JP6395248B2 - 微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材の製造方法 - Google Patents
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また、鱗片状の基材の表面を金属酸化物で被覆する方法は、金属アルコキシドを原料として用い、金属アルコキシドを加水分解して縮重合させたゾルとし、さらにゾルの水分を取り除いてゲルとし、このゲルを熱処理して金属酸化物の微粒子を析出させるゾル・ゲル法が用いられている。析出した金属酸化物の微粒子が堆積して金属酸化物の被膜を形成するため、析出した金属酸化物の微粒子同士が互いに結合せず、金属酸化物の被膜に機械的応力ないしは熱的応力が加わると、金属酸化物の微粒子は容易に剥離する。
また、5段落で説明したように、金属被膜で覆われた鱗片状基材は、無電解メッキ法による問題点を持ち、金属酸化物で覆われた鱗片状基材は、ゾル・ゲル法による問題点を持つ。これらの鱗片状基材をフィラーとし、バインダーである高分子材料の結合によって、鱗片状基材を結合すると、前記した高分子材料の性質に依る制約がもたらされる。
いっぽう、鱗片状基材は、無機物、金属酸化物、金属あるいは合金などの多種多様の材質からなり、さらに、多種多様な形状と粒度分布を有する。このため、鱗片状基材の全般について、材質や形状や粒度分布に係わらず、金属、合金、複合金属ないしは金属酸化物などの微粒子の集まりで鱗片状基材を覆うことができれば、微粒子の集まりが占める体積は、鱗片状基材の体積より著しく小さいため、鱗片状基材の性質を犠牲にすることなく、微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材が実現できる。さらに、熱処理や、圧縮、圧延といった熱的、機械的応力を伴う加工が可能になる。また、微粒子の材質と大きさとに基づく性質を新たに持つ。しかしながら、このような試みはこれまでのところ全くない。
従って、第一に、鱗片状基材の材質や形状や粒度分布に係わらず、微粒子の集まりが鱗片状基材を覆う。第二に、安価な材料を用いて安価な製造費用で、微粒子の集まりが鱗片状基材を覆う。第三に、連続した処理で大量の鱗片状基材が微粒子の集まりで覆われる。第四に、鱗片状基材が、微粒子を構成する金属、合金、複合金属ないしは金属酸化物などの多様な性質を持つ。第五に、微粒子同士が互いに結合し、微粒子が鱗片状基材の表面から剥がれない。これら5つの要件を兼備して微粒子の集まりが鱗片状基材を覆えば、従来における塗料用顔料や導電性フィラーが安価に製造でき、また、鱗片状基材は微粒子の性質を長期にわたって保持できる。さらに、熱処理や圧縮、圧延などの熱的、機械的応力を伴う加工が鱗片状基材に加えられる。また、金属、合金、複合金属ないしは金属酸化物などの多種多様な性質を持つ鱗片状基材が新たな用途に適応できる。本発明における解決しようとする課題は、前記した5つの要件を兼備する鱗片状基材を実現することにある。
熱処理で金属を析出する第一の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、該アルコール分散液に鱗片状基材の集まりを投入して第一の懸濁液を作成する第二の工程と、該第一の懸濁液を昇温してアルコールを気化させ、前記鱗片状基材の表面が前記第一の金属化合物で覆われた第一の処理基材を作成する第三の工程と、前記第一の金属化合物が金属を析出する温度より高い温度で金属酸化物を析出する第二の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第四の工程と、該アルコール分散液に前記第一の処理基材の集まりを投入して第二の懸濁液を作成する第五の工程と、該第二の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、前記第一の処理基材が前記第二の金属化合物で覆われた第二の処理基材を作成する第六の工程と、該第二の処理基材の集まりを、前記第一の金属化合物を熱分解する熱処理と、前記第二の金属化合物を熱分解する熱処理とからなる2回の熱処理を連続して行う第七の工程とからなり、これら7つの工程を連続して実施することで、金属結合した金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりが製造される、金属結合した金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりを製造する製造方法である。
すなわち、本製造方法は、熱処理で金属を析出する第一の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、アルコール分散液に鱗片状基材の集まりを投入して第一の懸濁液を作成する第二の工程と、該第一の懸濁液を昇温してアルコールを気化させ、鱗片状基材の表面が第一の金属化合物で覆われた第一の処理基材を作成する第三の工程と、第一の金属化合物が金属を析出する温度より高い温度で金属酸化物を析出する第二の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第四の工程と、該アルコール分散液に第一の処理基材の集まりを投入して第二の懸濁液を作成する第五の工程と、該第二の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、第一の処理基材が第二の金属化合物で覆われた第二の処理基材を作成する第六の工程と、該第二の処理基材の集まりを、前記第一の金属化合物を熱分解する熱処理と、前記第二の金属化合物を熱分解する熱処理とからなる2回の熱処理を連続して行う第七の工程とからなり、これら7つの工程を連続して実施することで、金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりが製造される製造方法である。
つまり、本製造方法に依れば、極めて簡単な7つの処理を連続して実施することで、金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造によって覆われた鱗片状基材の集まりが大量に製造される。すなわち、第一の工程と第四の工程とは、金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程と第五の工程とは、アルコール分散液に、鱗片状基材の集まりないしは第一処理基材の集まりを投入するだけの処理である。第三の工程と第六の工程とは、アルコールを気化させるだけの処理である。第七の工程は、2種類の金属化合物を連続した2回の熱処理で熱分解するだけの処理である。このような極めて簡単な7つの処理を連続して実施することで、金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた新たな鱗片状基材の集まりが、大量にかつ安価に製造できる。
すなわち、第一の金属化合物のアルコール分散液に、鱗片状基材の集まりを投入して懸濁液を作成し、アルコールを気化させれば、鱗片状基材の材質や粒度分布に係わらず、鱗片状基材は第一の金属化合物で均一に覆われる。同様に、第二の金属化合物のアルコール分散液に、第一の金属化合物で覆われた鱗片状基材の集まりを投入し、アルコールを気化させれば、第一の金属化合物で覆われた鱗片状基材は、その表面を第二の金属化合物で覆われる。この結果、鱗片状基材は、鱗片状基材の材質や形状や粒度分布に係わらず、2種類の金属化合物の被膜からなる2重構造で覆われる。
つまり、金属化合物がアルコールに分散できる分散濃度は、重量割合で10%程度までである。このため、第二の金属化合物のアルコール分散液に、第一の金属化合物の被膜で覆われた鱗片状基材の集まりを投入しても、第一の金属化合物がアルコールに再度分散することはない。従って、第一の金属化合物で覆われた鱗片状基材の集まりを、第二の金属化合物のアルコール分散液に投入し、この後、アルコールを気化すれば、鱗片状基材は2種類の金属化合物の被膜からなる2重構造で覆われる。
さらに、鱗片状基材の集まりに対し2回の熱処理を連続して実施する。第一の熱処理で第一の金属化合物を熱分解させ、第二の熱処理で第二の金属化合物を熱分解させる。つまり、熱分解温度が低い第一の金属化合物が、鱗片状基材の表面で優先して熱分解を始め、有機物ないしは無機物と金属(分子クラスターの状態にある)とに分離し、比重が大きい金属は鱗片状基材の表面に留まり、比重が小さい有機物ないしは無機物は金属の上に移動する。従って、有機物ないしは無機物の上に第二の金属化合物の被膜が存在する。さらに温度が上がると、気化熱を奪って有機物ないしは無機物が気化し、第二の金属化合物の被膜を貫通して蒸発する。有機物ないしは無機物の気化が完了すると、金属は熱エネルギーを得て粒状の微粒子を形成して安定化し、熱分解を終える。この際、析出した金属が不純物を持たない活性状態にあるため、粒状の金属微粒子を形成して安定化する際に、金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合して金属微粒子の集まりを形成する。さらに温度が上がると、熱分解温度が高い第二の金属化合物の熱分解が始まり、有機物と金属酸化物とに分離し、有機物が気化熱を奪って気化し、有機物の気化が完了すると、金属酸化物は熱エネルギーを得て粒状の微粒子を形成して安定化し、熱分解を終える。こうして、鱗片状基材の材質や形状や粒度分布に係わらず、鱗片状基材が、金属結合した金属微粒子の集まりと、金属酸化物の微粒子の集まりからなる微粒子の2重構造で覆われる。
なお、第一の金属化合物の熱分解で析出する粒状の金属微粒子は、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりが鱗片状基材を覆う。いっぽう、金属酸化物の微粒子の集まりが、金属微粒子の集まりの表面を覆わなければ、鱗片状基材同士が金属結合した金属微粒子の集まりを介して結合する。つまり、金属酸化物の微粒子同士は結合しないため、金属酸化物の微粒子で覆われた鱗片状基材同士は結合しない。従って、鱗片状基材の表面を金属微粒子と金属酸化物の微粒子とからなる微粒子の2重構造で覆うと、鱗片状基材同士の結合が回避できる。
つまり、2種類の金属化合物の熱分解温度が異なるため、金属微粒子と金属酸化物微粒子との境界面において、金属微粒子と金属酸化物微粒子が互いに反応せず、金属微粒子と金属酸化物微粒子とは結合しない。また、金属酸化物は酸化物であるため、互いに金属結合、共有結合ないしはイオン結合しない。いっぽう、粒状の金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりが鱗片状基材を覆う。
また、鱗片状基材の材質や形状や粒度分布に係わらず、微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりが、一度に大量に製造できる。また、鱗片状基材は2種類の金属化合物が熱分解する温度以上の耐熱性を持つため、金属化合物の熱分解で鱗片状基材の性質が不可逆変化することはない。さらに、鱗片状基材の表面の前処理が不要になる。また、安価な材料である2種類の金属化合物を熱処理するだけの極めて簡単な処理であり、製造費用は極めて安価で済む。さらに、この鱗片状基材は、金属の性質と金属酸化物の性質と、微粒子の大きさに基づく固有の性質とを持つ。この結果、本製造方法に依れば、7段落で説明した5つの要件を満たす新たな鱗片状基材の集まりが製造される。
このような鱗片状基材の集まりを塗料の顔料に用いる場合は、鱗片状基材が容易に塗料に分散し、この塗料は、金属微粒子の性質が長期にわたって保持できる作用効果を持つ。導電性フィラーとして用いる場合は、鱗片状基材が容易に導電性ペーストに分散し、この導電性ペーストは、金属微粒子の性質が長期にわたって保持できる作用効果を持つ。
さらに塗料の顔料に用いる場合は、鱗片状基材が10−100nmの大きさの範囲からなる粒状の金属微粒子で覆われるため、鱗片状基材の表面は可視光線の波長より短い10−100nmの大きさの範囲からなる凹凸が形成され、光の白色散乱が殆どなく、染料並みの彩度と透明性を持つ顔料として作用する。また、微粒子の集まりの厚みが、可視光線の波長の1/4ないしはその整数倍であれば、金属微粒子の表面での反射光と鱗片状基材の表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、その波長の色調が強い反射光となる。いっぽう、金属微粒子の厚みは、鱗片状基材に吸着した金属化合物の量によって自在に変えられるため、強い反射光となる色調を自在に変えられる。さらに、鱗片状基材の材質と金属の材質との組み合わせによって、鱗片状基材が発する色調を様々な色調に変えることができる。ちなみに、可視光線に相当する電磁波の波長は、380−750nmである。
いっぽう、導電性フィラーに用いる場合は、金属微粒子同士が金属結合で結合されるため、電気導電と熱伝導との経路が金属微粒子に形成され、優れた電気導電と熱伝導とを兼ねるため、導電性フィラーの充填率を従来の導電性フィラーに比べて下げても、導電性が確保できるため、導電性ペーストが安価に製造できる作用効果をもたらす。
さらに、ガラス、マイカ、シリカなどの絶縁性の金属酸化物からなる鱗片状基材を金属微粒子の集まりで覆うと、鱗片状基材は金属の導電性と熱伝導性の性質持ち、金属からなる鱗片状基材に比べて重量低減の効果がもたらされる。例えば、鉛ガラスを除くガラスの密度は2.2−2.6g/cm3であり、銅の密度は8.96g/cm3であり、銀の密度は10.49g/cm3である。このため、銅ないしは銀の微粒子で覆われたガラスフレークは銅ないしは銀の性質を持つが、銅粉ないしは銀粉より重量が低減するため、塗料の顔料に用いる場合は塗料における顔料の分散性が向上し、導電性フィラーに用いる場合は導電性ペーストにおける導電性フィラーの分散性が向上する。
以上説明したように、本製造方法に依れば、13段落で説明した微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりに負荷を加えるだけで、金属微粒子で覆われた鱗片状基材が製造できる。この結果、7段落で説明した5つの要件を満たす鱗片状基材が製造される。
すなわち、本製造方法は、14段落に記載した製造方法で製造した鱗片状基材を用い、熱処理で新たな金属を析出する第一の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、該アルコール分散液に前記鱗片状基材の集まりを投入して第一の懸濁液を作成する第二の工程と、該第一の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、前記鱗片状基材の表面が前記第一の金属化合物で覆われた第一の処理基材を作成する第三の工程と、前記第一の金属化合物が金属を析出する熱処理温度より高い熱処理温度で金属酸化物を析出する第二の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第四の工程と、該アルコール分散液に前記第一の処理基材の集まりを投入して第二の懸濁液を作成する第五の工程と、該第二の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、前記第一の処理基材が前記第二の金属化合物で覆われた第二の処理基材を作成する第六の工程と、該第二の処理基材の集まりを、前記第一の金属化合物が熱分解される第一の熱処理と、前記第二の金属化合物が熱分解される第二の熱処理とからなる2回の熱処理を連続して行う第七の工程とからなり、これら7つの工程を連続して実施することで、複合金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりが製造される製造方法である。つまり、本製造方法に依れば、14段落に記載した製造方法で製造した鱗片状基材を用い、極めて簡単な7つの処理を連続して実施することで、複合金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりが大量に製造される。すなわち、第一と第四の工程とは、金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程と第五の工程とは、アルコール分散液に、鱗片状基材の集まりないしは第一処理基材の集まりを投入するだけの処理である。第三の工程と第六の工程とは、アルコールを気化させるだけの処理である。第七の工程は、2種類の金属化合物を連続した2回の熱処理で熱分解させるだけの処理である。このような極めて簡単な7つの処理を連続して実施することで、複合金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた新たな鱗片状基材の集まりが、大量にかつ安価に製造できる。
つまり、第一の金属化合物が熱分解して、新たな金属を析出する際に、鱗片状基材を覆った金属結合した金属微粒子の集まりが、新たに析出する金属の核となって、すでに形成された金属結合した金属微粒子の表面に新たな金属が析出し、新たな金属が金属結合した金属微粒子の集まりが、すでに形成された金属結合した金属微粒子の集まりと共に、複合金属微粒子の集まりを形成する。さらに温度が上がると、金属酸化物を析出する金属化合物が熱分解し、金属酸化物の微粒子が、複合金属微粒子の集まりの表面に析出する。この結果、鱗片状基材は、複合金属と金属酸化物とからなる微粒子の2重構造で覆われる。
以上に説明したように、本製造方法に依れば、13段落で説明した事例と同様に、鱗片状基材の全般について、粉体の材質や形状や粒度分布に係わらず、複合金属微粒子と金属酸化物微粒子との微粒子の2重構造で覆われた新たな鱗片状基材の集まりが一度に大量に製造できる。また、安価な材料である2種類の金属化合物を熱処理するだけの極めて簡単な処理であり、さらに、鱗片状基材の前処理が不要になるため、製造費用は極めて安価で済む。さらに、この鱗片状基材は、複合金属の性質と金属酸化物の性質と、さらに、微粒子の大きさに基づく固有の性質を持つ。この結果、本製造方法に依れば、7段落で説明した5つの要件を満たす新たな鱗片状基材の集まりが製造される。
例えば、塗料用顔料に用いる場合は、15段落で説明した事例と同様に、鱗片状基材が10−100nmの大きさの範囲からなる粒状の複合金属微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく、染料並みの彩度と透明性を持つようになる。また、複合金属微粒子の集まりの厚みに応じて、複合金属微粒子の集まりの表面での反射光と鱗片状基材の表面での反射光とが干渉して増幅され、その波長の色調が強い反射光となる。いっぽう、複合金属微粒子の厚みは、鱗片状基材に吸着した複数種類の金属化合物の量によって自在に変えられるため、強い反射光となる色調を自在に変えられる。また、複合金微粒子を構成する金属の種類と組成割合とによって、さらに、鱗片状基材の材質と複合金属微粒子の材質の組み合わせによって、鱗片状基材の色調は、様々な色調に変えることができる。
また、導電性フィラーとして用いる場合は、例えば、金属微粒子を銅で構成し、この銅微粒子の表面に銀を析出して、銅と銀とからなる複合微粒子の集まりで鱗片状基材を覆えば、銀微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材に比べ、マイグレーションが起こりにくく、ハンダ食われ性が優れる導電性フィラーとなり、さらに、より安価な製造費用で製造できる。このように、導電性フィラーの用途に応じて、複合金属微粒子の組成と組成割合を自在に変え、複合金属固有の性質を導電性フィラーに付与することができる。
以上に説明したように、本製造方法に依れば、17段落で説明した微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりに負荷を加えるだけで、様々な金属の組み合わせと組成割合からなる複合金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材が製造できる。これによって、鱗片状基材は、複合金属固有の性質と、微粒子の大きさに基づく固有の性質とを持つ。この結果、7段落で説明した5つの要件を満たす新たな鱗片状基材が製造される。
すなわち、本製造方法は、熱処理で複数種類の金属を同時に析出する複数種類の金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、該アルコール分散液に鱗片状基材の集まりを投入して第一の懸濁液を作成する第二の工程と、該第一の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、前記鱗片状基材が前記複数種類の金属化合物で覆われた第一の処理基材を作成する第三の工程と、前記複数種類の金属化合物が複数種類の金属を同時に析出する熱処理温度より高い熱処理温度で金属酸化物を析出する第二の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第四の工程と、該アルコール分散液に前記第一の処理基材の集まりを投入して第二の懸濁液を作成する第五の工程と、該第二の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、前記第一の処理基材が前記第二の金属化合物で覆われた第二の処理基材を作成する第六の工程と、該第二の処理基材の集まりを、前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解される第一の熱処理と、前記第二の金属化合物が熱分解される第二の熱処理とからなる2回の熱処理を連続して行う第七の工程とからなり、これら7つの工程を連続して実施することで、合金微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われる新たな鱗片状基材の集まりが製造される製造方法である。つまり、本製造方法に依れば、極めて簡単な7つの処理を連続して実施することで、合金微粒子集まりと金属酸化物微粒子の集まりからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりが大量に製造される。すなわち、第一の工程と第四の工程とは、複数種類の金属化合物を、ないしは、第二の金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程と第五の工程とは、アルコール分散液に鱗片状基材の集まり、ないしは、第一処理基材の集まりを投入するだけの処理である。第三の工程と第六の工程とは、アルコールを気化させるだけの処理である。第七の工程は、複数種類の金属化合物と第二の金属化合物を連続した2回の熱処理で熱分解するだけの処理である。このような極めて簡単な7つの処理を連続して実施することで、合金微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた新たな性質を持つ鱗片状基材の集まりが、大量にかつ安価に製造できる。
つまり、複数種類の金属化合物が同時に熱分解する際に、金属化合物のモル濃度に応じた複数種類の金属が同時に析出し、析出した複数種類の金属が不純物を持たない活性状態にあるため、モル濃度に応じた金属の組成からなる粒状の合金微粒子を形成して安定化し熱分解を終える。この合金微粒子は互いに接触する部位で金属結合して合金微粒子の集まりを形成し、鱗片状基材の表面を覆う。
以上に説明したように、本製造方法に依れば、鱗片状基材の全般について、粉体の材質や形状や粒度分布に係わらず、合金微粒子と金属酸化物微粒子との2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりが一度に大量に製造できる。また、安価な材料である2種類の金属化合物を熱処理するだけの極めて簡単な処理であり、鱗片状基材の前処理が不要になるため、製造費用は極めて安価で済む。この鱗片状基材は、合金の性質と金属酸化物の性質とを有し、さらに、微粒子の大きさに基づく固有の性質を有する。この結果、本製造方法に依れば、7段落で説明した5つの要件を満たす新たな鱗片状基材の集まりが製造される。
この合金微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材は、15段落で説明した金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材とは異なる性質、例えば、金属微粒子より耐酸化性と耐食性とに優れる。このため、耐酸化性や耐食性に優れた塗料用顔料や導電性フィラーとなる。
また、この鱗片状基材を塗料用顔料に用いる場合は、15段落と19段落で説明した場合と同様に、鱗片状基材が10−100nmの大きさの範囲からなる粒状の合金微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく、染料並みの彩度と透明性を持つ。また、合金微粒子の集まりの厚みに応じて、合金微粒子の集まりの表面での反射光と鱗片状基材の表面での反射光とが干渉して増幅され、その波長の色調が強い反射光となる。いっぽう、合金微粒子の厚みは、鱗片状基材に吸着した複数種類の金属化合物の量によって自在に変えられ、強い反射光となる色調を自在に変えられる。さらに、鱗片状基材が発する色調は、鱗片状基材の材質と合金の材質との組み合わせによって、様々な色調に変えられる。
いっぽう、導電性フィラーとして用いる場合は、合金微粒子同士が金属結合するため、電気導電と熱伝導との連続した経路を合金微粒子が形成し、優れた電気導電性と熱伝導性とを兼ね、かつ、耐酸化性や耐食性に優れた導電性フィラーになる。また、導電性フィラーの充填率を従来の導電性フィラーに比べて下げても、導電性が確保できるため、導電性ペーストが安価に製造できる作用効果をもたらす。
以上に説明したように、本製造方法に依れば、21段落で説明した微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりに負荷を加えるだけで、様々な金属の組み合わせと組成割合からなる合金微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材が製造できる。この鱗片状基材は、合金微粒子固有の性質と、微粒子の大きさに基づく固有の性質を有する。この結果、7段落で説明した5つの要件を満たす新たな鱗片状基材が製造される。
つまり、カルボン酸金属化合物がアルコールに分散された分散液に、鱗片状基材の集まりを浸漬し、アルコールを気化させた後に、鱗片状基材の集まりを大気雰囲気で熱処理する。この際、カルボン酸金属化合物のカルボン酸の沸点に応じて、290−400℃の温度範囲でカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属微粒子が析出する。この結果、鱗片状基材は金属微粒子の集まりで覆われ、新たに金属微粒子の性質を持つことになる。なお、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度は、鱗片状基材の耐熱温度より低いため、カルボン酸金属化合物が熱分解しても、鱗片状基材の性質は不可逆変化しない。さらに、鱗片状基材はカルボン酸金属化合物で覆われるため、カルボン酸金属化合物の熱分解時に、大気中の酸素が鱗片状基材に供給されず、鱗片状基材が酸化されやすい金属であっても鱗片状基材は酸化されない。
すなわち、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物は、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超える温度で、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の沸点に応じた290−400℃の温度範囲で全てのカルボン酸が気化して金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物としてオクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物など飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物がある。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物が析出する。例えば、カルボン酸銅がオレイン酸銅の場合は、酸化銅Cu2Oと酸化銅CuOとが同時に析出し、銅に還元するための処理費用を要する。中でも、酸化銅Cu2Oは、酸素ガスの割合が大気雰囲気よりリッチな雰囲気で、一度酸化銅CuOに酸化させた後に、再度、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、還元処理の費用がさらにかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、さらに、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。このため、安価なカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱分解するだけで、鱗片状基材の表面が様々な金属からなる金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の性質を持つ鱗片状基材が安価に製造できる。
つまり、このような無機塩がアルコールに分散された分散液に、鱗片状基材の集まりを浸漬し、この鱗片状基材の集まりを還元雰囲気で熱処理する。アルコールを気化させた後に、200℃前後の温度で無機塩が熱分解し、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属微粒子の集まりが析出する。この熱分解温度は、25段落で説明したカルボン酸金属化合物より著しく低いため、熱処理費用が安価で済む。この結果、鱗片状基材は、金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の性質を持つ。
すなわち、無機物の分子ないしはイオンが配位子になって金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機塩を還元雰囲気で熱処理すると、最初に配位結合部が分断され、無機物と金属とに分解する。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了して金属が析出する。つまり無機塩を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きいため、無機塩の分子構造の上で金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、無機塩を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物の気化が完了して金属が析出する。
また、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が金属イオンに配位結合する金属錯イオンは、他の金属錯イオンに比べて合成が容易である。こうした金属錯イオンとして、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオン、水H2Oが配位子となって金属イオンに配位結合するアクア金属錯イオン、水酸基OH−が配位子となって金属イオンに配位結合するヒドロキソ金属錯イオン、塩素イオンCl−ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオン、シアノ基CN−が配位子となって金属イオンに配位結合するシアノ金属錯イオンなどがある。さらに、このような金属錯イオンを有する水素化合物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの無機塩は、無機塩の分子量が小さいため、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了し金属を析出する。この金属が析出する温度は、金属錯イオンを有する金属錯塩が熱分解で金属を析出する温度の中で最も低い。従って、このような無機塩は、金属錯イオンを有する金属錯塩の中で最も安価であり、熱分解温度が最も低い。このため、25段落で説明したカルボン酸金属化合物の熱分解では析出しない金属からなる、付加価値の高い性質を持つ鱗片状基材が、安価な製造費用で製造できる。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、最も大きいイオン半径を有する金属イオンに配位子イオンである酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンと配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物と、飽和脂肪酸からなるカルボン酸とに分解する。さらに昇温されると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に金属酸化物が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。
このようなカルボン酸金属化合物を、金属結合した金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材の表面に吸着させ、カルボン酸金属化合物を熱分解させると、10−100nmの大きさの範囲に入る粒状の金属酸化物の微粒子が、金属微粒子の表面に一斉に析出する。これによって、鱗片状基材は金属微粒子と金属酸化物の微粒子とからなる微粒子の2層構造で覆われる。
さらに、こうしたカルボン酸金属化合物は、いずれも容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させることで、カルボン酸金属化合物が合成される。原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であるため、大気雰囲気においては400℃より低い熱処理温度で金属酸化物の微粒子が析出する。このため、安価なカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱分解するだけで、鱗片状基材の表面が様々な金属酸化物の微粒子の集まりで覆われ、金属酸化物の微粒子の性質を持つ鱗片状基材が安価に製造できる。
すなわち、複数種類のカルボン酸金属化合物をアルコールに分散し、この分散液に鱗片状基材の集まりを浸漬し、アルコールを気化させた後に、鱗片状基材の集まりを大気雰囲気で熱処理する。この際、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点に応じて、290−400℃の温度範囲で複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解し、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の合金微粒子の集まりが析出する。この結果、鱗片状基材は、様々な組成と組成割合からなる合金属微粒子の集まりで覆われ、鱗片状基材は、15段落で説明した金属より酸化ないしは腐食しにくい合金微粒子の性質を持つ。
つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸金属化合物が同一のカルボン酸から構成されるため、カルボン酸の沸点を超えると、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時にカルボン酸と金属とに分離し、更に昇温すると、カルボン酸の気化がカルボン酸の沸点に応じた290−400℃の温度範囲で完了し、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出する。これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属から構成され、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じた組成割合からなる合金を生成して熱分解を終える。このため、安価な複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱分解するだけで様々な合金が生成され、合金微粒子の性質を持つ鱗片状基材が安価に製造できる。
本実施形態は、鱗片状基材の表面に金属微粒子を析出する原料に係わる第一の実施形態である。本発明における金属微粒子を製造する原理は、13段落で説明したように、第一に金属微粒子の原料を鱗片状基材の表面に吸着させる。第二に吸着した原料を鱗片状基材の表面で金属微粒子の集まりに変化させる。
金属微粒子の原料が鱗片状基材に吸着するには原料が液相化され、液相化された原料に鱗片状基材の集まりを投入し、液相化された原料における液体を蒸発させると、原料が鱗片状基材の表面に吸着する。従って、金属微粒子の原料は液相化しなければならない。
ここで、金属を銅とし、銅化合物を例として説明する。塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などの無機銅化合物は、液相化された無機銅化合物中に銅イオンが溶出してしまい、多くの銅イオンが銅微粒子の析出に参加できない。従って、銅化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質を持つことが必要になる。また、アルコールなどの汎用的な有機溶剤に分散できれば、銅化合物が溶剤中に均一に分散し、この分散液に鱗片状基材を投入し、アルコールを気化させれば、鱗片状基材の表面に銅化合物が均一に吸着する。酸化銅、水酸化銅、炭酸銅などの無機銅化合物はアルコールに分散しない。このため、鱗片状基材の表面に吸着する銅化合物は、無機銅化合物ではなく有機銅化合物が望ましい。
次に、有機銅化合物は、鱗片状基材の表面で銅微粒子の集まりに変化しなければならない。つまり、有機銅化合物から銅が生成される化学反応が、鱗片状基材の表面で起こる必要がある。有機銅化合物から銅が生成される化学反応の中で、最も簡単な処理による化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機銅化合物を昇温するだけで、有機銅化合物が熱分解して銅が析出する。さらに、有機銅化合物の合成が容易でれば、有機銅化合物を安価に製造できる。こうした性質を兼ね備える有機銅化合物にカルボン酸銅がある。つまり、カルボン酸銅を構成するイオンの中で、最も大きいイオンは銅イオンである。従って、カルボン酸銅におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、銅イオンと共有結合すれば、銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの距離が、カルボン酸銅の中で最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸銅を昇温させると、カルボン酸の沸点において、カルボン酸と銅とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に銅が析出する。また、カルボン酸銅は合成が容易で、安価な有機銅化合物である。つまりカルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属が生成される。このカルボン酸アルカリ金属を、硫酸銅などの無機銅化合物と反応させると、カルボン酸銅が生成される。なお、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になり、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅が熱分解すると、複数種類の銅の酸化物が析出する。なお、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となって銅イオンに近づき、酸素イオンが銅イオンに配位結合するカルボン酸銅は、銅イオンと酸素イオンとの距離が短くなるため、熱分解によって酸化銅を生成する。
カルボン酸銅の組成式はRCOO−Cu−COORで表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCmHnである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸銅を構成する物質の中で、組成式の中央に存在する銅イオンCu2+が最も大きい物質になる。従って、銅イオンCu2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合する場合は、銅イオンCu2+と酸素イオンO−との距離が最大になる。この理由は、銅イオンCu2+の共有結合半径は112pmであり、酸素イオンO−の共有結合半径は63pmであり、炭素原子の共有結合半径は75pmであり、酸素原子の共有結合半径は57pmであることによる。このため、銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸銅は、カルボン酸の沸点において、結合距離が最も長い銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に切断され、銅とカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸銅を構成するカルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に銅が析出する。こうしたカルボン酸銅として、オクチル酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅などがある。
さらに、飽和脂肪酸の沸点が相対的に低ければ、カルボン酸銅は相対的に低い温度で熱分解し、銅微粒子の製造に関わる熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど飽和脂肪酸の沸点が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。従って、飽和脂肪酸の分子量が相対的に小さい飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅は、熱分解温度が相対的に低くなるので、銅微粒子の原料として望ましい。
また、飽和脂肪酸が分岐鎖構造を有する場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点が相対的に低くなる。このため、カルボン酸銅も相対的に低い温度で熱分解温度する。さらに、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、カルボン酸銅も極性を持ち、アルコールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このようなカルボン酸銅としてオクチル銅がある。すなわち、オクチル酸は構造式がCH3(CH2)3CH(C2H5)COOHで示され、CHでCH3(CH2)3とC2H5とのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、ラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、銅微粒子の原料として、オクチル酸銅が望ましい。オクチル酸銅は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了して銅が析出し、メタノールやn−ブタノールなどに10重量%まで分散する。
以上に説明したように、金属微粒子の原料は液相化できる有機金属化合物が望ましい。さらに、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物が望ましい。さらに、飽和脂肪酸から構成されるカルボン酸金属化合物が望ましい。さらに、直鎖が短い飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物が望ましい。さらに分岐鎖構造を有する直鎖が短い飽和脂肪酸からなるオクチル酸金属化合物が最も望ましい。
なお、合金の微粒子を製造する原料として、同一の飽和脂肪酸からなる複数種類のカルボン酸金属化合物を用いることができる。つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物が、同一の飽和脂肪酸から構成されるため、飽和脂肪酸の沸点で複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解し、飽和脂肪酸の気化が完了した後に、各々のカルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出する。この際、複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル濃度に応じた金属の組成からなる合金が生成される。
本実施形態は、鱗片状基材の表面に金属微粒子を析出する原料に係わる第二の実施形態であり、49段落で説明したカルボン酸金属化合物の熱分解では析出しない金属を析出する原料である。このような金属として、白金族元素の金属と銅を除く貴金属の金属などがある。こうし金属は存在が希少な金属であるため、金属化合物は49段落で説明したカルボン酸金属化合物より高価である。このため、鱗片状基材に付加価値の高い性質を付与する金属の原料として用いることが適している。以下の説明では、金微粒子を析出する原料を事例として説明する。
金微粒子を析出する原料も、49段落で説明した銅微粒子の原料と同様に、原料が分子状態で分散された分散液が望ましい。また分散液の分散媒体はアルコールが適している。つまり、アルコールは様々な沸点を有し、原料の熱分解温度より低い沸点を持つアルコールが選択でき、これによって、気化したアルコールが容易に回収できる。このため、原料は、アルコールに分散する性質と、金を析出する性質を持つことが必要になる。
金化合物から金が生成される化学反応の中で、最も簡単な処理による化学反応に還元雰囲気における熱分解反応がある。つまり、金化合物を昇温するだけで、金化合物が熱分解して金が析出する。さらに、金化合物の熱分解温度が、49段落で説明したカルボン酸金属化合物の熱分解温度より低ければ、熱処理費用も安価で済む。無機物の分子ないしはイオンが配位子となって、金イオンに配位結合する金錯イオンは、他の金錯イオンに比べて合成が容易な金錯イオンである。さらに、こうした金錯イオンを有する無機塩は、無機塩の分子量が小さければ、熱分解する温度は低い。つまり、金と無機物とに分解される温度が低く、さらに、分解された無機物が容易に気化する。従って、このような無機塩は、有機金属化合物より高価な物質であるが、より低い熱処理温度で金を析出する。
つまり、金錯イオンを有する金錯塩には多くの種類があり、有機物が配位子となって金イオンに配位結合する金錯イオンを有する金錯塩は、有機物の分子量が無機物に比べて大きいため、金と有機物に分解される温度が高く、さらに、有機物の気化に多くの熱エネルギーが必要になり、金が析出する温度は、無機物の分子ないしはイオンが配位子となって金イオンに配位結合する金錯イオンを有する金錯塩に比べて高い。また、配位子に酸素原子が含まれ、酸素原子が金イオンに共有結合する場合は、金酸化物を析出する。さらに金錯イオンの合成に多くの費用を要し、無機物の分子ないしはイオンが配位子となって金イオンに配位結合する金錯イオンに比べて製造費用が高い。さらに、金錯イオンを有する無機塩は、無機物の分子量が小さければ、金錯塩の中で最も低い温度で金属を析出する。
すなわち、無機物の分子ないしはイオンが配位子となって金イオンに配位結合する金錯イオンを構成する分子の中で、金イオンが最も大きい。ちなみに、金原子の共有結合半径は124pmであり、窒素原子の共有結合半径の71pmであり、酸素原子の共有結合半径は63pmである。このため、金錯イオンを有する金錯塩の分子構造において、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が金イオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、還元雰囲気の熱処理においては、最初に配位結合部が分断され、金と無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後に金が析出する。
さらに、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が金イオンに配位結合する金錯イオンの中で、塩素イオンCl−が配位子となって金イオンAu3+に配位結合するテトラクロロ金錯イオン[Au(Cl)4]−は最も容易に合成され、さらに、テトラクロロ金酸水素H[Au(Cl)4]は、金を王水に溶かすだけで、あるいは、塩化金AuCl3を塩酸に溶かして結晶化させるだけで容易に合成でき、かつ、分子量が最も小さい無機塩である。このテトラクロロ金酸水素は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、金属と無機物とに分解され、無機物の分子量が小さいため、200℃程度の低い温度で無機物の気化が完了して金が析出する。また、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くまで分散する。
以上に説明したように、無機物の分子ないしはイオンが配位子となって金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機塩からなる分子量が小さい金属錯塩は、合成が容易で、より低い温度で金属を析出する。従って、このような無機塩は、金属錯イオンを有する金属錯塩の中で最も安価であり、熱分解温度が最も低い。このため、付加価値の高い金属の性質を、安価な製造費用で鱗片状基材に付与できる原料になる。
本実施形態は、金属酸化物の微粒子を析出する原料に係わる実施形態である。以下の説明では、強磁性の性質を有する鉄の酸化物微粒子を析出する原料を説明する。
鉄の酸化物からなる微粒子を析出する原料も、49段落で説明した銅微粒子の原料と同様に、液相化できる性質を持つことが必要になり、有機鉄化合物が望ましい。
さらに、有機鉄化合物は、熱分解によって酸化鉄FeOを析出する性質を持つことが必要になる。つまり、酸化鉄FeOを大気中で昇温すると、酸化鉄FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+の半数が酸化して3価の鉄イオンFe3+になり、FeO・Fe2O3の組成式で表さられるマグネタイトFe3O4になる。マグネタイトFe3O4は、透磁率に優れた強磁性体で導電性の酸化物である。さらに大気中で昇温すると、2価の鉄イオンFe2+の全てが酸化されて3価の鉄イオンFe3+になり、酸化鉄Fe2O3のγ相であるマグへマイトγ−Fe2O3になる。マグへマイトγ−Fe2O3は、自発磁化を有する強磁性体で絶縁性の酸化物である。なお、有機鉄化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質は鉄イオンFe2+である。いっぽう、鉄イオンFe2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合するカルボン酸鉄は、鉄イオンと酸素イオンとの距離が最大になるため、49段落で説明した銅と同様に、熱分解で鉄を析出する。従って、熱分解によって酸化鉄FeOを析出する有機鉄化合物は、鉄イオンFe2+と結合する酸素イオンO−との距離が短く、酸素イオンO−が鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと結合する距離が長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。つまり、有機鉄化合物の熱分解が始まると、酸素イオンO−が鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、鉄イオンと結合した酸素イオン、つまり、酸化鉄FeOと有機酸とに分解する。このような分子構造上の特徴を持つ有機鉄化合物として、カルボキシル基を構成する酸素イオンO−が配位子になって鉄イオンFe2+に近づいて配位結合するカルボン酸鉄化合物がある。
また、有機金属化合物の中でカルボン酸金属化合物は、49段落で説明したように合成が容易で、有機酸の沸点が低いため熱分解温度が比較的低い。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、安価な化学薬品であり、熱処理費用も安価で済む。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などが挙げられる。なお、カルボン酸鉄においては、酢酸鉄とカプリル酸鉄と安息香酸鉄とは、酸素イオンが鉄イオンに近づいて配位結合して、複核錯塩を形成するが、熱分解の途上においては不安定な物質であるため取り扱いが難しい。従って、酸化鉄FeOを析出するカルボン酸鉄としては、ナフテン酸鉄が望ましい。さらに、ナフテン酸鉄はn−ブタノールに対して10重量%近くまで分散する。
本実施例は、15段落で説明した金属微粒子で覆われた鱗片状基材を製造する具体例であり、フレーク銅粉を鉄微粒子の集まりで覆う。なお、フレーク銅粉は、三井金属鉱山株式会社が製造する型番MA−C08JFを用いた。この銅フレーク粉は、比表面積が0.73m2/gで、粒度分布はD10が5.0ミクロンで、D50が11.9ミクロンで、D90が24.7ミクロンからなり、タップ密度が3.5g/cm3であり、表面処理がなされていない。鉄微粒子は不純物を含まない純鉄であるため、比透磁率が10万に近い優れた軟磁性材料である。鉄の原料は、オクチル酸鉄Fe(C7H15COO)3(例えば、日本化学産業株式会社の製品)を用いた。さらに、鉄微粒子の表面を覆う金属酸化物微粒子は酸化亜鉛で構成し、酸化亜鉛の原料は、ナフテン酸亜鉛(C11H7COO)2Zn(例えば、東栄化工株式会社の製品)を用いた。n−ブタノールは試薬1級品を用いた。
鉄微粒子の集まりで覆われたフレーク銅粉を製造する製作工程を図1に示す。最初に、オクチル酸鉄の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散した(S10工程)。この分散液を容器に入れ、フレーク銅粉300gを投入して撹拌した(S11工程)。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した(S12工程)。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散する(S13工程)。この分散液をフレーク銅粉の集まりが入った容器に入れて撹拌した(S14工程)。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した(S15工程)。さらに、容器を大気雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を290℃に昇温してオクチル酸鉄を熱分解した(S16工程)。さらに容器を大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した(S17工程)。この後、容器を加振機に設置して5分間容器に振動を加えた(S18工程)。最後に、容器内の試料を目合が33ミクロンからなるメッシュフィルターを3枚重ねたフィルターを通し、本実施例の試料を得た(S19工程)。なおメッシュフィルターを通過した酸化亜鉛ZnO微粒子は、ゴムや合成樹脂の添加物として利用するため回収した。
次に、製作した試料の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。最初に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子の集まりが約0.5ミクロンの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、試料からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。鉄原子のみが存在した。これらの結果から、鉄微粒子の集まりが0.5ミクロンの厚みを形成してフレーク銅粉を覆っていることが分かった。
さらに、直流抵抗計(例えば、鶴賀電気株式会社の直流抵抗計モデル356H)を用いて、試料の電気抵抗を測定した。試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、鉄に近い体積固有抵抗を示した。従って、本実施例で製作した試料は、内部は銅の導電性を示し、表層は鉄の強磁性を示す。このため、本実施例で製作した鉄微粒子の集まりで覆われた銅粉は、電磁波遮蔽シートの原料として用いることができる。
本実施例は、21段落で説明した合金微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材を製造する具体例であり、実施例1で用いたフレーク銅粉をパーマロイ微粒子で覆う。なおパーマロイの組成は、ニッケルが77.7%を占め、鉄が22.3%を占める割合からなり、鉄に対するニッケルの比率が3.48からなるパーマロイで、パーマロイの中でも大きな透磁率を持つ。このため、実施例1の純鉄よりさらに大きな透磁率を持ち、電磁波遮蔽シートとしては、実施例1より優れた電磁波の遮蔽性能を持つシートになる。また、パーマロイの原料となる鉄は実施例1のオクチル酸鉄を用い、ニッケルの原料はオクチル酸ニッケルNi(C7H15COO)2(例えば、日本化学産業株式会社の製品)を用いた。いずれもオクチル酸金属化合物であり、オクチル酸の沸点で同時に熱分解し、オクチル酸の気化が完了した後に、パーマロイが生成される。なおパーマロイ微粒子の表面は、実施例4と同様に酸化亜鉛ZnO微粒子で覆った。n−ブタノールは試薬1級品を用いた。
パーマロイ微粒子で覆われたフレーク銅粉を製造する製作工程を図2に示す。最初に、オクチル酸ニッケルの0.0777モルとオクチル酸鉄の0.0223モルとを秤量し、500ccのn−ブタノールに分散して撹拌した(S20工程)。この分散液を容器に入れ、フレーク銅粉300gを投入して撹拌した(S21工程)。次に、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した(S22工程)。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散した(S23工程)。この分散液を、銅粉の集まりが入った容器に入れて撹拌した(S24工程)。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した(S25工程)。さらに、容器を大気雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を290℃に昇温し、オクチル酸ニッケルとオクチル酸鉄とを同時に熱分解した(S26工程)。さらに、大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した(S27工程)。この後、容器を加振機に設置して5分間容器に振動を加えた(S28工程)。最後に、容器内の試料を目合が33ミクロンからなるメッシュフィルターを3枚重ねたフィルターを通し、本実施例の試料を得た(S29工程)。フィルターを通過した酸化亜鉛ZnO微粒子は回収した。
次に、前記の製法で製作した試料の表面と切断面とを、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.5ミクロンの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。さらに、試料からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。過剰のニッケル原子と鉄原子とが存在し、偏在する箇所が認められなかったので、微粒子はニッケル−鉄合金からなる。なお、オクチル酸ニッケルとオクチル酸鉄とをモル比率で77.7対22.3の割合で混合したため、ニッケル−鉄合金はニッケルが77.7%の割合を占めるパーマロイであると考える。これらの結果から、パーマロイの粒状微粒子の集まりが、0.5ミクロンの厚みを形成して銅粉を覆うことが分かった。
さらに、実施例1と同様に、直流抵抗計を用いて、試料の電気抵抗を測定した。試料の抵抗値は、ニッケルの2倍を超える体積固有抵抗を示した。
本実施例で製作した試料は、内部は銅の導電性を示し、表層はパーマロイの軟磁性を示す。このため、本実施例で製作したパーマロイ微粒子で覆われた銅粉は、電磁波遮蔽シートの原料として用いることができる。なお、従来のパーマロイの製法は、溶製材に依るため、高温の水素ガス雰囲気における焼鈍が必須な高価な材料である。本実施例では、溶製材に比べると著しく低い温度でパーマロイ微粒子が生成できるため、水素焼鈍が不要になる。従って本実施例で製作した試料は、安価な電磁波遮蔽シートの原料になる。
本実施例は、15段落で説明した金属微粒子で覆われた鱗片状基を製造する第二の具体例であり、ガラスフレーク粉を銀微粒子の集まりで覆う。本実施例では、日本板硝子株式会社が製造する品番RCF−600のガラスフレーク粉を用いた。このガラスフレーク粉は含アルカリガラス(Cガラスと呼ばれる)からなり、平均の厚みが5ミクロンで、1700−300ミクロンの大きさが80%以上で、150−45ミクロンの大きさが20%以下である粒度分布を持ち、中心粒度が600ミクロンである。銀の原料はオクチル酸銀Ag(C7H15COO)を用いた。なお、オクチル酸銀は市販されていないため、次の製法で新たに合成した。オクチル酸カリウム(例えば、東栄化工株式会社の製品)と硝酸銀(試薬1級品)とを反応させてオクチル酸銀を析出させ、この析出したオクチル酸銀を水洗してオクチル酸銀を得た。オクチル酸銀は、オクチル酸の沸点でオクチル酸と銀に熱分解し、オクチル酸の気化が完了した後に銀が析出する。なお、銀微粒子の表面は、実施例1と同様に酸化亜鉛ZnO微粒子で覆った。n−ブタノールは試薬1級品を用いた。
銀微粒子の集まりで覆われたガラスフレーク粉を製造する製作工程を説明する。なお、本実施例の製造工程は、実施例1における製作工程において、鉄微粒子が銀微粒子に置き換わり、フレーク銅粉がガラスフレーク粉に置き換わった類似した製造工程であるため、製造工程の図示は省略した。最初に、オクチル酸銀の0.1モルを500ccのn−ブタノールに分散した。この分散液を容器に入れ、ガラスフレーク粉100gを投入して撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散した。この分散液を、ガラスフレーク粉が入った容器に入れて撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、容器を大気雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を290℃に昇温してオクチル酸銀を熱分解した。さらに、大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した。この後、容器を加振機に設置し5分間容器に振動を加えた。最後に、容器内の試料を目合が45ミクロンからなるメッシュフィルターを通し、本実施例の試料を得た。なお、フィルターを通過した酸化亜鉛ZnO微粒子は回収した。
次に、製作した試料の表面と切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子の集まりが約0.5ミクロンの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、試料からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。銀原子のみが存在した。これらの結果から、銀微粒子の集まりが0.5ミクロンの厚みを形成してガラスフレーク粉を覆っていることが分かった。
さらに、実施例1と同様に直流抵抗計を用いて、試料の電気抵抗を測定した。試料の抵抗値は、銀に近い体積固有抵抗を示した。従って、本実施例で製作した試料は、金属元素の中で最も優れた熱伝導性と電気導電性を持ち、全ての可視光領域で最も高い反射率を持つ銀の性質を有するガラスフレーク粉となる。このため、本実施例で製作したガラスフレーク粉は、導電性ペーストの導電性フィラーとして用いることができる。
またガラスフレーク粉は、40−60nmの大きさの範囲からなる粒状の銀微粒子で覆われるため、表面は40−60nmの大きさの凹凸が形成され、光の白色散乱が殆どなく、彩度に優れた金属光沢を発した。また、0.5ミクロンの厚みからなる銀微粒子の集まりは、青緑色の可視光の波長に相当するため、銀微粒子の表面での反射光とガラスフレーク表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、青緑色の色調が相対的に強い反射光となった。この結果、本実施例で製作したガラスフレーク粉は、青緑色がかった彩度に優れた金属光沢を発する塗料用顔料として用いることができる。
本実施例は、21段落で説明した合金微粒子で覆われた鱗片状基材を製造する第二の具体例であり、銀と銅からなる合金微粒子の集まりでガラスフレーク粉を覆う。ガラスフレーク粉は、日本板硝子株式会社が製造する品番RCF−160を用いた。このガラスフレーク粉は、含アルカリガラスからなり、平均の厚みが5ミクロンで、1700−300ミクロンの大きさが10%以下で、300−150ミクロンの大きさが65%以上で、45ミクロンパスの大きさが5%以下で、中心粒度が160ミクロンである粒度分布を持つ。なお、合金微粒子は、銀にわずかな銅を含有させ、銀の熱伝導性と電気導電性と可視光の反射率とを犠牲にすることなく、銀の耐食性を向上させるため、銅の構成割合が5%とからなる95銀5銅の合金とした。銀の原料は実施例3で用いたオクチル酸銀とした。銅の原料はオクチル酸銅Cu(C 7 H 15 COO) 2 (例えば三津和薬品工業株式会社の製品)とした。いずれもオクチル酸金属化合物であるため、オクチル酸の沸点で同時に熱分解し、オクチル酸の気化が完了した後に銀−銅合金が生成される。なお、銀−銅合金微粒子の表面は、実施例1と同様に酸化亜鉛ZnO微粒子で覆った。n−ブタノールは試薬1級品を用いた。
銀−銅合金の微粒子で覆われたガラスフレーク粉を製造する製作工程を説明する。なお本実施例の製造工程は、実施例2における製作工程において、パーマロイ微粒子が銀−銅合金微粒子に置き換わり、フレーク銅粉がガラスフレーク粉に置き換わった類似した製造工程であるため、製造工程の図示は省略した。最初に、オクチル酸銀の0.095モルとオクチル酸銅の0.005モルとを秤量し、500ccのn−ブタノールに分散して撹拌した。この分散液を容器に入れ、ガラスフレーク粉80gを投入して撹拌した。次に、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散した。この分散液を、ガラスフレーク粉の集まりが入った容器に入れて撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、容器を大気雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を290℃に昇温してオクチル酸銀とオクチル酸銅とを同時に熱分解した。さらに、容器を大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した。この後、容器を加振機に設置して5分間容器に振動を加えた。最後に、容器内の試料を目合が41ミクロンからなるメッシュフィルターを通し、本実施例の試料を得た。なお、メッシュフィルターを通過した酸化亜鉛ZnO微粒子は回収した。
次に、製作した試料の表面と切断面とを、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.6ミクロンの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。さらに、試料からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。過剰の銀原子と僅かな銅原子とが存在し、偏在する箇所が認められなかったので、微粒子は銀−銅の合金からなる。なお、オクチル酸銀とオクチル酸銅とをモル比率で95対5の割合で混合したため、銀−銅合金は95対5の割合で構成される合金であると考える。これらの結果から、銀−銅合金の粒状微粒子の集まりが、0.6ミクロンの厚みを形成してガラスフレーク粉を覆うことが分かった。
さらに、実施例1と同様に直流抵抗計を用いて、試料の電気抵抗を測った。試料の抵抗値は、銀に近い体積固有抵抗を示した。従って、製作した試料は、銀に近い導電性と熱伝導性と可視光を反射するガラスフレーク粉となる。このため、本実施例で製作したガラスフレーク粉は、実施例3の銀微粒子の集まりで覆われたガラスフレークに比べ、耐久性が高い導電性フィラーや塗料用顔料として用いることができる。
また、ガラスフレーク粉は、40−60nmの大きさの範囲からなる粒状の合金微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく、彩度に優れた金属光沢を発した。また、0.6ミクロンの厚みからなる合金微粒子の集まりは、橙色の可視光の波長に相当するため、合金微粒子の表面での反射光とガラスフレーク表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、橙色の色調が相対的に強い反射光となった。この結果、ガラスフレーク粉は、橙色がかった彩度に優れた金属光沢を発する塗料用顔料として用いることができる。
本実施例は、15段落で説明した金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材を製造する第三の具体例であり、金微粒子の集まりでガラスフレーク粉を覆う。ガラスフレーク粉は実施例4のガラスフレーク粉を用いた。金の原料はテトラクロロ金酸水素H[Au(Cl)4](例えば、三津和薬品工業株式会社の製品)を用いた。金微粒子の表面は、実施例1と同様に酸化亜鉛ZnO微粒子で覆った。またn−ブタノールは試薬1級品を用いた。
金微粒子の集まりで覆われたガラスフレーク粉を製造する製作工程を説明する。なお、本実施例の製造工程は、実施例1における製作工程において、鉄微粒子が金微粒子に置き換わり、フレーク銅粉がガラスフレーク粉に置き換わった類似した製造工程であるため、製造工程の図示は省略した。最初に、テトラクロロ金酸水素の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散した。この分散液を容器に入れ、ガラスフレーク粉130gを投入して撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散し、この分散液を、ガラスフレーク粉の集まりが入った容器に入れて撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。この後、容器を水素ガス雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を180℃に昇温してテトラクロロ金酸水素を熱分解した。さらに、容器を大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した。この後、容器を加振機に設置して5分間容器に振動を加えた。最後に、容器内の試料を目合が41ミクロンのメッシュフィルターを通して本実施例の試料を得た。
次に、製作した試料の表面と切断面とを、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.65ミクロンの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていた。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。金原子のみが存在した。これらの結果から、金微粒子が0.65ミクロンの厚みでガラスフレーク粉を覆うことが分かった。
さらに、実施例1と同様に直流抵抗計を用いて試料の電気抵抗を測った。試料の抵抗値は、金に近い体積固有抵抗を示した。従って、本実施例で製作した試料は、金に近い導電性と熱伝導性を有するガラスフレーク粉となる。このため、本実施例で製作した金微粒子で覆われたガラスフレーク粉は、導電性ペーストの導電性フィラーや金属光沢の輝きを持つ塗料用顔料として用いることができる。
また、ガラスフレーク粉は、40−60nmの大きさの範囲からなる粒状の金微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく、彩度に優れたゴールドの輝きを発した。また、0.65ミクロンの厚みからなる金微粒子の集まりは、深紅色の可視光の波長に相当するため、金微粒子の表面での反射光とガラスフレーク表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、深紅の色調が相対的に強い反射光となった。このガラスフレーク粉は、深紅の色調が強調された彩度に優れた金属光沢を発する塗料用顔料として用いることができる。
本実施例は、ガラスフレーク粉を金微粒子で覆う第2の実施例で、金微粒子の厚みを実施例8の厚みより薄くした。ガラスフレーク粉は、実施例4で用いたガラスフレーク粉とした。金の原料は、実施例8で用いたテトラクロロ金酸水素とした。また、金微粒子の表面は、実施例1と同様に酸化亜鉛ZnO微粒子で覆った。
金微粒子の集まりで覆われたガラスフレーク粉を製造する製作工程を説明する。最初にテトラクロロ金酸水素の0.1モルを、1リットルのn−ブタノールに分散した。この分散液を容器に入れ、ガラスフレーク粉190gを浸漬して撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散し、この分散液を、ガラスフレーク粉が入った容器に入れて撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。この後、容器を水素ガス雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を180℃に昇温してテトラクロロ金酸水素を熱分解した。さらに、容器を大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した。この後、容器を加振機に設置して5分間容器に振動を加えた。最後に、容器内の試料を目合が41ミクロンからなるメッシュフィルターを通し、本実施例の試料を得た。
次に、製作した試料の表面と切断面とを、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.45ミクロンの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていた。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。金原子のみが存在した。従って、金微粒子の集まりが0.45ミクロンの厚みを形成してガラスフレーク粉を覆った。
さらに、実施例1と同様に直流抵抗計を用いて、試料の電気抵抗を測った。試料の抵抗値は、金に近い体積固有抵抗を示した。従って、本実施例で製作した試料は、金に近い導電性と熱伝導性を有するガラスフレーク粉となる。このため、本実施例で製作したガラスフレーク粉は、導電性フィラーや塗料用顔料として用いることができる。
また、ガラスフレーク粉は、40−60nmの大きさの範囲からなる粒状の金微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく、彩度に優れた輝きを発した。さらに、0.45ミクロンの厚みからなる金微粒子の集まりは、青色の可視光の波長に相当するため、金微粒子の表面での反射光とガラスフレーク粉表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、青の色調が相対的に強い反射光となった。この結果、ガラスフレーク粉は、青の色調が強調された彩度に優れた金属光沢を発する塗料用顔料として用いることができる。
本実施例と実施例5とは、いずれもガラスフレーク粉を金微粒子の集まりで覆った事例であり、金微粒子の厚みが異なるため、2つの事例における反射光の干渉現象が異なり、金微粒子の集まりで覆われたガラスフレーク粉が発する色調が異なった。いっぽう、塗料用顔料における色調は、第一に、鱗片状基材の材質に基づく色調と、第二に、金属微粒子を構成する金属元素に基づく色調と、第三に、金属微粒子の集まりの厚みに基づく反射光における干渉現象とからなる3つの要素によって色調が決まる。本発明においては、第一に、鱗片状基材の材質の如何に係わらず、鱗片状基材を金属微粒子で覆うことができ、第二に、金属微粒子を構成する金属元素に制約がなく、第三に、金属微粒子の厚みを自在に変えることができる。従って、前記した3つの要素を組み合わせることで、塗料用顔料の色調を自在に変えることができる。
本実施例は、15段落で説明した金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材を製造する第五の具体例であり、銅フレーク粉を金微粒子の集まりで覆う。銅フレーク粉は、三井金属鉱山株式会社が製造する型番MA−C08JFを用いた。この銅フレーク粉は、比表面積が0.73m2/gで、粒度分布のD10が5.0ミクロンで、D50が11.9ミクロンで、D90が24.7ミクロンからなり、タップ密度が3.5g/cm3であり、表面処理がなされていない。金の原料は実施例8で用いたテトラクロロ金酸水素である。また金微粒子の表面は、実施例1と同様に酸化亜鉛微粒子で覆った。n−ブタノールは試薬1級品を用いた。
金微粒子で覆われた銅フレーク粉を製造する製作工程を説明する。なお、本実施例の製造工程は、実施例1における製作工程において、鉄微粒子が金微粒子に置き換わった類似した製造工程であるため、製造工程の図示は省略した。最初に、テトラクロロ金酸水素の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散した。この分散液を容器に入れ、銅フレーク粉300gを投入して撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散し、この分散液を、銅レーク粉が入った容器に入れて撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。この後、容器を水素ガス雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を180℃に昇温してテトラクロロ金酸水素を熱分解した。さらに、容器を大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した。この後、容器を加振機に設置して5分間容器に振動を加えた。最後に容器内の試料を、目合が33ミクロンからなるメッシュフィルターを3枚重ねたフィルターを通過させ、本実施例における試料を得た。
次に、製作した試料の表面と切断面とを、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.45ミクロンの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。金原子のみが存在した。従って、金微粒子の集まりが、0.45ミクロンの厚みを形成して銅フレーク粉を覆った。
さらに、実施例1と同様に直流抵抗計を用いて、試料の電気抵抗を測った。試料の抵抗値は、金に近い体積固有抵抗を示した。従って、本実施例で製作した試料は、金に近い導電性と熱伝導性を有する銅フレーク粉となる。このため、金微粒子の集まりで覆われた銅フレーク粉は、導電性フィラーや塗料の顔料として用いることができる。
また、銅フレーク粉は、40−60nmの大きさの範囲からなる粒状の金微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく、彩度に優れた輝きを発した。また、0.45ミクロンの厚みの金微粒子の集まりは、青色の可視光の波長に相当するため、金微粒子の表面での反射光と銅フレーク粉表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、青の色調が相対的に強い反射光となる。この銅フレーク粉は、銅のフレーク粉の赤銅色の色調に青の色調が混合された彩度に優れた黄色に近い金属光沢を発する塗料用顔料として用いられる。
本実施例は、鱗片状基材として、実施例7における銅フレーク粉に替えて酸化鉄粉を用い、酸化鉄粉を金微粒子の集まりで覆う。なお、酸化鉄は酸化鉄Fe2O3のα相で、ヘマタイトないしは赤色酸化鉄と呼ばれ、化学式はα−Fe2O3で示される。融点が1566℃と高く、極めて安定した酸化物で、電気的には絶縁体で、弱強磁性という微弱な磁性を有する。粉体は赤褐色を示し、赤さびないしは弁柄として知られている。酸化鉄粉は、チタン工業株式会社が製造するAM−200を用いた。この鱗片状酸化鉄粉は光の屈折率が3に近い値を持ち、比表面積が1.5−2.2m2/gで、粒子径は2−50ミクロンであり、平均粒子径が12−15ミクロンであり、平均粒子の厚みが0.2−0.3ミクロンと薄く、嵩密度が0.3−0.4g/cm3である。金の原料は実施例8で用いたテトラクロロ金酸水素である。また、金微粒子の表面は、実施例1と同様に酸化亜鉛微粒子で覆った。n−ブタノールは試薬1級品を用いた。
金微粒子の集まりで覆われた鱗片状酸化鉄粉を製造する製作工程を説明する。なお、本実施例の製造工程は、実施例4における製作工程において、鉄微粒子が金微粒子に置き換わり、フレーク銅粉が酸化鉄粉に置き換わった類似した製造工程であるため、製造工程の図示は省略した。最初に、テトラクロロ金酸水素の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散した。この分散液を容器に入れ、鱗片状酸化鉄粉の450gを投入して撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散し、この分散液を酸化鉄粉が入った容器に入れて撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、容器を水素ガス雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を180℃に昇温してテトラクロロ金酸水素を熱分解した。容器を大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した。この後、容器を加振機に設置して5分間容器に振動を加えた。最後に、容器内の試料を、目合が33ミクロンからなるメッシュフィルターを5枚重ねたフィルターを通過させ、本実施例の試料を得た。
製作した試料の表面と切断面とを、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。試料断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.45ミクロンの厚みからなる多層構造を形成していた。次に反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。金原子のみが存在した。従って、金微粒子が0.45ミクロンの厚みを形成して鱗片状酸化鉄粉を覆った。
さらに、実施例1と同様に直流抵抗計を用いて、試料の電気抵抗を測った。試料の抵抗値は、金に近い体積固有抵抗を示した。従って、本実施例で製作した試料は、金に近い導電性と熱伝導性を有する鱗片状酸化鉄粉となる。このため、金微粒子の集まりで覆われた鱗片状酸化鉄粉は、導電性フィラーや塗料の顔料として用いることができる。
また、鱗片状酸化鉄粉は、40−60nmの大きさの範囲からなる粒状の金微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく、彩度に優れた輝きを発した。また、0.45ミクロンの厚みの金微粒子の集まりは、青色の可視光の波長に相当するため、金微粒子の表面での反射光と鱗片状酸化鉄粉表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、青の色調が相対的に強い反射光となる。この鱗片状酸化鉄粉は、鱗片状酸化鉄粉の赤褐色に青の色調が混合された彩度に優れた黄緑色の金属光沢を発する塗料用顔料として用いられる。
なお、塗料用顔料について説明すれば、実施例9−11の3つの実施例において、3種類の鱗片状基材を、同じ厚みからなる金微粒子の集まりで覆った。この結果、鱗片状基材の材質に応じて、金微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材が発する色調が変わった。いっぽう、塗料用顔料における色調は、実施例9の64段落で説明したように、鱗片状基材の材質に基づく色調と、金属微粒子を構成する金属元素に基づく色調と、金属微粒子の集まりの厚みに基づく反射光における干渉現象とからなる3つの要素によって色調が決まる。本発明は、鱗片状基材の材質の如何に係わらず、金属微粒子で覆うことができ、金属微粒子を構成する金属元素に制約がなく、金属微粒子の厚みを自在に変えることができる。従って、3つの要素を組み合わせることで、塗料用顔料の色調が自在に変えられる。
本実施例は、19段落で説明した複合金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材を製造する具体例であり、ガラスフレーク粉を金がコアを形成し、銅がシェルを形成する金と銅とからなる複合金属微粒子の集まりで覆う。ガラスフレーク粉は、実施例4におけるガラスフレーク粉を用いた。金の原料は実施例5で用いたテトラクロロ金酸水素である。銅の原料は、実施例4で用いたオクチル酸銅である。なお、複合金属微粒子の表面は、実施例1と同様に酸化亜鉛微粒子で覆った。また、n−ブタノールは試薬1級品を用いた。
複合金属微粒子で覆われたガラスフレーク粉の集まりを製造する製作工程を、図3に示す。最初に、実施例5に基づいて金微粒子で覆われたガラスフレーク粉を製作した(S30工程)。ただし、金の原料であるテトラクロロ金酸水素の0.08モルを、1リットルのn−ブタノールに分散した。次に、オクチル酸銅の0.02モルを100ccのn−ブタノールに分散した(S31工程)。この分散液が入った容器に、金微粒子で覆われたガラスフレーク粉を投入して撹拌した(S32工程)。この容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した(S33工程)。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散した(S34工程)。この分散液を、ガラスフレーク粉が入った容器に入れて撹拌した(S35工程)。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した(S36工程)。さらに、容器を大気雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を290℃に昇温してオクチル酸銅を熱分解した(S37工程)。次に、容器を大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した(S38工程)。この後、容器を加振機に設置して5分間容器に振動を加えた(S39工程)。最後に、容器内の試料を目合が41ミクロンからなるメッシュフィルターを通し、本実施例の試料を得た(S40工程)。
次に、製作した2種類の試料の表面と切断面とを、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。金微粒子で覆われたガラスフレーク粉の第一の試料と、金と銅とからなる複合金属微粒子で覆われたガラスフレーク粉の第二の試料との双方は、表面が40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、第一の試料の断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.36ミクロンの厚みを形成し、第二の試料の断面の画像から、粒状微粒子の集まりは0.45ミクロンの厚みを形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。第一及び第二の試料の双方とも濃淡が認められなかった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。第一の試料では金原子のみが存在し、第二の試料では銅原子のみが存在した。これらの結果から、第一の試料は金微粒子の集まりが0.36ミクロンの厚みを形成してガラスフレーク粉を覆い、第二の試料は金がコアを形成し、銅がシェルを形成する金と銅とからなる複合金属微粒子が、0.45ミクロンの厚みを形成してガラスフレーク粉を覆ったことが確認できた。
さらに、実施例1と同様に直流抵抗計を用いて、試料の電気抵抗を測った。第一の試料は金に近い体積固有抵抗を示し、第二の試料は金の抵抗値より低い値を示した。従って、本実施例で製作した金と銅とからなる複合金属微粒子の集まりで覆われたガラスフレーク粉は、導電性フィラーや塗料用顔料として用いることができる。
また、ガラスフレーク粉は、40−60nmの大きさの範囲からなる粒状の複合金属微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく、彩度に優れた輝きを発した。0.45ミクロンの厚みからなる複合金属微粒子の集まりは、青色の可視光の波長に相当するため、複合金属微粒子の表面での反射光とガラスフレーク粉表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、青の色調が相対的に強い反射光となる。さらに、金と銅とからなる複合金属微粒子は、金微粒子に比べると電子密度が少なく、銀微粒子に比べると電子密度が多い。このため、複合金属微粒子の色調は、金微粒子より短波長の色調を発し、銅微粒子より長波長の色調を発する。この結果、本実施例で製作したガラスフレーク粉は、藍色に近い深みのある彩度に優れた金属光沢を発する塗料用顔料として用いることができる。
本実施例は、実施例9における金と銅とからなる複合金属微粒子に対し、金がコアを形成し銀がシェルを形成する金と銀との複合金属微粒子によって、ガラスフレーク粉を覆う実施例である。ガラスフレーク粉は、実施例4におけるガラスフレーク粉を用いた。金の原料は実施例5で用いたテトラクロロ金酸水素である。銀の原料は実施例3で用いたオクチル酸銀である。なお、複合金属微粒子の表面は、実施例1と同様に酸化亜鉛微粒子で覆った。n−ブタノールは試薬1級品を用いた。
複合金属微粒子で覆われたガラスフレーク粉の集まりを製造する製作工程を説明する。なお、本実施例の製造工程は、実施例9における製作工程において、金と銅とからなる複合金属微粒子が、金と銀との複合金属微粒子に置き換わった類似した製造工程であるため、製造工程の図示は省略した。最初に、実施例5に基づいて、金微粒子で覆われたガラスフレーク粉を製作した。ただし、金の原料であるテトラクロロ金酸水素の0.08モルを、1リットルのn−ブタノールに分散した。次に、オクチル酸銀の0.02モルを100ccのn−ブタノールに分散し、この分散液が入った容器に、金微粒子で覆われたガラスフレーク粉を投入して撹拌した。この容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散し、この分散液を、ガラスフレーク粉が入った容器に入れて撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、容器を大気雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を290℃に昇温してオクチル酸銀を熱分解した。さらに、容器を大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した。この後、容器を加振機に設置して5分間容器に振動を加えた。最後に、容器内の試料を目合が41ミクロンからなるメッシュフィルターを通し、本実施例の試料を得た。
次に、製作した2種類の試料の表面と切断面とを、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。金微粒子で覆われたガラスフレーク粉の第一の試料と、金と銀とからなる複合金属微粒子で覆われたガラスフレーク粉の第二の試料との双方は、表面が40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、第一の試料の断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.36ミクロンの厚みを形成し、第二の試料の断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.45ミクロンの厚みを形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。第一及び第二の試料の双方とも濃淡が認められなかった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。第一の試料では金原子のみが存在し、第二の試料では銀原子のみが存在した。これらの結果から、第一の試料は金微粒子の集まりが0.36ミクロンの厚みを形成してガラスフレーク粉を覆い、第二の試料は金がコアを形成し、銀がシェルを形成する金と銀とからなる複合金属微粒子が、0.45ミクロンの厚みを形成してガラスフレーク粉を覆ったことが確認できた。
さらに、実施例1と同様に直流抵抗計を用いて、試料の電気抵抗を測った。第一の試料は金に近い体積固有抵抗を示し、第二の試料は金の抵抗値より低い値を示した。従って、本実施例で製作した金と銀とからなる複合金属微粒子の集まりで覆われたガラスフレーク粉は、導電性フィラーや塗料の顔料として用いることができる。
また、ガラスフレーク粉は、40−60nmの大きさの範囲からなる粒状の複合金属微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく彩度に優れた輝きを発した。また、0.45ミクロンの厚みからなる複合金属微粒子の集まりは、青色の可視光の波長に相当するため、複合金属微粒子の表面での反射光と、ガラスフレーク粉表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、青の色調が相対的に強い反射光となる。さらに、金と銀とからなる複合金属微粒子は、金微粒子に比べると電子密度が少なく、銀微粒子に比べると電子密度が多い。このため、複合金属微粒子の色調は、金微粒子より短波長の色調を発し、銀微粒子より長波長の色調を発する。この結果、本実施例で製作したガラスフレーク粉は、深緑色に近い深みのある彩度に優れた金属光沢を発する塗料用顔料として用いることができる。
本実施例は、実施例9におけるガラスフレーク粉に対し、実施例8で用いた鱗片状酸化鉄粉を鱗片状基材として用い、実施例9と同様に金と銅との複合金属微粒子で覆う。鱗片状酸化鉄粉は実施8における酸化鉄粉を用いた。金の原料は実施例5で用いたテトラクロロ金酸水素である。銅の原料は、実施例4で用いたオクチル酸銅である。なお、複合金属微粒子の表面は、実施例1と同様に酸化亜鉛微粒子で覆った。
複合金属微粒子で覆われた鱗片状酸化鉄粉の集まりを製造する製作工程を説明する。なお、本実施例の製造工程は、実施例9における製作工程において、ガラスフレーク粉が酸化鉄粉に置き換わった類似した製造工程であるため、製造工程の図示は省略した。最初に、実施例5に基づいて、金微粒子で覆われた酸化鉄粉を製作した。ただし、金の原料であるテトラクロロ金酸水素の0.08モルを、1リットルのn−ブタノールに分散した。次に、オクチル酸銅の0.02モルを、100ccのn−ブタノールに分散し、この分散液が入った容器に、金微粒子で覆われた酸化鉄粉を投入した。この容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散し、この分散液を酸化鉄粉が入った容器に入れて撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、容器を大気雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を290℃に昇温してオクチル酸銅を熱分解した。次に、容器を大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した。この後、容器を加振機に設置して5分間振動を加えた。最後に、容器内の試料を目合が33ミクロンからなるメッシュフィルターを5枚重ねたフィルターを通過させ、本実施例の試料を得た。
製作した2種類の試料の表面と切断面とを、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。金微粒子で覆われた酸化鉄粉の第一の試料と、金と銅とからなる複合金属微粒子で覆われた酸化鉄粉の第二の試料との双方は、表面が40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。第一の試料の断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.36ミクロンの厚みを形成し、第二の試料の断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.45ミクロンの厚みを形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。第一及び第二の試料の双方とも濃淡が認められなかった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。第一の試料では金原子のみが存在し、第二の試料では銅原子のみが存在した。これらの結果から、第一の試料は金微粒子の集まりが0.36ミクロンの厚みを形成して酸化鉄粉を覆い、第二の試料は金がコアを形成し、銅がシェルを形成する金と銅とからなる複合金属微粒子が、0.45ミクロンの厚みを形成して酸化鉄粉を覆ったことが確認できた。
さらに、実施例1と同様に直流抵抗計を用いて試料の電気抵抗を測った。第一の試料は金に近い体積固有抵抗を示し、第二の試料は金の抵抗値より若干低い値を示した。なお、本実施例で製作した試料は、金に近い導電性と熱伝導性を有する酸化鉄粉となる。従って本実施例で製作した金と銅とからなる複合金属微粒子の集まりで覆われた酸化鉄粉は、導電性フィラーや塗料の顔料として用いることができる。
また、鱗片状酸化鉄粉は、40−60nmの大きさの範囲からなる粒状の複合金属微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく、彩度に優れた輝きを発した。また、0.45ミクロンの厚みからなる複合金属微粒子の集まりは、青色の可視光の波長に相当するため、複合金属微粒子の表面での反射光と酸化鉄粉表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、青の色調が強い反射光となる。また、金と銅とからなる複合金属微粒子は、金微粒子に比べると電子密度が少なく、銅微粒子に比べると電子密度が多い。このため、複合金属微粒子の色調は、金微粒子より短波長の色調を発し、銅微粒子より長波長の色調を発する。また、鱗片状酸化鉄粉は、赤褐色の色調を持つ粉体である。この結果、鱗片状酸化鉄粉は、深緑に近い深みのある彩度に優れた金属光沢を発する塗料用顔料として用いることができる。
本実施例は、実施例11における金と銅とからなる複合金属微粒子に対し、金がコアを形成し銀がシェルを形成する金と銀との複合金属微粒子によって、鱗片状酸化鉄粉を覆う。鱗片状酸化鉄粉は、実施例8における酸化鉄粉を用いた。金の原料は実施例5で用いたテトラクロロ金酸水素である。銀の原料は、実施例3で用いたオクチル酸銀である。なお、複合金属微粒子の表面は、実施例1と同様に酸化亜鉛微粒子で覆った。
複合金属微粒子で覆われた鱗片状酸化鉄粉の集まりを製造する製作工程を説明する。なお、本実施例の製造工程は、実施例9における製作工程において、金と銅とからなる複合金属微粒子が、金と銀との複合金属微粒子に置き換わり、ガラスフレーク粉が酸化鉄粉に置き換わった類似した製造工程であるため、製造工程の図示は省略した。最初に、実施例1に基づいて、金微粒子で覆われた酸化鉄粉を製作した。ただし、金の原料であるテトラクロロ金酸水素の0.08モルを、1リットルのn−ブタノールに分散した。次に、オクチル酸銀の0.02モルを100ccのn−ブタノールに分散し、この分散液が入った容器に、金微粒子で覆われた酸化鉄粉を投入した。この容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに、ナフテン酸亜鉛の0.1モルを1リットルのn−ブタノールに分散し、この分散液を酸化鉄粉が入った容器に入れて撹拌した。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。さらに容器を大気雰囲気からなる第一の熱処理炉に入れ、容器内の試料を290℃に昇温してオクチル酸銀を熱分解した。次に、容器を大気雰囲気からなる第二の熱処理炉に入れ、容器内の試料を330℃に昇温してナフテン酸亜鉛を熱分解した。この後、容器を加振機に設置して5分間容器に振動を加えた。最後に、容器内の試料を、目合が33ミクロンからなるメッシュフィルターを5枚重ねたフィルターを通過させ、本実施例の試料を得た。
製作した2種類の試料の表面と切断面とを、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。金微粒子で覆われた酸化鉄粉の第一の試料と、金と銀とからなる複合金属微粒子で覆われた酸化鉄粉の第二の試料との双方は、表面が40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。第一の試料の断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.36ミクロンの厚みを形成し、第二の試料の断面の画像から、粒状微粒子の集まりは約0.45ミクロンの厚みを形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。第一及び第二の試料の双方とも濃淡が認められなかった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。第一の試料では金原子のみが存在し、第二の試料では銀原子のみが存在した。これらの結果から、第一の試料は金微粒子の集まりが0.36ミクロンの厚みを形成して酸化鉄粉を覆い、第二の試料は金がコアを形成し、銀がシェルを形成する金と銀とからなる複合金属微粒子が、0.45ミクロンの厚みを形成して酸化鉄粉を覆ったことが確認できた。
さらに、実施例1と同様に、試料の電気抵抗を測った。第一の試料は金に近い体積固有抵抗を示し、第二の試料は金の抵抗値より低い値を示した。従って、本実施例で製作した金と銀とからなる複合金属微粒子の集まりで覆われた酸化鉄粉は、導電性フィラーや塗料の顔料として用いることができる。
また、鱗片状酸化鉄粉は、40−60nmの大きさの範囲からなる粒状の複合金属微粒子で覆われるため、光の白色散乱が殆どなく、彩度に優れた輝きを発した。また、0.45ミクロンの厚みからなる複合金属微粒子の集まりは、青色の可視光の波長に相当するため、複合金属微粒子の表面での反射光と酸化鉄粉表面での反射光とが互いに干渉して増幅され、青の色調が強い反射光となる。さらに、金と銀とからなる複合金属微粒子は、金微粒子に比べると電子密度が少なく、銀微粒子に比べると電子密度が多い。このため、複合金属微粒子の色調は、金微粒子より短波長の色調を発し、銀微粒子より長波長の色調を発する。また、鱗片状酸化鉄粉は、赤褐色の色調を持つ粉体である。この結果、本実施例で製作した鱗片状酸化鉄粉は、実施例6における深緑より短波長側にあり、実施例6より深みのある彩度に優れた金属光沢を発する塗料用顔料として用いることができる。
なお、塗料用顔料について説明すれば、実施例9−12の4つの事例において、2種類の鱗片状基材を、同じ厚みからなる2種類の複合金属微粒子の集まりで覆った。この結果、鱗片状基材の材質と複合金属微粒子の構成に応じて、鱗片状基材が発する色調が変わった。いっぽう、実施例3−8の6つの実施例は、鱗片状基材を金属微粒子の集まりで覆った。これらの結果から、鱗片状微粒子を覆う微粒子の材質を、複合金属微粒子とすることで、鱗片状基材が発する色調の自由度が、複合金属を構成する金属元素の種類と金属元素の構成割合とに応じた色調に拡大できた。
以上に、本発明における実施例として12の実施例を説明したが、実施例はこれらに限定されない。なぜなら、第一に、鱗片状基材は金属化合物が熱分解される温度より高い耐熱性を持つため、鱗片状基材の材質は制限されない。第二に、鱗片状基材は様々な形状と粒度分布を持つ微細な粉体であるが、金属化合物のアルコール分散液に鱗片状基材の集まりが混合された懸濁液を昇温してアルコールを気化すれば、どのような形状と大きさの鱗片状基材であっても、鱗片状基材は金属化合物の被膜で覆われる。さらに、この金属化合物の熱分解で析出する微粒子が、鱗片状基材の大きさより3桁小さいため、どのような形状と大きさを持つ微細粉であっても、鱗片状基材を微粒子の集まりで覆うことができる。このため、鱗片状基材の大きさや形状の制約はない。第三に、微粒子の原料は、様々な物質からなるカルボン酸金属化合物、ないしは、様々な物質からなる金属錯イオンを有する無機塩を用いることができるため、微粒子の材質の制約は少ない。第四に、微粒子の用途に応じて、金属微粒子、複合金属微粒子、合金微粒子ないしは金属酸化物微粒子の集まりで鱗片状基材を覆うことができ、鱗片状基材は多種多様な性質を持つ、さらに、微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材の集まりに、熱処理や圧縮、圧延などの様々な加工が可能であるため、鱗片状基材の用途は極めて広い。第五に、金属微粒子、複合金属微粒子ないしは合金微粒子は、互いに金属結合で微粒子の集まりを形成するため、鱗片状基材の表面に形成された微粒子の集まりは剥がれず、長期にわたって鱗片状基材の性質が変わらない。第六に、安価な金属化合物の熱分解で微粒子を析出させるため、また、鱗片状基材の表面を清浄化させる前処理が不要であるため、安価な製造費用で大量の鱗片状基材が様々な材質の微粒子で覆われる。従って、本発明は鱗片状基材の制約がなく、鱗片状基材を覆う微粒子の制約が少なく、かつ、多種多様な性質を持つ鱗片状基材が安価な製造費用で大量に製造できるため、従来の用途に限らず新たな用途を含めた広範囲な用途に、本発明に基づく微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材を用いることができる。このため、本発明に係わる実施例は、前記した12の実施例に限定されない。
Claims (10)
- 金属結合した金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりを製造する製造方法は、
熱処理で金属を析出する第一の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、該アルコール分散液に鱗片状基材の集まりを投入して第一の懸濁液を作成する第二の工程と、該第一の懸濁液を昇温してアルコールを気化させ、前記鱗片状基材の表面が前記第一の金属化合物で覆われた第一の処理基材を作成する第三の工程と、前記第一の金属化合物が金属を析出する温度より高い温度で金属酸化物を析出する第二の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第四の工程と、該アルコール分散液に前記第一の処理基材の集まりを投入して第二の懸濁液を作成する第五の工程と、該第二の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、前記第一の処理基材が前記第二の金属化合物で覆われた第二の処理基材を作成する第六の工程と、該第二の処理基材の集まりを、前記第一の金属化合物を熱分解する熱処理と、前記第二の金属化合物を熱分解する熱処理とからなる2回の熱処理を連続して行う第七の工程とからなり、これら7つの工程を連続して実施することで、金属結合した金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりが製造される、金属結合した金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりを製造する製造方法。 - 請求項1に記載した製造方法で製造した鱗片状基材の集まりを用いて、金属結合した金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材の集まりを製造する製造方法は、請求項1における微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりに負荷を加え、該鱗片状基材から金属酸化物微粒子の集まりを脱落させ、前記鱗片状基材の集まりを個々の鱗片状基材に分離する、これによって、金属結合した金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材の集まりが製造される、請求項1に記載した製造方法で製造した鱗片状基材の集まりを用いて、金属結合した金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材の集まりを製造する製造方法。
- 請求項2に記載した製造方法で製造した鱗片状基材の集まりを用いて、2種類の金属微粒子の集まりからなる複合金属微粒子の集まりと、金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりを製造する製造方法は、請求項2に記載した金属結合した金属微粒子の金属とは異なる第二の金属を熱処理で析出する第一の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、該アルコール分散液に請求項2に記載した製造方法で製造した鱗片状基材の集まりを投入して第一の懸濁液を作成する第二の工程と、該第一の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、前記鱗片状基材の表面が前記第一の金属化合物で覆われた第一の処理基材を作成する第三の工程と、前記第一の金属化合物が金属を析出する熱処理温度より高い熱処理温度で金属酸化物を析出する第二の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第四の工程と、該アルコール分散液に前記第一の処理基材の集まりを投入して第二の懸濁液を作成する第五の工程と、該第二の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、前記第一の処理基材が前記第二の金属化合物で覆われた第二の処理基材を作成する第六の工程と、該第二の処理基材の集まりを、前記第一の金属化合物が熱分解される第一の熱処理と、前記第二の金属化合物が熱分解される第二の熱処理とからなる2回の熱処理を連続して行う第七の工程とからなり、これら7つの工程を連続して実施することで、2種類の金属微粒子の集まりからなる複合金属微粒子の集まりと、金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりが製造される、請求項2に記載した製造方法で製造した鱗片状基材を用いて、2種類の金属微粒子の集まりからなる複合金属微粒子の集まりと、金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりを製造する製造方法。
- 請求項3に記載した製造方法で製造した鱗片状基材の集まりを用いて、2種類の金属微粒子の集まりからなる複合金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材を製造する製造方法は、請求項3に記載した製造方法で製造した微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりに負荷を加え、該鱗片状基材から金属酸化物微粒子の集まりを脱落させ、前記鱗片状基材の集まりを個々の鱗片状基材に分離する、これによって、2種類の金属微粒子の集まりからなる複合金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材が製造される、請求項3に記載した製造方法で製造した鱗片状基材の集まりを用いて、2種類の金属微粒子の集まりからなる複合金属微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材を製造する製造方法。
- 請求項1に記載した製造方法で製造する鱗片状基材の集まりが、合金微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりであり、該鱗片状基材の集まりを製造する製造方法は、請求項1に記載した第一の金属化合物として、熱処理で複数種類の金属を同時に析出する複数種類の金属化合物を用い、該複数種類の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、該アルコール分散液に鱗片状基材の集まりを投入して第一の懸濁液を作成する第二の工程と、該第一の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、前記鱗片状基材が前記複数種類の金属化合物で覆われた第一の処理基材を作成する第三の工程と、前記複数種類の金属化合物が複数種類の金属を同時に析出する熱処理温度より高い熱処理温度で金属酸化物を析出する第二の金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第四の工程と、該アルコール分散液に前記第一の処理基材の集まりを投入して第二の懸濁液を作成する第五の工程と、該第二の懸濁液を昇温して前記アルコールを気化させ、前記第一の処理基材が前記第二の金属化合物で覆われた第二の処理基材を作成する第六の工程と、該第二の処理基材の集まりを、前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解される第一の熱処理と、前記第二の金属化合物が熱分解される第二の熱処理とからなる2回の熱処理を連続して行う第七の工程とからなり、これら7つの工程を連続して実施することで、合金微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりが製造される、合金微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとからなる微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりを製造する製造方法。
- 請求項5に記載した製造方法で製造した鱗片状基材の集まりを用いて、合金微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材の集まりを製造する製造方法は、請求項5に記載した製造方法で製造した微粒子の2重構造で覆われた鱗片状基材の集まりに負荷を加え、該鱗片状基材から金属酸化物微粒子の集まりを脱落させ、前記鱗片状基材の集まりを個々の鱗片状基材に分離する、これによって、合金微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材が製造される、請求項5に記載した製造方法で製造した鱗片状基材の集まりを用いて、合金微粒子の集まりで覆われた鱗片状基材の集まりを製造する製造方法。
- 請求項1および請求項3に記載した鱗片状基材の集まりを製造する製造方法において、前記熱処理で金属を析出する金属化合物が、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第1の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成される第2の特徴とからなる2つの特徴を兼備するカルボン酸金属化合物である、請求項1および請求項3に記載した鱗片状基材の集まりを製造する製造方法。
- 請求項1および請求項3に記載した鱗片状基材の集まりを製造する製造方法において、前記熱処理で金属を析出する金属化合物が、無機物の分子ないしはイオンが配位子を構成し、該配位子が金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機塩である、請求項1および請求項3に記載した鱗片状基材の集まりを製造する製造方法。
- 請求項1および請求項3記載した鱗片状基材の集まりを製造する製造方法において、前記熱処理で金属酸化物を析出する金属化合物が、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに配位結合する第1の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成される第2の特徴とからなる2つの特徴を兼備するカルボン酸金属化合物である、請求項1および請求項3に記載した鱗片状基材の集まりを製造する製造方法。
- 請求項5に記載した鱗片状基材の集まりを製造する製造方法において、前記熱処理で複数種類の金属が同時に析出する複数種類の金属化合物は、同一のカルボン酸で構成される第1の特徴と、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが異なる金属イオンに共有結合する第2の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成される第3の特徴とからなる3つの特徴を兼備する複数種類のカルボン酸金属化合物である、請求項5に記載した鱗片状基材の集まりを製造する製造方法。
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