JP6749139B2 - 熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法、および携帯電子機器部品の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法、および携帯電子機器部品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法、および携帯電子機器部品の製造方法に関する。
近年、スマートフォンを含む携帯電話の開発に伴い、携帯電話の内部にアンテナを製造する方法が種々検討されている。特に、携帯電話に3次元設計ができるアンテナを製造する方法が求められている。このような3次元アンテナを形成する技術の1つとして、レーザーダイレクトストラクチャリング(以下、「LDS」ということがある)技術が注目されている。LDS技術は、例えば、LDS添加剤を含む樹脂成形品の表面にレーザーを照射して活性化させ、前記活性化させた部分に金属を適用することによってメッキ層を形成する技術である。この技術の特徴は、接着剤などを使わずに、樹脂成形品の表面に直接にアンテナ等の金属構造体を製造できる点にある。かかるLDS技術は、例えば、特許文献1〜4に開示されている。
特表2000−503817号公報 特表2004−534408号公報 国際公開WO2009/141800号パンフレット 国際公開WO2012/128219号パンフレット
しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、樹脂成形品を湿熱処理した後にメッキを形成しようとすると、メッキ性が劣る場合があることが分かった。特に、機械的強度を向上させるために、ガラス繊維を配合した樹脂成形品でその傾向が顕著であることが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、機械的強度に優れ、かつ、湿熱処理後にもメッキ性に優れた樹脂成形品を提供可能な熱可塑性樹脂組成物、ならびに、前記熱可塑性樹脂組成物を用いた樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法、および携帯電子機器部品の製造方法を提供することを目的とする。
かかる課題のもと、本発明者が検討を行ったところ、ガラス繊維に加え、ガラスビーズを配合し、ガラス繊維とガラスビーズの質量比を所定の割合とすることにより、機械的強度を維持しつつ、湿熱処理した後にもメッキ性に優れた樹脂成形品を提供可能であることを見出した。具体的には、下記<1>により、好ましくは<2>〜<16>により、上記課題は解決された。
<1>熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を1〜30質量部と、ガラス繊維と、ガラスビーズとを含み、
ガラスビーズとガラス繊維の質量比である、ガラスビーズ/ガラス繊維が0.5〜5.0である、熱可塑性樹脂組成物。
<2>ガラス繊維とガラスビーズの合計量が、前記熱可塑性樹脂組成物の10〜50質量%を占める、<1>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<3>ガラス繊維の断面が円形であり、数平均繊維径が4.0〜15.0μmである、<1>または<2>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<4>ガラス繊維の断面が円形であり、数平均繊維径が4.0〜9.0μmである、<1>または<2>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<5>前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<6>前記熱可塑性樹脂がジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<7>前記ガラスビーズの数平均粒子径が2〜100μmである、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<8>さらに、タルクを、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤100質量部に対し、0.1〜200質量部含む、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<9>前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、銅およびクロムを含む化合物である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<10><1>〜<9>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品。
<11>前記樹脂成形品の表面にメッキを有する、<10>に記載の樹脂成形品。
<12>前記メッキがアンテナとしての性能を保有する、<11>に記載の樹脂成形品。
<13>携帯電子機器部品である、<10>〜<12>のいずれか1つに記載の樹脂成形品。
<14><1>〜<9>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキを形成することを含む、メッキ付樹脂成形品の製造方法。
<15>前記メッキが銅メッキである、<14>に記載のメッキ付樹脂成形品の製造方法。
<16><14>または<15>に記載のメッキ付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法。
本発明により、機械的強度に優れ、かつ、湿熱処理後にもメッキ性に優れた樹脂成形品を提供可能な熱可塑性樹脂組成物、ならびに、前記熱可塑性樹脂組成物を用いた樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法、および携帯電子機器部品の製造方法を提供可能になった。
樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を示す概略図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を1〜30質量部と、ガラス繊維と、ガラスビーズとを含み、ガラスビーズとガラス繊維の質量比である、ガラスビーズ/ガラス繊維が0.5〜5.0であることを特徴とする。このような構成とすることにより、高い機械的強度を維持しつつ、湿熱処理後もメッキ性を高く維持することができる。
このメカニズムは、以下の通りであると推測される。
すなわち、メッキ性を向上させるには、樹脂成形品のうち、メッキ層を形成する表層の樹脂の量が多いことが望ましい。しかしながら、ガラス繊維を配合すると、樹脂成形品の表層の樹脂の量が少なくなってしまう。ここで、本発明では、ガラス繊維に加え、ガラスビーズを配合することによって、この点を解決している。すなわち、ガラスビーズを配合することによって、ガラス繊維の量を減らしても、ある程度、機械的強度を高く維持しつつ、樹脂成形品の表層の樹脂の量を相対的に多くできる。そして、本発明では、ガラス繊維とガラスビーズの質量比率(ガラスビーズ/ガラス繊維)を0.5〜5.0に調整することによって、樹脂成形品の表層の樹脂の量の増加によるメッキ性の向上、および、高い機械的強度のバランスを図ることに成功した。
以下、本発明の詳細について述べる。
<熱可塑性樹脂>
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂から選択されることが好ましい。これらの中でも、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂がより好ましく、ポリアミド樹脂がさらに好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
ポリエステル樹脂としては、特開2010−174223号公報の段落0013〜0016の記載を参酌することができる。
ポリアミド樹脂としては、特開2011−132550号公報の段落0011〜0013の記載を参酌することができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(以下、「キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂」ということがある)が好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも1種に由来する。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が、炭素原子数が4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸がより好ましく、セバシン酸がさらに好ましい。
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
なお、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本発明では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90%以上を占めることが好ましく、95%以上を占めることがより好ましい。
また、ポリアミド樹脂は、重量平均分子量が1,000以下の成分を0.5〜5質量%含有することが好ましい。重量平均分子量が1,000以下の成分を0.5質量%以上含有することにより、得られる樹脂成形品の強度をより高くし、そり性をより小さくすることができる。また、重量平均分子量が1,000以下の成分を5質量%以下とすることにより、低分子量成分がブリードしにくくなり、また、樹脂成形品の表面外観が向上する傾向にある。
重量平均分子量が1,000以下の成分の好ましい含有量は、0.6〜4.5質量%であり、より好ましくは0.7〜4.0質量%であり、さらに好ましくは0.8〜3.5質量%であり、一層好ましくは0.9〜3.0質量%であり、より一層好ましくは1.0〜2.5質量%である。
重量平均分子量が1,000以下の低分子量成分の含有量の調整は、ポリアミド樹脂重合時の温度や圧力、ジアミンの滴下速度などの溶融重合条件を調節して行うことができる。特に溶融重合後期に反応装置内を減圧して低分子量成分を除去し、任意の割合に調節することができる。また、溶融重合により製造されたポリアミド樹脂を熱水抽出して低分子量成分を除去してもよいし、溶融重合後さらに減圧下で固相重合して低分子量成分を除去してもよい。固相重合に際しては、温度や減圧度を調節して、低分子量成分を任意の含有量に制御することができる。また、分子量が1,000以下の低分子量成分を後からポリアミド樹脂に添加することでも調節可能である。
なお、重量平均分子量1,000以下の成分量の測定は、東ソー社製「HLC−8320GPC」を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定に従った標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。なお、測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM−H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/Lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度は40℃、流速0.3mL/分、屈折率検出器(RI)にて測定することができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
ポリカーボネート樹脂としては、特開2014−074162号公報の段落0011〜0018の記載を参酌できる。さらに、熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂を用いる場合、スチレン系樹脂をブレンドしてもよく、スチレン系樹脂としては、特開2014−074162号公報の段落0019〜0027の記載を参酌できる。ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂をブレンドする場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂のうち、ポリカーボネート樹脂が30〜80質量%であり、スチレン系樹脂が70〜20質量%であることが好ましく、ポリカーボネート樹脂が55〜70質量%であり、スチレン系樹脂が30〜45質量%であることがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂の含有量は、下限値が、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましい。前記含有量の上限値は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以下であることが一層好ましい。
熱可塑性樹脂は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(LDS添加剤)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、レーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)添加剤を含む。本発明におけるLDS添加剤は、熱可塑性樹脂(例えば、後述する実施例で合成しているポリアミド樹脂)100質量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を10質量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力13W、周波数20kHz、スキャン速度2m/sにて照射し、その後のメッキ工程は、無電解の銅メッキ槽にて60℃にて実施し、レーザー照射面にメッキを形成できる化合物をいう。本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品は、LDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。LDS添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明で用いるLDS添加剤の第一の実施形態は、銅およびクロムを含む化合物である。第一の実施形態のLDS添加剤としては、銅を10〜30質量%含むことが好ましい。また、クロムを15〜50質量%含むことが好ましい。第一の実施形態におけるLDS添加剤は、銅およびクロムを含む酸化物であることが好ましい。
銅およびクロムの含有形態としては、スピネル構造が好ましい。スピネル構造とは、複酸化物でAB24型の化合物(AとBは金属元素)にみられる代表的結晶構造型の1つである。
第一の実施形態のLDS添加剤は、銅およびクロムの他に、他の金属を微量含んでいてもよい。他の金属としては、アンチモン、スズ、鉛、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、マグネシウムおよびカルシウムなどが例示され、マンガンが好ましい。これら金属は酸化物として存在していてもよい。
第一の実施形態のLDS添加剤の好ましい一例は、銅クロム酸化物以外の金属酸化物の含有量が10質量%以下であるLDS添加剤である。
本発明で用いるLDS添加剤の第二の実施形態は、アンチモンおよびリンの少なくとも1種と、錫とを含む酸化物、好ましくはアンチモンと錫とを含む酸化物である。
第二の実施形態のLDS添加剤は、錫の含有量がリンおよびアンチモンの含有量よりも多いものがより好ましく、錫とリンとアンチモンの合計量に対する錫の量が、80質量%以上であることがさらに好ましい。
特に、第二の実施形態のLDS添加剤としては、アンチモンと錫とを含む酸化物が好ましく、錫の含有量がアンチモンの含有量よりも多い酸化物がより好ましく、錫とアンチモンの合計量に対する錫の量が、80質量%以上である酸化物がより好ましい。
より具体的には、第二の実施形態のLDS添加剤としては、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、リン酸化物がドープされた酸化錫が挙げられ、アンチモンがドープされた酸化錫および酸化アンチモンがドープされた酸化錫が好ましく、酸化アンチモンがドープされた酸化錫がより好ましい。例えば、リンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、リンの含有量は、1〜20質量%であることが挙げられる。また、アンチモンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、アンチモンの含有量は、1〜20質量%であることが好ましい。また、リンとアンチモンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、リンの含有量は、0.5〜10質量%、アンチモンの含有量は、0.5〜10質量%であることが好ましい。
本発明で用いるLDS添加剤の第三の実施形態は、少なくとも2種の金属を含み、かつ、抵抗率が5×103Ω・cm以下の導電性酸化物を含むことが好ましい。導電性酸化物の抵抗率は、8×102Ω・cm以下がより好ましく、7×102Ω・cm以下がさらに好ましく、5×102Ω・cm以下が一層好ましい。下限については特に制限はないが、例えば、1×101Ω・cm以上であってもよく、さらには、1×102Ω・cm以上であってもよい。
本発明における導電性酸化物の抵抗率は、通常、粉末抵抗率をいい、導電性酸化物の微粉末10gを、内面にテフロン(登録商標)加工を施した内径25mmの円筒内へ装入して100kgf/cm2に加圧し(充填率20%)、横河電機社製の「3223型」テスターで測定することができる。
第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、抵抗率が5×103Ω・cm以下の導電性酸化物を含んでいれば特に制限されないが、少なくとも2種の金属を含むことが好ましく、具体的には、周期表のn族(nは3〜16の整数)の金属とn+1族の金属を含むことが好ましい。nは10〜13の整数がより好ましく、12または13がさらに好ましい。
第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、LDS添加剤中における、周期表のn族(nは3〜16の整数)の金属の含有量とn+1族の金属の含有量の合計を100モル%としたとき、一方の金属の含有量が15モル%以下であることが好ましく、12モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。下限については特に制限はないが、0.0001モル%以上が好ましい。2種以上の金属の含有量をこのような範囲とすることで、メッキ性を向上させることができる。本発明では特に、n+1族の金属がドープされたn族の金属酸化物が好ましい。
さらに、第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、LDS添加剤中に含まれる金属成分の98質量%以上が、上記周期表のn族の金属の含有量とn+1族の金属で構成されることが好ましい。
周期表のn族の金属としては、例えば、3族(スカンジウム、イットリウム)、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(銅、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、14族(ゲルマニウム、スズなど)、15族(ヒ素、アンチモンなど)、16族(セレン、テルルなど)が挙げられる。中でも、12族(n=12)の金属が好ましく、亜鉛がより好ましい。
周期表のn+1族の金属としては、例えば、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(銅、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、14族(ゲルマニウム、スズなど)、15族(ヒ素、アンチモンなど)、16族(セレン、テルルなど)が挙げられる。中でも、13族(n+1=13)の金属が好ましく、アルミニウムまたはガリウムがより好ましく、アルミニウムがさらに好ましい。
第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、導電性金属酸化物以外の金属を含有していてもよい。導電性酸化物以外の金属としては、アンチモン、チタン、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、クロム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。これら金属は酸化物として存在していてもよい。これら金属の含有量は、LDS添加剤に対してそれぞれ0.01質量%以下が好ましい。
本発明で用いるLDS添加剤の平均粒子径は、0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましく、0.05〜15μmであることがさらに好ましい。このような平均粒子径とすることにより、メッキ層の表面をより均一にすることができる。
LDS添加剤の粒子径は、0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜10μmであることがより好ましい。このような構成とすることにより、メッキを適用した際のメッキ層の表面をより均一にすることができる。
熱可塑性樹脂組成物における、LDS添加剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは2〜25質量部であり、さらに好ましくは5〜20質量部である。LDS添加剤の含有量をこのような範囲にすることによって、得られる樹脂成形品のメッキ性をより良好にすることができる。また、後述するように、タルクと組み合わせることにより、少ない含有量でメッキ層を形成することが可能になる。2種以上のLDS添加剤を含む場合には、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<ガラス繊維>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラス繊維を含む。本発明におけるガラス繊維とは、ガラスを繊維状にしたものを意味し、より具体的には、1,000〜10,000本のガラス繊維を集束し、所定の長さにカットされたチョップド形状が好ましい。
本発明におけるガラス繊維は、数平均繊維長が0.5〜10mmのものが好ましく、1〜5mmのものがより好ましい。このような数平均繊維長のガラス繊維を用いることにより、機械的強度をより向上させることができる。数平均繊維長は光学顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維長を測定する対象のガラス繊維をランダムに抽出してその長辺を測定し、得られた測定値から数平均繊維長を算出する。観察の倍率は20倍とし、測定本数は1,000本以上として行う。概ね、カット長に相当する。
また、ガラス繊維の断面は、円形、楕円形、長円形、長方形、長方形の両短辺に半円を合わせた形状、まゆ型等いずれの形状であってもよいが、円形が好ましい。ここでの円形は、数学的な意味での円形に加え、本発明の技術分野において通常円形と称されるものを含む趣旨である。ガラス繊維の断面が円形のものを用いることにより、樹脂成形品表層の樹脂量をより多くできる。
ガラス繊維の数平均繊維径は、下限が、4.0μm以上であることが好ましく、4.5μm以上であることがより好ましく、5.0μm以上であることがさらに好ましい。ガラス繊維の数平均繊維径の上限は、15.0μm以下であることが好ましく、9.0μm以下であることがより好ましく、7.5μm以下であることがさらに好ましい。このような範囲の数平均繊維径を有するガラス繊維を用いることにより、湿熱をした後にもメッキ性により優れた樹脂成形品が得られる。さらに、樹脂成形品を長期間保存した場合や、長期間にわたって熱処理した場合にも、高いメッキ性を維持できる。なお、ガラス繊維の数平均繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のガラス繊維をランダムに抽出し、中央部に近いところで繊維径を測定し、得られた測定値から算出する。観察の倍率は1,000倍とし、測定本数は1,000本以上として行う。円形以外の断面を有するガラス繊維の数平均繊維径は、断面の面積と同じ面積の円に換算したときの数平均繊維径とする。
ガラス繊維は、一般的に供給されるEガラス(Electricalglass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)、および耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸して得られる繊維が用いられるが、ガラス繊維にできるものであればどのような組成でも使用可能であり、特に限定されない。本発明では、Eガラスを含むことが好ましい。
本発明で用いるガラス繊維は、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤の付着量は、ガラス繊維の0.01〜1質量%であることが好ましい。さらに必要に応じて、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウム塩等の帯電防止剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の被膜形成能を有する樹脂、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤等の混合物で表面処理されたものを用いることもできる。
ガラス繊維は市販品として入手できる。市販品としては、例えば、日本電気硝子社製、T−286H、T−289H、オーウェンスコーニング社製、DEFT2A、PPG社製、HP3540、日東紡社製、CSG3PA820等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、下限が10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、25質量部以上であってもよい。上記含有量の上限は、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、48質量部以下であることがさらに好ましく、45質量部以下であることが特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラス繊維を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<ガラスビーズ>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラスビーズを含む。ガラスビーズを配合することにより、樹脂成形品中に含まれる無機充填剤の全体の異方性を低下させることができ、線膨張を小さくでき、寸法安定性を図ることができる。特に、タルクやフレークなどの鱗片状の無機充填剤と比較して、その効果は顕著である。
ガラスビーズとは、球状のガラスをいう。ここでの球状とは、数学的な意味での球状に加え、本発明の技術分野において通常球状と称されるものを含む樹脂である。本発明に用いるガラスビーズは、球状のガラスであれば、特に限定されないが、道路用ガラスビーズ、工業用ガラスビーズ、反射用ガラスビーズと分類される中、工業用ガラスビーズが好ましい。
工業用ガラスビーズは、サンドブラスト用、サンドミル用、濾過用、フィラー用に分類され、フィラー用が好ましい。
一方、ガラスビーズに使用されるガラスの成分は、一般的に供給されるEガラス(Electricalglass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)、および耐アルカリガラス等のガラスから選択され、Eガラスが好ましい。
また、ガラスビーズの数平均粒子径は、下限値が、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましく、20μm以上が一層好ましく、25μm以上がより一層好ましく、30μm以上がさらに一層好ましい。前記ガラスビーズの数平均粒子径の上限値は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましく、35μm以下が一層好ましい。
ガラスビーズの数平均粒子径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、粒子径を測定する対象のガラスビーズをランダムに抽出し粒子径を測定し、得られた測定値から算出する。観察の倍率は1,000倍とし、測定数は1,000個以上として行う。
ガラスビーズをポリアミド樹脂中への分散性および密着性を高める観点から、ガラスビーズは、表面処理剤により表面処理がされていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、シラン系化合物、クロム系化合物、チタン系化合物等が挙げられ、アミノシラン系化合物が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるガラスビーズの含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、下限が20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、35質量部以上であることがさらに好ましい。上記含有量の上限は、80質量部以下であることが好ましく、75質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましく、65質量部以下であることが特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラスビーズを、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<ガラスビーズとガラス繊維の質量比(ガラスビーズ/ガラス繊維)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラスビーズとガラス繊維の質量比である、ガラスビーズ/ガラス繊維が0.5〜5.0である。このような質量比とすることにより、成形品寸法の異方性を低減しつつ、湿熱条件によるメッキ強度低下を抑制することができる。前記質量比の下限は、0.5以上であり、0.7以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましく、0.95以上が一層好ましい。前記質量比の上限は、5.0以下であり、4.5以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましく、3.2以下が一層好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラス繊維とガラスビーズの合計量が、前記熱可塑性樹脂組成物の10〜50質量%を占めることが好ましい。前記合計量の下限は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、35質量%以上が一層好ましい。前記合計量の上限は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、43質量%以下がさらに好ましい。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラス繊維とガラスビーズ以外のガラスを主成分とするフィラーを含んでいてもよいし、また、ガラス繊維とガラスビーズ以外のガラスを主成分とするフィラーを実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、熱可塑性樹脂組成物において、ガラス繊維とガラスビーズ以外のガラスを主成分とするフィラーが、ガラス繊維とガラスビーズの合計量の1質量%以下であることをいう。また、ガラスを主成分とするとは、フィラーの最も含有量の多い成分がガラスであることを意味し、80質量%以上がガラスであることが好ましい。
<タルク>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、さらに、タルクを含んでいてもよい。タルクを配合することによって寸法安定性、製品外観を良好にすることができ、また、LDS添加剤の含有量を減らしても、樹脂成形品のメッキ性を良好にすることができる。タルクは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される化合物の少なくとも1種で表面処理されたものを用いてもよい。この場合、タルクにおけるシロキサン化合物の付着量は、タルクの0.1〜5質量%であることが好ましい。
タルクの数平均粒子径は1〜50μmであることが好ましく、2〜25μmであることがより好ましい。タルクは、通常、鱗片状であるが、最も長い部分の長さを平均径とする。タルクの数平均粒子径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、粒子径を測定する対象のタルクをランダムに抽出し粒子径を測定し、得られた測定値から算出する。観察の倍率は1,000倍とし、測定数は1,000個以上として行う。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、タルクの含有量は、配合する場合、熱可塑性樹脂100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは2〜25質量部であり、さらに好ましくは5〜20質量部である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、タルクの含有量は、配合する場合、LDS添加剤100質量部に対し、0.1〜200質量部であることが好ましく、1〜150質量部であることがより好ましく、20〜120質量部であることがさらに好ましい。また、タルクがシロキサン化合物で表面処理されている場合には、シロキサン化合物で表面処理されたタルクの含有量が、上記範囲内であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記ガラス繊維、ガラスビーズおよびタルク以外の無機充填剤を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、熱可塑性樹脂組成物における、ガラス繊維とガラスビーズとタルク以外の無機充填剤の含有量が、ガラス繊維とガラスビーズとタルクの合計量の10質量%以下であることをいう。本発明では、熱可塑性樹脂組成物において、ガラス繊維とガラスビーズとタルク以外の無機充填剤の含有量が、ガラス繊維とガラスビーズとタルクの合計量の、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。このように鱗片状の無機充填剤等の量を減らすことにより、樹脂成形品表層の樹脂量減少をより効果的に抑制できる。
<離型剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、離型剤をさらに含有していてもよい。離型剤は、主に、熱可塑性樹脂組成物の成形時の生産性を向上させるために使用されるものである。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸アミド系、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。これらの離型剤の中では、特に、カルボン酸アミド系化合物が好ましい。
脂肪族カルボン酸アミド系としては、例えば、高級脂肪族モノカルボン酸および/または多塩基酸とジアミンとの脱水反応によって得られる化合物が挙げられる。
高級脂肪族モノカルボン酸としては、炭素原子数16以上の飽和脂肪族モノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸が好ましく、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
カルボン酸アミド系化合物としては、ステアリン酸とセバシン酸とエチレンジアミンを重縮合してなる化合物が好ましく、ステアリン酸2モルとセバシン酸1モルとエチレンジアミン2モルを重縮合させた化合物がより好ましい。また、N,N'−メチレンビスステアリン酸アミドやN,N'−エチレンビスステアリン酸アミドのようなジアミンと脂肪族カルボン酸とを反応させて得られるビスアミド系化合物の他、N,N'−ジオクタデシルテレフタル酸アミド等のジカルボン酸アミド化合物も好適に使用し得る。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸をあげることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素原子数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素原子数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がより好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素原子数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素原子数30以下の脂肪族または脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素原子数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、脂肪族炭化水素の数平均分子量は好ましくは5000以下である。
離型剤の含有量は、配合する場合、熱可塑性樹脂組成物に対して、下限は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、上限は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。このような範囲とすることによって、離型性を良好にすることができ、また、射出成形時の金型汚染を防止することができる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<熱安定剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、有機系および/または無機系熱安定剤をさらに含有していてもよい。
本発明で用いる熱安定剤は、実質的に、銅を含まないことが好ましい。実質的にとは、検出限界以下であることをいう。このように銅の含有量を少なくすることにより、変色を抑えることが可能になる。
有機系熱安定剤としては、フェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物、およびイオウ系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
熱安定剤としては、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱安定剤の含有量は、含有する場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、0.01質量部〜5質量部であることが好ましく、0.03〜4質量部であることがより好ましい。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤が多すぎると効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
<光安定剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、有機系および/または無機系光安定剤を含んでいてもよい。
有機系光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびシアノアクリレート系化合物などの紫外線吸収効果のある化合物、並びにヒンダードアミン系化合物およびヒンダードフェノール系化合物などのラジカル捕捉能力のある化合物などが挙げられる。
光安定剤としては、紫外線吸収効果のある化合物とラジカル捕捉能力のある化合物を併用することにより、より高い安定化効果を発揮させることができる。
光安定剤としては、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光安定剤の含有量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、0.01質量部〜5質量部であることが好ましく、0.01〜4質量部であることがより好ましい。
<アルカリ>
本発明の熱可塑性樹脂組成物はアルカリを含んでいてもよい。本発明で用いるLDS添加剤が酸性物質(例えば、pH6以下)の場合に、組み合わせによって自身が還元することで色目がまだら模様となるケースがあるが、アルカリを添加することにより、得られる樹脂成形品の色あいをより均一にすることができる。アルカリの種類は特に定めるものではなく、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を用いることができる。アルカリは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、アルカリの含有量は、LDS添加剤の種類およびアルカリの種類にもよるが、LDS添加剤の含有量の、好ましくは0.01〜20質量%であり、より好ましくは0.05〜15質量%である。
<その他の添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の他、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、エラストマー、酸化チタン、酸化防止剤、耐加水分解性改良剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤等が例示される。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落0130〜0155の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。これらの成分は、合計で、熱可塑性樹脂組成物の20質量%以下であることが好ましい。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法が採用される。
例えば、熱可塑性樹脂、ガラス繊維、ガラスビーズ、LDS添加剤等をV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調製した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。あるいは、二段階練込法として、予め、ガラス繊維およびガラスビーズ以外の成分等を、十分混合後、ベント付き押出機で溶融混練りしてペレットを製造した後、そのペレットとガラス繊維およびガラスビーズを混合後、ベント付き押出機で溶融混練りする方法が挙げられる。
さらに、ガラス繊維およびガラスビーズ以外の成分等を、V型ブレンダー等で十分混合したものを予め調製しておき、それをベント付き二軸押出機の第一シュートより供給し、ガラス繊維およびガラスビーズは押出機途中の第二シュートより供給して溶融混練、ペレット化する方法が挙げられる。
押出機の混練ゾーンのスクリュー構成は、混練を促進するエレメントを上流側に、昇圧能力のあるエレメントを下流側に配置されることが好ましい。
混練を促進するエレメントとしては、順送りニーディングディスクエレメント、直交ニーディングディスクエレメント、幅広ニーディングディスクエレメント、および順送りミキシングスクリューエレメント等が挙げられる。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常180〜360℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後工程の成形時の分解を抑制するため、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
<樹脂成形品>
本発明は、また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品を開示する。
樹脂成形品の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品は、樹脂成形品の表面にメッキを有する、メッキ付樹脂成形品として好ましく用いられる。本発明の樹脂成形品におけるメッキはアンテナとしての性能を保有する態様が好ましい。
<メッキ付き樹脂成形品の製造方法>
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキを形成することを含む、メッキ付樹脂成形品の製造方法について開示する。
図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。図1では、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。また、得られるメッキ付き樹脂成形品は、最終製品に限らず、各種部品も含む趣旨である。
再び図1に戻り、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。ここでのレーザーとは、特に定めるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YGAレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではない。好ましい波長範囲は、200nm〜1200nmであり、より好ましくは800〜1200nmである。
レーザーが照射されると、レーザーが照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。この活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として、銅、ニッケル、銀、金、およびパラジウムの少なくとも1種以上からなるメッキ液(特に、無電解のメッキ液)が好ましく、銅、ニッケル、銀、および金の少なくとも1種以上からなるメッキ液(特に、無電解のメッキ液)がより好ましく、銅を含むメッキ液(特に、無電解のメッキ液)がさらに好ましい。すなわち、本発明におけるメッキは、金属成分が、上記金属の少なくとも1種からなることが好ましい。
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に定めるものではないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品は、レーザー照射した部分のみ、メッキ5が形成される。
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の回線間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を形成することができる。メッキは、形成した回路の腐食や劣化を抑えるために、例えば無電解メッキを実施した後にニッケル、金でさらに保護することもできる。また、同様に無電解メッキ後に電解メッキを用い、必要な膜厚を短時間で形成することもできる。
また、上記メッキ付樹脂成形品の製造方法は、上記メッキ付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法として好ましく用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品は、例えば、コネクタ、スイッチ、リレー、導電回路等の電子部品(特に、携帯電子機器部品)、ランプリフレクタ等の反射板、ギヤ、カム等のような摺動部品、エアインテークマニホールドなどの自動車部品、流し台などの水回り部品、種々の装飾部品、あるいは、フィルム、シート、繊維などの種々の用途に用いることができる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−219620号公報、特開2011−195820号公報、特開2011−178873号公報、特開2011−168705号公報、特開2011−148267号公報の記載を参酌することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
原材料 以下に示す原材料を用いた。
<ポリアミド樹脂PXD10の合成>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置および窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸(伊藤製油社製、セバシン酸TA)8950g(44.25mol)、次亜リン酸カルシウム12.54g(0.074mol)、酢酸ナトリウム6.45g(0.079mol)を秤量して仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.4MPaに加圧し、撹拌しながら20℃から190℃に昇温して55分間でセバシン酸を均一に溶融した。次いでパラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)5960g(43.76mol)を撹拌下で110分を要して滴下した。この間、反応容器内温は293℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.42MPaに制御し、生成した水は分縮器および冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。パラキシリレンジアミン滴下終了後、反応容器内圧力0.42MPaにて20分間重縮合反応を継続した。この間、反応容器内温は296℃まで上昇させた。その後、30分間で反応容器内圧力を0.42MPaから0.12MPaまで減圧した。この間に内温は298℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で減圧し、20分間で0.08MPaまで減圧し、分子量1,000以下の成分量を調整した。減圧完了時の反応容器内の温度は301℃であった。その後、系内を窒素で加圧し、反応容器内温度301℃、樹脂温度301℃で、ストランドダイからポリマーをストランド状に取出して20℃の冷却水にて冷却し、これをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。なお、冷却水中での冷却時間は5秒、ストランドの引き取り速度は100m/分とした。以下、「PXD10」という。融点は、290℃であった。
<LDS添加剤>
Black1G:銅クロム酸化物(CuCr24)(シェファードジャパン社製)
<ガラス繊維>
ECS03T−296GH:円形断面を有するガラス繊維、数平均繊維径10μm、数平均繊維長3mm(日本電気硝子社製)
DEFT2A:円形断面を有するガラス繊維、数平均繊維径6μm、数平均繊維長3mm(オーウェンスコーニング社製)
<ガラスビーズ>
EGB731A:表面処理剤(アミノシランカップリング剤)で処理されたガラスビーズ、数平均粒子径32μm(ポッターズ・バロティーニ社製)
<タルク>
5000S:ミクロンホワイト5000S、平均径4.7μm(林化成社製)
<離型剤>
CS8CP:モンタン酸カルシウム(日東化成工業社製)
実施例1
<コンパウンド>
後述する下記表1に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、ガラス繊維およびガラスビーズを除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した後で、ガラス繊維およびガラスビーズをサイドフィードしてペレットを作製した。二軸押出機の温度設定は、300℃とした。
<メッキ性(初期)(LDS活性)−Plating Index>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度300℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、3mm厚さのプレートを成形した。
上記で得られた3mm厚のプレートに1064nmのYAGレーザーを用い、出力2.6〜13Wの範囲のいずれか、速度1〜2m/sのいずれか、周波数10〜50μsの範囲のいずれかの条件から組み合わされた各種条件でレーザー照射により印字し、続いて、試験片を硫酸にて脱脂後、キザイ社製、THPアルカリアクチおよびTHPアルカリアクセで処理後、キザイ社製SELカッパーにてメッキ処理を行った。メッキ処理後の試験片を目視にて判定し、下記3段階に分類した。
A:一面にメッキが形成されており良好な外観を確認
B:部分的にメッキが形成されているが実用レベル
C:全くメッキが形成されていない、もしくは部分的にメッキが形成されており実用レベルではない
<メッキ性(湿熱処理後)(LDS活性)−Plating Index>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度300℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、3mm厚さのプレートを成形した。
得られた樹脂成形品を相対湿度85%、85℃の環境下に1000時間静置し、上記メッキ性(初期)と同様に行って、メッキ性を評価した。
<曲げ強さおよび曲げ弾性率の測定方法>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、NEX140IIIを用いて、4mm厚さのISO引張り試験片を射出成形した。シリンダー温度は280℃、金型温度は130℃にて実施した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ強度(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。
<線膨張係数>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、NEX140IIIを用いて、4mm厚さのISO引張り試験片を射出成形した。シリンダー温度は280℃、金型温度は130℃にて実施した。
得られた試験片を、JIS K 7197法に従って、MD(Machine Direction、樹脂の射出成形時の射出方向)およびTD(Transverse Direction、樹脂の射出成形時の幅方向)について、それぞれ、線膨張係数を測定した。さらに、TD/MDを算出した。TD/MDが小さいほど、寸法安定性に優れているといえる。
実施例2、3、比較例1〜3
実施例1において、表1に記載の通り、各成分の量を変更し、他は同様に行った。結果を表1に示す。
上記表において、各成分の単位は質量部である。
上記結果から明らかな通り、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた場合(実施例1〜3)、湿熱処理後の樹脂成形品についても、優れたメッキ性を達成できた。さらに、高い機械的強度も維持でき、かつ、寸法安定性にも優れていた。特に、ガラス繊維として、数平均繊維径が4.0〜9.0μmの範囲のものを用いると(実施例1、2)、湿熱処理後の樹脂成形品について、特に優れたメッキ性を達成できた。
これに対し、ガラスビーズとガラス繊維の質量比である、ガラスビーズ/ガラス繊維が0.5〜5.0の範囲を外れる場合(比較例1〜3)、湿熱処理後の樹脂成形品のメッキ性が格段に劣ってしまった。特に、ガラスビーズの配合比が少ない場合(比較例1、2)、寸法安定性に顕著に劣る結果となった。一方、ガラスビーズの配合比が多い場合(比較例3)、機械的強度が劣ってしまう結果となった。
1 樹脂成形品
2 レーザー
3 レーザーが照射された部分
4 メッキ液
5 メッキ層

Claims (14)

  1. ポリアミド樹脂と、前記ポリアミド樹脂100質量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を1〜30質量部と、ガラス繊維と、ガラスビーズとを含み、
    ガラスビーズとガラス繊維の質量比である、ガラスビーズ/ガラス繊維が0.5〜5.0である熱可塑性樹脂組成物であってガラス繊維とガラスビーズの合計量が、前記熱可塑性樹脂組成物の35〜45質量%を占める、熱可塑性樹脂組成物
  2. ガラス繊維の断面が円形であり、数平均繊維径が4.0〜15.0μmである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. ガラス繊維の断面が円形であり、数平均繊維径が4.0〜9.0μmである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ポリアミド樹脂がジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂である、請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記ガラスビーズの数平均粒子径が2〜100μmである、請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. さらに、タルクを、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤100質量部に対し、0.1〜200質量部含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、銅およびクロムを含む化合物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品。
  9. 前記樹脂成形品の表面にメッキを有する、請求項に記載の樹脂成形品。
  10. 前記メッキがアンテナとしての性能を保有する、請求項に記載の樹脂成形品。
  11. 携帯電子機部品である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
  12. 請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキを形成することを含む、メッキ付樹脂成形品の製造方法。
  13. 前記メッキが銅メッキである、請求項12に記載のメッキ付樹脂成形品の製造方法。
  14. 請求項12または13に記載のメッキ付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法。
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