JP2008208456A - 繊維のメッキ前処理方法およびメッキされた繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】超臨界流体又は亜臨界流体を用いることで従来のエッチング処理が不要になるとともに、簡略化された工程でメッキ用金属触媒を非金属繊維材料に効率良く均一に付与することができる改良されたメッキ前処理方法および該方法を利用するメッキされた繊維の製造方法、並びに超臨界流体又は亜臨界流体を用いることで無電解メッキ処理を行うことなく非金属繊維の表面に均一な金属皮膜、金属酸化物皮膜又は金属硫化物皮膜を直接形成することができる該皮膜を有する繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】高分子繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる高分子繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより高分子繊維表面に有機金属錯体を付着させる第1工程と、前記高分子繊維表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化させる第2工程とを含んでなる高分子繊維のメッキ前処理方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子繊維、炭素繊維等の非金属繊維の表面に金属ないし金属化合物をメッキするためのメッキ前処理方法、および金属ないし金属化合物がメッキされた繊維の製造方法に関する。
近年、導電性繊維により構成されたシート材は、携帯電話や電気・電子機器から発生する電磁波を遮蔽する電磁シールド材としての用途展開が図られており、今後ますますの需要増大が期待されている。また、今日使用されている電線および送電線等の導線としては、殆どの場合において銅等の金属線が用いられているが、金属線は一般的に重量が重く強度も弱いことから、軽量で強度に優れた導電性繊維で代替するための研究開発が進められている。
特に、導電性繊維の基材として高分子繊維材料を用いると、軽量で高強度である等、用途に合わせて種々の機能を備えた導電性繊維を得られる可能性が大きいことから、高分子繊維材料に導電性を付与するための様々な技術開発が行われている。そのような高分子繊維材料等への導電性付与技術としては、(1)界面活性剤と帯電防止剤をプラスチックの内部に配合し、あるいは表面に塗布する技術(例えば特許文献1参照)、(2)カーボン粉末や金属粉末等の導電性物質を混合した高分子組成物を用いる技術(例えば特許文献2参照)、(3)プラスチック成形品表面に酸化スズ等の金属蒸着膜をCVD法等により形成する技術(例えば特許文献3参照)、(4)高分子繊維材料の表面に無電解メッキ処理により金属皮膜を形成する技術(例えば特許文献4参照)、さらには(5)高分子材料の化学構造を新規に設計して導電性高分子とするという根本的な方法による技術等が挙げられる。
上記のうち、(4)高分子繊維材料の表面に無電解メッキ処理により金属皮膜を形成する技術、においては、通常、金属皮膜の密着性を向上させる等の目的で高分子繊維材料にメッキ前処理が行われる。
例えば、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエステル系繊維等の合成繊維に無電解メッキを行うための前処理として、次に例示するような一連の処理が行われる。すなわち、アルカリ脱脂液等によるクリーニング処理又は当該合成繊維に適した精練・漂白処理を行い、次いで例えば強酸又は強アルカリのエッチング液等による化学的処理、あるいは低温プラズマ又は機械的な擦過等による物理的処理を行って繊維表面を粗面化ないし膨潤化し、さらに、例えば塩化第一スズの酸性液による増感処理の後に塩化パラジウムの酸性液による活性化処理を行う等の方法による触媒化処理が行われる。このような無電解メッキの前処理としての一連の処理のうち、繊維表面を粗面化する処理についてさらに補足すると、プラズマを利用して、プラスおよびマイナスのイオンや遊離原子、ラジカルを発生させ、これによりエッチバックをするプラズマエッチングがあり、その他にも、コロナ放電処理、紫外線処理等による改質技術がある。一方、こうした粗面化処理を行わない方法として、メッキ触媒を含有する有機バインダや紫外線硬化樹脂の薄膜をプラスチック表面に形成する方法もある。
上記したようなメッキ前処理方法において、例えば化学的なエッチング処理を行う場合には、クロム溶液やアルカリ金属水酸化物溶液等の薬品を用いるためその廃液処理が問題となる。また、化学的なエッチング処理以外の処理を行う場合でも、一連の前処理を行うための処理時間や設備コストが大きいという問題がある。
さらに近年、上記したようなメッキ前処理方法以外に、超臨界流体を用いたメッキ前処理方法が提案されており、プラスチックに超臨界流体を接触させて表面処理を行うこと、およびプラスチックにメッキ用触媒を含有する超臨界流体を接触させて表面処理を行うと同時にメッキ用触媒を付着させることが開示されている(例えば特許文献5参照)。
特開2004−253796号公報 特開2000―212453号公報 特公昭61−132652号公報 特開2000―96431号公報 特開2001−316832号公報
上記の超臨界流体を用いたメッキ前処理方法においては、メッキ用触媒として金属単体や金属化合物が挙げられているが、金属単体は超臨界流体に溶解しないためプラスチック表面に付着させることが困難である。一方、超臨界流体に可溶な金属化合物は、プラスチック表面に付着させやすいが、触媒活性が不十分であるために無電解メッキ処理により十分な量の金属皮膜を形成することが難しい。また、超臨界流体を流しながらメッキ前処理を行うため、メッキ用触媒の多くがプラスチックに付着することなく無駄になるおそれがある。
そこで、本発明者らは、超臨界流体又は亜臨界流体を用いることで、従来の材料表面を粗化するためのエッチング処理が不要になるとともに、簡略化された工程でメッキ用金属触媒を高分子材料に付与することができるメッキ前処理方法およびメッキ方法、並びに超臨界流体又は亜臨界流体を用いることで無電解メッキ処理を行うことなく高分子材料の表面に金属皮膜、金属酸化物皮膜又は金属硫化物皮膜を直接形成することができる皮膜形成方法を発明し、先に特許出願した(特願2005−240569号)が、それらの発明においても、さらに改良の余地はあった。
したがって本発明の課題は、超臨界流体又は亜臨界流体を用いることで従来のエッチング処理が不要になるとともに、簡略化された工程でメッキ用金属触媒を非金属繊維材料に効率良く均一に付与することができる改良されたメッキ前処理方法および該方法を利用するメッキされた繊維の製造方法、並びに超臨界流体又は亜臨界流体を用いることで無電解メッキ処理を行うことなく非金属繊維の表面に均一な金属皮膜、金属酸化物皮膜又は金属硫化物皮膜を直接形成することができる該皮膜を有する繊維の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するためになされた本発明は、
[1] 高分子繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる高分子繊維材料を、
有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより高分子繊維表面に有機金属錯体を付着させる第1工程と、
前記高分子繊維表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化させる第2工程とを含んでなる高分子繊維のメッキ前処理方法、
[2] 炭素繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる炭素繊維材料を、
有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより炭素繊維表面に有機金属錯体を付着させる第1工程と、
前記炭素繊維表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化させる第2工程とを含んでなる炭素繊維のメッキ前処理方法、
[3] 超臨界流体又は亜臨界流体は、二酸化炭素、一酸化二窒素、トリフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、メタン、エタンおよびエチレンからなる群より選択される1種以上から主としてなり、その温度が50℃以下である前記[1]又は[2]に記載のメッキ前処理方法、
[4] 超臨界流体又は亜臨界流体は、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジベンジルエーテル、トリアジンチオール類、アミン類およびシランカップリング剤類からなる群より選択される1種以上の添加剤を含む前記[3]に記載のメッキ前処理方法、
[5] 高分子繊維は、アラミド繊維又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維である前記[1]、[3]および[4]のうちのいずれかに記載のメッキ前処理方法、
[6] 高分子繊維又は炭素繊維は、プラズマ処理又は電子線照射処理により極性基が導入された高分子繊維又は炭素繊維である前記[1]〜[5]のうちのいずれかに記載のメッキ前処理方法、および
[7] 有機金属錯体は、金、白金、パラジウム、ニッケル、銀、銅、鉄、チタン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルト、インジウム、イットリウム、バリウム、ガリウム、スカンジウム、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、ルビジウム、セシウム、バナジウム、鉛、ニオブ、クロム、リチウム、カリウム、およびランタノイド族57番〜71番の元素からなる群より選択される1種以上の金属を含有する前記[1]〜[6]のいずれかに記載のメッキ前処理方法。
[8] 前記高分子繊維糸条が布帛を形成している前記[1]及び[3]〜[7]のいずれかに記載のメッキ前処理方法に関し、また、
[9] 前記[1]〜[8]のいずれかに記載のメッキ前処理方法で処理された高分子繊維又は炭素繊維をメッキ液に浸漬して無電解メッキ処理を行う、メッキされた高分子繊維又は炭素繊維の製造方法、
[10] 無電解メッキ処理を超臨界流体又は亜臨界流体の存在下に行う前記[9]に記載のメッキされた高分子繊維又は炭素繊維の製造方法、
[11] メッキ液は、銅、銀、金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルトおよびインジウムからなる群より選択される1種以上の金属を含んでなる前記[10]に記載の製造方法、
[12] 無電解メッキ処理において、メッキ液に10〜50kHzの振動が付与される前記[8]又は[9]に記載の製造方法、および
[13] 前記無電解メッキ処理の後に、さらに電解メッキ処理を行う、前記[9]〜[12]のいずれかに記載の製造方法
に関し、さらに、
[14] 高分子繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる高分子繊維材料を、
有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより高分子繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程と、
前記高分子繊維表面に付着した有機金属錯体を還元、酸化又は硫化する工程とを含んでなる、金属、金属酸化物又は金属硫化物からなる皮膜を有する高分子繊維の製造方法、
[15] 炭素繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる炭素繊維材料を、
有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより炭素繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程と、
前記炭素繊維表面に付着した有機金属錯体を還元、酸化又は硫化する工程とを含んでなる、金属、金属酸化物又は金属硫化物からなる皮膜を有する炭素繊維の製造方法、
[16] 超臨界流体又は亜臨界流体は、二酸化炭素、一酸化二窒素、トリフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、メタン、エタンおよびエチレンからなる群より選択される1種以上から主としてなり、その温度が50℃以下である前記[14]又は[15]記載の製造方法、
[17] 超臨界流体又は亜臨界流体は、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジベンジルエーテル、トリアジンチオール類、アミン類およびシランカップリング剤類からなる群より選択される1種以上の添加剤を含む前記[16]に記載の製造方法、
[18] 高分子繊維は、ポリアミド繊維、アラミド繊維又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維である前記[14]、[16]および[17]のうちのいずれかに記載の製造方法、
[19] 高分子繊維又は炭素繊維は、プラズマ処理又は電子線照射処理により、極性基が導入された高分子繊維又は炭素繊維である前記[14]〜[18]のうちのいずれかに記載の製造方法、
[20] 有機金属錯体は、金、白金、パラジウム、ニッケル、銀、銅、鉄、チタン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルト、インジウム、イットリウム、バリウム、ガリウム、スカンジウム、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、ルビジウム、セシウム、バナジウム、鉛、ニオブ、クロム、リチウム、カリウム、およびランタノイド族57番〜71番の元素からなる群より選択される1種以上の金属を含有する前記[14]〜[19]のいずれかに記載の製造方法、
[21] 有機金属錯体は、ベータージケトネート類、ジエン類およびメタロセン類からなる群より選択される1種以上である前記[20]に記載の製造方法、
[22] 前記高分子繊維糸条が布帛を形成している前記[14]及び[16]〜[21]のいずれかに記載の製造方法、および
[23] 前記高分子繊維表面又は炭素繊維表面に付着した有機金属錯体を還元する工程の後に、さらに電解メッキ処理を行う、前記[14]〜[22]のいずれかに記載の製造方法
に関する。
本発明に係る高分子繊維又は炭素繊維のメッキ前処理方法は、超臨界流体又は亜臨界流体の高拡散性および高浸透性を生かし、しかも繊維表面が効率良くかつ万遍なく上記流体に接触するように繊維材料の形態を工夫して処理に供するため、有機金属錯体を上記繊維表面に効率良くかつ均一に付着させることができるとともに、付着した有機金属錯体をメッキ用金属触媒に還元して活性化させることで極めて少ない工程数かつ短時間に均一なメッキ前処理を行うことができる。
本発明に係るメッキされた高分子繊維又は炭素繊維の製造方法は、上記の本発明に係るメッキ前処理方法により前処理された繊維を無電解メッキにて処理するため、均一な金属皮膜が密着性良くメッキされた繊維を効率良く製造することができる。
本発明に係る金属、金属酸化物又は金属硫化物からなる皮膜を有する高分子繊維あるいは炭素繊維の製造方法は、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に、繊維表面が効率良くかつ万遍なく上記流体に接触するように形態を工夫した繊維材料を浸漬した後、繊維表面に付着した有機金属錯体を還元、酸化又は硫化処理して繊維表面に金属皮膜等を直接形成するため、処理工程が簡略されて短時間に製造できるとともに、密着性良く均一な皮膜を有する繊維を製造することができる。しかも、メッキ前処理と無電解メッキ処理とを必要とする方法に比べて、設備を簡略化することもできる。
また、上記いずれの製造方法においても、プラズマ処理や電子線照射処理等によって繊維表面に極性基が導入された高分子繊維又は炭素繊維を用いることにより、繊維表面における皮膜の密着性がさらに向上する。
本発明に用いられる高分子繊維糸条としては、高分子繊維からなる糸条であれば特に限定されず、植物繊維や動物繊維等の天然繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、および合成繊維が挙げられる。
合成繊維としては、例えば、アラミド、ナイロン(例えばナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66等)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)等のポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ビニロン等のポリアルコール繊維、フッ素系繊維(例えばポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ四フッ化エチレンエチレン(ETFE)、ポリフッ化アルキルビニルエーテル(PFA)等)等が挙げられ、また、これらの繊維を複数組み合わせてなる各種複合繊維が挙げられる。各種合成繊維その他の高分子繊維としては、市販品を適宜使用することができる。
上記した合成繊維の中でも、アラミド繊維又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維は、高機能繊維であるうえ、これまでメッキ処理が難しいとされていたことから、本発明で好ましく用いられる。また、フッ素系繊維が好ましく用いられる。
アラミド繊維としては、メタ系アラミド繊維とパラ系アラミド繊維があり、メタ系アラミド繊維としては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(例えばデュポン社製、商品名「ノーメックス」)等のメタ系全芳香族ポリアミド繊維が挙げられる。また、パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(例えば東レ・デュポン株式会社製、商品名「ケブラー」)およびコポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維(例えば帝人株式会社、商品名「テクノーラ」)等のパラ系全芳香族ポリアミド繊維が挙げられる。これらのアラミド繊維の中でも、引っ張り弾性率が高く、またしなやかであることからパラ系アラミド繊維が好ましく、さらに耐熱性や燃え難さの指標である限界酸素指数が高く、また本発明を用いての金属メッキが施しやすいことから、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維が特に好ましい。
なお、合成繊維としては、メッキが施されたときに良好な導電性を具現するうえで繊維長が長い方が有利であるという点から、紡績糸よりもフィラメント(長繊維)が好ましい。
高分子繊維の表面における金属皮膜との良好な密着性という観点では、表面に極性基(例えばアミド基、カルボキシル基、ケトン基等)を持つ繊維が好ましい。こうした親水性を付与するための処理、例えばプラズマ処理、電子線照射処理、グラフト化処理、あるいは極性基を含有する溶液に浸漬する処理等によって表面が改質された繊維も好ましい。したがって、例えばフッ素系繊維としては、プラズマ処理によって親水基が導入されたフッ素系繊維が好ましく、例えば酸素プラズマ処理したPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)繊維を用いることにより、有機金属錯体が繊維表面に付着しやすくなり、後のメッキ処理により良好な金属皮膜(例えば銅皮膜等)を形成できるので好ましい。例えばまた、ポリアミド系繊維にプラズマ処理を施して繊維表面にアミド基等の極性基を導入することにより、より密着性の向上した金属皮膜を形成できる。
かかるプラズマ処理におけるプラズマの種類としては、例えば酸素プラズマ、窒素プラズマ、アルゴンプラズマ等が挙げられ、プラズマ処理の方法としては、通常のプラズマ処理装置を用い、好ましくは出力10〜300W、プラズマ照射時間30秒〜15分間程度の条件で行うことができる。
本発明に用いられる炭素繊維糸条としては、炭素繊維からなる糸条であれば特に限定されない。炭素繊維としては、公知の炭素繊維を用いることができ、ポリアクリルニトリル(PAN)系の炭素繊維でも、ピッチ系の炭素繊維でも構わない。
高分子繊維糸条および炭素繊維糸条の形状は特に限定されず、単糸繊度、総繊度、繊維の断面形状等は任意である。例えば繊維の断面形状としては、丸断面、三角断面、偏平断面、その他の異形断面等、どのような断面でも構わない。また、高分子繊維糸条および炭素繊維糸条は、撚りが掛けられた繊維糸条、無撚の繊維糸条のいずれでも構わない。
本発明に用いられる高分子繊維糸条は、布帛を形成していてもよい。布帛としては、織物、編物、直交ネット、直交積層ネット、多軸積層ネットまたは不織布等を挙げることができる。繊維状のメッキ品は、例えば、電線、信号線の代替品として用いることができ、一方、布帛状のメッキ品は、例えば、耐熱性と導電性を有するため、消防服、スポーツ衣服、作業用防護服、また耐熱電磁波遮蔽シートなどとして使用することができる。
本発明において、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬するための高分子繊維材料又は炭素繊維材料としては、高分子繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる高分子繊維材料、あるいは、炭素繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる炭素繊維材料である。なお、本明細書では、高分子繊維糸条又は炭素繊維糸条を単に「繊維糸条」ということがあり、高分子繊維材料又は炭素繊維材料を単に「繊維材料」ということがある。
無芯で捲き回されてなる繊維材料としては、繊維糸条がロール状に捲き回されてなる無芯のロール状繊維材料(無芯ロール)や、繊維糸条からなる枷が挙げられる。
上記無芯ロールは、例えば、繊維糸条を適当な芯の周りに捲き回してロールを形成した後、その芯をロールから抜くことによって作製することができる。具体的には、例えば芯となる円筒の両端に取り外し可能な円盤を装着したボビンを用意し、このボビンにワインダーを利用して糸条を捲きつけて所望のロールとなした後、円盤を取り外して芯の円筒を抜くことにより無芯ロールを作製することができる。このとき、上記円盤はその一方のみが取り外し可能であれば足りる。なお、芯が抜きやすいように、例えばテフロン(登録商標)のような滑りやすい材料で形成された芯を用いるか、芯の回りに滑りやすいシートを巻いてから繊維糸条を捲きつける方法が採用できる。
多孔性管を芯として捲き回されてなる繊維材料としては、繊維糸条が多孔性管の周りにロール状に捲き回されてなるロール状繊維材料が挙げられる。多孔性管としては、例えば、孔径1〜1000μm程度の孔を多数有する多孔質セラミックスからなる管を用いることができ、また、金属管(例えばステンレス管等)、プラスチック管あるいは無孔質セラミックス管等の管肉に多数の貫通孔を穿設して用いることができる。上記の管肉に穿設される貫通孔の形状や数は特に限定されず、超臨界流体又は亜臨界流体の流通を考慮して適宜定めればよい。例えば、孔径を0.1〜5mm程度、隣接する孔との間隔を0.2〜10mm程度とすることが好ましい。さらに、流体を均一に分散させるために、上記の多数の貫通孔を穿設してなる多孔性管の外周に目の細かいネット状材等を巻いてから繊維糸条を捲き回すようにして使用することもできる。
本発明において、繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる繊維材料を用いるのは、当該繊維材料を形成する繊維糸条の間を超臨界流体又は亜臨界流体が容易に流通することができるようにして、それら流体と繊維表面との接触を良くするためである。すなわち、繊維材料が無芯ロールである場合にはその無芯の空間に上記流体が満たされ、無芯ロールの内周部から外周部へ向かう方向に、あるいはその逆方向に上記流体が異動できることが好ましい。繊維材料が多孔性管を芯として捲き回されてなるロール状繊維材料である場合には、多孔性管の内側から孔を経由してロールの外周へ向かう方向に、あるいはその逆方向に上記流体が異動できることが好ましい。無芯ロールの内径や、多孔性管の内径の大きさは、かかる流体の異動が確保される範囲内で適宜設定すればよい。また、繊維材料のその他の寸法、例えばロールの外径、高さ等は、上記流体の流通や装置の大きさを考慮して適宜設定することができる。ロール状繊維材料でなく枷を用いる場合の寸法(例えば枷の直径等)もまた、目的に応じて適宜設定することができ、枷はさらに、装置の都合に合わせて適宜に束ねられたり、折り畳まれたり、ねじられたりして処理に供されても構わない。
上記の繊維糸条間の流体の流通を良くするために、上記ロール状繊維材料を形成するに際しては、その密度をあまり高くしないことが好ましい。具体的には、繊維材料内の空隙率を、5〜95%とすることが好ましく、10〜80%とすることがさらに好ましい。ただし、高機能の循環ポンプを使用する等して上記流体の流速を高めることで、空隙率が低くても流通を改善することができる場合がある。
上記範囲内の空隙率のロール状繊維材料を用いることで、ロール内部、すなわちロールの厚さの中央部に存在する繊維の表面にも、ロールの外周付近および内周付近に存在する繊維の表面と同様に有機金属錯体を十分付着させることができる。
なお、上記の空隙率は、次のようにして測定される。
まず、ロール状繊維材料の寸法を測定して、その見かけ体積Vaを算出する。例えば、外径R、内径r、高さhの円筒形であれば、V=π×(R−r)/4×h と算出される。次に、当該繊維材料の質量Wを測定し、この測定値と当該繊維材料を構成する繊維素材の真密度ρとから、真の体積Vを、V=W/ρ として算出する。そして、空隙率Pは、
P=[(V−V)/V]×100(%) という式により求められる。
本発明において、超臨界流体又は亜臨界流体としては、特に限定されず、公知の超臨界流体又は亜臨界流体のうちから1種を用いることができ、あるいは2種以上を混用することができる。
超臨界流体又は亜臨界流体としては、二酸化炭素、一酸化二窒素、トリフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、メタン、エタンおよびエチレンからなる群より選択される1種以上から主としてなる超臨界流体又は亜臨界流体が好ましい。超臨界流体又は亜臨界流体の温度は、特に限定されない。温度が50℃以下の超臨界流体又は亜臨界流体を用いることは、省エネルギー、設備設置コストの低減、設備メンテナンスの容易化および低コスト化等の観点で特に好ましい。
とりわけ好ましい超臨界流体又は亜臨界流体は、二酸化炭素の超臨界流体又は亜臨界流体である。二酸化炭素の超臨界流体又は亜臨界流体は、繊維材料への吸着性に優れ、引火性や爆発性がなく安全であり、入手も容易である。
超臨界流体又は亜臨界流体には、有機金属錯体の溶解性を高める目的や、超臨界流体又は亜臨界流体と繊維材料との親和性を高める、メッキ金属膜密着性を向上させる等の目的で、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジベンジルエーテル、トリアジンチオール類、アミン類およびシランカップリング剤類からなる群より選択される1種以上の添加剤(エントレーナとも称される)が添加されることが好ましい。かかる添加剤の添加量としては、超臨界流体又は亜臨界流体の物質量に対して1〜25モル%が好ましい。
なお、上記のトリアジンチオール類としては、トリアジンチオール誘導体の6−位の置換基が−SH、−N(C、−NHCおよびこれらの金属塩からなる群より選ばれる基であるトリアジンチオール誘導体等が挙げられる。また、アミン類としては、例えばn−ブチルアブチルアミンおよび3−アミノ−5−メチル イソオキサゾール等が挙げられる。また、シランカップリング剤類としては、例えばN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
本発明に用いられる有機金属錯体としては、例えば、M(OR)、M(OCOR)、M(OSOR)もしくはM(RCOCHCOR)の化学式で示される錯体、あるいは下記(1)の化学式で示されるジエン類の錯体、下記(2)の化学式で示されるメタロセン類の錯体が挙げられる。なお、それらいずれの化学式においても、Mは金属を表わし、Rは水素、炭化水素基又はCFを表わす。
上記化学式中のRで表わされる炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは1〜50である。かかる炭化水素基としては、例えば飽和脂肪族炭化水素基、飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式−脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族−脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
飽和脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−へキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルへキシル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルへキシル、3−メチルへプチル、n−ノニル、イソノニル、1−メチルオクチル、エチルへプチル、n−デシル、1−メチルノニル、n−ウンデシル、1,1−ジメチルノニル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘプタデシルおよびn−オクタデシル基、並びにエチレンやプロピレン、ブチレンの重合物あるいはそれらの共重合物よりなる基等の炭化水素基が挙げられる。
不飽和脂肪族炭化水素基の具体例としては、ビニル、アリル、イソプロペニル、2−ブテニル、2−メチルアリル、1,1−ジメチルアリル、3−メチル−2−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、2−フェニルビニル、オクテニル、ノネニルおよびデセニル基、並びにアセチレンやブタジエン、イソプロピレンの重合物あるいはそれらの共重合物よりなる基等の炭化水素基が挙げられる。
脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、3−メチルシクロへキシル、4−メチルシクロへキシル、4−エチルシクロへキシル、2−メチルシクロオクチル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、4−メチルシクロへキセニル、4−エチルシクロへキセニルおよびシクロペンタジエニル基等の炭化水素基が挙げられる。
脂環式−脂肪族炭化水素基の具体例としては、シクロプロピルエチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、シクロへキシルメチル、シクロへキシルエチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルエチル、3−メチルシクロへキシルプロピル、4−メチルシクロへキシルエチル、4−エチルシクロへキシルエチル、2−メチルシクロオクチルエチル、シクロプロペニルブチル、シクロブテニルエチル、シクロペンテニルエチル、シクロヘキセニルメチル、シクロヘプテニルメチル、シクロオクテニルエチル、4−メチルシクロへキセニルプロピルおよび4−エチルシクロへキセニルペンチル基等の炭化水素基が挙げられる。
芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル、ナフチル、4−メチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,4,5−トリメチルフェニル、2−エチルフェニル、n−ブチルフェニル、t−ブチルフェニル、アミルフェニル、へキシルフェニル、ノニルフェニル、2−tert−ブチル−5−メチルフェニル、シクロへキシルフェニル、クレジル、オキシエチルクレジル、2−メトキシ−4−tert−ブチルフェニルおよびドデシルフェニル基等のアリール基が挙げられる。
芳香族−脂肪族炭化水素基の具体例としては、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル、1−(4−メチルフェニル)エチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−メチルベンジルおよび1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基等が挙げられる。
[本発明のメッキ前処理方法]
本発明に係る高分子繊維のメッキ前処理方法および炭素繊維のメッキ前処理方法(本明細書においては、それらをまとめて「本発明のメッキ前処理方法」ということがある)は、繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより高分子繊維表面又は炭素繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程(第1工程)と、前記工程により高分子繊維表面又は炭素繊維表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化させる工程(第2工程)とを備える。
第1工程で用いられる有機金属錯体は、後の第2工程により活性化され、無電解メッキ用金属触媒として利用されることになる。かかる観点から、有機金属錯体としては、金、白金、パラジウム、ニッケル、銀、銅、鉄、チタン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルト、インジウム、イットリウム、バリウム、ガリウム、スカンジウム、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、ルビジウム、セシウム、バナジウム、鉛、ニオブ、クロム、リチウム、カリウム、およびランタノイド族57番〜71番の元素からなる群より選択される1種以上の金属を含有する有機金属錯体が好ましい。ランタノイド族57番〜71番の元素の中では、ネオジム、サマリウムおよびジスプロシウムの1種以上の金属を含有する有機金属錯体が好ましい。
特に、二酸化炭素の超臨界流体又は亜臨界流体を用いる場合に好ましい有機金属錯体としては、ベータージケトネート類(例えばフッ素系パラジウム錯体)、ジエン類(例えばジメチルシクロオクタジエン白金)、メタロセン類(例えばニッケロセン)が好ましい。中でも、二酸化炭素の超臨界流体又は亜臨界流体に対する溶解度が高いこと、メッキ処理の際に金属皮膜が均一に成長すること、酸化による触媒活性低下が小さいことおよび繊維材料に吸着しやすいこと等から、フッ素系パラジウム触媒が特に好ましい。
繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬する際の有機金属錯体の使用量としては、有機金属錯体の種類によっても変わるが、通常は繊維材料の質量に対して0.1〜50質量%が好ましい。有機金属錯体の使用量が少なすぎると、特にロール状繊維材料を用いた場合に、繊維表面への金属錯体の付着が不均一になる場合がある。一方、仕込み量が多すぎると、繊維表面に付着するだけでなく内部にまで大量に染み込み、後に触媒として利用されるのに必要な繊維表面の付着量を大きく超えることになるので、コスト的に好ましくない。かかる事情を考慮すれば、ロール状繊維材料の質量に対しては、0.2〜3.0質量%程度の仕込み量で有機金属錯体を使用することがより好ましい。
超臨界流体は、物質ごとに超臨界条件が異なり、例えばCOは、臨界温度304K、臨界圧力7.4MPaで超臨界流体となり、HOは、臨界温度647K、22.1MPaで超臨界状態となる。亜臨界流体についても、物質ごとに亜臨界条件は異なっているが、一般に超臨界流体よりも約10K程度低い温度、臨界圧力程度の圧力で亜臨界状態となる。したがって、繊維材料を有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬する際の、圧力、温度条件は、超臨界状態又は亜臨界状態が実現される温度、圧力条件の範囲内で適宜設定することができる。好ましい条件は、繊維材料の種類や、超臨界流体又は亜臨界流体の種類によっても異なるが、一般には温度を超臨界温度以上650K以下、圧力を超臨界圧力以上35MPa以下とすることが好ましい。また、浸漬時間としては、5〜120分間程度が好ましい。二酸化炭素を用いる場合、温度としては423K以下がより好ましく、圧力としては5.0〜35.0MPaがより好ましく、浸漬時間としては5〜60分間がより好ましい。
上記の繊維材料浸漬時の温度としては、エネルギーコスト、設備設置コスト、設備メンテナンスの容易さおよびコスト等を考慮すれば50℃(約323K)以下とすることがより好ましい。かかる低温で行うことのもうひとつの利点として、超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬された状態での耐熱性に乏しい有機繊維を処理する場合でも、繊維の特性を損なわないことが挙げられる。高温で浸漬すると、有機繊維の特性を大きく損なわないまでも、有機繊維からオリゴマー等が溶け出しやすくなり、浸漬後に超臨界流体を排出する際に、装置の排出部等にオリゴマー等の汚れが付着する場合があり、最悪の場合には流路が詰まってしまうおそれもある。
第1工程を実施する方法としては、例えば、耐圧容器からなる反応槽内に繊維材料を配置し、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体、好ましくは有機金属錯体が溶解した超臨界流体又は亜臨界流体を導入することにより、該超臨界流体又は亜臨界流体に繊維材料を浸漬すればよい。
有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体(本明細書において、超臨界流体又は亜臨界流体のことを単に「流体」ということがある。)に繊維材料を浸漬するために使用できる装置の一例の概略を図1(断面図)に示す。この図1に沿って、上記浸漬により繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程の好ましい操作の一例を説明する。
反応槽10内の下部に設けられた置き台12上に、例えばロール状繊維材料11を置く。反応槽10内の上部に設けられた錯体置き台9に、所定量の例えば粉末状の有機金属錯体を仕込んでおく。図1ではややわかりにくいが、錯体置き台9は目の細かいメッシュ状の素材で構成されており、ここを通過した流体が反応槽14内に自由に流通できることはもちろんである。予め所定量のエントレーナをバルブ17を開いて反応槽10に仕込んでおいてから、バルブ3を開いて、導入口7より流体を反応槽10内に導入する。反応槽内は有機金属錯体を含む流体で満たされ、そこに繊維材料が浸漬されることになる。器壁14にはヒーターが内蔵されており、反応槽内温度を所定の温度に保つことができる。また、反応槽下部の攪拌子13により、反応槽内の流体を攪拌して有機金属錯体の溶解を促進することができるが、有機金属錯体が容易に溶解する場合には攪拌子13は作動させなくてもかまわない。攪拌子で流体を攪拌する代わりに、繊維材料を反応槽内で動かす、例えば回転台に繊維材料を取り付けて回転させる等の措置を講ずることにより、同様の効果を得ることもできる。必要に応じて流体を攪拌しつつ、反応槽内の圧力および温度を所定の範囲に保った状態で、所望の時間、浸漬処理を行う。
なお、圧力計2の上流側には常用の超臨界流体供給装置として、加圧ポンプ1やボンベ(図示せず)等が接続されていて、圧力計6にはエントレーナやメッキ液等の供給装置として加圧ポンプ5やボンベ(図示せず)等が接続されている。また、上記では予め所定量のエントレーナを反応槽10に仕込んでおいた場合を説明したが、エントレーナはそれ以外の方法によって添加されてもよい。例えば、圧力計2、6に表示される圧力を制御しつつ超臨界流体又は亜臨界流体にエントレーナを所望の比率で混合した混合流体を反応槽10に導入することもでき、あるいは超臨界流体又は亜臨界流体が反応槽10に導入された後からエントレーナを追加することもできる。あるいはまた、エントレーナとして用いられる物質を予め繊維材料に浸漬する等の方法で付着させ、必要に応じて所望の処理を施してから当該繊維材料を反応槽内に設置してもよい。
所定の時間が経過すれば、反応槽10内を徐々に減圧して流体を排出口8より排出し、処理後の繊維材料を取り出し可能にする。なお、排出口8より流体を回収して繰り返し使用することもできる。
また、有機金属錯体を含む流体に繊維材料を浸漬するために使用できる装置の他の一例の概略を図4(断面図)に示す。この装置では、循環ポンプ114により、反応槽内の流体を循環させることができる。この循環によって有機金属錯体の流体への溶解を促進することができる。
例えばステンレス製多孔管を芯として捲き回されたロール状繊維材料111を、多孔管ごと反応槽110内に設置する。多孔管の上部に設けられた錯体置き台109に、所定量の例えば粉末状の有機金属錯体を仕込んでおく。予め所定量のエントレーナをバルブ106を開いて反応槽110に仕込んでおいてから、バルブ103を開き、導入口107より多孔管112を経由させて、超臨界流体もしくは亜臨界流体を反応槽110に導入する。すなわちこの装置例では、流体が導入口107から錯体置き台109を経由して多孔管112の内側の空間に入り、多孔管112の小孔から出た流体(有機金属錯体を含有する)が、繊維材料と接触しつつ反応槽110内に導入される。反応槽110内に満たされた流体は、出口116から出て循環ポンプ114により再び導入口107に送られ、装置内を循環する。
なお、圧力計102の上流側には常用の超臨界流体供給装置として、加圧ポンプ101やボンベ(図示せず)等が接続されていて、圧力計105にはエントレーナ等の供給装置として加圧ポンプ104やボンベ(図示せず)等が接続されている。また、117は、循環流体の圧力を検知するための圧力計である。
このようにして、所定の処理時間が経過すれば、循環を停止して反応槽110内を徐々に減圧して流体を排出口108より排出し、処理後の繊維材料を取り出し可能にする。なお、排出口108より流体を回収して繰り返し使用することもできる。
次に、上記したような第1工程により高分子繊維表面又は炭素繊維表面に付着した有機金属錯体を前記工程により高分子繊維表面又は炭素繊維表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化させる工程について説明する。
有機金属錯体を還元して活性化させるには、熱還元が好ましく採用できる。具体的には、有機金属錯体を付着させた繊維材料を、該有機金属錯体の熱還元温度以上に設定された温度雰囲気下に置くことで熱還元させることができる。かかる熱還元処理は、浸漬処理装置から取り出した繊維材料をオーブン等に投入して行うことができるが、浸漬処理装置に適宜加熱装置を備えさせれば、流体を排出した浸漬処理装置内で熱還元処理を行うこともできる。すなわち、浸漬処理装置と熱還元処理装置を兼ねることのできる装置を用いることができる。
また、繊維材料が熱に弱く、熱還元処理温度まで上昇させることが適当でない場合には、還元剤を用いるとよい。還元剤としては、例えば、水素、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素およびヒドロキノン等が挙げられ、これらのうちから1種を選択して用いることができ、2種以上を選択して混用することもできる。
上記の還元剤を使用する場合には、例えば0.1〜15M程度の濃度のトラヒドロホウ酸ナトリウム等の還元剤を使用して、2〜15分間処理すればよい。還元処理によって有機金属錯体構造内のリガンドが外され、金属触媒活性を向上させることができる。
また、水素等の気体還元剤として用いる場合には、浸漬処理後の繊維材料を気密性の容器内に設置してから気体還元剤を導入し、該容器内の空間に気体還元剤を満たすという方法が好ましく採用される。あるいは、浸漬処理に引き続いて、超臨界流体又は亜臨界流体を排出する前に、すなわち該流体中に繊維材料が浸漬されている状態で、該流体中に気体還元剤、例えば0.01〜15%の濃度の水素気体を吹き込むことで有機金属錯体を還元させてもよい。
本発明のメッキ前処理方法においては、上記で説明したように、超臨界流体又は亜臨界流体に繊維材料が浸漬され、繊維表面が超臨界流体又は亜臨界流体に接触することによって、特に高分子繊維の場合に繊維が膨潤し、超臨界流体又は亜臨界流体に含まれる有機金属錯体が膨潤で生じた隙間に埋め込まれるようになると考えられ、その後活性化された触媒活性点が露出するので、繊維表面にアンカー効果のあるメッキ前処理を行うことができる。したがって、その後にメッキ処理を施すことで繊維表面に密着した金属皮膜を形成することが可能となる。さらに金属皮膜の密着性を向上させるためには、繊維材料を超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬する前に、プラズマ処理又は電子線照射処理その他の方法で繊維表面に極性基を導入することが効果的である。プラズマ処理又は電子線照射処理によれば、繊維表面を粗面化することなく極性基を導入することが可能である。
[本発明に係るメッキされた繊維の製造方法]
本発明に係るメッキされた高分子繊維又は炭素繊維の製造方法(本明細書において、「本発明のメッキ繊維の製造方法」ということがある。)は、上記した本発明のメッキ前処理方法で処理された高分子繊維又は炭素繊維をメッキ液に浸漬して、無電解メッキ処理することにより、メッキされた高分子繊維又は炭素繊維を製造する方法である。無電解メッキ処理は、無論、大気圧下で行うことができ、また、超臨界流体又は亜臨界流体の存在下で行うこともできる。
無電解メッキ処理により繊維表面に形成されるメッキ皮膜としては、金属単体からなる皮膜、合金からなる皮膜あるいはそれらの混合物からなる皮膜であれば特に限定されない。したがって、無電解メッキ処理のためのメッキ液としては、特に限定されず、一般的に常用されるメッキ液を使用することができる。
かかるメッキ皮膜としては、導電性の皮膜が好ましい。例えば、銅、銀、金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルト又はインジウムの中から選択される少なくとも一種の金属を含むメッキ液を用いて形成される皮膜が挙げられる。
メッキ皮膜の厚さとしては、20nmも可能であるが、通常0.02μm以上であり、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上であり、特に好ましくは0.1〜5.0μmである。厚さが0.02μm未満では、導電性が十分に発現できない場合がある。また、5.0μmより厚くしても、皮膜厚さの増加率に対する導電性の向上率は小さくなってくるので導電性向上のメリットは少なく、その一方で皮膜の柔軟性が低下する傾向にあるので好ましくない。
かかる無電解メッキ処理の方法は、特に限定されず、例えば上記のメッキ前処理後の繊維材料から繊維糸条を解除し、一般的に用いられている浸漬法によりメッキ液に浸漬すればよい。
無電解メッキ処理を大気圧下で行う場合は、通常、例えば図1における反応槽10又は図4における反応槽110からメッキ前処理後の繊維材料を取り出して、別途用意した無電解メッキ槽(図示せず)のメッキ液に浸漬する。すなわち、メッキの前処理と無電解メッキ処理は、前処理とメッキ処理という二-プロセスで行われる。
これに対し、無電解メッキ処理を超臨界流体又は亜臨界流体の存在下で行う場合は有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体によるメッキ前処理を行った反応槽内にさらに無電解メッキ液を追加添加し、その場でメッキ前処理後の繊維材料に無電解メッキ処理を施すことが可能である。すなわち、メッキの前処理と無電解メッキ処理とを一-プロセス(1のプロセス)で行うことが可能である。
また、上記メッキ前処理後の繊維材料が無芯ロール状繊維材料や枷状の繊維材料の場合には、解除することなくそのままの形態で無電解メッキ処理に供することもできる。かかる場合には、繊維材料全体にメッキ液が十分に浸透するよう、メッキ槽の底面に超音波振動子を固定する等して、メッキ液に振動を与えながら処理することが好ましい。かかる振動を与えて処理することにより、処理対象である繊維材料ないし繊維糸条の内部にメッキ液を迅速に浸透させるうえで好ましく、また、無電解メッキ処理において発生する気泡が高分子繊維材料等に付着してもメッキ液の振動によりただちに除去できるので、繊維表面にメッキ液が万遍なく作用して均一な金属皮膜が形成されるようになるので好ましい。なお、超音波工学の分野では、周波数が20kHz未満の振動も超音波振動と一般に呼び習わされているので、上記の超音波振動子が与える振動周波数には、20kHz未満の周波数も包含される。
上記のようにしてメッキ液を振動させる際の振動周波数としては、10〜50kHzが好ましい。かかる振動周波数でメッキ液を振動させることにより、金属の析出速度が大きくなり、所定の厚さの金属皮膜が得られるまでの時間が短縮され、また、析出反応に伴って発生する気泡が除去され、均一な金属皮膜をより速く、安定して析出させることができる。振動周波数が10kHz未満では、メッキ液を振動させることによる効果が不十分となる傾向にあり、一方、50kHzを超えると、メッキ液が不安定になり濁りが生じたりする場合があるので好ましくない。
本発明では、上記の無電解メッキ処理の後、さらに電解メッキ処理を行ってもよい。電解メッキ処理は無電解メッキ処理と比べてメッキ皮膜の厚さをコントロールしやすいので、かかる電解メッキ処理を行うことにより、使用目的に応じてメッキ皮膜の厚さを適宜調整し、ひいてはメッキ繊維の機械的特性(硬さ等)や電気的特性(導電性、導電安定性、耐電圧性等)等を調整することができる。
[本発明の直接メッキ繊維の製造方法]
次に、上記したように本発明のメッキ前処理と無電解メッキ処理を順次行ってメッキ繊維を製造する方法とは別に、本発明のメッキ前処理の第1工程と同じような方法で繊維表面に有機金属錯体を付着させた後、該有機金属錯体を還元、酸化又は硫化することにより、金属、金属酸化物又は金属硫化物皮膜を有する繊維を製造する方法について説明する。
すなわち、次に説明する製造方法は、繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程と、前記繊維表面に付着した有機金属錯体を還元、酸化又は硫化する工程とを含んでなる、金属、金属酸化物又は金属硫化物からなる皮膜を有する高分子繊維又は炭素繊維の製造方法である。この製造方法では、有機金属錯体を触媒の前駆体としてではなく、繊維表面を被覆するための金属皮膜ないし金属化合物皮膜の前駆体として付着させる点に特徴があり、メッキ前処理を行わずに繊維表面に直接にメッキを施すといえる。
このため、本明細書ではこの製造方法を「本発明の直接メッキ繊維の製造方法」ということがある。
本発明の直接メッキ繊維の製造方法において用いられる有機金属錯体としては、金、白金、パラジウム、ニッケル、銀、銅、鉄、チタン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルト、インジウム、イットリウム、バリウム、ガリウム、スカンジウム、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、ルビジウム、セシウム、バナジウム、鉛、ニオブ、クロム、リチウム、カリウム、およびランタノイド族57番〜71番の元素からなる群より選択される1種以上の金属を含有する有機金属錯体が好ましい。ランタノイド族57番〜71番の元素の中では、ネオジム、サマリウムおよびジスプロシウムの1種以上の金属を含有する有機金属錯体が好ましい。
より好ましく用いられる有機金属錯体としては、ベータジケトネート類(例えば、フッ素系パラジウム錯体およびフッ素系鉛錯体)が挙げられ、特に好ましく用いられる有機金属錯体としては、フッ素系パラジウム錯体およびフッ素系鉛錯体が挙げられる。
本発明の直接メッキ繊維の製造方法における有機金属錯体の使用量としては、繊維材料の質量に対して、5〜50質量%が好ましい。
繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程における処理条件、装置、操作方法等については、いずれも上記で説明した本発明のメッキ前処理方法について説明した通りである。したがって、上記で説明した第1工程と同様にして行うことができる。
上記工程により繊維表面に付着した有機金属錯体を還元する方法としては、上記で説明した本発明のメッキ前処理方法における、有機金属錯体を還元して活性化させる方法と同様にして行なうことができる。すなわち、上記したような熱還元による方法、還元剤を用いる方法、気密性容器内に繊維材料を設置して容器内の空間に気体還元剤を満たす方法、又は流体中に気体還元剤を吹き込む方法を採用することができる。この際、材料表面に金属を析出させるために、有機金属錯体構造内のリガンドが全て外されて金属皮膜が形成されるように、十分な還元処理を行うことが望ましい。かかる還元処理により、繊維表面に金属皮膜が直接形成される。
なお、熱還元による方法を採用する場合においては、上記の有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬する際に、流体温度を該有機金属錯体の熱還元温度以上に設定することにより、繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程とその有機金属錯体を還元する工程とを一度の処理で行うこともできる。
また、繊維表面に付着した有機金属錯体を酸化する方法としては、特に限定されないが、例えば、繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程に引き続き、繊維材料を流体中に浸漬した状態下で、該流体中に例えば酸素や亜酸化窒素等の気体酸化剤を、例えば0.1〜15%の濃度で吹き込む方法が挙げられる。かかる方法等により有機金属錯体の酸化反応が進み、繊維表面に金属酸化物皮膜が直接形成される。
また、繊維表面に付着した有機金属錯体を硫化する方法としては、特に限定されないが、例えば、繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程に引き続き、繊維材料を流体中に浸漬した状態下で、該流体中に例えば硫化水素等の気体硫化剤を、例えば0.1〜15%の濃度で吹き込む方法が挙げられる。かかる方法等により有機金属錯体の硫化反応が進み、繊維表面に金属硫化物皮膜が直接形成される。
以上のような本発明の直接メッキ繊維の製造方法のうち有機金属錯体を還元する方法により得られる、金属からなる皮膜を有する高分子繊維又は炭素繊維に、さらに電解メッキ処理を施してもよい。電解メッキ処理を施すことの利点は既に説明した通りである。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されない。
以下の実施例において、空隙率は上記で説明した方法により求めた。なお、念のために付言すると、多孔性管を芯とするロール状繊維材の場合には、多孔性管の部分を除外して算出した。
[実施例1]
まず、アラミド繊維糸条からなる無芯ロール状繊維材料を作製した。すなわち、直径1.3cm、長さ2.35cmのテフロン棒(テフロンは登録商標である)の両端に直径3.3cmの円盤を取り外し可能に取り付けてなるボビンを用意し、このボビンにワインダーを用いてアラミド繊維糸条(「ケブラー(登録商標)」、総繊度1670dtex、単糸繊度1.7dtex)を捲き回してゆき、巻糸体の外径が円盤の直径と同じになった段階で糸条を切断してその端を留め、円盤を外してテフロン棒を抜き取ることにより無芯ロール状繊維材料(内径1.3cm、外径3.3cm、高さ2.35cm、空隙率60%、アラミド繊維糸条の総延長22m)を得た。
図1に示す装置にて、以下に記載する操作により、無芯ロール状繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体に浸漬させる浸漬処理を行った。超臨界流体としては二酸化炭素を用い、エントレーナとしてエタノールを添加し、有機金属錯体としてはPd錯体であるフロロ(アセチルアセトネート)パラジウムを用いた。内容積50mlの反応層10内に、エントレーナであるエタノール2.5mlを事前に添加すると同時に、上記無芯ロール状繊維材料の質量の1質量%相当量の粉末状のフロロ(アセチルアセトネート)パラジウムも添加した。上記の無芯ロール状繊維材料を置き台12に載せた。その後、超臨界二酸化炭素流体を、バルブ3にて、導入口7より反応槽10に導入した。超臨界流体の注入圧力を示す圧力計2の圧力は15MPa、反応槽10の内部温度は45℃に保ち、攪拌子13の回転数は500〜1200rpmに維持した。
このようにして超臨界二酸化炭素流体注入後から30分間の浸漬処理を行った後、超臨界二酸化炭素流体を排出口8から大気圧に放出し、無芯ロール状繊維材料を反応槽10から取り出した。この浸漬処理後のアラミド繊維を蛍光X線分析装置で分析したところ、Pd元素ピークが検出されたことで、上記浸漬処理によってアラミド繊維表面に有機金属錯体を付着させることができたと確認された。
次いで、上記の反応槽10から取り出した無芯ロール状繊維材料を、140℃に温度設定したオーブン内に10分間置くことにより、繊維表面に付着した有機金属錯体の活性化処理を行った。
上記活性化処理後の無芯ロール状繊維材料を解除して取り出したアラミド繊維糸条にて、直径10cmの枷を作り、この枷を吊り状に無電解メッキ液に20分間浸漬するという無電解メッキ処理を行って、メッキされたアラミド繊維を得た。このとき、無電解メッキ液には42kHzの超音波振動を付与し、無電解メッキ液の温度は42±2℃に設定した。なお、無電解メッキ液の処方は次の通りである。
<無電解メッキ液の処方>
430mlの純水に、「ATS−ADDCOPPER IW−A(奥野製薬工業株式会社製)」25mlを添加し「さらにATS−ADDCOPPER IW−M(奥野製薬工業株式会社製)」40mlおよび「ATS−ADDCOPPER C(奥野製薬工業株式会社製)」5mlを添加して、無電解銅メッキ液を調製した。
上記で得られたメッキされたアラミド繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図2に示すように、繊維表面に綺麗な銅皮膜が形成されていることを確認できた。この銅皮膜の厚さは0.8μm、メッキされたアラミド繊維の導体抵抗率は0.04Ω/cmであった。なお、メッキ液浸漬時間を1時間に延長した場合には、銅皮膜の厚さは2.4μm、導体抵抗率は0.01Ω/cmとなった。
[実施例2]
アラミド繊維糸条の代わりに炭素繊維糸条(PAN系、総繊度1980dtex、単糸繊度0.7dtex、フィラメント数3000、導体抵抗率1.62Ω/cm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、無芯ロール状繊維材料(内径1.3cm、外径3.3cm、高さ2.35cm、空隙率50%、炭素繊維糸条の総延長20m)を作製した。次いで実施例1と同様の浸漬処理および活性化処理を行って、炭素繊維表面に有機金属錯体を付着させ、活性化させた。さらに、実施例1と同様に無電解メッキ処理を行って、メッキされた炭素繊維を得た。得られたメッキされた炭素繊維のいずれにおいても、表面に厚さ0.8μmの綺麗な銅皮膜が形成されており、メッキされた炭素繊維の導体抵抗率は0.03Ω/cmであった。
[実施例3]
PTFE繊維糸条(総繊度1400dtex、単糸繊度2.7dtex)に、酸素プラズマ装置(ヤマト精密株式会社「Plasma Reactor PR300」)内で100W、10分間のプラズマ処理をした。この処理により、PTFE繊維表面に親水基が導入されたことを、走査型オージェ電子分光表面装置(アルバック・ファイ株式会社−5500型)での分析結果(図3参照)から確認した。
無芯ロール状繊維材料の代わりに上記の親水基が導入されたPTFE繊維糸条からなる直径3cmの枷(総延長60cm)を用いること、および有機金属錯体としてフロロ(アセチルアセトネート)パラジウムの代わりにPt錯体であるジメチル−シクロオクタジエン白金を用いること以外は、実施例1と同様の浸漬処理および活性化処理を行って、PTFE繊維表面に有機金属錯体を付着させ、活性化させた。さらに、活性化処理後の枷に実施例1と同様の無電解メッキ処理を行って、メッキされたPTFE繊維を得た。得られたメッキされたPTFE繊維の表面には、むらなく、均一な銅皮膜がメッキされていた。銅皮膜の厚さは0.5μm、メッキされたPTFE繊維の導体抵抗率は0.61Ω/cmであった。
[実施例4]
アラミド繊維糸条の代わりにポリエチレンテレフタレート繊維糸条(総繊度1670dtex、単糸繊度1.7dtex、フィラメント数1000)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、無芯ロール状繊維材料(内径1.3cm、外径3.3cm、高さ2.35cm、空隙率50%、ポリエチレンテレフタレート繊維糸条の総延長20m)を作製した。次いで実施例1と同様の浸漬処理および活性化処理を行って、ポリエチレンテレフタレート繊維表面に有機金属錯体を付着させ、活性化させた。さらに、実施例1と同様に無電解メッキ処理を行って、メッキされたポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたメッキされたポリエチレンテレフタレートの表面には厚さ1.1μmの綺麗な銅皮膜が形成されており、メッキされたポリエチレンテレフタレート繊維の導体抵抗率は0.04Ω/cmであった。なお、本実施例において、有機金属錯体を含む超臨界流体に浸漬させる浸漬処理後に図1に示す装置の排出口8の箇所を観察したが、繊維から出るオリゴマー等の汚れはほとんど無かった。
[参考例1]
実施例1と同様にして、有機金属錯体を含む超臨界流体にアラミド繊維を浸漬させる浸漬処理を行い、その引っ張り強力と引っ張り弾性率を調べたところ、未処理のアラミド繊維(「ケブラー(登録商標)」)の平均引っ張り強力は319.8N(引っ張り強度:191.5cN/tex)に対して、上記浸漬処理したサンプルの方は、その強力は335.6N(引っ張り強度:200.9cN/tex)に変化し、強力は4.9%増加した。一方、その弾性率は42.8N/texから44.0N/texに、2.8%高くなった(表1参照)。
[参考例2]
超臨界流体の注入圧力を10MPa、反応槽6の内部温度を150℃としたこと以外は、参考例1と同様にして有機金属錯体を含む超臨界流体にアラミド繊維を浸漬させる浸漬処理を行ったところ、処理したサンプルの方は、その強力は265.2N(引っ張り強度:158.8cN/tex)に変化し、強力は17.0%低下した。一方、その弾性率は47.0N/texに変化し、9.8%高くなった(表1参照)。
[実施例5]
まず、アラミド繊維糸条が多孔性管を芯として捲き回されてなるロール状繊維材料(以下、「多孔芯ロール状繊維材料」と略記する)を作製した。すなわち、外径3cmのステンレス製丸管の表面に直径3mmの円形貫通孔が各貫通孔の中心間距離8mmで多数穿設されてなる多孔性管を芯として、ワインダーを用いてアラミド繊維糸条(「ケブラー(登録商標)」、総繊度1670dtex、単糸繊度1.7dtex)を捲き回し、空隙率65%、外径6.5cm、ロールの高さ15cmの多孔芯ロール状繊維材料(アラミド繊維糸条の総延長580m)を得た。
図4に示す装置にて、以下に記載する操作により、多孔芯ロール状繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体に浸漬させる浸漬処理を行った。超臨界流体としては二酸化炭素を用い、エントレーナとしてエタノールを添加し、有機金属錯体としてはPd錯体であるフロロ(アセチルアセトネート)パラジウムを用いた。
内容積2.6Lの反応槽110にエントレーナであるエタノール130mlをバルブ106を開いて事前に添加すると同時に、上記多孔芯ロール状繊維材料の質量(多孔管の質量は除く)の1質量%相当量の粉末状のフロロ(アセチルアセトネート)パラジウムを錯体置き台109に置くことで添加した。上記の多孔芯ロール状繊維材料を反応槽110内に設置後、バルブ103を開き、導入口107より多孔管112を経由させて、超臨界二酸化炭素を反応槽110に導入した。反応槽110の温度は45℃に保ち、圧力計102の指示値が15MPaとなった後にバルブ103を閉じ、115を開き、循環ポンプ114にて、圧力計117の指示値が15MPaとなるようにして超臨界二酸化炭素流体を循環させた。このようにして超臨界二酸化炭素流体を循環させつつ30分間の浸漬処理を行った後、超臨界二酸化炭素流体を排出口108から大気圧に放出した。
次いで、上記の反応槽110から取り出した多孔芯ロール状繊維材料を、140℃に温度設定したオーブン内に10分間置くことにより、繊維表面に付着した有機金属錯体の活性化処理を行った。
上記活性化処理後の多孔芯ロール状繊維材料を解除して、総延長の中央付近から取り出したアラミド繊維糸条1mにて、直径15cmの枷を作り、この枷を吊り状に無電解メッキ液に20分間浸漬するという無電解メッキ処理を行って、メッキされたアラミド繊維を得た。なお、無電解メッキ液は実施例1と同様のものを使用した。
上記で得られたメッキされたアラミド繊維をSEMで観察したところ、繊維表面に綺麗な銅皮膜が形成されていることを確認できた。この銅皮膜の厚さは0.7μm、メッキされたアラミド繊維の導体抵抗率は0.03Ω/cmであった。
[実施例6]
アラミド繊維糸条として、予め酸素プラズマ装置(ヤマト精密株式会社「Plasma Reactor PR300」)内で70W、5分間のプラズマ処理をしたアラミド繊維糸条を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行って、表面に銅皮膜がメッキされたアラミド繊維を得た。
実施例1と実施例6でそれぞれ得られた表面に銅皮膜がメッキされたアラミド繊維を試料として、次の2種類のテープを用いて剥離試験(JIS H 8504−15.1 テープ試験法に準拠)を行った。まず、一般用のセロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製「セロテープ(登録商標)」)を用いて試験した場合、いずれの試料においても銅皮膜は剥離しなかった。
次に、強力タイプの粘着テープ(ニチバン株式会社製「ナイスタック(登録商標)NW−K15SF」)を用いて試験した場合、実施例1の試料では銅皮膜が剥離したが、実施例6の試料では剥離しなかった。
この結果から、プラズマ処理によりアラミド繊維表面への銅皮膜の密着強度がさらに向上するという効果が明らかとなった。
[実施例7]
アラミド繊維糸条が布帛を形成していること以外は、実施例5と同様にして、メッキされた布帛を得た。
すなわち、布帛として平織物である「ケブラー(登録商標)T740(原糸繊度220dtex、密度:40×40本/インチ、目付:71g/m2 、厚さ:0.13mm)」を用いて、空隙率40%、外径5.0cm、ロールの高さ15cmの多孔芯ロール状布帛材料(総長1.0m)を作製し、次いで実施例5と同様の浸漬処理および活性化処理を行って、布帛表面に有機金属錯体を付着させ、活性化させた。さらに、実施例5と同様に無電解メッキ処理を行って、メッキされた布帛を得た。
得られたメッキされた布帛のいずれにおいても、表面に厚さ0.7μmの綺麗な銅皮膜が形成されており、メッキされた布帛の表面抵抗率は、四端子法(ロレスタAP MCP−T400(三菱油化(株)製))によって任意の5箇所を選択して測定したところ、その値は、0.05Ω/□であった。
[実施例8]
無電解メッキ処理を超臨界流体の存在下で行った以外は、実施例1と同様にして、メッキされたアラミド繊維を得た。
すなわち、まず、実施例1と同様にして、無芯ロール状繊維材料を得た。次に図1に示す装置にて、実施例1と同様にして、無芯ロール状繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体(二酸化炭素)に浸漬し活性化させる処理を行った。次いで、圧力を15MPaに保持し、槽温度を40℃まで下げ、アラミド繊維表面に活性化による目的とした触媒が付着した無芯ロール状繊維材料を反応槽10に配置した状態で(反応槽10から取り出さず)、バルブ4から無電解液を槽内に流し込み、超臨界二酸化炭素雰囲気中で30分間無電解銅メッキを行った。
得られたメッキされたアラミド繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、繊維表面に綺麗な銅皮膜が形成されていることを確認できた。この銅皮膜の厚さは0.6μm、メッキされたアラミド繊維の導体抵抗率は0.03Ω/cmであった。また、実施例1と実施例8でそれぞれ得られた表面に銅皮膜がメッキされたアラミド繊維を試料として用いて、剥離試験(JIS H 8504−15.1 テープ試験法に準拠)を行った。強力タイプの粘着テープ(ニチバン株式会社製「ナイスタック(登録商標)NW−K15SF」)を用いて試験したところ、実施例1の試料では銅皮膜が剥離したが、実施例8の試料では剥離しなかった。
[実施例9]
実施例1と同様にして得た、無電解メッキされたアラミド繊維にさらに、以下の通り、電解メッキ処理を行った。
すなわち、実施例1と同様にして、無芯ロール状繊維材料を得た後、図1に示す装置にて、有機金属錯体を含む超臨界流体(二酸化炭素)に浸漬させる浸漬処理を行い、繊維表面に付着した有機金属錯体の活性化処理を行い、活性化処理後の無芯ロール状繊維材料に無電解メッキ処理を行った。次いで、得られた無電解銅メッキアラミド繊維を電解銅メッキ液中に走行させ、電流2Aで5分間電解メッキ処理を行った。
上記で得られた電解メッキされたアラミド繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ繊維表面に綺麗な銅皮膜が形成されていることを確認できた。この銅皮膜の厚さは1.1μm、メッキされたアラミド繊維の導体抵抗率は0.006Ω/cmであった。
[実施例10]
ポリアミド繊維糸条(ナイロン66、総繊度1400dtex、単糸繊度2.2dtex)を用いて、直径3cmの枷(総延長60cm)を作製した。
図1に示す装置にて、超臨界流体としては二酸化炭素を用い、エントレーナは添加せず、有機金属錯体としてはPd錯体であるフロロ(アセチルアセトネート)パラジウムを繊維質量に対して25.0質量%相当量投入し、反応槽内を温度150℃、圧力15MPaに設定し、その条件下で流体中に上記繊維材料(枷)を240分間浸漬することにより、繊維表面へ有機金属錯体を付着させるとともに付着した該錯体を熱還元した。
上記の還元処理後の繊維表面には、光沢のあるパラジウム皮膜が形成されており、パラジウムメッキされたポリアミド繊維を得ることができた。その表面をSEMにて撮影した像を図5に示した。図5より、ポリアミド繊維表面に均一かつ滑らかなパラジウム皮膜が形成していることを確認できた。このパラジウム皮膜の厚さは0.02μmであった。
[実施例11]
ポリアミド繊維糸条の代わりに炭素繊維糸条を用いた以外は、実施例10と同様にして、図1に示す装置にて、パラジウムからなる皮膜を有する炭素繊維を得た。
すなわち、炭素繊維糸条として、PAN系繊維糸条(総繊度1980dtex、単糸繊度0.7dtex、フィラメント数3000、導体抵抗率1.62Ω/cm)を用いて、直径5cmの枷(総延長50cm)を作製したこと以外は、実施例10と同様にして、流体中に上記繊維材料(枷)を240分間浸漬することにより、繊維表面へ有機金属錯体を付着させるとともに付着した該錯体を熱還元した。
上記の還元処理後の繊維表面には、光沢のあるパラジウム皮膜が形成されており、パラジウムメッキされた炭素繊維を得ることができた。その表面をSEMにて撮影し、炭素繊維表面に均一かつ滑らかなパラジウム皮膜が形成していることを確認できた。このパラジウム皮膜の厚さは0.02μmであった。
[実施例12]
実施例10と同様にして、図1に示す装置にて、ポリアミド繊維材料(枷)を浸漬することにより、繊維表面へ有機金属錯体を付着させるとともに付着した該錯体を熱還元し、パラジウムからなる皮膜を有するポリアミド繊維を得た。得られたパラジウムメッキポリアミド繊維を電解銅メッキ液中に走行させ、電流2Aで5分間電解メッキ処理を行った。
電解メッキ処理後の繊維表面には、光沢のある銅メッキ皮膜が形成されており、その表面をSEMにて観察したところ、その皮膜は均一かつ滑らかであった。この銅皮膜の厚さは1.2μmであった。
[実施例13]
有機金属錯体としてフロロ(アセチルアセトネート)パラジウムの代わりにトリフルオロ酢酸鉛を用いた以外は、実施例1と同様の浸漬処理を行って、繊維表面に有機金属錯体を付着させた。その後、アラミド繊維表面に錯体が付着した無芯ロール状繊維材料を反応槽に配置した状態で(反応槽から取り出さず)、バルブ4から硫化水素ガスを槽内に流し込み、超臨界二酸化炭素雰囲気中で60分間硫化処理を行ったところ、黒い皮膜が形成されたアラミド繊維を得た。得られたメッキアラミド繊維についてランマ分析をしたところ、273cm-1においてPdSの特性ピークが確認され、アラミド繊維表面に硫化パラジウム皮膜が形成されていることが確認された。
本発明を実施するための装置の一例を示す断面模式図である。 銅メッキされたアラミド繊維の走査型電子顕微鏡写真である。 プラズマ処理されたPTFE繊維の表面を走査型オージェ電子分光表面装置により測定した結果を示すグラフである。 本発明を実施するための装置の他の例を示す断面模式図である。 パラジウムメッキされたアラミド繊維の走査型電子顕微鏡写真である。
符号の説明
2 圧力計
3 バルブ(超臨界流体又は亜臨界流体用)
4 バルブ
6 圧力計
7 流体導入口
8 流体排出口
9 錯体置き台
10 反応槽
11 無芯ロール状繊維材料
12 繊維材料置き台
13 攪拌子
14 器壁(ヒータ内蔵)
102 圧力計
103 バルブ(超臨界流体又は亜臨界流体用)
106 バルブ
107 流体導入口
108流体排出口
109 錯体置き台
110 反応槽
111 ロール状繊維材料
112 多孔管
113 器壁(ヒータ内蔵)
114 循環ポンプ
115 バルブ
116 流体循環用出口
117 圧力計

Claims (23)

  1. 高分子繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる高分子繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより高分子繊維表面に有機金属錯体を付着させる第1工程と、前記高分子繊維表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化させる第2工程とを含んでなる高分子繊維のメッキ前処理方法。
  2. 炭素繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる炭素繊維材料を、有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより炭素繊維表面に有機金属錯体を付着させる第1工程と、前記炭素繊維表面に付着した有機金属錯体を還元して活性化させる第2工程とを含んでなる炭素繊維のメッキ前処理方法。
  3. 超臨界流体又は亜臨界流体は、二酸化炭素、一酸化二窒素、トリフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、メタン、エタンおよびエチレンからなる群より選択される1種以上から主としてなり、その温度が50℃以下である請求項1又は2に記載のメッキ前処理方法。
  4. 超臨界流体又は亜臨界流体は、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジベンジルエーテル、トリアジンチオール類、アミン類およびシランカップリング剤類からなる群より選択される1種以上の添加剤を含む請求項3に記載のメッキ前処理方法。
  5. 高分子繊維は、アラミド繊維又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維である請求項1、3および4のうちのいずれかに記載のメッキ前処理方法。
  6. 高分子繊維又は炭素繊維は、プラズマ処理又は電子線照射処理により極性基が導入された高分子繊維又は炭素繊維である請求項1〜5のうちのいずれかに記載のメッキ前処理方法。
  7. 有機金属錯体は、金、白金、パラジウム、ニッケル、銀、銅、鉄、チタン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルト、インジウム、イットリウム、バリウム、ガリウム、スカンジウム、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、ルビジウム、セシウム、バナジウム、鉛、ニオブ、クロム、リチウム、カリウム、およびランタノイド族57番〜71番の元素からなる群より選択される1種以上の金属を含有する請求項1〜6のいずれかに記載のメッキ前処理方法。
  8. 前記高分子繊維糸条が布帛を形成している請求項1及び請求項3〜7のいずれかに記載のメッキ前処理方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のメッキ前処理方法で処理された高分子繊維又は炭素繊維をメッキ液に浸漬して無電解メッキ処理を行う、メッキされた高分子繊維又は炭素繊維の製造方法。
  10. 無電解メッキ処理を超臨界流体又は亜臨界流体の存在下に行う請求項9に記載のメッキされた高分子繊維又は炭素繊維の製造方法。
  11. メッキ液は、銅、銀、金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルトおよびインジウムからなる群より選択される1種以上の金属を含んでなる請求項10に記載の製造方法。
  12. 無電解メッキ処理において、メッキ液に10〜50kHzの振動が付与される請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 前記無電解メッキ処理の後に、さらに電解メッキ処理を行う、請求項9〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. 高分子繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる高分子繊維材料を、
    有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより高分子繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程と、
    前記高分子繊維表面に付着した有機金属錯体を還元、酸化又は硫化する工程とを含んでなる、金属、金属酸化物又は金属硫化物からなる皮膜を有する高分子繊維の製造方法。
  15. 炭素繊維糸条が無芯で又は多孔性管を芯として捲き回されてなる炭素繊維材料を、
    有機金属錯体を含む超臨界流体又は亜臨界流体に浸漬することにより炭素繊維表面に有機金属錯体を付着させる工程と、
    前記炭素繊維表面に付着した有機金属錯体を還元、酸化又は硫化する工程とを含んでなる、金属、金属酸化物又は金属硫化物からなる皮膜を有する炭素繊維の製造方法。
  16. 超臨界流体又は亜臨界流体は、二酸化炭素、一酸化二窒素、トリフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、メタン、エタンおよびエチレンからなる群より選択される1種以上から主としてなり、その温度が50℃以下である請求項14又は15記載の製造方法。
  17. 超臨界流体又は亜臨界流体は、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジベンジルエーテル、トリアジンチオール類、アミン類およびシランカップリング剤類からなる群より選択される1種以上の添加剤を含む請求項16に記載の製造方法。
  18. 高分子繊維は、ポリアミド繊維、アラミド繊維又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維である請求項14、16および17のうちのいずれかに記載の製造方法。
  19. 高分子繊維又は炭素繊維は、プラズマ処理又は電子線照射処理により極性基が導入された高分子繊維又は炭素繊維である請求項14〜18のうちのいずれかに記載の製造方法。
  20. 有機金属錯体は、金、白金、パラジウム、ニッケル、銀、銅、鉄、チタン、亜鉛、アルミニウム、スズ、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、コバルト、インジウム、イットリウム、バリウム、ガリウム、スカンジウム、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、ルビジウム、セシウム、バナジウム、鉛、ニオブ、クロム、リチウム、カリウム、およびランタノイド族57番〜71番の元素からなる群より選択される1種以上の金属を含有する請求項14〜19のいずれかに記載の製造方法。
  21. 有機金属錯体は、ベータージケトネート類、ジエン類およびメタロセン類からなる群より選択される1種以上である請求項20に記載の製造方法。
  22. 前記高分子繊維糸条が布帛を形成している請求項14及び請求項16〜21のいずれかに記載の製造方法。
  23. 前記高分子繊維表面又は炭素繊維表面に付着した有機金属錯体を還元する工程の後に、さらに電解メッキ処理を行う、請求項14〜22のいずれかに記載の製造方法。
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