JP6283460B2 - 金属ないしは合金の性質を兼備する繊維、糸、布帛ないしは不織布の製造方法 - Google Patents
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また、導電性繊維の中で、高分子材料に導電性を付与する技術開発が最も盛んに行われている。この導電性を付与する技術は、導電性物質を分散させる技術と、金属皮膜を形成する技術に2分される。例えば、カーボン粉末や金属粉末等の導電性物質を混合した高分子組成物を用いる技術(例えば、特許文献1を参照)、プラスチック成形品に酸化スズ等の金属蒸着膜を真空蒸着法などにより形成する技術(例えば、特許文献2を参照)、高分子繊維材料の表面に無電解メッキ処理により金属皮膜を形成する技術(例えば、特許文献3を参照)などが挙げられる。
このような技術として、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維、ポリアリレート繊維などの抗張力繊維に金属メッキ加工を施す、あるいは、金属箔を巻き付けるなどの手段で、金属皮膜が形成された繊維が提案されている。また、この金属皮膜が形成された繊維を導体として絶縁体で被覆した電線も提案されている(例えば、特許文献4−6を参照)。
つまり、繊維、糸、布帛ないしは不織布に導電性粒子を分散させる技術では、導電性粒子が連続した構造を繊維、糸、布帛ないしは不織布がとらない限り、金属に近い導電性は得られない。いっぽう、導電性を高めようとして導電性粒子の充填率を高めると、繊維、糸、布帛ないしは不織布が本来持っている特性を失う。しかし、充填率を10%以上に高めると、導電性粒子の分散性が悪化し始め、高い充填率は得られない。このように、導電性粒子を充填させる技術は、導電性粒子を高い充填率で充填することが困難であるため、繊維、糸、布帛ないしは不織布の性質を金属の性質に近づけることは原理的に困難になる。
つまり、繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面に金属皮膜を形成させる技術は、析出させた金属箔を堆積させて金属皮膜を形成する方法である。従って、析出した金属箔同士が互いに金属結合、共有結合ないしはイオン結合などの結合で結合しない。このため、金属箔同士の結合力は極めて弱く、金属皮膜に応力が加わると金属箔が容易に剥離する。このように、金属皮膜が容易に剥離する問題点は、析出した金属箔を積層させることに原因があるため、この問題を根本的に解決することはできない。
ここで、代表的な汎用線素材を取り上げその物性を比較する。金属線の中で最も身近な線材として、炭素含有量が0.25%以下の軟鋼線材、いわゆる針金がある。針金の引張破断強度は400−500MPaで、密度が7.85g/cm3で、熱伝導率は46W/mKである。最も汎用的な電線であるタフピッチ銅からなる銅線は、引張破断強度は243−275MPaで、密度が8.89g/cm3で、熱伝導率は391W/mKである。さらに、送電線として用いられている硬アルミ線は、引張破断強度は160−190MPaで、密度が2.7g/cm3で、熱伝導率は140W/mKである。いっぽう、最も汎用的な合成繊維のナイロン66繊維は、引張破断強度が1100MPaで、密度が1.14g/cm3で、熱伝導率は0.2W/mKで、体積固有抵抗は7×1016Ωmに及ぶ。さらに、最も汎用的な無機繊維であるガラス繊維は、引張破断強度が3430MPaで、密度が2.55g/cm3で、熱伝導率は1.03W/mKで、体積固有抵抗は1016Ωmに及ぶ。このように、化学繊維は、金属線より引張強度が著しく大きく、かつ、密度が著しく小さい長所を持つが、熱伝導率は金属より著しく小さく、体積固有抵抗は金属の1024倍にも及ぶ絶縁体である。
従って、化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布が、化学繊維の優れた性質と金属ないしは合金の優れた性質とを兼備すれば、電磁波シールド、制電、帯電防止、電気伝導、熱伝導などの機能を兼備し、これまで考えられなかった工業用製品への適応が可能になる。
すなわち、第一の工程は、金属化合物ないしは複数種類の金属化合物を、アルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を浸漬するだけの処理である。第三の工程は、アルコールを気化させるだけの処理である。第四の工程は、金属化合物を熱分解する、ないしは、複数種類の金属化合物を同時に熱分解するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理である。このような極めて簡単な4つの処理を連続して実施すると、金属ないしは合金の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布が安価に製造できる。
つまり、本製造方法に依れば、化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面を、熱処理で金属を析出する金属化合物で、ないしは、熱処理で複数種類の金属が同時に析出する複数種類の金属化合物で覆う。この繊維、糸、布帛ないしは不織布を熱処理すると、金属化合物が熱分解し、ないしは、複数種類の金属化合物が同時に熱分解し、10−100nmの大きさの範囲の粒状の金属微粒子ないしは合金微粒子が析出し、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、金属微粒子ないしは合金微粒子の集まりで覆われる。この結果、化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の全般について、材質や長さや形状に係わらず、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、金属微粒子ないしは合金微粒子の集まりで覆われ、微粒子を構成する金属ないしは合金の性質と共に、微粒子の性質を併せ持つ。
すなわち、金属化合物がないしは複数種類の金属化合物がアルコールに分散された分散液に、金属化合物が熱分解する温度より、ないしは、複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度より溶融点が高い化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を浸漬し、この繊維、糸、布帛ないしは不織布を取り出して、アルコールが気化する温度に昇温すれば、化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の全般について、材質や長や形状に係わらず、繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面が、金属化合物ないしは複数種類の金属化合物で均一に覆われる。なぜならば、金属化合物ないしは複数種類の金属化合物の粉体をアルコールに分子状態に分散し、この分散液を昇温してアルコールを気化すれば、金属化合物ないしは複数種類の金属化合物は元の粉体に戻るからである。身近な事例を挙げれば、砂糖の粉を水に分子状態に分散し、この砂糖水を昇温して水を気化すれば、砂糖は元の粉に戻る。従って、金属化合物ないしは複数種類の金属化合物がアルコールに分散された分散液に、繊維、糸、布帛ないしは不織布を浸漬すれば、全ての繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面は分散液と接触する。この繊維、糸、布帛ないしは不織布を取り出して、アルコールが気化する温度に昇温すれば、全ての繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面は金属化合物ないしは複数種類の金属化合物で均一に覆われる。
この後、繊維、糸、布帛ないしは不織布を、金属化合物が熱分解する温度に、ないしは複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度に昇温すると、表面に吸着した金属化合物が熱分解し、ないしは、複数種類の金属化合物が同時に熱分解し、粒状の金属微粒子ないしは粒状の合金微粒子の集まりが析出する。つまり、化学繊維の性質が不可逆変化する温度は、化学繊維の熱分解温度であり、この熱分解温度は溶融点より高い。従って、化学繊維の溶融点が金属化合物の熱分解温度、ないしは、複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度より高ければ、化学繊維からなる繊維、この繊維からなる糸、布帛ないしは不織布は、分子構造上の不可逆変化がもたらされずに、金属ないしは合金の微粒子の多層構造で覆われる。この粒状の金属微粒子ないしは合金微粒子は、不純物を持たない活性状態で析出するため、互いに接触する部位で金属結合し、多層構造を形成して繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面全体を覆う。このため、繊維、糸、布帛ないしは不織布を加工する際に応力が加えられても、金属微粒子ないしは合金微粒子は表面から脱落しない。この結果、化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の全般について、材質や長や形状に係わらず、繊維、糸、布帛ないしは不織布は微粒子の集まりで覆われ、微粒子を構成する金属ないしは合金の性質と微粒子の性質とを示す。また、金属化合物ないしは複数種類の金属化合物を吸着させ、この金属化合物ないしは複数種類の金属化合物を熱分解させるだけの極めて簡単な処理で、繊維、糸、布帛ないしは不織布が、金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆われる。従って、安価な材料を用いて安価な処理費用で、繊維、糸、布帛ないしは不織布に、微粒子を構成する金属ないしは合金の性質と微粒子の性質が付与される。
複数種類の金属化合物が同時に熱分解する際に、金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出し、このモル濃度に応じた金属の組成からなる合金微粒子が析出する。
以上に説明したように、本製造方法に依れば、化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の全般について、金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆われた繊維、糸、布帛ないしは不織布は、新たに7段落で説明した4つの要件を兼備すると共に、微粒子の性質を有する。このため、従来考えられない性質が繊維、糸、布帛ないしは不織布に付与される作用効果がもたらされる。
前記した化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の全般についてとは、次のことを意味する。繊維、糸、布帛ないしは不織布は、再生繊維、半合成繊維、合成繊維および無機繊維からなる化学繊維を素材とする。繊維は、モノフィラメントとマルチフィラメントからなる長繊維、ステープルファイバーとショートカットファイバーからなる短繊維、フィラメントヤーンとスパンヤーンからなる糸からなる繊維全般を意味する。また糸とは、複数本の繊維が撚り合わされたものである。また、布帛とは、織物、編み物、直交ネット、直交積層ネットおよび多軸積層ネットからなる布帛全般を意味する。さらに不織布とは、湿式、乾式および直接式による短繊維不織布および長繊維不織布からなる布帛全般を意味する。
すなわち、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子になって、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機塩からなる金属錯塩を、還元雰囲気で熱処理すると、最初に配位結合部が分断され、無機物と金属とに分解する。さらに、昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了して金属が析出する。つまり、金属錯塩を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きいため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、金属錯塩を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物の気化が完了すると金属が析出する。金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属が析出する温度の中で最も低い。このため、化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布が熱分解する温度が、金属錯塩の熱分解温度より高ければ、繊維、糸、布帛ないしは不織布の性質が不可逆変化することなく、金属微粒子の集まりで覆うことができ、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、金属の性質と微粒子の性質を兼備する。
つまり、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンは、他の金属錯イオンに比べて合成が容易である。このような金属錯イオンとして、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオン、水H2Oが配位子となって金属イオンに配位結合するアクア金属錯イオン、水酸基OH−が配位子となって金属イオンに配位結合するヒドロキソ金属錯イオン、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンなどがある。このような金属錯イオンを有する塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの無機塩からなる金属錯塩は、無機塩の分子量が小さいため、180−220℃の温度範囲で無機物の気化が完了し金属を析出する。この金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属を析出する温度の中で最も低い。従って、このような金属錯塩は安価な金属錯塩であり、熱分解温度が低い化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布に対し、微粒子を構成する金属の性質と微粒子の性質とを付与する原料になる。
つまり、本製造方法に依れば、金属錯塩がアルコールに分散された分散液に、金属錯塩が熱分解する温度より溶融点が高い化学繊維からなる繊維、この繊維の複数本が撚り合わされた糸、この繊維からなる布帛ないしは不織布を浸漬し、この繊維、糸、布帛ないしは不織布を還元雰囲気で熱処理する。アルコールを気化させた後に、180−220℃の温度範囲で金属錯塩が熱分解し、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属の微粒子の集まりが、繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面に析出する。この結果、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、金属微粒子の集まりで覆われ、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、微粒子を構成する金属の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
つまり、化学繊維の性質が不可逆変化する温度は、化学繊維の熱分解温度であり、熱分解温度は溶融点より高い。従って、化学繊維の溶融点が金属錯塩の熱分解温度より高ければ、化学繊維からなる繊維、この繊維からなる糸、この繊維からなる布帛ないしは不織布は、分子構造上の不可逆変化がもたらされずに、金属の微粒子の多層構造で覆われる。この結果、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、元々の性質が変化することなく、微粒子を構成する金属の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
すなわち、リールに巻かれた化学繊維からなる繊維を、ないしは、この繊維の複数本が撚り合わされた糸を、リールから引き出し、あるいは、この繊維からなる布帛ないしは不織布を、金属錯塩のアルコール分散液が充填された浴槽に浸漬させて通過させる。次に、アルコールの気化点を超える温度に昇温された熱処理炉を通過させ、最後に、金属錯塩が熱分解する温度に昇温された還元雰囲気の熱処理炉を通過させる。この後、処理した繊維ないしは糸をリールで巻き取る、ないしは布帛ないしは不織布を巻き取り機で巻き取る。こうした極めて簡単な処理を連続して実施することで、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、金属微粒子の集まりで覆われ、微粒子を構成する金属の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
従って、本製造方法に依って製造した繊維ないしは糸は、例えば電線の導体として用いることができる。また、導体の外側に絶縁体を被覆した電線の製造においては、金属微粒子の多層構造で覆われた繊維、糸が、押し出し機のダイスから押し出される際に応力を受ける。しかし、金属微粒子同士ないしは合金微粒子同士が互いに金属結合によって結合しているため、金属微粒子が剥がれることはない。さらに、微粒子がナノレベルの大きさであるため、ダイスと直接接触したとしても、点接触に近い状態で接触し、微粒子に過大な摩擦力が発生せず、微粒子が剥がれることはない。このため、本製造方法に依って製造した繊維ないしは糸は、絶縁被覆された電線を製造する際の電線の導体としても用いることもできる。
また、本製造方法に依って製造した布帛ないしは不織布は、例えば、電磁波を遮蔽する電磁波シールド材、ないしは、静電気の発生を抑える制電材ないしは帯電防止材として用いることができる。さらに、金属の熱伝導性に近い性質を持つため、放熱材として兼用することもできる。
さらに、金属の微粒子の集まりで覆われた布帛ないしは不織布を、電磁波を遮蔽する部材に重ね合わせ、布帛ないしは不織布に圧縮荷重を加えると、金属の微粒子の集まりが塑性変形し、表層の金属の微粒子は、電磁波を遮蔽する部材の表面に食い込んで、電磁波を遮蔽する部材に圧着されて一体になる。このため、従来は接着によって接合していた処理が一切不要になる。また、金属の微粒子の集まりからなる多層構造で覆われた布帛ないしは不織布を、静電気の発生を抑える制電材ないしは帯電防止材として用いる場合は、布帛ないしは不織布の表面は、微粒子の大きさに基づくナノレベルの凹凸を形成するため優れた撥水性を示す。これによって、布帛ないしは不織布の表面に異物が付着しない。
また、金属微粒子を、触媒作用を持つ金属で構成すれば、布帛ないしは不織布は触媒作用を発揮する。さらに、金属微粒子が、抗菌作用を持つ金属で構成すれば、布帛ないしは不織布は抗菌作用を発揮する。さらに、布帛ないしは不織布の表面は、ナノレベルの凹凸を形成するため、優れた撥水性を示す。これによって、布帛ないしは不織布の表面に異物が付着しない。
すなわち、化学繊維からなる布帛ないしは不織布を、金属錯塩のアルコール分散液が充填された浴槽に浸漬して通過させる。次に、アルコールの気化点を超える温度に昇温された熱処理炉を通過させ、最後に、金属錯塩が熱分解する温度に昇温された還元雰囲気の熱処理炉を通過させる。こののち、処理した布帛ないしは不織布を巻き取り、その後、必要な大きさに切断すると、微粒子を構成する金属ないしは合金の性質と微粒子の性質とを併せ持つ布帛ないしは不織布が製造される。
いっぽう、溶融点が180−220℃を超える汎用的な化学繊維として、次の化学繊維がある。従って、これらの化学繊維からなる繊維、この繊維からなる糸、この繊維からなる布帛ないしは不織布に対し、金属の性質と微粒子の性質を併せ持たせることができる。再生繊維に属するセルロース系繊維である、レーヨンのフィラメントとポリノジックの双方は溶融せず、熱分解温度は260−300℃である。また、セルロース系繊維に属するキュブラのフィラメントは、レーヨンと同様に溶融せず、熱分解温度は260−300℃である。従って、これらの繊維は、260℃以上に昇温しない限り、分子構造上の不可逆変化は起こらず、性質の不可逆変化は起こらない。次に、半合成繊維に属するセルロース系繊維であるアセテートのフィラメントの溶融点は260℃である。さらに合成繊維の多くは、溶融点が180−220℃を超える。ポリビニールアルコール繊維であるビニロンのステープルおよびフィラメントの双方の軟化点は230℃であるが、溶融点は軟化点以上であるが不明瞭である。また、ポリアミド系繊維であるナイロンのステープルおよびフィラメントの双方の溶融点は215−220℃であり、ナイロン66のフィラメントの溶融点は250−260℃である。さらに、ポリアクリルニトリル系繊維であるアクリルは、ステープルとフィラメントの双方の軟化点が190−240℃であり、溶融点は軟化点以上であるが不明瞭である。また、ポリエステル系繊維であるポリエステルのステープルおよびフィラメントの双方の溶融点は220−230℃である。さらに、ポリフェニレンサルファイド繊維の溶融点は285℃である。また、芳香族ナイロン繊維のステープルは、軟化、溶融せず、400−430℃で徐々に熱分解する。
ここで、銅微粒子の集まりでナイロン66のモノフィラメントを覆い、このナイロン66のモノフィラメントが銅の性質を示すことを説明する。ここでは、銅微粒子が50nmの大きさとし、0.4μmの厚みを形成して、直径が8μmのナイロン66のモノフィラメントを覆うとする。この際、銅微粒子はモノフィラメントの表面に形成されるので、銅微粒子の多層構造の厚みがモノフィラメント糸の直径の1/20であっても、銅微粒子の集まりが占める断面積はモノフィラメントの断面積の1/5を占める。いっぽう、銅微粒子の集まりが形成する電気抵抗と、ナイロン66のモノフィラメントが形成する電気抵抗との比率は、両者の体積固有抵抗の比率に近い1.2×10 ―24 になる。つまり両者の電気抵抗の比率は、両者の断面積の比率は寄与せず、両者の体積固有抵抗の比率が寄与する。さらに両者によって形成される合成抵抗は、両者の電気抵抗の並列接続になる。7段落で説明したように、ナイロン66繊維の体積固有抵抗とタフピッチ銅の体積固有抵抗との比率は4×10 24 に及ぶため、両者によって形成される合成抵抗は、銅微粒子の集まりが形成する電気抵抗になる。この結果、銅微粒子の集まりで覆われたナイロン66のモノフィラメントは、銅の電気導電性を示す。さらに、直径が8.8μmからなるタフピッチ銅からなる銅線に比べて、本事例では重量が71%低減する。さらに、7段落で説明したように、引張破断強度は、タフピッチ銅からなる銅線の4−4.5倍の値を持つ。ナイロン66のモノフィラメントは、銅線より著しく安価に製造できる。従って、銅線より、引張強度が大きく、重量が軽く、かつ、銅の導電性を持つ導体が安価に得られる。
また、熱伝導率についても、銅の熱伝導率がナイロン66の熱伝導率の2000倍に近い値を持つため、銅微粒子の集まりで覆われたナイロン66のモノフィラメントは、銅の熱伝導性にかなり近い性質を示す。このように、金属の微粒子の集まりで覆われた化学繊維からなる繊維、ないしは、複数本の繊維が撚り合わされた糸は、微粒子を構成する金属の性質と微粒子の性質とを併せ持つ。
また、ニッケル微粒子の集まりでナイロン66繊維からなる布帛ないしは不織布を覆うと、この布帛ないしは不織布が、ニッケルの性質を示すことを説明する。ここでは、ニッケルの微粒子が50nmの大きさとし、2μmの厚みを形成して、厚みが1mmで幅が5cmからなるナイロン66繊維からなる布帛ないしは不織布を覆うとする。ニッケルの密度は8.9g/cm 3 で、熱伝導率は90.9W/mKで、体積固有抵抗は69.3×10 −9 Ωmである。この際、ニッケル微粒子が占める断面積と、ナイロン66繊維からなる布帛ないしは不織布が占める断面積の比率は4.1×10 −3 になる。さらに、両者が形成する電気抵抗の比率は、断面積の比率の逆数に体積固有抵抗の比率を掛け合わせた値である2.4×10 −22 になる。つまり、15段落で説明した事例と同様に、両者の電気抵抗の比率は、両者の断面積の比率は寄与せず、両者の体積固有抵抗の比率が寄与する。従って、両者で形成される合成抵抗は、両者の抵抗の並列接続であるため、ニッケル微粒子が形成する電気抵抗になる。この結果、ナイロン66繊維からなる布帛ないしは不織布は、ニッケルの電気導電性を示す。また、ニッケルの微粒子の集まりで覆うことによる重量増加は、ナイロン66繊維からなる布帛ないしは不織布の重量のわずか3.2%の増加に過ぎない。また、熱伝導率についても、ニッケルの熱伝導率がナイロン66の熱伝導率の456倍の値を持つため、ナイロン66繊維からなる布帛ないしは不織布は、ニッケルに近い熱伝導性を示し、優れた放熱材としての機能も発揮する。このように、ナイロン66繊維からなる布帛ないしは不織布をニッケル微粒子の集まりで覆うと、重量増加がわずかに3%に過ぎないにもかかわらず、新たにニッケルの導電性と熱伝導性と強磁性とを兼備し、優れた放熱特性を併せ持つ電磁波シールド材、制電材ないしは帯電防止材として用いることができる。
以上に説明したように、本製造方法に依って、金属微粒子の集まりで覆われた布帛ないしは不織布が容易に製造でき、この布帛ないしは不織布は、金属の性質に基づく作用効果と、微粒子の性質に基づく作用効果を同時に発揮する。
すなわち、複数種類の金属錯塩は、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が同一の配位子で構成され、この同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する異なる金属錯イオンからなる無機塩で構成されるため、複数種類の金属錯塩を還元雰囲気で熱処理すると、複数種類の金属錯塩の配位結合部が同時に分断され、無機物と複数種類の金属とに分解される。さらに、無機物の気化が完了すると、金属錯塩のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出し、これら金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属から構成され、かつ、金属錯塩のモル濃度に応じた金属の組成割合からなる合金が生成される。この結果、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、合金の微粒子の集まりで覆われ、微粒子を構成する合金の性質と微粒子の性質とを併せ持つことになる。
本製造方法に依れば、複数種類の金属錯塩がアルコールに分散された分散液に、複数種類の金属錯塩が同時に熱分解する温度より溶融点が高い化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を浸漬し、この後、繊維、糸、布帛ないしは不織布を還元雰囲気で熱処理する。アルコールを気化させた後に、180−220℃の温度範囲で複数種類の金属錯塩が同時に熱分解し、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の合金の微粒子の集まりが、繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面に析出する。この結果、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、合金微粒子の集まりで覆われ、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、微粒子を構成する合金の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
つまり、化学繊維の性質が不可逆変化する温度は、化学繊維の熱分解温度であり、熱分解温度は溶融点より高い。従って、化学繊維の溶融点が複数種類の金属錯塩が同時に熱分解する温度より高ければ、化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布は、分子構造上の不可逆変化がもたらされずに、金属ないしは合金の微粒子の多層構造で覆われる。この結果、繊維、糸、布帛ないしは不織布は、元々の性質が変化することなく、微粒子を構成する合金の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
すなわち、リールに巻かれた化学繊維からなる繊維、ないしは、この繊維の複数本が撚り合わされた糸をリールから引き出し,複数種類の金属錯塩のアルコール分散液が充填された浴槽に浸漬させて通過させる。次に、アルコールの気化点を超える温度に昇温された熱処理炉を通過させ、最後に、複数種類の金属錯塩が同時に熱分解する温度に昇温された還元雰囲気の熱処理炉を通過させる。この後、処理した繊維ないしは糸をリールで巻き取る。こうした極めて簡単な処理を連続して実施することで、繊維ないしは糸は、合金微粒子の集まりで覆われ、微粒子を構成する合金の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
従って、本製造方法に依って製造した繊維ないしは糸は、例えば、電線の導体として用いることができる。さらに、導体の外側に絶縁体を被覆した電線の製造においては、合金微粒子の多層構造で覆われた繊維ないしは糸が、押し出し機のダイスから押し出される際に応力を受ける。しかし、合金微粒子同士が互いに金属結合によって結合しているため、合金微粒子が剥がれることはない。さらに、微粒子がナノレベルの大きさであるため、ダイスと直接接触したとしても、点接触に近い状態で接触し、微粒子に過大な摩擦力が発生せず、微粒子が剥がれることはない。このため、本製造方法に依って製造した繊維ないしは糸は、絶縁被覆された電線を製造する際の電線の導体としても用いることもできる。
また、本製造方法に依って製造した布帛ないしは不織布は、例えば、電磁波を遮蔽する電磁波シールド材、ないしは、静電気の発生を抑える制電材ないしは帯電防止材として用いることができる。さらに、合金の熱伝導性に近い性質を持つため、放熱材として兼用することもできる。
さらに、合金の微粒子の集まりで覆われた布帛ないしは不織布を、電磁波を遮蔽する部材に重ね合わせ、布帛ないしは不織布に圧縮荷重を加えると、合金の微粒子の集まりが塑性変形し、表層の合金の微粒子は、電磁波を遮蔽する部材の表面に食い込んで、電磁波を遮蔽する部材に圧着されて一体になる。このため、従来は接着によって接合していた処理が一切不要になる。また、合金の微粒子の集まりからなる多層構造で覆われた布帛ないしは不織布を、静電気の発生を抑える制電材ないしは帯電防止材として用いる場合は、布帛ないしは不織布の表面は、微粒子の大きさに基づくナノレベルの凹凸を形成するため優れた撥水性を示す。これによって、布帛ないしは不織布の表面に異物が付着しない。
また、合金微粒子を、触媒作用を持つ合金で構成すれば、布帛ないしは不織布は触媒作用を発揮する。さらに、合金微粒子が、抗菌作用を持つ合金で構成すれば、布帛ないしは不織布は抗菌作用を発揮する。さらに、布帛ないしは不織布の表面は、ナノレベルの凹凸を形成するため、優れた撥水性を示す。これによって、布帛ないしは不織布の表面に異物が付着しない。
すなわち、化学繊維からなる布帛ないしは不織布を、複数種類の金属錯塩のアルコール分散液が充填された浴槽に浸漬して通過させる。次に、アルコールの気化点を超える温度に昇温された熱処理炉を通過させ、最後に、複数種類の金属錯塩が同時に熱分解する温度に昇温された還元雰囲気の熱処理炉を通過させる。この後、処理した布帛ないしは不織布を巻き取り、その後、必要な大きさに切断すると、微粒子を構成する合金の性質と微粒子の性質とを併せ持つ布帛ないしは不織布が製造される。
このような複数種類の金属錯塩が同時に熱分解する温度より溶融点が高い化学繊維として、11段落で挙げた汎用的な化学繊維がある。
すなわち、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物は、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超える温度で、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の沸点に応じた290−400℃の温度範囲で全てのカルボン酸が気化して金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物に、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などの飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物がある。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物が析出する。例えば、カルボン酸銅がオレイン酸銅の場合は、酸化第一銅Cu2Oと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、銅に還元するための処理費用を要する。中でも、酸化第一銅Cu2Oは、酸素ガスの割合が大気雰囲気よりリッチな雰囲気で一度酸化第二銅CuOに酸化させた後に、再度、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、還元処理の費用がさらにかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。このため、11段落で説明した金属錯塩より熱処理温度が高いが、金属錯塩より安価なカルボン酸金属化合物を用いて、繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面が、様々な金属微粒子の集まりで覆われ、繊維、糸、布帛ないしは不織布は金属の性質と微粒子の性質とを併せ持つ。
本製造方法に依れば、カルボン酸金属化合物がアルコールに分散された分散液に、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より溶融点が高い化学繊維からなる繊維、ないしは、該繊維の複数本が撚り合わされた糸を浸漬し、この繊維ないしは糸を大気雰囲気で熱処理する。アルコールが気化した後に、290−400℃の温度範囲でカルボン酸金属化合物が熱分解し、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属微粒子の集まりが、繊維ないしは糸の表面に析出する。この結果、繊維ないしは糸は、金属微粒子の集まりで覆われ、繊維ないしは糸は、微粒子を構成する金属の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
つまり、化学繊維の性質が不可逆変化する温度は、化学繊維の熱分解温度であり、この熱分解温度は溶融点より高い。従って、化学繊維の溶融点がカルボン酸金属化合物の熱分解温度より高ければ、化学繊維からなる繊維、ないしは、該繊維の複数本が撚り合わされた糸は、分子構造上の不可逆変化がもたらされずに、金属微粒子の多層構造で覆われる。この結果、化学繊維の性質が不可逆変化することなく、繊維ないしは糸は、金属の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
すなわち、リールに巻かれた繊維を、ないしは、繊維の複数本が撚り合わされた糸を、リールから引き出し、カルボン酸金属化合物のアルコール分散液が充填された浴槽に浸漬させる。次に、アルコールの気化点を超える温度に昇温された熱処理炉を通過させ、さらに、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度に昇温された大気雰囲気の熱処理炉を通過させる。この後、処理した繊維ないしは糸をリールで巻き取る。こうした極めて簡単な処理を連続して実施すると、金属微粒子の集まりで覆われた繊維、ないしは、繊維の複数本が撚り合わされた糸が製造される。
従って、この繊維ないしは糸は、例えば、電線の導体として用いることができる。さらに、導体の外側に絶縁体を被覆した電線の製造においては、金属微粒子の多層構造で覆われた繊維ないしは糸が、押し出し機のダイスから押し出される際に応力を受けるが、金属微粒子同士が互いに金属結合によって結合しているため、金属微粒子が剥がれることはない。さらに、微粒子がナノレベルの大きさであるため、ダイスと直接接触しても、点接触に近い状態で接触し、微粒子に過大な摩擦力が発生せず、微粒子が剥がれることはない。このため、本製造方法に依って製造した繊維ないし糸は、絶縁被覆された電線を製造する際の電線の導体としても用いることもできる。
本製造方法に依れば、カルボン酸金属化合物がアルコールに分散された分散液に、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より溶融点が高い化学繊維からなる布帛ないしは不織布を浸漬し、この布帛ないしは不織布を大気雰囲気で熱処理する。アルコールを気化させた後に、290−400℃の温度範囲でカルボン酸金属化合物が熱分解し、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属微粒子の集まりが、布帛ないしは不織布の表面に析出する。この結果、布帛ないしは不織布は、金属微粒子の集まりで覆われ、布帛ないしは不織布は、微粒子を構成する金属の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
従って、本製造方法に依って製造した布帛ないしは不織布は、例えば、電磁波を遮蔽する電磁波シールド材、ないしは、静電気の発生を抑える制電材ないしは帯電防止材として用いることができる。さらに、金属の熱伝導性に近い性質を持つため、放熱材として兼用することもできる。
さらに、金属の微粒子の集まりで覆われた布帛ないしは不織布を、電磁波を遮蔽する部材に重ね合わせ、布帛ないしは不織布に圧縮荷重を加えると、金属の微粒子の集まりが塑性変形し、表層の金属の微粒子は、電磁波を遮蔽する部材の表面に食い込んで、電磁波を遮蔽する部材に圧着されて一体になる。このため、従来は接着によって接合していた処理が一切不要になる。また、金属の微粒子の集まりからなる多層構造で覆われた布帛ないしは不織布を、静電気の発生を抑える制電材ないしは帯電防止材として用いる場合は、布帛ないしは不織布の表面は、微粒子の大きさに基づくナノレベルの凹凸を形成するため優れた撥水性を示す。これによって、布帛ないしは不織布の表面に異物が付着しない。
また、金属微粒子を、触媒作用を持つ金属で構成すれば、布帛ないしは不織布は触媒作用を発揮する。さらに、金属微粒子が、抗菌作用を持つ金属で構成すれば、布帛ないしは不織布は抗菌作用を発揮する。さらに、布帛ないしは不織布の表面は、ナノレベルの凹凸を形成するため、優れた撥水性を示す。これによって、布帛ないしは不織布の表面に異物が付着しない。
つまり、化学繊維からなる布帛ないしは不織布を、カルボン酸金属化合物のアルコール分散液が充填された浴槽に浸漬させる。次に、アルコールの気化点を超える温度に昇温された熱処理炉を通過させ、さらに、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度に昇温された大気雰囲気の熱処理炉を通過させる。この後、処理した布帛ないしは不織布を巻き取り、必要な大きさに切断すると、微粒子を構成する金属ないしは合金の性質と微粒子の性質とを併せ持つ布帛ないしは不織布が製造される。
なお、溶融点が290−400℃を超える化学繊維として、次の化学繊維がある。従って、これら化学繊維からなる繊維、この繊維からなる糸、この繊維からなる布帛ないしは不織布に対し、金属の性質と微粒子の性質とを併せ持たせることができる。合成繊維に属するフッ素系繊維のフィラメントは、溶融点が260−310℃で、引張破断強度は110−280MPaで、密度は1.74−2.15g/cm 3 である。また、パラ型アラミド繊維は、溶融点は不明瞭で、熱分解温度は約500℃と高く、引張破断強度は2.9−3.4GPaと高い値を持ち、密度は1.44g/cm 3 である。いっぽう、メタ型アラミド繊維は、溶融点は400−430℃と高いが、引張破断強度は588−686MPaであり、密度は1.38g/cm 3 である。さらに、PBO繊維は、溶融点は不明瞭で、熱分解温度は650℃と高い値を持ち、引張破断強度は5.8GPaと高い値を持ち、密度は1.54g/cm 3 である。また、ポリアリレート繊維は、溶融点は不明瞭で、熱分解温度は400℃を超え、引張破断強度は2.9−3.3GPaと高い値を持ち、密度は1.41−1.45g/cm 3 である。いっぽう、無機繊維に属するガラス繊維の軟化点は840℃と極めて高く、引張破断強度は3.4GPaと高い値を持ち、密度は2.55g/cm 3 である。
ここで、11段落で説明した事例と同様に、銅微粒子の多層構造でパラ型アラミド繊維を覆い、パラ型アラミド繊維が銅の性質を示すことを説明する。ここでも、銅微粒子が50nmの大きさとし、0.4μmの厚みを形成して、直径8μmのパラ型アラミド繊維のモノフィラメントを覆うとする。この際、銅微粒子の集まりが形成する電気抵抗と、パラ型アラミド繊維のモノフィラメントが形成する電気抵抗の比率は、11段落におけるナイロン66繊維の場合と同様に、両者の体積固有抵抗の比率が寄与する。この結果、パラ型アラミド繊維のモノフィラメントは、銅の電気導電性を示す。さらに、直径が8.8μmからなるタフピッチ銅からなる銅線に比べて、68%の重量低減が図られる。また、引張破断強度は、タフピッチ銅からなる銅線の10.5−13.4倍の値を持つ。さらに、パラ型アラミド繊維のモノフィラメントは、銅線より安価に製造できる。従って、銅線より、引張強度が著しく大きく、重量が著しく軽く、かつ、銅の導電性を持つ導体が安価に製造できる。
また、熱伝導率についても、銅の熱伝導率がパラ型アラミド繊維の熱伝導率の8000−10000倍に近い値を持つため、銅微粒子の集まりで覆われたパラ型アラミド繊維のモノフィラメントは、銅にかなり近い熱伝導性を示す。このように、金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆われた化学繊維からなる繊維、ないしは、繊維の複数本が撚り合わされた糸は、金属の性質と微粒子の性質とを併せ持つ。
また、パラ型アラミド繊維からなる布帛ないしは不織布を、アルミニウム微粒子の集まりで覆い、この布帛ないしは不織布が、アルミニウムの性質を示すことを説明する。ここでは、11段落で説明した事例と同様に、アルミニウム微粒子が50nmの大きさとし、2μmの厚みを形成して、厚みが1mmで幅が5cmからなるパラ型アラミド繊維からなる布帛ないしは不織布を覆うとする。アルミニウムの密度は2.7g/cm 3 で、熱伝導率は237W/mKで、体積固有抵抗は28.2×10 −9 Ωmである。この際、アルミニウム微粒子の多層構造が占める断面積と、パラ型アラミド繊維からなる布帛ないしは不織布が占める断面積の比率は4×10 −3 になる。さらに、両者が形成する電気抵抗の比率は、断面積の比率の逆数に体積固有抵抗の比率を掛け合わせた値である0.98×10 −22 になる。つまり、両者の電気抵抗の比率は、両者の断面積の比率は寄与せず、両者の体積固有抵抗の比率が寄与する。従って、両者で形成される合成抵抗は、両者の抵抗の並列接続になるため、アルミニウム微粒子が形成する電気抵抗になる。この結果、パラ型アラミド繊維からなる布帛ないしは不織布は、アルミニウムの電気導電性を示す。また、アルミニウム微粒子の集まりで覆うことによる重量増加は、パラ型アラミド繊維からなる布帛ないしは不織布の重量のわずか0.77%に過ぎない。また、熱伝導率についても、アルミニウムの熱伝導率がパラ型アラミド繊維の熱伝導率の4700−5900倍の値を持つため、パラ型アラミド繊維からなる布帛ないしは不織布は、アルミニウムに極めて近い熱伝導性を示し、優れた放熱材としての機能も発揮する。このように、アルミニウム微粒子の集まりでパラ型アラミド繊維からなる布帛ないしは不織布を覆うと、重量増加が0.8%に過ぎないにもかかわらず、アルミニウムの導電性と熱伝導性とを兼備し、優れた放熱特性を併せ持つ電磁波シールド材、制電材ないしは帯電防止材として用いることができる。
以上に説明したように、本製造方法に依って、金属微粒子の集まりで覆われた布帛ないしは不織布が容易に製造でき、この布帛ないしは不織布は、金属の性質に基づく作用効果と、微粒子の性質に基づく作用効果を同時に発揮する。
すなわち、同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を、大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、複数種類のカルボン酸金属化合物は、同時にカルボン酸と金属とに分離され、更に昇温すると、カルボン酸の気化がカルボン酸の沸点に応じた290−400℃の温度範囲で完了し、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が同時に析出する。これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属から構成され、かつ、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じた組成割合からなる合金が生成される。このため13段落で説明した複数種類の金属錯塩より熱処理温度が高いが、金属錯塩より安価なカルボン酸金属化合物で様々な合金が生成され、繊維、糸、布帛ないしは不織布は微粒子を構成する合金の性質と微粒子の性質とを併せ持つ。
また、本製造方法に依れば、複数種類のカルボン酸金属化合物がアルコールに分散された分散液に、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より溶融点が高い化学繊維からなる繊維、ないしは、該繊維の複数本が撚り合わされた糸を浸漬し、この繊維ないしは糸を大気雰囲気で熱処理する。アルコールが気化した後に、290−400℃の温度範囲で複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解し、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の合金微粒子の集まりが、繊維ないしは糸の表面に析出する。この結果、繊維ないしは糸は、合金微粒子の集まりで覆われ、繊維ないしは糸は、微粒子を構成する合金の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
つまり、化学繊維の性質が不可逆変化する温度は、化学繊維の熱分解温度であり、この熱分解温度は溶融点より高い。従って、化学繊維の溶融点が複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より高ければ、化学繊維からなる繊維、ないしは、該繊維の複数本が撚り合わされた糸は、分子構造上の不可逆変化がもたらされずに、合金微粒子の多層構造で覆われる。この結果、化学繊維の性質が不可逆変化することなく、繊維ないしは糸は、合金の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
すなわち、リールに巻かれた繊維を、ないしは、複数本の繊維が撚り合わされた糸を、リールから引き出し、複数種類のカルボン酸金属化合物のアルコール分散液が充填された浴槽に浸漬させる。この後、アルコールの気化点を超える温度に昇温された熱処理炉を通過させ、さらに、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度に昇温された大気雰囲気の熱処理炉を通過させる。この後、処理した繊維ないしは糸をリールで巻き取る。こうした極めて簡単な処理を連続して実施すると、合金の微粒子の集まりで覆われた繊維が、ないしは、繊維の複数本が撚り合わされた糸が製造される。
従って、この繊維ないしは糸は、例えば、電線の導体として用いることができる。また、導体の外側に絶縁体を被覆した電線の製造においては、合金微粒子の多層構造で覆われた繊維ないしは糸が、押し出し機のダイスから押し出される際に応力を受けるが、合金微粒子同士が互いに金属結合によって結合しているため、合金微粒子が剥がれることはない。さらに、微粒子がナノレベルの大きさであるため、ダイスと直接接触したとしても、点接触に近い状態で接触し、微粒子に過大な摩擦力が発生せず、微粒子が剥がれることはない。このため、本製造方法に依って製造した繊維ないしは糸は、絶縁被覆された電線を製造する際の電線の導体としても用いることもできる。
また、本製造方法に依れば、複数種類のカルボン酸金属化合物がアルコールに分散された分散液に、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より溶融点が高い化学繊維からなる布帛ないしは不織布を浸漬し、この布帛ないしは不織布を大気雰囲気で熱処理する。アルコールを気化させた後に、290−400℃の温度範囲で複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解し、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の合金微粒子の集まりが、布帛ないしは不織布の表面に析出する。この結果、布帛ないしは不織布は、合金微粒子の集まりで覆われ、布帛ないしは不織布は、微粒子を構成する合金の性質と微粒子の性質を併せ持つ。
従って、本製造方法に依って製造した布帛ないしは不織布は、例えば、電磁波を遮蔽する電磁波シールド材、ないしは、静電気の発生を抑える制電材ないしは帯電防止材として用いることができる。さらに、合金の熱伝導性に近い性質を持つため、放熱材として兼用することもできる。
さらに、合金の微粒子の集まりで覆われた布帛ないしは不織布を、電磁波を遮蔽する部材に重ね合わせ、布帛ないしは不織布に圧縮荷重を加えると、合金の微粒子の集まりが塑性変形し、表層の合金の微粒子は、電磁波を遮蔽する部材の表面に食い込んで、電磁波を遮蔽する部材に圧着されて一体になる。このため、従来は接着によって接合していた処理が一切不要になる。また、合金の微粒子の集まりからなる多層構造で覆われた布帛ないしは不織布を、静電気の発生を抑える制電材ないしは帯電防止材として用いる場合は、布帛ないしは不織布の表面は、微粒子の大きさに基づくナノレベルの凹凸を形成するため優れた撥水性を示す。これによって、布帛ないしは不織布の表面に異物が付着しない。
また、合金微粒子を、触媒作用を持つ合金で構成すれば、布帛ないしは不織布は触媒作用を発揮する。さらに、合金微粒子が、抗菌作用を持つ合金で構成すれば、布帛ないしは不織布は抗菌作用を発揮する。さらに、布帛ないしは不織布の表面は、ナノレベルの凹凸を形成するため、優れた撥水性を示す。これによって、布帛ないしは不織布の表面に異物が付着しない。
すなわち、化学繊維からなる布帛ないしは不織布を、複数種類のカルボン酸金属化合物のアルコール分散液が充填された浴槽に浸漬させる。次に、アルコールの気化点を超える温度に昇温された熱処理炉を通過させ、さらに、複数種類の金属錯塩が同時に熱分解する温度に昇温された大気雰囲気の熱処理炉を通過させる。この後、処理した布帛ないしは不織布を巻き取り、必要な大きさに切断すると、微粒子を構成する合金の性質と微粒子の性質とを併せ持つ布帛ないしは不織布が製造される。
このような複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より溶融点が高い化学繊維として、19段落で挙げた化学繊維がある。
本実施形態は、還元雰囲気での熱処理で金属ないしは合金を析出する金属錯塩に関わる実施形態である。本発明における化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面を、金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆う原料は、9段落で説明したように、熱処理で金属が析出する金属化合物の粉体が、ないしは、熱処理で複数種類の金属が同時に析出する複数種類の金属化合物の粉体が分子状態で分散された分散液である。また、分散液の分散媒体は、アルコールが適している。つまり、アルコールは様々な沸点を有し、金属化合物の熱分解温度より低い沸点を持つアルコールが選択でき、これによって、気化したアルコールが容易に回収できる。このため、金属化合物は、アルコールに分散する第一の性質と、繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面に吸着した金属化合物が、金属微粒子の集まりを析出する第二の性質を持つことが必要になる。
ここで、アルコールに分散する性質を持つ金属化合物を説明する。ここでは金属を銅とし、銅化合物を例として説明する。塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などの無機銅化合物はアルコールに溶解し、銅イオンが溶出してしまい、多くの銅イオンが銅微粒子の析出に参加できなくなる。従って、銅化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分子状態で分散する性質を持つことで、繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面に吸着した金属化合物の全てが金属微粒子の析出に参加する。また、酸化銅、塩化銅、硫化銅などの無機銅化合物はアルコール類に分散しない。このため、これらの無機銅化合物は銅化合物として適切でない。
次に、繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面に吸着した銅化合物は、銅微粒子の集まりを析出する性質を持つ。銅化合物から銅が生成される化学反応の中で、最も簡単な処理による化学反応に熱分解反応がある。つまり、銅化合物を昇温するだけで、銅化合物が熱分解して銅が析出する。さらに、銅化合物の熱分解温度が低ければ、耐熱性が低い化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面を、銅微粒子の集まりで覆うことができ、熱処理費用も安価で済む。無機物の分子ないしはイオンが配位子となって、分子構造の中央に位置する銅イオンに配位結合する銅錯イオンは、合成が容易な銅錯イオンである。さらに、こうした銅錯イオンを有する無機塩からなる銅錯塩が還元雰囲気で熱分解する温度は、銅化合物が熱分解する温度の中で最も低い。つまり、金属と無機物とに分解される温度が低く、さらに、分解された無機物が容易に気化する。従って、このような銅錯塩は、有機銅化合物より高価な物質であるが、より低い熱処理温度で銅を析出する。
なお、金属錯塩には多くの種類があり、有機物が配位子となる金属錯塩は、金属と有機物に分解される温度が高く、また、有機物の気化に多くの熱エネルギーが必要になり、金属が析出する温度は、無機物が配位子となる金属錯塩に比べて高い。また、配位子に酸素原子が含まれる場合は、金属酸化物を析出する。さらに、金属錯イオンの合成に多くの費用を要し、無機物が配位子となる金属錯イオンに比べて製造費が高い。これに対し、無機物の分子ないしはイオンが配位子となって金属イオンに配位結合する金属錯イオンは合成が容易であり、こうした金属錯イオンの無機塩も合成が容易である。さらに、こうした金属錯イオンを有する無機塩は、無機物の分子量が小さいため、金属化合物の中で最も低い温度で金属を析出する。従って、無機物の分子ないしはイオンが配位子となって金属イオンに配位結合する金属錯イオンの無機塩は、低温度で金属を析出する原料になる。
すなわち、無機物の分子ないしはイオンが配位子となって銅イオンに配位結合する銅錯イオンを構成する分子の中で、銅イオンが最も大きい。ちなみに、銅原子の共有結合半径は132±4pmであり、一方、窒素原子の共有結合半径の71±1pmであり、酸素原子の共有結合半径は66±2pmである。このため、銅錯イオンを有する銅錯塩の分子構造において、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が銅イオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、還元雰囲気の熱処理においては、最初に配位結合部が分断され、金属と無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後に銅が析出する。
さらに、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が銅イオンに配位結合する銅錯イオンの中で、アンモニアNH3が配位子となって銅イオンに配位結合するアンミン銅錯イオンは、他の銅錯イオンに比べてさらに合成が容易で、安価な製造費用で製造できる。このようなアンミン銅錯イオンとして、例えばテトラアンミン銅錯イオン[Cu(NH3)4]2+ないしはヘキサアンミン銅錯イオン[Cu(NH3)6]2+などがある。
さらに、アンミン銅錯イオンを有する銅錯塩の中で、アンミン銅錯イオンの無機塩は、無機物の分子量が小さいため、銅が析出する温度が最も低い。このような銅錯体として、例えば、テトラアンミン銅硝酸塩[Cu(NH3)4](NO3)2やヘキサアンミン銅硫酸塩[Cu(NH3)6]SO4がある。これらのアンミン銅錯イオンの無機塩は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、金属と無機物とに分解され、無機物の分子量が小さいため、200℃程度の低い温度で無機物の気化が完了して銅が析出する。また、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。
以上に説明したように、無機物の分子ないしはイオンが配位子となって金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機塩からなる金属錯塩は、合成が容易で、より低い温度で金属を析出する。このため、耐熱性が低い化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面を、金属微粒子の集まりで覆う原料になる。また、金属より酸化ないしは腐食しにくい合金微粒子の集まりで覆う場合は、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合した異なる金属錯イオンからなる複数種類の無機塩から構成される複数種類の金属錯塩は、耐熱性が低い化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面を、合金微粒子の集まりで覆う原料になる。つまり、複数種類の金属錯塩が同一の配位子から構成されるため、複数種類の金属錯塩が同時に無機物と金属とに熱分解し、無機物の気化が完了した後に、各々の金属錯塩のモル濃度に応じて複数種類の金属が同時に析出する。これらの金属は不純物を持たない活性状態にあるため、これらの金属の組成割合からなる合金が生成される。
本実施形態は、大気雰囲気での熱処理で金属を析出するカルボン酸金属化合物に関わる実施形態である。25段落で説明したように、化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面を、金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆う原料は、アルコールに分散する第一の性質と、金属ないしは合金の微粒子の集まりを析出する第二の性質を持つ。
ここで、アルコールに分子状態で分散する性質を持つ金属化合物を説明する。ここでは金属をアルミニウムとし、アルミニウム化合物を例として説明する。塩化アルミニウムは水に溶け、水酸化アルミニウムと塩酸に加水分解する。また、水酸化アルミニウムはアルコールに分散しない。硫酸アルミニウムはアルコールに溶解し、アルミニウムイオンが溶出してしまい、多くのアルミニウムイオンがアルミニウムの析出に参加できなくなる。また、酸化アルミニウムは、アルコールに分散しない。従って、これら無機アルミニウム化合物は、アルミニウム化合物として適切でない。
化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面に吸着したアルミニウム化合物は、アルミニウム微粒子を析出する性質を持つ。つまり、アルミニウム微粒子が生成される化学反応が、繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面で起こる。アルミニウム化合物からアルミニウムが生成される化学反応の中で、最も簡単な処理による化学反応に熱分解反応がある。つまり、アルミニウム化合物を大気雰囲気で昇温するだけでアルミニウムが析出する。さらにアルミニウム化合物の合成が容易でれば、アルミニウム化合物が安価に製造できる。こうした性質を兼備するアルミニウム化合物にカルボン酸アルミニウムがある。
つまり、カルボン酸アルミニウムを構成するイオンの中で、最も大きいイオンはアルミニウムイオンである。従って、カルボン酸アルミニウムにおけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、アルミニウムイオンに共有結合すれば、アルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの距離が、イオン同士の距離の中で最も長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸アルミニウムを大気雰囲気で昇温させると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボン酸とアルミニウムとに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にアルミニウムが析出する。従って、カルボン酸の沸点が低いほど、カルボン酸アルミニウムの分解が始まる温度は低く、また、アルミニウムが析出する温度も低い。なお、還元雰囲気でのカルボン酸アルミニウムの熱分解は、大気雰囲気での熱分解より高温側で進む、つまり、熱分解反応が遅い。このため、大気雰囲気での熱分解がアルミニウムを析出させる条件として望ましい。
一方、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウムが熱分解すると、アルミニウムの酸化物が析出する。さらに、カルボン酸アルミニウムの中で、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となってアルミニウムイオンに近づいて配位結合するカルボン酸アルミニウム(この物質はアルミニウム錯塩の一種で、有機物のカルボキシル基が配位子を構成する)では、アルミニウムイオンと酸素イオンとの距離が短くなり、反対に、酸素イオンがアルミニウムイオンと反対側で結合するイオンとの距離が最も長くなる。このようなカルボン酸アルミニウムの熱分解反応では、酸素イオンがアルミニウムイオンと反対側で結合するイオンとの結合部が最初に分断され、この結果、酸化アルミニウムが析出する。このようなカルボン酸アルミニウムは、アルミニウムを析出する原料として適切でない。
さらに、カルボン酸アルミニウムは合成が容易で、安価な有機アルミニウム化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属が生成される。このカルボン酸アルカリ金属を、硫酸アルミニウムなどの無機アルミニウム化合物と反応させると、カルボン酸アルミニウムが容易に生成される。以下に、カルボン酸アルミニウムの実施形態を説明する。
飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウムの組成式は、Al(RCOO)3で表わせられる。Rはアルカンで、組成式はCmHnである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸アルミニウムを構成する物質の中で、組成式の中央に位置するアルミニウムイオンAl3+が最も大きい物質になる。従って、アルミニウムイオンAl3+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合する場合は、アルミニウムイオンAl3+と酸素イオンO−との距離が最大になる。ちなみに、アルミニウムイオン原子の共有結合半径は121±4pmで、酸素イオン原子の共有結合半径は66±2pmで、炭素原子の共有結合半径は73pmである。従って、アルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸アルミニウムは、カルボン酸の沸点を超えると、結合距離が最も長いアルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、アルミニウムとカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にアルミニウムが析出する。こうしたカルボン酸アルミニウムとして、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウムがある。
さらに、飽和脂肪酸で構成されるカルボン酸アルミニウムについて、飽和脂肪酸の沸点が相対的に低ければ、カルボン酸アルミニウムは相対的に低い温度で熱分解し、耐熱性が低い化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布の表面をアルミニウム微粒子の集まりで覆うことができ、また、アルミニウム微粒子を析出させる熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど飽和脂肪酸の沸点が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。このため、長鎖構造の飽和脂肪酸の分子量が相対的に小さい飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウムは、熱分解温度が相対的に低くなるので、アルミニウムを析出する原料として望ましい。
また、飽和脂肪酸が分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸である場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点が相対的に低くなる。これによって、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウムは、相対的に低い温度で熱分解する。さらに、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウムも極性を持ち、アルコールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸の構造式はCH3(CH2)3CH(C2H5)COOHで示され、CHでCH3(CH2)3とC2H5とのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、前記したラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、より低い温度でアルミニウムを析出する原料として、オクチル酸アルミニウムが最も望ましい。ちなみに、オクチル酸アルミニウムは、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了してアルミニウムが析出し、メタノールやn−ブタノールなどに10重量%まで分散する。
いっぽう、合金を生成する原料として、同一の飽和脂肪酸から構成され、カルボキシル基の酸素イオンが金属イオンと共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を用いることができる。つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物が、同一の飽和脂肪酸から構成されるため、飽和脂肪酸の沸点を超える温度で複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解し、飽和脂肪酸の気化が完了した後に、各々のカルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が同時に析出する。複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、複数種類の金属の組成割合からなる合金が生成される。
本実施例は、化学繊維として最も汎用的な繊維の一つであるナイロン66繊維を用い、ナイロン66繊維を銅微粒子の集まりで覆う。なお、化学繊維はナイロン66繊維に限定されず、11段落で説明した溶融点が180−220℃を超える様々な汎用的な化学繊維を用いることができる。また金属微粒子は銅微粒子に限定されない。11段落で説明したように、熱分解温度が180−220℃の範囲にある金属錯塩を用いることで、様々な金属微粒子を析出することができる。本実施例では、ナイロン66繊維として、株式会社東レが製造する商標がプロミランと呼ばれる品種470−72のノンコート品を用いた。この繊維は、強度が8.5cN/dtexで、伸度が22%のモノフィラメントである。銅の原料は、最も合成が容易である銅錯イオンの一つである4個のアンミンが銅イオンCu2+に配位結合したテトラアンミン銅イオン[Cu(NH3)4]2+の硝酸塩であるテトラアンミン銅硝酸塩[Cu(NH3)4](NO3)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
銅微粒子の集まりでナイロン66繊維覆う製作工程を説明する。最初に、テトラアンミン銅硝酸塩を、1重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液にナイロン66繊維を浸漬した。さらに、ナイロン66繊維を取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。この後、ナイロン66繊維を水素ガスの雰囲気からなる200℃の熱処理炉に5分間放置し、テトラアンミン銅硝酸塩を還元した。
次に、製作した試料の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子が約0.5μmの厚みをなして多層構造を形成していた。さらに、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。銅原子のみが存在した。これらの結果から、粒状の銅微粒子の集まりが、0.5μmの厚みからなる多層構造をなしてナイロン66繊維を覆ったことが分かった。
さらに、直流抵抗計(例えば、鶴賀電気株式会社の直流抵抗計モデル356H)を用いて、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、銅に近い体積固有抵抗を示した。
製作した試料の模式図を図1と図2に示す。図1は試料の断面図で、ナイロン66繊維のモノフィラメント1の外周に、銅微粒子の集まり2が多層構造をなして覆った状態を示す。図2は、銅微粒子の集まり2が多層構造を形成している状態を模式的に示した。
本実施例で製作した試料は、銅の導電性と熱伝導性を有するナイロン66繊維となる。
本実施例は、実施例1で用いたプロミラン470−72のノンコートからなるナイロン66繊維を、銅と銀とからなる銅−銀合金の微粒子の集まりで覆う実施例である。なお、銅を主成分とする銅−銀合金は銅より耐熱性が優れるが、銀の含有量を増すほど導電率が銅の導電率より低下する。このため、本実施例では銀の割合が10%とからなる銅−銀合金とした。なお、タフピッチ銅の導電率を100とした場合、この銅−銀合金の導電率は98になる。なお、合金微粒子は銅−銀合金の微粒子に限定されない。11段落で説明したように、熱分解温度が180−220℃の範囲で、同一の配位子からなる異なる金属錯イオンからなる複数種類の金属錯塩を用いると、様々な合金の微粒子を析出することができる。本実施例における銅の原料は、実施例1で用いたテトラアンミン銅硝酸塩である。また、銀の原料は、最も合成が容易である銀錯イオンの一つである2個のアンミンが、銀イオンに配位結合したジアンミン銀イオン[Ag(NH3)2]+1の塩化物であるジアンミン銀塩化物[Ag(NH3)2]Cl(例えば、田中貴金属販売株式会社の製品)を用いた。いずれの錯塩も、アンモニアが配位子となって金属イオンに配位結合した金属錯イオンからなるため、同一の温度で還元されて銅と銀を析出する。
銅−銀合金の微粒子の集まりでナイロン66繊維を覆う製作工程を説明する。最初に、テトラアンミン銅硝酸塩とジアンミン銀塩化物とが、モル比率で9対1になるように秤量して混合し、混合物が1重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に、ナイロン66繊維を浸漬した。次に、ナイロン66繊維を取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。さらに、水素ガスの雰囲気からなる200℃の熱処理炉に5分間放置し、テトラアンミン銅硝酸塩とジアンミン銀塩化物とを同時に還元した。
次に、製作した試料の表面と切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子は約0.5μmの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。過剰の銅原子と僅かな銀原子とが存在し、偏在する箇所が認められなかったので、微粒子は銅−銀の合金からなる。なお、銅錯塩と銀錯塩とをモル比率で9対1の割合で混合したため、銅−銀合金は9対1の割合で構成される合金であると考える。これらの結果から、銅−銀合金の粒状微粒子の集まりが、0.5μmの厚みをなしてナイロン66繊維を覆ったことが分かった。
さらに実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、銅に近い体積固有抵抗を示した。
本実施例で製作した試料は、銅より耐熱性が高く、銅に近い導電性と熱伝導性を有するナイロン66繊維となる。
本実施例は、布帛として実施例1で用いたプロミラン470−72のノンコートからなる基布を用い、この基布をニッケルの微粒子の集まりで覆う実施例である。なお、この基布は、織り密度が2.54cmあたり55本で、目付が1m2あたり216gで、厚みが0.32mmからなる。ニッケルの原料は、最も合成が容易であるニッケル錯イオンの一つである6個のアンミンがニッケルイオンNi2+に配位結合したヘキサアンミンニッケルイオン[Ni(NH3)6]2+の塩化物であるヘキサアンミンニッケル塩化物 [Ni(NH3)6]Cl2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
ニッケル微粒子の集まりで基布を覆う製作工程を説明する。最初に、ヘキサアンミンニッケル塩化物を、2重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に基布を浸漬した。次に、基布を取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。さらに、水素ガスの雰囲気からなる200℃の熱処理炉に5分間放置し、ヘキサアンミンニッケル塩化物を還元した。
次に、製作した試料の表面と切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子が約1μmの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。ニッケル原子のみが存在した。これらの結果から、ニッケルの粒状の微粒子の集まりが、1μmの厚みをなして基布を覆ったことが分かった。
さらに、実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流し、内側の2つの端子で電圧を2回測り、2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、Niに近い体積固有抵抗を示した。
製作した試料の模式図を、図3と図4に示す。図3は試料の断面で、ナイロン66繊維からなる基布3の外周に、ニッケル微粒子の集まり4が多層構造をなして覆った状態を示す。図4は、銅微粒子の集まり4が多層構造を形成している状態を示す。本実施例で製作した試料は、Niの導電性と強磁性を有するナイロン66繊維からなる基布となる。
本実施例は、実施例3で用いたプロミラン470−72のノンコートからなる基布を、銀とニッケルとからなる合金の微粒子の集まりで覆う実施例である。なお、本実施例におけるAg−Ni合金は、銀とニッケルとが9対1からなる組成割合からなる。このような銀−ニッケル合金は、金属の中で最も導電率が高い銀の導電率を20%近く低下させるが、銀のマイグレーションが起こりにくい性質を持つ。銀の原料は、実施例2で用いたジアンミン銀塩化物である。ニッケルの原料は、実施例3で用いたヘキサアンミンニッケル塩化物である。いずれの錯塩も、アンモニアが配位子となって金属イオンに配位結合した金属錯イオンからなるため、同一の温度で還元されて銀とニッケルを析出する。
Ag−Ni合金の微粒子の集まりで基布を覆う製作工程を説明する。最初に、ジアンミン銀塩化物とヘキサアンミンニッケル塩化物とが、モル比率で9対1になるように秤量して混合し、この混合物が2重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に基布を浸漬した。基布を取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。さらに、水素ガス雰囲気からなる200℃の熱処理炉に5分間放置し、ジアンミン銀塩化物とヘキサアンミンニッケル塩化物とを同時に還元した。
次に、製作した試料の表面と切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。試料の断面の画像から、粒状微粒子が約1μmの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。過剰の銀原子と僅かなニッケル原子とが存在し、偏在する箇所が認められなかったので、微粒子はAg−Ni合金からなる。なお、銀錯塩とニッケル錯塩とをモル比率で9対1の割合で混合したため、Ag−Ni合金は9対1の割合で構成される合金であると考える。これらの結果から、Ag−Ni合金の粒状微粒子の集まりが、1μmの厚みをなして基布を覆ったことが分かった。
さらに、実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、銀に近い体積固有抵抗を示した。なお本実施例で製作した試料は、マイグレーションが起きにくい銀に近い導電性と熱伝導性を有するナイロン66繊維からなる基布となる。
本実施例は、不織布として、ポリエステルの長繊維からなる不織布を、銀−銅合金の微粒子で覆う実施例である。ポリエステルの長繊維からなる不織布として、株式会社東レが製造する商標がアクスターと呼ばれる製品の品番M2080−3Tを用いた。この不織布は、目付が80g/m2で、厚さが0.36mmで、引張強力は縦が69Nであり横が83Nであり、通気量が5cc/cm2・秒の特性を持つ。銀は最も優れた熱伝導性と電気導電性を持つとともに、全ての可視光領域で最も高い反射率を持つ金属であるが、耐食性に劣る性質を持つ。銀にわずかな銅を含有させることで、銀の熱伝導性と電気導電性と可視光の反射率とを犠牲にすることなく、耐酸化性が向上する。本実施例では、銅の割合が5%とからなる銀−銅合金とした。銀の原料は実施例2で用いたジアンミン銀塩化物とし、銅の原料は実施例1および2で用いたテトラアンミン銅硝酸塩とした。
銀−銅合金の微粒子の集まりで不織布を覆う製作工程を説明する。最初に、ジアンミン銀塩化物とテトラアンミン銅硝酸塩とが、モル比率で95対5になるように秤量して混合し、混合物が2重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に不織布を浸漬した。不織布を取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。さらに、水素ガスの雰囲気からなる200℃の熱処理炉に5分間放置し、ジアンミン銀塩化物とテトラアンミン銅硝酸塩とを同時に還元した。
次に、製作した試料の表面と切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子が約1μmの厚みからなる多層構造を形成して不織布を覆っていた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。過剰の銀原子と僅かな銅原子とが存在し、偏在する箇所が認められなかったので、微粒子は銀−銅の合金からなる。なお、銀錯塩と銅錯塩をモル比率で95対5の割合で混合したため、銀−銅合金は95対5の割合で構成される合金であると考える。これらの結果から、銀−銅合金の粒状微粒子の集まりが、1μmの厚みで不織布を覆ったことが分かった。
さらに、実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、銀に近い体積固有抵抗を示した。
製作した試料の模式図を図5と図6に示す。図5は試料の断面で、ポリエステル繊維からなる不織布5の外周に、銀−銅合金の微粒子の集まり6が多層構造をなして覆った状態を示す。図6は、銀−銅合金の微粒子の集まり5が多層構造を形成している状態を示す。
なお、本実施例で製作した試料は、銀に近い導電性と熱伝導性と可視光を反射するポリエステル繊維からなる不織布となる。
本実施例は、抗張力繊維として、最も汎用的な繊維の一つであるパラ型アラミド繊維を用い、パラ型アラミド繊維を銅微粒子の集まりで覆う実施例である。なお、化学繊維は、パラ型アラミド繊維に限定されず、19段落で説明した溶融点が290−400℃を超える様々な汎用的な化学繊維を用いることができる。また、金属微粒子は銅微粒子に限定されない。19段落で説明したように、熱分解温度が290−400℃の範囲にあるカルボン酸金属化合物を用いることで、様々な金属微粒子が析出する。本実施例では、パラ型アラミド繊維として、株式会社東レが製造するデュポン社の商標であるケブラーと呼ばれる製品の品種KEVLAR29のマルチフィラメントを用いた。この繊維は、繊度が1,670dtexで(フィラメント数が1,000本に相当する)で、引張強度が203cN/dtexで(2,920MPaに相当する)、破断時伸度が3.6%で、熱分解温度が427−482℃の範囲にある。また、銅の原料としてオクチル酸銅Cu(C7H15COO)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
銅微粒子の集まりでパラ型アラミド繊維を覆う製作工程を説明する。最初に、オクチル酸銅を1重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に、パラ型アラミド繊維を浸漬した。さらに、パラ型アラミド繊維を取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。この後、大気雰囲気からなる290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸銅を熱分解した。
次に、製作した試料の表面と切断面を電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状微粒子で満遍なく覆われていた。試料断面の画像から、粒状微粒子が約0.5μmの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。銅原子のみが存在した。これらの結果から、銅の粒状微粒子の集まりが、0.5μmの厚みでパラ型アラミド繊維を覆ったことが分かった。
さらに、実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、銅に近い体積固有抵抗を示した。
本実施例で製作した試料は銅の導電性と熱伝導性を有するパラ型アラミド繊維となる。
本実施例は、パラ型アラミド繊維を、合金微粒子の集まりで覆う実施例である。パラ型アラミド繊維は、実施例6で用いたKEVLAR29のマルチフィラメントを用いた。合金微粒子は、銅と銀の割合とが95対5からなる銅−銀合金の微粒子とした。なお、合金微粒子は銅−銀合金に限定されない。21段落で説明したように、熱分解温度が290−400℃で、同一のカルボン酸からなる複数種類のカルボン酸金属化合物を用いることで、様々な合金の微粒子を析出することができる。本実施例における銅の原料は、実施例6で用いたオクチル酸銅とした。銀の原料はオクチル酸銀Ag(C7H15COO)とした。なお、オクチル酸銀は市販されていないため、次の製法で新たに合成した。オクチル酸カリウム(例えば、東栄化工株式会社の製品)と硝酸銀(試薬1級品)とを反応させてオクチル酸銀を析出させ、この析出したオクチル酸銀を水洗してオクチル酸銀を得た。これらの原料は、いずれもオクチル酸金属化合物であるため、オクチル酸の沸点で同時に熱分解し、オクチル酸の気化が完了した後に銅と銀を析出する。
銅−銀合金の微粒子の集まりで、パラ型アラミド繊維を覆う製作工程を説明する。最初に、オクチル酸銅とオクチル酸銀が、モル比率で95対5になるように秤量して混合し、この混合物が1重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に、複数本のKEVLAR29のマルチフィラメントを浸漬した。次に、マルチフィラメントを取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。さらに、大気雰囲気からなる290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸銅とオクチル酸銀とを同時に熱分解した。
次に、製作した試料の表面と切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子は約0.5μmの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。過剰の銅原子と僅かな銀原子とが存在し、偏在する箇所が認められなかったので、微粒子は銅−銀の合金からなる。なお、オクチル酸銅とオクチル酸銀とをモル比率で95対5の割合で混合したため、銅−銀合金は95対5の割合で構成される合金であると考える。これらの結果から、銅−銀合金の粒状微粒子の集まりが、0.5μmの厚みをなしてパラ型アラミド繊維を覆ったことが分かった。
さらに、実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、銅に近い体積固有抵抗を示すことが分かった。なお本実施例で製作した試料は、銅より耐熱性が高く、銅に近い導電性と熱伝導性を有するパラ型アラミド繊維となる。
本実施例は、パラ型アラミド繊維の布帛を、アルミニウム微粒子の集まりで覆う実施例である。パラ型アラミド繊維の布帛として、実施例6および7で用いたKEVLAR29のマルチフィラメントからなる織物を用いた。この織物は平織で、糸密度が2.54cmあたり31×31本で、目付が1m2あたり278gで、厚みが0.38mmからなる(例えば、株式会社TITが製造する品番T―713)。アルミニウムの原料は、オクチル酸アルミニウムAl(C7H15COO)3を用いた(例えば、ホープ製薬株式会社の製品)。
アルミニウム微粒子の集まりで平織物を覆う製作工程を説明する。最初に、オクチル酸アルミニウムを2重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に平織物を浸漬した。さらに平織物を取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。この後、大気雰囲気からなる290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸アルミニウムを熱分解した。
次に、製作した試料の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子が約1μmの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。アルミニウム原子のみが存在した。これらの結果から、アルミニウムの粒状微粒子の集まりが、1μmの厚みで平織物を覆ったことが分かった。
さらに、実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、アルミニウムに近い体積固有抵抗を示した。なお、本実施例で製作した試料は、アルミニウムの導電性と熱伝導性を有するパラ型アラミド繊維からなる布帛となる。
本実施例は、パラ型アラミド繊維の布帛をアルミニウム合金の微粒子で覆う実施例である。布帛として実施例8の平織物を用いた。アルミニウム合金は、少量のマンガンを加えた合金で、アルミニウムの長所を損なうことなく、アルミニウムの強度と耐食性が向上する性質を持つ。本実施例では、マンガンを1.5%とした。アルミニウムの原料は、実施例8におけるオクチル酸アルミニウムを用いた。マンガンの原料は、オクチル酸マンガンMn(C7H15COO)2を用いた(例えば、東栄化工株式会社の製品)。
アルミ二ウム−マンガン合金の微粒子で、平織物を覆う製作工程を説明する。最初に、オクチル酸アルミニウムとオクチル酸マンガンとが、モル比率で98.5対1.5になるように秤量して混合し、この混合物が2重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に、平織物を浸漬した。平織物を取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。さらに、大気雰囲気からなる290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸アルミニウムとオクチル酸マンガンを同時に熱分解した。
次に、製作した試料の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子が約1μmの厚みからなる多層構造を形成して平織物を覆っていた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。過剰のアルミニウム原子とごく僅かなマンガン原子とが存在し、偏在する箇所が認められなかったので、微粒子はアルミニウム−マンガン合金からなる。なお、オクチル酸アルミニウムとオクチル酸マンガンとをモル比率で95対5の割合で混合したため、アルミニウム−マンガン合金は95対5の割合で構成される合金であると考える。これらの結果から、アルミニウム−マンガン合金の粒状微粒子の集まりが、1μmの厚みで平織物を覆ったことが分かった。
さらに、実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、アルミに近い体積固有抵抗を示すことが分かった。なお、本実施例で製作した試料は、アルミニウムより耐食性が優れ、アルミニウムに近い導電性と熱伝導性を有するパラ型アラミド繊維からなる布帛となる。
本実施例は、パラ型アラミド繊維からなる不織布を、アルミニウム−マンガン合金の微粒子の集まりで覆う実施例である。不織布として、実施例6および7で用いたKEVLAR29のマルチフィラメントからなる不織布を用いた。なお、この不織布は、厚みが2.8mmで、目付が1m2あたり280gからなる(例えば、株式会社TITが製造する品番KE―303)。また、アルミニウム−マンガン合金の組成は95対5である。
アルミ二ウム−マンガン合金の微粒子で、不織布を覆う製作工程を説明する。最初に、オクチル酸アルミニウムとオクチル酸マンガンとが、モル比率で95対5になるように秤量して混合し、この混合物が2重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に、不織布を浸漬した。不織布を取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。さらに、大気雰囲気からなる290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸アルミニウムとオクチル酸マンガンとを同時に熱分解した。
製作した試料の表面と切断面を、実施例9と同様に電子顕微鏡で観察した。この結果、アルミニウム−マンガン合金の粒状微粒子の集まりが、2.5μmの厚みで不織布を覆ったことが分かった。また試料は、実施例9と同様にアルミに近い体積固有抵抗を示した。
本実施例で製作した試料は、アルミニウムより耐食性が優れ、アルミニウムに近い導電性と熱伝導性を有するパラ型アラミド繊維からなる不織布となる。
本実施例は、ガラス繊維からなる布帛として、無アルカリガラスからなるガラス繊維を平織によってテープ状に加工したものを用い、白金微粒子の集まりでガラステープを覆う実施例である。なお、ガラステープは、9μmのモノフィラメントを平織し、厚さが0.1mmからなる(例えば、サカイ産業株式会社が製造する品番ETG1038)。白金の原料は、最も合成が容易である白金錯イオンの一つである4個のアンミンが白金イオンPt2+に配位結合したテトラアンミン白金イオン[Pt(NH3)4]2+の塩化物であるテトラアンミン白金塩化物[Pt(NH3)4]Cl2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
白金微粒子の集まりで覆われたガラステープを製作する工程を説明する。最初に、テトラアンミン白金塩化物を、2重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に、ガラステープを浸漬した。さらに、ガラステープを取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。この後、ガラステープを、水素ガス雰囲気からなる200℃の熱処理炉に5分間放置し、テトラアンミン白金塩化物を還元した。
次に、製作した試料の表面と切断面を電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状の微粒子が約1μmの厚みからなる多層構造を形成していた。さらに、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。白金原子のみが存在した。これらの結果から、粒状の白金微粒子の集まりが、1μmの厚みをなしてガラステープを覆ったことが分かった。
実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、白金に近い体積固有抵抗を示した。
製作した試料の模式図を図7と図8に示す。図7は試料の断面で、ガラステープ7の外周に、白金微粒子の集まり8が多層構造をなして覆った状態を示す。図8は、白金微粒子の集まり8が多層構造を形成している状態を示した。なお、本実施例で製作した試料は、白金の導電性を有するととともに、触媒作用を兼備するガラス繊維からなる布帛となる。
本実施例は、ガラス繊維からなる布帛を合金微粒子の集まりで覆う。ガラス繊維からなる布帛は、実施例11におけるガラステープを用いた。合金微粒子は、白金とルテニウムとからなる合金微粒子とした。白金の原料は、実施例11で用いたテトラアンミン白金塩化物である。ルテニウムの原料は、最も合成が容易であるルテニウム錯イオンの一つである6個のアンミンがルテニウムイオンRu3+に配位結合したヘキサアンミンルテニウムイオン[Ru(NH3)6]3+の塩化物であるヘキサアンミンルテニウム塩化物[Ru(NH3)6]Cl3(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
白金−ルテニウム合金の微粒子の集まりで、ガラステープを覆う製作工程を説明する。最初に、テトラアンミン白金塩化物とヘキサアンミンルテニウム塩化物を、1対1のモル数で秤量して混合し、この混合物が2重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に、ガラステープを浸漬した。さらに、ガラステープを取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。この後、ガラステープを水素ガスの雰囲気からなる200℃の熱処理炉に5分間放置し、テトラアンミン白金塩化物とヘキサアンミンルテニウム塩化物とを同時に還元した。
次に、製作した試料の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子が約1μmの厚みからなる多層構造を形成していた。さらに、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたので、合金から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。白金原子とルテニウム原子とが等量で存在し、偏在する箇所が認められなかったので、微粒子は白金−ルテニウム合金からなる。なお、白金錯塩とルテニウム錯塩とを同じモル数で混合したため、白金−ルテニウム合金は50対50のモル比率で構成される合金であると考える。これらの結果から、粒状の白金−ルテニウム合金の微粒子の集まりが、1μmの厚みをなしてガラステープを覆ったことが分かった。
さらに、実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電流値で割った値から求めた抵抗値は、白金とルテニウムとの体積固有抵抗の中間の値を示すことが分かった。
本実施例で製作した試料は、白金−ルテニウムの導電性を有するととともに、触媒作用を兼備するガラス繊維からなる布帛となる。
本実施例は、ガラス繊維からなる布帛を合金微粒子の集まりで覆う第二の実施例である。ガラス繊維からなる布帛は、実施例11で用いたガラステープとした。合金微粒子は、銀と銅とからなる合金微粒子とした。なお、合金の組成は、銀の性質を優勢とするため、銀と銅との割合を95対5とした。また、銀の原料は、実施例2で用いたジアンミン銀塩化物とした。銅の原料は、実施例1で用いたテトラアンミン銅硝酸塩とした。
銀−銅合金の微粒子の集まりでガラステープを覆う製作工程を説明する。最初に、ジアンミン銀塩化物とテトラアンミン銅硝酸塩とが、モル比率で95対5になるように秤量して混合し、この混合物が2重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液にガラステープを浸漬した。ガラステープを取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。さらに、水素ガスの雰囲気からなる200℃の熱処理炉に5分間放置し、ジアンミン銀塩化物とテトラアンミン銅硝酸塩とを同時に還元した。
次に、製作した試料の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子は約1μmの厚みからなる多層構造を形成していた。次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。過剰の銀原子と僅かな銅原子とが存在し、偏在する箇所が認められなかったので、微粒子は銀−銅の合金からなる。なお、銀錯塩と銅錯塩とをモル比率で95対5の割合で混合したため、銀−銅合金は95対5の割合で構成される合金であると考える。これらの結果から、銀−銅合金の粒状微粒子の集まりが、1μmの厚みをなしてガラステープを覆ったことが分かった。
さらに、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電量値で割った値から求めた抵抗値は、銀に近い体積固有抵抗を示すことが分かった。
本実施例で製作した試料は、銀に近い導電性と熱伝導性を有するとともに、抗菌作用を兼備するガラス繊維からなる布帛となる。
本実施例は、ガラス繊維からなる不織布を白金微粒子で覆う実施例である。ガラス繊維からなる不織布は、無アルカリガラスからなるガラス繊維を湿式抄紙法によって紙状に加工したもので、ガラス繊維濾紙ないしはガラスペーパーとして市販されているものを用いた。本実施例では、株式会社セントラル科学貿易がドイツから輸入しているMNGF−5を用いた。このガラス繊維濾紙は、バインダーを含まず、厚さが0.4mmで、重量が1m2あたり85gである。白金の原料は、実施例11で用いたテトラアンミン白金塩化物である。
白金微粒子の集まりで覆われたガラステープを製作する工程を説明する。最初に、テトラアンミン白金塩化物を、1重量%になるようにn−ブタノールに分散した。この分散液に、ガラス繊維濾紙を浸漬した。さらに、ガラス繊維濾紙を取り出し、120℃に昇温してn−ブタノールを気化した。この後、ガラス繊維濾紙を、水素ガスの雰囲気からなる200℃の熱処理炉に5分間放置し、テトラアンミン白金塩化物を還元した。
次に、製作した試料の表面と切断面を電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面は、40−60nmの大きさからなる粒状微粒子で満遍なく覆われていた。また、試料断面の画像から、粒状微粒子が約0.5μmの厚みからなる多層構造を形成していた。さらに、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素を分析した。白金原子のみが存在した。これらの結果から、粒状の白金微粒子の集まりが、1μmの厚みをなしてガラス繊維濾紙を覆ったことが分かった。
さらに、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電量値で割った値から求めた抵抗値は、白金に近い体積固有抵抗を示すことが分かった。
製作した試料の模式図を図9と図10に示す。図9は試料の断面で、ガラス繊維濾紙9の外周に、白金微粒子の集まり10が多層構造をなして覆った状態を示す。図10は、白金微粒子の集まり10が多層構造を形成している状態を模式的に示した。
なお、本実施例で製作した試料は、白金の導電性を有するととともに、触媒作用を兼備するガラス繊維からなる不織布となる。
本実施例は、ガラス繊維からなる不織布を合金微粒子の集まりで覆う。ガラス繊維からなる不織布は、実施例14で用いたガラス繊維濾紙を用いた。合金微粒子は、銀と銅とからなる合金微粒子とし、合金の組成は実施例13と同様に、銀の性質を優勢とするため、銀と銅との割合を95対5とした。
銀−銅合金の微粒子の集まりでガラス繊維濾紙を覆う製作工程は、実施例13と同様であるが、ジアンミン銀塩化物とテトラアンミン銅硝酸塩との混合物が2重量%になるようにn−ブタノールに分散した。また、製作した試料の表面と切断面とを、実施例13と同様に電子顕微鏡で観察した。この結果から、銀−銅合金の粒状微粒子の集まりが、0.5μmの厚みをなしてガラス繊維濾紙を覆ったことが分かった。
実施例1と同様に、試料の4か所に端子をかませ、試料に異なる方向に直流電流を流して、内側の2つの端子で電圧を2回測り、これら2つの電圧値の差を、外側の2つの端子で測った電量値で割った値から求めた抵抗値は、銀に近い体積固有抵抗を示した。
本実施例で製作した試料は、銀に近い導電性と熱伝導性を有するとともに、抗菌作用を兼備するガラス繊維からなる不織布となる。
2 銅微粒子の集まりからなる多層構造
3 ナイロン66繊維からなる基布
4 ニッケル微粒子の集まりからなる多層構造
5 ポリエステル繊維からなる不織布
6 銀−銅合金の微粒子の集まりからなる多層構造
7 ガラステープ
8 白金微粒子の集まりからなる多層構造
9 ガラス繊維濾紙
10 白金微粒子の集まりからなる多層構造
Claims (5)
- 金属ないしは合金の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、該繊維の複数本が撚り合わされた糸、該繊維からなる布帛ないしは不織布を製造する製造方法は、熱処理で金属を析出する金属化合物を、ないしは、熱処理で複数種類の金属が同時に析出する複数種類の金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、該分散液に化学繊維からなる繊維、該繊維の複数本が撚り合わされた糸、該繊維からなる布帛ないしは不織布を浸漬する第二の工程と、該繊維、該糸、該布帛ないしは該不織布を前記アルコールが気化する温度に昇温する第三の工程と、該繊維、該糸、該布帛ないしは該不織布を、該繊維、該糸、該布帛ないしは該不織布の溶融点より低く、かつ、前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する、ないしは、該繊維、該糸、該布帛ないしは該不織布の溶融点より低く、かつ、前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度に昇温する第四の工程とからなる、これら4つの工程を連続して実施することによって、金属ないしは合金の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布が製造される製造方法である。
- 請求項1に記載した金属の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を製造する製造方法において、前記金属化合物が、無機物の分子ないしはイオンが配位子になって金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機塩で構成された金属錯塩である、請求項1に記載した金属の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を製造する製造方法。
- 請求項1に記載した合金の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を製造する製造方法において、前記複数種類の金属化合物が、無機物の分子ないしはイオンからなる同一の配位子が、異なる金属イオンに配位結合した異なる金属錯イオンを有する複数種類の無機塩で構成された複数種類の金属錯塩である、請求項1に記載した合金の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を製造する製造方法。
- 請求項1に記載した金属の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を製造する製造方法において、前記金属化合物が、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸で構成される第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物である、請求項1に記載した金属の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を製造する製造方法。
- 請求項1に記載した合金の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を製造する製造方法において、前記複数種類の金属化合物が、同一のカルボン酸で構成される第一の特徴と、該カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが異なる金属イオンに共有結合する第二の特徴と、該カルボン酸が飽和脂肪酸で構成される第三の特徴とを兼備する複数種類のカルボン酸金属化合物である、請求項1に記載した合金の性質を兼備する化学繊維からなる繊維、糸、布帛ないしは不織布を製造する製造方法。
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