JP6618142B2 - 金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆われた合成樹脂のペレットの集まりの製造方法と、金属ないしは合金の性質を持つ合成樹脂の成形体の成形方法 - Google Patents

金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆われた合成樹脂のペレットの集まりの製造方法と、金属ないしは合金の性質を持つ合成樹脂の成形体の成形方法 Download PDF

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Description

本発明は、合成樹脂の融点より低い温度で、金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆われた合成樹脂のペレットの集まりを製造する製造方法である。さらに、この合成樹脂のペレットの集まりを用い、従来の成形法で、金属ないしは合金の性質を持つ成形体を成形する成形方法である。
本発明に最も近い従来技術に、合成樹脂に導電性ないしは熱伝導性を付与する技術がある。例えば、特許文献1に、合成樹脂からなる布帛、不織布、ないしはフィルムを、金属・鉱物微粒子と分散剤とpH調整剤とからなる処理液と共に90−140℃の温度で混合撹拌して、布帛、不織布、ないしはフィルムの表面に金属・鉱物微粒子を付着させることで導電性を付与される方法が提案されている。さらに特許文献2に、繊維状の水酸化マグネシウムを合成樹脂に配合し、合成樹脂に熱伝導性を付与させる方法が提案されている。
しかし、前記した従来技術は、金属・鉱物微粒子からなる導電性フィラーを、非導電性の合成樹脂を介して結合させる、ないしは、水酸化マグネシウムからなる熱伝導性フィラーを、非熱伝導性の合成樹脂を介して結合させる。このため、導電性フィラー同士ないしは熱伝導性フィラー同士は直接結合しない。従って、合成樹脂からなる成形体の内部に、導電性フィラーが連続した導電経路を、ないしは、熱伝導性フィラーが連続した熱伝導経路を形成しない。この結果、導電性ないしは熱伝導性の増大は制約される。いっぽう成形体の導電性ないしは熱伝導性を高めるために、導電性フィラーないしは熱伝導性フィラーの配合割合を高めると、溶解した合成樹脂の粘度がフィラーの配合割合に応じて増大し成形が困難になる。この理由は、各種フィラーが固体であるため、フィラーの配合割合を高めるほど、溶解した合成樹脂の粘度が高まることに依る。従って、固体の各種フィラーを用いる限り、成形体の導電性ないしは熱伝導性の増大は制約される。しかしながら、液体からなるフィラーは存在しない。従って、従来技術では、合成樹脂からなる成形体の導電性ないしは熱伝導性の増大には限界がある。
いっぽう、合成樹脂のペレットは軽量で安価な素材で融点が低く、また、合成樹脂の成形体は複雑な形状が容易に成形できる製法であるため、成形体の導電性ないしは熱伝導性が高まれば、金属の部品を合成樹脂の部品に置き換えることができる。
また、金属ないしは合金からなる物質で合成樹脂のペレットを覆い、金属ないしは合金からなる物質が熱融解したペレットを金属結合すれば、合成樹脂の成形体が成形できる。さらに、金属からなる物質が連続した経路を成形体に形成すれば、成形体は導電性や熱伝導性に限らず、磁性など金属からなる物質を構成する金属元素に応じた様々な性質を持つ。また、合金からなる物質が連続した経路を成形体に形成すれば、様々な金属との組み合わせと金属の配合割合とによって、金属の性質よりさらに広い合金の性質を持つ。
以上に説明したように、金属ないしは合金からなる物質で合成樹脂のペレットを覆い、このペレットの集まりを成形の材料として用い、従来の合成樹脂の成形体を製造する製法によって成形した際に、金属ないしは合金からなる物質が融解したペレットを金属結合し、金属結合した金属ないしは合金からなる物質が連続した経路を成形体に形成すれば、従来の製法によって、金属ないしは合金の性質を持つ成形体が製造できる。この結果、従来では考えられない新たな性質を持つ合成樹脂の成形体が、従来の製法によって安価に製造でき、予想もつかない用途に合成樹脂の成形体が用いられる。このため、第一に、金属ないしは合金からなる物質が合成樹脂のペレットを覆い、第二に、金属なしは合金からなる物質が熱融解したペレットを金属結合し、第三に、金属結合した金属なしは合金からなる物質が、成形体内に連続した経路を形成する全く新たな技術の実現が強く求められている。
特開2005−048315号公報 特開平09−176368号公報
合成樹脂の融点より低い温度で、合成樹脂のペレットを金属ないしは合金からなる物質で覆い、このペレットの集まりを成形の材料として用い、従来の製法によって成形体を成形した際に、金属ないしは合金からなる物質が、第一に熱融解したペレットを金属結合し、第二に成形体に連続した経路を形成すれば、金属ないしは合金の性質を持つ様々な形状の成形体が安価に製造できる。つまり、金属ないしは合金の性質は、自由電子の移動に基づき、金属ないしは合金からなる物質が連続した経路を成形体に形成すれば、金属ないしは合金の自由電子が成形体を自由に移動し、成形体は金属ないしは合金の性質を示す。
また、合成樹脂のペレットを覆う金属ないしは合金を形成する原料が安価で、さらに、ペレットの表面を覆う処理が極めて簡単な処理で、かつ、合成樹脂の融点より低い温度で、大量のペレットが処理できれば、金属ないしは合金のいずれかの物質で覆われたペレットの集まりが、安価な製作費用で大量に製造できる。
従って、本発明における第一の課題は、合成樹脂のペレットが合成樹脂の融点より低い温度で、金属ないしは合金のいずれかの物質で覆われることにある。第二の課題は、こうしたペレットの処理が、安価な原料を用いた極めて簡単な処理で、合成樹脂の融点より低い温度で、大量のペレットが処理できることにある。第三の課題は、こうした処理がなされたペレットを成形の材料として用い、従来の製法によって成形体を成形する際に、金属ないしは合金からなる物質が、第一に熱融解したペレットを金属結合し、第二に成形体に連続した経路を形成することにある。本発明はこれら3つの課題を解決することにある。
本発明は、合成樹脂の融点より低い温度で合成樹脂のペレットを金属微粒子の集まりで覆い、該金属微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合した合成樹脂のペレットの集まりを製造する製造方法であって
熱分解で金属を析出する第一の性質と、熱分解温度が合成樹脂のペレットの融点より低い第二の性質を兼備する金属化合物を、アルコールに分散し、該金属化合物が前記アルコール中に分子状態で均一に分散したアルコール分散液を作成する第一の工程と、
前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記アルコールの沸点より高く、かつ、前記金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和して、前記金属化合物と前記有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合った混合液作成る第二の工程と、
合成樹脂のペレットの集まりを前記混合液に浸漬、該合成樹脂のペレットの表面に前記混合液の粘度に応じた厚みで該混合液均一に付着させ、この後、該ペレットの集まりを前記混合液から取り出す第三の工程と、
該ペレットの集まりを昇温して前記金属化合物を熱分解させる工程であって、最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、さらに、前記金属化合物の熱分解が始まり、前記合成樹脂の融点より低い温度で、該金属化合物の熱分解が完了し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記金属化合物の微細結晶の大きさに応じた粒状の金属微粒子集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが前記合成樹脂のペレットを覆うとともに、該合成樹脂のペレットを覆った金属微粒子が金属結合することで該合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりが製造される第四の工程とからなり、
これら4つの工程を連続して実施す
合成樹脂の融点より低い温度で合成樹脂のペレット金属微粒子の集まりで覆、該金属微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
つまり、本製造方法によれば、次の4つの簡単な工程を連続して実施することで、合成樹脂の融点より低い温度で、合成樹脂のペレットが金属微粒子の集まりで覆われ、この金属微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合されたペレットの集まりが、安価な製造費用で大量に製造できる。第一の工程は、金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、合成樹脂のペレットの集まりを混合液に浸漬し、このペレットの集まりを取り出すだけの処理である。第四の工程は、ペレットの集まりを、合成樹脂の融点より低い温度で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理であるため、金属微粒子の集まりで覆われた合成樹脂のペレットの集まりが、安価な製造費用で大量に製造できる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用薬品であり、合成樹脂のペレットは汎用的な工業用素材である。さらに、熱分解で金属を析出する金属化合物は、様々な金属元素からなる金属を析出する。従って、安価な工業用薬品を原料として用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、合成樹脂のペレットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、合成樹脂のペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
つまり、本製造方法に依れば、第一に、アルコール分散液中に金属化合物が均一に分散する。第二に、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和する性質を持つため、混合液中に金属化合物が均一に分散する。第三に、有機化合物がアルコールより粘度が高いため、混合液は有機化合物の混合割合に応じた粘度を持ち、この混合液に合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この結果、ペレットの表面に、熱分解で金属を析出する金属化合物が均一に付着する。
この後、合成樹脂のペレットを熱処理する。最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化する。これによって、ペレットの表面に金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす金属化合物の熱分解が始まり、合成樹脂の融点より低い温度で、金属化合物の熱分解が完了し、ペレットの表面に微細結晶の大きさに応じた粒状の金属微粒子が集まりをなして析出する。この際、金属化合物の熱分解で析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりがペレットを覆い、ペレットを覆った金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。なお、ペレットを覆った金属微粒子の集まりは、金属微粒子が多層構造を形成してペレットの全体を覆い、多層構造の厚みは混合液の粘度に応じて変わる。
つまり、金属微粒子の原料である金属化合物を、アルコールに分散することで金属化合物が液相化され、これによって、アルコール分散液と有機化合物との混合液がペレットに付着する。このようなペレットの集まりを昇温してアルコールと有機化合物とを気化すれば、金属化合物の微細結晶がペレットの表面に析出し、微細結晶の集まりがペレットを覆う。さらに昇温して微細結晶からなる金属化合物を熱分解すれば、微細結晶の大きさに応じた金属微粒子が集まりをなしてペレットの表面を覆う。この際、金属微粒子が接触部位で互いに金属結合するため、ペレットを覆った金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合され、ペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このように、本製造方法は、第一に、金属微粒子の原料を液相化し、液相化された金属化合物をペレットに付着させ、第二に、金属化合物の微細結晶を析出させ、この微細結晶を熱分解して金属微粒子を析出させる特徴を有する。これによって、ペレットが金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される作用効果がもたらされる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用薬品である。このような工業用薬品を混合するだけで混合液ができる。また、混合液に浸漬した合成樹脂のペレットを、合成樹脂の融点より低い温度に昇温するだけで金属化合物が熱分解し、ペレットが金属結合した粒状の金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが大量に製造できる。従って、安価な工業用薬品を原料として用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、合成樹脂のペレットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、合成樹脂のペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
前記した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法において前記金属化合物が、無機物の分子ないしは無機イオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体であり、前記有機化合物が、カルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記無機金属化合物からなる錯体と前記一種類の有機化合物とを用い、前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、前記した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
つまり、無機金属化合物からなる錯体は、還元雰囲気の180−220℃の比較的低い温度で熱分解が完了し金属を析出する。このため、融点が180−220℃より高い合成樹脂のペレットであれば、40−60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが合成樹脂のペレットの表面に析出する。この際、析出した粒状の金属微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した粒状の金属微粒子の集まりがペレットを覆うとともに、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合され、これによって、ペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
すなわち、無機物の分子ないしは無機イオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を、還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が最初に分断され、無機物と金属とに分解される。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、すべての無機物の気化が完了した後に金属が析出する。つまり、錯体を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きい。このため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に金属が析出する。この際、無機物が低分子量であるため、無機物の分子量に応じた180−220℃の低い温度で無機物の気化が完了する。このような錯体として、アンモニアNHが配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、塩素イオンClが、ないしは塩素イオンClとアンモニアNHとが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、シアノ基CNが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、臭素イオンBrが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、沃素イオンIが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するヨード金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体などがある。また、このような分子量が小さい無機金属化合物からなる錯体は、合成が容易で最も安価な金属錯イオンを有する金属錯体である。
また、カルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点がアルコールの沸点より高く、かつ、無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、分子量が小さいカルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類に属し、いずれも汎用的な工業用薬品である。
従って、錯体のアルコール分散液に、有機化合物を混合すると、錯体と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液に、錯体の熱分解温度より融点が高い合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に混合液の粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この後、ペレットの集まりを還元雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、ペレットの表面に錯体の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす錯体の熱分解が始まり、180−220℃で錯体の熱分解が完了し、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの粒状の金属微粒子が集まりをなしてペレットの表面に析出する。この際、熱分解で析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状の金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりがペレットを覆い、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが製造される。従って、本製造方法における錯体と有機化合物とは、合成樹脂の融点より低い温度でペレットの集まりを製造する第一の原料になる。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である無機金属化合物からなる錯体と、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、合成樹脂のペレットに錯体と有機化合物とからなる混合液を付着させ、ペレットの集まりを還元雰囲気の180−220℃の温度で熱処理するだけで、ペレットが金属結合した金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが大量に製造される。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決され、合成樹脂のペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
前記した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法において前記金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物であり、前記有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記カルボン酸金属化合物と前記一種類の有機化合物とを用い、前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、前記した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
つまり、二つの特徴を持つカルボン酸金属化合物は、大気雰囲気の290−430℃の温度で熱分解が完了し金属を析出する。従って、融点が290−430℃より高い合成樹脂のペレットであれば、40−60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが合成樹脂のペレットの表面に析出する。この際、析出した金属微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状の金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、ペレットは金属結合した粒状の金属微粒子の集まりで覆われ、また、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合され、このようなペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
すなわち、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物においては、金属イオンが最も大きいイオンを形成し、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸の分子量と数とに応じて、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などがある。なお、オクチル酸の沸点は228℃であり、ラウリン酸の沸点は296℃であり、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、290−430℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化第一銅CuOと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、酸化第一銅CuOと酸化第二銅CuOとを銅に還元する処理費用を要する。特に、酸化第一銅CuOは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化第二銅CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、処理費用がかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。このため、10段落で説明した無機金属化合物からなる錯体より熱処理温度が高いが、錯体より安価な金属化合物である。
また、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点がアルコールより高く、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、いずれも汎用的な工業用薬品である。
従って、カルボン酸金属化合物のアルコール分散液に有機化合物を混合すると、カルボン酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液に、融点がカルボン酸金属化合物の熱分解温度より高い合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に混合液の粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この後、ペレットの集まりを大気雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、ペレットの表面に、カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなすカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、290−430℃の温度でカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの粒状の金属微粒子が集まりをなしてペレットの表面に析出する。この際、熱分解で析出した金属は不純物を持たないため、粒状の金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりがペレットを覆い、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。従って、カルボン酸金属化合物と有機化合物とは、ペレットの集まりを製造する第二の原料になる。
以上に説明したように、安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物と、汎用的な工業用薬品である有機化合物を原料として用い、合成樹脂のペレットにカルボン酸金属化合物と有機化合物との混合液を付着させ、ペレットの集まりを大気雰囲気の290−430℃の温度で熱処理するだけで、ペレットが金属結合した金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが大量に製造される。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、合成樹脂のペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
前記した製造方法で製造したペレットの集まりを用いて、金属の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方法は、前記した製造方法で製造したペレットの集まりを、成形機ないしは金型に充填し、該成形機ないしは該金型によって、前記ペレットの集まりを熱融解させるとともに応力を加えて変形させ、該変形したペレットを覆う金属微粒子同士が金属結合することで、該変形したペレット同士が結合、前記成形機内ないしは前記金型内に前記変形したペレットの集まりからなる成形体が成形される、金属の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方法。
つまり、本製造方法に依れば、合成樹脂のペレットの集まりに対し、前記した4つの処理を連続して行ない、このペレットの集まりを用いて、従来の製法に準じて成形体を成形すると、熱融解したペレットが金属微粒子の金属結合で結合され、また、金属結合した金属微粒子が成形体に連続した経路を形成するため、金属の性質を持つ成形体が製造される。従って、様々な金属の性質を持ち、金属より軽量で腐食しない成形体が、従来の合成樹脂の成形体を成形する製法で安価に製造される。
つまり、ペレットの大きさに比べて金属微粒子が5桁も小さいため、多層構造をなしてペレット全体を覆った金属結合した金属微粒子の集まりは、ペレットが熱融解した際に、また、熱融解したペレットが変形した際に、ペレットの変形に追従して変形し、ペレット全体を覆う。また、金属微粒子の金属結合で熱融解したペレット同士が結合される。
すなわち、合成樹脂のペレットの集まりに対し、前記した4つの処理をすると、ペレットが金属結合した金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このペレットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、ペレットを熱融解させて所定の形状の成形体を成形する。最初にペレットが熱融解し、ペレットの体積がわずかに膨張する。いっぽう、金属結合した金属微粒子の集まりが多層構造を形成してペレットの全体を覆うため、ペレットがわずかに体積膨張すると、金属微粒子の集まりも追従してわずかに変形するが、金属微粒子の集まりは熱融解したペレットの全体を依然として覆う。なお、ペレットを覆った金属微粒子は、合成樹脂の融点より低い温度で生成されたため、合成樹脂の融点を超える温度に昇温されると、金属微粒子は隣接する金属微粒子を取り込んで成長してわずかに粗大化する。わずかに粗大化した金属微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、金属微粒子同士が接触部位で互いに金属結合する。このため、粗大化した金属微粒子の集まりは、依然として熱融解したペレットの全体を覆う。次に、熱融解したペレットが成形機ないしは金型から応力を受けて変形するが、金属結合した金属微粒子の集まりも同様に変形し、融解ペレットを依然として覆う。また、金属微粒子同士が互いに金属結合することで、変形した融解ペレット同士が結合される。この後、熱融解したペレットが冷却されて、合成樹脂の成形体が成形される。従って、固化したペレットは、金属微粒子の金属結合で結合されるとともに、固化したペレットを覆う金属結合した金属微粒子が、成形体に連続した経路を形成し、成形体は金属微粒子を構成する金属の性質を持つ。さらに、金属微粒子は様々な金属元素によって構成されるため、様々な金属の性質を持ち、軽量で腐食しない様々な形状からなる成形体は様々な用途に用いられる。
以上に説明したように、本製造方法に依れば、6段落で説明した第三の課題を解決して、合成樹脂からなる成形体が製造される。
本発明は、合成樹脂の融点より低い温度で合成樹脂のペレットを合金微粒子の集まりで覆い、該合金微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合した合成樹脂のペレットの集まりを製造する製造方法であって
同一の温度で熱分解して互いに異なる複数種類の金属を同時に析出する第一の性質と、熱分解温度が合成樹脂のペレットの融点より低い第二の性質を兼備する複数種類の金属化合物を、アルコールに分散し、該複数種類の金属化合物が前記アルコール中に分子状態で均一に分散したアルコール分散液を作成する第一の工程と、
前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記アルコールの沸点より高く、かつ、前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度より低い第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和して、前記複数種類の金属化合物と前記有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合った混合液を作成する第二の工程と、
合成樹脂のペレットの集まりを前記混合液に浸漬、該合成樹脂のペレットの表面に前記混合液の粘度に応じた厚みで該混合液均一に付着させ、この後、該ペレットの集まりを前記混合液から取り出す第三の工程と、
該ペレットの集まりを昇温して前記複数種類の金属化合物を同時に熱分解させる工程であって、最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記複数種類の金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、さらに、前記複数種類の金属化合物の熱分解が始まり、前記合成樹脂の融点より低い温度で、該複数種類の金属化合物熱分解が同時に完了し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記複数種類の金属化合物の微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりが前記合成樹脂のペレットを覆うとともに、該合成樹脂のペレットを覆った合金微粒子が金属結合することで該合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりが製造される第四の工程とからなり、
これら4つの工程を連続して実施す
前記合成樹脂の融点より低い温度で合成樹脂のペレット合金微粒子の集まりで覆、該合金微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
つまり、本製造方法によれば、次の4つの簡単な工程を連続して実施することで、合成樹脂の融点より低い温度で、合成樹脂のペレットが合金微粒子の集まりで覆われ、この合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、安価な製造費用で大量に製造できる。第一の工程は、複数種類の金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、合成樹脂のペレットの集まりを混合液に浸漬した後に、ペレットの集まりを取り出すだけの処理である。第四の工程は、合成樹脂のペレットの集まりを、合成樹脂の融点より低い温度で熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理であるため、合成樹脂のペレットの集まりが、安価な製造費用で大量に製造できる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用の薬品であり、合成樹脂のペレットは汎用的な工業用素材である。また、熱分解で金属を析出する金属化合物は、様々な金属元素からなる金属を析出する。このため、複数種類の金属化合物における金属の組み合わせを変える、また、複数種類の金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりが析出する。従って、安価な工業用薬品を原料として用い、極めて簡単な処理で、合成樹脂のペレットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、合成樹脂のペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
つまり、本製造方法に依れば、第一に、アルコール分散液中に複数種類の金属化合物が均一に分散する。第二に、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和する性質を持つため、混合液中に複数種類の金属化合物が均一に分散する。第三に、有機化合物がアルコールより粘度が高いため、混合液は有機化合物の混合割合に応じた粘度を持ち、この混合液に合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に混合液の粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この結果、ペレットの表面に、同一の温度で熱分解し、互いに異なる金属を同時に析出する複数種類の金属化合物が均一に付着する。
この後、合成樹脂のペレットを熱処理する。最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化する。これによって、ペレットの表面に、複数種類の金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす複数種類の金属化合物の熱分解が始まり、合成樹脂の融点より低い温度で、複数種類の金属化合物の熱分解が同時に完了し、微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子が集まりをなしてペレットの表面に析出する。つまり、微細結晶をなす複数種類の金属化合物が同時に熱分解すると、複数種類の金属が同時に析出し、複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、複数種類の金属化合物のモル数に応じた組成からなる合金が、微細結晶の大きさに応じた粒状微粒子として析出する。また、合金微粒子は不純物を持たず、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した合金微粒子の集まりがペレットを覆うとともに、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
つまり、合金微粒子の原料である複数種類の金属化合物を、アルコールに分散することで複数種類の金属化合物が液相化され、これによって、アルコール分散液と有機化合物との混合液がペレットに付着する。このようなペレットの集まりを昇温してアルコールと有機化合物とを気化すれば、複数種類の金属化合物の微細結晶がペレットの表面に析出し、ペレットは微細結晶の集まりで覆われる。さらに昇温して、微細結晶からなる複数種類の金属化合物を熱分解すれば、微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子が集まりをなしてペレットの表面を覆う。この際、粒状の合金微粒子が接触部位で互いに金属結合するため、ペレットを覆った合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合され、ペレットの集まりが製造される。このように、本製造方法は、第一に、合金微粒子の原料を液相化し、液相化された複数種類の金属化合物をペレットに付着させ、第二に、複数種類の金属化合物の微細結晶を析出させ、この微細結晶を熱分解して合金微粒子を析出させる特徴を持つ。これによって、ペレットが合金微粒子の集まりで覆われ、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが製造できる作用効果がもたらされる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用薬品である。このような汎用的な工業用薬品を混合するだけで混合液ができる。また、混合液に浸漬した合成樹脂のペレットを、合成樹脂の融点より低い温度に昇温するだけで、複数種類の金属化合物が同時に熱分解し、金属結合した合金微粒子の集まりがペレットを覆うとともに、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。従って、安価な工業用薬品を用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、ペレットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。さらに、複数種類の金属化合物における金属の組み合わせを変える、また、複数種類の金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりが、ペレットの表面を覆うとともに、合金微粒子の金属結合でペレットが結合したペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
従って、安価な工業用薬品を原料として用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、合成樹脂のペレットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決され、合成樹脂のペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法において前記複数種類の金属化合物が、無機物の分子ないしは無機イオンからなる同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合した互いに異なる金属錯イオンを有する複数種類の無機金属化合物からなる錯体であり、前記有機化合物が、カルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記複数種類の無機金属化合物からなる錯体と前記一種類の有機化合物とを用い、前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
つまり、複数種類の無機金属化合物からなる錯体を還元雰囲気で熱処理すると、錯体が10段落で説明した錯体で構成されるため、180−220℃の比較的低い温度で同時に熱分解し、融点が180−220℃より高い合成樹脂のペレットであれば、40−60nmの大きさの粒状微粒子が、複数種類の金属化合物のモル数の比率に応じた組成からなる合金微粒子の集まりがペレットの表面に析出する。この際、析出した粒状の合金微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、ペレットは金属結合した合金微粒子の集まりで覆われ、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
すなわち、複数種類の金属化合物が、10段落で説明した無機物の分子ないしは無機イオンからなる同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合する互いに異なる金属錯イオンを有する複数種類の無機金属化合物からなる錯体で構成される。このため、還元雰囲気で熱処理すると、複数種類の錯体の配位結合部が同時に分断され、無機物と複数の金属に分解され、無機物の分子量に応じて、無機物が180−220℃の温度で気化が完了し、錯体のモル濃度に応じて複数種類の金属が同時に析出する。これら金属は不純物を持たない活性状態にあるため、錯体のモル濃度の比率に応じた組成からなる合金が析出する。
また、カルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点がアルコールより高く、かつ、複数種類の無機金属化合物からなる錯体が同時に熱分解する温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、分子量が小さいカルボン酸エステル類、ないしは、分子量が小さいグリコールエーテル類であり、いずれも汎用的な工業用薬品である。
従って、複数種類の無機金属化合物からなる錯体のアルコール分散液に、有機化合物を混合すると、複数種類の錯体と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液に合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に混合液の粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この後、ペレットの集まりを還元雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、ペレットの表面に、複数種類の錯体の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす複数種類の錯体の熱分解が同時に始まり、合成樹脂の融点より低い180−220℃の温度で複数種類の錯体の熱分解が同時に完了し、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさの粒状の合金微粒子が集まりをなしてペレットの表面に析出する。つまり、微細結晶をなす複数種類の錯体が同時に熱分解すると、複数種類の金属が同時に析出し、複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、複数種類の錯体のモル数に応じた組成からなる合金が、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさの粒状微粒子をなして析出する。また、合金微粒子は不純物を持たないため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した合金微粒子の集まりがペレットを覆い、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合され、ペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このため、複数種類の錯体と有機化合物とは、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合するペレットの集まりを製造する製造方法における第一の原料になる。さらに、複数種類の錯体における金属の組み合わせを変える、あるいは、複数種類の錯体のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりがペレットの表面を覆うとともに、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合される。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である複数種類の無機金属化合物からなる錯体と、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、合成樹脂のペレットに錯体と有機化合物とからなる混合液を付着させ、ペレットの集まりを還元雰囲気の180−220℃の温度で熱処理するだけで、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合するペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合するペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法において前記複数種類の金属化合物が、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物であり、前記有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記複数種類のカルボン酸金属化合物と前記一種類の有機化合物とを用い、前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸金属化合物が12段落で説明したカルボン酸金属化合物であるため、290−430℃で同時に熱分解し、融点が290−430℃より高い合成樹脂のペレットであれば、40−60nmの大きさの粒状微粒子が、複数種類の金属化合物のモル数の比率に応じた組成からなる合金の粒状微粒子の集まりとしてペレットの表面に析出する。この際、析出した合金微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、ペレットは金属結合した合金微粒子の集まりで覆われ、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
すなわち、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、飽和脂肪酸の沸点を超える温度で、同一の飽和脂肪酸と異なる金属とに同時に分解し、さらに、飽和脂肪酸の分子量と数とに応じて飽和脂肪酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に複数種類の金属が同時に析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため合金が生成される。このため18段落で説明した複数種類の無機金属化合物からなる錯体より熱処理温度が高いが、錯体より安価なカルボン酸金属化合物を用いて様々な合金が生成される。
また、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点がアルコールより高く、かつ、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、いずれも汎用的な工業用薬品である。
従って、複数種類のカルボン酸金属化合物のアルコール分散液に、有機化合物を混合すると、複数種類のカルボン酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液に、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より融点が高い合成樹脂のペレットの集まりを浸漬すると、ペレットの表面に混合液の粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この後、ペレットの集まりを大気雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、ペレットの表面に、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が同時に始まり、290−430℃の温度で複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が同時に完了し、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさの粒状の合金微粒子が集まりをなしてペレットの表面に析出する。つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶が同時に熱分解すると、複数種類の金属が同時に析出し、複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数に応じた組成からなる合金が、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさの粒状微粒子として析出する。また、合金微粒子は不純物を持たないため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した合金微粒子の集まりが合成樹脂のペレットを覆い、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが、合成樹脂の融点より低い温度で製造される。従って、複数種類のカルボン酸金属化合物と有機化合物とは、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合するペレットの集まりを製造する製造方法における第二の原料になる。さらに、複数種類のカルボン酸金属化合物における金属の組み合わせを変える、また、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりが、ペレットの表面を覆うとともに、合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合される。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である複数種類のカルボン酸金属化合物と、汎用的な工業用薬品である有機化合物を用い、合成樹脂のペレットにカルボン酸金属化合物と有機化合物との混合液を付着させ、ペレットの集まりを大気雰囲気の290−430℃の温度で熱処理するだけで、合金微粒子の集まりがペレットを覆い、合金微粒子の金属結合でペレットが結合されたペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、前記した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合するペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。
前記した製造方法で製造したペレットの集まりを用いて、合金の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方法は、前記した製造方法で製造したペレットの集まりを、成形機ないしは金型に充填し、該成形機ないしは該金型によって、前記ペレットの集まりを熱融解させるとともに応力を加えて変形させ、該変形したペレットを覆う合金微粒子同士が金属結合することで、該変形したペレット同士が結合、前記成形機内ないしは前記金型内に前記変形したペレットの集まりからなる成形体が成形される、合金の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方法。
つまり、本製造方法に依れば、合成樹脂のペレットの集まりに対し、前記した4つの処理を連続して行ない、このペレットを用いて、従来の合成樹脂の成形体を製造する製法に準じて成形体を成形すると、熱融解したペレットは合金微粒子の金属結合で結合され、また、金属結合した合金微粒子が成形体に連続した経路を形成するため、合金の性質を持つ成形体が製造される。従って、様々な合金の性質を持ち、合金より軽量で腐食しない様々な形状からなる成形体が、従来の合成樹脂の成形体を製造する製法で安価に製造される。
つまり、ペレットの大きさに比べ合金微粒子が5桁も小さいため、多層構造をなしてペレット全体を覆った金属結合した合金微粒子の集まりは、ペレットが熱融解した際に、また、熱融解したペレットが変形した際に、ペレットの変形に追従して変形し、ペレット全体を覆う。また、合金微粒子の金属結合で熱融解したペレット同士が結合される。
すなわち、合成樹脂のペレットの集まりに対し、前記した4つの処理をすると、ペレットが金属結合した合金微粒子の集まりで覆われ、ペレットを覆った合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが合成樹脂の融点より低い温度で製造される。このペレットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、ペレットを熱融解させて所定の形状の成形体を成形する。最初にペレットが熱融解し、ペレットの体積がわずかに膨張する。いっぽう、金属結合した合金微粒子の集まりが多層構造を形成してペレットの全体を覆うため、ペレットがわずかに体積膨張すると、合金微粒子の集まりも追従してわずかに変形し、合金微粒子の集まりは熱融解したペレットの全体を依然として覆う。なお、ペレットを覆った合金微粒子は、合成樹脂の融点より低い温度で生成されたため、合成樹脂の融点を超える温度に昇温されると、合金微粒子は隣接する合金微粒子を取り込んで成長してわずかに粗大化する。わずかに粗大化した合金微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、合金微粒子同士が接触部位で互いに金属結合する。このため、粗大化した合金微粒子の集まりは、依然として熱融解したペレットの全体を覆う。次に、熱融解したペレットが成形機ないしは金型から応力を受けて変形する。この際、金属結合した合金微粒子の集まりも同様に変形し、融解ペレットを依然として覆う。また、合金微粒子が接触部位で互いに金属結合し、変形した融解ペレット同士が結合される。この後、熱融解したペレットが冷却されて、成形体が成形される。従って、固化したペレットは、金属微粒子の金属結合で結合されるとともに、固化したペレットを覆う金属結合した金属微粒子が、成形体に連続した経路を形成し、成形体は合金微粒子を構成する合金の性質を持つ。さらに、複数種類の金属化合物における金属の組み合わせを変える、また、複数種類の金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子が形成され、様々な合金の性質を持ち、合金より軽量で腐食しない成形体は様々な用途に用いられる。
以上に説明したように、本製造方法に依れば、6段落で説明した第三の課題を解決して、合成樹脂からなる成形体が製造される。
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銅微粒子の集まりがPET樹脂のペレットの表面に析出した状態を模式的に説明する図である。 銅微粒子の集まりがシート状に引き伸ばされたPET樹脂を覆うとともに、PET樹脂が銅微粒子の金属結合で結合された状態を模式的に説明する図である。
実施形態1
本実施形態は、10段落と18段落とに記載した無機金属化合物からなる錯体に関わる実施形態である。本発明に関わる熱分解で金属を析出する金属化合物は、第一にアルコールに分散し、第二に熱分解で金属を析出する2つの性質を兼備する必要がある。ここでは金属を銀とし、銀化合物を例にして説明する。
最初に、アルコールに分散する銀化合物を説明する。硝酸銀はアルコールに溶解し、銀イオンが溶出し、多くの銀イオンが銀微粒子の析出に参加できない。従って、銀化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質を持つことが必要になる。また、酸化銀、塩化金、硫酸銀、水酸化銀、炭酸銀などの無機銀化合物はアルコール類に分散しない。このため、このような無機金化合物は、銀化合物として適切でない。
いっぽう、銀化合物は銀を析出する性質を持つ。銀化合物から銀が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。さらに、銀化合物の熱分解温度が低ければ、融点が低い合成樹脂のペレットを金属ないしは合金の微粒子で覆うことができる。さらに、こうした処理を行なったペレットを用いて成形体を成形すると、金属ないしは合金の性質を持つ成形体が製造できる。従って、熱分解温度が低い銀化合物は、銀微粒子の原料になる。このような銀化合物として、無機物からなる分子ないしは無機イオンが配位子となって、銀イオンに配位結合する銀錯イオンを有する無機金属化合物からなる銀錯体がある。つまり、配位子が低分子量で、配位子の数が少なく、無機金属化合物を形成する無機物の分子量が小さいため、銀錯体の熱分解温度は低い。さらに、こうした銀錯体は分子量が小さいため、他の銀錯イオンからなる銀錯体より合成が容易で、また、安価である。
すなわち、銀錯体を構成する分子の中で、銀イオンが最も大きい。ちなみに、銀原子の単結合の共有結合半径は128pmであり、窒素原子の単結合の共有結合半径の71pmであり、酸素原子の単結合の共有結合半径は63pmである。このため、配位子が銀イオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、還元雰囲気の熱処理では、最初に配位結合部が分断され、銀と無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後に銀が析出する。
このような無機金化合物からなる銀錯体として、アンモニアNHが配位子となって銀イオンに配位結合するジアンミン銀イオン[Ag(NHを有する銀錯体と、シアン化物イオンCNが配位子となって銀イオンに配位結合するジシアノ銀イオン[Ag(CN)を有する銀錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少ないため、他の銀錯イオンを有する銀錯体に比べて、合成が容易であり安価に製造できる。こうした銀錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体は、無機物の分子量が小さいため、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の低い温度で無機物の気化が完了して銀が析出する。また、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような銀錯体として、例えば、塩化ジアンミン銀[Ag(NH]Cl、硫酸ジアンミン銀[Ag(NHSO、硝酸ジアンミン銀[Ag(NH]NOなどがある。
また熱分解で銅を析出する無機銅化合物からなる銅錯体として、アンモニアNHが配位子となって銅イオンに配位結合するテトラアンミン銅イオン[Cu(NH2+や、ヘキサアンミン銅イオン[Cu(NH2+を有する銅錯体や、塩素イオンClが配位子になって銅イオンに配位結合するテトラクロロ銅イオン[CuCl2―を有する銅錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少ないため、他の銅錯イオンを有する錯体に比べて合成が容易で安価である。また、こうした銅錯イオンを有する無機金属化合物からなる銅錯体は、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の比較的低い温度で熱分解が完了する。さらに、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような銅錯体として、例えば、テトラアンミン銅硝酸塩[Cu(NH](NOやヘキサアンミン銅硫酸塩[Cu(NH]SOがある。
さらに、熱分解でニッケルを析出する無機ニッケル化合物からなるニッケル錯体として、アンモニアNHが配位子となってニッケルイオンに配位結合するヘキサアンミンニッケルイオン[Ni(NH2+からなるニッケル錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少ないため、他のニッケル錯イオンを有する錯体に比べて合成が容易で安価である。こうしたニッケル銅錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体は、無機物の分子量が小さいため、還元性雰囲気で熱処理すると配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の低い温度で熱分解が完了する。また、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このようなニッケル錯錯体として、例えば、ヘキサアンミンニッケル塩化物[Ni(NH]Clがある。このように、無機金属化合物からなる錯体は、様々な金属錯イオンで構成され、また、このような錯体の合成が容易である。
以上に説明したように、無機金属化合物からなる錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少なく、無機金属化合物を形成する無機物の分子量が小さいため、熱分解温度が最も低く、合成が容易で最も安価な金属錯体である。従って、無機金属化合物からなる錯体は、合成樹脂のペレットを金属微粒子で覆う原料になる。
また、無機物の分子ないしは無機イオンからなる同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合する互いに異なる金属錯イオンを有する複数種類の無機金属化合物からなる錯体は、還元雰囲気で熱処理すると、複数種類の錯体の配位結合部が同時に分断され、無機物と複数の金属とに分解され、無機物の気化が完了すると、錯体のモル濃度に応じて複数種類の金属が同時に析出し、これら金属は不純物を持たない活性状態にあるため、錯体のモル濃度比率に応じた組成割合からなる合金が生成される。このため、複数種類の無機金属化合物からなる錯体は、合成樹脂のペレットを合金微粒子で覆う原料になる。
実施形態2
本実施形態は、12段落と20段落とに記載したカルボン酸金属化合物に関わる実施形態である。本発明に関わる熱分解で金属を析出する金属化合物は、第一にアルコールに分散し、第二に熱分解で金属を析出する2つの性質を兼備する必要がある。ここでは金属を銅とし、銅化合物を例にして説明する。
最初に、アルコールに分散する性質を持つ銅化合物を説明する。塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などの無機銅化合物はアルコールに溶解し、銅イオンが溶出してしまい、多くの銅イオンが銅微粒子の析出に参加できなくなる。従って、銅化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質を持つことが必要になる。また、酸化銅、塩化銅、硫化銅などの無機銅化合物は、最も汎用的な溶剤であるアルコール類に分散しない。このため、これらの無機銅化合物は、アルコールに分散する性質を持つ銅化合物として適切でない。
いっぽう、無機物の分子ないしはイオンが、銅イオンに配位結合する銅錯イオンを有する無機銅化合物からなる銅錯体として、28段落で説明したアンミン銅錯体やクロロ銅錯体がある。これらの錯体は、汎用的な有機酸からなる有機銅化合物に比べると高価であるが、熱分解温度が200℃程度と低い特徴を持つ。
ここで、有機銅化合物について説明する。有機銅化合物から銅が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。さらに、有機銅化合物の合成が容易でれば、有機銅化合物が安価に製造できる。こうした性質を兼備する有機銅化合物に、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが銅イオンに共有結合するカルボン酸銅化合物がある。さらに、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より、融点が低い合成樹脂であれば、金属微粒子ないしは合金微粒子のペレットで覆うことができる。さらに、こうした処理を行なったペレットを用いて成形体を成形すると、金属ないしは合金の性質を持つ成形体が製造できる。従って、カルボン酸金属化合物の熱分解温度が低いことが望ましい。
つまり、カルボン酸銅化合物を構成するイオンの中で、最も大きいイオンは銅イオンである。従って、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、銅イオンに共有結合すれば、銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの距離が、イオン同士の距離の中で最も長い。こうしたカルボン酸銅化合物を大気雰囲気で昇温させると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボン酸と銅とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化した後に銅が析出する。なお、還元雰囲気でのカルボン酸銅化合物の熱分解は、大気雰囲気での熱分解より高温側で進むため、大気雰囲気での熱分解のほうが熱処理費用は安価で済む。また、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物が熱分解すると、酸化銅が析出する。
いっぽう、カルボン酸銅化合物の中で、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となって銅イオンに近づいて配位結合するカルボン酸銅は、銅イオンと酸素イオンとの距離が短くなり、反対に、酸素イオンが銅イオンと反対側で結合するイオンとの距離が最も長くなる。このような分子構造の特徴を持つカルボン酸銅化合物の熱分解反応は、酸素イオンが銅イオンと反対側で結合するイオンとの結合部が最初に分断され、この結果、酸化銅が析出する。
さらに、カルボン酸銅化合物は、カルボン酸が最も汎用的な有機酸であるため、合成が容易で最も安価な有機銅化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸銅などの無機銅化合物と反応させると、カルボン酸銅化合物が生成される。このため、有機銅化合物の中で最も安価な有機銅化合物である。
カルボン酸銅化合物の組成式はCu(COOR)で表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸銅化合物を構成する物質の中で、組成式の中央に位置する銅イオンCu2+が最も大きい。従って、銅イオンCu2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンOとが共有結合する場合は、銅イオンCu2+と酸素イオンOとの距離が最大になる。この理由は、銅原子の2重結合における共有結合半径は115pmであり、酸素原子の2重結合における共有結合半径は57pmであり、炭素原子の2重結合における共有結合半径は67pmであることによる。このため、このような分子構造上の特徴を持つカルボン酸銅化合物は、カルボン酸の沸点を超えると、結合距離が最も長い銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、銅とカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に銅が析出する。こうしたカルボン酸銅化合物として、オクチル酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅などがある。このようなカルボン酸銅化合物は、金属石鹸として市販されている安価な工業用薬品である。
さらに、飽和脂肪酸の沸点が低ければ、カルボン酸銅化合物は低い温度で熱分解し始め、熱分解温度が合成樹脂の融点より低くなる。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点が高く、飽和脂肪酸の気化熱が大きいため、熱分解温度が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。
また、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点がさらに低くなり、気化熱も小さい。これによって、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物は、さらに低い温度で熱分解温度する。また、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物も極性を持ち、アルコールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸は構造式がCH(CHCH(C)COOHで示され、CHでCH(CHとCとのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、ラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、銅を析出する原料として、オクチル酸銅Cu(C15COO)が望ましい。オクチル酸銅は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了して銅が析出し、メタノールやn−ブタノールなどに10重量%近く分散する。
同様にアルミニウムを析出する原料としてオクチル酸アルミニウムAl(C15COO)が、鉄を析出する原料としてオクチル酸鉄Fe(C15COO)が、ニッケルを析出する原料としてオクチル酸ニッケルNi(C15COO)が望ましい。このようにオクチル酸金属化合物は、様々な金属イオンで構成され、オクチル酸金属化合物の合成が容易である。
また、同一の飽和脂肪酸を構成するカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、飽和脂肪酸の沸点を超えると、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に飽和脂肪酸と複数種類の金属とに分解され、さらに、飽和脂肪酸の気化が完了した後に複数種類の金属が同時に析出する。これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、カルボン酸金属化合物のモル数に応じた金属の比率からなる合金が生成される。このため、複数種類のカルボン酸金属化合物は、合成樹脂のペレットを覆う合金微粒子の原料になる。
実施形態3
本実施形態は、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコールより粘度が高く、第三に沸点がアルコールの沸点より高く、金属化合物が熱分解する温度より低い、これら3つの性質を兼備する有機化合物に関する実施形態である。これら3つの性質を兼備する有機化合物は、熱分解で金属を析出する金属化合物のアルコール分散液と均一に混ざり合った混合液を構成する。このような有機化合物に、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類に属する有機化合物がある。
つまり、無機金属化合物からなる錯体は180−220℃で熱分解する。またカルボン酸金属化合物は290−430℃で熱分解する。従って、沸点が180℃より低い有機化合物は、錯体およびカルボン酸金属化合物が分散された混合液を構成する。また、沸点が290℃より低い有機化合物は、カルボン酸金属化合物が分散された混合液を構成する。
最初にカルボン酸エステル類について説明する。カルボン酸エステル類は、飽和カルボン酸からなるエステル類と、不飽和カルボン酸からなるエステル類と、芳香族カルボン酸からなるエステル類に分けられる。
飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が180℃より低いカルボン酸エステルは、分子量が158.2であるカプリル酸メチル(オクタン酸メチルともいう)より分子量が小さいカルボン酸エステルである。なお、カプリル酸メチルの沸点は191℃である。また、沸点が290℃より低い飽和カルボン酸からなるエステル類は、分子量が256.4であるミリスチン酸エチル(テトラデカン酸エチルともいう)より分子量が小さいカルボン酸エステルである。なお、ミリスチン酸エチルの沸点は295℃である。
不飽和カルボン酸からなるエステル類で、メタノールに混和し、メタノールより粘度が高く、沸点が180℃より低いカルボン酸エステルは、分子量が198であるメタクリル酸オクチルより分子量が小さいカルボン酸エステルである。ちなみに、メタクリル酸プロピルの沸点は141℃で、メタクリル酸オクチルの沸点は235℃である。また、沸点が290℃より低い不飽和カルボン酸からなるエステル類は、分子量が296.6であるオレイン酸メチルより分子量が小さいカルボン酸エステルである。なお、メタクリル酸フェニルの沸点は249℃で、オレイン酸メチルの沸点は351℃である。
芳香族カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が180℃より低いカルボン酸エステルは、分子量が136である安息香酸メチルより分子量が小さいカルボン酸エステルである。なお、安息香酸メチルの沸点は199.5℃である。また、沸点が290℃より低い芳香族カルボン酸からなるエステル類は、分子量が194であるフタル酸ジメチル以下の分子量のカルボン酸エステルである。なお、フタル酸ジメチルの沸点は284℃である。
以上に説明したように、カルボン酸エステル類には、30段落で説明した3つの性質を兼備する多くの有機化合物が存在し、錯体ないしはカルボン酸金属化合物のアルコール分散液と均一に混ざり合って混合液を構成する。
次に、グリコール類について説明する。グリコール類には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールからなる6種類のグリコールがある。
エチレングリコールはメタノール溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が197℃の液状モノマーである。ジエチレングリコールはメタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が244℃の液状モノマーである。プロピレングリコールはメタノールと混和し、メタノールより粘度が高く、沸点が188℃の液状モノマーである。ジプロピレングリコールはメタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が232℃の液状モノマーである。トリプロピレングリコールはメタノールと混和し、メタノールより粘度が高く、沸点が265℃の液状モノマーである。いずれも沸点が290℃より低いグリコールである。
以上に説明したように、グリコール類には30段落で説明した3つの性質を兼備する有機化合物が存在し、カルボン酸金属化合物のアルコール分散液と均一に混ざり合って混合液を構成する。
最後に、グリコールエーテル類について説明する。グリコールエーテル類は、エチレングリコール系エーテルと、プロピレングリコール系エーテルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの各々の末端の水素をアルキル基で置換したジアルキルグリコールエーテルとの3種類がある。いずれのグリコールエーテルは、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高い。
最初に、エチレングリコール系エーテルの中で、沸点が180℃より低い性質を持つものは、沸点が124.5℃のメチルグリコールと、沸点が141.8℃のイソプロピルグリコールと、沸点が159℃であるアリルグリコールと、沸点が160.5℃のイソブチルグリコールと、沸点が171.2℃であるブチルグリコールがある。また、沸点が290℃より低い性質を持つものは、沸点が229℃の2エチルヘキシルグリコールと、沸点が231℃の部ジルジグリコールと、沸点が245℃のフェニルグリコールと、沸点が249℃のメチルトリグリコールと、沸点が256℃のベンジルグリコールと、沸点が259℃のヘキシルジグリコールと、沸点が271℃のブチルトリグリコールと、沸点が272℃の2エチルヘキシルグリコールと、沸点が283℃のフェニルジグリコールがある。
プロピレングリコール系エーテルの中で、沸点が180℃より低い性質を持つものは、沸点が121℃のメチルプロピレングリコールと、沸点が146℃であるメチルプロピレングリコールアセテートと、沸点が149.8℃のプロピルプロピレングリコールと、沸点が170.2℃のブチルプロピレングリコールがある。また、沸点が290℃より低い性質を持つものは、沸点が231℃のブチルプロピレンジグリコールと、沸点が242℃のメチルプロピレンジグリコールと、沸点が243℃のフェニルプロピレングリコールと、沸点が最も高い274℃のブチルプロピレントリグリコールとがある。
ジアルキルグリコールエーテルの中で、沸点が180℃より低いものは、沸点が85.2℃のジメチルグリコールと、沸点が162℃のジメチルジグリコールと、沸点が171℃のジメチルプロピレンジグリコールと、沸点が176℃のメチルエチルジグリコールとがある。また、沸点が290℃より低い性質を持つものは、沸点が189℃のジエチルジグリコールと、沸点が216℃のジメチルトリグリコールと、沸点が255℃のジブチルジグリコールがある。
以上に説明したように、グリコールエーテル類には、30段落で説明した3つの性質を兼備する多くの有機化合物が存在し、錯体ないしはカルボン酸金属化合物のアルコール分散液と均一に混ざり合って混合液を構成する。
実施形態4
本実施形態は、金属化合物が熱分解する温度より融点が高い合成樹脂に関する実施形態である。つまり、無機金属化合物からなる錯体は180−220℃で熱分解し、カルボン酸金属化合物は290−430℃で熱分解する。従って、合成樹脂の融点が180−220℃より高ければ、無機金属化合物からなる錯体に属する金属化合物を用いて、金属微粒子ないしは合金微粒子の集まりで合成樹脂のペレットを覆い、金属微粒子ないしは合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが製造できる。また、このようなペレットの集まりを成形の材料として用いると、金属ないしは合金の性質を持つ成形体が製造できる。また、合成樹脂の融点が290−430℃より高ければ、カルボン酸金属化合物に属する金属化合物を用いて、金属微粒子ないしは合金微粒子の集まりで合成樹脂のペレットを覆い、金属微粒子ないしは合金微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが製造できる。また、このようなペレットの集まりを成形の材料として用いると、金属ないしは合金の性質を持つ成形体が製造できる。
いっぽう、合成樹脂は熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に大別される。熱硬化性樹脂は加熱によって重合反応が起こり、高分子の網目構造が形成されて硬化し、もとの状態に戻らない。このため、熱硬化性樹脂は融点を持たず、また、加熱による重合反応は不可逆変化である。これに対し熱可塑性樹脂は、加熱すると軟化してゴム状の弾性を示す状態となり、さらに加熱を続けると、弾性を失って流動状態(液相)になる。この際、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とでは、加熱時の挙動が大きく異なる。なお、結晶性樹脂は僅かな非晶部分が混在し、非結晶性樹脂は、全てが非結晶状態にはなく、ごく一部が結晶状態にある。
つまり、非結晶性樹脂を昇温すると、無定形の高分子の鎖が結合したガラス状の脆い状態からゴム状の弾性を示す状態に移る。この転移をガラス転移と言い、ガラス転移する温度をガラス融点と呼ぶ。さらに昇温すると、ゴム状の流動状態から弾性を失った液状の流動状態に徐々に移るが、結晶度が極めて低いため、全ての転移が完了する温度が明確でなく、非結晶性の合成樹脂は融点を持たない。
これに対し、結晶性樹脂は結晶度が高く、ゴム状の流動状態から弾性を失った液状の流動状態に移る転移が完了する温度が明確に現れ、この温度を融点と呼ぶ。さらに昇温すると、高分子の鎖が断ち切れられる温度に到達し、さらに昇温すると、高分子の鎖が断ち切れられる箇所が増大し、徐々に低分子量に変わる。高分子構造に変化が現れ始める温度を熱分解温度と呼び、熱分解が始まると元の高分子構造に戻らない。従って、融解された結晶性樹脂は、熱分解温度以上に昇温しなければ、冷却すると元の性質に戻る。このため、熱可塑性の結晶性樹脂からなるペレットは、金属微粒子の集まりで覆うことができる。
融点が180℃より高い熱可塑性の結晶性樹脂として、次の合成樹脂がある。PETの記号で表記されるポリエチレンテレフタレート樹脂の融点は245℃で、透明性に優れ、シートやフィルム、ボトルで使われることが多い。PVDCの記号で表記されるポリ塩化ビニリデン樹脂の融点は210℃で、酸やアルカリの耐薬品性に優れ、ガスバリア性にも優れた無色透明の弾性のあるプラスチック材料であるため、サランラップ(ダウ・ケミカル社と旭化成株式会社の登録商標)にも使われている。ナイロンと呼ばれPAの記号で表記されるポリアミド樹脂の中で最もポピュラーなPA6の融点は225℃であり、繊維の他に、熱可塑性のエンプラ材料として汎用的に使用されている。PA6より耐熱性、機械的強度に優れたPA66の融点は265℃である。PBTの記号で表記されるポリブチレンテレフタレート樹脂の融点は232−267℃であり、電気特性をはじめ、物性のバランスがとれたプラスチックで、寸法安定性、熱安定性が良好なため、特に精密さが要求される部品に使用される。PPSの記号で表記されるポリフェニレンサルファイド樹脂の融点は290℃であり、優れた耐薬品性をもち、流動性も高く成形性も容易で、絶縁性にも優れ、誘電率が殆ど変らない性質を持つため、最も優れたエンプラ材料として使用されている。PFAの記号で表記される熱可塑性のフッ素樹脂であるペルフルオロアルコキシフッ素樹脂の融点は310℃であり、溶融成形できないフッ素樹脂PTFE樹脂に近い耐薬品性と耐候性とを持ち、絶縁性にも優れ、絶縁抵抗、絶縁破壊はプラスチックの中で最も優れた値を持ち、吸湿、吸水性もともに0%の値を持ち、透明性はPTFE樹脂より優れる。PCTFEの記号で表記されるポリクロロトリフルオロエチレン樹脂の融点は220℃であり、PFAに比べると耐熱性や耐薬品性に劣るフッ素樹脂であるが、機械的強度や光学特性では優れた特性を持ち、無色透明で流動性がよく、成形しやすい樹脂である。CAの記号で表記される酢酸セルロース樹脂の融点は230℃であり、耐侯性に優れ、直射日光や紫外線下に長期間曝されても劣化せず、耐薬品性については繊維素系(セルロース誘導体)樹脂のなかでも最も優れ、また、電気特性にも優れ、絶縁材料として使うことができる。LCPの記号で表記される液晶ポリマーの融点は370℃と高く、耐熱性と高流動性と固化が早いハイサイクル性とを持つ優れたエンプラ材料である。
以上に説明したように、PET樹脂、PVDC樹脂、PA6樹脂、PA66樹脂、PBT樹脂、PPS樹脂、PCTFE樹脂およびCA樹脂からなるペレットは、無機金属化合物からなる錯体に属する金属化合物を用いて、金属微粒子ないしは合金微粒子の集まりでペレットを覆い、微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが製造できる。また、PFA樹脂と液晶ポリマーからなるペレットは、カルボン酸金属化合物に属する金属化合物を用いて、金属微粒子ないしは合金微粒子の集まりでペレットを覆い、微粒子の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりが製造できる。さらに、このようなペレットの集まりを用い、従来の合成樹脂の成形体を製造する製法によって、金属ないしは合金の性質を持つ成形体が製造できる。
実施例1
本実施例は、合成樹脂のペレットが銅微粒子の集まりで覆われ、この銅微粒子同士の金属結合でペレット同士が結合されたペレットの集まりを製造する実施例である。つまり、銅は比重が8.9で、断面積が1cmで長さが1cmあたりの比導電率が1.00であり、透磁率が真空の透磁率に近い1.00である。いっぽう、電磁波の反射損失の度合いは、比透磁率に対する比導電率の比率に比例する。このため、銅の反射損失の度合いは1.00となり、金属の中で銀の反射損失の度合いの1.06に次いで高い。いっぽう銀の比重は銅の1.2倍で銅より高価な金属である。従って、本実施例におけるペレットの集まりを用いて製作した合成樹脂の成形体が銅に近い導電性を示せば、電磁波を反射する性能に優れたシールドフィルム、シールドテープ、シールドシートないしはシールド板として用いることができ、金属からなる基材に比べて軽量で腐食することがない。
銅微粒子の原料として、還元雰囲気での熱分解温度が200℃であるテトラアンミン銅硝酸塩[Cu(NH](NO(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。また、有機化合物として、沸点が126℃で、メタノールに溶解し、メタノールの粘度の1.25倍を持つ酢酸ブチルCHCOO(CHCH(例えば、昭和化学株式会社の製品)を用いた。酢酸ブチルは食品添加物の香料として、また、溶剤や中間原料として、塗料の希釈、天然ゴム、医薬品、接着剤などの製造に汎用的に用いられている工業用薬品である。さらに、合成樹脂のペレットとして融点が245℃であるPET樹脂(例えば、三菱化学株式会社の製品)を用いた。使用したペレットの形状は2mm×4mm×3mmの楕円柱で、密度が1.36g/cmであり、1個のペレットの重量は25.6mgに相当する。
ここで、ペレットの表面を覆う銅微粒子が直径50nmの球状微粒子とすると、1個のペレットを覆う銅微粒子の数は1.48×1010個になる。また、1モル(255グラムに相当する)のテトラアンミン銅硝酸塩から析出する銅微粒子の数は10.85×1016個に相当する。従って、6.4kg(25万個のペレットに相当する)のペレットを用いると、金属結合した銅微粒子の集まりが29層の厚みでペレットの表面に積層する。いっぽう、銅微粒子が29層の厚みの多層構造でペレットを覆っても、使用する銅錯体の重量は、ペレットの重量のわずかに25分の1に過ぎない。また、ペレットとテトラアンミン銅硝酸塩を構成する銅との重量比は、33.4対1になる。
最初に、テトラアンミン銅硝酸塩の255g(1モルに相当)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液に酢酸ブチルが20重量%になるように混合した。この混合液に、予め除湿乾燥機で予備乾燥させた6.4kgのペレットを混合して撹拌した。
次に、この混合物を容器に入れ、水素ガス雰囲気で焼成した。最初に65℃に昇温してメタノールを気化し、さらに130℃に昇温して酢酸ブチルを気化した。次に、200℃に5分間放置し、テトラアンミン銅硝酸塩を熱分解し、ペレットの集まりを製作した。
さらに、製作した試料を、表面と切断した複数の断面について電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、さらに導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる。
最初に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面はいずれの部位も、40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、表面全体に満遍なく形成されていた。また、試料の断面は、微粒子が30層前後の厚みでペレットの表面に積層していた。
次に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められなかったので、単一原子から構成されていることが分かった。
さらに、試料の表面と複数の断面からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒子を構成する元素の種類を分析した。粒状微粒子は銅原子のみで構成されていたため、銅の粒状微粒子である。
以上の観察結果から、銅微粒子が30層前後の厚みでPET樹脂のペレットの表面に積層すると共に、銅微粒子の金属結合でペレットが結合されていることが分かった。試料の断面を図1に模式的に示した。1はPET樹脂のペレットで、2は銅微粒子である。
また、試料表面の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した(例えば、シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST−4)。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であったため、試料は銅に近い表面抵抗を有した。
以上の結果から、本実施例で製造した試料は銅に近い導電性を持つ。なお、本実施例は一例に過ぎない。38段落で説明したように、PET樹脂に限らず、PVDC樹脂、PA6樹脂、PA66樹脂、PBT樹脂、PPS樹脂、PCTFE樹脂およびCA樹脂の融点は、無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度より高く、これらの合成樹脂のペレットを用いることができる。また、28段落で説明したように、無機金属化合物からなる錯体は、還元雰囲気での熱分解温度が前記した合成樹脂の融点より低いため、様々な金属錯イオンを有する金属錯体を用いることで、様々な金属微粒子の金属結合で様々な合成樹脂のペレットが結合されたペレットの集まりが製造をできる。
実施例2
実施例1で製造したPET樹脂のペレットの集まりを用いて、カレンダー成形によって0.5mmの厚みのシートを成形した。
作成した試料の切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。PET樹脂は薄いシート状に引き伸ばされ、その表面が銅微粒子の集まりで覆われるとともに、PET樹脂は銅微粒子の集まりで結合されていた。試料の断面を図2に模式的に示した。3はPET樹脂のペレットで、4は銅微粒子である。
さらに作成した試料を小片として切り出し、実施例1と同様に、小片の表面抵抗を表面抵抗計によって測定した。この結果、表面抵抗値は1×10Ω/□未満であった。このため、PET樹脂からなるシートは、電磁波を反射する性能に優れたシールドフィルム、シールドテープないしはシールドシートとして用いることができる。またペレットと銅との重量比は33.4対1であるため、PET樹脂からなるシートの比重は、銅の比重8.96より著しく小さい1.58になる。このため、本実施例で製作したシートは、銅より著しく軽い電磁波を反射するシールドフィルム、シールドテープないしはシールドシートになる。
なお本実施例は一例に過ぎない。押出成形機によって、融解した合成樹脂をシート形状に押し出し、この後、加熱軟化させて金型に挟み込み、金型とシートの隙間を真空引きしてシートを金型に密着させ、さらに、絞り加工を施すサーモフォーミング加工によって、39段落で説明した様々な合成樹脂からなる様々な形状の容器が成形できる。また、ダイレクトブロー成形加工や2軸延伸ブロー成形加工によって、ボトル形状の成形品が成形できる。さらに、インジェクション成形加工によって、様々な形状の成形品が成形できる。さらに、28段落で説明したように、様々な金属錯イオンからなる金属錯体を用いることで、様々な金属の性質を持つ合成樹脂の成形体が、金属より軽量な成形体として製造できる。
実施例3
本実施例は、合成樹脂のペレットがアルミニウム微粒子の集まりで覆われ、このアルミニウム微粒子の金属結合でペレットが結合されたペレットの集まりを製造する実施例である。なお、アルミニウムは銀、銅、金に次いで優れた熱伝導性と導電性を有し、比重が2.70と小さい。従って、本実施例におけるペレットの集まりを用いて製作した合成樹脂の成形体が、アルミニウムに近い導電性を持てば、アルミニウムよりさらに軽量な放熱板、放熱シートなどの放熱基材として用いることができる。従って、合成樹脂の耐熱性が高ければ、例えば、融点が370℃の液晶ポリマーは、大気雰囲気での熱分解温度が535℃であるため、液晶ポリマーを用いれば、500℃を超える耐熱性を持つ放熱基材が製造できる。
アルミニウムの原料として、大気雰囲気の290℃で熱分解するオクチル酸アルミニウムAl(C15COO)(例えば、ホープ製薬株式会社の製品)を用いた。オクチル酸アルミニウムは、金属石鹸として市販されている安価な工業用薬品である。また、合成樹脂のペレットとして、融点が370℃の液晶ポリマー(例えば、JX日鉱日石エネルギー株式会社の製品であるザイダーM―450)を用いた。液晶ポリマーの比重は1.35であり、アルミニウムの比重の1/2である。さらに、有機化合物として、沸点が224℃で、メタノールに混和し、メタノールの粘度の2.4倍を持つカプリン酸メチルCH(CHCOOCH(例えば、東京化成工業株式会社の製品)を用いた。カプリン酸メチルは、合成繊維油剤、金属油剤、合成潤滑剤、合成樹脂用、化粧品用、界面活性剤などの原料などに用いられる汎用の工業用薬品である。
使用したペレットの形状は、2mm×4mm×3mmの楕円柱であり、実施例1に記載したように、ペレットの表面を覆うアルミニウム微粒子が直径50nmの球状微粒子とすると、1個のペレットを覆うアルミニウム微粒子の数は1.48×1010個になる。また、1モル(457グラムに相当する)のオクチル酸アルミニウムから析出するアルミニウム微粒子の数は15.2×1016個に相当する。従って、6.4kg(25万個のペレットに相当する)のペレットを用いると、金属結合した銅微粒子が41層の厚みでペレットの表面に積層する。いっぽう、アルミニウム微粒子が41層からなる多層構造でペレットを覆っても、使用するオクチル酸アルミニウムの重量は、ペレットの重量のわずかに14分の1に過ぎない。また、ペレットとオクチル酸アルミニウムを構成するアルミニウムとの重量比は、15対1になる。
最初に、オクチル酸アルミニウムの457g(1モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にカプリン酸メチルが10重量%になるように混合した。この混合液に、予め除湿乾燥機で予備乾燥させた6.4kgのペレットを混合して撹拌した。
次に、この混合物を容器に入れ、大気雰囲気で焼成した。最初に、65℃に昇温してメタノールを気化し、さらに230℃に昇温してカプリン酸メチルを気化した。次に、290℃に1分間放置し、オクチル酸アルミニウムを熱分解した。
さらに、製作した試料を、表面と切断した複数の断面について、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。
最初に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面はいずれの部位も、40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、表面全体に満遍なく形成されていた。また試料の断面は、40層前後の厚みで粒状微粒子がペレットの表面に積層されていた。
次に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められなかったので、単一原子から構成されていることが分かった。
さらに、試料の表面と複数の断面からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒子を構成する元素の種類を分析した。粒状微粒子はアルミニウム原子のみで構成されていたため、アルミニウムの粒状微粒子である。
以上の観察結果から、液晶ポリマーのペレット表面が多数のアルミニウム微粒子で覆われと共に、アルミニウム微粒子の金属結合でペレットが結合されていることが分かった。この結果は、実施例1の結果と類似しているため図示しない。
また、実施例1と同様に、試料表面の複数個所の表面抵抗を表面抵抗計で測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であり、試料はアルミニウムに近い表面抵抗を有した。
以上の結果から、本実施例で製造した試料は、アルミニウムに近い導電性を持つ。なお、本実施例は一例に過ぎない。38段落で説明したように、液晶ポリマーに限らず、PFA樹脂の融点はオクチル酸金属化合物の熱分解温度より高いため、PFA樹脂のペレットを用いることができる。また、29段落で説明したように、様々な金属イオンからなるオクチル酸金属化合物を用いることで、様々な金属微粒子の集まりで液晶ポリマーないしはPFA樹脂のペレットを覆い、金属微粒子の金属結合で結合されたペレットの集まりが製造できる。
実施例4
実施例3で製造した液晶ポリマーのペレットを用いて、カレンダー成形によって2mmの厚みのシートを成形した。
作成した試料の切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。液晶ポリマーは薄いシート状に引き伸ばされ、その表面がアルミニウム微粒子の集まりで覆われるとともに、液晶ポリマーはアルミニウム微粒子の集まりで結合されていた。この結果は、実施例2のPET樹脂からなるシートに類似しているため図示しない。
さらに、作成した試料を小片として切り出し、実施例1と同様に、小片の表面抵抗を表面抵抗計によって測定した。この結果、表面抵抗値は1×10Ω/□未満であった。このため、液晶ポリマーからなるシートは、アルミニウムの性質を持つ放熱板、放熱シートなどの放熱基材として用いることができる。またペレットとアルミニウムとの重量比は、15対1であるため、液晶ポリマーからなるシートの比重は、アルミニウムの比重2.70よりさらに小さい1.43になる。このため、本実施例のシートは、アルミニウムよりさらに軽量の放熱基材として用いることができる。
なお、本実施例は一例に過ぎない。液晶ポリマーは融解時の流動性が優れているため、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などによって様々な形状の成形体が製造できる。さらに、29段落で説明したように、様々な金属イオンからなるオクチル酸金属化合物を用いることで、様々な金属の性質を持つ液晶ポリマーからなる成形体が、金属より軽量な成形体として製造できる。
実施例5
本実施例は、アルミニウム微粒子の金属結合でPFA樹脂のペレットが結合されたペレットの集まりを製造する実施例である。このようなペレットの集まりを用いてフィルムないしはシートを成形すると、成形体は透明導電性基材として用いることができる。
つまり、基材が透明体であるためには、入射光が高い透過率で基材を透過しなければならない。いっぽう、基材に光が入射する際に、空気の屈折率との差によって表面反射が生じる。基材はアルミニウム微粒子とPFA樹脂とで構成される。従って、基材に光が入射する際に、PFA樹脂とアルミニウム微粒子が表面反射をもたらす。表面反射率は、空気との屈折率の差を両者の和で割った値の2乗になる。屈折率が1.34のPFA樹脂は表面反射率が2.1%になり、97.9%の光が基材に入射する。また、屈折率が1.48のアルミニウムからなる微粒子は表面反射率が3.7%になり、96.3%の光が基材に入射する。さらに、基材に入射する光の割合は全光線透過率で表され、全光線透過率は入射光の全体を1とした場合、1から表面反射率を差し引いた値の2乗になる。このため、全光線透過率は、PFA樹脂で95.8%になり、アルミニウム微粒子で93%となる。最も一般的なフロートガラスの2mmの板厚の全光線透過率が90%であるため、PFA樹脂とアルミニウム微粒子とからなる基材は、入射光に対する高い透過率を持つことになる。
次に、表面を透過した光は基材に入り込んで光が散乱する。基材が透明体であるためには光の散乱が起こりにくい、つまり、散乱係数が小さいことが必要になる。光の散乱はレイリー散乱に基づき、PFA樹脂の屈折率に対するアルミニウムの屈折率の比率mについて、レイリー散乱係数は{(m−1)/(m+1)}に比例する。従って、比率mは1.10になり、{(m−1)/(m+1)}は9.8×10―3と小さい。さらに散乱係数は、可視光の波長λに対する粒子径Dの比率D/λの4乗と、粒子径Dの2乗とに比例する。アルミニウム微粒子の平均粒径を50nmとすると、可視光の波長380−780nmに対する比率D/λの4乗は1.3×10―5−2.9×10―4になり、粒子径Dの2乗が2.5×10―15になり、{(m−1)/(m+1)}が9.8×10―3であるため、散乱係数は極めて小さな値になる。この結果、本実施例における基材は高い透明性を示す。従って、PFA樹脂とアルミニウム微粒子とからなる透明基材が、アルミニウムに近い導電性を持てば、透明導電性基材になる。
アルミニウムの原料は、実施例3と同様にオクチル酸アルミニウムを用いた。またPFA樹脂のペレットは、比重が2.15であるスリーエムジャパン株式会社のPFA6525TZを用いた。さらに、有機化合物は、実施例3と同様にカプリン酸メチルを用いた。
使用したペレットの形状は2mm×4mm×3mmの楕円柱であり、実施例3に記載したように、アルミニウム微粒子が直径50nmの球状微粒子とすると、1個のペレットを覆うアルミニウム微粒子の数は1.48×1010個になる。また、1モル(457グラムに相当する)のオクチル酸アルミニウムから析出するアルミニウム微粒子の数は15.2×1016個に相当する。従って、10.1kg(25万個のペレットに相当する)のペレットを用いると、金属結合した銅微粒子の集まりが41層の厚みをなしてペレットの表面に積層する。このように、アルミニウム微粒子が41層からなる多層構造でペレットを覆っても、使用するオクチル酸アルミニウムの重量は、ペレットの重量のわずかに22分の1に過ぎない。また、ペレットとオクチル酸アルミニウムを構成するアルミニウムとの重量比は、23.5対1になる。
最初に、オクチル酸アルミニウムの457g(1モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にカプリン酸メチルが10重量%になるように混合した。この混合液に、予め除湿乾燥機で予備乾燥させた10.1kgのペレットを混合して撹拌した。
次に、この混合物を容器に入れ、大気雰囲気で焼成した。最初に、65℃に昇温してメタノールを気化し、さらに230℃に昇温してカプリン酸メチルを気化した。次に、290℃に1分間放置し、オクチル酸アルミニウムを熱分解した。
さらに、製作した試料を、表面と切断した複数の断面について、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。実施例3に類似して、40層前後の厚みでアルミニウムからなる粒状微粒子が、PFA樹脂のペレットの表面に積層され、アルミニウム微粒子の金属結合でペレットが結合された。この結果は、実施例1の結果と類似しているため図示しない。
また、実施例1と同様に、試料表面の複数個所の表面抵抗を表面抵抗計で測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であり、試料はアルミニウムに近い表面抵抗を有した。
以上の結果から、本実施例で製造した試料は、アルミニウムに近い導電性を持つ。なお、本実施例は一例に過ぎない。29段落で説明したように、様々な金属イオンからなるオクチル酸金属化合物を用いることで、様々な金属微粒子の集まりでPFA樹脂のペレットを覆い、金属微粒子の金属結合で結合されたペレットの集まりが製造できる。
実施例6
実施例5で製造したPFA樹脂のペレットを用いて、Tダイ法によって0.5mmの厚みのフィルムを成形した。
作成した試料の切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。PFA樹脂は薄いフィルム状に引き伸ばされ、その表面がアルミニウム微粒子の集まりで覆われるとともに、隣り合うPFA樹脂はアルミニウム微粒子の集まりで結合されていた。この結果は、実施例2のPET樹脂からなるシートに類似しているため図示しない。
さらに、作成した試料を小片として切り出し、実施例1と同様に、小片の表面抵抗を表面抵抗計によって測定した。この結果、表面抵抗値は1×10Ω/□未満であった。このため、PFA樹脂からなるシートは、透明導電性フィルムとして用いることができる。また、PFA樹脂に対するアルミニウムの重量比は23.5対1であるため、PFA樹脂からなるシートの比重はアルミニウムの比重2.70よりさらに小さい2.17になる。このため、本実施例のシートは、アルミニウムよりさらに軽量の透明導電性フィルムとして用いることができる。
なお、本実施例は一例に過ぎない。PFA樹脂は熱可塑性の溶融成形できるフッ素樹脂であるため、射出成形、トランスファー成形、押出成形、ブロー成形、溶融圧縮成形などによって様々な成形体で成形できる。また、29段落で説明したように、様々な金属イオンからなるオクチル酸金属化合物を用いることで、様々な金属の性質を持つPFA樹脂からなる成形体が製造できる。
実施例7
本実施例は、液晶ポリマーのペレットが、パーマロイと呼ばれるニッケルと鉄とを主成分とする合金の微粒子の集まりで覆われ、この合金微粒子の金属結合でペレットが結合されたペレットの集まりを製造する実施例である。本実施例におけるパーマロイは、モル比がニッケル80、モリブデン5、鉄15の割合からなるPCパーマロイである。このPCパーマロイの直流磁気特性は、初透磁率が60,000、最大透磁率が180,000、飽和磁束密度が0.65テスラ、保持力が1.2A/mの特性を持つ。交流のインダクタンスは板厚が薄いほど高く、0.1mmの板厚では、0.3KHzで50,000、1kHzで34,000、3kHzで14,500のインダクタンスを持つ。このため、100kHz付近までの電磁波を吸収する性能を持つ。なお、従来のPBパーマロイないしはPCパーマロイからなる薄体は、パーマロイを水素雰囲気の1100℃で磁気焼鈍し、溶製材の表面の酸化膜や内部に存在する不純物としての酸化物を除去し、さらに、圧延して箔状に引き伸ばした後に、加工に伴う歪を除去する歪取焼鈍を行う。これに対し本実施例では、3種類の金属化合物の熱分解でニッケルとモリブデンと鉄とを同時に析出させ、不純物を持たない合金が生成するため、従来のパーマロイの製造における水素焼鈍と歪取焼鈍との双方が不要になる。
ニッケルと鉄の原料はオクチル酸金属化合物を用いた。なお、これらのオクチル酸金属化合物は市販されていないため次の製法で精製した。組成式がC15COOHで表されるオクチル酸(協和発酵ケミカル株式会社の製品)を水酸化ナトリウムNaOH(試薬一級品)の水溶液と反応させると、オクチル酸のカルボキシル基COOHを構成する水素が電離し、電離したカルボキシル基にナトリウムが結合し、C15COONaの組成式で表されるオクチル酸ナトリウムが析出する。このオクチル酸ナトリウムを水洗して、オクチル酸ナトリウムを精製する。次に、オクチル酸ナトリウムを硫酸ニッケル(試薬一級品)ないしは硫酸鉄(試薬一級品)の水溶液と反応させると、オクチル酸ニッケルNi(C15COO)ないしはオクチル酸鉄Fe(C15COO)が析出する。析出したオクチル酸ニッケルないしはオクチル酸鉄を水洗して、オクチル酸ニッケルないしはオクチル酸鉄を精製する。なお、オクチル酸モリブデンMo(C15COO)(CAS番号が34041−09−3に相当する工業薬品)は前記の製法では合成できないため輸入品を用いた。有機化合物は、実施例3と同様にカプリン酸メチルを用いた。
最初に、オクチル酸ニッケルの276g(0.8モルに相当する)と、オクチル酸モリブデンの48g(0.05モルに相当する)とオクチル酸鉄の73g(0.15モルに相当する)の各々が、10重量%になるようにメタノールに分散し、これらのメタノール分散液を混合した。この混合液にカプリン酸メチルが10重量%になるように混合した。さらに、予め除湿乾燥機で予備乾燥させた6.4kgのペレットを混合して撹拌した。従って、使用するオクチル酸金属化合物の総重量は、ペレットの重量のわずかに16分の1に過ぎない。また、析出するPCパーマロイの重量は、ペレットの重量のわずかに106分の1に過ぎない。このため、本実施例で製造するPCパーマロイの微粒子で覆われた液晶ポリマーの比重は、液晶ポリマーの比重1.35に近い1.40の値を持つ。いっぽう、PCパーマロイの比重は8.76であり、本実施例で製造する液晶ポリマーは、PCパーマロイの重量の1/6に相当する軟磁性材料になる。
次に、この混合物を容器に入れ、大気雰囲気で焼成した。最初に65℃に昇温してメタノールを気化し、さらに230℃に昇温してカプリン酸メチルを気化した。次に、290℃に1分間放置し、3種類のオクチル酸金属化合物を熱分解した。
さらに、製作した試料を、表面と切断した複数の断面について、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。
最初に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面はいずれの部位も、40n−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、表面全体に満遍なく形成されていた。また試料の断面は、30層前後の厚みで粒状微粒子がペレットの表面に積層されていた。
次に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められたため、複数種類の原子から構成されていることが分かった。
さらに、試料の表面と複数の断面からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素の種類を分析した。多量のニッケル原子と少量の鉄原子と僅かなモリブデン原子とで構成されていたため、使用したオクチル酸金属化合物のモル比から、粒状微粒子はニッケル80、モリブデン5、鉄15の割合からなる粒状微粒子である。
以上の観察結果から、液晶ポリマーのペレット表面が多数のPCパーマロイ微粒子で覆われ、PCパーマロイ微粒子の金属結合でペレットが結合されていることが分かった。
また、実施例1と同様に、試料表面の複数個所の表面抵抗を表面抵抗計で測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であり、試料はPCパーマロイに近い表面抵抗を有した。なお、PCパーマロイの比抵抗は55μΩcmである。
以上の結果から、本実施例で製造した試料は、PCパーマロイに近い性質を持つ。なお、本実施例は一例に過ぎない。38段落で説明したように、液晶ポリマーに限らず、PFA樹脂のペレットを用いることができる。また、29段落で説明したように、様々な金属イオンからなる複数種類のオクチル酸金属化合物を組み合わせると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりで液晶ポリマーないしはPFA樹脂のペレットが覆われ、合金微粒子の金属結合で結合されたペレットの集まりが製造できる。
実施例8
本実施例は、実施例7で製造した液晶ポリマーのペレットを用いて、Tダイ法によって0.1mmの厚みのフィルムを成形した実施例である。
作成した試料の切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。液晶ポリマーは薄いフィルム状に引き伸ばされ、その表面がPCパーマロイの微粒子の集まりで覆われるとともに、液晶ポリマーはPCパーマロイの微粒子の集まりで結合されていた。
さらに、作成した試料を小片として切り出し、実施例1と同様に、小片の表面抵抗を表面抵抗計によって測定した。この結果、表面抵抗値は1×10Ω/□未満であった。このため、液晶ポリマーからなるシートは、電磁波を遮蔽するフィルムとして用いることができる。なお、PCパーマロイの比重は8.76であるが、本実施例で製造したフィルムの比重は液晶ポリマーの密度1.35に近い1.40になる。さらに、液晶ポリマーの熱分解温度が535℃であるため、500℃を超える耐熱性を持つ極めて軽量の電磁波遮蔽フィルムが製造できる。
なお、本実施例は一例に過ぎない。液晶ポリマーは、融解時の流動性が優れているため、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などによって様々な形状の成形体が製造できる。さらに、29段落で説明したように、様々な金属イオンからなる複数種類のオクチル酸金属化合物を用いることで、様々な合金の性質を持つ液晶ポリマーからなる成形体が製造できる。この結果、500℃を超える耐熱性を持ち、かつ、合金の性質を持つ極めて軽量な成形体が製造できる。
以上に説明した8つの実施例は一部の事例に過ぎない。つまり、ペレットは、38段落で説明した様々な材質からなる合成樹脂が使用でき、用途に応じて合成樹脂の材質が選択できる。また、金属化合物は、28段落で説明した様々な金属錯イオンを有する金属錯体と、29段落で説明した様々な金属イオンからなるオクチル酸金属化合物が使用でき、用途に応じて微粒子を構成する金属ないしは合金が選択できる。さらに、金属化合物をアルコールに分散することで液相化され、これによって金属化合物がペレットに付着し、このペレットの集まりを熱処理するだけで、ペレット同士が結合したペレットの集まりが製造できるため、使用する金属化合物の制約はない。このため、様々な材質からなる合成樹脂のペレットを、様々な金属からなる金属微粒子、ないしは、様々な合金からなる合金微粒子で結合されたペレットの集まりが製造できる。
また、ペレットの大きさに比べ、金属ないしは合金の微粒子が5桁も小さいため、ペレットが熱融解した際に、また、熱融解したペレットが変形した際に、ペレットを覆った金属ないしは合金の微粒子の集まりは、ペレットに追従して変形する。このため、金属ないしは合金の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する上で、従来の成形体を成形する製法上の制約はない。従って、従来の合成樹脂の成形体を成形する様々な製法が使用できる。
1及び3 PET樹脂のペレット 2及び4 銅微粒子

Claims (8)

  1. 合成樹脂の融点より低い温度で合成樹脂のペレットを金属微粒子の集まりで覆い、該金属微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合した合成樹脂のペレットの集まりを製造する製造方法であって
    熱分解で金属を析出する第一の性質と、熱分解温度が合成樹脂のペレットの融点より低い第二の性質を兼備する金属化合物を、アルコールに分散し、該金属化合物が前記アルコール中に分子状態で均一に分散したアルコール分散液を作成する第一の工程と、
    前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記アルコールの沸点より高く、かつ、前記金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和して、前記金属化合物と前記有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合った混合液作成る第二の工程と、
    合成樹脂のペレットの集まりを前記混合液に浸漬、該合成樹脂のペレットの表面に前記混合液の粘度に応じた厚みで該混合液均一に付着させ、この後、該ペレットの集まりを前記混合液から取り出す第三の工程と、
    該ペレットの集まりを昇温して前記金属化合物を熱分解させる工程であって、最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、さらに、前記金属化合物の熱分解が始まり、前記合成樹脂の融点より低い温度で、該金属化合物の熱分解が完了し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記金属化合物の微細結晶の大きさに応じた粒状の金属微粒子集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが前記合成樹脂のペレットを覆うとともに、該合成樹脂のペレットを覆った金属微粒子が金属結合することで該合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりが製造される第四の工程とからなり、
    これら4つの工程を連続して実施す
    合成樹脂の融点より低い温度で合成樹脂のペレット金属微粒子の集まりで覆、該金属微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方
  2. 請求項1に記載した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法において前記金属化合物が、無機物の分子ないしは無機イオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体であり、前記有機化合物が、カルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記無機金属化合物からなる錯体と前記一種類の有機化合物とを用い、前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、請求項1に記載した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
  3. 請求項1に記載した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法において前記金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物であり、前記有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記カルボン酸金属化合物と前記一種類の有機化合物とを用い、前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、請求項1に記載した金属微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
  4. 請求項1に記載した製造方法で製造したペレットの集まりを用いて、金属の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方法は、請求項1に記載した製造方法で製造したペレットの集まりを、成形機ないしは金型に充填し、該成形機ないしは該金型によって、前記ペレットの集まりを熱融解させるとともに応力を加えて変形させ、該変形したペレットを覆う金属微粒子同士が金属結合することで、該変形したペレット同士が結合、前記成形機内ないしは前記金型内に前記変形したペレットの集まりからなる成形体が成形される、金属の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方法。
  5. 合成樹脂の融点より低い温度で合成樹脂のペレットを合金微粒子の集まりで覆い、該合金微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合した合成樹脂のペレットの集まりを製造する製造方法であって
    同一の温度で熱分解して互いに異なる複数種類の金属を同時に析出する第一の性質と、熱分解温度が合成樹脂のペレットの融点より低い第二の性質を兼備する複数種類の金属化合物を、アルコールに分散し、該複数種類の金属化合物が前記アルコール中に分子状態で均一に分散したアルコール分散液を作成する第一の工程と、
    前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記アルコールの沸点より高く、かつ、前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度より低い第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和して、前記複数種類の金属化合物と前記有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合った混合液を作成する第二の工程と、
    合成樹脂のペレットの集まりを前記混合液に浸漬、該合成樹脂のペレットの表面に前記混合液の粘度に応じた厚みで該混合液均一に付着させ、この後、該ペレットの集まりを前記混合液から取り出す第三の工程と、
    該ペレットの集まりを昇温して前記複数種類の金属化合物を同時に熱分解させる工程であって、最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記複数種類の金属化合物の微細結晶の集まりが析出し、さらに、前記複数種類の金属化合物の熱分解が始まり、前記合成樹脂の融点より低い温度で、該複数種類の金属化合物熱分解が同時に完了し、前記合成樹脂のペレットの表面に、前記複数種類の金属化合物の微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりが前記合成樹脂のペレットを覆うとともに、該合成樹脂のペレットを覆った合金微粒子が金属結合することで該合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりが製造される第四の工程とからなり、
    これら4つの工程を連続して実施す
    前記合成樹脂の融点より低い温度で合成樹脂のペレット合金微粒子の集まりで覆、該合金微粒子の金属結合で前記ペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
  6. 請求項5に記載した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法において前記複数種類の金属化合物が、無機物の分子ないしは無機イオンからなる同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合した互いに異なる金属錯イオンを有する複数種類の無機金属化合物からなる錯体であり、前記有機化合物が、カルボン酸エステル類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記複数種類の無機金属化合物からなる錯体と前記一種類の有機化合物とを用い、前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、請求項5に記載した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
  7. 請求項5に記載した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法において前記複数種類の金属化合物が、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物であり、前記有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であり、前記複数種類のカルボン酸金属化合物と前記一種類の有機化合物とを用い、前記4つの工程を連続して実施する製造方法に従って合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する、請求項5に記載した合金微粒子の金属結合で合成樹脂のペレット同士が結合したペレットの集まりを製造する製造方法。
  8. 請求項5に記載した製造方法で製造したペレットの集まりを用いて、合金の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方法は、請求項5に記載した製造方法で製造したペレットの集まりを、成形機ないしは金型に充填し、該成形機ないしは該金型によって、前記ペレットの集まりを熱融解させるとともに応力を加えて変形させ、該変形したペレットを覆う合金微粒子同士が金属結合することで、該変形したペレット同士が結合、前記成形機内ないしは前記金型内に前記変形したペレットの集まりからなる成形体が成形される、合金の性質を持つ合成樹脂の成形体を製造する製造方法。
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