクチル酸金属化合物の使用するモル数の比率に応じて、合金における金属の組成割合が変わる。従って、必要となる鉄とニッケルとの組成割合に応じて、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとの使用するモル数を設定することで、必要となる組成割合からなる鉄−ニッケル合金が製造できる。なお、オクチル酸ニッケルは市販されていないため、49段落で説明したオクチル酸鉄の製法に準じて、新たにオクチル酸ニッケルを合成した。但し、オクチル酸ナトリウムと反応させる無機金属化合物は、硫酸ニッケルNiSO4になる。また、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとを吸着させる有機化合物は、実施例1と2と4で用いたテレフタル酸の粉体とした。
図5に、鉄−ニッケル合金のナノ粒子の集まりを製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸鉄の1モルとオクチル酸ニッケルの1モルとを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S50工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S51工程)。容器を、120℃の熱処理炉に入れ、n−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S52工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面に、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとが均一に吸着する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとを熱分解する(S53工程)。この際、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとが同時に熱分解して鉄とニッケルとが析出し、活性状態にある鉄とニッケルとが反応し、テレフタル酸の表面は、鉄−ニッケル合金のナノ粒子で覆われる。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S54工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していた鉄−ニッケル合金のナノ粒子が容器内に飛散し、飛散したナノ粒子を回収した(S55工程)。鉄−ニッケル合金のナノ粒子の重量は115gであった。
S53工程で作成した試料を、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、テレフタル酸の粉体の表面を観察した。試料には、40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。鉄原子とニッケル原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られないため、鉄−ニッケル合金からなる粒状のナノ粒子であることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。テレフタル酸の粉体の表面に、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとを吸着させて大気雰囲気で熱分解すると、40−60nmの大きさからなる鉄−ニッケル合金のナノ粒子の集まりが析出してテレフタル酸の表面を覆う。さらに、テレフタル酸を気化させると、テレフタル酸の表面に析出していたナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収して鉄−ニッケル合金のナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例は、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解によって、2種類の金属からなる合金を製造する第二の実施例である。本実施例は、オクチル酸スズとオクチル酸ニッケルとを原料として用い、スズ−ニッケル合金のナノ粒子の集まりを製造する。スズ−ニッケル合金は、合金の組成割合によって様々な性質を持つ合金が製造される。例えば、本実施例におけるスズとニッケルとが4対3の組成割合からなる合金は、はんだ付け性がよいはんだ材料になる。あるいは、合金の組成割合に応じて、耐食性、耐変色性、耐熱性などに優れた被膜の材料として用いことができる。
本実施例は、オクチル酸スズとオクチル酸ニッケルとを、4対3のモル数で原料として用い、スズとニッケルとが4対3の組成割合からなるスズ−ニッケル合金のナノ粒子を製造する。本実施例のように、2種類のオクチル酸金属化合物を熱分解する際に、双方が同時に熱分解されて、2種類のオクチル酸金属化合物のモル濃度に応じて、2種類の金属が析出し、2種類の金属からなる合金が生成される。なお、オクチル酸ニッケルは市販されていないため、実施例5で説明した製法で合成した。オクチル酸スズは、例えば、ナカライテスク株式会社の製品を用いた。また、オクチル酸スズとオクチル酸ニッケルとを吸着させる有機化合物は、実施例1と2と4と5で用いた粉末のテレフタル酸とした。
図6に、スズ−ニッケル合金のナノ粒子を製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸スズの0.4モルとオクチル酸ニッケルの0.3モルとを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S60工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S61工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S62工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面に、オクチル酸スズとオクチル酸ニッケルとが均一に吸着する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸スズとオクチル酸ニッケルとを熱分解する(S63工程)。この際、オクチル酸スズとオクチル酸ニッケルとが同時に熱分解し、スズとニッケルとが析出し、活性状態にあるスズとニッケルとが反応し、テレフタル酸の粉体の表面はスズ−ニッケル合金のナノ粒子で覆われる。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S64工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していたスズ−ニッケル合金のナノ粒子が飛散し、容器内に存在するナノ粒子を回収した(S65工程)。製造されたスズ−ニッケル合金のナノ粒子の重量は65.1gであった。
S63工程で作成した試料を、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、テレフタル酸の粉体の表面を観察した。試料には、40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。スズ原子とニッケル原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られず、スズ−ニッケル合金からなる粒状のナノ粒子であることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。テレフタル酸の粉体の表面に、オクチル酸スズとオクチル酸ニッケルとを吸着させ、大気雰囲気で熱分解すると、40−60nmの大きさからなるスズ−ニッケル合金のナノ粒子の集まりが析出し、テレフタル酸の粉体の表面を覆う。さらに、テレフタル酸を気化させると、テレフタル酸の表面に析出していたナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収してスズ−ニッケル合金のナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例は、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解によって、2種類の金属からなる合金を製造する第三の施例である。本実施例では、ラウリン酸鉄とラウリン酸コバルトとを原料として用い、鉄−コバルト合金のナノ粒子の集まりを製造する。また、本実施例では、鉄とコバルトが1対1の組成割合からなるパーメンジュールと呼ばれる合金を製造する。パーメンジュールは、純鉄に比べ磁束密度が1.4倍で、保持力が0.68倍で、最大透磁率が0.83倍の優れた軟磁性材料で、モータの鉄心や電磁弁、電磁石などの一部に実用化されている。しかし、従来のパーメンジュールは溶製材であり、溶製材を850℃からの磁気焼鈍によって磁気特性を向上させるため、焼鈍時の冷却速度によって、合金の内部構造が規則格子化し、著しく脆くなる。このため、溶製材からなるパーメンジュールは、製造コストが高いとともに、加工しにくい材料であり、実用化する領域を狭める要因になっている。
本実施例におけるパーメンジュールは、同一の有機酸であるラウリン酸からなる2種類のラウリン酸金属化合物を原料として用いるため、360℃程度の温度で同時に熱分解して、鉄とコバルトを析出し、鉄−コバルト合金であるパーメンジュールのナノ粒子が生成される。このため、溶製材に比べるとパーメンジュールを生成する温度が1200℃以上低くなるため焼鈍が不要になり、パーメンジュールの規則格子化は起こらず、パーメンジュールの実用領域が大きく拡大できる。
パーメンジュールの原料は、化学式がFe(C11H23COO)3で示されるラウリン酸鉄と、化学式がCo(C11H23COO)2で示されるラウリン酸コバルト(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。ラウリン酸塩を吸着させる有機化合物として、実施例1と2と4から6で用いた粉末のテレフタル酸とした。
図7に、パーメンジュールのナノ粒子を製造する製造工程を示す。ラウリン酸鉄の1モルとラウリン酸コバルトの1モルとを、6リットルのn−ブタノールに分散する(S70工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S71工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S72工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面にラウリン酸鉄とラウリン酸コバルトとが均一に吸着する。さらに、容器を大気雰囲気の360℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、ラウリン酸鉄とラウリン酸コバルトを熱分解する(S73工程)。これによって、ラウリン酸鉄とラウリン酸コバルトとが同時に熱分解し、鉄とコバルトとが析出し、活性状態にある鉄とコバルトとが反応し、テレフタル酸の表面は、鉄−コバルト合金のナノ粒子で覆われる。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S74工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していたパーメンジュールのナノ粒子が容器内に飛散し、飛散したナノ粒子を回収した(S75工程)。ナノ粒子の重量は115gであった。
S73工程で作成した試料を、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、テレフタル酸の粉体の表面を観察した。試料には、40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。鉄原子とコバルト原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られず、鉄−コバルト合金からなる粒状のナノ粒子であることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。テレフタル酸の粉体の表面に、ラウリン酸鉄とラウリン酸コバルトとを吸着させ、大気雰囲気で熱分解すると、40−60nmの大きさからなる鉄−コバルト合金のナノ粒子の集まりが析出し、テレフタル酸の粉体の表面を覆う。さらに、テレフタル酸を気化させると、テレフタル酸の表面に析出していた鉄−コバルト合金のナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収してパーメンジュールのナノ粒子の集まりが得られる。
実施例5−7において、合金のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、製造できる合金のナノ粒子が3つの事例に限定されることはない。つまり、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物を熱分解すると、2種類の金属が析出し、これら2種類の金属からなる合金が生成される。このため、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物は合金のナノ粒子の原料となり、2種類のカルボン酸金属化合物の組み合わせに応じて、様々な組成からなる合金のナノ粒子の製造ができる。
本実施例は、金属錯体の還元によって金属のナノ粒子の集まりを製造する第一の実施例である。また、本実施例は、アンミン錯体を還元して金属のナノ粒子を製造する第一の実施例で、6個のアンミン(アンモニアの配位子をいう)がコバルトイオンCo3+に配位結合した塩化物であるヘキサアンミンコバルトトリクロライド[Co(NH3)6]Cl3(例えば、ナカライテスク株式会社の製品)を原料として用い、コバルトのナノ粒子の集まりを製造する。なお、有機金属化合物からなるコバルトの原料として、実施例7で使用したラウリン酸コバルトがある。コバルトのアンミン錯体はラウリン酸コバルトに比べると高価であるが、ラウリン酸コバルトの熱処理温度に比べると、還元処理温度が150℃以上低いという長所がある。また、有機化合物は実施例3で用いた粉末のフタル酸とした。なお、コバルトのナノ粒子は、各種コバルト合金の原材料となる。
図8に、コバルトのナノ粒子を製造する製造工程を示す。ヘキサアンミンコバルトトリクロライドの1モルを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S80工程)。分散液を容器に充填し、フタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S81工程)。さらに、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S82工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に、ヘキサアンミンコバルトトリクロライドが均一に吸着する。さらに、容器を水素ガス雰囲気の220℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、ヘキサアンミンコバルトトリクロライドを還元する(S83工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面にコバルトのナノ粒子の集まりが析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S84工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の粉体の表面に析出していたコバルトのナノ粒子の集まりが飛散し、容器内に存在するコバルトのナノ粒子を回収した(S85工程)。ナノ粒子の重量は59gであった。
S83工程で作成した試料を、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、フタル酸の表面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成されたナノ粒子を構成する元素を分析した。コバルト原子のみが存在していることが確認できた。
これらの結果から次のことが分かった。フタル酸の粉体の表面に、ヘキサアンミンコバルトトリクロライドを吸着させて還元すると、40−60nmの大きさからなる粒状のコバルトのナノ粒子の集まりが、フタル酸の粉体の表面を覆う。この後、フタル酸を気化させると、フタル酸の粉体の表面に析出していたコバルトのナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収することで、コバルトのナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例は、金属錯体の還元によって金属のナノ粒子の集まりを製造する第二の実施例である。また、アンミン錯体を還元して金属のナノ粒子を製造する第二の実施例で、銀のナノ粒子の集まりを製造する。銀のナノ粒子の原料は、2個のアンミン(アンモニアの配位子をいう)が銀イオンAg+に配位結合した金属錯体である、ジアンミン銀クロライド[Ag(NH3)2]Cl(例えば、田中貴金属販売株式会社の製品)を用いた。また、有機化合物は、実施例3と8で用いたフタル酸の粉体とした。なお銀のナノ粒子は、導電性インクや導電性ペーストや各種合金の原材料として用いることができる。
図9に、銀のナノ粒子を製造する製造工程を示す。銀の原料であるジアンミン銀クロライドの1モルを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S90工程)。分散液を容器に充填し、フタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S91工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S92工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面にジアンミン銀クロライドが均一に吸着する。さらに、容器を水素ガス雰囲気の180℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、ジアンミン銀クロライドを還元する(S93工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に、銀のナノ粒子の集まりが析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S94工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の粉体の表面に析出していた銀のナノ粒子の集まりが容器内で飛散し、飛散したナノ粒子を回収した(S95工程)。銀のナノ粒子の重量は108gであった。
S93工程で作成した試料について、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、フタル酸の粉体の表面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていた。次に試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されている。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成されたナノ粒子を構成する元素を分析した。銀原子のみが存在していることが確認できた。
これらの結果から次のことが分かった。フタル酸の粉体の表面に、銀の原料となるジアンミン銀クロライドを吸着させて還元すると、40−60nmの大きさからなる粒状の銀のナノ粒子の集まりが、フタル酸の粉体の表面を覆う。この後、フタル酸を気化すると、フタル酸の粉体の表面に析出していた銀のナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収することで、銀のナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例は、金属錯体の還元によって金属のナノ粒子の集まりを製造する第三の実施例である。また、クロロ錯体を還元して金属のナノ粒子を製造する第一の実施例で、白金のナノ粒子の集まりを製造する。白金のナノ粒子の原料は、6個の塩素イオンCl−が配位子となって白金イオンPt4+に配位結合するヘキサクロロ白金酸イオン[PtCl6]−2からなるアンモニウム塩であるヘキサクロロ白金酸ジアンモニウム[NH4]2[PtCl6](例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。また、有機化合物は、実施例3と8と9で用いた粉末のフタル酸とした。なお、白金のナノ粒子は、活性度の高い触媒や各種合金の原材料として用いることができる。
図10に、白金のナノ粒子を製造する製造工程を示す。最初に、ヘキサクロロ白金酸ジアンモニウムの1モルを、4リットルのメタノールに分散する(S100工程)。分散液を容器に充填し、還元剤であるヒドラジンH2NNH2のごく微量と、フタル酸の粉末1kgとを投入して攪拌する(S101工程)。次に、65℃の熱処理炉に容器を入れてメタノールを気化させ、気化したメタノールは回収装置で回収する(S102工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に、ヘキサクロロ白金酸ジアンモニウムが均一に吸着する。さらに、容器をアンモニアガス雰囲気の220℃に昇温された熱処理炉に5分間放置し、ヘキサクロロ白金酸ジアンモニウムを還元する(S103工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に白金のナノ粒子の集まりが析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S104工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の粉体の表面に析出していた白金のナノ粒子の集まりが容器内で飛散し、飛散した白金のナノ粒子を回収した(S105工程)。白金のナノ粒子の重量は195gであった。
S103工程で作成した試料について、電子顕微鏡で表面の観察と分析を行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、フタル酸の粉体の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。白金原子のみが存在していることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。フタル酸の粉体の表面に、白金の原料となるヘキサクロロ白金酸ジアンモニウムを吸着させて還元すると、40−60nmの大きさからなる粒状の白金のナノ粒子の集まりがフタル酸の粉体の表面を覆う。この後、フタル酸を気化させると、フタル酸の表面に析出していた白金のナノ粒子が飛散し、飛散した白金のナノ粒子を回収することで、白金のナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例は、金属錯体の還元によって金属のナノ粒子の集まりを製造する第四の実施例である。また、クロロ錯体を還元して金属のナノ粒子を製造する第二の実施例で、金のナノ粒子の集まりを製造する。金のナノ粒子の原料は、4つの塩素イオンCl−が配位子となって金イオンAu3+に配位結合するテトラクロロ金酸イオン[AuCl4]−からなるテトラクロロ金酸水素・水和物H[AuCl4]・4H2O(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。また、有機化合物は、実施例3と8−10で用いた粉末のフタル酸とした。なお、金のナノ粒子は、ワイヤボンディングや各種合金の原料として用いることができる。
図11に、金のナノ粒子を製造する製造工程を示す。最初に、テトラクロロ金酸水素・水和物の1モルを、4リットルのメタノールに分散する(S110工程)。分散液を容器に充填し、還元剤であるヒドラジンH2NNH2のごく微量と、フタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S111工程)。次に、容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化させ、気化したメタノールは回収装置で回収する(S112工程)。これによってフタル酸の粉体の表面に、テトラクロロ金酸水素が均一に吸着する。さらに、容器をアンモニアガスの雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間放置し、テトラクロロ金酸水素を還元する(S113工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面は、金のナノ粒子で覆われる。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S114工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の粉体の表面に析出していた金のナノ粒子が容器内で飛散し、飛散したナノ粒子を回収した(S115工程)。金のナノ粒子の重量は197gであった。
S113工程で作成した試料について、電子顕微鏡で表面の観察と分析を行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、フタル酸の粉体の表面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが確認できた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されている。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。金原子のみが存在していることが確認できた。
これらの結果から次のことが分かった。フタル酸の粉体の表面に、金の原料となるテトラクロロ金酸水素を吸着させて還元すると、40−60nmの大きさからなる金のナノ粒子の集まりが、フタル酸の粉体の表面を覆う。この後、フタル酸を気化させると、フタル酸の粉体の表面に析出していた金のナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収することで金のナノ粒子の集まりが得られる。
実施例8−11において、金属のナノ粒子の集まりを製造する4つの実施例を説明したが、製造できる金属のナノ粒子が4つの事例に限定されない。つまり、金属錯体を還元すると金属が析出するため、金属錯体は金属のナノ粒子の原料になる。このため、金属錯体構成する金属イオンに応じて、様々な金属元素からなる金属のナノ粒子の集まりが製造できる。
本実施例は、同一の配位子が金属イオンに配位結合する2種類の金属錯体を還元することで、2種類の金属からなる合金を製造する第一の実施例で、鉄と白金とからなる鉄−白金合金のナノ粒子の集まりを製造する。また、2種類のクロロ錯体を用いる第一の実施例で、鉄と白金とが1対1の割合からなる鉄−白金合金のナノ粒子を製造する。すなわち、鉄の原料と白金の原料とを等しいモル数で用いると、鉄と白金とが同一のモル数で析出し、1対1の割合からなる鉄−白金合金のナノ粒子が製造される。いっぽう、同一の配位子からなる2種類の金属錯体を還元処理するため、2種類の金属錯体が同時に還元されて、2種類の金属が析出し、2種類の金属からなる合金が生成される。従って、必要となる合金の組成割合に応じて、2種類の金属錯体の使用するモル数を設定することで、必要とする組成割合からなる合金が製造できる。なお、鉄−白金合金は、磁気記録媒体の原料や一酸化炭素に被毒しない触媒として用いることができる。
白金の原料は、4個の塩素イオンCl−が配位子となって白金イオンPt2+に配位結合する、テトラクロロ白金酸イオン[PtCl4]2−からなる金属錯体である、テトラクロロ白金酸ジアンモニウム[NH4]2[PtCl4]である。また鉄の原料も、4個の塩素イオンCl−が配位子となって鉄イオンFe3+に配位結合する、テトラクロロ鉄酸イオン[FeCl4]−からなる金属錯体である、テトラクロロ鉄酸アンモニウム[NH4][FeCl4]である。2種類の金属錯体は同一の温度で還元され、白金と鉄とが析出し、鉄−白金合金のナノ粒子が生成される。これらの原料として、例えば、三津和化学薬品株式会社の製品を用いた。また有機化合物は、実施例3と8−11で用いた粉末のフタル酸とした。
図12に、鉄−白金合金のナノ粒子を製造する製造工程を示す。テトラクロロ鉄酸アンモニウムの1モルとテトラクロロ白金酸ジアンモニウムの1モルとを、8リットルのメタノールに分散する(S120工程)。分散液を容器に充填し、還元剤であるヒドラジンH2NNH2のごく微量と、フタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S121工程)。容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化させ、気化したメタノールは回収装置で回収する(S122工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に、テトラクロロ鉄酸アンモニウムとテトラクロロ白金酸アンモニウムとが均一に吸着する。さらに容器を、アンモニアガスの雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間放置し、テトラクロロ鉄酸アンモニウムとテトラクロロ白金酸アンモニウムとを還元する(S123工程)。この際、フタル酸の粉体の表面に鉄と白金とが析出し、鉄−白金合金のナノ粒子の集まりが析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S124工程)。フタル酸が気化する際に、表面に析出していた鉄−白金合金のナノ粒子が容器内で飛散し、飛散した合金のナノ粒子を回収した(S125工程)。ナノ粒子の重量は251gであった。
S123工程で作成した試料を、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、フタル酸の粉体の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、試料の反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。鉄原子と白金原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られず、鉄−白金合金からなる粒状のナノ粒子であることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。フタル酸の粉体の表面に、鉄−白金合金の原料となるテトラクロロ鉄酸アンモニウムとテトラクロロ白金酸アンモニウムとを吸着させて還元処理すると、40−60nmの大きさからなる鉄−白金合金のナノ粒子の集まりが析出してフタル酸の粉体の表面を覆う。さらに、フタル酸を気化させると、フタル酸の粉体の表面に析出していた鉄−白金合金のナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収して鉄−白金合金のナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例は、同一の配位子が金属イオンに配位結合する2種類の金属錯体を還元することで、2種類の金属からなる合金を製造する第二の実施例である。また、2種類のクロロ錯体を用いる第二の実施例で、鉄とパラジウムとからなる鉄−パラジウム合金のナノ粒子の集まりを製造する。本実施例では、鉄とパラジウムとが1対1の組成割合からなる鉄−パラジウム合金のナノ粒子を製造する。すなわち、鉄の原料とパラジウムの原料とを等しいモル数で用いることで、鉄とパラジウムとが1対1の組成割合からなる鉄−パラジウム合金のナノ粒子が製造される。いっぽう、鉄の原料とパラジウムの原料とが、同一の配位子から構成される金属錯体であるため、両者が同時に還元されて、金属錯体のモル数に応じて鉄とパラジウムとが析出し、鉄−パラジウム合金が生成される。従って、必要となる鉄とパラジウムとの組成割合に応じて、鉄の原料とパラジウムの原料との使用するモル数を設定することで、必要とする組成割合の鉄−パラジウム合金が製造できる。なお、鉄−パラジウム合金のナノ粒子は、自動車の排ガス浄化用の三元触媒や水素ガスを吸着する合金として用いることができる。
パラジウムの原料は、4個の塩素イオンCl−が配位子となってパラジウムイオンPd2+に配位結合するテトラクロロパラジウム酸イオン[PdCl4]2−からなる金属錯体であるテトラクロロパラジウム酸ジアンモニウム[NH4]2[PdCl4]である。鉄の原料も、4個の塩素イオンCl−が配位子となって鉄イオンFe3+に配位結合するテトラクロロ鉄酸イオン[FeCl4]−からなる金属錯体であるテトラクロロ鉄酸アンモニウム[NH4]2[FeCl4]である。両者が同一の配位子からなる金属錯体であるため、同一の温度で還元され、パラジウムと鉄とが析出し、鉄−パラジウム合金のナノ粒子が生成される。これらの原料として、例えば、三津和化学薬品株式会社の製品を用いた。また、有機化合物は、実施例3と8−12で用いた粉末のフタル酸とした。
図13に、鉄−パラジウム合金のナノ粒子を製造する製造工程を示す。最初に、テトラクロロ鉄酸アンモニウムの1モルと、テトラクロロパラジウム酸ジアンモニウムの1モルとを、8リットルのメタノールに分散する(S130工程)。分散液を容器に充填し、ごく微量のヒドラジンとフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S131工程)。容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化させ、気化したメタノールは回収装置で回収する(S132工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に、テトラクロロ鉄酸アンモニウムとテトラクロロパラジウム酸ジアンモニウムとが均一に吸着する。さらに、容器をアンモニアガス雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間放置し、テトラクロロ鉄酸アンモニウムとテトラクロロパラジウム酸ジアンモニウムとを還元する(S133工程)。これによって、フタル酸の粉体の粉体の表面に、鉄とパラジウムとが析出し、鉄−パラジウム合金のナノ粒子の集まりが析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S134工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の粉体の表面に析出していた鉄−パラジウム合金のナノ粒子が容器内で飛散し、飛散した合金のナノ粒子を回収した(S135工程)。合金のナノ粒子の重量は162gであった。
S133工程で作成した試料を、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行いフタル酸の粉体の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが確認できた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。鉄原子とパラジウム原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られず、鉄−パラジウム合金からなる粒状のナノ粒子であることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。フタル酸の粉体の表面に、鉄−パラジウム合金の原料となるテトラクロロ鉄酸アンモニウムと、テトラクロロパラジウム酸アンモニウムとを吸着させて還元雰囲気で熱処理すると、40−60nmの大きさからなる鉄−パラジウム合金のナノ粒子の集まりが析出してフタル酸の粉体の表面を覆う。さらに、フタル酸を気化させると、フタル酸の表面に析出していた合金のナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、鉄−パラジウム合金のナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例は、同一の配位子が金属イオンに配位結合する2種類の金属錯体を還元することで、2種類の金属からなる合金を製造する第三の実施例である。また、2種類のアンミン錯体を用いる第一の実施例で、白金とコバルトとからなる白金−コバルト合金のナノ粒子の集まりを製造する。本実施例では、白金とコバルトとが1対1の組成割合からなる白金−コバルト合金のナノ粒子を製造する。すなわち、白金の原料とコバルトの原料とを等しいモル数で用い、白金とコバルトとが1対1の組成割合からなる白金−コバルト合金のナノ粒子を製造する。いっぽう、白金の原料とコバルトの原料とが、同一の配位子から構成される金属錯体であるため、両者が同時に還元され、白金とコバルトとが析出し、白金−コバルト合金が生成される。従って、必要となる白金とコバルトとの組成割合に応じて、使用する金属錯体のモル数を設定することで、必要とする組成割合からなる白金−コバルト合金が製造できる。なお、白金−コバルト合金のナノ粒子は、燃料電池におけるカソード電極や温度センサの感温素子の材料として用いることができる。
コバルトの原料は、6個のアンミンがコバルトイオンCo3+に配位結合した塩化物であるヘキサアンミンコバルトトリクロライド[Co(NH3)6]Cl3である。白金の原料も、6個のアンミンが白金イオンPt2+に配位結合した塩化物であるヘキサアンミン白金テトラクロライド[Pt(NH3)6]Cl4である。両者が同一の配位子からなる金属錯体であるため、同一の温度で還元され、白金とコバルトとが析出し、白金−コバルト合金のナノ粒子が生成される。これらの原料として、例えば、田中貴金属販売株式会社に製品を用いた。有機化合物は、実施例3と8−13で用いた粉末のフタル酸とした。
図14に、白金−コバルト合金のナノ粒子を製造する製造工程を示す。ヘキサアンミンコバルトトリクロライドの1モルとヘキサアンミン白金テトラクロライドの1モルとを、8リットルのn−ブタノールに分散する(S140工程)。分散液を容器に充填し、フタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S141工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S142工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に、ヘキサアンミンコバルトトリクロライドとヘキサアンミン白金テトラクロライドとが均一に吸着する。さらに容器を水素ガス雰囲気の220℃に昇温された熱処理炉に5分間放置し、ヘキサアンミンコバルトトリクロライドとヘキサアンミン白金テトラクロライドを還元する(S143工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に白金とコバルトとが析出し、白金−コバルト合金のナノ粒子の集まりが析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S144工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の粉体の表面に析出していた白金−コバルト合金のナノ粒子が容器内で飛散し、飛散した合金のナノ粒子を回収した(S145工程)。ナノ粒子の重量は254gであった。
S143工程で作成した試料を、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、フタル酸の粉体の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。白金原子とコバルト原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られず、白金−コバルト合金からなる粒状のナノ粒子であることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。フタル酸の粉体の表面に、白金−コバルト合金の原料となるヘキサアンミンコバルトトリクロライドと、ヘキサアンミン白金テトラクロライドとを吸着させて還元雰囲気で熱処理すると、40−60nmの大きさからなる白金−コバルト合金のナノ粒子の集まりが析出して、フタル酸の粉体の表面を覆う。さらに、フタル酸を気化させると、フタル酸の粉体の表面に析出していた白金−コバルト合金のナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、白金−コバルト合金のナノ粒子の集まりが得られる。
本実施例は、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する2種類の金属錯体を還元し、2種類の金属からなる合金を製造する第四の実施例である。また、2種類のアンミン錯体を用いる第二の実施例で、白金とパラジウムとからなる白金−パラジウム合金のナノ粒子の集まりを製造する。本実施例では、白金とパラジウムとが1対1の組成割合からなる白金−パラジウム合金のナノ粒子を製造する。すなわち、白金の原料とパラジウムの原料とを、等しいモル数で用いることによって、白金とパラジウムとが1対1の組成割合からなる白金−パラジウム合金のナノ粒子を製造する。また、白金の原料とパラジウムの原料とが、同一の配位子から構成される金属錯体であるため、両者が同時に還元されて白金とパラジウムとが析出し、白金−パラジウム合金が生成される。このため、使用する金属錯体のモル数に応じて、白金−パラジウム合金における白金とパラジウムとの組成割合が変わる。従って、必要となる合金の組成割合に応じて、使用する原料のモル数の比率を設定することで、必要となる組成割合の合金が製造できる。なお、白金−パラジウム合金のナノ粒子は、燃料電池におけるカソード電極、導電性ペーストやで導電性インクの原料、超純水における過酸化水素を分解する触媒などの分野に用いることができる。
パラジウムの原料は、4個のアンミンがパラジウムイオンPd2+に配位結合した塩化物であるテトラアンミンパラジウムジクロライド水和物[Pd(NH3)4]Cl2・H2Oである。また白金の原料も、4個のアンミンが白金イオンPt2+に配位結合した塩化物であるテトラアンミン白金ジクロライド[Pt(NH3)4]Cl2である。両者が同一の配位子からなる金属錯体であるため、同一の温度で還元され、白金とパラジウムとが同時に析出し、白金−パラジウム合金のナノ粒子が生成される。これらの原料として、例えば、田中貴金属販売株式会社と株式会社徳力本店の製品を用いた。また、有機化合物は、実施例3および8−14で用いた粉末のフタル酸とした。
図15に、白金−パラジウム合金のナノ粒子を製造する製造工程を示す。テトラアンミンパラジウムジクロライドの1モルとテトラアンミン白金ジクロライドの1モルとを、8リットルのn−ブタノールに分散する(S150工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S151工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S15工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面に、テトラアンミンパラジウムジクロライドとテトラアンミン白金ジクロライドとが均一に吸着する。さらに、容器を水素ガス雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間放置し、テトラアンミンパラジウムジクロライドとテトラアンミン白金ジクロライドとを還元する(S153工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に白金とパラジウムとが析出し、白金−パラジウム合金のナノ粒子の集まりが析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S154工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の表面に析出していた白金−パラジウム合金のナノ粒子が容器内で飛散し、飛散した合金のナノ粒子を回収した(S155工程)。ナノ粒子の重量は302gであった。
S153工程で作成した試料を、電子顕微鏡で表面の観察と分析とを行なった。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行いフタル酸の粉体の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。白金原子とパラジウム原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られないため、白金−パラジウム合金からなる粒状のナノ粒子であることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。フタル酸の粉体の表面に、テトラアンミンパラジウムジクロライドとテトラアンミン白金ジクロライドとを吸着させて還元雰囲気で熱処理すると、40−60nmの大きさからなる白金−パラジウム合金のナノ粒子の集まりが析出して、フタル酸の粉体の表面を覆う。さらに、フタル酸を気化させると、フタル酸の粉体の表面に析出していた白金−パラジウム合金のナノ粒子が飛散し、飛散したナノ粒子を回収して、白金−パラジウム合金のナノ粒子の集まりが得られる。
実施例12−15において、2種類の金属錯体を還元して、合金のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、製造できる合金のナノ粒子が4つの実施例に限定されることはない。つまり、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する2種類の金属錯体を還元すると、2種類の金属からなる合金が生成される。このため、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する2種類の金属錯体は、合金のナノ粒子の原料になり、2種類の金属錯体の組み合わせに応じて様々な組成からなる合金のナノ粒子が製造できる。
本実施例は、異なるカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解によって、2種類の金属からなるナノ粒子の集まりを製造する第一の実施例である。つまり異なるカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物は、熱分解温度がカルボン酸に応じて変わるため、2種類のカルボン酸金属化合物を2段階に分けて熱分解させると、2種類の金属のナノ粒子の集まりが得られる。本実施例は、鉄と銅とからなる2種類の金属のナノ粒子の集まりを製造する。鉄は強磁性で電気導電性と熱伝導性を持つ。銅は非磁性であるが、銀に次ぐ電気導電性と熱伝導性を持つ金属である。従って、鉄のナノ粒子と銅のナノ粒子とからなる2種類のナノ粒子の集まりを、部品や基材の表面に接合させると、部品や基材の表面は、鉄より電気伝導性と熱伝導性が優れる強磁性の性質が付与される。
鉄の原料は、49段落で説明した製法で合成したオクチル酸鉄を用いた。銅の原料は、化学式がCu(C11H23COO)2で示されるラウリン酸銅(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。ラウリン酸銅は、296℃の大気圧におけるラウリン酸の沸点から熱分解が始まり、大気雰囲気では360℃付近で熱分解が完了する。また、有機化合物は、実施例1と2と実施例4−7で用いたテレフタル酸の粉体とした。
本実施例では、鉄と銅とのナノ粒子を1対2の比率で析出させ、銅の性質が優勢となる2種類のナノ粒子の混合物を析出させるため、オクチル酸鉄とラウリン酸銅との使用するモル数を1対2とした。
図16に、鉄のナノ粒子と銅のナノ粒子とからなる2種類のナノ粒子が、1対2の構成割合で析出する2種類のナノ粒子の集まりを製造する製造工程を示す。オクチル酸鉄の1モルを6リットルのn−ブタノールに分散し、この分散液にラウリン酸銅の2モルを分散する(S160工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S161工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S162工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面に、オクチル酸鉄とラウリン酸銅とが均一に吸着する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間放置する(S163工程)。これによってオクチル酸鉄が熱分解され、鉄のナノ粒子がテレフタル酸の粉体の表面に析出する。さらに、容器を大気雰囲気の360℃に昇温された熱処理炉に1分間放置する(S164工程)。これによってラウリン酸銅が熱分解され、銅のナノ粒子の集まりが、先行して析出した鉄のナノ粒子の表面に析出する。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してテレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S165工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していた鉄と銅とのナノ粒子の集まりが容器内で飛散し、飛散したナノ粒子の集まりを回収した(S166工程)。回収したナノ粒子の重量は183gであった。
本実施例は、異なるカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物を原料として用い、2種類の金属からなるナノ粒子の集まりを製造する第二の実施例である。本実施例では、銅とアルミニウムとからなる2種類の金属ナノ粒子の集まりを製造する。銅は、銀に次ぐ電気導電性と熱伝導性を持つ金属である。アルミニウムは、銅と金に次ぐ電気導電性と熱伝導性を持つ金属であるが、密度が銅の0.3倍程度であるため、単位質量あたりの電気導電度と熱伝導度は銅より優れる。従って、銅のナノ粒子と過剰なアルミニウムのナノ粒子とからなる2種類の金属のナノ粒子の集まりを、部品や基材の表面に接合させると、部品や基材の表面に、電気伝導性と熱伝導性が優れる軽量な被膜が形成される。
銅の原料は、49段落で説明した製法に準じてオクチル酸銅を合成した。但し、オクチル酸ナトリウムと反応させる無機金属化合物は硫酸銅CuSO4になる。アルミニウムの原料は、化学式がAl(C11H23COO)3で示されるラウリン酸アルミニウム(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。ラウリン酸アルミニウムは、296℃の大気圧におけるラウリン酸の沸点から熱分解が始まり、大気雰囲気では360℃付近で熱分解が完了する。また有機化合物は、実施例1と2と実施例4−7で用いたテレフタル酸の粉体とした。
本実施例では、銅とアルミニウムとのナノ粒子を1対2の構成割合で析出させ、アルミニウムの性質が優勢となる2種類のナノ粒子の混合物を析出させるため、2種類のカルボン酸金属化合物の使用するモル数を1対2とした。
図17に、銅のナノ粒子とアルミニウムのナノ粒子とからなる2種類のナノ粒子が、1対2の比率で析出する2種類のナノ粒子の集まりを製造する製造工程を示す。オクチル酸銅の1モルを9リットルのn−ブタノールに分散し、この分散液に、ラウリン酸アルミニウムの2モルを分散する(S170工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S171工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S172工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面に、オクチル酸銅とラウリン酸アルミニウムとが均一に吸着する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間放置する(S173工程)。これによって、オクチル酸銅が熱分解され、銅のナノ粒子がテレフタル酸の粉体の表面に析出する。さらに、容器を大気雰囲気の360℃に昇温された熱処理炉に1分間放置する(S174工程)。これによって、ラウリン酸アルミニウムが熱分解され、アルミニウムのナノ粒子の集まりが、先行して析出した銅のナノ粒子の表面に析出する。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してテレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S175工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していた銅とアルミニウムとの2種類のナノ粒子の集まりが容器内で飛散し、飛散したナノ粒子の集まりを回収した(S176工程)。この結果、銅のナノ粒子とアルミニウムのナノ粒子との構成比率が1対2からなる2種類のナノ粒子の集まり118gが得られた。
実施例16と17とで、2種類の金属のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、製造できる2種類の金属のナノ粒子の組み合わせは2つの実施例に限定されない。つまり、異なるカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物を2段階に分けて熱分解することで、2種類の金属のナノ粒子が得られる。このため、2種類のカルボン酸金属化合物の組み合わせに応じて、様々な2種類の金属のナノ粒子の混合物が製造できる。
本実施例は、異なるカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物を、原料として用い、金属と金属酸化物とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する実施例である。本実施例は、アルミニウムのナノ粒子と、マグネタイトFe3O4のナノ粒子とからなる2種類のナノ粒子の集まりを、2対1の構成割合で製造する。アルミニウムは、銅と金に次ぐ電気導電性と熱伝導性を持つ金属であり、密度が2.7g/cm3でマグネタイトの密度の約1/2である。一方、マグネタイトは強磁性体で電気導電性であり、モース硬度が6のガラスより硬い物質である。従って、過剰なアルミニウムのナノ粒子とマグネタイトのナノ粒子とからなる2種類のナノ粒子の集まりを、部品や基材の表面に加速して衝突させると、アルミニウムのナノ粒子にマグネタイトのナノ粒子が食い込んで接合し、部品や基材の表面に、電気伝導性と熱伝導性が優れる強磁性の被膜が形成される。
アルミニウムの原料は、オクチル酸アルミニウム Al(C7H15COO)3(例えば、ホープ製薬株式会社の製品)を用いた。マグネタイトFe3O4の原料は、実施例3で用いた熱分解で酸化鉄FeOを析出する化学式が(C11H7COO)2Feで示されるナフテン酸鉄を用いた。また、オクチル酸アルミニウムおよびナフテン酸鉄を吸着させる有機化合物として、実施例1と2と実施例4−7で用いたテレフタル酸の粉体とした。本実施例では、アルミニウムとマグネタイトとのナノ粒子を、2対1の構成割合で析出させるため、2種類のカルボン酸金属化合物の使用するモル数を2対1とした。
図18に、アルミニウムのナノ粒子とマグネタイトのナノ粒子とからなる2種類のナノ粒子の集まりを、2対1の構成割合で製造する製造工程を示す。オクチル酸アルミニウムの2モルを12リットルのn−ブタノールに分散し、さらに、この分散液に、ナフテン酸鉄の1モルを分散する(S180工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S181工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S182工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面に、オクチル酸アルミニウムとナフテン酸鉄とが均一に吸着する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間放置する(S183工程)。これによって、オクチル酸アルミニウムが熱分解され、アルミニウムのナノ粒子がテレフタル酸の粉体の表面に析出する。さらに、容器を大気雰囲気の330℃に昇温された熱処理炉に10分間放置し、ナフテン酸鉄を酸化鉄FeOに熱分解する(S184工程)。これによって、酸化鉄FeOのナノ粒子がアルミニウムのナノ粒子の表面に析出する。この後、熱処理炉の温度を330℃から1℃/分の昇温速度で360℃まで昇温し、360℃に容器を30分間放置する(S185工程)。この際、酸化鉄FeOを構成する鉄イオンFe2+の半数がFe3+に酸化され、FeO・Fe2O3からなるマグネタイトFe3O4が生成される。さらに、大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を昇華させ、昇華したテレフタル酸は回収装置で回収する(S186工程)。テレフタル酸が昇華する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していたアルミニウムのナノ粒子とマグネタイトのナノ粒子とが容器内で飛散し、飛散したナノ粒子の集まりを回収する(S187工程)。この結果、アルミニウムのナノ粒子とマグネタイトのナノ粒子との構成比率が2対1からなる2種類のナノ粒子の集まりの285gが得られた。
本実施例では、アルミニウムとマグネタイトFe3O4からなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、金属と金属酸化物のナノ粒子の組み合わせが、本実施例に限定されることはない。つまり、異なるカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解を2段階に分けて行うため、最初の熱分解で生成する金属と次の熱分解で生成する金属酸化物の組み合わせは、様々な組み合わせが可能になる。
本実施例は、カルボン酸金属化合物と金属錯体とを原料として用い、2種類の金属からなるナノ粒子の集まりを製造する実施例である。本実施例は、鉄のナノ粒子と白金のナノ粒子とからなる2種類の金属ナノ粒子の集まりを製造する。白金のナノ粒子は、体積に対する面積の比率である比表面積が大きいため、効率の良い触媒作用を発揮する。しかし、白金は、一酸化炭素のような還元性ガスが存在すると、還元性のガスを吸着し、表層が還元性ガスで覆われることで、触媒作用が発揮できなくなる被毒の現象をもたらす。いっぽう、鉄のナノ粒子は、一酸化炭素のような還元性ガスと容易に反応し、一酸化炭素の場合は、ペンタカルボニル鉄Fe(CO)5を生成する。さらにペンタカルボニル鉄は、120℃以上に昇温すると鉄に還元されため、昇温によって鉄のナノ粒子が再生される。従って、白金のナノ粒子の集まりに、鉄のナノ粒子を加えると、白金のナノ粒子は被毒せず、還元性ガスが存在する環境でも長期にわたって触媒作用を発揮する。このような事例に、本実施例で製造したナノ粒子の集まりが適応できる。本実施例は、白金と鉄との析出割合を10対1とするため、白金の原料のモル数を、鉄の原料のモル数の10倍とした。
鉄のナノ粒子の原料は、49段落で説明したオクチル酸鉄を用いた。白金のナノ粒子の原料は、実施例15で用いた4個のアンミンが白金イオンPt2+に配位結合した塩化物であるテトラアンミン白金ジクロライド[Pt(NH3)4]Cl2である。また、オクチル酸鉄とテトラアンミン白金ジクロライドとを吸着させる有機化合物は、実施例1と2と実施例4−7で用いたテレフタル酸の粉体とした。
図19に、鉄のナノ粒子と白金のナノ粒子とからなる2種類のナノ粒子が、1対10の比率で析出する2種類のナノ粒子の集まりを製造する製造工程を示す。オクチル酸鉄の1モルを3リットルのn−ブタノールに分散する(S190工程)。この分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末10kgを投入して攪拌する(S191工程)。この容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S192工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面に、オクチル酸鉄が均一に吸着する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間放置する(S193工程)。これによって、オクチル酸鉄が熱分解され、鉄のナノ粒子がテレフタル酸の粉体の表面に析出する。さらに、テトラアンミン白金ジクロライドの10モルを30リットルのn−ブタノールに分散する(S194工程)。この分散液を容器に充填し、さらに、S193工程の処理を行った鉄のナノ粒子が表面に析出したテレフタル酸の粉体の集まりを加える(S195工程)。n−ブタノールを気化した後に、容器を水素雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、テトラアンミン白金ジクロライドを還元する(S196工程)。これによって、テレフタル酸の粉体の表面に析出していた鉄のナノ粒子の表面に、白金のナノ粒子が析出する。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してテレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S197工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の表面に析出していた鉄のナノ粒子と白金のナノ粒子が容器内で飛散し、飛散したナノ粒子の集まりを回収した(S198工程)。この結果、鉄のナノ粒子と白金のナノ粒子との構成比率が1対10からなる2種類のナノ粒子の集まり1.12kgが得られた。
本実施例で、鉄と白金とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、2種類の金属の組み合わせが、本実施例に限定されない。つまり、カルボン酸金属化合物の熱分解処理で生成する金属と、金属錯体の還元処理で生成する金属とを、2段階の熱処理に分けて生成するため、カルボン酸金属化合物と金属錯体との組み合わせに応じて、様々な組み合わせからなる2種類の金属のナノ粒子の混合物が製造できる。
本実施例は、カルボン酸金属化合物と金属錯体とを原料として用い、金属酸化物と金属とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する実施例である。本実施例は、酸化チタンTiO2と白金とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する。酸化チタンと白金とは異なる触媒作用を持つため、2種類のナノ粒子の集まりは複合的な触媒作用を発揮する。本実施例では、酸化チタンのナノ粒子と白金のナノ粒子との構成比率を1対1とするため、酸化チタンの原料を1モルとし、白金の原料も1モルとして使用した。
酸化チタンの原料は、実施例3と同様にテトラアセチルアセネートチタンを用いた。また、白金の原料は、実施例19と同様にテトラアンミン白金ジクロライドを用いた。テトラアセチルアセネートチタンとテトラアンミン白金ジクロライドとを吸着させる有機化合物を、実施例8−15で用いたフタル酸の粉体とした。
図20に、酸化チタンのナノ粒子と白金のナノ粒子とを、1対1の構成比率で製造する製造工程を示す。最初に、テトラアセチルアセトネートチタンの1モルを、4リットルのn−ブタノールに分散する(S200工程)。分散液を容器に充填し、フタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S201工程)。この後、容器を120℃の熱処理炉に入れ、n−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S202工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に、テトラアセチルアセトネートチタンが均一に吸着する。さらに、容器を大気囲気雰囲気の190℃に昇温された熱処理炉に5分間入れて、テトラアセチルアセトネートチタンを熱分解する(S203工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面は酸化チタンのナノ粒子で覆われる。次に、テトラアンミン白金ジクロライドの1モルを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S204工程)。分散液を容器に充填し、S203工程で処理した、鉄のナノ粒子が表面に析出したフタル酸の粉体の集まりを投入する(S205工程)。n−ブタノールを気化させた後、容器を水素雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、テトラアンミン白金ジクロライドを還元する(S206工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に析出していた酸化チタンのナノ粒子の表面に、白金のナノ粒子が析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に、2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S207工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の表面に析出していた酸化チタンのナノ粒子と白金のナノ粒子が容器内で飛散し、飛散したナノ粒子の集まりを回収した(S208工程)。この結果、酸化チタンのナノ粒子と白金のナノ粒子との構成比率が1対1からなる2種類のナノ粒子の集まり275gが得られた。
本実施例では、酸化チタンと白金とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、製造できる金属酸化物と金属との組み合わせは、本実施例に限定されない。つまり、カルボン酸金属化合物の熱分解処理で生成する金属酸化物と、金属錯体の還元処理で生成する金属とを、2段階の熱処理に分けて生成するため、カルボン酸金属化合物と金属錯体との組み合わせに応じて、様々な組み合わせからなる金属酸化物と金属からなる2種類のナノ粒子の混合物が製造できる。
本実施例は、異なる配位子からなる2種類の金属錯体を原料として用い、2種類の金属からなるナノ粒子の集まりを製造する第一の実施例である。つまり、異なる配位子からなる2種類の金属錯体は、還元される温度が配位子に応じて変わるため、2段階に分けて還元処理すると、2種類の金属のナノ粒子の集まりが得られる。本実施例では、銀とパラジウムからなる2種類の金属のナノ粒子の集まりを製造する。なお、銀とパラジウムとの構成比率を1対1とするため、銀の原料とパラジウムの原料を1モルとして使用した。
銀の原料は、実施例9で用いた2個のアンミンが銀イオンに配位結合した塩化物であるジアンミン銀クロライドとした。また、パラジウムの原料は、実施例15で用いた4個のアンミンがパラジウムイオンに配位結合した塩化物であるテトラアンミンパラジウムジクロライド水和物とした。これら2種類の金属錯体は、いずれもアンモニアが配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン錯体であるが、アンミンの数が異なるため、還元される温度が若干異なる。また、有機化合物は、実施例3および8−15で用いた粉末のフタル酸とした。
図21に、銀と白金とからなるナノ粒子の集まりを、1対1の構成比率で製造する製造工程を示す。最初に、銀の原料であるジアンミン銀クロライドの1モルと、パラジウムの原料であるテトラアンミンパラジウムジクロライド水和物の1モルを、7リットルのn−ブタノールに分散する(S210工程)。分散液を容器に充填し、フタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S211工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S212工程)。これによってフタル酸の粉体の表面に、ジアンミン銀クロライドとテトラアンミンパラジウムジクロライドとが均一に吸着する。さらに、容器を水素ガス雰囲気の180℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、ジアンミン銀クロライドを還元する(S213工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に銀のナノ粒子の集まりが析出する。さらに、容器を水素ガス雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、テトラアンミンパラジウムジクロライドを還元する(S214工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に析出していた銀のナノ粒子の表面に、パラジウムのナノ粒子が析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S215工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の表面に析出していた銀とパラジウムとのナノ粒子の集まりが容器内で飛散し、飛散したナノ粒子の集まりを回収した(S216工程)。この結果、銀のナノ粒子とパラジウムのナノ粒子との構成比率が1対1からなる2種類のナノ粒子の集まり214gが得られた。
本実施例は、異なる配位子からなる2種類の金属錯体を原料として用い、2種類の金属からなるナノ粒子の集まりを製造する第二の実施例である。本実施例は、パラジウムのナノ粒子とロジウムのナノ粒子とからなる2種類の金属ナノ粒子の集まりを製造する。本実施例では、パラジウムのナノ粒子とロジウムのナノ粒子との構成比率を1対1とするため、パラジウムの原料を1モルとし、ロジウムの原料も1モルとして使用した。
パラジウムの原料は、実施例15と実施例21で用いた、4個のアンミンがパラジウムイオンに配位結合した塩化物である、テトラアンミンパラジウムジクロライド水和物[Pd(NH3)4]Cl2・H2Oとした。また、ロジウムの原料は、6個のアンミンがロジウムイオンRh3+に配位結合した塩化物である、ヘキサアンミンロジウムトリクロライド[Rh(NH3)6]Cl3(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。また、有機化合物は、実施例3および8−15で用いた粉末のフタル酸とした。
図22に、パラジウムとロジウムとからなるナノ粒子の集まりを、1対1の構成比率で製造する製造工程を示す。最初に、パラジウムの原料であるテトラアンミンパラジウムジクロライドの1モルと、ロジウムの原料であるヘキサアンミンロジウムトリクロライドの1モルを、7リットルのn−ブタノールに分散する(S220工程)。分散液を容器に充填し、フタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S221工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S222工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に、テトラアンミンパラジウムジクロライドとヘキサアンミンロジウムトリクロライドとが均一に吸着する。さらに容器を水素ガス雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、テトラアンミンパラジウムジクロライドを還元する(S223工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面にパラジウムのナノ粒子の集まりが析出する。さらに、容器を水素ガス雰囲気の220℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、ヘキサアンミンロジウムトリクロライドを還元する(S224工程)。これによって、フタル酸の粉体の表面に析出していたパラジウムのナノ粒子の表面に、ロジウムのナノ粒子が析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置してフタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S225工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の表面に析出していたパラジウムとロジウムとのナノ粒子の集まりが容器内で飛散し、飛散したナノ粒子の集まりを回収した(S226工程)。この結果、パラジウムのナノ粒子とロジウムのナノ粒子との構成比率が1対1からなる2種類のナノ粒子の集まり209gが得られた。
実施例21と22とに、異なる配位子からなる2種類の金属錯体を原料として用い、2種類の金属のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、製造できる2種類の金属のナノ粒子の組み合わせは、2つの実施例に限定されない。つまり、異なる配位子からなる2種類の金属錯体は、還元される温度が異なるため、2段階に分けて還元処理を行うことで、様々な組み合わせからなる2種類の金属のナノ粒子の集まりが製造できる。
本実施例は、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解で合金のナノ粒子を生成し、さらに、カルボン酸金属化合物の熱分解で金属のナノ粒子を生成し、合金と金属とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する第一の実施例である。本実施例は鉄−ニッケル合金とコバルトからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する。
鉄−ニッケル合金のナノ粒子は、実施例5で説明した鉄−ニッケル合金のナノ粒子の製造方法に準じて製造した。また、コバルトのナノ粒子は、オクチル酸コバルト(例えば、東栄化工株式会社の製品)を原料として用いた。さらに、有機化合物は、実施例1−7と16−19で用いた粉末のテレフタル酸とした。
図23に、鉄−ニッケル合金のナノ粒子とコバルトのナノ粒子とからなる、2種類のナノ粒子の集まりを製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸鉄の1モルとオクチル酸ニッケルの1モルとを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S230工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S231工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S232工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとを熱分解する(S233工程)。この際、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとが同時に熱分解して鉄とニッケルとが析出し、テレフタル酸の粉体の表面は鉄−ニッケル合金のナノ粒子で覆われる。さらに、オクチル酸コバルトの1モルを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S234工程)。分散液を容器に充填し、さらに、S233工程の処理によって表面に鉄−ニッケル合金のナノ粒子の集まりが析出したテレフタル酸の粉体の集まりを投入する(S235工程)。容器を、120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S236工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸コバルトを熱分解する(S237工程)。これによって、オクチル酸コバルトが熱分解して、鉄−ニッケル合金のナノ粒子の表面にコバルトのナノ粒子が析出する。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S238工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していた鉄−ニッケル合金のナノ粒子の集まりと、コバルトのナノ粒子の集まりとが容器内に飛散し、飛散したナノ粒子集まりを回収した(S239工程)。この結果、鉄−ニッケル合金のナノ粒子とコバルトのナノ粒子との構成比率が1対1からなる、2種類のナノ粒子の集まり173gが得られた。
本実施例は、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解で合金のナノ粒子を生成し、さらに、カルボン酸金属化合物の熱分解で金属のナノ粒子を生成し、合金と金属とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する第二の実施例である。本実施例は鉄−コバルト合金とニッケルからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する。
鉄−コバルト合金のナノ粒子は、実施例1で用いたオクチル酸鉄と、実施例23で用いたオクチル酸コバルトとを原料として用い、鉄−コバルト合金のナノ粒子を製造した。また、ニッケルのナノ粒子は、実施例5で用いたオクチル酸ニッケルを原料として用い、ニッケルのナノ粒子を製造した。さらに、有機化合物は、実施例1−6と15−18で用いた粉末のテレフタル酸とした。
図24に、鉄−コバルト合金のナノ粒子とニッケルのナノ粒子とからなる、2種類のナノ粒子の集まりを製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸鉄の1モルと、オクチル酸コバルトの1モルとを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S240工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S241工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S242工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸鉄とオクチル酸コバルトとを熱分解する(S243工程)。この際、オクチル酸鉄とオクチル酸コバルトとが、同時に熱分解して鉄とコバルトとが析出し、テレフタル酸の粉体の表面は、鉄−コバルト合金のナノ粒子で覆われる。さらに、オクチル酸ニッケルの1モルを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S244工程)。分散液を容器に充填し、さらに、S243工程の処理によって表面に鉄−コバルト合金のナノ粒子の集まりが析出した、テレフタル酸の粉体の集まりを投入する(S245工程)。さらに、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S246工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸ニッケルを熱分解する(S247工程)。これによって、オクチル酸ニッケルが熱分解して、鉄−コバルト合金のナノ粒子の表面に、ニッケルのナノ粒子が析出する。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分放置し、テレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S248工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していた、鉄−コバルト合金のナノ粒子の集まりとニッケルのナノ粒子の集まりとが容器内に飛散し、飛散したナノ粒子集まりを回収した(S249工程)。この結果、鉄−コバルト合金のナノ粒子とニッケルのナノ粒子との構成比率が1対1からなる2種類のナノ粒子の集まり173gが得られた。
実施例23と24とに、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解によって合金のナノ粒子を生成し、さらに、カルボン酸金属化合物の熱分解によって金属のナノ粒子を生成し、合金と金属とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、製造できる合金と金属からなる2種類のナノ粒子の組み合わせは、2つの実施例に限定されない。つまり、合金のナノ粒子を生成する熱分解工程と、金属のナノ粒子を生成する熱分解工程とを分けて、2段階の熱分解処理によって合金と金属のナノ粒子を生成するため、使用するカルボン酸金属化合物の組み合わせに応じて、様々な組み合わせからなる合金と金属とからなる2種類のナノ粒子の混合物が製造できる。
本実施例は、カルボン酸金属化合物の熱分解で金属のナノ粒子を生成し、さらに、同一の配位子からなる2種類の金属錯体の還元で合金のナノ粒子を生成し、金属と合金とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する第一の実施例である。本実施例では、コバルトと鉄−白金合金とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する。
コバルトのナノ粒子は、実施例23で説明した製造方法に準じて製造した。また、鉄−白金合金のナノ粒子は、実施例12で説明した製造方法に準じて製造した。さらに、有機化合物として、実施例1−7と16−19で用いた粉末のテレフタル酸を用いた。
図25に、コバルトのナノ粒子と鉄−白金合金のナノ粒子とからなる、2種類のナノ粒子の集まりを製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸コバルトの1モルを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S250工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉体1kgを容器に投入する(S251工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S252工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れ、オクチル酸コバルトを熱分解する(S253工程)。これによって、オクチル酸コバルトの熱分解で生成されたコバルトのナノ粒子が、テレフタル酸の粉体の表面を覆う。さらに、テトラクロロ鉄酸アンモニウムの1モルとテトラクロロ白金酸アンモニウムの1モルとを、8リットルのメタノールに分散する(S254工程)。分散液を容器に充填し、さらに、還元剤であるヒドラジンのごく微量と、S253工程の処理によって表面にコバルトのナノ粒子の集まりが析出した、テレフタル酸の粉末を投入して攪拌する(S255工程)。容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化させ、気化したメタノールは回収装置で回収する(S256工程)。さらに、容器をアンモニアガスの雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、テトラクロロ鉄酸アンモニウムとテトラクロロ白金酸アンモニウムとを還元する(S257工程)。この際、テレフタル酸の粉体の表面に鉄と白金とが同時に析出し、鉄−白金合金のナノ粒子が、コバルトのナノ粒子の表面に析出する。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S258工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していたコバルトのナノ粒子の集まりと鉄−白金合金のナノ粒子の集まりが容器内に飛散し、飛散したナノ粒子集まりを回収した(S259工程)。この結果、コバルトのナノ粒子と鉄−白金合金のナノ粒子との構成比率が1対1からなる、2種類のナノ粒子の集まり310gが得られた。
本実施例は、カルボン酸金属化合物の熱分解で金属のナノ粒子を生成し、さらに、同一の配位子からなる2種類の金属錯体の還元で合金のナノ粒子を生成し、金属と合金とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する第二の実施例である。本実施例では、ニッケルと鉄−パラジウム金合金とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する。
ニッケルのナノ粒子の製造は、実施例24で説明した製造方法に準じて製造した。また鉄−パラジウム合金のナノ粒子の製造は、実施例13で説明した製造方法に準じて製造した。また有機化合物は、実施例1−7と16−19で用いた粉末のテレフタル酸とした。
図26に、ニッケルのナノ粒子と鉄−パラジウム合金のナノ粒子とからなる、2種類のナノ粒子の集まりを製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸ニッケルの1モルを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S260工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S261工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S262工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸ニッケルを熱分解する(S263工程)。これによって、オクチル酸ニッケルの熱分解で析出したニッケルのナノ粒子の集まりが、テレフタル酸の粉体の表面を覆う。さらに、テトラクロロ鉄酸アンモニウムの1モルと、テトラクロロパラジウム酸アンモニウムの1モルとを、8リットルのメタノールに分散する(S264工程)。分散液を容器に充填し、ごく微量のヒドラジンと、S263工程の処理によって表面にニッケルのナノ粒子の集まりが析出した、テレフタル酸の粉体の集まりを容器に投入する(S265工程)。容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化させ、気化したメタノールは回収装置で回収する(S266工程)。さらに、容器をアンモニアガス雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、テトラクロロ鉄酸アンモニウムとテトラクロロパラジウム酸アンモニウムとを還元する(S267工程)。これによって、鉄とパラジウムとが析出し、鉄−パラジウム合金のナノ粒子が、テレフタル酸の粉体の表面に析出していたニッケルのナノ粒子の表面に析出する。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S268工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していたニッケルのナノ粒子の集まりと、鉄−パラジウム合金のナノ粒子の集まりが容器内に飛散し、飛散したナノ粒子集まりを回収した(S269工程)。この結果、ニッケルのナノ粒子と鉄−パラジウム合金のナノ粒子との構成比率が1対1からなる2種類のナノ粒子の集まり221gが得られた。
実施例25と26に、金属と合金とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、製造できる金属と合金の組み合わせは、2つの実施例における組み合わせに限定されない。つまり、金属のナノ粒子を生成する熱分解処理と、合金のナノ粒子を生成する還元処理とを分けて、2段階の熱処理で金属と合金のナノ粒子を生成するため、カルボン酸金属化合物を構成する金属イオンと、金属錯体を構成する金属イオンとに応じて、様々な組み合わせからなる金属と合金の2種類のナノ粒子の混合物が製造できる。
本実施例は、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解によって第一の合金のナノ粒子を生成し、さらに、同一の配位子からなる2種類の金属錯体の還元によって第二の合金のナノ粒子を生成し、2種類の合金のナノ粒子の集まりを製造する実施例である。本実施例では、鉄−ニッケル合金のナノ粒子と鉄−白金合金のナノ粒子とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する。
鉄−ニッケル合金のナノ粒子は、実施例5で説明した製造方法に準じて製造した。また鉄−白金合金のナノ粒子は、実施例11で説明した製造方法に準じて製造した。また、有機化合物は、実施例1−7と16−19で用いた粉末のテレフタル酸とした。
図27に、鉄−ニッケル合金のナノ粒子と鉄−白金合金のナノ粒子とからなる、2種類の合金のナノ粒子の集まりを製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸鉄の1モルとオクチル酸ニッケルの1モルとを、3リットルのn−ブタノールに分散する(S270工程)。分散液を容器に充填し、テレフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S271工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S272工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとを熱分解する(S273工程)。この際、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとが同時に熱分解して鉄とニッケルとが析出し、テレフタル酸の粉体の表面は、鉄−ニッケル合金のナノ粒子で覆われる。さらに、テトラクロロ鉄酸アンモニウムの1モルとテトラクロロ白金酸アンモニウムの1モルとを、8リットルのメタノールに分散する(S274工程)。分散液を容器に充填し、還元剤であるヒドラジンのごく微量と、S273工程の処理によって、表面に鉄−ニッケル合金のナノ粒子の集まりが析出した、テレフタル酸の粉体の集まりを投入する(S275工程)。容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化させ、気化したメタノールは回収装置で回収する(S276工程)。さらに容器を、アンモニアガスの雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、テトラクロロ鉄酸アンモニウムとテトラクロロ白金酸アンモニウムとを還元する(S277工程)。この際、テレフタル酸の粉体の表面に鉄と白金とが析出し、鉄−白金合金のナノ粒子の集まりが、鉄−ニッケル合金のナノ粒子の表面に析出する。さらに、容器を大気雰囲気の410℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を気化させ、気化したテレフタル酸は回収装置で回収する(S278工程)。テレフタル酸が気化する際に、テレフタル酸の粉体の表面に析出していた鉄−ニッケル合金のナノ粒子の集まりと、鉄−白金合金のナノ粒子の集まりが容器内に飛散し、飛散したナノ粒子集まりを回収した(S279工程)。この結果、鉄−ニッケル合金のナノ粒子と鉄−白金合金のナノ粒子との構成比率が、1対1からなる2種類のナノ粒子の集まり365gが得られた。
本実施例では、鉄−ニッケル合金のナノ粒子と鉄−白金合金のナノ粒子とからなる、2種類のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、製造できる2種類の合金のナノ粒子の組み合わせは本実施例に限られない。つまり、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解処理による合金のナノ粒子の生成工程と、同一の配位子からなる2種類の金属錯体の還元処理による合金のナノ粒子の生成工程を分け、2段階の熱処理で2種類の合金を製造するため、カルボン酸金属化合物を構成する金属イオンと、金属錯体を構成する金属イオンとに応じて、様々な組み合わせからなる2種類の合金のナノ粒子の混合物が製造できる。
本実施例は、同一の配位子からなる2種類の金属錯体の還元によって、合金のナノ粒子を生成する還元処理を2段階に分けて行い、2種類の合金のナノ粒子の集まりを製造する実施例である。本実施例では鉄−白金合金のナノ粒子と、白金−コバルト合金のナノ粒子とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する。
鉄−白金合金のナノ粒子の製造は、実施例12で説明した製造方法に準じて製造した。また、白金−コバルト合金のナノ粒子の製造は、実施例14で説明した製造方法に準じて製造した。また有機化合物は、実施例3および8−15で用いた粉末のフタル酸とした。
図28に、鉄−白金合金のナノ粒子と白金−コバルト合金のナノ粒子とからなる、2種類の合金ナノ粒子の集まりを製造する製造工程を示す。最初に、テトラクロロ鉄酸アンモニウムの1モルとテトラクロロ白金酸アンモニウムの1モルとを、8リットルのメタノールに分散する(S280工程)。分散液を容器に充填し、還元剤であるヒドラジンのごく微量とフタル酸の粉末1kgを投入して攪拌する(S281工程)。容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化させ、気化したメタノールは回収装置で回収する(S282工程)。さらに容器を、アンモニアガスの雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、テトラクロロ鉄酸アンモニウムとテトラクロロ白金酸アンモニウムとを還元する(S283工程)。この際、フタル酸の粉体の表面に鉄と白金とが同時に析出し、鉄−白金合金のナノ粒子の集まりが析出する。さらに、ヘキサアンミンコバルトクロライドの1モルとヘキサアンミン白金クロライドの1モルとを、8リットルのn−ブタノールに分散する(S284工程)。分散液を容器に充填し、S283工程の処理によって、表面に鉄−白金合金のナノ粒子の集まりが析出したフタル酸の粉体の集まりを投入して攪拌する(S285工程)。容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収装置で回収する(S286工程)。さらに容器を水素ガス雰囲気の220℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、ヘキサアンミンコバルトクロライドとヘキサアンミン白金クロライドとを還元する(S287工程)。この際、フタル酸の粉体の表面に白金とコバルトとが同時に析出し、白金−コバルト合金のナノ粒子の集まりが、鉄−白金合金のナノ粒子の表面に析出する。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に2分間放置し、フタル酸を気化させ、気化したフタル酸は回収装置で回収する(S288工程)。フタル酸が気化する際に、フタル酸の粉体の表面に析出していた鉄−白金合金のナノ粒子の集まりと、白金−コバルト合金のナノ粒子の集まりが容器内に飛散し、飛散したナノ粒子集まりを回収した(S289工程)。この結果、鉄−白金合金のナノ粒子と白金−コバルト合金のナノ粒子との構成比率が1対1からなる、2種類のナノ粒子の集まり505gが得られた。
本実施例では鉄−白金合金のナノ粒子と白金−コバルト合金のナノ粒子とからなる、2種類のナノ粒子の集まりを製造する実施例を説明したが、製造できる2種類の合金のナノ粒子の組み合わせは本実施例に限られない。つまり、同一の配位子からなる2種類の金属錯体からなる2組の金属錯体を、2段階に分けて還元処理して各工程で合金を生成するため、4種類の金属錯体を構成する4種類の金属イオンに応じて、様々な組み合わせからなる2種類の合金のナノ粒子の混合物が製造できる。
Claims (16)
- 金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを製造する製造方法は、大気雰囲気での熱処理で金属ないしは金属酸化物を析出する有機金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記分散液に、前記有機金属化合物が熱分解する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体を投入する第2の工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で前記有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する第4の工程と、前記有機化合物の粉体を、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第5の工程とからなり、これら5つの工程を連続して実施することで、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを製造する製造方法。
- 請求項1に記載した大気雰囲気での熱処理で金属を析出する有機金属化合物として、同一の有機酸からなる2種類の有機金属化合物を用い、合金のナノ粒子の集まりを製造する製造方法は、請求項1に記載した大気雰囲気での熱処理で金属を析出する有機金属化合物が、同一の有機酸からなる2種類の有機金属化合物であり、該2種類の有機金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記分散液に、前記2種類の有機金属化合物が熱分解する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを投入する第2の工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で前記2種類の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する第4の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第5の工程とからなり、これら5つの工程を連続して実施することで、請求項1に記載した大気雰囲気での熱処理で金属を析出する有機金属化合物として、同一の有機酸からなる2種類の有機金属化合物を用い、合金のナノ粒子の集まりを製造する製造方法。
- 請求項1ないしは請求項2に記載したナノ粒子の集まりを製造する製造方法において、請求項1ないしは請求項2に記載した大気雰囲気での熱処理で金属を析出する有機金属化合物が、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合する第一の特徴と、飽和脂肪酸からなるカルボン酸で構成される第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物である、請求項1ないしは請求項2に記載したナノ粒子の集まりを製造する製造方法。
- 請求項1に記載した金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを製造する製造方法において、請求項1に記載した大気雰囲気での熱処理で金属酸化物を析出する有機金属化合物が、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物である、ないしは、アセチルアセトナートを構成する酸素イオンが金属イオンに配位結合するアセチルアセトン金属化合物である、請求項1に記載した金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを製造する製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載したナノ粒子の集まりを製造する製造方法において、請求項1または請求項2に記載した有機金属化合物が熱分解する温度より高い温度で気化する有機化合物が、飽和脂肪酸ないしは芳香族カルボン酸ないしは多環芳香族炭化水素からなるいずれかの有機化合物である、請求項1または請求項2に記載したナノ粒子の集まりを製造する製造方法。
- 金属のナノ粒子の集まりを製造する製造方法は、還元雰囲気での熱処理で金属を析出する無機金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記分散液に、前記無機金属化合物が還元する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを投入する第2の工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記無機金属化合物が還元する温度に昇温する第4の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第5の工程とからなり、これら5つの工程を連続して実施することで、金属のナノ粒子の集まりを製造する製造方法。
- 請求項6に記載した還元雰囲気での熱処理で金属を析出する無機金属化合物として、同一の無機物が異なる金属イオンに結合する2種類の無機金属化合物を用い、合金のナノ粒子の集まりを製造する製造方法は、請求項6に記載した還元雰囲気での熱処理で金属を析出する無機金属化合物が、同一の無機物が異なる金属イオンに結合する2種類の無機金属化合物であり、該2種類の無機金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記分散液に、前記2種類の無機金属化合物が還元する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを投入する第2の工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記2種類の無機金属化合物が還元する温度に昇温する第4の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第5の工程とからなり、これら5つの工程を連続して実施することで、請求項6に記載した還元雰囲気での熱処理で金属を析出する無機金属化合物として、同一の無機物が異なる金属イオンに結合する2種類の無機金属化合物を用い、合金のナノ粒子の集まりを製造する製造方法。
- 請求項6ないしは請求項7に記載したナノ粒子の集まりを製造する製造方法において、請求項6ないしは請求項7に記載した還元雰囲気での熱処理で金属を析出する無機金属化合物が、無機物からなる配位子が金属イオンに配位結合する金属錯体である、請求項6ないしは請求項7に記載したナノ粒子の集まりを製造する製造方法。
- 請求項6または請求項7に記載したナノ粒子の集まりを製造する製造方法において、請求項6または請求項7に記載した無機金属化合物が還元する温度より高い温度で気化する有機化合物が、飽和脂肪酸ないしは芳香族カルボン酸ないしは多環芳香族炭化水素からなるいずれかの有機化合物である、請求項6または請求項7に記載したナノ粒子の集まりを製造する製造方法。
- 金属ないしは金属酸化物のいずれかからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する製造方法は、大気雰囲気での熱処理で第一の金属ないしは第一の金属酸化物を析出する第一のカルボン酸金属化合物と、前記第一のカルボン酸金属化合物の大気雰囲気での熱処理より高い温度での熱処理で、第二の金属ないしは第二の金属酸化物を析出する第二のカルボン酸金属化合物とを、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記分散液に、前記第二のカルボン酸金属化合物が熱分解する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを投入する第2の工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で前記第一のカルボン酸金属化合物が熱分解する温度に昇温する第4の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で前記第二のカルボン酸金属化合物が熱分解する温度に昇温する第5の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第6の工程とからなり、これら6つの工程を連続して実施することで、金属ないしは金属酸化物のいずれかからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する製造方法。
- 2種類の金属からなるナノ粒子の集まりを製造する第一の製造方法は、大気雰囲気での熱処理で第一の金属を析出するカルボン酸金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを、前記分散液に投入する第2の工程と
、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で前記カルボン酸金属化合物が熱分解する温度に昇温する第4の工程と、還元雰囲気での熱処理で第二の金属を析出する金属錯体を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第5の工程と、前記分散液に、第4の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを投入する第6の工程と、前記分散液を、第5の工程で用いた前記有機溶剤の沸点に昇温する第7の工程と、第6の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記金属錯体が還元する温度に昇温する第8の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第9の工程とからなり、これら9つの工程を連続して実施することで、2種類の金属からなるナノ粒子の集まりを製造する第一の製造方法。 - 2種類の金属からなるナノ粒子の集まりを製造する第二の製造方法は、還元雰囲気での熱処理で第一の金属を析出する第一の金属錯体と、該第一の金属錯体の還元雰囲気での熱処理より高い温度での熱処理で、第二の金属を析出する第二の金属錯体とを、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記第二の金属錯体が還元する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを、前記分散液に投入する第2の工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記第一の金属錯体が還元する温度に昇温する第4の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記第二の金属錯体が還元する温度に昇温する第5の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第6の工程とからなり、これら6つの工程を連続して実施することで、2種類の金属からなるナノ粒子の集まりを製造する第二の製造方法。
- 合金と金属ないしは金属酸化物とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する第一の製造方法は、大気雰囲気での熱処理で合金を析出する、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記分散液に、前記2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを投入する第2の工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で前記2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解する温度に昇温する第4の工程と、大気雰囲気での熱処理で金属ないしは金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第5の工程と、前記分散液に、第4の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを投入する第6の工程と、前記分散液を、第5の工程で用いた前記有機溶剤の沸点に昇温する第7の工程と、第6の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で第5の工程で用いた前記カルボン酸金属化合物が熱分解する温度に昇温する第8の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第9の工程とからなり、これら9つの工程を連続して実施することで、合金と金属ないしは金属酸化物とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する第一の製造方法。
- 合金と金属ないしは金属酸化物とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する第二の製造方法は、大気雰囲気での熱処理で金属ないしは金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記分散液に、前記カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを投入する第2の工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で前記カルボン酸金属化合物が熱分解する温度に昇温する第4の工程と、還元雰囲気での熱処理で合金を析出する
、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する2種類の金属錯体を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第5の工程と、前記分散液に、第4の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを投入する第6の工程と、前記分散液を、第5の工程で用いた前記有機溶剤の沸点に昇温する第7の工程と、第6の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記2種類の金属錯体が還元する温度に昇温する第8の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第9の工程とからなり、これら9つの工程を連続して実施することで、合金と金属ないしは金属酸化物とからなる2種類のナノ粒子の集まりを製造する第二の製造方法。 - 2種類の合金からなるナノ粒子の集まりを製造する第一の製造方法は、大気雰囲気での熱処理で合金を析出する、同一のカルボン酸からなる2種類のカルボン酸金属化合物を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記分散液に、前記2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを投入する第2の工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で前記2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解する温度に昇温する第4の工程と、還元雰囲気での熱処理で合金を析出する、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する2種類の金属錯体を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第5の工程と、前記分散液に、第4の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを投入する第6の工程と、前記分散液を、第5の工程で用いた前記有機溶剤の沸点に昇温する第7の工程と、第6の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記2種類の金属錯体が還元する温度に昇温する第8の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第9の工程とからなり、これら9つの工程を連続して実施することで、2種類の合金からなるナノ粒子の集まりを製造する第一の製造方法。
- 2種類の合金からなるナノ粒子の集まりを製造する第二の製造方法は、還元雰囲気での熱処理で第一の合金を析出する、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する第一の2種類の金属錯体を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第1の工程と、前記分散液に、前記第一の2種類の金属錯体が還元する温度より高い温度で気化する有機化合物の粉体の集まりを投入する第2の工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記第一の2種類の金属錯体が還元する温度に昇温する第4の工程と、還元雰囲気での熱処理で第二の合金を析出する、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する第二の2種類の金属錯体を、有機溶剤に分散して分散液を作成する第5の工程と、前記分散液に、第4の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを投入する第6の工程と、前記分散液を
、第5の工程で用いた前記有機溶剤の沸点に昇温する第7の工程と、第6の工程の処理を行なった前記有機化合物の粉体の集まりを、還元雰囲気で前記第二の2種類の金属錯体が還元する温度に昇温する第8の工程と、前記有機化合物の粉体の集まりを、大気雰囲気で該有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第9の工程とからなり、これら9つの工程を連続して実施することで、2種類の合金からなるナノ粒子の集まりを製造する第二の製造方法。
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