JP2019200867A - アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】第一に、導電性膜に絶縁性の物質が存在しない。第二に、固体の導電性フィラーを原料に用いない。第三に、安価な費用で導電性膜が製造できる。第四に、部品や基材への導電性膜の形成が、熱処理やエッチング処理やメッキ処理を伴わない。【解決策】強磁性の金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散し、このアルコール分散液に導電性扁平粉の集まりを混合し、この混合物を混合機内で回転及び揺動させ、さらに、混合物をホモジナイザー装置で処理する、この後、混合物を容器に充填し、容器に3方向の振動を繰り返し加え、容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温することによって、容器の底面に、底面の形状からなる導電性膜が製造される。この導電性膜の表面積と形状とは、容器の底面の形状になる。また、用いる扁平粉の量に応じて、導電性膜の厚みが変わる。【選択図】図1
Description
本発明は、導電性扁平粉の扁平面同士を重なり合って接合させた導電性扁平粉の集まりからなる導電性膜を製造する方法に係わり、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。つまり、第一に、アスペクト比が104より大きい導電性膜が製造でき、第二に、厚みが1μmから1mmに及ぶ導電性膜が製造でき、第三に、様々な形状の導電性膜が製造でき、第四に、熱処理、エッチング処理、メッキ処理などの処理を伴わず、圧着または磁気吸着によって部品や基材に導電性膜が一体化できるため、導電性膜を形成する部品や基材の材質の制約がない。このため、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの従来の用途に限らず、新たな用途に導電性膜を用いることができる。なお、扁平粉におけるアスペクト比は、一般的に長径と短径との平均値と厚さとの比率を意味する。本発明における導電性膜のアスペクト比は、厚みに対する表面積の比率を意味する。また、扁平粉を、フレーク粉、鱗片粉、円板粉と呼ぶこともある。
電気回路の配線の形成、セラミックコンデンサの内部電極の形成、太陽電池セルの電極形成、電磁波シールド膜や帯電防止膜などの導電性膜は、多くの場合は、導電性ペーストを用いて形成される。この導電性ペーストは、樹脂系バインダと溶媒からなるビヒクル中に、金属や合金からなる導電性フィラーを分散させた流動性組成物で構成される。なお、スクリーン印刷などの手段で導電性ペーストを印刷すると、導電性フィラーが液状物質を介して被印刷物に映され、樹脂系バインダと溶媒からなる液状物質が導電性フィラーを運ぶ役割を担うため、液状物質をビヒクルと呼ぶ。
こうした導電性ペーストは、樹脂の硬化を介して導電性フィラー同士が圧着され、導電性フィラーによる通電路が形成される樹脂硬化型と、焼成によって有機成分が揮発して導電性フィラー同士が焼結し、焼結した導電性フィラーによって、通電路が形成される焼成型に二分される。
樹脂硬化型導電性ペーストは、金属粉または合金粉からなる導電性フィラーと、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を溶解させた有機バインダからなるペースト状の組成物である。熱を加えることで熱硬化型樹脂が導電フィラーとともに硬化収縮し、硬化した樹脂を介して導電性フィラー同士が圧着されて互いに接触状態となり、導通性がもたらされる。この樹脂硬化型導電性ペーストは、200℃程度の低い温度で加熱処理されるため、熱ダメージが少なく、熱に弱い合成樹脂からなるプリント配線基板や回路基板などの配線の形成に使用されている。
一方、焼成型導電性ペーストは、金属粉または合金粉からなる導電性フィラーとガラスフリットを、有機ビヒクル中に分散させたペースト状の組成物であり、900℃程度の高温で加熱焼成し、有機ビヒクルを揮発させ、次にガラスフリットを融解させ、さらに金属粉同士または合金粉同士が焼結することによって導通性がもたらされる。この際、ガラスフリットが、金属粉または合金粉からなる導電性膜を基板に接合させ、有機ビヒクルが、金属粉または合金粉とガラスフリットを、印刷が可能になる液状媒体とする。焼成型導電性ペーストは焼成温度が高いため、合成樹脂からなるプリント配線基板や回路基板には使用できないが、金属粉または合金粉が焼結して一体化することから低抵抗化が実現でき、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極などに使用されている。
こうした導電性ペーストは、樹脂の硬化を介して導電性フィラー同士が圧着され、導電性フィラーによる通電路が形成される樹脂硬化型と、焼成によって有機成分が揮発して導電性フィラー同士が焼結し、焼結した導電性フィラーによって、通電路が形成される焼成型に二分される。
樹脂硬化型導電性ペーストは、金属粉または合金粉からなる導電性フィラーと、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を溶解させた有機バインダからなるペースト状の組成物である。熱を加えることで熱硬化型樹脂が導電フィラーとともに硬化収縮し、硬化した樹脂を介して導電性フィラー同士が圧着されて互いに接触状態となり、導通性がもたらされる。この樹脂硬化型導電性ペーストは、200℃程度の低い温度で加熱処理されるため、熱ダメージが少なく、熱に弱い合成樹脂からなるプリント配線基板や回路基板などの配線の形成に使用されている。
一方、焼成型導電性ペーストは、金属粉または合金粉からなる導電性フィラーとガラスフリットを、有機ビヒクル中に分散させたペースト状の組成物であり、900℃程度の高温で加熱焼成し、有機ビヒクルを揮発させ、次にガラスフリットを融解させ、さらに金属粉同士または合金粉同士が焼結することによって導通性がもたらされる。この際、ガラスフリットが、金属粉または合金粉からなる導電性膜を基板に接合させ、有機ビヒクルが、金属粉または合金粉とガラスフリットを、印刷が可能になる液状媒体とする。焼成型導電性ペーストは焼成温度が高いため、合成樹脂からなるプリント配線基板や回路基板には使用できないが、金属粉または合金粉が焼結して一体化することから低抵抗化が実現でき、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極などに使用されている。
導電性ペーストは、導電性フィラーとして金属粉または合金粉を用い、金属粉または合金粉を、または、金属粉または合金粉とガラスフリットとを、樹脂系バインダと有機溶媒からなるビヒクル中に分散させた分散液で構成される。この導電性ペーストによって形成した導電性膜は、導電性フィラーとして金属粉または合金粉を用いることと、この金属粉または合金粉を分散させることに起因する諸課題を持つ。
第一の課題は、導電性ペーストの熱処理によって形成した導電性膜の抵抗値が、金属粉または合金粉の抵抗値より増大する。つまり、樹脂硬化型導電性ペーストでは、絶縁性の熱硬化性樹脂が、金属粉同士または合金粉同士が直接接触することを妨げる。また、焼成型導電性ペーストでは、導電性が低いガラスフリットが、金属粉同士または合金粉同士の焼結を妨げる。このため、導電性ペーストの熱処理によって形成した電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの電気抵抗が増大し、電気エネルギーが損失すると共に、発熱現象をもたらし、不具合の要因となる。
第二の課題は、金属粉または合金粉の分散性にある。金属粉または合金粉の集まりをビヒクル中に分散させる分散性が悪いと、熱処理後に金属粉または合金粉が偏在し、金属粉同士または合金粉同士が直接接触できない。この結果、前記と同様に、導電性ペーストの熱処理によって形成した電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜の電気抵抗が増大する。
第三の課題は、金属粉同士または合金粉同士が焼結する際に、金属粉または合金粉が収縮する。つまり、金属粉または合金粉が収縮すると、積層セラミックスコンデンサの内部電極においては、電極と誘電体とのデラミネーション(層間剥離)や、電極層にクラックが発生などの構造欠陥が起きる。
第四の課題は、金属粉同士または合金粉同士が凝集する。さらに、粉体が微細になるほど凝集しやすい。粉体の凝集が起こると、ビヒクル中への粉体の分散性が悪化し、結果として、導電性ペーストの熱処理で形成した導電性膜の電気抵抗が増大する。
上記した4つの課題はいずれも、導電性フィラーとして金属粉または合金粉を用いることと、この金属粉または合金粉の集まりを分散させる分散媒体に起因するため、根本的な解決は難しい。
第一の課題は、導電性ペーストの熱処理によって形成した導電性膜の抵抗値が、金属粉または合金粉の抵抗値より増大する。つまり、樹脂硬化型導電性ペーストでは、絶縁性の熱硬化性樹脂が、金属粉同士または合金粉同士が直接接触することを妨げる。また、焼成型導電性ペーストでは、導電性が低いガラスフリットが、金属粉同士または合金粉同士の焼結を妨げる。このため、導電性ペーストの熱処理によって形成した電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの電気抵抗が増大し、電気エネルギーが損失すると共に、発熱現象をもたらし、不具合の要因となる。
第二の課題は、金属粉または合金粉の分散性にある。金属粉または合金粉の集まりをビヒクル中に分散させる分散性が悪いと、熱処理後に金属粉または合金粉が偏在し、金属粉同士または合金粉同士が直接接触できない。この結果、前記と同様に、導電性ペーストの熱処理によって形成した電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜の電気抵抗が増大する。
第三の課題は、金属粉同士または合金粉同士が焼結する際に、金属粉または合金粉が収縮する。つまり、金属粉または合金粉が収縮すると、積層セラミックスコンデンサの内部電極においては、電極と誘電体とのデラミネーション(層間剥離)や、電極層にクラックが発生などの構造欠陥が起きる。
第四の課題は、金属粉同士または合金粉同士が凝集する。さらに、粉体が微細になるほど凝集しやすい。粉体の凝集が起こると、ビヒクル中への粉体の分散性が悪化し、結果として、導電性ペーストの熱処理で形成した導電性膜の電気抵抗が増大する。
上記した4つの課題はいずれも、導電性フィラーとして金属粉または合金粉を用いることと、この金属粉または合金粉の集まりを分散させる分散媒体に起因するため、根本的な解決は難しい。
前記の導電性ペーストを用いた導電性膜の課題を解決する様々な試みがなされている。
例えば、特許文献1に、相対的に卑な金属の金属粉を、相対的に貴な金属で被覆した金属粉フィラーと、被覆剤で被覆された金属ナノ粒子と、有機溶剤とによって導電性ペーストを構成し、バインダとしての樹脂成分を含まない導電性ペーストが記載されている。金属ナノ粒子を導電性ペーストに分散させるために、有機溶剤に対する親和性を持たせ、かつ、沸点が有機溶剤の沸点に近いアルキルアミンで、金属ナノ粒子を被覆する。塗布された導電性ペーストを熱処理すると、金属のナノ粒子が析出し、金属のナノ粒子によって金属フィラーが結合され、樹脂成分を含まない導電性膜が形成される。
しかし、金属ナノ粒子は極めて凝集しやすく、一度凝集するとナノサイズの粒子であるため、凝集の解除は難しく、取り扱いが厄介な微粒子である。さらに、金属ナノ粒子を生成する際に、生成された金属ナノ粒子同士が容易に凝集する。このため、生成された金属ナノ粒子にアルキルアンミンを吸着させることはできず、アルキルアンミンを含む液体中で金属ナノ粒子を析出させ、アルキルアミンで金属ナノ粒子を覆い、アルキルアンミンを除く液体成分を気化させることで、アルキルアンミンで被覆された金属ナノ粒子が製造される。このため、アルキルアミンで金属ナノ粒子を被覆する製造費用は、導電性ペーストを製造する費用を大きく上回る。従って、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用性の導電性膜が高価な膜になる。なお、特許文献1に、導電性ペーストとして、アルキルアンミンで被覆された金属ナノ粒子を用いる記載はあるが、アルキルアミンで金属ナノ粒子を被覆する製造方法に関する記載はない。
例えば、特許文献1に、相対的に卑な金属の金属粉を、相対的に貴な金属で被覆した金属粉フィラーと、被覆剤で被覆された金属ナノ粒子と、有機溶剤とによって導電性ペーストを構成し、バインダとしての樹脂成分を含まない導電性ペーストが記載されている。金属ナノ粒子を導電性ペーストに分散させるために、有機溶剤に対する親和性を持たせ、かつ、沸点が有機溶剤の沸点に近いアルキルアミンで、金属ナノ粒子を被覆する。塗布された導電性ペーストを熱処理すると、金属のナノ粒子が析出し、金属のナノ粒子によって金属フィラーが結合され、樹脂成分を含まない導電性膜が形成される。
しかし、金属ナノ粒子は極めて凝集しやすく、一度凝集するとナノサイズの粒子であるため、凝集の解除は難しく、取り扱いが厄介な微粒子である。さらに、金属ナノ粒子を生成する際に、生成された金属ナノ粒子同士が容易に凝集する。このため、生成された金属ナノ粒子にアルキルアンミンを吸着させることはできず、アルキルアンミンを含む液体中で金属ナノ粒子を析出させ、アルキルアミンで金属ナノ粒子を覆い、アルキルアンミンを除く液体成分を気化させることで、アルキルアンミンで被覆された金属ナノ粒子が製造される。このため、アルキルアミンで金属ナノ粒子を被覆する製造費用は、導電性ペーストを製造する費用を大きく上回る。従って、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用性の導電性膜が高価な膜になる。なお、特許文献1に、導電性ペーストとして、アルキルアンミンで被覆された金属ナノ粒子を用いる記載はあるが、アルキルアミンで金属ナノ粒子を被覆する製造方法に関する記載はない。
また、特許文献2に、酸化銀と、アミノ基を1個以上有する脂肪酸銀からなる導電性ペーストが記載されている。つまり、導電性ペーストを塗布した塗膜を熱処理すると、脂肪酸銀塩が熱処理により銀に分解され、分解で生じた脂肪酸またはその分解物が揮発する一方で、分解により生じた一部の脂肪酸と酸化銀とが反応し、再び脂肪酸銀塩を生成し、この脂肪酸銀が銀と脂肪酸とに分解されるサイクルを繰り返し、銀からなる導電性膜が形成される。
しかし、アミノ基を1個以上有する脂肪酸銀は、2−アミノイソ酪酸、DL−トレオニン、DL−セリン、DL−ノルバリンおよび6−アミノヘキサンからなる少なくとも1種類の水酸基を持つα−アミノ酸を、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオールなどからなる溶媒に溶解し、この溶解液に酸化銀の粉末を加え、室温で長時間反応させることで生成される。このため、上記の特殊な薬品を用いて脂肪酸銀を製造する費用は、導電性ペーストを製造する費用を大きく上回る。従って、前記した特許文献1と同様に、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用性の導電性膜が高価な膜になる。
しかし、アミノ基を1個以上有する脂肪酸銀は、2−アミノイソ酪酸、DL−トレオニン、DL−セリン、DL−ノルバリンおよび6−アミノヘキサンからなる少なくとも1種類の水酸基を持つα−アミノ酸を、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオールなどからなる溶媒に溶解し、この溶解液に酸化銀の粉末を加え、室温で長時間反応させることで生成される。このため、上記の特殊な薬品を用いて脂肪酸銀を製造する費用は、導電性ペーストを製造する費用を大きく上回る。従って、前記した特許文献1と同様に、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用性の導電性膜が高価な膜になる。
特許文献1及び2に記載された技術は、3段落に記載した4つの課題のうち、第三の課題を除く3つの課題を解決することを目的とした技術であるが、4段落と5段落とに記載したように、導電性ペーストの原料が高価になる。このため、導電性膜を形成する第五の課題として、安価な原料を用いて、安価な費用で導電性膜を形成することが挙げられる。つまり、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用性の工業製品の製造には、安価な原料を用い、安価な費用で導電性膜を形成することが必須になる。
前記した導電性ペーストによって導電性膜を形成する5つの課題は、導電性フィラーとして金属粉または合金粉を用いることと、金属粉または合金粉をビヒクル中に分散させることによって起こる。従って、導電性ペーストが、導電性フィラーをビヒクル中に分散させる構成である限り、前記した課題を根本的に解決することはできない。
第一の課題は、導電性膜に存在する絶縁性の熱硬化性樹脂が、導電性フィラー同士が直接接触する妨げになる。あるいは、導電性膜に存在する導電性が低いガラスフリットが、導電性フィラー同士が直接焼結する妨げになる。いっぽう、分散液における導電性フィラーの充填率を増大させるほど、導電性フィラー同士が直接接触する確率が高まるが、分散液における導電性フィラーの分散性が悪化する。このため、この課題を根本的に解決することは難しい。
第二の課題は、導電性フィラーの分散性であった。低い充填割合でビヒクル中に導電性フィラーを充填する場合は、分散性に係わる問題は起きにくい。しかし、導電性フィラーの充填率が低くなると、熱処理後に前記した第一の課題が発生する。従って、導電性フィラーの分散性の向上には、導電性フィラーの表面改質が必須になる。また、焼成型導電性ペーストにおいては、ガラスフリットの表面改質が併せて必要になる。これら表面改質剤が分散液に親和し、また、熱処理時に気化しなければ、表面改質剤の残渣物が電気抵抗を増大させる。さらに、表面改質剤は安価でなければならない。こうした様々な性質を兼備する表面改質剤の実現には困難を伴う。
第三の課題は、導電性フィラーが焼結する際に、導電性フィラーが収縮することであった。この課題は、導電性フィラーの焼結温度と、積層セラミックスコンデンサなどを構成する誘電体の焼結温度との間に大きなかい離があることと、ガラスフリットの融解点と導電性フィラーの焼結温度との間にかい離があることに依って起こるため、この課題を根本的に解決ことは困難である。
第四の課題は、導電性フィラー同士の凝集であった。前記した第二の課題と同様に、この課題を根本的に解決するには、導電性フィラーの表面改質が必須になり、本課題の解決は、第二の課題と同様に困難を伴う。
第五の課題は、導電性フィラーの使用量が少なく、安価な費用で導電性膜を製造することで、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用的な用途に、安価な導電性膜が形成できるのみならず、貴金属からなる高価な金属粉を用いて、新たな用途への導電性膜の適応が開ける。
さらに、第六の課題は、部品や基材への導電性膜の形成が、合成樹脂の熱硬化やガラスフリットの熱融解などの熱処理を伴わなければ、部品や基材に熱負荷が加わらないため、耐熱性が低い材質の部品や基材に新たに導電性膜が形成できる。
また、第七の課題は、部品や基材への導電性膜の形成が、エッチング処理やメッキ処理を伴わなければ、酸性やアルカリ性に弱い材質の部品や基材に導電性膜が形成できる。
上記した第1−第4と第6の課題は、従来の導電性ペーストを用いて導電性膜を形成する課題である。また、第7の課題は、従来のエッチング処理やメッキ処理を伴う導電性膜を形成する課題である。第5の課題は、全ての技術に共通する課題である。従って、第1−第7の課題が同時に解決できれば、導電性膜の新たな用途が開ける。このため、新たな材料構成と新たな製法によって導電性膜を形成する技術が強く求められている。
第一の課題は、導電性膜に存在する絶縁性の熱硬化性樹脂が、導電性フィラー同士が直接接触する妨げになる。あるいは、導電性膜に存在する導電性が低いガラスフリットが、導電性フィラー同士が直接焼結する妨げになる。いっぽう、分散液における導電性フィラーの充填率を増大させるほど、導電性フィラー同士が直接接触する確率が高まるが、分散液における導電性フィラーの分散性が悪化する。このため、この課題を根本的に解決することは難しい。
第二の課題は、導電性フィラーの分散性であった。低い充填割合でビヒクル中に導電性フィラーを充填する場合は、分散性に係わる問題は起きにくい。しかし、導電性フィラーの充填率が低くなると、熱処理後に前記した第一の課題が発生する。従って、導電性フィラーの分散性の向上には、導電性フィラーの表面改質が必須になる。また、焼成型導電性ペーストにおいては、ガラスフリットの表面改質が併せて必要になる。これら表面改質剤が分散液に親和し、また、熱処理時に気化しなければ、表面改質剤の残渣物が電気抵抗を増大させる。さらに、表面改質剤は安価でなければならない。こうした様々な性質を兼備する表面改質剤の実現には困難を伴う。
第三の課題は、導電性フィラーが焼結する際に、導電性フィラーが収縮することであった。この課題は、導電性フィラーの焼結温度と、積層セラミックスコンデンサなどを構成する誘電体の焼結温度との間に大きなかい離があることと、ガラスフリットの融解点と導電性フィラーの焼結温度との間にかい離があることに依って起こるため、この課題を根本的に解決ことは困難である。
第四の課題は、導電性フィラー同士の凝集であった。前記した第二の課題と同様に、この課題を根本的に解決するには、導電性フィラーの表面改質が必須になり、本課題の解決は、第二の課題と同様に困難を伴う。
第五の課題は、導電性フィラーの使用量が少なく、安価な費用で導電性膜を製造することで、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用的な用途に、安価な導電性膜が形成できるのみならず、貴金属からなる高価な金属粉を用いて、新たな用途への導電性膜の適応が開ける。
さらに、第六の課題は、部品や基材への導電性膜の形成が、合成樹脂の熱硬化やガラスフリットの熱融解などの熱処理を伴わなければ、部品や基材に熱負荷が加わらないため、耐熱性が低い材質の部品や基材に新たに導電性膜が形成できる。
また、第七の課題は、部品や基材への導電性膜の形成が、エッチング処理やメッキ処理を伴わなければ、酸性やアルカリ性に弱い材質の部品や基材に導電性膜が形成できる。
上記した第1−第4と第6の課題は、従来の導電性ペーストを用いて導電性膜を形成する課題である。また、第7の課題は、従来のエッチング処理やメッキ処理を伴う導電性膜を形成する課題である。第5の課題は、全ての技術に共通する課題である。従って、第1−第7の課題が同時に解決できれば、導電性膜の新たな用途が開ける。このため、新たな材料構成と新たな製法によって導電性膜を形成する技術が強く求められている。
アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜の製造方法は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコール分散液に導電性扁平粉の集まりを混合して懸濁液を作成する第二の工程と、前記懸濁液を混合機内で回転及び揺動させる第三の工程と、前記懸濁液をホモジナイザー装置で処理する第四の工程と、前記懸濁液を底が浅い容器に充填する第五の工程と、前記容器に左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加える第六の工程と、前記容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する第七の工程とからなるこれら7つの処理を連続して実施することによって、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜が製造される、アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜が製造される製造方法である。
つまり、本製造方法に依れば、極めて簡単な7つの処理を連続して実施すると、安価な製造費で容器の底面に導電性膜が形成される。この導電性膜の形状と表面積とは、容器の底面の形状になる。さらに、導電性膜の厚みは、容器に充填した扁平粉の量で決まる。従って、容器の底面の形状を変え、また、容器に充填する扁平粉の量を変えると、製造される導電性膜の形状と表面積と厚みの各々が自在に変えられる。このため、導電性膜の用途に応じて、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。ここで言うアスペクト比は、導電性膜の厚みに対する表面積の比率である。
すなわち、本製造方法は、次の5つの特徴を持つことによって、製造された導電性膜は画期的な作用効果をもたらす。第一に、懸濁液を充填する容器の形状に制約がない。このため、製造される導電性膜の表面積は、懸濁液を充填する容器の形状に応じて、例えば、1mm2の微小膜から1m2を超える扁平シートに至るまで自在に変えられる。第二に、金属化合物のアルコール分散液の粘度がアルコールの粘度に近く、固体の扁平粉をアルコール分散液に混合しても、懸濁液の粘度が増大しないため、アルコール分散液に混合する扁平粉の混合割合に制約がなく、また、容器に充填する懸濁液の量に制約がない。このため、製造される導電性膜の厚みは、例えば、1μmから1mmに至るまで自在に変えられる。これによって、104よりアスペクト比が大きい導電性膜が製造できる。このアスペクト比は、扁平粉のアスペクト比より2桁以上大きい。従って、容器の形状と使用する扁平粉の量を変えると、微小な電極や細長い電気回路の配線から、大型の電磁波シールド膜や帯電防止膜などの扁平シートに至るまで、様々な表面積と様々な厚みからなる導電性膜が製造できる。第三に、懸濁液を充填する容器の形状に制約がない。このため、導電性膜の形状は、円、楕円、多角形に限らず、フレーム形状、十字形状など、導電性膜の用途に応じて様々な形状の導電性膜が製造できる。第四に、導電性膜の表面に、40−60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが、接触部位で互いに金属結合した金属微粒子の集まりを形成する。この金属微粒子の集まりは、導電性膜を部品や基材に圧着する手段になる。従って、部品や基材に導電性膜を形成する際の熱処理やエッチング処理やメッキ処理が不要になる。第五に、導電性膜は磁性を持つため、強磁性と軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、非磁性の部品や基材に導電性膜が圧着できる。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、導電性膜を形成する部品や基材の材質の制約がない。
ここで、本製造方法を見出すに至る過程を説明する。導電性扁平粉は、長径と短径との平均値と厚さとの比率であるアスペクト比が大きい扁平面を有する。さらに、扁平面の大きさと厚みとにバラツキがある。このような扁平粉の集まりは、扁平面同士が容易に重なり合う。扁平面同士が重なり合った扁平粉を接合した導電性膜は、扁平面同士が重なり合った部位で破壊する。従って、扁平面同士が重なり合った部位を、分離させることが必要になる。いっぽう、大気中で扁平面の重なり合った部位を分離する際に、重なり合った部位に摩擦力が発生し、分離は容易でない。しかし、粘度が低い液体に扁平粉の集まりを分散させ、この液体内で衝撃を発生させると、衝撃が扁平面同士の重なり合った部位に加わり、重なり合った部位が分離する。このため、粘度の低い液体中で、扁平粉の集まりを処理することが必須になる。
さらに、扁平面同士で扁平粉が接合できれば、少量の扁平粉で広い表面積を持つ導電性膜が形成でき、金や銀などの高価な扁平粉を用いて、安価な導電膜が製造できる。また、接合面が一定の面積を持つため、導電性膜の機械的強度が高まる。このため、扁平面同士が重なり合った間隙に、扁平面同士を接合させる物質を析出させることが必須になる。いっぽう、液体中で扁平粉の集まりに3方向の振動を加えると、扁平面が重力方向に向いて液体中を移動し、さらに、重力方向に向いた扁平面の再配列が繰り返され、振動を停止すると、扁平面同士が液体を介して重なり合う。
さらに、導電性扁平粉は、アスペクト比は5−50の幅を持ち、扁平面の長径と短径との平均値は5−100μmの幅を持つ。こうした特性幅が広い扁平粉を原料に用い、導電性膜を製造することが必須になる。しかしながら、扁平面同士を接合する物質が、扁平面より2桁以上小さい数十ナノの微粒子であれば、微粒子の集まりが扁平面に確実に担持する。また、扁平面の側面は、厚みが微粒子の大きさに近いため、側面には微粒子が担持しにくく、優先して扁平面に微粒子が担持する。さらに、扁平面の大きさにバラツキがあっても、扁平面が微粒子の大きさより2桁以上大きいため、扁平面に微粒子が確実に担持する。さらに、扁平粉が軽いため、強磁性微粒子の集まりが扁平面に担持できれば、強磁性微粒子の集まりから発する弱い磁気吸引力でも、扁平粉同士が接近する。従って、扁平面同士を接合する手段は、扁平面に強磁性微粒子の集まりを担持させ、扁平面同士を磁気吸着させる手段が有効になる。なお、強磁性微粒子は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれかの金属からなる微粒子である。
従って、導電性膜を製造する製造方法は、第一に、強磁性微粒子の原料を液相化し、第二に、扁平面同士が重なり合った部位を液体中で分離する。これによって、全ての扁平粉は液体と接する。第三に、液相化した物質と扁平粉の集まりとからなる懸濁液を容器に充填する。第四に、液体を介して扁平面同士を重ね合わせる。このため、容器に3方向の振動を繰り返し加え、液体中で扁平粉を移動させる。この際、扁平粉の集まりが容器の底面の全体に拡散し、扁平面同士の間隙に、扁平面が小さい扁平粉が入り込む配列と、全ての扁平粉が扁平面同士で重なり合う配列とが、液体中で繰り返される。最後に、上下方向の振動を加え、容器への加振を停止すると、容器の底面の全体に、扁平面同士が液体を介して重なり合った扁平粉の集まりが形成される。第五に、容器を昇温して強磁性微粒子の集まりを析出させると、容器内で、扁平面同士が強磁性微粒子の磁気吸着で接合され、容器の底面の形状からなる導電性膜が製造される。
こうした考えに基づき、9段落に記載した7つの処理を連続して実施することで、アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜を製造する製造方法を見出した。
すなわち、第一の工程は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の強磁性金属が熱分解で析出する金属化合物を、アルコールの重量に対して10重量%に近い割合で分散させ、アルコール分散液を作成する。これによって、金属化合物が液相化され、アルコールの粘度に近いアルコール分散液が形成される。つまり、金属化合物が、10重量%に近い割合で、アルコールに分子状態になって分散されるため、アルコール分散液の粘度はアルコールの粘度に近い。第二の工程は、アルコール分散液に扁平粉の集まりを混合して懸濁液を作成する。第三の工程は、懸濁液を混合機内で回転及び揺動させる。これによって、扁平粉の集まりが、アルコール分散液中でランダムに混合される。しかし、混合機による回転と揺動だけでは、扁平面同士が重なり合った部位が確実に分離しない。このため、第四の工程において、ホモジナイザー装置の稼働によって、懸濁液に連続して衝撃を発生させる。これによって、扁平面同士の重なり合った部位に衝撃が加わり、重なり合った部位が確実分離され、全ての扁平面が液体と接する状態になり、再度扁平面同士が重なり合うことはない。この結果、扁平面同士は直接接触せず、全ての扁平粉がアルコール分散液と接する。なお、ホモジナイザー装置として、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、扁平粉の扁平面よりさらに2桁以上小さく莫大な数からなる気泡の発生と気泡の消滅とが、懸濁液中で繰り返され(キャビテーションという)、気泡がはじける際の衝撃波が懸濁液の全体に繰り返し発生し、短時間で扁平面同士の重なった部位が衝撃波で分離する。第五の工程は、処理した懸濁液を、底が浅い容器に充填する。第六の工程は、容器に左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加える。この際、低粘度のアルコール分散液と接している扁平粉は、液体中で移動を繰り返し、容器の底面の全体に扁平粉の集まりが拡散するとともに、扁平粉の扁平面同士の間隙に、扁平面が小さい扁平粉が入り込む配列と、全ての扁平粉が、アルコール分散液を介して扁平面同士で重なり合う配列が、液体中で進む。最後に、上下方向の振動を加え、容器への加振を停止すると、扁平面同士がアルコール分散液を介して重なり合った扁平粉の集まりが、容器の底面の全体に形成される。なお、容器に加える振動加速度は、軽量の扁平粉を液体中で移動させ、液体中で扁平面同士を重ね合わせるため、0.5G程度の加速度である。第七の工程は、容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する。これによって、扁平面同士の間隙を埋めて、強磁性の金属微粒子の集まりが析出し、強磁性微粒子の集まりが発する磁気吸引力で扁平面同士が近接する。また、最上部と最下部の扁平粉の表面に、強磁性の金属微粒子の集まりが析出する。析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合する。この結果、扁平面同士が間隙を介して互いに接合され、一枚の導電性膜が容器の底面に形成される。この導電性膜は、容器の底面の形状からなる。なお、全ての扁平粉の表面と裏面とに、強磁性の金属結合した金属微粒子の集まりが析出する。このため、扁平粉同士に磁気吸引力が常時作用し、また、扁平面同士が間隙を介して接合されるため、金属微粒子同士の金属結合と磁気吸引力とによって扁平面同士が接合される。このため、導電性膜は破壊されにくい。なお、強磁性金属の磁気キュリー点は、鉄が770℃で、ニッケルが354℃で、コバルトが1115℃であり、温度がこれらの磁気キュリー点に近づかなければ、金属微粒子の集まりによる磁気吸引力は変わらないため、導電性膜は高い耐熱性を持つ。
ここで、金属化合物が熱分解する際の現象を、昇温温度に即して説明する。最初にアルコールが気化し、金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、極薄い被膜となって、重なり合った扁平面同士の間隙を埋め、また、最上部と最下部の扁平面を、金属化合物の微細結晶の集まりが覆う。次に、金属化合物が熱分解を始める温度に達すると、金属化合物が無機物または有機物と金属とに分解する。無機物または有機物の密度が金属の密度より小さいため、無機物または有機物が上層に、金属が下層に析出し、上層の無機物または有機物が気化熱を奪って気化した後に、40−60nmの粒状の金属微粒子の集まりが、扁平面同士の間隙を埋めて析出し、また、最上部と最下部の扁平面に析出する。この金属微粒子が強磁性であるため、金属微粒子同士が磁気吸着するとともに、扁平面同士が磁気吸引力で近接する。また、析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、磁気吸着した粒状の金属微粒子は、互いに接触する部位で金属結合する。この結果、扁平面同士の間隙が、金属微粒子同士の金属結合で接合され、一枚の導電性膜が容器の底面に形成される。なお、扁平面同士の間隙は金属結合した金属微粒子の集まりの多層構造で埋め尽くされ、また、最上部と最下部の扁平面に金属微粒子の多層構造が形成される。この最上部と最下部の扁平面は、内部の扁平粉との間で磁気吸引力が常時作用し、また、金属微粒子の金属結合で隣接する扁平粉と接合するため、導電性膜から剥離しない。なお、金属微粒子の多層構造の厚みは、使用する金属化合物の量で決まる。
このようにして製造された導電性膜は、次の性質を持つ。互いに磁気吸着し、また、互いに金属結合した金属微粒子の集まりが、扁平面同士の間隙と、最上部と最下部の扁平面に存在する。このため、第一に、導電性膜は磁性を持つ。従って、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、第二に、導電性膜の表面は40−60nmの金属微粒子の集まりで覆われ、表面は鏡面研磨より1桁小さい表面粗さを持ち、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。第三に、導電性膜の表面が金属微粒子の集まりで覆われるため、導電性膜を部品や基材に圧着できる。つまり、磁性を持たない部品や基材の表面に導電性膜を配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、導電性膜の表面の金属微粒子が部品や基材の表面に食い込み、導電性膜が部品や基材に圧着する。このため、磁気吸着または圧着の手段によって、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、導電性膜の性質が部品や基材に付与できる。
なお、前記した強磁性金属は、酸性液に対してのみ徐々に溶解する性質を持ち、導電性膜の表面の金属微粒子の溶解が徐々に進む。しかし、扁平面同士の間隙が、金属微粒子の集まりの厚みに相当するサブミクロンであるため、液体は表面張力で、扁平面同士の間隙に侵入できない。従って、導電性膜の表面の金属微粒子の溶解が徐々に進んでも、内部の金属微粒子は浸食されない。このため、導電性膜を酸性液に浸漬しても、扁平面同士を接合する金属微粒子が変化しないため、導電性膜は酸性液で侵されない。また、部品や基材に磁気吸着した導電性膜は、磁気吸着面における間隙が、金属微粒子の集まりの大きさに相当し、液体は表面張力で間隙に侵入できず、磁気吸着面も液体で侵されない。同様に、部品や基材に圧着した導電性膜は、圧着面の間隙が、金属微粒子の集まりの大きさに相当し、圧着面も液体で侵されない。
以上に説明したように、本導電性膜の製造方法に依れば、容器の底面に導電性膜が形成される。このため、導電性膜の形状と表面積とは、容器の底面の形状になる。また、導電性膜の厚みは、容器に充填した懸濁液を構成する扁平粉の量で決まる。この結果、容器の底面の形状と、懸濁液を構成する扁平粉の量とを変えると、導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。従って、導電性膜の用途に応じて、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々を変える。
さらに、本導電性膜の製造方法は、強磁性の金属微粒子の原料を液相化するため、従来の導電性ペーストにおける固体の導電性フィラーを用いず、また、導電性フィラーを分散するビヒクルも用いない。このため、8段落に説明した第1−第4が解決できる。また、熱分解で強磁性金属を析出する金属化合物は、汎用的な工業用薬品であり、導電性膜を製造する7つの処理が極めて簡単な処理であるため、第五の課題も解決できる。さらに、導電性膜を、部品や基材に磁気吸着あるいは圧着させることができ、導電性膜を形成する部品や基材に熱処理を伴わず、エッチング処理とメッキ処理も伴わない。この結果、第六と第七の課題も解決できる。これによって、8段落で説明した全ての課題が解決できる。
すなわち、本製造方法は、次の5つの特徴を持つことによって、製造された導電性膜は画期的な作用効果をもたらす。第一に、懸濁液を充填する容器の形状に制約がない。このため、製造される導電性膜の表面積は、懸濁液を充填する容器の形状に応じて、例えば、1mm2の微小膜から1m2を超える扁平シートに至るまで自在に変えられる。第二に、金属化合物のアルコール分散液の粘度がアルコールの粘度に近く、固体の扁平粉をアルコール分散液に混合しても、懸濁液の粘度が増大しないため、アルコール分散液に混合する扁平粉の混合割合に制約がなく、また、容器に充填する懸濁液の量に制約がない。このため、製造される導電性膜の厚みは、例えば、1μmから1mmに至るまで自在に変えられる。これによって、104よりアスペクト比が大きい導電性膜が製造できる。このアスペクト比は、扁平粉のアスペクト比より2桁以上大きい。従って、容器の形状と使用する扁平粉の量を変えると、微小な電極や細長い電気回路の配線から、大型の電磁波シールド膜や帯電防止膜などの扁平シートに至るまで、様々な表面積と様々な厚みからなる導電性膜が製造できる。第三に、懸濁液を充填する容器の形状に制約がない。このため、導電性膜の形状は、円、楕円、多角形に限らず、フレーム形状、十字形状など、導電性膜の用途に応じて様々な形状の導電性膜が製造できる。第四に、導電性膜の表面に、40−60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが、接触部位で互いに金属結合した金属微粒子の集まりを形成する。この金属微粒子の集まりは、導電性膜を部品や基材に圧着する手段になる。従って、部品や基材に導電性膜を形成する際の熱処理やエッチング処理やメッキ処理が不要になる。第五に、導電性膜は磁性を持つため、強磁性と軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、非磁性の部品や基材に導電性膜が圧着できる。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、導電性膜を形成する部品や基材の材質の制約がない。
ここで、本製造方法を見出すに至る過程を説明する。導電性扁平粉は、長径と短径との平均値と厚さとの比率であるアスペクト比が大きい扁平面を有する。さらに、扁平面の大きさと厚みとにバラツキがある。このような扁平粉の集まりは、扁平面同士が容易に重なり合う。扁平面同士が重なり合った扁平粉を接合した導電性膜は、扁平面同士が重なり合った部位で破壊する。従って、扁平面同士が重なり合った部位を、分離させることが必要になる。いっぽう、大気中で扁平面の重なり合った部位を分離する際に、重なり合った部位に摩擦力が発生し、分離は容易でない。しかし、粘度が低い液体に扁平粉の集まりを分散させ、この液体内で衝撃を発生させると、衝撃が扁平面同士の重なり合った部位に加わり、重なり合った部位が分離する。このため、粘度の低い液体中で、扁平粉の集まりを処理することが必須になる。
さらに、扁平面同士で扁平粉が接合できれば、少量の扁平粉で広い表面積を持つ導電性膜が形成でき、金や銀などの高価な扁平粉を用いて、安価な導電膜が製造できる。また、接合面が一定の面積を持つため、導電性膜の機械的強度が高まる。このため、扁平面同士が重なり合った間隙に、扁平面同士を接合させる物質を析出させることが必須になる。いっぽう、液体中で扁平粉の集まりに3方向の振動を加えると、扁平面が重力方向に向いて液体中を移動し、さらに、重力方向に向いた扁平面の再配列が繰り返され、振動を停止すると、扁平面同士が液体を介して重なり合う。
さらに、導電性扁平粉は、アスペクト比は5−50の幅を持ち、扁平面の長径と短径との平均値は5−100μmの幅を持つ。こうした特性幅が広い扁平粉を原料に用い、導電性膜を製造することが必須になる。しかしながら、扁平面同士を接合する物質が、扁平面より2桁以上小さい数十ナノの微粒子であれば、微粒子の集まりが扁平面に確実に担持する。また、扁平面の側面は、厚みが微粒子の大きさに近いため、側面には微粒子が担持しにくく、優先して扁平面に微粒子が担持する。さらに、扁平面の大きさにバラツキがあっても、扁平面が微粒子の大きさより2桁以上大きいため、扁平面に微粒子が確実に担持する。さらに、扁平粉が軽いため、強磁性微粒子の集まりが扁平面に担持できれば、強磁性微粒子の集まりから発する弱い磁気吸引力でも、扁平粉同士が接近する。従って、扁平面同士を接合する手段は、扁平面に強磁性微粒子の集まりを担持させ、扁平面同士を磁気吸着させる手段が有効になる。なお、強磁性微粒子は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれかの金属からなる微粒子である。
従って、導電性膜を製造する製造方法は、第一に、強磁性微粒子の原料を液相化し、第二に、扁平面同士が重なり合った部位を液体中で分離する。これによって、全ての扁平粉は液体と接する。第三に、液相化した物質と扁平粉の集まりとからなる懸濁液を容器に充填する。第四に、液体を介して扁平面同士を重ね合わせる。このため、容器に3方向の振動を繰り返し加え、液体中で扁平粉を移動させる。この際、扁平粉の集まりが容器の底面の全体に拡散し、扁平面同士の間隙に、扁平面が小さい扁平粉が入り込む配列と、全ての扁平粉が扁平面同士で重なり合う配列とが、液体中で繰り返される。最後に、上下方向の振動を加え、容器への加振を停止すると、容器の底面の全体に、扁平面同士が液体を介して重なり合った扁平粉の集まりが形成される。第五に、容器を昇温して強磁性微粒子の集まりを析出させると、容器内で、扁平面同士が強磁性微粒子の磁気吸着で接合され、容器の底面の形状からなる導電性膜が製造される。
こうした考えに基づき、9段落に記載した7つの処理を連続して実施することで、アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜を製造する製造方法を見出した。
すなわち、第一の工程は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の強磁性金属が熱分解で析出する金属化合物を、アルコールの重量に対して10重量%に近い割合で分散させ、アルコール分散液を作成する。これによって、金属化合物が液相化され、アルコールの粘度に近いアルコール分散液が形成される。つまり、金属化合物が、10重量%に近い割合で、アルコールに分子状態になって分散されるため、アルコール分散液の粘度はアルコールの粘度に近い。第二の工程は、アルコール分散液に扁平粉の集まりを混合して懸濁液を作成する。第三の工程は、懸濁液を混合機内で回転及び揺動させる。これによって、扁平粉の集まりが、アルコール分散液中でランダムに混合される。しかし、混合機による回転と揺動だけでは、扁平面同士が重なり合った部位が確実に分離しない。このため、第四の工程において、ホモジナイザー装置の稼働によって、懸濁液に連続して衝撃を発生させる。これによって、扁平面同士の重なり合った部位に衝撃が加わり、重なり合った部位が確実分離され、全ての扁平面が液体と接する状態になり、再度扁平面同士が重なり合うことはない。この結果、扁平面同士は直接接触せず、全ての扁平粉がアルコール分散液と接する。なお、ホモジナイザー装置として、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、扁平粉の扁平面よりさらに2桁以上小さく莫大な数からなる気泡の発生と気泡の消滅とが、懸濁液中で繰り返され(キャビテーションという)、気泡がはじける際の衝撃波が懸濁液の全体に繰り返し発生し、短時間で扁平面同士の重なった部位が衝撃波で分離する。第五の工程は、処理した懸濁液を、底が浅い容器に充填する。第六の工程は、容器に左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加える。この際、低粘度のアルコール分散液と接している扁平粉は、液体中で移動を繰り返し、容器の底面の全体に扁平粉の集まりが拡散するとともに、扁平粉の扁平面同士の間隙に、扁平面が小さい扁平粉が入り込む配列と、全ての扁平粉が、アルコール分散液を介して扁平面同士で重なり合う配列が、液体中で進む。最後に、上下方向の振動を加え、容器への加振を停止すると、扁平面同士がアルコール分散液を介して重なり合った扁平粉の集まりが、容器の底面の全体に形成される。なお、容器に加える振動加速度は、軽量の扁平粉を液体中で移動させ、液体中で扁平面同士を重ね合わせるため、0.5G程度の加速度である。第七の工程は、容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する。これによって、扁平面同士の間隙を埋めて、強磁性の金属微粒子の集まりが析出し、強磁性微粒子の集まりが発する磁気吸引力で扁平面同士が近接する。また、最上部と最下部の扁平粉の表面に、強磁性の金属微粒子の集まりが析出する。析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合する。この結果、扁平面同士が間隙を介して互いに接合され、一枚の導電性膜が容器の底面に形成される。この導電性膜は、容器の底面の形状からなる。なお、全ての扁平粉の表面と裏面とに、強磁性の金属結合した金属微粒子の集まりが析出する。このため、扁平粉同士に磁気吸引力が常時作用し、また、扁平面同士が間隙を介して接合されるため、金属微粒子同士の金属結合と磁気吸引力とによって扁平面同士が接合される。このため、導電性膜は破壊されにくい。なお、強磁性金属の磁気キュリー点は、鉄が770℃で、ニッケルが354℃で、コバルトが1115℃であり、温度がこれらの磁気キュリー点に近づかなければ、金属微粒子の集まりによる磁気吸引力は変わらないため、導電性膜は高い耐熱性を持つ。
ここで、金属化合物が熱分解する際の現象を、昇温温度に即して説明する。最初にアルコールが気化し、金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、極薄い被膜となって、重なり合った扁平面同士の間隙を埋め、また、最上部と最下部の扁平面を、金属化合物の微細結晶の集まりが覆う。次に、金属化合物が熱分解を始める温度に達すると、金属化合物が無機物または有機物と金属とに分解する。無機物または有機物の密度が金属の密度より小さいため、無機物または有機物が上層に、金属が下層に析出し、上層の無機物または有機物が気化熱を奪って気化した後に、40−60nmの粒状の金属微粒子の集まりが、扁平面同士の間隙を埋めて析出し、また、最上部と最下部の扁平面に析出する。この金属微粒子が強磁性であるため、金属微粒子同士が磁気吸着するとともに、扁平面同士が磁気吸引力で近接する。また、析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、磁気吸着した粒状の金属微粒子は、互いに接触する部位で金属結合する。この結果、扁平面同士の間隙が、金属微粒子同士の金属結合で接合され、一枚の導電性膜が容器の底面に形成される。なお、扁平面同士の間隙は金属結合した金属微粒子の集まりの多層構造で埋め尽くされ、また、最上部と最下部の扁平面に金属微粒子の多層構造が形成される。この最上部と最下部の扁平面は、内部の扁平粉との間で磁気吸引力が常時作用し、また、金属微粒子の金属結合で隣接する扁平粉と接合するため、導電性膜から剥離しない。なお、金属微粒子の多層構造の厚みは、使用する金属化合物の量で決まる。
このようにして製造された導電性膜は、次の性質を持つ。互いに磁気吸着し、また、互いに金属結合した金属微粒子の集まりが、扁平面同士の間隙と、最上部と最下部の扁平面に存在する。このため、第一に、導電性膜は磁性を持つ。従って、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、第二に、導電性膜の表面は40−60nmの金属微粒子の集まりで覆われ、表面は鏡面研磨より1桁小さい表面粗さを持ち、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。第三に、導電性膜の表面が金属微粒子の集まりで覆われるため、導電性膜を部品や基材に圧着できる。つまり、磁性を持たない部品や基材の表面に導電性膜を配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、導電性膜の表面の金属微粒子が部品や基材の表面に食い込み、導電性膜が部品や基材に圧着する。このため、磁気吸着または圧着の手段によって、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、導電性膜の性質が部品や基材に付与できる。
なお、前記した強磁性金属は、酸性液に対してのみ徐々に溶解する性質を持ち、導電性膜の表面の金属微粒子の溶解が徐々に進む。しかし、扁平面同士の間隙が、金属微粒子の集まりの厚みに相当するサブミクロンであるため、液体は表面張力で、扁平面同士の間隙に侵入できない。従って、導電性膜の表面の金属微粒子の溶解が徐々に進んでも、内部の金属微粒子は浸食されない。このため、導電性膜を酸性液に浸漬しても、扁平面同士を接合する金属微粒子が変化しないため、導電性膜は酸性液で侵されない。また、部品や基材に磁気吸着した導電性膜は、磁気吸着面における間隙が、金属微粒子の集まりの大きさに相当し、液体は表面張力で間隙に侵入できず、磁気吸着面も液体で侵されない。同様に、部品や基材に圧着した導電性膜は、圧着面の間隙が、金属微粒子の集まりの大きさに相当し、圧着面も液体で侵されない。
以上に説明したように、本導電性膜の製造方法に依れば、容器の底面に導電性膜が形成される。このため、導電性膜の形状と表面積とは、容器の底面の形状になる。また、導電性膜の厚みは、容器に充填した懸濁液を構成する扁平粉の量で決まる。この結果、容器の底面の形状と、懸濁液を構成する扁平粉の量とを変えると、導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。従って、導電性膜の用途に応じて、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々を変える。
さらに、本導電性膜の製造方法は、強磁性の金属微粒子の原料を液相化するため、従来の導電性ペーストにおける固体の導電性フィラーを用いず、また、導電性フィラーを分散するビヒクルも用いない。このため、8段落に説明した第1−第4が解決できる。また、熱分解で強磁性金属を析出する金属化合物は、汎用的な工業用薬品であり、導電性膜を製造する7つの処理が極めて簡単な処理であるため、第五の課題も解決できる。さらに、導電性膜を、部品や基材に磁気吸着あるいは圧着させることができ、導電性膜を形成する部品や基材に熱処理を伴わず、エッチング処理とメッキ処理も伴わない。この結果、第六と第七の課題も解決できる。これによって、8段落で説明した全ての課題が解決できる。
9段落に記載した導電性膜が、電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、9段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、2種類の金属化合物が同時に熱分解して2種類の金属を同時析出するする金属化合物であり、該2種類の金属化合物は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物と、銅またはアルミニウムからなるいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物とからなり、該2種類の金属化合物を、9段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、9段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造することによって、前記容器の底面に、該底面の形状からからなる電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜が製造される、電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜の製造方法である。
つまり、本製造方法に依れば、2種類の金属化合物が同時に熱分解し、2種類の金属が同時に析出するため、強磁性の鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の金属と、電気導電性と熱伝導性に優れる銅またはアルミニウムからなるいずれかの金属とからなる複合金属微粒子の集まりが、扁平面同士の間隙と、最上部と最下部の扁平面に析出する。この複合金属微粒子が強磁性であるため、複合金属微粒子同士が磁気吸着し、複合金属微粒子の集まりが析出した扁平面同士が磁気吸引力で近接する。また、磁気吸着した複合金属微粒子は、析出した金属が不純物を持たない活性状態にあるため、複合金属微粒子は、互いに接触する部位で金属結合する。この結果、扁平面同士が間隙を介して接合され、一枚の導電性膜が容器の底面に形成される。なお、全ての扁平面の表面と裏面とに、金属結合した強磁性の複合金属微粒子の集まりが析出する。このため、全ての扁平粉に磁気吸引力が常時作用し、また、扁平面同士が間隙を介して接合される。この結果、導電性膜は、複合金属微粒子同士の金属結合と磁気吸引力とによって扁平粉が接合され、導電性膜は破壊されにくい。また、最上部と最下部の扁平粉は、内部の扁平粉との間で磁気吸引力が常時作用し、また、複合金属微粒子の金属結合で隣接する扁平粉と接合するため、導電性膜から剥離しない。さらに、10段落で説明したように、温度が強磁性金属の磁気キュリー点に近づかなければ、金属微粒子の集まりによる磁気吸引力は変わらないため、導電性膜は高い耐熱性を持つ。なお、複合金属微粒子の多層構造の厚みは、使用する金属化合物の量で決まる。
この導電性膜は、複合金属微粒子の集まりで扁平粉同士が接合されるため、複合金属微粒子の性質を持つ。従って、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜より、電気導電性と熱伝導性に優れる。なお、複合金属微粒子が磁性を持つため、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜の表面が複合金属微粒子の集まりで覆われるため、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜と同様に、導電性膜を部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化できる。さらに、導電性膜の表面が複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
いっぽう、導電性膜の性質を、磁性より電気導電性と熱伝導性の性質を優勢にする場合は、電気導電性と熱伝導性に優れる銅またはアルミニウムのいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散する量を、強磁性の鉄、コバルトまたはニッケルのいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散する量より多くする。これによって、複合金属微粒子を占める電気導電性と熱伝導性とに優れる金属の量が、強磁性の金属の量より多くなり、複合金属微粒子は、強磁性より電気導電性と熱伝導性との性質が優勢になり、導電性扁平粉の電気導電性と熱伝導性との性質が生かされる導電性膜になる。
また、複合金属微粒子が溶解する、あるいは、腐食する液体中に、導電性膜が浸漬されても、10段落で説明した導電性膜と同様に、扁平面同士の間隙が、複合金属微粒子の集まりの大きさに相当するため、液体はこの間隙に侵入できず、導電性膜は液体に侵されない。さらに、部品や基材に磁気吸着した導電性膜と、圧着した導電性膜とは、10段落で説明した導電性膜と同様に、磁気吸着面と圧着面との間隙が、複合金属微粒子の集まりの大きさに相当するため、液体はこの間隙に侵入できず、磁気吸着した導電性膜と、圧着された導電性膜は液体に侵されない。
以上に説明したように、電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜が、容器の底面に形成される。このため、導電性膜の形状と表面積は、容器の底面の形状になる。また、導電性膜の厚みは、容器に充填した扁平粉の量で決まる。この結果、容器の底面の形状と、容器に充填する扁平粉の量を変えると、導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。従って、導電性膜の用途に応じて、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々を変える。また、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜と同様に、本製造方法で製造した導電性膜も、8段落で説明した7つの課題の全てを解決する。
なお、熱伝導性と電気導電性に優れる複合金属微粒子で、導電性扁平粉を接合して導電性膜を製造するのは一例であり、複合金属は熱伝導性および電気導電性に限定されない。析出する複合金属微粒子の材質で、複合金属微粒子の性質が自在に変わる。このように、導電性膜は複合金属微粒子の性質を持ち、部品や基材に複合金属の性質が反映される。
この導電性膜は、複合金属微粒子の集まりで扁平粉同士が接合されるため、複合金属微粒子の性質を持つ。従って、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜より、電気導電性と熱伝導性に優れる。なお、複合金属微粒子が磁性を持つため、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜の表面が複合金属微粒子の集まりで覆われるため、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜と同様に、導電性膜を部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化できる。さらに、導電性膜の表面が複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
いっぽう、導電性膜の性質を、磁性より電気導電性と熱伝導性の性質を優勢にする場合は、電気導電性と熱伝導性に優れる銅またはアルミニウムのいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散する量を、強磁性の鉄、コバルトまたはニッケルのいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散する量より多くする。これによって、複合金属微粒子を占める電気導電性と熱伝導性とに優れる金属の量が、強磁性の金属の量より多くなり、複合金属微粒子は、強磁性より電気導電性と熱伝導性との性質が優勢になり、導電性扁平粉の電気導電性と熱伝導性との性質が生かされる導電性膜になる。
また、複合金属微粒子が溶解する、あるいは、腐食する液体中に、導電性膜が浸漬されても、10段落で説明した導電性膜と同様に、扁平面同士の間隙が、複合金属微粒子の集まりの大きさに相当するため、液体はこの間隙に侵入できず、導電性膜は液体に侵されない。さらに、部品や基材に磁気吸着した導電性膜と、圧着した導電性膜とは、10段落で説明した導電性膜と同様に、磁気吸着面と圧着面との間隙が、複合金属微粒子の集まりの大きさに相当するため、液体はこの間隙に侵入できず、磁気吸着した導電性膜と、圧着された導電性膜は液体に侵されない。
以上に説明したように、電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜が、容器の底面に形成される。このため、導電性膜の形状と表面積は、容器の底面の形状になる。また、導電性膜の厚みは、容器に充填した扁平粉の量で決まる。この結果、容器の底面の形状と、容器に充填する扁平粉の量を変えると、導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。従って、導電性膜の用途に応じて、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々を変える。また、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜と同様に、本製造方法で製造した導電性膜も、8段落で説明した7つの課題の全てを解決する。
なお、熱伝導性と電気導電性に優れる複合金属微粒子で、導電性扁平粉を接合して導電性膜を製造するのは一例であり、複合金属は熱伝導性および電気導電性に限定されない。析出する複合金属微粒子の材質で、複合金属微粒子の性質が自在に変わる。このように、導電性膜は複合金属微粒子の性質を持ち、部品や基材に複合金属の性質が反映される。
9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法において、9段落に記載した導電性扁平粉が軟質金属からなる扁平粉である、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法である。
つまり、軟質金属からなる導電性扁平粉は、金、銀、銅、錫、亜鉛ないしはアルミニウムなどの金属からなり、軟質金属の粉体の集まりを、スタンプミル(搗砕機に相当する)により、多数の金属製の杵で叩き、薄いフレーク状に延ばすことで製造される。この後、サイクロンなどの気流分級機で粒度分布を調整する。このため、粉体の長軸に対する厚みの比率であるアスペクト比が大きく、かつ、平坦な滑らかな面を持ち、また、厚みが均一に近く、厚みが薄い。従って、金や銀の高価な扁平粉であっても、アスペクト比が大きいため、少ない量の扁平粉で、扁平面同士が重なり合い、扁平面同士が金属結合した金属微粒子の集まりで接合した導電性膜が安価に製造できる。また、平坦な扁平面同士が接合した導電性膜は接合面が広いため、また、厚みが均一な扁平面は、規則性を以って扁平面が重なり合い、扁平面同士が接合するため、扁平面同士が接合した導電性膜の機械的強度が大きい。なお、原料となる金属粉は、多くの場合は、金属の純度が高く、鉛フリーの電解金属粉を用いる。いっぽう、アルミニウムの扁平粉の製造では、アトマイズ法による粒状粉や箔の裁断片をスタンプミルで叩く際に、アルミニウム粉が燃焼しやすく、凝着しやすいため、粉砕助剤としてステアリン酸を加えて粒状粉や裁断片を粉砕する。また、アルミニウム粉に、ステアリン酸やオレイン酸などの粉砕助剤を加え、ミネラルスピリットなどの溶剤中で湿式粉砕する湿式ボールミル法でも、アルミニウムの扁平粉が製造される。
いっぽう、錫を除く軟質金属の扁平粉の耐熱温度は軟化点で決まり、軟化点が低い電解銅でも800℃と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たず、極低温での使用が可能になる。なお、99.5%の純度のアルミニウム粉の溶融温度は650℃である。従って、導電性膜が、軟質金属の扁平粉と金属微粒子で構成されるため、高温、極低温、真空、高圧下など、過酷な環境でも使用できる。なお、錫は融点が232℃で、−40℃付近で低温脆性を起こし、錫の扁平粉からなる導電性膜は、使用温度が制限される。
また、軟質金属からなる扁平粉の密度は、アルミニウムの密度が2.7g/cm3と最も小さいが、メタノールの密度の3.4倍に相当する。従って、アスペクト比が大きい扁平粉の集まりを用いて懸濁液を作成し、この懸濁液に3方向の振動を繰り返し加えると、平坦な扁平面同士が重なった扁平粉の集まりが、懸濁液中で容易に沈む。このため、金や銀のような高価な粉体であっても、少ない量の扁平粉で導電性膜が形成できる。
以上に説明したように、軟質金属の扁平粉は、アスペクト比が大きい形状効果と、平坦で滑らかな扁平面を持つ表面効果と、耐熱性、耐寒性に優れる材質効果を持つ。従って、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法において、軟質金属からなる扁平粉は、9段落に記載した導電性扁平粉として、適切な扁平粉である。
いっぽう、錫を除く軟質金属の扁平粉の耐熱温度は軟化点で決まり、軟化点が低い電解銅でも800℃と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たず、極低温での使用が可能になる。なお、99.5%の純度のアルミニウム粉の溶融温度は650℃である。従って、導電性膜が、軟質金属の扁平粉と金属微粒子で構成されるため、高温、極低温、真空、高圧下など、過酷な環境でも使用できる。なお、錫は融点が232℃で、−40℃付近で低温脆性を起こし、錫の扁平粉からなる導電性膜は、使用温度が制限される。
また、軟質金属からなる扁平粉の密度は、アルミニウムの密度が2.7g/cm3と最も小さいが、メタノールの密度の3.4倍に相当する。従って、アスペクト比が大きい扁平粉の集まりを用いて懸濁液を作成し、この懸濁液に3方向の振動を繰り返し加えると、平坦な扁平面同士が重なった扁平粉の集まりが、懸濁液中で容易に沈む。このため、金や銀のような高価な粉体であっても、少ない量の扁平粉で導電性膜が形成できる。
以上に説明したように、軟質金属の扁平粉は、アスペクト比が大きい形状効果と、平坦で滑らかな扁平面を持つ表面効果と、耐熱性、耐寒性に優れる材質効果を持つ。従って、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法において、軟質金属からなる扁平粉は、9段落に記載した導電性扁平粉として、適切な扁平粉である。
9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法において、9段落または11段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物は、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに共有結合する第一の性質と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の性質とを兼備するカルボン酸金属化合物である、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法である。
つまり、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物は、金属イオンが最も大きいイオンで、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を、大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超える温度になると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸の分子量と数とに応じて、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などがある。なお、オクチル酸の沸点は228℃で、ラウリン酸の沸点は296℃で、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、290−430℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。また、これらのカルボン酸金属化合物は、メタノールに10重量%近くまで分散する。
従って、カルボン酸金属化合物は、9段落と11段落に記載した導電性膜の製造方法において、9段落と11段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用いることができる。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化第一銅Cu2Oと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、酸化第一銅Cu2Oと酸化第二銅CuOとを銅に還元する処理を要する。特に、酸化第一銅Cu2Oは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化第二銅CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させるため、処理費用がかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。
以上に説明したように、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法において、安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物を、熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、9段落または11段落に記載した導電性膜が製造される。
従って、カルボン酸金属化合物は、9段落と11段落に記載した導電性膜の製造方法において、9段落と11段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用いることができる。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化第一銅Cu2Oと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、酸化第一銅Cu2Oと酸化第二銅CuOとを銅に還元する処理を要する。特に、酸化第一銅Cu2Oは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化第二銅CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させるため、処理費用がかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。
以上に説明したように、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法において、安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物を、熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、9段落または11段落に記載した導電性膜が製造される。
9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、展性に優れる性質を持つ導電性膜であり、該導電性膜の製造方法は、9段落または11段落に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、銅、アルミニウムまたは錫からなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコール分散してアルコール分散液を作成し、該アルコール分液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温することによって、表面が展性に優れる性質を有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が展性に優れる性質を持つ導電性膜の製造方法である。
つまり、9段落または11段落に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、展性に優れる銅、アルミニウムまたは錫からなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、このアルコール分散液を容器に充填する。この後、容器に3方向の振動を加えると、導電性膜はアルコール分散液に浸漬し、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、アルコール分散液と接する。さらに、容器を金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記いずれか1種類金属が析出し、展性に優れた銅、アルミニウムまたは錫からなるいずれか1種類の金属が、複合金属微粒子の表層を形成する。この導電性膜の表面は、展性に優れた性質を持つ。
つまり、展性を持つ金属は、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に析出する。このため、新たに析出する金属の原料である金属化合物の僅かな量を用いるだけで、展性を持つ金属からなる複合金属微粒子の表層の厚みは、すでに形成された金属微粒子または複合金属微粒子の大きさより厚くなり、複合金属微粒子は展性を持つ金属の性質が優勢になる。この結果、導電性膜の表面は、展性を持つ金属の性質を持つ。
こうして製造した導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、10段落と12段落で説明した導電性膜とは異なり、導電性膜の表面の複合金属微粒子が塑性変形して、部品や基材に導電性膜が圧着し、部品や基材に導電性膜の性質が付与される。このように、導電性膜の表面の複合金属微粒子は、部品や基材に導電性膜を圧着する手段として利用できる。つまり、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。いっぽう、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持つため、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜を非磁性の部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化でき、展性に優れた金属の性質と導電性膜の性質とが付与できる。また、10段落と12段落で記載した導電性膜と同様に、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。さらに、部品や基材に圧着された導電性膜と、部品や基材に磁気吸着した導電性膜は、圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合金属微粒子の集まりに相当する僅かな間隙であるため、液体は侵入できない。このため、圧着面または磁気吸着面は、液体に侵されない。
なお、導電性膜の表面に、展性に優れる性質が優勢な複合金属微粒子が形成される現象は、次の理由による。扁平面同士が、金属結合した金属微粒子または複合金属微粒子の集まりによって接合され、一枚の導電性膜が製造されるため、扁平面同士の間隙は、金属微粒子または複合金属微粒子の集まりで決まるサブミクロンの間隙である。いっぽう、一旦製造された導電性膜に、展性に優れた金属を熱分解で析出する金属化合物のアルコール分散液を充填すると、扁平面同士の間隙が余りにも狭いため、金属化合物のアルコール分散液は、表面張力によって、微細な間隙に侵入または浸透しない。また、容器の底面の全体に導電性膜が形成され、導電性膜の厚みが薄いため、導電性膜の側面と接触するアルコール分散液は限られている。従って、導電性膜の表面と接触した金属化合物のアルコール分散液は、アルコールが気化すると、導電性膜の表面に金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、さらに、金属化合物が熱分解すると、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たな金属が析出する核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に新たな金属が析出し、表層が展性を持つ金属からなる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成され、導電性膜の表面は展性に優れた性質を持つ。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が展性に優れる性質を有する導電性膜が容易に製造される。
つまり、展性を持つ金属は、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に析出する。このため、新たに析出する金属の原料である金属化合物の僅かな量を用いるだけで、展性を持つ金属からなる複合金属微粒子の表層の厚みは、すでに形成された金属微粒子または複合金属微粒子の大きさより厚くなり、複合金属微粒子は展性を持つ金属の性質が優勢になる。この結果、導電性膜の表面は、展性を持つ金属の性質を持つ。
こうして製造した導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、10段落と12段落で説明した導電性膜とは異なり、導電性膜の表面の複合金属微粒子が塑性変形して、部品や基材に導電性膜が圧着し、部品や基材に導電性膜の性質が付与される。このように、導電性膜の表面の複合金属微粒子は、部品や基材に導電性膜を圧着する手段として利用できる。つまり、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。いっぽう、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持つため、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜を非磁性の部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化でき、展性に優れた金属の性質と導電性膜の性質とが付与できる。また、10段落と12段落で記載した導電性膜と同様に、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。さらに、部品や基材に圧着された導電性膜と、部品や基材に磁気吸着した導電性膜は、圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合金属微粒子の集まりに相当する僅かな間隙であるため、液体は侵入できない。このため、圧着面または磁気吸着面は、液体に侵されない。
なお、導電性膜の表面に、展性に優れる性質が優勢な複合金属微粒子が形成される現象は、次の理由による。扁平面同士が、金属結合した金属微粒子または複合金属微粒子の集まりによって接合され、一枚の導電性膜が製造されるため、扁平面同士の間隙は、金属微粒子または複合金属微粒子の集まりで決まるサブミクロンの間隙である。いっぽう、一旦製造された導電性膜に、展性に優れた金属を熱分解で析出する金属化合物のアルコール分散液を充填すると、扁平面同士の間隙が余りにも狭いため、金属化合物のアルコール分散液は、表面張力によって、微細な間隙に侵入または浸透しない。また、容器の底面の全体に導電性膜が形成され、導電性膜の厚みが薄いため、導電性膜の側面と接触するアルコール分散液は限られている。従って、導電性膜の表面と接触した金属化合物のアルコール分散液は、アルコールが気化すると、導電性膜の表面に金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、さらに、金属化合物が熱分解すると、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たな金属が析出する核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に新たな金属が析出し、表層が展性を持つ金属からなる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成され、導電性膜の表面は展性に優れた性質を持つ。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が展性に優れる性質を有する導電性膜が容易に製造される。
17段落に記載した導電性膜の製造方法において、17段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物は、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに共有結合する第一の性質と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の性質とを兼備するカルボン酸金属化合物である、17段落に記載した導電性膜の製造方法である。
つまり、2つの性質を兼備するカルボン酸金属化合物は、16段落で説明したように、熱分解で金属を析出する。また、銅、アルミニウムまたは錫のいずれか1種類の金属からなるカルボン酸金属化合物は、安価な工業用薬品である。このため、17段落に記載した導電性膜の製造方法において、銅、アルミニウムまたは錫のいずれか1種類の金属が熱分解で析出する金属化合物として、カルボン酸金属化合物を用い、17段落に記載した製造方法に従って導電性膜を製造すると、17段落に記載した表面が展性に優れる性質を有する導電性膜が製造される。
9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、9段落または11段落に記載した製造方法に従って容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、クロムまたはマンガンからなるいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温することによって、表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜の製造方法である。
つまり、9段落または11段落に記載した方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、クロムまたはマンガンからなるいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成し、アルコール分散液を容器に充填する。この後、容器に3方向の振動を加えると、導電性膜はアルコール分散液に浸漬し、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面がアルコール分散液と接する。さらに、容器を金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、クロムまたはマンガンのいずれかの金属が析出し、クロムまたはマンガンのいずれかの金属が複合金属微粒子の表層を形成し、この複合金属微粒子が表面に担持された導電性膜の表面は、耐摩耗性に優れた性質を持つ。
つまり、10段落で説明した強磁性金属の硬度より、クロムはモース硬度が8.5と高く、マンガンは6.0と高いため、導電性膜の表面は耐摩耗性を持つ。すなわち、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、クロムまたはマンガンのいずれかの金属が析出する。このため、クロムまたはマンガンのいずれかの金属の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層を構成するクロムまたはマンガンからなる厚みは、すでに形成された金属微粒子または複合金属微粒子の大きさより厚くなり、この複合金属微粒子は耐摩耗性の性質が優勢になる。この結果、導電性膜の表面は、耐摩耗性に優れるクロムまたはマンガンの性質を持つ。
従って、導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、10段落で説明した導電性膜より、導電性膜が部品や基材の表面に食い込みやすくなり、導電性膜が部品や基材に容易に圧着し、部品や基材の表面に、耐摩耗性と導電性膜の性質を付与する。このように、導電性膜の表面の複合金属微粒子は、部品や基材に導電性膜を圧着する手段として利用でき、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持つため、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜は部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化でき、部品や基材に耐摩耗性と導電性膜の性質が付与できる。さらに、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。また、圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合金属微粒子の集まりに相当するサブミクロンの間隙であり、この間隙に液体は侵入できない。従って、圧着面または磁気吸着面は、液体に侵されない。なお、クロムとマンガンの双方は、9段落で説明した強磁性の金属より耐食性に優れる。
また、表層がクロムまたはマンガンからなる複合金属微粒子の集まりが、導電性膜の表面に形成される現象は、18段落で説明した展性に優れる金属が、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層を形成する現象と同様である。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜が容易に製造される。
つまり、10段落で説明した強磁性金属の硬度より、クロムはモース硬度が8.5と高く、マンガンは6.0と高いため、導電性膜の表面は耐摩耗性を持つ。すなわち、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、クロムまたはマンガンのいずれかの金属が析出する。このため、クロムまたはマンガンのいずれかの金属の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層を構成するクロムまたはマンガンからなる厚みは、すでに形成された金属微粒子または複合金属微粒子の大きさより厚くなり、この複合金属微粒子は耐摩耗性の性質が優勢になる。この結果、導電性膜の表面は、耐摩耗性に優れるクロムまたはマンガンの性質を持つ。
従って、導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、10段落で説明した導電性膜より、導電性膜が部品や基材の表面に食い込みやすくなり、導電性膜が部品や基材に容易に圧着し、部品や基材の表面に、耐摩耗性と導電性膜の性質を付与する。このように、導電性膜の表面の複合金属微粒子は、部品や基材に導電性膜を圧着する手段として利用でき、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持つため、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜は部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化でき、部品や基材に耐摩耗性と導電性膜の性質が付与できる。さらに、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。また、圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合金属微粒子の集まりに相当するサブミクロンの間隙であり、この間隙に液体は侵入できない。従って、圧着面または磁気吸着面は、液体に侵されない。なお、クロムとマンガンの双方は、9段落で説明した強磁性の金属より耐食性に優れる。
また、表層がクロムまたはマンガンからなる複合金属微粒子の集まりが、導電性膜の表面に形成される現象は、18段落で説明した展性に優れる金属が、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層を形成する現象と同様である。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜が容易に製造される。
21段落に記載した導電性膜の製造方法において、21段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに共有結合する第一の性質と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の性質とを兼備するカルボン酸金属化合物である、21段落に記載した導電性膜の製造方法である。
つまり、2つの性質を兼備するカルボン酸金属化合物は、16段落で説明したように、熱分解で金属を析出する。従って、クロムまたはマンガンのいずれかの金属からなるカルボン酸金属化合物は、安価な工業用薬品であり、21段落に記載した導電性膜の製造方法において、クロムまたはマンガンのいずれかの金属が熱分解で析出する金属化合物として、カルボン酸金属化合物を用い、21段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜が製造される。
9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、触媒作用を有する第一の導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、9段落または11段落に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属が熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温することによって、表面が触媒作用を有する第一の導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が触媒作用を有する第一の導電性膜の製造方法である。
つまり、9段落または11段落に記載した方法で、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の白金族の金属が熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加えると、導電性膜はアルコール分散液に浸漬し、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面がアルコール分散液と接する。この後、容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記したいずれか1種類の金属が析出して複合金属微粒子の表層を形成し、この複合金属微粒子が表面に担持された導電性膜の表面は、触媒作用を持つ。この結果、表面が触媒作用を有する第一の導電性膜が容器の底面に形成される。
つまり、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、触媒作用を持つ白金族の金属は、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に析出する。このため、新たに析出する白金族の金属の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、白金族の金属が、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層を形成する。この結果、導電性膜の表面は、触媒作用を持つ白金族の金属の性質を持つ。
導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子は、微粒子であるため、体積に対する表面積の比率である比表面積が大きい。さらに、触媒作用を有する白金族の金属が、複合金属微粒子の表層を形成するため、複合金属微粒子による触媒作用の効率が上がる。また、触媒作用をもたらす白金族の金属は、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層に留められ、白金族の金属となる高価な原料の使用量が少ない。こうした触媒作用の効率が高く、安価な製造費で製造できる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に莫大な数として形成される。また、触媒作用を持つ白金族の金属は、触媒作用に応じて自在に変えられる。従って、この導電性膜は、触媒作用を有するチップ部品や扁平シートとして利用できる。また、導電性膜の一方の表面に担持された複合金属微粒子の集まりは、圧着の手段として利用でき、導電性膜を部品や基材に圧着できる。また、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持ち、導電性膜は強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化され、触媒作用と導電性膜の性質とが付与される。さらに、圧着面または磁気吸着面の間隙が狭いため、10段落に記載した導電性膜と同様に、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。なお、触媒作用を発揮する金属は、15段落で説明したクロムとマンガンのいずれの金属よりさらに耐食性に優れる。また、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
なお、触媒作用を有する金属として、前記した白金族の金属が挙げられ、金属の材質に応じて、触媒作用は異なる。
また、導電性膜の表面に、触媒作用を持つ複合金属微粒子が形成される現象は、18段落に説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が触媒作用を有する導電性膜が容易に製造される。
つまり、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、触媒作用を持つ白金族の金属は、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に析出する。このため、新たに析出する白金族の金属の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、白金族の金属が、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層を形成する。この結果、導電性膜の表面は、触媒作用を持つ白金族の金属の性質を持つ。
導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子は、微粒子であるため、体積に対する表面積の比率である比表面積が大きい。さらに、触媒作用を有する白金族の金属が、複合金属微粒子の表層を形成するため、複合金属微粒子による触媒作用の効率が上がる。また、触媒作用をもたらす白金族の金属は、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層に留められ、白金族の金属となる高価な原料の使用量が少ない。こうした触媒作用の効率が高く、安価な製造費で製造できる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に莫大な数として形成される。また、触媒作用を持つ白金族の金属は、触媒作用に応じて自在に変えられる。従って、この導電性膜は、触媒作用を有するチップ部品や扁平シートとして利用できる。また、導電性膜の一方の表面に担持された複合金属微粒子の集まりは、圧着の手段として利用でき、導電性膜を部品や基材に圧着できる。また、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持ち、導電性膜は強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化され、触媒作用と導電性膜の性質とが付与される。さらに、圧着面または磁気吸着面の間隙が狭いため、10段落に記載した導電性膜と同様に、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。なお、触媒作用を発揮する金属は、15段落で説明したクロムとマンガンのいずれの金属よりさらに耐食性に優れる。また、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
なお、触媒作用を有する金属として、前記した白金族の金属が挙げられ、金属の材質に応じて、触媒作用は異なる。
また、導電性膜の表面に、触媒作用を持つ複合金属微粒子が形成される現象は、18段落に説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が触媒作用を有する導電性膜が容易に製造される。
25段落に記載した導電性膜の製造方法において、25段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、無機物のイオンないしは分子からなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物である、25段落に記載した導電性膜の製造方法である。
つまり、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子になって、白金族の金属に属する白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物を、還元雰囲気で熱処理すると、最初に配位結合部が分断され、無機物と前記いずれかの金属とに分解する。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了し、前記いずれか1種類の金属が析出する。つまり、無機金属化合物を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きく、金属イオンと配位子との距離が最も長い。この無機金属化合物を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物の気化が完了すると金属が析出する。こうした無機金属化合物の熱分解によって金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属が析出する温度の中で最も低い。また、これらの無機金属化合物は、メタノールに10重量%近くまで分散する。
つまり、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンは、他の金属錯イオンに比べて合成が容易である。このような金属錯イオンとして、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオン、水H2Oが配位子となって金属イオンに配位結合するアクア金属錯イオン、水酸基OH―が配位子となって金属イオンに配位結合するヒドロキソ金属錯イオン、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンなどがある。さらに、このような金属錯イオンを有する塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの無機塩からなる無機金属化合物は、無機塩の分子量が小さいため、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了し金属を析出する。この金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属を析出する温度の中で最も低い。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である無機金属化合物を、25段落に記載した導電性膜の製造方法において、白金族の金属を熱分解で析出する金属化合物として用い、25段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、25段落に記載した導電性膜が製造される。
つまり、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンは、他の金属錯イオンに比べて合成が容易である。このような金属錯イオンとして、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオン、水H2Oが配位子となって金属イオンに配位結合するアクア金属錯イオン、水酸基OH―が配位子となって金属イオンに配位結合するヒドロキソ金属錯イオン、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンなどがある。さらに、このような金属錯イオンを有する塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの無機塩からなる無機金属化合物は、無機塩の分子量が小さいため、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了し金属を析出する。この金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属を析出する温度の中で最も低い。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である無機金属化合物を、25段落に記載した導電性膜の製造方法において、白金族の金属を熱分解で析出する金属化合物として用い、25段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、25段落に記載した導電性膜が製造される。
9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、触媒作用を有する第二の導電性膜であって、該触媒作用を有する第二の導電性膜の製造方法は、9段落または11段落に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、または、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、この後、該容器を前記2種類の金属化合物が同時に熱分解する温度に昇温することによって、表面が触媒作用を有する第二の導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が触媒作用を有する第二の導電性膜の製造方法である。
つまり、9段落または11段落に記載した方法で、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、または、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成する。このアルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加えると、導電性膜はアルコール分散液に浸漬し、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面がアルコール分散液と接する。この後、容器を前記2種類の金属化合物が同時に熱分解する温度に昇温すると、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記2種類の金属が同時に析出し、2種類の金属の組成からなる合金が、複合金属微粒子の表層を形成し、この複合金属微粒子が導電性膜の表面に担持されるため、表面が触媒作用を有する第二の導電性膜が容器の底面に形成される。
つまり、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する2種類の金属の核になり、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に新たな2種類の金属が析出する。このため、新たに析出する2種類の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層が、2種類の金属からなる合金で形成される。この結果、導電性膜の表面は、触媒作用を持つ2種類の金属からなる合金の性質を持つ。
26段落で説明したように、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子は、微粒子であるがゆえに、体積に対する表面積の比率である比表面積が大きい。さらに、触媒作用を有する合金が、複合金属微粒子の表層を形成するため、複合金属微粒子による触媒作用の効率が上がる。また、触媒作用をもたらす合金は、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層に留められるため、合金になる高価な原料の使用量が減る。こうした触媒作用の効率が高く、安価な製造費で製造できる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に莫大な数として形成される。また、触媒作用を持つ合金の組成は、触媒作用に応じて自在に変えられる。従って、この導電性膜は、触媒作用を有するチップ部品や扁平シートとして利用できる。また、導電性膜の一方の表面に担持された複合金属微粒子の集まりは、圧着の手段としても利用で、導電性膜を部品や基材に圧着できる。なお、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持ち、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化され、触媒作用と導電性膜の性質が付与される。さらに、圧着面または磁気吸着面の間隙が狭いため、10段落に記載した導電性膜と同様に、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。なお、触媒作用を発揮する合金は、26段落で説明した白金族の金属と同様に、優れた耐食性を持つ。また、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
なお、触媒作用を有する合金として、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の金属からなる合金と、前記白金族のいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属からなる合金が挙げられ、合金の組成に応じて触媒作用は異なる。こうした合金によって、複合金属微粒子の表層を構成すれば、優れた触媒作用を有する導電性膜が製造できる。
また、導電性膜の表面に、触媒作用を持つ複合金属微粒子が形成される現象は、18段落に説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が触媒作用を有する導電性膜が容易に製造される。
つまり、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する2種類の金属の核になり、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に新たな2種類の金属が析出する。このため、新たに析出する2種類の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層が、2種類の金属からなる合金で形成される。この結果、導電性膜の表面は、触媒作用を持つ2種類の金属からなる合金の性質を持つ。
26段落で説明したように、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子は、微粒子であるがゆえに、体積に対する表面積の比率である比表面積が大きい。さらに、触媒作用を有する合金が、複合金属微粒子の表層を形成するため、複合金属微粒子による触媒作用の効率が上がる。また、触媒作用をもたらす合金は、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層に留められるため、合金になる高価な原料の使用量が減る。こうした触媒作用の効率が高く、安価な製造費で製造できる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に莫大な数として形成される。また、触媒作用を持つ合金の組成は、触媒作用に応じて自在に変えられる。従って、この導電性膜は、触媒作用を有するチップ部品や扁平シートとして利用できる。また、導電性膜の一方の表面に担持された複合金属微粒子の集まりは、圧着の手段としても利用で、導電性膜を部品や基材に圧着できる。なお、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持ち、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化され、触媒作用と導電性膜の性質が付与される。さらに、圧着面または磁気吸着面の間隙が狭いため、10段落に記載した導電性膜と同様に、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。なお、触媒作用を発揮する合金は、26段落で説明した白金族の金属と同様に、優れた耐食性を持つ。また、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
なお、触媒作用を有する合金として、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の金属からなる合金と、前記白金族のいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属からなる合金が挙げられ、合金の組成に応じて触媒作用は異なる。こうした合金によって、複合金属微粒子の表層を構成すれば、優れた触媒作用を有する導電性膜が製造できる。
また、導電性膜の表面に、触媒作用を持つ複合金属微粒子が形成される現象は、18段落に説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が触媒作用を有する導電性膜が容易に製造される。
29段落に記載した導電性膜の製造方法において、29段落に記載した熱分解で2種類の金属が同時に析出する2種類の金属化合物が、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類の金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物である、29段落に記載した導電性膜の製造方法である。
つまり、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類の金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物は、配位子が同一であるため、同時に熱分解が始まり、還元雰囲気の180−220℃の温度範囲で、2種類の無機金属化合物の熱分解が完了し、2種類の金属が同時に析出し、2種類の無機金属化合物のモル数の比率に応じた組成からなる合金を析出する。このため、2種類の無機金属化合物は、触媒作用を持つ合金を熱分解で析出する原料になる。また、合金が析出する温度は、合金の融点より著しく低く、還元雰囲気での短時間の熱処理で合金を析出する。
すなわち、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類の金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物を、還元雰囲気で熱処理すると、最初に配位結合部が分断され、無機物と2種類の金属とに分解する。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了したのちに、2種類の金属が同時に析出し、これらの金属は不純物を持たない活性状態にあるため、析出した2種類の金属の組成からなる合金が析出する。すなわち、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物が同時に熱分解し、2種類の金属からなる合金が析出する。また、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物が同時に熱分解し、2種類の金属からなる合金が析出する。なお、無機物のイオンないしは分子からなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物は、28段落で説明した無機金属化合物である。
また、2種類の無機金属化合物の熱分解反応は、無機金属化合物を構成する金属によらず、無機金属化合物を構成する配位子の結合部の分解で始まる。このため合金が析出する温度は、合金の融点を超える温度で合金の原料を溶解して合金を精製する溶製材の製造温度に比べると著しく低い。
以上に説明したように、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物を、29段落に記載した導電性膜の製造方法において、触媒作用を持つ合金を熱分解で析出する金属化合物として用い、29段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、29段落に記載した導電性膜が製造される。
すなわち、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類の金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物を、還元雰囲気で熱処理すると、最初に配位結合部が分断され、無機物と2種類の金属とに分解する。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了したのちに、2種類の金属が同時に析出し、これらの金属は不純物を持たない活性状態にあるため、析出した2種類の金属の組成からなる合金が析出する。すなわち、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物が同時に熱分解し、2種類の金属からなる合金が析出する。また、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物が同時に熱分解し、2種類の金属からなる合金が析出する。なお、無機物のイオンないしは分子からなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物は、28段落で説明した無機金属化合物である。
また、2種類の無機金属化合物の熱分解反応は、無機金属化合物を構成する金属によらず、無機金属化合物を構成する配位子の結合部の分解で始まる。このため合金が析出する温度は、合金の融点を超える温度で合金の原料を溶解して合金を精製する溶製材の製造温度に比べると著しく低い。
以上に説明したように、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物を、29段落に記載した導電性膜の製造方法において、触媒作用を持つ合金を熱分解で析出する金属化合物として用い、29段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、29段落に記載した導電性膜が製造される。
9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、9段落または11段落に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、該容器に、酸化アルミニウムを熱分解で析出する金属化合物のアルコール分散液を充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温することによって、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜の製造方法である。
つまり、9段落または11段落に記載した方法で、容器の底面に、導電性膜を形成し、さらに、酸化アルミニウムを熱分解で析出する金属化合物のアルコール分散液を、容器に充填する。この後、容器に3方向の振動を加えると、導電性膜はアルコール分散液に浸漬し、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面がアルコール分散液と接する。さらに、容器を金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、酸化アルミニウムが析出し、表層が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とに優れる酸化アルミニウムからなる複合微粒子が、導電性膜の表面に形成される。なお、酸化アルミニウムは、熱伝導率が40W/mKで、金属酸化物の中では優れた熱伝導性を持つ。また、電気抵抗は1014Ωcm以上の抵抗率を持つ絶縁体である。さらに、化学的に安定な酸化物で、耐食性に優れる。また、モース硬度が9からなる硬い物質である。このため、導電性膜の表面は、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性との性質を有する。
従って、複合微粒子の表層は硬く、導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、導電性膜の表面の複合微粒子が部品や基材の表面に食い込み、導電性膜が部品や基材に圧着し、部品や基材の表面が絶縁化される。例えば、電気導電性と熱伝導性に優れる部品や基材の表面を絶縁化させる手段として利用できる。また、導電性膜は磁性を持つため、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、部品や基材に酸化アルミニウムの性質と導電性膜の性質が付与できる。また、10段落で説明した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。さらに、導電性膜の圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合微粒子の大きさに相当する僅かな間隙であるため、この間隙に液体は侵入できない。このため、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。
また、表層が酸化アルミニウムからなる複合微粒子の集まりが、導電性膜の表面に形成される現象は、18段落で説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が容易に製造される。
なお、導電性膜の表面に担持される複合微粒子の表層は、酸化アルミニウムに限定されない。例えば、表層を酸化マグネシウムで構成した場合は、扁平粉の表面は電気絶縁性と優れた熱伝導性とを持つが、耐食性は酸化アルミニウムに比べ劣る。このように、新たに析出する物質によって、導電性膜の表面に担持する複合微粒子の表層は自在に変えることができ、導電性膜の表面に様々な性質がもたらされる。さらに、導電性膜の表面の性質を内部の性質と異ならせることができる。これによって、導電性膜が持つ性質が格段に拡大し、新たな用途に導電性膜を適応することができる。
従って、複合微粒子の表層は硬く、導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、導電性膜の表面の複合微粒子が部品や基材の表面に食い込み、導電性膜が部品や基材に圧着し、部品や基材の表面が絶縁化される。例えば、電気導電性と熱伝導性に優れる部品や基材の表面を絶縁化させる手段として利用できる。また、導電性膜は磁性を持つため、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、部品や基材に酸化アルミニウムの性質と導電性膜の性質が付与できる。また、10段落で説明した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。さらに、導電性膜の圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合微粒子の大きさに相当する僅かな間隙であるため、この間隙に液体は侵入できない。このため、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。
また、表層が酸化アルミニウムからなる複合微粒子の集まりが、導電性膜の表面に形成される現象は、18段落で説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が容易に製造される。
なお、導電性膜の表面に担持される複合微粒子の表層は、酸化アルミニウムに限定されない。例えば、表層を酸化マグネシウムで構成した場合は、扁平粉の表面は電気絶縁性と優れた熱伝導性とを持つが、耐食性は酸化アルミニウムに比べ劣る。このように、新たに析出する物質によって、導電性膜の表面に担持する複合微粒子の表層は自在に変えることができ、導電性膜の表面に様々な性質がもたらされる。さらに、導電性膜の表面の性質を内部の性質と異ならせることができる。これによって、導電性膜が持つ性質が格段に拡大し、新たな用途に導電性膜を適応することができる。
34段落に記載した導電性膜の製造方法において、酸化アルミニウムが熱分解で析出する金属化合物が、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるいずれか1種類のカルボン酸アルミニウム化合物である、34段落に記載した導電性膜の製造方法である。
つまり、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、アルミニウムイオンに配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、熱分解によって酸化アルミニウムを析出する。このため、34段落に記載した導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜の製造方法において、酸化アルミニウムを熱分解で析出する金属化合物として、カルボン酸アルミニウム化合物を用い、34段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が製造される。なお、カルボン酸アルミニウム化合物の熱分解温度は、ナフテン酸アルミニウムが330℃で熱分解する温度が最も高い。また、カルボン酸アルミニウム化合物の大気雰囲気での熱分解は、窒素雰囲気での熱分解より30−50℃低いため、大気雰囲気での熱分解は、熱処理費用が安価で済む。また、これらのカルボン酸アルミニウム化合物は、メタノールに10重量%近くまで分散する。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、アルミニウムイオンに近づいて配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、最も大きいイオンであるアルミニウムイオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。このため、アルミニウムイオンに配位結合する酸素イオンが、アルミニウムイオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸アルミニウム化合物は、カルボン酸アルミニウム化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンがアルミニウムイオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、アルミニウムイオンと酸素イオンとの化合物である酸化アルミニウムとカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に酸化アルミニウムが析出する。こうしたカルボン酸アルミニウム化合物として、酢酸アルミニウム、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムなどがある。
なお、酢酸アルミニウムは、熱分解でアモルファス化した酸化アルミニウムを析出するため、熱分解で酸化アルミニウムを析出するカルボン酸アルミニウム化合物は、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるカルボン酸アルミニウム化合物が望ましい。
また、カルボン酸アルミニウム化合物は、いずれも容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を、無機アルミニウム化合物と反応させると、カルボン酸アルミニウム化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であり、大気雰囲気においては330℃程度の低い熱処理温度で、酸化アルミニウムが析出する。
以上に説明したように、34段落に記載した導電性膜の製造方法において、酸化アルミニウムが熱分解で析出する金属化合物として、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるいずれか1種類のカルボン酸アルミニウム化合物を用いると、導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が製造される。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、アルミニウムイオンに近づいて配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、最も大きいイオンであるアルミニウムイオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。このため、アルミニウムイオンに配位結合する酸素イオンが、アルミニウムイオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸アルミニウム化合物は、カルボン酸アルミニウム化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンがアルミニウムイオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、アルミニウムイオンと酸素イオンとの化合物である酸化アルミニウムとカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に酸化アルミニウムが析出する。こうしたカルボン酸アルミニウム化合物として、酢酸アルミニウム、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムなどがある。
なお、酢酸アルミニウムは、熱分解でアモルファス化した酸化アルミニウムを析出するため、熱分解で酸化アルミニウムを析出するカルボン酸アルミニウム化合物は、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるカルボン酸アルミニウム化合物が望ましい。
また、カルボン酸アルミニウム化合物は、いずれも容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を、無機アルミニウム化合物と反応させると、カルボン酸アルミニウム化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であり、大気雰囲気においては330℃程度の低い熱処理温度で、酸化アルミニウムが析出する。
以上に説明したように、34段落に記載した導電性膜の製造方法において、酸化アルミニウムが熱分解で析出する金属化合物として、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるいずれか1種類のカルボン酸アルミニウム化合物を用いると、導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が製造される。
実施例1
本実施例では、扁平粉の扁平面に析出した鉄微粒子の集まりで、扁平面同士を接合した導電性膜を製造する。扁平粉は銅の扁平粉(福田金属箔粉工業株式会社の銅フレーク粉E3)を用いた。この扁平粉の粒度分布は、75μm以上が3%より少なく、45μm以上が40%より少なく、45μm以下が60%より多い。鉄微粒子の原料は、熱分解温度が360℃であるラウリン酸第二鉄Fe(C11H23COO)3(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
最初に、ラウリン酸第二鉄を10重量%の割合でメタノールに分散させた。このアルコール分散液の100ccに、20gの銅の扁平粉を混合した。この混合物を、回転による拡散混合と揺動による移動混合とを同時に行う装置(愛知電機株式会社のロッキングミキサーRMH−HT)に充填し、回転と揺動を繰り返して懸濁液を作成した。この懸濁液をビーカーに充填し、ビーカーに超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)で、20kHzの超音波振動を1分間加えた。この後、懸濁液を10mm×100mm×5mmからなる細長い短冊状の容器に充填し、この容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.4Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し、最後に、上下方向に0.4Gの振動加速度を10秒間加えた。この後、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。なお、メタノールとラウリン酸とは沸点が異なるため、気化したメタノールとラウリン酸とは、回収機で個別に回収した。
この後、容器の底に形成された短冊状の極薄い試料を取り出し、試料の表面を電子顕微鏡で観察と分析を行なった。さらに、試料の中央部で幅方向に試料を切断し、断面を電子顕微鏡で観察と分析を行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料が観察できる。
最初に、試料の表面からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の表面は、40−60nmの大きさからなる微粒子の集まりで覆われていた。次に、試料の表面からの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒状微粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められなかったので、単一原子から構成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒子を構成する元素の種類を分析した。鉄原子のみで構成されていたため、微粒子は鉄微粒子である。
さらに、試料の断面からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。図1は、試料の断面の一部を模式的に拡大した図である。1は鉄微粒子で、2は銅の扁平粉である。なお、作成した試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかったため、一定の機械的強度を持つ。
本実施例で製造した短冊状の試料を、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例では、磁性を有する金属として鉄を用い、扁平粉として銅の扁平粉を用い、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜を製造した。なお、熱分解でニッケルないしコバルトを析出する金属化合物を用いると、ニッケルないしはコバルトの微粒子の集まりによって、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜が製造できる。また、銀の扁平粉を用いれば、銀の扁平粉の扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜が製造できる。さらに、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、扁平粉の扁平面に析出した鉄微粒子の集まりで、扁平面同士を接合した導電性膜を製造する。扁平粉は銅の扁平粉(福田金属箔粉工業株式会社の銅フレーク粉E3)を用いた。この扁平粉の粒度分布は、75μm以上が3%より少なく、45μm以上が40%より少なく、45μm以下が60%より多い。鉄微粒子の原料は、熱分解温度が360℃であるラウリン酸第二鉄Fe(C11H23COO)3(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
最初に、ラウリン酸第二鉄を10重量%の割合でメタノールに分散させた。このアルコール分散液の100ccに、20gの銅の扁平粉を混合した。この混合物を、回転による拡散混合と揺動による移動混合とを同時に行う装置(愛知電機株式会社のロッキングミキサーRMH−HT)に充填し、回転と揺動を繰り返して懸濁液を作成した。この懸濁液をビーカーに充填し、ビーカーに超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)で、20kHzの超音波振動を1分間加えた。この後、懸濁液を10mm×100mm×5mmからなる細長い短冊状の容器に充填し、この容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.4Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し、最後に、上下方向に0.4Gの振動加速度を10秒間加えた。この後、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。なお、メタノールとラウリン酸とは沸点が異なるため、気化したメタノールとラウリン酸とは、回収機で個別に回収した。
この後、容器の底に形成された短冊状の極薄い試料を取り出し、試料の表面を電子顕微鏡で観察と分析を行なった。さらに、試料の中央部で幅方向に試料を切断し、断面を電子顕微鏡で観察と分析を行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料が観察できる。
最初に、試料の表面からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の表面は、40−60nmの大きさからなる微粒子の集まりで覆われていた。次に、試料の表面からの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒状微粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められなかったので、単一原子から構成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒子を構成する元素の種類を分析した。鉄原子のみで構成されていたため、微粒子は鉄微粒子である。
さらに、試料の断面からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。図1は、試料の断面の一部を模式的に拡大した図である。1は鉄微粒子で、2は銅の扁平粉である。なお、作成した試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかったため、一定の機械的強度を持つ。
本実施例で製造した短冊状の試料を、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例では、磁性を有する金属として鉄を用い、扁平粉として銅の扁平粉を用い、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜を製造した。なお、熱分解でニッケルないしコバルトを析出する金属化合物を用いると、ニッケルないしはコバルトの微粒子の集まりによって、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜が製造できる。また、銀の扁平粉を用いれば、銀の扁平粉の扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜が製造できる。さらに、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
実施例2
本実施例では、扁平粉の扁平面に析出した鉄微粒子と銅微粒子とからなる複合微粒子の集まりで、扁平面同士を接合した導電性膜を製造する。扁平粉は実施例1の銅の扁平粉を用いた。鉄の原料は実施例1のラウリン酸第二鉄を用い、銅の原料は熱分解温度がラウリン酸鉄と同じ360℃であるラウリン酸第二銅Cu(C11H23COO)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
最初に、ラウリン酸第二鉄を0.2重量%の割合でメタノールに分散した。次に、ラウリン酸第二銅を0.8重量%の割合でメタノールに分散した。2種類のアルコール分散液の50ccずつを混合し、さらに、実施例1で用いた銅の扁平粉の20gを混合し、混合物を、実施例1と同様に、回転機によって回転と揺動を繰り返して懸濁液を作成した。さらに、懸濁液をビーカーに充填し、実施例1で用いた超音波ホモジナイザー装置で、懸濁液に20kHzの超音波振動を1分間加えた。この後、懸濁液を、実施例1と同じ形状の容器に充填した。この容器を小型加振機の加振台の上に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。この後、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、細長い短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。実施例1と同様に、気化したメタノールとラウリン酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、40−60nmの大きさからなる銅と鉄とからなる複合微粒子の集まりで覆われていた。なお、複合金属微粒子における銅と鉄との析出比率は4対1の割合であった。また、試料の断面の観察から、複合金属微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、導電性膜は、銅の性質が鉄の性質より優勢な2種類の金属の性質を持つ。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、扁平粉として銅の扁平粉を用い、鉄と銅とからなる複合金属微粒子の接合によって、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜の実施例である。銅の代わりに他の金属を用いることで、導電性膜の性質が変わる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、扁平粉の扁平面に析出した鉄微粒子と銅微粒子とからなる複合微粒子の集まりで、扁平面同士を接合した導電性膜を製造する。扁平粉は実施例1の銅の扁平粉を用いた。鉄の原料は実施例1のラウリン酸第二鉄を用い、銅の原料は熱分解温度がラウリン酸鉄と同じ360℃であるラウリン酸第二銅Cu(C11H23COO)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
最初に、ラウリン酸第二鉄を0.2重量%の割合でメタノールに分散した。次に、ラウリン酸第二銅を0.8重量%の割合でメタノールに分散した。2種類のアルコール分散液の50ccずつを混合し、さらに、実施例1で用いた銅の扁平粉の20gを混合し、混合物を、実施例1と同様に、回転機によって回転と揺動を繰り返して懸濁液を作成した。さらに、懸濁液をビーカーに充填し、実施例1で用いた超音波ホモジナイザー装置で、懸濁液に20kHzの超音波振動を1分間加えた。この後、懸濁液を、実施例1と同じ形状の容器に充填した。この容器を小型加振機の加振台の上に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。この後、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、細長い短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。実施例1と同様に、気化したメタノールとラウリン酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、40−60nmの大きさからなる銅と鉄とからなる複合微粒子の集まりで覆われていた。なお、複合金属微粒子における銅と鉄との析出比率は4対1の割合であった。また、試料の断面の観察から、複合金属微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、導電性膜は、銅の性質が鉄の性質より優勢な2種類の金属の性質を持つ。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、扁平粉として銅の扁平粉を用い、鉄と銅とからなる複合金属微粒子の接合によって、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜の実施例である。銅の代わりに他の金属を用いることで、導電性膜の性質が変わる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
実施例3
本実施例では、実施例2の導電性膜を容器内に形成し、さらに、実施例2のラウリン酸第二銅を原料として用い、導電性膜の表面に析出した複合金属微粒子の表面に、さらに銅を析出させ、導電性膜の表面が展性に優れた性質を持つ導電性膜を製造する。
最初に、実施例2の製造方法で、導電性膜を容器内に形成した。この後、ラウリン酸第二銅を0.1重量%の濃度でメタノールに分散させ、この分散液の50ccを容器に充填した。容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、細長い短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとラウリン酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面が銅からなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例2で製造した導電性膜の表面に担持された鉄と銅との複合金属微粒子の表面に、さらに銅が30nmに近い厚みで析出し、銅の性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は銅の性質を持つ。また、試料の断面の観察から、試料は、実施例2と同様に、複合金属微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙に銅は析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が展性に優れた導電性膜として銅を用いた事例である。展性に優れた他の金属、例えば、アルミニウムを用いれば、表面が展性に優れ、より軽量な導電性膜が製造できる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、実施例2の導電性膜を容器内に形成し、さらに、実施例2のラウリン酸第二銅を原料として用い、導電性膜の表面に析出した複合金属微粒子の表面に、さらに銅を析出させ、導電性膜の表面が展性に優れた性質を持つ導電性膜を製造する。
最初に、実施例2の製造方法で、導電性膜を容器内に形成した。この後、ラウリン酸第二銅を0.1重量%の濃度でメタノールに分散させ、この分散液の50ccを容器に充填した。容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、細長い短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとラウリン酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面が銅からなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例2で製造した導電性膜の表面に担持された鉄と銅との複合金属微粒子の表面に、さらに銅が30nmに近い厚みで析出し、銅の性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は銅の性質を持つ。また、試料の断面の観察から、試料は、実施例2と同様に、複合金属微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙に銅は析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が展性に優れた導電性膜として銅を用いた事例である。展性に優れた他の金属、例えば、アルミニウムを用いれば、表面が展性に優れ、より軽量な導電性膜が製造できる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
実施例4
本実施例では、実施例1の導電性膜を容器内に形成し、さらに、オクチル酸クロムCr(C7H15COO)3(CAS番号3444−17−5、輸入品)をクロムの原料として用い、導電性膜の表面に析出した鉄微粒子の表面に、さらにクロムを析出させ、表面が耐摩耗性を有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例1の導電性膜を容器内に形成した。この後、オクチル酸クロムを0.1重量%の濃度でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、290℃で2分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとオクチル酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面がクロムからなる微粒子の集まりで覆われていた。このため、実施例1で製造した導電性膜の表面に担持された鉄粒子の表面に、クロムが30nmに近い厚みで析出し、クロムの性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。従って、導電性膜の表面はクロムの性質を持つ。また、断面の観察から、実施例1と同様に、鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙に、クロムは析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、クロムを用いて、表面が耐摩耗性に優れた導電性膜を製造した。クロムの代わりにマンガンを用いれば、表面は耐摩耗性とともに、マンガンの性質を持つ。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、実施例1の導電性膜を容器内に形成し、さらに、オクチル酸クロムCr(C7H15COO)3(CAS番号3444−17−5、輸入品)をクロムの原料として用い、導電性膜の表面に析出した鉄微粒子の表面に、さらにクロムを析出させ、表面が耐摩耗性を有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例1の導電性膜を容器内に形成した。この後、オクチル酸クロムを0.1重量%の濃度でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、290℃で2分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとオクチル酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面がクロムからなる微粒子の集まりで覆われていた。このため、実施例1で製造した導電性膜の表面に担持された鉄粒子の表面に、クロムが30nmに近い厚みで析出し、クロムの性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。従って、導電性膜の表面はクロムの性質を持つ。また、断面の観察から、実施例1と同様に、鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙に、クロムは析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、クロムを用いて、表面が耐摩耗性に優れた導電性膜を製造した。クロムの代わりにマンガンを用いれば、表面は耐摩耗性とともに、マンガンの性質を持つ。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
実施例5
本実施例では、実施例1の導電性膜を容器内に形成し、さらに、ジアンミン白金塩化物[Pt(NH3)2]Cl2(三津和化学薬品株式会社の製品)を原料として用い、導電性膜の表面に析出した鉄微粒子の表面に、さらに白金を析出させ、表面が触媒作用を有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例1の導電性膜を容器内に形成した。ジアンミン白金塩化物を0.05重量%の割合でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器をアンモニア雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、180℃で5分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとアンモニアとを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、50−70nm程度の大きさからなる表面が白金からなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例1で製造した導電性膜の表面に担持された鉄粒子の表面に、さらに白金が10nmに近い厚みで析出し、白金の性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は白金の性質を持つ。また、断面の観察から、実施例1と同様に、鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙には、白金は析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が白金による触媒作用を持つ導電性膜の実施例である。白金の代わりに他の白金族の金属、ないしは複数の白金族の金属からなる合金、あるいは、白金族の金属とコバルトとからなる合金を用いれば、表面の触媒作用が変わる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、実施例1の導電性膜を容器内に形成し、さらに、ジアンミン白金塩化物[Pt(NH3)2]Cl2(三津和化学薬品株式会社の製品)を原料として用い、導電性膜の表面に析出した鉄微粒子の表面に、さらに白金を析出させ、表面が触媒作用を有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例1の導電性膜を容器内に形成した。ジアンミン白金塩化物を0.05重量%の割合でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器をアンモニア雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、180℃で5分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとアンモニアとを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、50−70nm程度の大きさからなる表面が白金からなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例1で製造した導電性膜の表面に担持された鉄粒子の表面に、さらに白金が10nmに近い厚みで析出し、白金の性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は白金の性質を持つ。また、断面の観察から、実施例1と同様に、鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙には、白金は析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が白金による触媒作用を持つ導電性膜の実施例である。白金の代わりに他の白金族の金属、ないしは複数の白金族の金属からなる合金、あるいは、白金族の金属とコバルトとからなる合金を用いれば、表面の触媒作用が変わる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
実施例6
本実施例では、実施例2の導電性膜を容器内に形成し、さらに、安息香酸アルミニウムAl(C6H5COO)3(三津和化学薬品株式会社の製品)を酸化アルミニウムの原料として用い、導電性膜の表面に析出した複合金属微粒子の表面に、さらに酸化アルミニウムを析出させ、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例2の導電性膜を容器内に形成した。安息香酸アルミニウムを0.1重量%の割合でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、310℃で2分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールと安息香酸とを回収機で回収した。
実施例2と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と側面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面が酸化アルミニウムからなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例2で製造した導電性膜の表面に担持された複合微粒子の表面に、さらに酸化アルミニウムが30nmに近い厚みで析出し、酸化アルミニウムの性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は酸化アルミニウムの性質を持つ。また、試料の断面の観察から、実施例2と同様に、鉄微粒子と銅微粒子とからなる複合微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙には、酸化アルミニウムは析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性を有する導電性膜として、酸化アルミニウムを用いた実施例である。酸化アルミニウムの代わりに酸化マグネシウムを用いれば、表面の耐食性は低下するが熱伝導性が向上する。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、実施例2の導電性膜を容器内に形成し、さらに、安息香酸アルミニウムAl(C6H5COO)3(三津和化学薬品株式会社の製品)を酸化アルミニウムの原料として用い、導電性膜の表面に析出した複合金属微粒子の表面に、さらに酸化アルミニウムを析出させ、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例2の導電性膜を容器内に形成した。安息香酸アルミニウムを0.1重量%の割合でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、310℃で2分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールと安息香酸とを回収機で回収した。
実施例2と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と側面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面が酸化アルミニウムからなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例2で製造した導電性膜の表面に担持された複合微粒子の表面に、さらに酸化アルミニウムが30nmに近い厚みで析出し、酸化アルミニウムの性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は酸化アルミニウムの性質を持つ。また、試料の断面の観察から、実施例2と同様に、鉄微粒子と銅微粒子とからなる複合微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙には、酸化アルミニウムは析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性を有する導電性膜として、酸化アルミニウムを用いた実施例である。酸化アルミニウムの代わりに酸化マグネシウムを用いれば、表面の耐食性は低下するが熱伝導性が向上する。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
以上に、導電性膜の実施例として、6つの実施例を説明したが、導電性膜は、これらの実施例に限定されない。つまり、金属化合物の熱分解で、様々な金属、合金ないしは金属酸化物を析出する金属化合物を用いることで、内部と表面とに様々な性質を持つ導電性膜が製造される。また、導電性膜の表面の性質を変えることができる。さらに、導電性膜の用途に応じて、導電性膜の厚みと表面積と形状との各々が自在に変えられる。また、本実施例のいずれもが、安価な原料を用い、極めて簡単な処理で、導電性膜が製造できた。従って、本導電性膜の製造方法によって、新たな用途に用いられる導電性膜が製造できる。
1 鉄微粒子 2 銅の扁平粉
本発明は、導電性扁平粉の扁平面同士を重なり合って接合させた導電性扁平粉の集まりからなる導電性膜を製造する方法に係わり、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。つまり、第一に、アスペクト比が104より大きい導電性膜が製造でき、第二に、厚みが1μmから1mmに及ぶ導電性膜が製造でき、第三に、様々な形状の導電性膜が製造でき、第四に、熱処理、エッチング処理、メッキ処理などの処理を伴わず、圧着または磁気吸着によって部品や基材に導電性膜が一体化できるため、導電性膜を形成する部品や基材の材質の制約がない。このため、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの従来の用途に限らず、新たな用途に導電性膜を用いることができる。なお、扁平粉におけるアスペクト比は、一般的に長径と短径との平均値と厚さとの比率を意味する。本発明における導電性膜のアスペクト比は、厚みに対する表面積の比率を意味する。また、扁平粉を、フレーク粉、鱗片粉、円板粉と呼ぶこともある。
電気回路の配線の形成、セラミックコンデンサの内部電極の形成、太陽電池セルの電極形成、電磁波シールド膜や帯電防止膜などの導電性膜は、多くの場合は、導電性ペーストを用いて形成される。この導電性ペーストは、樹脂系バインダと溶媒からなるビヒクル中に、金属や合金からなる導電性フィラーを分散させた流動性組成物で構成される。なお、スクリーン印刷などの手段で導電性ペーストを印刷すると、導電性フィラーが液状物質を介して被印刷物に映され、樹脂系バインダと溶媒からなる液状物質が導電性フィラーを運ぶ役割を担うため、液状物質をビヒクルと呼ぶ。
こうした導電性ペーストは、樹脂の硬化を介して導電性フィラー同士が圧着され、導電性フィラーによる通電路が形成される樹脂硬化型と、焼成によって有機成分が揮発して導電性フィラー同士が焼結し、焼結した導電性フィラーによって、通電路が形成される焼成型に二分される。
樹脂硬化型導電性ペーストは、金属粉または合金粉からなる導電性フィラーと、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を溶解させた有機バインダからなるペースト状の組成物である。熱を加えることで熱硬化型樹脂が導電フィラーとともに硬化収縮し、硬化した樹脂を介して導電性フィラー同士が圧着されて互いに接触状態となり、導通性がもたらされる。この樹脂硬化型導電性ペーストは、200℃程度の低い温度で加熱処理されるため、熱ダメージが少なく、熱に弱い合成樹脂からなるプリント配線基板や回路基板などの配線の形成に使用されている。
一方、焼成型導電性ペーストは、金属粉または合金粉からなる導電性フィラーとガラスフリットを、有機ビヒクル中に分散させたペースト状の組成物であり、900℃程度の高温で加熱焼成し、有機ビヒクルを揮発させ、次にガラスフリットを融解させ、さらに金属粉同士または合金粉同士が焼結することによって導通性がもたらされる。この際、ガラスフリットが、金属粉または合金粉からなる導電性膜を基板に接合させ、有機ビヒクルが、金属粉または合金粉とガラスフリットを、印刷が可能になる液状媒体とする。焼成型導電性ペーストは焼成温度が高いため、合成樹脂からなるプリント配線基板や回路基板には使用できないが、金属粉または合金粉が焼結して一体化することから低抵抗化が実現でき、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極などに使用されている。
こうした導電性ペーストは、樹脂の硬化を介して導電性フィラー同士が圧着され、導電性フィラーによる通電路が形成される樹脂硬化型と、焼成によって有機成分が揮発して導電性フィラー同士が焼結し、焼結した導電性フィラーによって、通電路が形成される焼成型に二分される。
樹脂硬化型導電性ペーストは、金属粉または合金粉からなる導電性フィラーと、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を溶解させた有機バインダからなるペースト状の組成物である。熱を加えることで熱硬化型樹脂が導電フィラーとともに硬化収縮し、硬化した樹脂を介して導電性フィラー同士が圧着されて互いに接触状態となり、導通性がもたらされる。この樹脂硬化型導電性ペーストは、200℃程度の低い温度で加熱処理されるため、熱ダメージが少なく、熱に弱い合成樹脂からなるプリント配線基板や回路基板などの配線の形成に使用されている。
一方、焼成型導電性ペーストは、金属粉または合金粉からなる導電性フィラーとガラスフリットを、有機ビヒクル中に分散させたペースト状の組成物であり、900℃程度の高温で加熱焼成し、有機ビヒクルを揮発させ、次にガラスフリットを融解させ、さらに金属粉同士または合金粉同士が焼結することによって導通性がもたらされる。この際、ガラスフリットが、金属粉または合金粉からなる導電性膜を基板に接合させ、有機ビヒクルが、金属粉または合金粉とガラスフリットを、印刷が可能になる液状媒体とする。焼成型導電性ペーストは焼成温度が高いため、合成樹脂からなるプリント配線基板や回路基板には使用できないが、金属粉または合金粉が焼結して一体化することから低抵抗化が実現でき、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極などに使用されている。
導電性ペーストは、導電性フィラーとして金属粉または合金粉を用い、金属粉または合金粉を、または、金属粉または合金粉とガラスフリットとを、樹脂系バインダと有機溶媒からなるビヒクル中に分散させた分散液で構成される。この導電性ペーストによって形成した導電性膜は、導電性フィラーとして金属粉または合金粉を用いることと、この金属粉または合金粉を分散させることに起因する諸課題を持つ。
第一の課題は、導電性ペーストの熱処理によって形成した導電性膜の抵抗値が、金属粉または合金粉の抵抗値より増大する。つまり、樹脂硬化型導電性ペーストでは、絶縁性の熱硬化性樹脂が、金属粉同士または合金粉同士が直接接触することを妨げる。また、焼成型導電性ペーストでは、導電性が低いガラスフリットが、金属粉同士または合金粉同士の焼結を妨げる。このため、導電性ペーストの熱処理によって形成した電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの電気抵抗が増大し、電気エネルギーが損失すると共に、発熱現象をもたらし、不具合の要因となる。
第二の課題は、金属粉または合金粉の分散性にある。金属粉または合金粉の集まりをビヒクル中に分散させる分散性が悪いと、熱処理後に金属粉または合金粉が偏在し、金属粉同士または合金粉同士が直接接触できない。この結果、前記と同様に、導電性ペーストの熱処理によって形成した電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜の電気抵抗が増大する。
第三の課題は、金属粉同士または合金粉同士が焼結する際に、金属粉または合金粉が収縮する。つまり、金属粉または合金粉が収縮すると、積層セラミックスコンデンサの内部電極においては、電極と誘電体とのデラミネーション(層間剥離)や、電極層にクラックが発生などの構造欠陥が起きる。
第四の課題は、金属粉同士または合金粉同士が凝集する。さらに、粉体が微細になるほど凝集しやすい。粉体の凝集が起こると、ビヒクル中への粉体の分散性が悪化し、結果として、導電性ペーストの熱処理で形成した導電性膜の電気抵抗が増大する。
上記した4つの課題はいずれも、導電性フィラーとして金属粉または合金粉を用いることと、この金属粉または合金粉の集まりを分散させる分散媒体に起因するため、根本的な解決は難しい。
第一の課題は、導電性ペーストの熱処理によって形成した導電性膜の抵抗値が、金属粉または合金粉の抵抗値より増大する。つまり、樹脂硬化型導電性ペーストでは、絶縁性の熱硬化性樹脂が、金属粉同士または合金粉同士が直接接触することを妨げる。また、焼成型導電性ペーストでは、導電性が低いガラスフリットが、金属粉同士または合金粉同士の焼結を妨げる。このため、導電性ペーストの熱処理によって形成した電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの電気抵抗が増大し、電気エネルギーが損失すると共に、発熱現象をもたらし、不具合の要因となる。
第二の課題は、金属粉または合金粉の分散性にある。金属粉または合金粉の集まりをビヒクル中に分散させる分散性が悪いと、熱処理後に金属粉または合金粉が偏在し、金属粉同士または合金粉同士が直接接触できない。この結果、前記と同様に、導電性ペーストの熱処理によって形成した電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜の電気抵抗が増大する。
第三の課題は、金属粉同士または合金粉同士が焼結する際に、金属粉または合金粉が収縮する。つまり、金属粉または合金粉が収縮すると、積層セラミックスコンデンサの内部電極においては、電極と誘電体とのデラミネーション(層間剥離)や、電極層にクラックが発生などの構造欠陥が起きる。
第四の課題は、金属粉同士または合金粉同士が凝集する。さらに、粉体が微細になるほど凝集しやすい。粉体の凝集が起こると、ビヒクル中への粉体の分散性が悪化し、結果として、導電性ペーストの熱処理で形成した導電性膜の電気抵抗が増大する。
上記した4つの課題はいずれも、導電性フィラーとして金属粉または合金粉を用いることと、この金属粉または合金粉の集まりを分散させる分散媒体に起因するため、根本的な解決は難しい。
前記の導電性ペーストを用いた導電性膜の課題を解決する様々な試みがなされている。
例えば、特許文献1に、相対的に卑な金属の金属粉を、相対的に貴な金属で被覆した金属粉フィラーと、被覆剤で被覆された金属ナノ粒子と、有機溶剤とによって導電性ペーストを構成し、バインダとしての樹脂成分を含まない導電性ペーストが記載されている。金属ナノ粒子を導電性ペーストに分散させるために、有機溶剤に対する親和性を持たせ、かつ、沸点が有機溶剤の沸点に近いアルキルアミンで、金属ナノ粒子を被覆する。塗布された導電性ペーストを熱処理すると、金属のナノ粒子が析出し、金属のナノ粒子によって金属フィラーが結合され、樹脂成分を含まない導電性膜が形成される。
しかし、金属ナノ粒子は極めて凝集しやすく、一度凝集するとナノサイズの粒子であるため、凝集の解除は難しく、取り扱いが厄介な微粒子である。さらに、金属ナノ粒子を生成する際に、生成された金属ナノ粒子同士が容易に凝集する。このため、生成された金属ナノ粒子にアルキルアンミンを吸着させることはできず、アルキルアンミンを含む液体中で金属ナノ粒子を析出させ、アルキルアミンで金属ナノ粒子を覆い、アルキルアンミンを除く液体成分を気化させることで、アルキルアンミンで被覆された金属ナノ粒子が製造される。このため、アルキルアミンで金属ナノ粒子を被覆する製造費用は、導電性ペーストを製造する費用を大きく上回る。従って、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用性の導電性膜が高価な膜になる。なお、特許文献1に、導電性ペーストとして、アルキルアンミンで被覆された金属ナノ粒子を用いる記載はあるが、アルキルアミンで金属ナノ粒子を被覆する製造方法に関する記載はない。
例えば、特許文献1に、相対的に卑な金属の金属粉を、相対的に貴な金属で被覆した金属粉フィラーと、被覆剤で被覆された金属ナノ粒子と、有機溶剤とによって導電性ペーストを構成し、バインダとしての樹脂成分を含まない導電性ペーストが記載されている。金属ナノ粒子を導電性ペーストに分散させるために、有機溶剤に対する親和性を持たせ、かつ、沸点が有機溶剤の沸点に近いアルキルアミンで、金属ナノ粒子を被覆する。塗布された導電性ペーストを熱処理すると、金属のナノ粒子が析出し、金属のナノ粒子によって金属フィラーが結合され、樹脂成分を含まない導電性膜が形成される。
しかし、金属ナノ粒子は極めて凝集しやすく、一度凝集するとナノサイズの粒子であるため、凝集の解除は難しく、取り扱いが厄介な微粒子である。さらに、金属ナノ粒子を生成する際に、生成された金属ナノ粒子同士が容易に凝集する。このため、生成された金属ナノ粒子にアルキルアンミンを吸着させることはできず、アルキルアンミンを含む液体中で金属ナノ粒子を析出させ、アルキルアミンで金属ナノ粒子を覆い、アルキルアンミンを除く液体成分を気化させることで、アルキルアンミンで被覆された金属ナノ粒子が製造される。このため、アルキルアミンで金属ナノ粒子を被覆する製造費用は、導電性ペーストを製造する費用を大きく上回る。従って、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用性の導電性膜が高価な膜になる。なお、特許文献1に、導電性ペーストとして、アルキルアンミンで被覆された金属ナノ粒子を用いる記載はあるが、アルキルアミンで金属ナノ粒子を被覆する製造方法に関する記載はない。
また、特許文献2に、酸化銀と、アミノ基を1個以上有する脂肪酸銀からなる導電性ペーストが記載されている。つまり、導電性ペーストを塗布した塗膜を熱処理すると、脂肪酸銀塩が熱処理により銀に分解され、分解で生じた脂肪酸またはその分解物が揮発する一方で、分解により生じた一部の脂肪酸と酸化銀とが反応し、再び脂肪酸銀塩を生成し、この脂肪酸銀が銀と脂肪酸とに分解されるサイクルを繰り返し、銀からなる導電性膜が形成される。
しかし、アミノ基を1個以上有する脂肪酸銀は、2−アミノイソ酪酸、DL−トレオニン、DL−セリン、DL−ノルバリンおよび6−アミノヘキサンからなる少なくとも1種類の水酸基を持つα−アミノ酸を、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオールなどからなる溶媒に溶解し、この溶解液に酸化銀の粉末を加え、室温で長時間反応させることで生成される。このため、上記の特殊な薬品を用いて脂肪酸銀を製造する費用は、導電性ペーストを製造する費用を大きく上回る。従って、前記した特許文献1と同様に、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用性の導電性膜が高価な膜になる。
しかし、アミノ基を1個以上有する脂肪酸銀は、2−アミノイソ酪酸、DL−トレオニン、DL−セリン、DL−ノルバリンおよび6−アミノヘキサンからなる少なくとも1種類の水酸基を持つα−アミノ酸を、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオールなどからなる溶媒に溶解し、この溶解液に酸化銀の粉末を加え、室温で長時間反応させることで生成される。このため、上記の特殊な薬品を用いて脂肪酸銀を製造する費用は、導電性ペーストを製造する費用を大きく上回る。従って、前記した特許文献1と同様に、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用性の導電性膜が高価な膜になる。
特許文献1及び2に記載された技術は、3段落に記載した4つの課題のうち、第三の課題を除く3つの課題を解決することを目的とした技術であるが、4段落と5段落とに記載したように、導電性ペーストの原料が高価になる。このため、導電性膜を形成する第五の課題として、安価な原料を用いて、安価な費用で導電性膜を形成することが挙げられる。つまり、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用性の工業製品の製造には、安価な原料を用い、安価な費用で導電性膜を形成することが必須になる。
前記した導電性ペーストによって導電性膜を形成する5つの課題は、導電性フィラーとして金属粉または合金粉を用いることと、金属粉または合金粉をビヒクル中に分散させることによって起こる。従って、導電性ペーストが、導電性フィラーをビヒクル中に分散させる構成である限り、前記した課題を根本的に解決することはできない。
第一の課題は、導電性膜に存在する絶縁性の熱硬化性樹脂が、導電性フィラー同士が直接接触する妨げになる。あるいは、導電性膜に存在する導電性が低いガラスフリットが、導電性フィラー同士が直接焼結する妨げになる。いっぽう、分散液における導電性フィラーの充填率を増大させるほど、導電性フィラー同士が直接接触する確率が高まるが、分散液における導電性フィラーの分散性が悪化する。このため、この課題を根本的に解決することは難しい。
第二の課題は、導電性フィラーの分散性であった。低い充填割合でビヒクル中に導電性フィラーを充填する場合は、分散性に係わる問題は起きにくい。しかし、導電性フィラーの充填率が低くなると、熱処理後に前記した第一の課題が発生する。従って、導電性フィラーの分散性の向上には、導電性フィラーの表面改質が必須になる。また、焼成型導電性ペーストにおいては、ガラスフリットの表面改質が併せて必要になる。これら表面改質剤が分散液に親和し、また、熱処理時に気化しなければ、表面改質剤の残渣物が電気抵抗を増大させる。さらに、表面改質剤は安価でなければならない。こうした様々な性質を兼備する表面改質剤の実現には困難を伴う。
第三の課題は、導電性フィラーが焼結する際に、導電性フィラーが収縮することであった。この課題は、導電性フィラーの焼結温度と、積層セラミックスコンデンサなどを構成する誘電体の焼結温度との間に大きなかい離があることと、ガラスフリットの融解点と導電性フィラーの焼結温度との間にかい離があることに依って起こるため、この課題を根本的に解決ことは困難である。
第四の課題は、導電性フィラー同士の凝集であった。前記した第二の課題と同様に、この課題を根本的に解決するには、導電性フィラーの表面改質が必須になり、本課題の解決は、第二の課題と同様に困難を伴う。
第五の課題は、導電性フィラーの使用量が少なく、安価な費用で導電性膜を製造することで、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用的な用途に、安価な導電性膜が形成できるのみならず、貴金属からなる高価な金属粉を用いて、新たな用途への導電性膜の適応が開ける。
さらに、第六の課題は、部品や基材への導電性膜の形成が、合成樹脂の熱硬化やガラスフリットの熱融解などの熱処理を伴わなければ、部品や基材に熱負荷が加わらないため、耐熱性が低い材質の部品や基材に新たに導電性膜が形成できる。
また、第七の課題は、部品や基材への導電性膜の形成が、エッチング処理やメッキ処理を伴わなければ、酸性やアルカリ性に弱い材質の部品や基材に導電性膜が形成できる。
上記した第1−第4と第6の課題は、従来の導電性ペーストを用いて導電性膜を形成する課題である。また、第7の課題は、従来のエッチング処理やメッキ処理を伴う導電性膜を形成する課題である。第5の課題は、全ての技術に共通する課題である。従って、第1−第7の課題が同時に解決できれば、導電性膜の新たな用途が開ける。このため、新たな材料構成と新たな製法によって導電性膜を形成する技術が強く求められている。
第一の課題は、導電性膜に存在する絶縁性の熱硬化性樹脂が、導電性フィラー同士が直接接触する妨げになる。あるいは、導電性膜に存在する導電性が低いガラスフリットが、導電性フィラー同士が直接焼結する妨げになる。いっぽう、分散液における導電性フィラーの充填率を増大させるほど、導電性フィラー同士が直接接触する確率が高まるが、分散液における導電性フィラーの分散性が悪化する。このため、この課題を根本的に解決することは難しい。
第二の課題は、導電性フィラーの分散性であった。低い充填割合でビヒクル中に導電性フィラーを充填する場合は、分散性に係わる問題は起きにくい。しかし、導電性フィラーの充填率が低くなると、熱処理後に前記した第一の課題が発生する。従って、導電性フィラーの分散性の向上には、導電性フィラーの表面改質が必須になる。また、焼成型導電性ペーストにおいては、ガラスフリットの表面改質が併せて必要になる。これら表面改質剤が分散液に親和し、また、熱処理時に気化しなければ、表面改質剤の残渣物が電気抵抗を増大させる。さらに、表面改質剤は安価でなければならない。こうした様々な性質を兼備する表面改質剤の実現には困難を伴う。
第三の課題は、導電性フィラーが焼結する際に、導電性フィラーが収縮することであった。この課題は、導電性フィラーの焼結温度と、積層セラミックスコンデンサなどを構成する誘電体の焼結温度との間に大きなかい離があることと、ガラスフリットの融解点と導電性フィラーの焼結温度との間にかい離があることに依って起こるため、この課題を根本的に解決ことは困難である。
第四の課題は、導電性フィラー同士の凝集であった。前記した第二の課題と同様に、この課題を根本的に解決するには、導電性フィラーの表面改質が必須になり、本課題の解決は、第二の課題と同様に困難を伴う。
第五の課題は、導電性フィラーの使用量が少なく、安価な費用で導電性膜を製造することで、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜、帯電防止膜などの汎用的な用途に、安価な導電性膜が形成できるのみならず、貴金属からなる高価な金属粉を用いて、新たな用途への導電性膜の適応が開ける。
さらに、第六の課題は、部品や基材への導電性膜の形成が、合成樹脂の熱硬化やガラスフリットの熱融解などの熱処理を伴わなければ、部品や基材に熱負荷が加わらないため、耐熱性が低い材質の部品や基材に新たに導電性膜が形成できる。
また、第七の課題は、部品や基材への導電性膜の形成が、エッチング処理やメッキ処理を伴わなければ、酸性やアルカリ性に弱い材質の部品や基材に導電性膜が形成できる。
上記した第1−第4と第6の課題は、従来の導電性ペーストを用いて導電性膜を形成する課題である。また、第7の課題は、従来のエッチング処理やメッキ処理を伴う導電性膜を形成する課題である。第5の課題は、全ての技術に共通する課題である。従って、第1−第7の課題が同時に解決できれば、導電性膜の新たな用途が開ける。このため、新たな材料構成と新たな製法によって導電性膜を形成する技術が強く求められている。
アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜の製造方法は、強磁性金属である鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散し、該金属化合物が前記アルコールに分子状態になって分散されたアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコール分散液に導電性扁平粉の集まりを混合して懸濁液を作成する第二の工程と、前記懸濁液を混合機内で回転及び揺動させる第三の工程と、前記懸濁液中でホモジナイザー装置を稼働し、前記導電性扁平粉の集まりに衝撃を連続して加え、該導電性扁平粉の扁平面同士が重なり合った部位を分離させ、全ての導電性扁平粉の扁平面が前記アルコール分散液と接する状態にする第四の工程と、前記懸濁液を底が浅い容器に充填する第五の工程と、前記容器に左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加え、前記導電性扁平粉の扁平同士が、前記アルコール分散液を介して重なり合った該導電性扁平粉の集まりを、前記容器の底面の全体に形成する第六の工程と、前記容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、該金属化合物を熱分解し、前記導電性扁平粉の扁平面に、強磁性金属の微粒子の集まりが析出し、該導電性扁平粉の扁平面同士の間隙で、強磁性金属の微粒子同士が磁気吸着するとともに、該微粒子同士が互いに接する部位で金属結合し、該微粒子同士の金属結合で、前記導電性扁平粉の扁平面同士が接合され、該導電性扁平粉の扁平面同士が重なり合って接合された一枚の導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として形成される第七の工程とからなるこれら7つの処理を連続して実施することによって、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜が製造される、アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜が製造される製造方法である。
つまり、本製造方法に依れば、極めて簡単な7つの処理を連続して実施すると、安価な製造費で容器の底面に導電性膜が形成される。この導電性膜の形状と表面積とは、容器の底面の形状になる。さらに、導電性膜の厚みは、容器に充填した扁平粉の量で決まる。従って、容器の底面の形状を変え、また、容器に充填する扁平粉の量を変えると、製造される導電性膜の形状と表面積と厚みの各々が自在に変えられる。このため、導電性膜の用途に応じて、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。ここで言うアスペクト比は、導電性膜の厚みに対する表面積の比率である。
すなわち、本製造方法は、次の5つの特徴を持つことによって、製造された導電性膜は画期的な作用効果をもたらす。第一に、懸濁液を充填する容器の形状に制約がない。このため、製造される導電性膜の表面積は、懸濁液を充填する容器の形状に応じて、例えば、1mm2の微小膜から1m2を超える扁平シートに至るまで自在に変えられる。第二に、金属化合物のアルコール分散液の粘度がアルコールの粘度に近く、固体の扁平粉をアルコール分散液に混合しても、懸濁液の粘度が増大しないため、アルコール分散液に混合する扁平粉の混合割合に制約がなく、また、容器に充填する懸濁液の量に制約がない。このため、製造される導電性膜の厚みは、例えば、1μmから1mmに至るまで自在に変えられる。これによって、104よりアスペクト比が大きい導電性膜が製造できる。このアスペクト比は、扁平粉のアスペクト比より2桁以上大きい。従って、容器の形状と使用する扁平粉の量を変えると、微小な電極や細長い電気回路の配線から、大型の電磁波シールド膜や帯電防止膜などの扁平シートに至るまで、様々な表面積と様々な厚みからなる導電性膜が製造できる。第三に、懸濁液を充填する容器の形状に制約がない。このため、導電性膜の形状は、円、楕円、多角形に限らず、フレーム形状、十字形状など、導電性膜の用途に応じて様々な形状の導電性膜が製造できる。第四に、導電性膜の表面に、40−60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが、接触部位で互いに金属結合した金属微粒子の集まりを形成する。この金属微粒子の集まりは、導電性膜を部品や基材に圧着する手段になる。従って、部品や基材に導電性膜を形成する際の熱処理やエッチング処理やメッキ処理が不要になる。第五に、導電性膜は磁性を持つため、強磁性と軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、非磁性の部品や基材に導電性膜が圧着できる。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、導電性膜を形成する部品や基材の材質の制約がない。
ここで、本製造方法を見出すに至る過程を説明する。導電性扁平粉は、長径と短径との平均値と厚さとの比率であるアスペクト比が大きい扁平面を有する。さらに、扁平面の大きさと厚みとにバラツキがある。このような扁平粉の集まりは、扁平面同士が容易に重なり合う。扁平面同士が重なり合った扁平粉を接合した導電性膜は、扁平面同士が重なり合った部位で破壊する。従って、扁平面同士が重なり合った部位を、分離させることが必要になる。いっぽう、大気中で扁平面の重なり合った部位を分離する際に、重なり合った部位に摩擦力が発生し、分離は容易でない。しかし、粘度が低い液体に扁平粉の集まりを分散させ、この液体内で衝撃を発生させると、衝撃が扁平面同士の重なり合った部位に加わり、重なり合った部位が分離する。このため、粘度の低い液体中で、扁平粉の集まりを処理することが必須になる。
さらに、扁平面同士で扁平粉が接合できれば、少量の扁平粉で広い表面積を持つ導電性膜が形成でき、金や銀などの高価な扁平粉を用いて、安価な導電膜が製造できる。また、接合面が一定の面積を持つため、導電性膜の機械的強度が高まる。このため、扁平面同士が重なり合った間隙に、扁平面同士を接合させる物質を析出させることが必須になる。いっぽう、液体中で扁平粉の集まりに3方向の振動を加えると、扁平面が重力方向に向いて液体中を移動し、さらに、重力方向に向いた扁平面の再配列が繰り返され、振動を停止すると、扁平面同士が液体を介して重なり合う。
さらに、導電性扁平粉は、アスペクト比は5−50の幅を持ち、扁平面の長径と短径との平均値は5−100μmの幅を持つ。こうした特性幅が広い扁平粉を原料に用い、導電性膜を製造することが必須になる。しかしながら、扁平面同士を接合する物質が、扁平面より2桁以上小さい数十ナノの微粒子であれば、微粒子の集まりが扁平面に確実に担持する。また、扁平面の側面は、厚みが微粒子の大きさに近いため、側面には微粒子が担持しにくく、優先して扁平面に微粒子が担持する。さらに、扁平面の大きさにバラツキがあっても、扁平面が微粒子の大きさより2桁以上大きいため、扁平面に微粒子が確実に担持する。さらに、扁平粉が軽いため、強磁性微粒子の集まりが扁平面に担持できれば、強磁性微粒子の集まりから発する弱い磁気吸引力でも、扁平粉同士が接近する。従って、扁平面同士を接合する手段は、扁平面に強磁性微粒子の集まりを担持させ、扁平面同士を磁気吸着させる手段が有効になる。なお、強磁性微粒子は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれかの金属からなる微粒子である。
従って、導電性膜を製造する製造方法は、第一に、強磁性微粒子の原料を液相化し、第二に、扁平面同士が重なり合った部位を液体中で分離する。これによって、全ての扁平粉は液体と接する。第三に、液相化した物質と扁平粉の集まりとからなる懸濁液を容器に充填する。第四に、液体を介して扁平面同士を重ね合わせる。このため、容器に3方向の振動を繰り返し加え、液体中で扁平粉を移動させる。この際、扁平粉の集まりが容器の底面の全体に拡散し、扁平面同士の間隙に、扁平面が小さい扁平粉が入り込む配列と、全ての扁平粉が扁平面同士で重なり合う配列とが、液体中で繰り返される。最後に、上下方向の振動を加え、容器への加振を停止すると、容器の底面の全体に、扁平面同士が液体を介して重なり合った扁平粉の集まりが形成される。第五に、容器を昇温して強磁性微粒子の集まりを析出させると、容器内で、扁平面同士が強磁性微粒子の磁気吸着で接合され、容器の底面の形状からなる導電性膜が製造される。
こうした考えに基づき、9段落に記載した7つの処理を連続して実施することで、アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜を製造する製造方法を見出した。
すなわち、第一の工程は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の強磁性金属が熱分解で析出する金属化合物を、アルコールの重量に対して10重量%に近い割合で分散させ、アルコール分散液を作成する。これによって、金属化合物が液相化され、アルコールの粘度に近いアルコール分散液が形成される。つまり、金属化合物が、10重量%に近い割合で、アルコールに分子状態になって分散されるため、アルコール分散液の粘度はアルコールの粘度に近い。第二の工程は、アルコール分散液に扁平粉の集まりを混合して懸濁液を作成する。第三の工程は、懸濁液を混合機内で回転及び揺動させる。これによって、扁平粉の集まりが、アルコール分散液中でランダムに混合される。しかし、混合機による回転と揺動だけでは、扁平面同士が重なり合った部位が確実に分離しない。このため、第四の工程において、ホモジナイザー装置の稼働によって、懸濁液に連続して衝撃を発生させる。これによって、扁平面同士の重なり合った部位に衝撃が加わり、重なり合った部位が確実分離され、全ての扁平面が液体と接する状態になり、再度扁平面同士が重なり合うことはない。この結果、扁平面同士は直接接触せず、全ての扁平粉がアルコール分散液と接する。なお、ホモジナイザー装置として、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、扁平粉の扁平面よりさらに2桁以上小さく莫大な数からなる気泡の発生と気泡の消滅とが、懸濁液中で繰り返され(キャビテーションという)、気泡がはじける際の衝撃波が懸濁液の全体に繰り返し発生し、短時間で扁平面同士の重なった部位が衝撃波で分離する。第五の工程は、処理した懸濁液を、底が浅い容器に充填する。第六の工程は、容器に左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加える。この際、低粘度のアルコール分散液と接している扁平粉は、液体中で移動を繰り返し、容器の底面の全体に扁平粉の集まりが拡散するとともに、扁平粉の扁平面同士の間隙に、扁平面が小さい扁平粉が入り込む配列と、全ての扁平粉が、アルコール分散液を介して扁平面同士で重なり合う配列が、液体中で進む。最後に、上下方向の振動を加え、容器への加振を停止すると、扁平面同士がアルコール分散液を介して重なり合った扁平粉の集まりが、容器の底面の全体に形成される。なお、容器に加える振動加速度は、軽量の扁平粉を液体中で移動させ、液体中で扁平面同士を重ね合わせるため、0.5G程度の加速度である。第七の工程は、容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する。これによって、扁平面同士の間隙を埋めて、強磁性の金属微粒子の集まりが析出し、強磁性微粒子の集まりが発する磁気吸引力で扁平面同士が近接する。また、最上部と最下部の扁平粉の表面に、強磁性の金属微粒子の集まりが析出する。析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合する。この結果、扁平面同士が間隙を介して互いに接合され、一枚の導電性膜が容器の底面に形成される。この導電性膜は、容器の底面の形状からなる。なお、全ての扁平粉の表面と裏面とに、強磁性の金属結合した金属微粒子の集まりが析出する。このため、扁平粉同士に磁気吸引力が常時作用し、また、扁平面同士が間隙を介して接合されるため、金属微粒子同士の金属結合と磁気吸引力とによって扁平面同士が接合される。このため、導電性膜は破壊されにくい。なお、強磁性金属の磁気キュリー点は、鉄が770℃で、ニッケルが354℃で、コバルトが1115℃であり、温度がこれらの磁気キュリー点に近づかなければ、金属微粒子の集まりによる磁気吸引力は変わらないため、導電性膜は高い耐熱性を持つ。
ここで、金属化合物が熱分解する際の現象を、昇温温度に即して説明する。最初にアルコールが気化し、金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、極薄い被膜となって、重なり合った扁平面同士の間隙を埋め、また、最上部と最下部の扁平面を、金属化合物の微細結晶の集まりが覆う。次に、金属化合物が熱分解を始める温度に達すると、金属化合物が無機物または有機物と金属とに分解する。無機物または有機物の密度が金属の密度より小さいため、無機物または有機物が上層に、金属が下層に析出し、上層の無機物または有機物が気化熱を奪って気化した後に、40−60nmの粒状の金属微粒子の集まりが、扁平面同士の間隙を埋めて析出し、また、最上部と最下部の扁平面に析出する。この金属微粒子が強磁性であるため、金属微粒子同士が磁気吸着するとともに、扁平面同士が磁気吸引力で近接する。また、析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、磁気吸着した粒状の金属微粒子は、互いに接触する部位で金属結合する。この結果、扁平面同士の間隙が、金属微粒子同士の金属結合で接合され、一枚の導電性膜が容器の底面に形成される。なお、扁平面同士の間隙は金属結合した金属微粒子の集まりの多層構造で埋め尽くされ、また、最上部と最下部の扁平面に金属微粒子の多層構造が形成される。この最上部と最下部の扁平面は、内部の扁平粉との間で磁気吸引力が常時作用し、また、金属微粒子の金属結合で隣接する扁平粉と接合するため、導電性膜から剥離しない。なお、金属微粒子の多層構造の厚みは、使用する金属化合物の量で決まる。
このようにして製造された導電性膜は、次の性質を持つ。互いに磁気吸着し、また、互いに金属結合した金属微粒子の集まりが、扁平面同士の間隙と、最上部と最下部の扁平面に存在する。このため、第一に、導電性膜は磁性を持つ。従って、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、第二に、導電性膜の表面は40−60nmの金属微粒子の集まりで覆われ、表面は鏡面研磨より1桁小さい表面粗さを持ち、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。第三に、導電性膜の表面が金属微粒子の集まりで覆われるため、導電性膜を部品や基材に圧着できる。つまり、磁性を持たない部品や基材の表面に導電性膜を配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、導電性膜の表面の金属微粒子が部品や基材の表面に食い込み、導電性膜が部品や基材に圧着する。このため、磁気吸着または圧着の手段によって、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、導電性膜の性質が部品や基材に付与できる。
なお、前記した強磁性金属は、酸性液に対してのみ徐々に溶解する性質を持ち、導電性膜の表面の金属微粒子の溶解が徐々に進む。しかし、扁平面同士の間隙が、金属微粒子の集まりの厚みに相当するサブミクロンであるため、液体は表面張力で、扁平面同士の間隙に侵入できない。従って、導電性膜の表面の金属微粒子の溶解が徐々に進んでも、内部の金属微粒子は浸食されない。このため、導電性膜を酸性液に浸漬しても、扁平面同士を接合する金属微粒子が変化しないため、導電性膜は酸性液で侵されない。また、部品や基材に磁気吸着した導電性膜は、磁気吸着面における間隙が、金属微粒子の集まりの大きさに相当し、液体は表面張力で間隙に侵入できず、磁気吸着面も液体で侵されない。同様に、部品や基材に圧着した導電性膜は、圧着面の間隙が、金属微粒子の集まりの大きさに相当し、圧着面も液体で侵されない。
以上に説明したように、本導電性膜の製造方法に依れば、容器の底面に導電性膜が形成される。このため、導電性膜の形状と表面積とは、容器の底面の形状になる。また、導電性膜の厚みは、容器に充填した懸濁液を構成する扁平粉の量で決まる。この結果、容器の底面の形状と、懸濁液を構成する扁平粉の量とを変えると、導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。従って、導電性膜の用途に応じて、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々を変える。
さらに、本導電性膜の製造方法は、強磁性の金属微粒子の原料を液相化するため、従来の導電性ペーストにおける固体の導電性フィラーを用いず、また、導電性フィラーを分散するビヒクルも用いない。このため、8段落に説明した第1−第4が解決できる。また、熱分解で強磁性金属を析出する金属化合物は、汎用的な工業用薬品であり、導電性膜を製造する7つの処理が極めて簡単な処理であるため、第五の課題も解決できる。さらに、導電性膜を、部品や基材に磁気吸着あるいは圧着させることができ、導電性膜を形成する部品や基材に熱処理を伴わず、エッチング処理とメッキ処理も伴わない。この結果、第六と第七の課題も解決できる。これによって、8段落で説明した全ての課題が解決できる。
すなわち、本製造方法は、次の5つの特徴を持つことによって、製造された導電性膜は画期的な作用効果をもたらす。第一に、懸濁液を充填する容器の形状に制約がない。このため、製造される導電性膜の表面積は、懸濁液を充填する容器の形状に応じて、例えば、1mm2の微小膜から1m2を超える扁平シートに至るまで自在に変えられる。第二に、金属化合物のアルコール分散液の粘度がアルコールの粘度に近く、固体の扁平粉をアルコール分散液に混合しても、懸濁液の粘度が増大しないため、アルコール分散液に混合する扁平粉の混合割合に制約がなく、また、容器に充填する懸濁液の量に制約がない。このため、製造される導電性膜の厚みは、例えば、1μmから1mmに至るまで自在に変えられる。これによって、104よりアスペクト比が大きい導電性膜が製造できる。このアスペクト比は、扁平粉のアスペクト比より2桁以上大きい。従って、容器の形状と使用する扁平粉の量を変えると、微小な電極や細長い電気回路の配線から、大型の電磁波シールド膜や帯電防止膜などの扁平シートに至るまで、様々な表面積と様々な厚みからなる導電性膜が製造できる。第三に、懸濁液を充填する容器の形状に制約がない。このため、導電性膜の形状は、円、楕円、多角形に限らず、フレーム形状、十字形状など、導電性膜の用途に応じて様々な形状の導電性膜が製造できる。第四に、導電性膜の表面に、40−60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが、接触部位で互いに金属結合した金属微粒子の集まりを形成する。この金属微粒子の集まりは、導電性膜を部品や基材に圧着する手段になる。従って、部品や基材に導電性膜を形成する際の熱処理やエッチング処理やメッキ処理が不要になる。第五に、導電性膜は磁性を持つため、強磁性と軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、非磁性の部品や基材に導電性膜が圧着できる。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、導電性膜を形成する部品や基材の材質の制約がない。
ここで、本製造方法を見出すに至る過程を説明する。導電性扁平粉は、長径と短径との平均値と厚さとの比率であるアスペクト比が大きい扁平面を有する。さらに、扁平面の大きさと厚みとにバラツキがある。このような扁平粉の集まりは、扁平面同士が容易に重なり合う。扁平面同士が重なり合った扁平粉を接合した導電性膜は、扁平面同士が重なり合った部位で破壊する。従って、扁平面同士が重なり合った部位を、分離させることが必要になる。いっぽう、大気中で扁平面の重なり合った部位を分離する際に、重なり合った部位に摩擦力が発生し、分離は容易でない。しかし、粘度が低い液体に扁平粉の集まりを分散させ、この液体内で衝撃を発生させると、衝撃が扁平面同士の重なり合った部位に加わり、重なり合った部位が分離する。このため、粘度の低い液体中で、扁平粉の集まりを処理することが必須になる。
さらに、扁平面同士で扁平粉が接合できれば、少量の扁平粉で広い表面積を持つ導電性膜が形成でき、金や銀などの高価な扁平粉を用いて、安価な導電膜が製造できる。また、接合面が一定の面積を持つため、導電性膜の機械的強度が高まる。このため、扁平面同士が重なり合った間隙に、扁平面同士を接合させる物質を析出させることが必須になる。いっぽう、液体中で扁平粉の集まりに3方向の振動を加えると、扁平面が重力方向に向いて液体中を移動し、さらに、重力方向に向いた扁平面の再配列が繰り返され、振動を停止すると、扁平面同士が液体を介して重なり合う。
さらに、導電性扁平粉は、アスペクト比は5−50の幅を持ち、扁平面の長径と短径との平均値は5−100μmの幅を持つ。こうした特性幅が広い扁平粉を原料に用い、導電性膜を製造することが必須になる。しかしながら、扁平面同士を接合する物質が、扁平面より2桁以上小さい数十ナノの微粒子であれば、微粒子の集まりが扁平面に確実に担持する。また、扁平面の側面は、厚みが微粒子の大きさに近いため、側面には微粒子が担持しにくく、優先して扁平面に微粒子が担持する。さらに、扁平面の大きさにバラツキがあっても、扁平面が微粒子の大きさより2桁以上大きいため、扁平面に微粒子が確実に担持する。さらに、扁平粉が軽いため、強磁性微粒子の集まりが扁平面に担持できれば、強磁性微粒子の集まりから発する弱い磁気吸引力でも、扁平粉同士が接近する。従って、扁平面同士を接合する手段は、扁平面に強磁性微粒子の集まりを担持させ、扁平面同士を磁気吸着させる手段が有効になる。なお、強磁性微粒子は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれかの金属からなる微粒子である。
従って、導電性膜を製造する製造方法は、第一に、強磁性微粒子の原料を液相化し、第二に、扁平面同士が重なり合った部位を液体中で分離する。これによって、全ての扁平粉は液体と接する。第三に、液相化した物質と扁平粉の集まりとからなる懸濁液を容器に充填する。第四に、液体を介して扁平面同士を重ね合わせる。このため、容器に3方向の振動を繰り返し加え、液体中で扁平粉を移動させる。この際、扁平粉の集まりが容器の底面の全体に拡散し、扁平面同士の間隙に、扁平面が小さい扁平粉が入り込む配列と、全ての扁平粉が扁平面同士で重なり合う配列とが、液体中で繰り返される。最後に、上下方向の振動を加え、容器への加振を停止すると、容器の底面の全体に、扁平面同士が液体を介して重なり合った扁平粉の集まりが形成される。第五に、容器を昇温して強磁性微粒子の集まりを析出させると、容器内で、扁平面同士が強磁性微粒子の磁気吸着で接合され、容器の底面の形状からなる導電性膜が製造される。
こうした考えに基づき、9段落に記載した7つの処理を連続して実施することで、アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜を製造する製造方法を見出した。
すなわち、第一の工程は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の強磁性金属が熱分解で析出する金属化合物を、アルコールの重量に対して10重量%に近い割合で分散させ、アルコール分散液を作成する。これによって、金属化合物が液相化され、アルコールの粘度に近いアルコール分散液が形成される。つまり、金属化合物が、10重量%に近い割合で、アルコールに分子状態になって分散されるため、アルコール分散液の粘度はアルコールの粘度に近い。第二の工程は、アルコール分散液に扁平粉の集まりを混合して懸濁液を作成する。第三の工程は、懸濁液を混合機内で回転及び揺動させる。これによって、扁平粉の集まりが、アルコール分散液中でランダムに混合される。しかし、混合機による回転と揺動だけでは、扁平面同士が重なり合った部位が確実に分離しない。このため、第四の工程において、ホモジナイザー装置の稼働によって、懸濁液に連続して衝撃を発生させる。これによって、扁平面同士の重なり合った部位に衝撃が加わり、重なり合った部位が確実分離され、全ての扁平面が液体と接する状態になり、再度扁平面同士が重なり合うことはない。この結果、扁平面同士は直接接触せず、全ての扁平粉がアルコール分散液と接する。なお、ホモジナイザー装置として、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、扁平粉の扁平面よりさらに2桁以上小さく莫大な数からなる気泡の発生と気泡の消滅とが、懸濁液中で繰り返され(キャビテーションという)、気泡がはじける際の衝撃波が懸濁液の全体に繰り返し発生し、短時間で扁平面同士の重なった部位が衝撃波で分離する。第五の工程は、処理した懸濁液を、底が浅い容器に充填する。第六の工程は、容器に左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加える。この際、低粘度のアルコール分散液と接している扁平粉は、液体中で移動を繰り返し、容器の底面の全体に扁平粉の集まりが拡散するとともに、扁平粉の扁平面同士の間隙に、扁平面が小さい扁平粉が入り込む配列と、全ての扁平粉が、アルコール分散液を介して扁平面同士で重なり合う配列が、液体中で進む。最後に、上下方向の振動を加え、容器への加振を停止すると、扁平面同士がアルコール分散液を介して重なり合った扁平粉の集まりが、容器の底面の全体に形成される。なお、容器に加える振動加速度は、軽量の扁平粉を液体中で移動させ、液体中で扁平面同士を重ね合わせるため、0.5G程度の加速度である。第七の工程は、容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する。これによって、扁平面同士の間隙を埋めて、強磁性の金属微粒子の集まりが析出し、強磁性微粒子の集まりが発する磁気吸引力で扁平面同士が近接する。また、最上部と最下部の扁平粉の表面に、強磁性の金属微粒子の集まりが析出する。析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合する。この結果、扁平面同士が間隙を介して互いに接合され、一枚の導電性膜が容器の底面に形成される。この導電性膜は、容器の底面の形状からなる。なお、全ての扁平粉の表面と裏面とに、強磁性の金属結合した金属微粒子の集まりが析出する。このため、扁平粉同士に磁気吸引力が常時作用し、また、扁平面同士が間隙を介して接合されるため、金属微粒子同士の金属結合と磁気吸引力とによって扁平面同士が接合される。このため、導電性膜は破壊されにくい。なお、強磁性金属の磁気キュリー点は、鉄が770℃で、ニッケルが354℃で、コバルトが1115℃であり、温度がこれらの磁気キュリー点に近づかなければ、金属微粒子の集まりによる磁気吸引力は変わらないため、導電性膜は高い耐熱性を持つ。
ここで、金属化合物が熱分解する際の現象を、昇温温度に即して説明する。最初にアルコールが気化し、金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、極薄い被膜となって、重なり合った扁平面同士の間隙を埋め、また、最上部と最下部の扁平面を、金属化合物の微細結晶の集まりが覆う。次に、金属化合物が熱分解を始める温度に達すると、金属化合物が無機物または有機物と金属とに分解する。無機物または有機物の密度が金属の密度より小さいため、無機物または有機物が上層に、金属が下層に析出し、上層の無機物または有機物が気化熱を奪って気化した後に、40−60nmの粒状の金属微粒子の集まりが、扁平面同士の間隙を埋めて析出し、また、最上部と最下部の扁平面に析出する。この金属微粒子が強磁性であるため、金属微粒子同士が磁気吸着するとともに、扁平面同士が磁気吸引力で近接する。また、析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、磁気吸着した粒状の金属微粒子は、互いに接触する部位で金属結合する。この結果、扁平面同士の間隙が、金属微粒子同士の金属結合で接合され、一枚の導電性膜が容器の底面に形成される。なお、扁平面同士の間隙は金属結合した金属微粒子の集まりの多層構造で埋め尽くされ、また、最上部と最下部の扁平面に金属微粒子の多層構造が形成される。この最上部と最下部の扁平面は、内部の扁平粉との間で磁気吸引力が常時作用し、また、金属微粒子の金属結合で隣接する扁平粉と接合するため、導電性膜から剥離しない。なお、金属微粒子の多層構造の厚みは、使用する金属化合物の量で決まる。
このようにして製造された導電性膜は、次の性質を持つ。互いに磁気吸着し、また、互いに金属結合した金属微粒子の集まりが、扁平面同士の間隙と、最上部と最下部の扁平面に存在する。このため、第一に、導電性膜は磁性を持つ。従って、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、第二に、導電性膜の表面は40−60nmの金属微粒子の集まりで覆われ、表面は鏡面研磨より1桁小さい表面粗さを持ち、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。第三に、導電性膜の表面が金属微粒子の集まりで覆われるため、導電性膜を部品や基材に圧着できる。つまり、磁性を持たない部品や基材の表面に導電性膜を配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、導電性膜の表面の金属微粒子が部品や基材の表面に食い込み、導電性膜が部品や基材に圧着する。このため、磁気吸着または圧着の手段によって、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、導電性膜の性質が部品や基材に付与できる。
なお、前記した強磁性金属は、酸性液に対してのみ徐々に溶解する性質を持ち、導電性膜の表面の金属微粒子の溶解が徐々に進む。しかし、扁平面同士の間隙が、金属微粒子の集まりの厚みに相当するサブミクロンであるため、液体は表面張力で、扁平面同士の間隙に侵入できない。従って、導電性膜の表面の金属微粒子の溶解が徐々に進んでも、内部の金属微粒子は浸食されない。このため、導電性膜を酸性液に浸漬しても、扁平面同士を接合する金属微粒子が変化しないため、導電性膜は酸性液で侵されない。また、部品や基材に磁気吸着した導電性膜は、磁気吸着面における間隙が、金属微粒子の集まりの大きさに相当し、液体は表面張力で間隙に侵入できず、磁気吸着面も液体で侵されない。同様に、部品や基材に圧着した導電性膜は、圧着面の間隙が、金属微粒子の集まりの大きさに相当し、圧着面も液体で侵されない。
以上に説明したように、本導電性膜の製造方法に依れば、容器の底面に導電性膜が形成される。このため、導電性膜の形状と表面積とは、容器の底面の形状になる。また、導電性膜の厚みは、容器に充填した懸濁液を構成する扁平粉の量で決まる。この結果、容器の底面の形状と、懸濁液を構成する扁平粉の量とを変えると、導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。従って、導電性膜の用途に応じて、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々を変える。
さらに、本導電性膜の製造方法は、強磁性の金属微粒子の原料を液相化するため、従来の導電性ペーストにおける固体の導電性フィラーを用いず、また、導電性フィラーを分散するビヒクルも用いない。このため、8段落に説明した第1−第4が解決できる。また、熱分解で強磁性金属を析出する金属化合物は、汎用的な工業用薬品であり、導電性膜を製造する7つの処理が極めて簡単な処理であるため、第五の課題も解決できる。さらに、導電性膜を、部品や基材に磁気吸着あるいは圧着させることができ、導電性膜を形成する部品や基材に熱処理を伴わず、エッチング処理とメッキ処理も伴わない。この結果、第六と第七の課題も解決できる。これによって、8段落で説明した全ての課題が解決できる。
9段落に記載した導電性膜が、電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、9段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、2種類の金属化合物が同時に熱分解して2種類の金属を同時析出するする金属化合物であり、該2種類の金属化合物は、強磁性の鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物と、電気導電性と熱伝導性に優れる銅またはアルミニウムからなるいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物とからなり、該2種類の金属化合物を、9段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、9段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造することによって、導電性扁平粉の扁平面同士の間隙に、前記2種類の金属からなる強磁性の複合金属の微粒子の集まりが析出し、該複合金属の微粒子同士が磁気吸着するとともに、該微粒子同士が互いに接する部位で金属結合し、該微粒子同士の金属結合で、前記導電性扁平粉の扁平面同士が接合され、該導電性扁平粉の扁平面同士が重なり合って接合された一枚の導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からからなる電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜として製造される、電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜の製造方法である。
つまり、本製造方法に依れば、2種類の金属化合物が同時に熱分解し、2種類の金属が同時に析出するため、強磁性の鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の金属と、電気導電性と熱伝導性に優れる銅またはアルミニウムからなるいずれかの金属とからなる複合金属微粒子の集まりが、扁平面同士の間隙と、最上部と最下部の扁平面に析出する。この複合金属微粒子が強磁性であるため、複合金属微粒子同士が磁気吸着し、複合金属微粒子の集まりが析出した扁平面同士が磁気吸引力で近接する。また、磁気吸着した複合金属微粒子は、析出した金属が不純物を持たない活性状態にあるため、複合金属微粒子は、互いに接触する部位で金属結合する。この結果、扁平面同士が間隙を介して接合され、一枚の導電性膜が容器の底面に形成される。なお、全ての扁平面の表面と裏面とに、金属結合した強磁性の複合金属微粒子の集まりが析出する。このため、全ての扁平粉に磁気吸引力が常時作用し、また、扁平面同士が間隙を介して接合される。この結果、導電性膜は、複合金属微粒子同士の金属結合と磁気吸引力とによって扁平粉が接合され、導電性膜は破壊されにくい。また、最上部と最下部の扁平粉は、内部の扁平粉との間で磁気吸引力が常時作用し、また、複合金属微粒子の金属結合で隣接する扁平粉と接合するため、導電性膜から剥離しない。さらに、10段落で説明したように、温度が強磁性金属の磁気キュリー点に近づかなければ、金属微粒子の集まりによる磁気吸引力は変わらないため、導電性膜は高い耐熱性を持つ。なお、複合金属微粒子の多層構造の厚みは、使用する金属化合物の量で決まる。
この導電性膜は、複合金属微粒子の集まりで扁平粉同士が接合されるため、複合金属微粒子の性質を持つ。従って、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜より、電気導電性と熱伝導性に優れる。なお、複合金属微粒子が磁性を持つため、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜の表面が複合金属微粒子の集まりで覆われるため、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜と同様に、導電性膜を部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化できる。さらに、導電性膜の表面が複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
いっぽう、導電性膜の性質を、磁性より電気導電性と熱伝導性の性質を優勢にする場合は、電気導電性と熱伝導性に優れる銅またはアルミニウムのいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散する量を、強磁性の鉄、コバルトまたはニッケルのいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散する量より多くする。これによって、複合金属微粒子を占める電気導電性と熱伝導性とに優れる金属の量が、強磁性の金属の量より多くなり、複合金属微粒子は、強磁性より電気導電性と熱伝導性との性質が優勢になり、導電性扁平粉の電気導電性と熱伝導性との性質が生かされる導電性膜になる。
また、複合金属微粒子が溶解する、あるいは、腐食する液体中に、導電性膜が浸漬されても、10段落で説明した導電性膜と同様に、扁平面同士の間隙が、複合金属微粒子の集まりの大きさに相当するため、液体はこの間隙に侵入できず、導電性膜は液体に侵されない。さらに、部品や基材に磁気吸着した導電性膜と、圧着した導電性膜とは、10段落で説明した導電性膜と同様に、磁気吸着面と圧着面との間隙が、複合金属微粒子の集まりの大きさに相当するため、液体はこの間隙に侵入できず、磁気吸着した導電性膜と、圧着された導電性膜は液体に侵されない。
以上に説明したように、電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜が、容器の底面に形成される。このため、導電性膜の形状と表面積は、容器の底面の形状になる。また、導電性膜の厚みは、容器に充填した扁平粉の量で決まる。この結果、容器の底面の形状と、容器に充填する扁平粉の量を変えると、導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。従って、導電性膜の用途に応じて、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々を変える。また、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜と同様に、本製造方法で製造した導電性膜も、8段落で説明した7つの課題の全てを解決する。
なお、熱伝導性と電気導電性に優れる複合金属微粒子で、導電性扁平粉を接合して導電性膜を製造するのは一例であり、複合金属は熱伝導性および電気導電性に限定されない。析出する複合金属微粒子の材質で、複合金属微粒子の性質が自在に変わる。このように、導電性膜は複合金属微粒子の性質を持ち、部品や基材に複合金属の性質が反映される。
この導電性膜は、複合金属微粒子の集まりで扁平粉同士が接合されるため、複合金属微粒子の性質を持つ。従って、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜より、電気導電性と熱伝導性に優れる。なお、複合金属微粒子が磁性を持つため、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜の表面が複合金属微粒子の集まりで覆われるため、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜と同様に、導電性膜を部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化できる。さらに、導電性膜の表面が複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
いっぽう、導電性膜の性質を、磁性より電気導電性と熱伝導性の性質を優勢にする場合は、電気導電性と熱伝導性に優れる銅またはアルミニウムのいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散する量を、強磁性の鉄、コバルトまたはニッケルのいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散する量より多くする。これによって、複合金属微粒子を占める電気導電性と熱伝導性とに優れる金属の量が、強磁性の金属の量より多くなり、複合金属微粒子は、強磁性より電気導電性と熱伝導性との性質が優勢になり、導電性扁平粉の電気導電性と熱伝導性との性質が生かされる導電性膜になる。
また、複合金属微粒子が溶解する、あるいは、腐食する液体中に、導電性膜が浸漬されても、10段落で説明した導電性膜と同様に、扁平面同士の間隙が、複合金属微粒子の集まりの大きさに相当するため、液体はこの間隙に侵入できず、導電性膜は液体に侵されない。さらに、部品や基材に磁気吸着した導電性膜と、圧着した導電性膜とは、10段落で説明した導電性膜と同様に、磁気吸着面と圧着面との間隙が、複合金属微粒子の集まりの大きさに相当するため、液体はこの間隙に侵入できず、磁気吸着した導電性膜と、圧着された導電性膜は液体に侵されない。
以上に説明したように、電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜が、容器の底面に形成される。このため、導電性膜の形状と表面積は、容器の底面の形状になる。また、導電性膜の厚みは、容器に充填した扁平粉の量で決まる。この結果、容器の底面の形状と、容器に充填する扁平粉の量を変えると、導電性膜のアスペクト比と形状との各々が自在に変えられる。従って、導電性膜の用途に応じて、製造する導電性膜のアスペクト比と形状との各々を変える。また、9段落に記載した製造方法で製造した導電性膜と同様に、本製造方法で製造した導電性膜も、8段落で説明した7つの課題の全てを解決する。
なお、熱伝導性と電気導電性に優れる複合金属微粒子で、導電性扁平粉を接合して導電性膜を製造するのは一例であり、複合金属は熱伝導性および電気導電性に限定されない。析出する複合金属微粒子の材質で、複合金属微粒子の性質が自在に変わる。このように、導電性膜は複合金属微粒子の性質を持ち、部品や基材に複合金属の性質が反映される。
9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法は、9段落に記載した導電性扁平粉が軟質金属からなる扁平粉であり、該軟質金属からなる扁平粉を、9段落に記載した導電性扁平粉として用い、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造することによって、前記軟質金属からなる扁平粉の扁平面に、強磁性金属の微粒子の集まりが析出し、ないしは、2種類の金属からなる強磁性の複合金属の微粒子の集まりが析出し、該軟質金属からなる扁平粉の扁平面同士の間隙で、前記強磁性金属の微粒子同士が、または、前記強磁性の複合金属の微粒子同士が、磁気吸着するとともに、該微粒子同士の金属結合で、前記軟質金属からなる扁平粉の扁平面同士が接合され、該軟質金属からなる扁平粉の扁平面同士が重なり合って接合された一枚の導電性膜が、容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法である。
つまり、軟質金属からなる導電性扁平粉は、金、銀、銅、錫、亜鉛ないしはアルミニウムなどの金属からなり、軟質金属の粉体の集まりを、スタンプミル(搗砕機に相当する)により、多数の金属製の杵で叩き、薄いフレーク状に延ばすことで製造される。この後、サイクロンなどの気流分級機で粒度分布を調整する。このため、粉体の長軸に対する厚みの比率であるアスペクト比が大きく、かつ、平坦な滑らかな面を持ち、また、厚みが均一に近く、厚みが薄い。従って、金や銀の高価な扁平粉であっても、アスペクト比が大きいため、少ない量の扁平粉で、扁平面同士が重なり合い、扁平面同士が金属結合した金属微粒子の集まりで接合した導電性膜が安価に製造できる。また、平坦な扁平面同士が接合した導電性膜は接合面が広いため、また、厚みが均一な扁平面は、規則性を以って扁平面が重なり合い、扁平面同士が接合するため、扁平面同士が接合した導電性膜の機械的強度が大きい。なお、原料となる金属粉は、多くの場合は、金属の純度が高く、鉛フリーの電解金属粉を用いる。いっぽう、アルミニウムの扁平粉の製造では、アトマイズ法による粒状粉や箔の裁断片をスタンプミルで叩く際に、アルミニウム粉が燃焼しやすく、凝着しやすいため、粉砕助剤としてステアリン酸を加えて粒状粉や裁断片を粉砕する。また、アルミニウム粉に、ステアリン酸やオレイン酸などの粉砕助剤を加え、ミネラルスピリットなどの溶剤中で湿式粉砕する湿式ボールミル法でも、アルミニウムの扁平粉が製造される。
いっぽう、錫を除く軟質金属の扁平粉の耐熱温度は軟化点で決まり、軟化点が低い電解銅でも800℃と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たず、極低温での使用が可能になる。なお、99.5%の純度のアルミニウム粉の溶融温度は650℃である。従って、導電性膜が、軟質金属の扁平粉と金属微粒子で構成されるため、高温、極低温、真空、高圧下など、過酷な環境でも使用できる。なお、錫は融点が232℃で、−40℃付近で低温脆性を起こし、錫の扁平粉からなる導電性膜は、使用温度が制限される。
また、軟質金属からなる扁平粉の密度は、アルミニウムの密度が2.7g/cm3と最も小さいが、メタノールの密度の3.4倍に相当する。従って、アスペクト比が大きい扁平粉の集まりを用いて懸濁液を作成し、この懸濁液に3方向の振動を繰り返し加えると、平坦な扁平面同士が重なった扁平粉の集まりが、懸濁液中で容易に沈む。このため、金や銀のような高価な粉体であっても、少ない量の扁平粉で導電性膜が形成できる。
以上に説明したように、軟質金属の扁平粉は、アスペクト比が大きい形状効果と、平坦で滑らかな扁平面を持つ表面効果と、耐熱性、耐寒性に優れる材質効果を持つ。従って、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法において、軟質金属からなる扁平粉は、9段落に記載した導電性扁平粉として、適切な扁平粉である。
いっぽう、錫を除く軟質金属の扁平粉の耐熱温度は軟化点で決まり、軟化点が低い電解銅でも800℃と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たず、極低温での使用が可能になる。なお、99.5%の純度のアルミニウム粉の溶融温度は650℃である。従って、導電性膜が、軟質金属の扁平粉と金属微粒子で構成されるため、高温、極低温、真空、高圧下など、過酷な環境でも使用できる。なお、錫は融点が232℃で、−40℃付近で低温脆性を起こし、錫の扁平粉からなる導電性膜は、使用温度が制限される。
また、軟質金属からなる扁平粉の密度は、アルミニウムの密度が2.7g/cm3と最も小さいが、メタノールの密度の3.4倍に相当する。従って、アスペクト比が大きい扁平粉の集まりを用いて懸濁液を作成し、この懸濁液に3方向の振動を繰り返し加えると、平坦な扁平面同士が重なった扁平粉の集まりが、懸濁液中で容易に沈む。このため、金や銀のような高価な粉体であっても、少ない量の扁平粉で導電性膜が形成できる。
以上に説明したように、軟質金属の扁平粉は、アスペクト比が大きい形状効果と、平坦で滑らかな扁平面を持つ表面効果と、耐熱性、耐寒性に優れる材質効果を持つ。従って、9段落または11段落に記載した導電性膜の製造方法において、軟質金属からなる扁平粉は、9段落に記載した導電性扁平粉として、適切な扁平粉である。
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9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、展性に優れる性質を持つ導電性膜であり、該導電性膜の製造方法は、9段落または11段落に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、展性に優れる銅、アルミニウムまたは錫からなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコール分散し、該金属化合物が前記アルコールに分子状態になって分散されたアルコール分散液を作成し、該アルコール分液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、前記導電性膜を前記アルコール分散液に浸漬させ、該導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面を、前記アルコール分散液と接する状態にし、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、該金属化合物を熱分解させ、前記導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記した展性に優れる銅、アルミニウムまたは錫からなるいずれか1種類の金属が析出し、展性に優れた該金属が、前記導電性膜の表面に担持した複合金属微粒子の表層を形成することによって、表面が展性に優れる性質を有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が展性に優れる性質を持つ導電性膜の製造方法である。
つまり、9段落または11段落に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、展性に優れる銅、アルミニウムまたは錫からなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、このアルコール分散液を容器に充填する。この後、容器に3方向の振動を加えると、導電性膜はアルコール分散液に浸漬し、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、アルコール分散液と接する。さらに、容器を金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記いずれか1種類金属が析出し、展性に優れた銅、アルミニウムまたは錫からなるいずれか1種類の金属が、複合金属微粒子の表層を形成する。この導電性膜の表面は、展性に優れた性質を持つ。
つまり、展性を持つ金属は、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に析出する。このため、新たに析出する金属の原料である金属化合物の僅かな量を用いるだけで、展性を持つ金属からなる複合金属微粒子の表層の厚みは、すでに形成された金属微粒子または複合金属微粒子の大きさより厚くなり、複合金属微粒子は展性を持つ金属の性質が優勢になる。この結果、導電性膜の表面は、展性を持つ金属の性質を持つ。
こうして製造した導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、10段落と12段落で説明した導電性膜とは異なり、導電性膜の表面の複合金属微粒子が塑性変形して、部品や基材に導電性膜が圧着し、部品や基材に導電性膜の性質が付与される。このように、導電性膜の表面の複合金属微粒子は、部品や基材に導電性膜を圧着する手段として利用できる。つまり、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。いっぽう、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持つため、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜を非磁性の部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化でき、展性に優れた金属の性質と導電性膜の性質とが付与できる。また、10段落と12段落で記載した導電性膜と同様に、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。さらに、部品や基材に圧着された導電性膜と、部品や基材に磁気吸着した導電性膜は、圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合金属微粒子の集まりに相当する僅かな間隙であるため、液体は侵入できない。このため、圧着面または磁気吸着面は、液体に侵されない。
なお、導電性膜の表面に、展性に優れる性質が優勢な複合金属微粒子が形成される現象は、次の理由による。扁平面同士が、金属結合した金属微粒子または複合金属微粒子の集まりによって接合され、一枚の導電性膜が製造されるため、扁平面同士の間隙は、金属微粒子または複合金属微粒子の集まりで決まるサブミクロンの間隙である。いっぽう、一旦製造された導電性膜に、展性に優れた金属を熱分解で析出する金属化合物のアルコール分散液を充填すると、扁平面同士の間隙が余りにも狭いため、金属化合物のアルコール分散液は、表面張力によって、微細な間隙に侵入または浸透しない。また、容器の底面の全体に導電性膜が形成され、導電性膜の厚みが薄いため、導電性膜の側面と接触するアルコール分散液は限られている。従って、導電性膜の表面と接触した金属化合物のアルコール分散液は、アルコールが気化すると、導電性膜の表面に金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、さらに、金属化合物が熱分解すると、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たな金属が析出する核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に新たな金属が析出し、表層が展性を持つ金属からなる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成され、導電性膜の表面は展性に優れた性質を持つ。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が展性に優れる性質を有する導電性膜が容易に製造される。
つまり、展性を持つ金属は、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に析出する。このため、新たに析出する金属の原料である金属化合物の僅かな量を用いるだけで、展性を持つ金属からなる複合金属微粒子の表層の厚みは、すでに形成された金属微粒子または複合金属微粒子の大きさより厚くなり、複合金属微粒子は展性を持つ金属の性質が優勢になる。この結果、導電性膜の表面は、展性を持つ金属の性質を持つ。
こうして製造した導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、10段落と12段落で説明した導電性膜とは異なり、導電性膜の表面の複合金属微粒子が塑性変形して、部品や基材に導電性膜が圧着し、部品や基材に導電性膜の性質が付与される。このように、導電性膜の表面の複合金属微粒子は、部品や基材に導電性膜を圧着する手段として利用できる。つまり、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。いっぽう、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持つため、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜を非磁性の部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化でき、展性に優れた金属の性質と導電性膜の性質とが付与できる。また、10段落と12段落で記載した導電性膜と同様に、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。さらに、部品や基材に圧着された導電性膜と、部品や基材に磁気吸着した導電性膜は、圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合金属微粒子の集まりに相当する僅かな間隙であるため、液体は侵入できない。このため、圧着面または磁気吸着面は、液体に侵されない。
なお、導電性膜の表面に、展性に優れる性質が優勢な複合金属微粒子が形成される現象は、次の理由による。扁平面同士が、金属結合した金属微粒子または複合金属微粒子の集まりによって接合され、一枚の導電性膜が製造されるため、扁平面同士の間隙は、金属微粒子または複合金属微粒子の集まりで決まるサブミクロンの間隙である。いっぽう、一旦製造された導電性膜に、展性に優れた金属を熱分解で析出する金属化合物のアルコール分散液を充填すると、扁平面同士の間隙が余りにも狭いため、金属化合物のアルコール分散液は、表面張力によって、微細な間隙に侵入または浸透しない。また、容器の底面の全体に導電性膜が形成され、導電性膜の厚みが薄いため、導電性膜の側面と接触するアルコール分散液は限られている。従って、導電性膜の表面と接触した金属化合物のアルコール分散液は、アルコールが気化すると、導電性膜の表面に金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、さらに、金属化合物が熱分解すると、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たな金属が析出する核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に新たな金属が析出し、表層が展性を持つ金属からなる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成され、導電性膜の表面は展性に優れた性質を持つ。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が展性に優れる性質を有する導電性膜が容易に製造される。
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9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、9段落または11段落に記載した製造方法に従って容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、耐摩耗性に優れるクロムまたはマンガンからなるいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散し、該金属化合物が前記アルコールに分子状態になって分散されたアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、前記導電性膜を前記アルコール分散液に浸漬させ、該導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面を、前記アルコール分散液と接する状態にし、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、該金属化合物を熱分解させ、前記導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記した耐摩耗性に優れるクロムまたはマンガンからなるいずれかの金属が析出し、耐摩耗性に優れた該金属が、前記導電性膜の表面に担持した複合金属微粒子の表層を形成することによって、表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜の製造方法である。
つまり、9段落または11段落に記載した方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、クロムまたはマンガンからなるいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成し、アルコール分散液を容器に充填する。この後、容器に3方向の振動を加えると、導電性膜はアルコール分散液に浸漬し、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面がアルコール分散液と接する。さらに、容器を金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、クロムまたはマンガンのいずれかの金属が析出し、クロムまたはマンガンのいずれかの金属が複合金属微粒子の表層を形成し、この複合金属微粒子が表面に担持された導電性膜の表面は、耐摩耗性に優れた性質を持つ。
つまり、10段落で説明した強磁性金属の硬度より、クロムはモース硬度が8.5と高く、マンガンは6.0と高いため、導電性膜の表面は耐摩耗性を持つ。すなわち、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、クロムまたはマンガンのいずれかの金属が析出する。このため、クロムまたはマンガンのいずれかの金属の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層を構成するクロムまたはマンガンからなる厚みは、すでに形成された金属微粒子または複合金属微粒子の大きさより厚くなり、この複合金属微粒子は耐摩耗性の性質が優勢になる。この結果、導電性膜の表面は、耐摩耗性に優れるクロムまたはマンガンの性質を持つ。
従って、導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、10段落で説明した導電性膜より、導電性膜が部品や基材の表面に食い込みやすくなり、導電性膜が部品や基材に容易に圧着し、部品や基材の表面に、耐摩耗性と導電性膜の性質を付与する。このように、導電性膜の表面の複合金属微粒子は、部品や基材に導電性膜を圧着する手段として利用でき、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持つため、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜は部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化でき、部品や基材に耐摩耗性と導電性膜の性質が付与できる。さらに、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。また、圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合金属微粒子の集まりに相当するサブミクロンの間隙であり、この間隙に液体は侵入できない。従って、圧着面または磁気吸着面は、液体に侵されない。なお、クロムとマンガンの双方は、9段落で説明した強磁性の金属より耐食性に優れる。
また、表層がクロムまたはマンガンからなる複合金属微粒子の集まりが、導電性膜の表面に形成される現象は、18段落で説明した展性に優れる金属が、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層を形成する現象と同様である。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜が容易に製造される。
つまり、10段落で説明した強磁性金属の硬度より、クロムはモース硬度が8.5と高く、マンガンは6.0と高いため、導電性膜の表面は耐摩耗性を持つ。すなわち、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、クロムまたはマンガンのいずれかの金属が析出する。このため、クロムまたはマンガンのいずれかの金属の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層を構成するクロムまたはマンガンからなる厚みは、すでに形成された金属微粒子または複合金属微粒子の大きさより厚くなり、この複合金属微粒子は耐摩耗性の性質が優勢になる。この結果、導電性膜の表面は、耐摩耗性に優れるクロムまたはマンガンの性質を持つ。
従って、導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、10段落で説明した導電性膜より、導電性膜が部品や基材の表面に食い込みやすくなり、導電性膜が部品や基材に容易に圧着し、部品や基材の表面に、耐摩耗性と導電性膜の性質を付与する。このように、導電性膜の表面の複合金属微粒子は、部品や基材に導電性膜を圧着する手段として利用でき、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持つため、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。また、導電性膜は部品や基材に圧着できる。従って、導電性膜は、全ての材質の部品や基材と一体化でき、部品や基材に耐摩耗性と導電性膜の性質が付与できる。さらに、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。また、圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合金属微粒子の集まりに相当するサブミクロンの間隙であり、この間隙に液体は侵入できない。従って、圧着面または磁気吸着面は、液体に侵されない。なお、クロムとマンガンの双方は、9段落で説明した強磁性の金属より耐食性に優れる。
また、表層がクロムまたはマンガンからなる複合金属微粒子の集まりが、導電性膜の表面に形成される現象は、18段落で説明した展性に優れる金属が、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層を形成する現象と同様である。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜が容易に製造される。
9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜の製造方法は、前記した熱分解で金属を析出する金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに共有結合する第一の性質と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の性質とを兼備するカルボン酸金属化合物であり、該カルボン酸金属化合物を、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造する、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜の製造方法である。
つまり、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物は、金属イオンが最も大きいイオンで、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を、大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超える温度になると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸の分子量と数とに応じて、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などがある。なお、オクチル酸の沸点は228℃で、ラウリン酸の沸点は296℃で、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、290−430℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。また、これらのカルボン酸金属化合物は、メタノールに10重量%近くまで分散する。
従って、カルボン酸金属化合物は、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜の製造方法において、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用いることができる。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化第一銅Cu 2 Oと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、酸化第一銅Cu 2 Oと酸化第二銅CuOとを銅に還元する処理を要する。特に、酸化第一銅Cu 2 Oは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化第二銅CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させるため、処理費用がかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。
以上に説明したように、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜の製造方法において、安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物を、熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜が製造される。
従って、カルボン酸金属化合物は、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜の製造方法において、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用いることができる。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化第一銅Cu 2 Oと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、酸化第一銅Cu 2 Oと酸化第二銅CuOとを銅に還元する処理を要する。特に、酸化第一銅Cu 2 Oは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化第二銅CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させるため、処理費用がかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。
以上に説明したように、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜の製造方法において、安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物を、熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、9段落、11段落、13段落、17段落及び21段落に記載した導電性膜が製造される。
9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、触媒作用を有する導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、9段落または11段落に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の白金族の金属が熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散し、該金属化合物が前記アルコールに分子状態になって分散されたアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、前記導電性膜を前記アルコール分散液に浸漬させ、該導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面を、前記アルコール分散液と接する状態にし、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、該金属化合物を熱分解させ、前記導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記した白金族の金属からなるいずれか1種類の金属が析出し、触媒作用を有する該金属が、前記導電性膜の表面に担持した複合金属微粒子の表層を形成することによって、表面が触媒作用を有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が触媒作用を有する導電性膜の製造方法である。
つまり、9段落または11段落に記載した方法で、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の白金族の金属が熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加えると、導電性膜はアルコール分散液に浸漬し、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面がアルコール分散液と接する。この後、容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記したいずれか1種類の金属が析出して複合金属微粒子の表層を形成し、この複合金属微粒子が表面に担持された導電性膜の表面は、触媒作用を持つ。この結果、表面が触媒作用を有する導電性膜が容器の底面に形成される。
つまり、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、触媒作用を持つ白金族の金属は、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に析出する。このため、新たに析出する白金族の金属の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、白金族の金属が、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層を形成する。この結果、導電性膜の表面は、触媒作用を持つ白金族の金属の性質を持つ。
導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子は、微粒子であるため、体積に対する表面積の比率である比表面積が大きい。さらに、触媒作用を有する白金族の金属が、複合金属微粒子の表層を形成するため、複合金属微粒子による触媒作用の効率が上がる。また、触媒作用をもたらす白金族の金属は、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層に留められ、白金族の金属となる高価な原料の使用量が少ない。こうした触媒作用の効率が高く、安価な製造費で製造できる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に莫大な数として形成される。また、触媒作用を持つ白金族の金属は、触媒作用に応じて自在に変えられる。従って、この導電性膜は、触媒作用を有するチップ部品や扁平シートとして利用できる。また、導電性膜の一方の表面に担持された複合金属微粒子の集まりは、圧着の手段として利用でき、導電性膜を部品や基材に圧着できる。また、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持ち、導電性膜は強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化され、触媒作用と導電性膜の性質とが付与される。さらに、圧着面または磁気吸着面の間隙が狭いため、10段落に記載した導電性膜と同様に、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。なお、触媒作用を発揮する金属は、15段落で説明したクロムとマンガンのいずれの金属よりさらに耐食性に優れる。また、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
なお、触媒作用を有する金属として、前記した白金族の金属が挙げられ、金属の材質に応じて、触媒作用は異なる。
また、導電性膜の表面に、触媒作用を持つ複合金属微粒子が形成される現象は、18段落に説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が触媒作用を有する導電性膜が容易に製造される。
つまり、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する金属の核になり、触媒作用を持つ白金族の金属は、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に析出する。このため、新たに析出する白金族の金属の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、白金族の金属が、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層を形成する。この結果、導電性膜の表面は、触媒作用を持つ白金族の金属の性質を持つ。
導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子は、微粒子であるため、体積に対する表面積の比率である比表面積が大きい。さらに、触媒作用を有する白金族の金属が、複合金属微粒子の表層を形成するため、複合金属微粒子による触媒作用の効率が上がる。また、触媒作用をもたらす白金族の金属は、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層に留められ、白金族の金属となる高価な原料の使用量が少ない。こうした触媒作用の効率が高く、安価な製造費で製造できる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に莫大な数として形成される。また、触媒作用を持つ白金族の金属は、触媒作用に応じて自在に変えられる。従って、この導電性膜は、触媒作用を有するチップ部品や扁平シートとして利用できる。また、導電性膜の一方の表面に担持された複合金属微粒子の集まりは、圧着の手段として利用でき、導電性膜を部品や基材に圧着できる。また、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持ち、導電性膜は強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化され、触媒作用と導電性膜の性質とが付与される。さらに、圧着面または磁気吸着面の間隙が狭いため、10段落に記載した導電性膜と同様に、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。なお、触媒作用を発揮する金属は、15段落で説明したクロムとマンガンのいずれの金属よりさらに耐食性に優れる。また、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
なお、触媒作用を有する金属として、前記した白金族の金属が挙げられ、金属の材質に応じて、触媒作用は異なる。
また、導電性膜の表面に、触媒作用を持つ複合金属微粒子が形成される現象は、18段落に説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が触媒作用を有する導電性膜が容易に製造される。
25段落に記載した表面が触媒作用を有する導電性膜の製造方法は、25段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、無機物のイオンないしは分子からなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物であり、該無機金属化合物を、25段落に記載した熱分解で白金族に属する金属を析出する金属化合物として用い、25段落に記載した表面が触媒作用を有する導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造する、25段落に記載した表面が触媒作用を有する導電性膜の製造方法である。
つまり、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子になって、白金族の金属に属する白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物を、還元雰囲気で熱処理すると、最初に配位結合部が分断され、無機物と前記いずれかの金属とに分解する。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了し、前記いずれか1種類の金属が析出する。つまり、無機金属化合物を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きく、金属イオンと配位子との距離が最も長い。この無機金属化合物を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物の気化が完了すると金属が析出する。こうした無機金属化合物の熱分解によって金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属が析出する温度の中で最も低い。また、これらの無機金属化合物は、メタノールに10重量%近くまで分散する。
つまり、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンは、他の金属錯イオンに比べて合成が容易である。このような金属錯イオンとして、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオン、水H2Oが配位子となって金属イオンに配位結合するアクア金属錯イオン、水酸基OH―が配位子となって金属イオンに配位結合するヒドロキソ金属錯イオン、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンなどがある。さらに、このような金属錯イオンを有する塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの無機塩からなる無機金属化合物は、無機塩の分子量が小さいため、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了し金属を析出する。この金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属を析出する温度の中で最も低い。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である無機金属化合物を、25段落に記載した表面が触媒作用を有する導電性膜の製造方法において、白金族の金属を熱分解で析出する金属化合物として用い、25段落に記載した表面が触媒作用を有する導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、25段落に記載した表面が触媒作用を有する導電性膜が製造される。
つまり、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンは、他の金属錯イオンに比べて合成が容易である。このような金属錯イオンとして、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオン、水H2Oが配位子となって金属イオンに配位結合するアクア金属錯イオン、水酸基OH―が配位子となって金属イオンに配位結合するヒドロキソ金属錯イオン、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンなどがある。さらに、このような金属錯イオンを有する塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの無機塩からなる無機金属化合物は、無機塩の分子量が小さいため、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了し金属を析出する。この金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属を析出する温度の中で最も低い。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である無機金属化合物を、25段落に記載した表面が触媒作用を有する導電性膜の製造方法において、白金族の金属を熱分解で析出する金属化合物として用い、25段落に記載した表面が触媒作用を有する導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、25段落に記載した表面が触媒作用を有する導電性膜が製造される。
9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、触媒作用を有する合金が導電性膜の表面に担持した複合金属微粒子の表層を形成する導電性膜であって、該触媒作用を有する導電性膜の製造方法は、9段落または11段落に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の白金族の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物を、アルコールに分散し、該2種類の金属化合物が前記アルコールに分子状態になって分散されたアルコール分散液を作成し、または、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の白金族の金属とコバルトとの2種類の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物を、アルコールに分散し、該2種類の金属化合物が前記アルコールに分子状態になって分散されたアルコール分散液を作成し、前記アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、前記導電性膜を前記アルコール分散液に浸漬させ、該導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面を、前記アルコール分散液と接する状態にし、この後、該容器を前記2種類の金属化合物が同時に熱分解する温度に昇温し、該2種類の金属化合物を同時に熱分解させ、前記導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記した2種類の白金族の金属からなる合金が析出し、または、前記した白金族の金属とコバルトとからなる合金が析出し、触媒作用を有する該合金が、前記導電性膜の表面に担持した複合金属微粒子の表層を形成することによって、表面が触媒作用を有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が触媒作用を有する導電性膜の製造方法である。
つまり、9段落または11段落に記載した方法で、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の白金族の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、または、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の白金族の金属とコバルトとの2種類の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成する。このアルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加えると、導電性膜はアルコール分散液に浸漬し、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面がアルコール分散液と接する。この後、容器を前記2種類の金属化合物が同時に熱分解する温度に昇温すると、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記2種類の金属が同時に析出し、2種類の金属の組成からなる合金が、複合金属微粒子の表層を形成し、この複合金属微粒子が導電性膜の表面に担持されるため、表面が触媒作用を有する導電性膜が容器の底面に形成される。
つまり、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する2種類の金属の核になり、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に新たな2種類の金属が析出する。このため、新たに析出する2種類の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層が、2種類の金属からなる合金で形成される。この結果、導電性膜の表面は、触媒作用を持つ2種類の金属からなる合金の性質を持つ。
26段落で説明したように、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子は、微粒子であるがゆえに、体積に対する表面積の比率である比表面積が大きい。さらに、触媒作用を有する合金が、複合金属微粒子の表層を形成するため、複合金属微粒子による触媒作用の効率が上がる。また、触媒作用をもたらす合金は、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層に留められるため、合金になる高価な原料の使用量が減る。こうした触媒作用の効率が高く、安価な製造費で製造できる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に莫大な数として形成される。また、触媒作用を持つ合金の組成は、触媒作用に応じて自在に変えられる。従って、この導電性膜は、触媒作用を有するチップ部品や扁平シートとして利用できる。また、導電性膜の一方の表面に担持された複合金属微粒子の集まりは、圧着の手段としても利用で、導電性膜を部品や基材に圧着できる。なお、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持ち、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化され、触媒作用と導電性膜の性質が付与される。さらに、圧着面または磁気吸着面の間隙が狭いため、10段落に記載した導電性膜と同様に、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。なお、触媒作用を発揮する合金は、26段落で説明した白金族の金属と同様に、優れた耐食性を持つ。また、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
なお、触媒作用を有する合金として、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の白金族の金属からなる合金と、前記白金族のいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属からなる合金が挙げられ、合金の組成に応じて触媒作用は異なる。こうした合金によって、複合金属微粒子の表層を構成すれば、優れた触媒作用を有する導電性膜が製造できる。
また、導電性膜の表面に、触媒作用を持つ複合金属微粒子が形成される現象は、18段落に説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が触媒作用を有する導電性膜が容易に製造される。
つまり、導電性膜の表面に担持された金属微粒子または複合金属微粒子の表面が、新たに析出する2種類の金属の核になり、導電性膜の表面の金属微粒子または複合金属微粒子の表面に新たな2種類の金属が析出する。このため、新たに析出する2種類の原料となる金属化合物を、僅かな量を用いるだけで、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子の表層が、2種類の金属からなる合金で形成される。この結果、導電性膜の表面は、触媒作用を持つ2種類の金属からなる合金の性質を持つ。
26段落で説明したように、導電性膜の表面に担持された複合金属微粒子は、微粒子であるがゆえに、体積に対する表面積の比率である比表面積が大きい。さらに、触媒作用を有する合金が、複合金属微粒子の表層を形成するため、複合金属微粒子による触媒作用の効率が上がる。また、触媒作用をもたらす合金は、導電性膜の表面の複合金属微粒子の表層に留められるため、合金になる高価な原料の使用量が減る。こうした触媒作用の効率が高く、安価な製造費で製造できる複合金属微粒子が、導電性膜の表面に莫大な数として形成される。また、触媒作用を持つ合金の組成は、触媒作用に応じて自在に変えられる。従って、この導電性膜は、触媒作用を有するチップ部品や扁平シートとして利用できる。また、導電性膜の一方の表面に担持された複合金属微粒子の集まりは、圧着の手段としても利用で、導電性膜を部品や基材に圧着できる。なお、導電性膜の表面は、導電性膜の内部と異なる性質を持つ。つまり、扁平面同士を接合する金属微粒子または複合金属微粒子が磁性を持ち、導電性膜は、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化され、触媒作用と導電性膜の性質が付与される。さらに、圧着面または磁気吸着面の間隙が狭いため、10段落に記載した導電性膜と同様に、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。なお、触媒作用を発揮する合金は、26段落で説明した白金族の金属と同様に、優れた耐食性を持つ。また、10段落で記載した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合金属微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。
なお、触媒作用を有する合金として、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の白金族の金属からなる合金と、前記白金族のいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属からなる合金が挙げられ、合金の組成に応じて触媒作用は異なる。こうした合金によって、複合金属微粒子の表層を構成すれば、優れた触媒作用を有する導電性膜が製造できる。
また、導電性膜の表面に、触媒作用を持つ複合金属微粒子が形成される現象は、18段落に説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が触媒作用を有する導電性膜が容易に製造される。
29段落に記載した触媒作用を有する合金が導電性膜の表面に担持した複合金属微粒子の表層を形成する導電性膜の製造方法は、29段落に記載した2種類の白金族の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物が、または、白金族の金属とコバルトとの2種類の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物が、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類の金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物であり、該2種類の無機金属化合物を、29段落に記載した2種類の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物として用い、29段落に記載した触媒作用を有する合金が導電性膜の表面に担持した複合金属微粒子の表層を形成する導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造する、29段落に記載した触媒作用を有する合金が導電性膜の表面に担持した複合金属微粒子の表層を形成する導電性膜の製造方法である。
つまり、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類の金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物は、配位子が同一であるため、同時に熱分解が始まり、還元雰囲気の180−220℃の温度範囲で、2種類の無機金属化合物の熱分解が完了し、2種類の金属が同時に析出し、2種類の無機金属化合物のモル数の比率に応じた組成からなる合金を析出する。このため、2種類の無機金属化合物は、触媒作用を持つ合金を熱分解で析出する原料になる。また、合金が析出する温度は、合金の融点より著しく低く、還元雰囲気での短時間の熱処理で合金を析出する。
すなわち、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類の金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物を、還元雰囲気で熱処理すると、最初に配位結合部が分断され、無機物と2種類の金属とに分解する。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了したのちに、2種類の金属が同時に析出し、これらの金属は不純物を持たない活性状態にあるため、析出した2種類の金属の組成からなる合金が析出する。すなわち、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物が同時に熱分解し、2種類の金属からなる合金が析出する。また、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物が同時に熱分解し、2種類の金属からなる合金が析出する。なお、無機物のイオンないしは分子からなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物は、28段落で説明した無機金属化合物である。
また、2種類の無機金属化合物の熱分解反応は、無機金属化合物を構成する金属によらず、無機金属化合物を構成する配位子の結合部の分解で始まる。このため合金が析出する温度は、合金の融点を超える温度で合金の原料を溶解して合金を精製する溶製材の製造温度に比べると著しく低い。
以上に説明したように、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物を、29段落に記載した導電性膜の製造方法において、触媒作用を持つ合金を熱分解で析出する金属化合物として用い、29段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、29段落に記載した導電性膜が製造される。
すなわち、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類の金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物を、還元雰囲気で熱処理すると、最初に配位結合部が分断され、無機物と2種類の金属とに分解する。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了したのちに、2種類の金属が同時に析出し、これらの金属は不純物を持たない活性状態にあるため、析出した2種類の金属の組成からなる合金が析出する。すなわち、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物が同時に熱分解し、2種類の金属からなる合金が析出する。また、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物が同時に熱分解し、2種類の金属からなる合金が析出する。なお、無機物のイオンないしは分子からなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物は、28段落で説明した無機金属化合物である。
また、2種類の無機金属化合物の熱分解反応は、無機金属化合物を構成する金属によらず、無機金属化合物を構成する配位子の結合部の分解で始まる。このため合金が析出する温度は、合金の融点を超える温度で合金の原料を溶解して合金を精製する溶製材の製造温度に比べると著しく低い。
以上に説明したように、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物を、29段落に記載した導電性膜の製造方法において、触媒作用を持つ合金を熱分解で析出する金属化合物として用い、29段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、29段落に記載した導電性膜が製造される。
9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、9段落または11段落に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する酸化アルミニウムを熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散し、該金属化合物が前記アルコールに分子状態になって分散されたアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、前記導電性膜を前記アルコール分散液に浸漬させ、該導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面を、前記アルコール分散液と接する状態にし、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、該金属化合物を熱分解させ、前記導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、前記した電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する酸化アルミニウムが析出し、該酸化アルミニウムが、前記導電性膜の表面に担持した複合金属微粒子の表層を形成することによって、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜の製造方法である。
つまり、9段落または11段落に記載した方法で、容器の底面に、導電性膜を形成し、さらに、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する酸化アルミニウムを熱分解で析出する金属化合物のアルコール分散液を、容器に充填する。この後、容器に3方向の振動を加えると、導電性膜はアルコール分散液に浸漬し、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面がアルコール分散液と接する。さらに、容器を金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、導電性膜の表面に担持した金属微粒子または複合金属微粒子の表面に、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する酸化アルミニウムが析出し、表層が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とに優れる酸化アルミニウムからなる複合微粒子が、導電性膜の表面に形成される。なお、酸化アルミニウムは、熱伝導率が40W/mKで、金属酸化物の中では優れた熱伝導性を持つ。また、電気抵抗は1014Ωcm以上の抵抗率を持つ絶縁体である。さらに、化学的に安定な酸化物で、耐食性に優れる。また、モース硬度が9からなる硬い物質である。このため、導電性膜の表面は、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性との性質を有する。
従って、複合微粒子の表層は硬く、導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、導電性膜の表面の複合微粒子が部品や基材の表面に食い込み、導電性膜が部品や基材に圧着し、部品や基材の表面が絶縁化される。例えば、電気導電性と熱伝導性に優れる部品や基材の表面を絶縁化させる手段として利用できる。また、導電性膜は磁性を持つため、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、部品や基材に酸化アルミニウムの性質と導電性膜の性質が付与できる。また、10段落で説明した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。さらに、導電性膜の圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合微粒子の大きさに相当する僅かな間隙であるため、この間隙に液体は侵入できない。このため、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。
また、表層が酸化アルミニウムからなる複合微粒子の集まりが、導電性膜の表面に形成される現象は、18段落で説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が容易に製造される。
なお、導電性膜の表面に担持される複合微粒子の表層は、酸化アルミニウムに限定されない。例えば、表層を酸化マグネシウムで構成した場合は、扁平粉の表面は電気絶縁性と優れた熱伝導性とを持つが、耐食性は酸化アルミニウムに比べ劣る。このように、新たに析出する物質によって、導電性膜の表面に担持する複合微粒子の表層は自在に変えることができ、導電性膜の表面に様々な性質がもたらされる。さらに、導電性膜の表面の性質を内部の性質と異ならせることができる。これによって、導電性膜が持つ性質が格段に拡大し、新たな用途に導電性膜を適応することができる。
従って、複合微粒子の表層は硬く、導電性膜を部品や基材の表面に配置し、導電性膜に圧縮応力を加えると、導電性膜の表面の複合微粒子が部品や基材の表面に食い込み、導電性膜が部品や基材に圧着し、部品や基材の表面が絶縁化される。例えば、電気導電性と熱伝導性に優れる部品や基材の表面を絶縁化させる手段として利用できる。また、導電性膜は磁性を持つため、強磁性及び軟磁性の部品や基材に磁気吸着する。従って、全ての材質の部品や基材に導電性膜が一体化でき、部品や基材に酸化アルミニウムの性質と導電性膜の性質が付与できる。また、10段落で説明した導電性膜と同様に、導電性膜の表面がナノレベルの複合微粒子で覆われ、表面は撥水性、防汚性や潤滑性の性質を持つ。さらに、導電性膜の圧着面及び磁気吸着面における間隙が、複合微粒子の大きさに相当する僅かな間隙であるため、この間隙に液体は侵入できない。このため、圧着面または磁気吸着面は液体に侵されない。
また、表層が酸化アルミニウムからなる複合微粒子の集まりが、導電性膜の表面に形成される現象は、18段落で説明した理由と同じである。
以上に説明したように、本製造方法に依って、9段落または11段落に記載した導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が容易に製造される。
なお、導電性膜の表面に担持される複合微粒子の表層は、酸化アルミニウムに限定されない。例えば、表層を酸化マグネシウムで構成した場合は、扁平粉の表面は電気絶縁性と優れた熱伝導性とを持つが、耐食性は酸化アルミニウムに比べ劣る。このように、新たに析出する物質によって、導電性膜の表面に担持する複合微粒子の表層は自在に変えることができ、導電性膜の表面に様々な性質がもたらされる。さらに、導電性膜の表面の性質を内部の性質と異ならせることができる。これによって、導電性膜が持つ性質が格段に拡大し、新たな用途に導電性膜を適応することができる。
34段落に記載した導電性膜の表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜の製造方法は、酸化アルミニウムが熱分解で析出する金属化合物が、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるいずれか1種類のカルボン酸アルミニウム化合物であり、該カルボン酸アルミニウム化合物を熱分解で酸化アルミニウムを析出する金属化合物として用い、請求項11に記載した表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造する、34段落に記載した導電性膜の表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜の製造方法である。
つまり、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、アルミニウムイオンに配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、熱分解によって酸化アルミニウムを析出する。このため、34段落に記載した導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜の製造方法において、酸化アルミニウムを熱分解で析出する金属化合物として、カルボン酸アルミニウム化合物を用い、34段落に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造すると、表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が製造される。なお、カルボン酸アルミニウム化合物の熱分解温度は、ナフテン酸アルミニウムが330℃で熱分解する温度が最も高い。また、カルボン酸アルミニウム化合物の大気雰囲気での熱分解は、窒素雰囲気での熱分解より30−50℃低いため、大気雰囲気での熱分解は、熱処理費用が安価で済む。また、これらのカルボン酸アルミニウム化合物は、メタノールに10重量%近くまで分散する。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、アルミニウムイオンに近づいて配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、最も大きいイオンであるアルミニウムイオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。このため、アルミニウムイオンに配位結合する酸素イオンが、アルミニウムイオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸アルミニウム化合物は、カルボン酸アルミニウム化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンがアルミニウムイオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、アルミニウムイオンと酸素イオンとの化合物である酸化アルミニウムとカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に酸化アルミニウムが析出する。こうしたカルボン酸アルミニウム化合物として、酢酸アルミニウム、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムなどがある。
なお、酢酸アルミニウムは、熱分解でアモルファス化した酸化アルミニウムを析出するため、熱分解で酸化アルミニウムを析出するカルボン酸アルミニウム化合物は、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるカルボン酸アルミニウム化合物が望ましい。
また、カルボン酸アルミニウム化合物は、いずれも容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を、無機アルミニウム化合物と反応させると、カルボン酸アルミニウム化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であり、大気雰囲気においては330℃程度の低い熱処理温度で、酸化アルミニウムが析出する。
以上に説明したように、34段落に記載した導電性膜の製造方法において、酸化アルミニウムが熱分解で析出する金属化合物として、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるいずれか1種類のカルボン酸アルミニウム化合物を用いると、導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が製造される。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、アルミニウムイオンに近づいて配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、最も大きいイオンであるアルミニウムイオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。このため、アルミニウムイオンに配位結合する酸素イオンが、アルミニウムイオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸アルミニウム化合物は、カルボン酸アルミニウム化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンがアルミニウムイオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、アルミニウムイオンと酸素イオンとの化合物である酸化アルミニウムとカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に酸化アルミニウムが析出する。こうしたカルボン酸アルミニウム化合物として、酢酸アルミニウム、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムなどがある。
なお、酢酸アルミニウムは、熱分解でアモルファス化した酸化アルミニウムを析出するため、熱分解で酸化アルミニウムを析出するカルボン酸アルミニウム化合物は、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるカルボン酸アルミニウム化合物が望ましい。
また、カルボン酸アルミニウム化合物は、いずれも容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を、無機アルミニウム化合物と反応させると、カルボン酸アルミニウム化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であり、大気雰囲気においては330℃程度の低い熱処理温度で、酸化アルミニウムが析出する。
以上に説明したように、34段落に記載した導電性膜の製造方法において、酸化アルミニウムが熱分解で析出する金属化合物として、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるいずれか1種類のカルボン酸アルミニウム化合物を用いると、導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が製造される。
実施例1
本実施例では、扁平粉の扁平面に析出した鉄微粒子の集まりで、扁平面同士を接合した導電性膜を製造する。扁平粉は銅の扁平粉(福田金属箔粉工業株式会社の銅フレーク粉E3)を用いた。この扁平粉の粒度分布は、75μm以上が3%より少なく、45μm以上が40%より少なく、45μm以下が60%より多い。鉄微粒子の原料は、熱分解温度が360℃であるラウリン酸第二鉄Fe(C11H23COO)3(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
最初に、ラウリン酸第二鉄を10重量%の割合でメタノールに分散させた。このアルコール分散液の100ccに、20gの銅の扁平粉を混合した。この混合物を、回転による拡散混合と揺動による移動混合とを同時に行う装置(愛知電機株式会社のロッキングミキサーRMH−HT)に充填し、回転と揺動を繰り返して懸濁液を作成した。この懸濁液をビーカーに充填し、ビーカーに超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)で、20kHzの超音波振動を1分間加えた。この後、懸濁液を10mm×100mm×5mmからなる細長い短冊状の容器に充填し、この容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.4Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し、最後に、上下方向に0.4Gの振動加速度を10秒間加えた。この後、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。なお、メタノールとラウリン酸とは沸点が異なるため、気化したメタノールとラウリン酸とは、回収機で個別に回収した。
この後、容器の底に形成された短冊状の極薄い試料を取り出し、試料の表面を電子顕微鏡で観察と分析を行なった。さらに、試料の中央部で幅方向に試料を切断し、断面を電子顕微鏡で観察と分析を行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料が観察できる。
最初に、試料の表面からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の表面は、40−60nmの大きさからなる微粒子の集まりで覆われていた。次に、試料の表面からの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒状微粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められなかったので、単一原子から構成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒子を構成する元素の種類を分析した。鉄原子のみで構成されていたため、微粒子は鉄微粒子である。
さらに、試料の断面からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。図1は、試料の断面の一部を模式的に拡大した図である。1は鉄微粒子で、2は銅の扁平粉である。なお、作成した試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかったため、一定の機械的強度を持つ。
本実施例で製造した短冊状の試料を、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例では、磁性を有する金属として鉄を用い、扁平粉として銅の扁平粉を用い、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜を製造した。なお、熱分解でニッケルないしコバルトを析出する金属化合物を用いると、ニッケルないしはコバルトの微粒子の集まりによって、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜が製造できる。また、銀の扁平粉を用いれば、銀の扁平粉の扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜が製造できる。さらに、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、扁平粉の扁平面に析出した鉄微粒子の集まりで、扁平面同士を接合した導電性膜を製造する。扁平粉は銅の扁平粉(福田金属箔粉工業株式会社の銅フレーク粉E3)を用いた。この扁平粉の粒度分布は、75μm以上が3%より少なく、45μm以上が40%より少なく、45μm以下が60%より多い。鉄微粒子の原料は、熱分解温度が360℃であるラウリン酸第二鉄Fe(C11H23COO)3(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
最初に、ラウリン酸第二鉄を10重量%の割合でメタノールに分散させた。このアルコール分散液の100ccに、20gの銅の扁平粉を混合した。この混合物を、回転による拡散混合と揺動による移動混合とを同時に行う装置(愛知電機株式会社のロッキングミキサーRMH−HT)に充填し、回転と揺動を繰り返して懸濁液を作成した。この懸濁液をビーカーに充填し、ビーカーに超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)で、20kHzの超音波振動を1分間加えた。この後、懸濁液を10mm×100mm×5mmからなる細長い短冊状の容器に充填し、この容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.4Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し、最後に、上下方向に0.4Gの振動加速度を10秒間加えた。この後、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。なお、メタノールとラウリン酸とは沸点が異なるため、気化したメタノールとラウリン酸とは、回収機で個別に回収した。
この後、容器の底に形成された短冊状の極薄い試料を取り出し、試料の表面を電子顕微鏡で観察と分析を行なった。さらに、試料の中央部で幅方向に試料を切断し、断面を電子顕微鏡で観察と分析を行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料が観察できる。
最初に、試料の表面からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の表面は、40−60nmの大きさからなる微粒子の集まりで覆われていた。次に、試料の表面からの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒状微粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められなかったので、単一原子から構成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒子を構成する元素の種類を分析した。鉄原子のみで構成されていたため、微粒子は鉄微粒子である。
さらに、試料の断面からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。図1は、試料の断面の一部を模式的に拡大した図である。1は鉄微粒子で、2は銅の扁平粉である。なお、作成した試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかったため、一定の機械的強度を持つ。
本実施例で製造した短冊状の試料を、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例では、磁性を有する金属として鉄を用い、扁平粉として銅の扁平粉を用い、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜を製造した。なお、熱分解でニッケルないしコバルトを析出する金属化合物を用いると、ニッケルないしはコバルトの微粒子の集まりによって、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜が製造できる。また、銀の扁平粉を用いれば、銀の扁平粉の扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜が製造できる。さらに、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
実施例2
本実施例では、扁平粉の扁平面に析出した鉄微粒子と銅微粒子とからなる複合微粒子の集まりで、扁平面同士を接合した導電性膜を製造する。扁平粉は実施例1の銅の扁平粉を用いた。鉄の原料は実施例1のラウリン酸第二鉄を用い、銅の原料は熱分解温度がラウリン酸鉄と同じ360℃であるラウリン酸第二銅Cu(C11H23COO)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
最初に、ラウリン酸第二鉄を0.2重量%の割合でメタノールに分散した。次に、ラウリン酸第二銅を0.8重量%の割合でメタノールに分散した。2種類のアルコール分散液の50ccずつを混合し、さらに、実施例1で用いた銅の扁平粉の20gを混合し、混合物を、実施例1と同様に、回転機によって回転と揺動を繰り返して懸濁液を作成した。さらに、懸濁液をビーカーに充填し、実施例1で用いた超音波ホモジナイザー装置で、懸濁液に20kHzの超音波振動を1分間加えた。この後、懸濁液を、実施例1と同じ形状の容器に充填した。この容器を小型加振機の加振台の上に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。この後、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、細長い短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。実施例1と同様に、気化したメタノールとラウリン酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、40−60nmの大きさからなる銅と鉄とからなる複合微粒子の集まりで覆われていた。なお、複合金属微粒子における銅と鉄との析出比率は4対1の割合であった。また、試料の断面の観察から、複合金属微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、導電性膜は、銅の性質が鉄の性質より優勢な2種類の金属の性質を持つ。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、扁平粉として銅の扁平粉を用い、鉄と銅とからなる複合金属微粒子の接合によって、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜の実施例である。銅の代わりに他の金属を用いることで、導電性膜の性質が変わる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、扁平粉の扁平面に析出した鉄微粒子と銅微粒子とからなる複合微粒子の集まりで、扁平面同士を接合した導電性膜を製造する。扁平粉は実施例1の銅の扁平粉を用いた。鉄の原料は実施例1のラウリン酸第二鉄を用い、銅の原料は熱分解温度がラウリン酸鉄と同じ360℃であるラウリン酸第二銅Cu(C11H23COO)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
最初に、ラウリン酸第二鉄を0.2重量%の割合でメタノールに分散した。次に、ラウリン酸第二銅を0.8重量%の割合でメタノールに分散した。2種類のアルコール分散液の50ccずつを混合し、さらに、実施例1で用いた銅の扁平粉の20gを混合し、混合物を、実施例1と同様に、回転機によって回転と揺動を繰り返して懸濁液を作成した。さらに、懸濁液をビーカーに充填し、実施例1で用いた超音波ホモジナイザー装置で、懸濁液に20kHzの超音波振動を1分間加えた。この後、懸濁液を、実施例1と同じ形状の容器に充填した。この容器を小型加振機の加振台の上に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。この後、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、細長い短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。実施例1と同様に、気化したメタノールとラウリン酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、40−60nmの大きさからなる銅と鉄とからなる複合微粒子の集まりで覆われていた。なお、複合金属微粒子における銅と鉄との析出比率は4対1の割合であった。また、試料の断面の観察から、複合金属微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、導電性膜は、銅の性質が鉄の性質より優勢な2種類の金属の性質を持つ。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、扁平粉として銅の扁平粉を用い、鉄と銅とからなる複合金属微粒子の接合によって、扁平面同士が重なり合って接合した導電性膜の実施例である。銅の代わりに他の金属を用いることで、導電性膜の性質が変わる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
実施例3
本実施例では、実施例2の導電性膜を容器内に形成し、さらに、実施例2のラウリン酸第二銅を原料として用い、導電性膜の表面に析出した複合金属微粒子の表面に、さらに銅を析出させ、導電性膜の表面が展性に優れた性質を持つ導電性膜を製造する。
最初に、実施例2の製造方法で、導電性膜を容器内に形成した。この後、ラウリン酸第二銅を0.1重量%の濃度でメタノールに分散させ、この分散液の50ccを容器に充填した。容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、細長い短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとラウリン酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面が銅からなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例2で製造した導電性膜の表面に担持された鉄と銅との複合金属微粒子の表面に、さらに銅が30nmに近い厚みで析出し、銅の性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は銅の性質を持つ。また、試料の断面の観察から、試料は、実施例2と同様に、複合金属微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙に銅は析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が展性に優れた導電性膜として銅を用いた事例である。展性に優れた他の金属、例えば、アルミニウムを用いれば、表面が展性に優れ、より軽量な導電性膜が製造できる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、実施例2の導電性膜を容器内に形成し、さらに、実施例2のラウリン酸第二銅を原料として用い、導電性膜の表面に析出した複合金属微粒子の表面に、さらに銅を析出させ、導電性膜の表面が展性に優れた性質を持つ導電性膜を製造する。
最初に、実施例2の製造方法で、導電性膜を容器内に形成した。この後、ラウリン酸第二銅を0.1重量%の濃度でメタノールに分散させ、この分散液の50ccを容器に充填した。容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、360℃で2分間熱処理し、細長い短冊状の厚みが極薄い試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとラウリン酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面が銅からなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例2で製造した導電性膜の表面に担持された鉄と銅との複合金属微粒子の表面に、さらに銅が30nmに近い厚みで析出し、銅の性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は銅の性質を持つ。また、試料の断面の観察から、試料は、実施例2と同様に、複合金属微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙に銅は析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が展性に優れた導電性膜として銅を用いた事例である。展性に優れた他の金属、例えば、アルミニウムを用いれば、表面が展性に優れ、より軽量な導電性膜が製造できる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
実施例4
本実施例では、実施例1の導電性膜を容器内に形成し、さらに、オクチル酸クロムCr(C7H15COO)3(CAS番号3444−17−5、輸入品)をクロムの原料として用い、導電性膜の表面に析出した鉄微粒子の表面に、さらにクロムを析出させ、表面が耐摩耗性を有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例1の導電性膜を容器内に形成した。この後、オクチル酸クロムを0.1重量%の濃度でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、290℃で2分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとオクチル酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面がクロムからなる微粒子の集まりで覆われていた。このため、実施例1で製造した導電性膜の表面に担持された鉄粒子の表面に、クロムが30nmに近い厚みで析出し、クロムの性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。従って、導電性膜の表面はクロムの性質を持つ。また、断面の観察から、実施例1と同様に、鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙に、クロムは析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、クロムを用いて、表面が耐摩耗性に優れた導電性膜を製造した。クロムの代わりにマンガンを用いれば、表面は耐摩耗性とともに、マンガンの性質を持つ。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、実施例1の導電性膜を容器内に形成し、さらに、オクチル酸クロムCr(C7H15COO)3(CAS番号3444−17−5、輸入品)をクロムの原料として用い、導電性膜の表面に析出した鉄微粒子の表面に、さらにクロムを析出させ、表面が耐摩耗性を有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例1の導電性膜を容器内に形成した。この後、オクチル酸クロムを0.1重量%の濃度でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、290℃で2分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとオクチル酸とを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面がクロムからなる微粒子の集まりで覆われていた。このため、実施例1で製造した導電性膜の表面に担持された鉄粒子の表面に、クロムが30nmに近い厚みで析出し、クロムの性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。従って、導電性膜の表面はクロムの性質を持つ。また、断面の観察から、実施例1と同様に、鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙に、クロムは析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、クロムを用いて、表面が耐摩耗性に優れた導電性膜を製造した。クロムの代わりにマンガンを用いれば、表面は耐摩耗性とともに、マンガンの性質を持つ。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
実施例5
本実施例では、実施例1の導電性膜を容器内に形成し、さらに、ジアンミン白金塩化物[Pt(NH3)2]Cl2(三津和化学薬品株式会社の製品)を原料として用い、導電性膜の表面に析出した鉄微粒子の表面に、さらに白金を析出させ、表面が触媒作用を有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例1の導電性膜を容器内に形成した。ジアンミン白金塩化物を0.05重量%の割合でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器をアンモニア雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、180℃で5分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとアンモニアとを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、50−70nm程度の大きさからなる表面が白金からなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例1で製造した導電性膜の表面に担持された鉄粒子の表面に、さらに白金が10nmに近い厚みで析出し、白金の性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は白金の性質を持つ。また、断面の観察から、実施例1と同様に、鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙には、白金は析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が白金による触媒作用を持つ導電性膜の実施例である。白金の代わりに他の白金族の金属、ないしは複数の白金族の金属からなる合金、あるいは、白金族の金属とコバルトとからなる合金を用いれば、表面の触媒作用が変わる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、実施例1の導電性膜を容器内に形成し、さらに、ジアンミン白金塩化物[Pt(NH3)2]Cl2(三津和化学薬品株式会社の製品)を原料として用い、導電性膜の表面に析出した鉄微粒子の表面に、さらに白金を析出させ、表面が触媒作用を有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例1の導電性膜を容器内に形成した。ジアンミン白金塩化物を0.05重量%の割合でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器をアンモニア雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、180℃で5分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールとアンモニアとを回収機で回収した。
実施例1と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と断面の観察と分析とを行った。試料の表面は、50−70nm程度の大きさからなる表面が白金からなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例1で製造した導電性膜の表面に担持された鉄粒子の表面に、さらに白金が10nmに近い厚みで析出し、白金の性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は白金の性質を持つ。また、断面の観察から、実施例1と同様に、鉄微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙には、白金は析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が白金による触媒作用を持つ導電性膜の実施例である。白金の代わりに他の白金族の金属、ないしは複数の白金族の金属からなる合金、あるいは、白金族の金属とコバルトとからなる合金を用いれば、表面の触媒作用が変わる。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
実施例6
本実施例では、実施例2の導電性膜を容器内に形成し、さらに、安息香酸アルミニウムAl(C6H5COO)3(三津和化学薬品株式会社の製品)を酸化アルミニウムの原料として用い、導電性膜の表面に析出した複合金属微粒子の表面に、さらに酸化アルミニウムを析出させ、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例2の導電性膜を容器内に形成した。安息香酸アルミニウムを0.1重量%の割合でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、310℃で2分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールと安息香酸とを回収機で回収した。
実施例2と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と側面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面が酸化アルミニウムからなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例2で製造した導電性膜の表面に担持された複合微粒子の表面に、さらに酸化アルミニウムが30nmに近い厚みで析出し、酸化アルミニウムの性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は酸化アルミニウムの性質を持つ。また、試料の断面の観察から、実施例2と同様に、鉄微粒子と銅微粒子とからなる複合微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙には、酸化アルミニウムは析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性を有する導電性膜として、酸化アルミニウムを用いた実施例である。酸化アルミニウムの代わりに酸化マグネシウムを用いれば、表面の耐食性は低下するが熱伝導性が向上する。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
本実施例では、実施例2の導電性膜を容器内に形成し、さらに、安息香酸アルミニウムAl(C6H5COO)3(三津和化学薬品株式会社の製品)を酸化アルミニウムの原料として用い、導電性膜の表面に析出した複合金属微粒子の表面に、さらに酸化アルミニウムを析出させ、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜を製造する。
最初に、実施例2の導電性膜を容器内に形成した。安息香酸アルミニウムを0.1重量%の割合でメタノールに分散させ、分散液の50ccを容器に充填した。さらに、容器を小型加振機の加振台に載せ、実施例1と同じ条件で、容器に振動を加えた。さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、メタノールを気化させた後に、310℃で2分間熱処理し、試料を容器の底面に作成した。なお、実施例1と同様に、気化したメタノールと安息香酸とを回収機で回収した。
実施例2と同様に、電子顕微鏡によって、試料の表面と側面の観察と分析とを行った。試料の表面は、70−90nmの大きさからなる表面が酸化アルミニウムからなる微粒子の集まりで覆われていた。従って、実施例2で製造した導電性膜の表面に担持された複合微粒子の表面に、さらに酸化アルミニウムが30nmに近い厚みで析出し、酸化アルミニウムの性質が優勢な複合金属微粒子が、導電性膜の表面に形成された。このため、導電性膜の表面は酸化アルミニウムの性質を持つ。また、試料の断面の観察から、実施例2と同様に、鉄微粒子と銅微粒子とからなる複合微粒子の集まりを介して、扁平面が6層をなして扁平面同士で重なり合って接合し、試料を形成した。従って、扁平面同士の間隙には、酸化アルミニウムは析出しなかった。また、試料に1kgの重りを載せたが、試料は破壊されなかった。
本実施例で製造した短冊状の試料も、部品や基材の表面に磁気吸着ないしは圧着させると、部品や基材の表面に導電性膜が一体化され、導電性膜の性質が付与される。
本実施例は、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性を有する導電性膜として、酸化アルミニウムを用いた実施例である。酸化アルミニウムの代わりに酸化マグネシウムを用いれば、表面の耐食性は低下するが熱伝導性が向上する。また、導電性膜の形状は、懸濁液を充填する容器に応じて変わり、導電性膜の厚みは、使用する扁平粉の量に応じて変わる。
以上に、導電性膜の実施例として、6つの実施例を説明したが、導電性膜は、これらの実施例に限定されない。つまり、金属化合物の熱分解で、様々な金属、合金ないしは金属酸化物を析出する金属化合物を用いることで、内部と表面とに様々な性質を持つ導電性膜が製造される。また、導電性膜の表面の性質を変えることができる。さらに、導電性膜の用途に応じて、導電性膜の厚みと表面積と形状との各々が自在に変えられる。また、本実施例のいずれもが、安価な原料を用い、極めて簡単な処理で、導電性膜が製造できた。従って、本導電性膜の製造方法によって、新たな用途に用いられる導電性膜が製造できる。
1 鉄微粒子 2 銅の扁平粉
Claims (14)
- アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜の製造方法は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコール分散液に導電性扁平粉の集まりを混合して懸濁液を作成する第二の工程と、前記懸濁液を混合機内で回転及び揺動させる第三の工程と、前記懸濁液をホモジナイザー装置で処理する第四の工程と、前記懸濁液を底が浅い容器に充填する第五の工程と、前記容器に左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加える第六の工程と、前記容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する第七の工程とからなるこれら7つの処理を連続して実施することによって、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜が製造される、アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜が製造される製造方法。
- 請求項1記載した導電性膜が、電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、2種類の金属化合物が同時に熱分解して2種類の金属を同時に析出するする金属化合物であり、該2種類の金属化合物は、鉄、コバルトまたはニッケルからなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物と、銅またはアルミニウムからなるいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物とからなり、該2種類の金属化合物を、請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、請求項1に記載した導電性膜の製造方法に従って導電性膜を製造することによって、前記容器の底面に、該底面の形状からからなる電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜が製造される、電気導電性と熱伝導性とに優れた性質を持つ導電性膜の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載した導電性膜の製造方法において、請求項1に記載した導電性扁平粉が軟質金属からなる扁平粉である、請求項1または請求項2に記載した導電性膜の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載した導電性膜の製造方法において、請求項1または請求項2に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに共有結合する第一の性質と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の性質とを兼備するカルボン酸金属化合物である、請求項1または請求項2に記載した導電性膜の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載した導電性膜の表面が、展性に優れる性質を有する導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、請求項1または請求項2に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、銅、アルミニウムまたは錫からなるいずれか1種類の金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温することによって、表面が展性に優れる性質を有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が展性に優れる性質を有する導電性膜の製造方法。
- 請求項5に記載した導電性膜の製造方法において、請求項5に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに共有結合する第一の性質と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の性質とを兼備するカルボン酸金属化合物である、請求項5に記載した導電性膜の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載した導電性膜の表面が、耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、請求項1または請求項2に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、クロムまたはマンガンからなるいずれかの金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温することによって、表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が耐摩耗性に優れる性質を有する導電性膜の製造方法。
- 請求項7に記載した導電性膜の製造方法において、請求項7に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに共有結合する第一の性質と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の性質とを兼備するカルボン酸金属化合物である、請求項7に記載した導電性膜の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載した導電性膜の表面が、触媒作用を有する第一の導電性膜であって、該第一の導電性膜の製造方法は、請求項1または請求項2に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属が熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温することによって、表面が触媒作用を有する第一の導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が触媒作用を有する第一の導電性膜の製造方法。
- 請求項9に記載した導電性膜の製造方法において、請求項9に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、無機物のイオンないしは分子からなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物である、請求項9に記載した導電性膜の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載した導電性膜の表面が、触媒作用を有する第二の導電性膜であって、該第二の導電性膜の製造方法は、請求項1または請求項2に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか2種類の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、または、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムからなるいずれか1種類の金属とコバルトとの2種類の金属が熱分解で同時に析出する2種類の金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコール分散液を前記容器に充填し、前記容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、この後、該容器を前記2種類の金属化合物が同時に熱分解する温度に昇温することによって、表面が触媒作用を有する第二の導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が触媒作用を有する第二の導電性膜の製造方法。
- 請求項11に記載した導電性膜の製造方法において、請求項11に記載した熱分解で2種類の金属が同時に析出する2種類の金属化合物が、無機物のイオンないしは分子からなる同一の配位子が、2種類の金属イオンに配位結合した2種類の金属錯イオンからなる2種類の無機金属化合物である、請求項11に記載した導電性膜の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載した導電性膜の表面が、電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜であって、該導電性膜の製造方法は、請求項1または請求項2に記載した製造方法に従って、容器の底面に導電性膜を形成し、さらに、酸化アルミニウムを熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液を前記容器に充填し、該容器に左右、前後、上下の3方向の振動を加え、この後、該容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温することによって、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜が、前記容器の底面に、該底面の形状からなる導電性膜として製造される、表面が電気絶縁性と熱伝導性と耐食性とを有する導電性膜の製造方法。
- 請求項13に記載した導電性膜の製造方法において、請求項13に記載した酸化アルミニウムが熱分解で析出する金属化合物が、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウムからなるいずれか1種類のカルボン酸アルミニウム化合物である、請求項13に記載した導電性膜の製造方法。
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JP2018093393A JP2019200867A (ja) | 2018-05-14 | 2018-05-14 | アスペクト比と形状との各々が自在に変えられる導電性膜の製造方法 |
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JP2021178930A (ja) * | 2020-05-14 | 2021-11-18 | 博 小林 | 転がり軸受装置の軌道面ないしは転動体の少なくとも一方に付与する潤滑剤の製造方法、ないしは、滑り軸受装置の軸受部材ないしは軸部材の少なくとも一方の滑り面に付与する潤滑剤の製造方法、ないしは、含油軸受装置に用いる焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤の製造方法 |
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2018
- 2018-05-14 JP JP2018093393A patent/JP2019200867A/ja active Pending
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JP2021178930A (ja) * | 2020-05-14 | 2021-11-18 | 博 小林 | 転がり軸受装置の軌道面ないしは転動体の少なくとも一方に付与する潤滑剤の製造方法、ないしは、滑り軸受装置の軸受部材ないしは軸部材の少なくとも一方の滑り面に付与する潤滑剤の製造方法、ないしは、含油軸受装置に用いる焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤の製造方法 |
JP7236603B2 (ja) | 2020-05-14 | 2023-03-10 | 博 小林 | 転がり軸受装置の軌道面ないしは転動体の少なくとも一方に付与する潤滑剤の製造方法、ないしは、滑り軸受装置の軸受部材ないしは軸部材の少なくとも一方の滑り面に付与する潤滑剤の製造方法、ないしは、含油軸受装置に用いる焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤の製造方法 |
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