JP2017125252A - 有機化合物に分散された金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の製造 - Google Patents

有機化合物に分散された金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子の製造 Download PDF

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Abstract

【課題】 第一に、安価な原料を用い、簡単な処理を連続して実施することでナノ粒子が製造できる。第二に、不純物を含まないナノ粒子が製造できる。第三に、製造できるナノ粒子の量の制約がない。第四に、個々のナノ粒子が液体の媒体に分散される。【解決策】 熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物がアルコールに分散された分散液に、沸点が金属化合物の熱分解温度より高い有機化合物を混合し、この混合液からアルコールを気化し、金属化合物の微細結晶が有機化合物に析出した第一の懸濁体を作成し、この第一の懸濁体をホモジナイザー装置で処理し、金属化合物の個々の微細結晶が有機化合物に分散された第二の懸濁体を作成し、この第二の懸濁体を熱処理して金属化合物を熱分解する、これによって、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が液体の有機化合物に分散された懸濁体が製造される。【選択図】図1

Description

本発明は、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が、液体の有機化合物に分散された懸濁体の製造に係わる。これによって、ナノ粒子が必要になった際に有機化合物を気化すれば、経時変化せず、不純物を含まない金属ないしは金属酸化物のナノ粒子が、凝集せずに個々のナノ粒子の集まりとして取り出せる。
ナノレベルの大きさからなる金属ナノ粒子の性質が、バルクからなる金属とは異なる性質を持つため、様々な製法によって様々な金属ナノ粒子が製造されている。
例えば、特許文献1には、銅イオン、及び炭素原子数4〜12のラクタム系化合物が溶解している還元反応水溶液において、銅イオンの電解還元反応により、ラクタム系有機化合物で被覆された銅ナノ粒子を析出させる技術が開示されている。これによって、析出する銅ナノ粒子がデンドライト状に凝集するのが抑制されるとの記載がある。しかし、還元反応水溶液における全ての異物を完全に排除することは困難であるため、本技術によって析出する銅ナノ粒子の純度は低い。さらに、製造できるナノ粒子が銅に限定される。また、特殊な薬品に依る還元反応を利用するため、安価なナノ粒子が製造できない。
また、特許文献2には、銅化合物が溶解あるいは分散している液中で、化学的に修飾したゼラチンの存在下で、銅イオンを還元して、銅ナノ粒子を得る技術が開示されている。しかしながら、前記した特許文献1と同様に、化学的に修飾したゼラチンの加水分解において、全ての異物を完全に排除することは困難であり、本技術によって得られる銅ナノ粒子の純度は低い。また、特許文献1と同様に、製造できる金属ナノ粒子が銅に限定される。また、特殊な薬品に依る還元反応を利用するため、安価なナノ粒子が製造できない。
さらに、特許文献3には、金属酸化物または金属水酸化物と、酸性物質または塩基性物質と、有機修飾剤を含有する有機溶媒からなる反応媒体をマイクロ波で加熱することにより金属ナノ粒子を製造する技術が開示されている。しかしながら、反応媒質に均一にマイクロ波を照射して、同一の温度に加熱するには、反応媒体の量に制限があり、金属ナノ粒子の量産性に劣る。また、マイクロ波を照射した試料を濾過、精製した後に800℃という高温で熱処理することが必要になり、大気雰囲気での処理ではナノ粒子が酸化される。また、酸化されない雰囲気での熱処理は、金属ナノ粒子の製造費用が高価になる。
特開2014−156627号公報 特開2014−129609号公報 特開2013−23699号公報
ナノレベルの大きさからなるナノ粒子の製造に係わる課題は次の4点に集約される。第一に、安価な原料を用い、簡単な処理を連続して実施することでナノ粒子が製造できる。第二に、不純物を含まないナノ粒子が製造できる。第三に、製造できるナノ粒子の量の制約がない。第四に、個々のナノ粒子が液体の媒体に分散される。
つまり、第一から第三の条件を満たしてナノ粒子が安価に製造できても、ごく微細でごく軽量で比表面積が大きいナノ粒子の取り扱いは難しい。特に、不純物を含まない金属のナノ粒子は製造時に凝集し易く、一度凝集した金属ナノ粒子の解除は困難になる。これによって、金属のナノ粒子の製造の意義が失われる。従って、個々の金属ナノ粒子が独立して液体の媒体に析出し、この後、安定した金属のナノ粒子になれば、媒体の気化によって、必要な時に必要な量の金属のナノ粒子が凝集せずに取り出せる。また、液体の媒体に分散された金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子は、外界と遮断されて経時変化しない。
本発明における解決すべき課題は、前記した4つの課題を解決して、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子を製造することにある。
本発明に係わる金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体を製造する第一特徴手段は、
熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、融点が20℃より低い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解が完了する温度より高い第三の性質とを兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して混合液を作成し、この後、前記混合液から前記アルコールを気化させ、前記有機化合物に前記金属化合物の微細結晶の集まりが析出した第一の懸濁体を作成し、さらに、前記第一の懸濁体をホモジナイザー装置で処理し、前記金属化合物の微細結晶の集まりを個々の微細結晶に分離させ、該分離した微細結晶が前記有機化合物に分散された第二の懸濁体を作成し、この後、前記第二の懸濁体を熱処理して前記金属化合物を熱分解する、これによって、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が前記有機化合物に分散された懸濁体が製造される。
つまり、本特徴手段に依れば、第一に、熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物をアルコールに分散すると、金属化合物が分子状態でアルコールに分散する。これによって、金属ないしは金属酸化物の原料が液相化される。第二に、有機化合物をアルコール分散液に混合すると、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和するため、有機化合物は金属化合物のアルコール分散液と均一に混ざり合って混合液を形成する。第三に、混合液からアルコールを気化させると、金属化合物はアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、金属化合物の微細結晶の集まりが有機化合物に析出する。これによって、金属化合物の微細結晶の集まりが、融点が20℃より低い液体の有機化合物に析出した第一の懸濁体が得られる。第四に、第一の懸濁体をホモジナイザー装置で処理すると、金属化合物の微細結晶の集まりが個々の微細結晶に分離し、分離した個々の微細結晶が液体の有機化合物に分散された第二の懸濁体が得られる。第五に、第二の懸濁体を熱処理して金属化合物を熱分解すると、金属化合物の微細結晶の大きさに応じた40nm〜60nmの大きさからなる金属ないしは金属酸化物の粒状のナノ粒子が、沸点が金属化合物の熱分温度より高い液体の有機化合物に析出し、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が液体の有機化合物に分散された第三の懸濁体が得られる。このナノ粒子は有機化合物と反応しないため、安定したナノ粒子となって液体の有機化合物に分散する。また、液体の有機化合物でナノ粒子が外界から遮断されるため、ナノ粒子は経時変化しない。さらに、高沸点の有機化合物は吸湿性がなく、長期にわたって経時変化しない。従って、ナノ粒子が必要になった時に、必要な量に相当する第三の懸濁体から有機化合物を気化すれば、不純物を含まない金属ないしは金属酸化物のナノ粒子の必要量が経時変化せずに得られる。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、5つの簡単な処理を連続して実施することで、金属ないしは金属酸化物の個々のナノ粒子が液体の有機化合物に分散された懸濁体が製造される。
つまり、金属化合物の熱分解反応は、最初に金属化合物が、金属ないしは金属酸化物と無機物ないしは有機物とに分解する。次に、無機物ないしは有機物が気化熱を奪いながら気化し、気化が完了した後に、金属ないしは金属酸化物が析出して熱分解反応が完了する。この析出した金属ないしは金属酸化物は、不純物を含まない。
いっぽう、金属ないしは金属酸化物の原料である金属化合物をアルコールに分散させると、金属ないしは金属酸化物の原料が液相化され、この後、溶媒のアルコールを気化させると、金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。この金属化合物の微細結晶の集まりが熱分解すると、微細結晶の大きさに応じた40nm〜60nmの大きさからなる金属ないしは金属酸化物の粒状のナノ粒子の集まりが一斉に析出する。この際、金属のナノ粒子は不純物を持たない活性状態で析出するため、隣接した金属のナノ粒子は接触する部位で互いに金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりになる。いっぽう、金属酸化物のナノ粒子は不純物を持たないが、金属酸化物が安定した物質であるため、隣接した金属酸化物のナノ粒子は互に結合しない。
これに対し、前記した第一の懸濁体をホモジナイザー装置で処理すると、金属化合物の微細結晶の集まりが個々の微細結晶に分離し、分離した個々の微細結晶が液体の有機化合物に分散された第二の懸濁体となる。この第二の懸濁体を熱処理して金属化合物を熱分解すると、40nm〜60nmの大きさからなる金属ないしは金属酸化物の粒状のナノ粒子が、個々のナノ粒子として液体の有機化合物に析出し、第三の懸濁体となる。つまり、液体の有機化合物に囲まれた個々の微細結晶が熱分解し、液体の有機化合物に囲まれて個々のナノ粒子が析出するため、金属のナノ粒子が直接接触することはなく、金属のナノ粒子は金属結合しない。また、金属のナノ粒子が有機化合物とは化学反応しないため、液体の有機化合物に析出した後は、安定した金属のナノ粒子となる。このため、第三の懸濁体から有機化合物を気化させると、安定した金属のナノ粒子が析出し、金属のナノ粒子が直接接触しても金属結合せず、また、凝集もしない。なお、第三の懸濁体を有機化合物の沸点以上に昇温し、金属のナノ粒子を析出させる場合は、金属のナノ粒子が析出した温度、つまり、金属化合物の熱分解が完了する温度より高い温度に昇温されるため、不純物を含まない金属のナノ粒子が活性化され、接触した金属のナノ粒子が互に反応し、昇温される温度と金属化合物の熱分解が完了する温度との温度差に応じて、ナノ粒子が成長して粗大化する。このため、第三の懸濁体から金属のナノ粒子を析出する手段は、室温における有機化合物の蒸気圧より低い圧力下に第三の懸濁体をさらし、有機化合物を気化させる方法が望ましい。有機化合物が気化した後に、金属のナノ粒子の集まりが析出するが、不純物を含まない金属のナノ粒子が昇温されず安定した状態を維持するため、金属のナノ粒子が直接接触しても金属結合せず、また、凝集もしない。
いっぽう、本特徴手段における原料は、熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物とアルコールと高沸点の有機化合物とからなり、いずれも汎用的な工業薬品である。また、本特徴手段における処理は、第一に金属化合物をアルコールに分散する処理と、第二にアルコール分散液に有機化合物を混合する処理と、第三に混合液からアルコールを気化させる処理と、第四に有機化合物の微細結晶の集まりを個々の微細結晶に分離させる処理と、第五に最高でも430℃程度の温度で熱処理だけの処理であり、これら5つの簡単な処理を連続して実施すると、個々のナノ粒子が液体の有機化合物に分散した懸濁体が得られる。従って、特殊な装置による特殊な条件下での化学物質の処理や、特殊な環境下での化学物質の反応が一切ない。このため、莫大な量のナノ粒子が有機化合物に分散した懸濁体が極めて安価な費用で製造できる。
例えば、有機化合物に直径50nmの球状の銅のナノ粒子が析出するとする。この銅のナノ粒子1個の重さは5.85×10−16gである。いっぽう、銅の原子量は63.55g/molであるから、1モルの銅は1.1×1017個のナノ粒子に相当する。従って、僅か1モルの銅化合物から、1.1×1017個からなる銅のナノ粒子の集まりが有機化合物に析出する。この有機化合物を気化させると、1.1×1017個の銅のナノ粒子の集まりが得られる。このように、使用する金属化合物のモル数に応じて析出するナノ粒子の量が決まり、使用するする金属化合物の量の制約がないため、製造できるナノ粒子の量の制約はない。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、6段落で説明した4つの課題を根本的に解決し、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が、液体の有機化合物に分散した懸濁体が製造される。
なお、アルコールの沸点と、金属化合物の熱分解で生成された無機物ないしは有機物の沸点と、有機化合物の沸点とは、各々に温度差があり、気化したアルコールと、気化した無機物ないしは有機物と、気化した有機化合物とは、回収機で分離して個別に回収できる。
本発明に係わる金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体を製造する第二特徴手段は、第一特徴手段に記載した熱分解で金属を析出する第一の金属化合物に関わり、該第一の金属化合物は、
無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体である。
つまり、本特徴手段における無機金属化合物からなる錯体は、180℃〜220℃の温度の還元雰囲気で熱処理すると、錯体の熱分解が完了して金属を析出する。また、アルコールに10重量%近くの濃度で分散する。従って、このような無機金属化合物からなる錯体は、第一特徴手段に記載した熱分解で金属を析出する第一の金属化合物になる。
すなわち、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を、還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が最初に分断され、無機物と金属とに分解する。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、すべての無機物の気化が完了した後に金属が析出する。つまり、錯体を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きい。このため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に、金属が析出する。この際、配位子が低分子量の無機物であるため、配位子の分子量に応じて、180℃〜220℃の低い温度で無機物の気化が完了する。このような錯体として、アンモニアNHが配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオンを有する錯体、塩素イオンClが、ないしは塩素イオンClとアンモニアNHとが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンを有する錯体、シアノ基CNが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ金属錯イオンを有する錯体、臭素イオンBrが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ金属錯イオンを有する錯体、沃素イオンIが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するヨード金属錯イオンを有する錯体などが挙げられる。また、このような無機化合物からなる錯体は、配位子の分子量が小さいため、合成が容易で最も安価な金属錯イオンを有する錯体である。
以上に説明したように、本特徴手段における錯体は、第一特徴手段に記載した熱分解で金属を析出する第一の金属化合物となり、また、第一特徴手段に記載した懸濁体を製造する安価な原料になる。
本発明に係わる金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体を製造する第三特徴手段は、第一特徴手段に記載した熱分解で金属を析出する第二の金属化合物に関わり、該第二の金属化合物は、
カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物である。
つまり、本特徴手段におけるカルボン酸金属化合物は、290℃〜430℃の温度からなる大気雰囲気で熱処理すると、熱分解が完了して金属を析出する。また、アルコールに10重量%近くの濃度で分散する。従って、このようなカルボン酸金属化合物は、第一特徴手段に記載した熱分解で金属を析出する第二の金属化合物になる。
すなわち、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合するカルボン酸金属化合物においては、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の分子量に応じて、カルボン酸の気化が進み、気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などが挙げられる。なお、オクチル酸の沸点は228℃であり、ラウリン酸の沸点は296℃であり、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、金属イオンと結合するカルボン酸の分子量に応じた気化熱を奪って気化するため、290℃〜430℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化銅(I)CuOと酸化銅(II)CuOとが同時に析出し、酸化銅(I)CuOと酸化銅(II)CuOとを銅に還元する処理費用を要する。特に、酸化銅(I)CuOは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化銅(II)CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、処理費用がかさむ。
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。このため、10段落で説明した無機金属化合物からなる錯体より熱分解温度が高くはなるが、錯体より安価な金属化合物である。
以上に説明したように、本特徴手段におけるカルボン酸金属化合物は、第一特徴手段に記載した熱分解で金属を析出する第一の金属化合物となり、また、第一特徴手段に記載した懸濁体を製造する安価な原料になる。
本発明に係わる金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体を製造する第四特徴手段は、第一特徴手段に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物に関わり、該金属化合物は、
カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物からなる錯体である。
つまり、本特徴手段におけるカルボン酸金属化合物からなる錯体は、180℃〜340℃の温度からなる大気雰囲気で熱処理すると、熱分解が完了して金属酸化物を析出する。また、アルコールに10重量%近くの濃度で分散する。従って、このようなカルボン酸金属化合物は、第一特徴手段に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物になる。
すなわち、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となって、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物からなる錯体は、最も大きいイオンである金属イオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンに配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の分子量と、配位結合するカルボン酸の数とに応じて、カルボン酸の気化が進み、気化が完了すると、金属酸化物が析出して熱分解を終える。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。なお、酢酸の沸点は118℃で、カプリル酸の沸点は237℃で、安息香酸の沸点は249℃である。また、ナフテン酸は5員環をもつ飽和脂肪酸の混合物で、一般式ではC2n−1COOHで示され、主成分は沸点が268℃で、分子量が170のC17COOHからなる。従って、これらカルボン酸金属化合物からなる錯体は、カルボン酸の分子量と、配位結合するカルボン酸の数とに応じて、180℃〜340℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。
さらに、カルボン酸金属化合物は容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有し、分子量が小さい有機酸であるため、大気雰囲気においては180℃〜340℃程度の熱処理で金属酸化物が析出する。
以上に説明したように、本特徴手段におけるカルボン酸金属化合物からなる錯体は、第一特徴手段に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物となり、また、第一特徴手段に記載した懸濁体を製造する安価な原料になる。
本発明に係わる金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体を製造する第五特徴手段は、第一特徴手段に記載した有機化合物に関わり、該有機化合物は、
カルボン酸エステル類ないしはグリコール類ないしはグリコールエーテル類のいずれかに属する一種類の有機化合物である。
つまり、本特徴手段に依れば、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類のいずれかに属する有機化合物に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、融点が20℃より低い第二の性質と、沸点が第一特徴手段に記載した金属化合物の熱分解が完了する温度より高い第三の性質とを兼備する有機化合物が存在する。このような有機化合物はいずれも汎用的な工業用薬品である。
従って、本特徴手段におけるいずれかの有機化合物を、金属化合物のアルコール分散液に混合すると、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和する性質を持つため、有機化合物は金属化合物のアルコール分散液と均一に混ざり合い、第一特徴手段における混合液を形成する。さらに、この混合液からアルコールを気化させると、金属化合物はアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、金属化合物の微細結晶の集まりが、融点が20℃より低い液体の有機化合物に析出し、第一特徴手段における第一の懸濁体が得られる。また、第一の懸濁体をホモジナイザー装置で処理すると、金属化合物の微細結晶の集まりが個々の微細結晶に分離し、個々の微細結晶が液体の有機化合物に分散された第一特徴手段における第二の懸濁体が得られる。さらに、第二の懸濁体を熱処理して金属化合物を熱分解すると、金属化合物の微細結晶の大きさに応じた40nm〜60nmの大きさからなる金属ないしは金属酸化物の粒状のナノ粒子が、沸点が金属化合物の熱分温度より高い液体の有機化合物に析出し、個々のナノ粒子が液体の有機化合物に分散した第一特徴手段における懸濁体が得られる。
以上に説明したように、本特徴手段における有機化合物は、第一特徴手段に記載した有機化合物となり、また、第一特徴手段に記載した懸濁体を製造する安価な原料になる。
本発明に係わる金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体を製造する製造方法は、
熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、融点が20℃より低い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解が完了する温度より高い第三の性質とを兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して混合液を作成する第二の工程と、前記混合液から前記アルコールを気化させ、前記有機化合物に前記金属化合物の微細結晶の集まりが析出した第一の懸濁体を作成する第三の工程と、前記第一の懸濁体をホモジナイザー装置で処理し、前記金属化合物の個々の微細結晶が前記有機化合物に分散された第二の懸濁体を作成する第四の工程と、前記第二の懸濁体を熱処理して前記金属化合物を熱分解する第五の工程とからなり、これら5つの工程を連続して実施する製造方法が、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体を製造する製造方法である。
つまり、本製造方法によれば、次の5つの簡単な工程を連続して実施すると、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体が製造される。このため、安価な製造費用で懸濁体が製造できる。
すなわち、第一の工程は、金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、混合液からアルコールを気化させるだけの処理である。第四の工程は、第三の工程で作成した第一の懸濁体をホモジナイザー装置で処理するだけの処理である。第五の工程は、第四の工程で作成した第二の懸濁液を熱処理するだけの処理である。
つまり、第二の工程で作成した混合液からアルコールを気化させるだけで、金属化合物の微細結晶の集まりが有機化合物に析出し、金属化合物の微細結晶の集まりが、融点が20℃より低い液体の有機化合物に析出した第一の懸濁体が得られる。さらに、第一の懸濁体をホモジナイザー装置で処理するだけで、金属化合物の微細結晶の集まりが個々の微細結晶に分離し、個々の微細結晶が有機化合物に分散された第二の懸濁体が得られる。また、第二の懸濁体を熱処理して金属化合物を熱分解するだけで、金属化合物の微細結晶の大きさに応じた40nm〜60nmの大きさからなる金属ないしは金属酸化物の粒状のナノ粒子が、沸点が金属化合物の熱分温度より高い液体の有機化合物に析出し、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が、液体の有機化合物に分散された第三の懸濁体が得られる。このナノ粒子は有機化合物と反応しないため、安定なナノ粒子となって有機化合物に分散する。また、ナノ粒子は有機化合物で外界から遮断されるため、経時変化しない。さらに、高沸点の有機化合物は吸湿性がなく、長期にわたって経時変化しない。従って、ナノ粒子が必要になった時に、必要な量に相当する第三の懸濁体から有機化合物を気化すれば、不純物を含まない金属ないしは金属酸化物のナノ粒子の必要量が経時変化せずに得られる。
以上に説明したように、本特徴手段は、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体を安価な費用で製造する製造方法である。
析出した鉄のナノ粒子を模式的に拡大して図示した図である。
実施形態1
本実施形態は、10段落に記載した無機金属化合物からなる錯体に関わる実施形態である。本発明における金属化合物は、第一にアルコールに分散し、第二に熱分解で金属を析出する2つの性質を兼備する。ここでは金属を金とし、2つの性質を兼備する金化合物として、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子となって金イオンに配位結合する金錯イオンを有する無機金化合物からなる金錯体が、第一の金属化合物として適切であることを導く。
最初に、アルコールに分散する金化合物を説明する。塩化金はアルコールに溶解し、金イオンが溶出し、多くの金イオンが金微粒子の析出に参加できない。従って、金化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質を持つことが必要になる。また、酸化金、水酸化金などの無機金化合物はアルコール類に分散しない。このため、これらの無機金化合物は、前記した2つの性質を兼備する金化合物として適切でない。
金化合物は金を析出する性質を持つ。金化合物から金が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。さらに、金化合物の熱分解温度が低ければ、熱処理温度が低くなり、有機化合物に分散された金のナノ粒子が安価に製造できる。いっぽう、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子となって金イオンに配位結合する金錯イオンを有する無機金化合物からなる金錯体は、無機物の分子量が小さければ、還元雰囲気での熱分解温度は低い。また、配位子の分子量が小さいため、他の金錯イオンを有する錯体より合成が容易で安価な工業用薬品である。
すなわち、金錯体を構成する分子の中で、金イオンが最も大きい。ちなみに、金原子の3重結合の共有結合半径は123pmであり、窒素原子の単結合の共有結合半径の71pmであり、酸素原子の単結合の共有結合半径は63pmである。このため、配位子が金イオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、還元雰囲気の熱処理では、最初に配位結合部が分断され、金と無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後に金が析出する。
このような無機金化合物からなる金錯体として、塩素イオンClが配位子となって金イオンに配位結合するテトラクロロ金イオン[AuClを有する金錯体と、シアン化物イオンCNが配位子となって金イオンに配位結合するジシアノ金イオン[Au(CN)を有する金錯体は、配位子が最も低分子量であるため、他の金錯イオンを有する金錯体に比べて合成が容易であり、最も安価に製造できる。こうした金錯体は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の低い温度で無機物の気化が完了して金が析出する。また、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような金錯体として、例えば、テトラクロロ金(III)酸水素(四水和物)H[AuCl]・4HOがある。
また、熱分解で銅を析出する無機銅化合物からなる銅錯体として、アンモニアNHが配位子となって銅イオンに配位結合するテトラアンミン銅イオン[Cu(NH2+やヘキサアンミン銅イオン[Cu(NH2+を有する銅錯体や、塩素イオンClが配位子になって銅イオンに配位結合するテトラクロロ銅イオン[CuCl2−を有する銅錯体は、配位子が最も低分子量であるため、他の銅錯イオンを有する錯体に比べて合成が容易であり、安価な製造費用で製造できる。また、こうした銅錯体は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の比較的低い温度で熱分解が完了する。さらに、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような銅錯体として、例えば、テトラアンミン銅(II)硝酸塩[Cu(NH](NOやヘキサアンミン銅(II)硫酸塩[Cu(NH]SOがある。
さらに、熱分解でニッケルを析出する無機ニッケル化合物からなるニッケル錯体として、アンモニアNHが配位子となってニッケルイオンに配位結合するヘキサアンミンニッケルイオン[Ni(NH2+からなるニッケル錯体は、配位子が低分子量であるため、他のニッケル錯イオンを有する錯体に比べて合成が容易であり、最も安価に製造できる。こうした分子量が小さい配位子からなるニッケル錯体は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の低い温度で熱分解が完了する。また、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このようなニッケル錯錯体として、例えば、ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物[Ni(NH]Clがある。
以上に説明したように、無機物のイオンないしは分子が配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機金属化合物の錯体は、無機物が低分子量であるため、熱分解温度が最も低く、合成が容易で最も安価な金属錯イオンを有する錯体である。
実施形態2
本実施形態は、12段落に記載したカルボン酸金属化合物に関わる実施形態である。20段落で説明したように、金属化合物は、第一にアルコールに分散し、第二に熱分解で金属を析出する2つの性質を兼備する。ここでは、金属をアルミニウムとし、2つの性質を兼備するアルミニウム化合物として、カルボン酸アルミニウム化合物が第二の金属化合物として適切であることを導く。
最初に、アルコールに分散するアルミニウム化合物を説明する。塩化アルミニウムは水に溶け、水酸化アルミニウムと塩酸に加水分解する。また、水酸化アルミニウムはアルコールに分散しない。さらに、硫酸アルミニウムはアルコールに溶解し、アルミニウムイオンが溶出し、多くのアルミニウムイオンがアルミニウムの析出に参加できない。また、酸化アルミニウムはアルコールに分散しない。このため、このような無機アルミニウム化合物は、アルコールに分散する性質を持たない。
いっぽう、20段落で説明した分子量が小さい無機物の分子ないしはイオンが、アルミニウムイオンに配位結合するアルミニウム錯イオンを有する錯体として、水HOが配位子となってアルミニウムイオンに配位結合するアクアアルミニウム錯イオンからなる錯体があるが、熱分解で酸化アルミニウムを析出するため、有機アルミニウム化合物が望ましい。
有機アルミニウム化合物は、アルミニウムを析出する。有機アルミニウム化合物からアルミニウムが生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。さらに、合成が容易でれば、有機アルミニウム化合物が安価に製造できる。こうした性質を兼備する有機アルミニウム化合物に、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンがアルミニウムイオンに共有結合するカルボン酸アルミニウム化合物がある。
つまり、カルボン酸アルミニウム化合物を構成するイオンの中で、最も大きいイオンはアルミニウムイオンである。従って、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、アルミニウムイオンに共有結合すれば、アルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの距離が、イオン同士の距離の中で最も長い。こうしたカルボン酸アルミニウム化合物を大気雰囲気で昇温させると、カルボン酸アルミニウム化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボン酸とアルミニウムとに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にアルミニウムが析出する。なお、還元雰囲気でのカルボン酸アルミニウム化合物の熱分解は、大気雰囲気での熱分解より高温側で進むため、大気雰囲気での熱分解のほうが熱処理費用は安価で済む。また、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物が熱分解すると、酸化アルミニウムが析出する。
これに対し、カルボン酸アルミニウム化合物の中で、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となってアルミニウムイオンに近づいて配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、アルミニウムイオンと酸素イオンとの距離が短くなり、反対に、酸素イオンがアルミニウムイオンと反対側で結合するイオンとの距離が最も長くなる。このような分子構造の特徴を持つカルボン酸アルミニウム化合物の熱分解反応は、酸素イオンがアルミニウムイオンと反対側で結合するイオンとの結合部が最初に分断され、この結果、酸化アルミニウムが析出する。
さらに、カルボン酸アルミニウム化合物は合成が容易で、最も安価な有機アルミニウム化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸アルミニウムなどの無機アルミニウム化合物と反応させると、カルボン酸アルミニウム化合物が生成される。このため、有機アルミニウム化合物の中で最も安価である。
カルボン酸アルミニウム化合物の組成式はAl(COOR)で表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸アルミニウム化合物を構成する物質の中で、組成式の中央に位置するアルミニウムイオンAl3+が最も大きい。従って、アルミニウムイオンAl3+とカルボキシル基を構成する酸素イオンOとが共有結合する場合は、アルミニウムイオンAl3+と酸素イオンOとの距離が最大になる。この理由は、アルミニウム原子の3重結合における共有結合半径は111pmであり、酸素原子の2重結合における共有結合半径は57pmであり、炭素原子の2重結合における共有結合半径は67pmであることによる。このため、このような分子構造の特徴を持つカルボン酸アルミニウム化合物は、カルボン酸の沸点を超えると、結合距離が最も長いアルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、アルミニウムとカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にアルミニウムが析出する。こうしたカルボン酸アルミニウム化合物として、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウムなどがある。このようなカルボン酸アルミニウム化合物の多くは、金属石鹸として市販されている安価な工業用薬品である。
さらに、飽和脂肪酸で構成されるカルボン酸アルミニウム化合物について、飽和脂肪酸の沸点が低ければ、カルボン酸アルミニウム化合物は低い温度で熱分解し、アルミニウムを析出させる熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点が高くなり、飽和脂肪酸の気化熱が大きいため、熱分解温度が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。
また、飽和脂肪酸が分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸である場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点がさらに低くなり、気化熱も小さい。これによって、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物は、さらに低い温度で熱分解温度する。また、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物も極性を持ち、アルコールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸は構造式がCH(CHCH(C)COOHで示され、CHでCH(CHとCとのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、ラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、オクチル酸アルミニウムAl(C15COO)は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了してアルミニウムが析出し、メタノールやn−ブタノールなどに10重量%近く分散する。
また、同様に、銅を析出する原料としてオクチル酸銅Cu(C15COO)が、鉄を析出する原料としてオクチル酸鉄Fe(C15COO)が、ニッケルを析出する原料としてオクチル酸ニッケルNi(C15COO)が、大気雰囲気において290℃で熱分解を析出する。
実施形態3
本実施形態は、14段落に記載したカルボン酸金属化合物に関わる実施形態である。本発明における熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物は、第一にアルコールに分散し、第二に熱分解で金属酸化物を析出する2つの性質を兼備する。ここでは、酸化鉄を析出する鉄化合物として、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、鉄イオンに配位結合したカルボン酸鉄化合物からなる錯体が適切であることを導く。
最初に、アルコールに分散する鉄化合物を説明する。塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)および硫酸鉄(II)はアルコールに溶け、鉄イオンが溶出し、多くの鉄イオンが鉄の析出に参加できない。水酸化鉄(II)はアルコールに分散しない。このため、これら無機鉄化合物は、アルコールに分散する性質を持たない。
いっぽう、20段落で説明した無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、鉄イオンに配位結合する鉄錯イオンとして、テトラクロリド鉄錯イオン[FeClやテトラシアニド鉄錯イオン[Fe(CN)4−、ヘキサシアニド鉄錯イオン[Fe(CN)3−などがあるが、これらの鉄錯イオンからなる錯体は、還元雰囲気で熱分解すると鉄が析出する。このため、有機鉄化合物が望ましい。
なお、酸化鉄は、ウスタイトと呼ばれる酸化鉄(II)FeOと、マグネタイトと呼ばれる四酸化三鉄Feと、マグヘマイトと呼ばれる酸化鉄(III)Feのγ相であるγ−Feと、ヘマタイトと呼ばれる酸化鉄(III)Feのアルファ相であるα−Feとが存在する。マグネタイトFeは、二価の鉄イオンFe2+と三価の鉄イオンFe3+とが共存し、有機鉄化合物の熱分解によってマグネタイトは生成できない。また、マグヘマイトγ−Feは、立法晶系の酸化鉄(III)Feから構成され、有機鉄化合物の熱分解によってマグヘマイトは生成できない。さらに、ヘマタイトα−Feは、三方晶系の酸化鉄(III)Feから構成され、有機鉄化合物の熱分解によってヘマタイトは生成できない。
いっぽう、酸化鉄(II)FeOは立法晶系の結晶構造を持つため、酸化鉄(II)FeOを酸化させると、同じ立法晶系の結晶構造を持つマグネタイトFeとマグヘマイトγ−Feとが生成できる。つまり、酸化鉄(II)FeOを大気中で昇温すると、酸化鉄(II)FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+の一部が酸化して三価の鉄イオンFe3+になり、FeO・Feの組成式で表さられるマグネタイトFeになる。このマグネタイトFeは、強磁性で導電性の酸化物であり、フェライトの原料としてよく知られている。さらに大気中で昇温すると、2価の鉄イオンFe2+の全てが酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、酸化鉄(III)Feのγ相であるマグヘマイトγ‐Feになる。このマグヘマイトγ‐Feは、強磁性で絶縁性の酸化物であり、磁気記録媒体の原料としてよく知られている。このように、酸化鉄(II)FeOを酸化させると、同一の結晶構造である機能性材料のマグネタイトとマグヘマイトとが得られるため、熱分解で酸化鉄(II)FeOを析出する有機鉄化合物が望ましい。
有機鉄化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質は鉄イオンFe2+ないしはFe3+である。いっぽう、鉄イオンFe3+とカルボキシル基を構成する酸素イオンOとが共有結合するカルボン酸鉄化合物、例えば、オクチル酸鉄は、鉄イオンFe3+と酸素イオンとの距離が最大になるため、21段落で説明したように熱分解によって鉄を析出する。従って、熱分解によって酸化鉄(II)FeOを析出する有機鉄化合物は、鉄イオンFe2+と結合する酸素イオンOとの距離が短く、酸素イオンOが鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと結合する距離が長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。つまり、有機鉄化合物の熱分解が始まると、酸素イオンOが鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、鉄イオンFe2+と結合した酸素イオンO、つまり、酸化鉄(II)FeOと有機酸とに分解する。このような分子構造の特徴を持つ有機鉄化合物として、カルボキシル基を構成する酸素イオンOが配位子になって鉄イオンFe2+に近づいて配位結合するカルボン酸鉄化合物からなる錯体がある。
また、有機金属化合物の中でカルボン酸金属化合物は、21段落で説明したように合成が容易で、有機酸の沸点が低いため熱分解温度が比較的低い。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物からなる錯体は、安価な工業用薬品であり、熱処理費用も安価で済む。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などが挙げられる。このようなカルボン酸金属化合物は、カルボン酸の分子量と、配位結合するカルボン酸の数とに応じて熱分解反応が進む。なお、酢酸の沸点は118℃で、カプリル酸の沸点は237℃で、安息香酸の沸点は249℃である。また、ナフテン酸は5員環をもつ飽和脂肪酸の混合物で,一般式ではC2n−1COOHで示され、主成分は沸点が268℃で、分子量が170のC17COOHからなる。いっぽう、カルボン酸鉄化合物においては、酢酸鉄Fe(CHCOとカプリル酸鉄Fe(C15COと安息香酸鉄Fe(CCOとは、酸素イオンが鉄イオンFe2+に近づいて配位結合して、複核錯塩を形成するが、熱分解の途上においては不安定な物質であるため取り扱いが難しい。従って、酸化鉄FeOを析出するカルボン酸鉄としては、ナフテン酸鉄Fe(C10COが望ましい。さらに、ナフテン酸鉄はメタノールやn−ブタノールに対して10重量%近くまで分散する。
なお、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物は有機金属化合物からなる錯体である。一方、20段落で説明した錯体は、無機物の分子ないしはイオンが配位子となって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体である。また、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、カルボン酸に比べて分子量が小さいため、無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度は、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より低い。
実施形態4
本実施形態は、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二に融点が20℃より低く、第三に無機金属化合物からなる錯体と2種類のカルボン酸金属化合物とからなる少なくとも一種類の金属化合物が熱分解する温度より沸点が高い、これら3つの性質を兼備する有機化合物に関する実施形態である。これら3つの性質を兼備する有機化合物は、3種類の金属化合物の少なくとも一種類の金属化合物が、金属ないしは金属酸化物のナノ粒子の原料となり、有機化合物にナノ粒子が分散される。これら3つの性質を兼備する有機化合物は、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類のいずれかに属する。なお、無機金属化合物からなる錯体は180℃〜220℃で熱分解し、金属を析出するカルボン酸金属化合物は290℃〜430℃で熱分解し、金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物は180℃〜340℃で熱分解する。従って、沸点が220℃より高い有機化合物であれば、無機金属化合物からなる錯体と金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物とを、ナノ粒子の原料として用いることができる。また、沸点が290℃より高い有機化合物であれば、金属ないしは金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物を、ナノ粒子の原料として用いることができる。さらに、沸点が430℃より高い有機化合物であれば、全てのカルボン酸金属化合物をナノ粒子の原料として用いることができる。
最初に、カルボン酸エステル類に属する有機化合物ついて説明する。カルボン酸エステル類は、飽和カルボン酸からなる第一のエステル類と、不飽和カルボン酸からなる第二のエステル類と、芳香族カルボン酸からなる第三のエステル類とからなる、3種類のエステル類に分けられる。
第一のエステル類である飽和カルボン酸からなるエステル類の中では、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が220℃より高いカルボン酸エステルは、カプロン酸ブチルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、カプロン酸ブチルの沸点は207℃であり、カプロン酸プロピルの沸点は253℃である。
また、飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が290℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、ミリスチン酸エチル以上の分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、ミリスチン酸エチルの沸点は295℃である。
さらに、飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解ないしは混和し、融点が20℃より低く、沸点が430℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、ステアリン酸オクチル以上の分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、ステアリン酸オクチルの沸点は432℃である。
第二のエステル類である不飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が220℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、メタクリル酸プロピルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、メタクリル酸プロピルの沸点は141℃で、メタクリル酸オクチルの沸点は235℃である。
また、不飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が290℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、メタクリル酸フェニルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、メタクリル酸フェニルの沸点は249℃で、オレイン酸メチルの沸点は351℃である。
さらに、不飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解ないしは混和し、融点が20℃より低く、沸点が430℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、オレイン酸プロピルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、オレイン酸プロピルの沸点は401℃で、オレイン酸オクチルの沸点は469℃である。
第三のエステル類である芳香族カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が220℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、安息香酸エチルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、安息香酸エチルの沸点は212℃で、安息香酸プロピルの沸点は230℃である。
また、芳香族カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解ないしは混和し、融点が20℃より低く、沸点が290℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、フタル酸ジエチルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、フタル酸ジエチルの沸点は295℃で、フタル酸ジブチルの沸点は340℃である。
さらに、芳香族カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解ないしは混和し、融点が20℃より低く、沸点が430℃より高い性質を持つカルボン酸エステルはなく、フタル酸ジイソデシルの沸点が420℃で最も高い。
以上に説明したように、カルボン酸エステル類に属する多くの有機化合物が、23段落で説明した3つの性質を兼備し、ナノ粒子を分散する媒体になる。
次に、グリコール類に属する有機化合物ついて説明する。グリコール類はメタノールに溶解ないしは混和し、融点が20℃より低い液状モノマーであり、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールからなる6種類に分かれる。
エチレングリコールは、沸点が197℃の液状モノマーである。また、ジエチレングリコールは、沸点が244℃の液状モノマーである。プロピレングリコールは、沸点が188℃の液状モノマーである。さらに、ジプロピレングリコールは、沸点が232℃の液状モノマーである。また、トリプロピレングリコールは、沸点が265℃の液状モノマーである。
以上に説明したように、グリコール類に属する有機化合物に、23段落で説明した3つの性質を兼備する有機化合物があり、ナノ粒子を分散する媒体になる。
最後に、グリコールエーテルについて説明する。グリコールエーテル類は、エチレングリコール系エーテルと、プロピレングリコール系エーテルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの各々の末端の水素をアルキル基で置換したジアルキルグリコールエーテルとの3種類がある。
最初に、エチレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が220℃より高いグリコールエーテルは、沸点が229℃の2エチルヘキシルグリコールと、沸点が231℃の部ジルジグリコールと、沸点が245℃のフェニルグリコールと、沸点が249℃のメチルトリグリコールと、沸点が256℃のベンジルグリコールと、沸点が259℃のヘキシルジグリコールと、沸点が271℃のブチルトリグリコールと、沸点が272℃の2エチルヘキシルグリコールと、沸点が283℃のフェニルジグリコールと、沸点が295℃のメチルポリグリコールである。
また、エチレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が290℃より高い有機化合物は、沸点が302℃のベンジルジグリコールである。
次に、プロピレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が220℃より高い有機化合物は、沸点が231℃のブチルプロピレンジグリコールと、沸点が242℃のメチルプロピレンジグリコールと、沸点が243℃のフェニルプロピレングリコールと、沸点が最も高い274℃のブチルプロピレントリグリコールとがある。
さらに、ジアルキルグリコールエーテルの中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が220℃より高いものは、沸点が255℃のジブチルジグリコールのみがある。
以上に説明したように、グリコールエーテル類に属する有機化合物に、23段落で説明した3つの性質を兼備する有機化合物があり、ナノ粒子を分散する媒体になる。
以上に説明したように、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類のいずれか属する有機化合物に、23段落で説明した3つの性質を兼備する有機化合物が存在する。これらの有機化合物は、いずれも汎用的な工業用薬品である。
本実施例は、熱分解で金属を析出する金属化合物として、21段落で説明したカルボン酸金属化合物を用い、金属のナノ粒子を製造する事例であり、金属のナノ粒子として、鉄のナノ粒子を製造する実施例である。なお、21段落で説明したように、熱分解で金属を析出するカルボン酸金属化合物として、様々な金属元素からなるオクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物が存在するため、鉄のナノ粒子に限らず、様々な金属のナノ粒子が製造できる。
鉄の原料として熱分解が完了する温度が290℃であるオクチル酸鉄Fe(C15COO)(例えば、日本化学産業株式会社の製品)を用い、有機化合物として沸点が337℃のフタル酸ジブチルC(CCOO)(例えば、昭和化学株式会社の製品)を用いた。なお、オクチル酸鉄は、金属石鹸として用いられる汎用的な工業用薬品である。またフタル酸ジブチルは、接着剤や染料の原料として、また、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル、メタアクリル樹脂、セルロースアセテート、ポリスチレン、メタクリル樹脂などのプラスチック樹脂の可塑剤として用いられる汎用的な工業用薬品で、融点が−35℃の液体で、メタノールに溶解する。また、オクチル酸鉄の微細結晶の集まりを個々の微細結晶に分離し、フタル酸ジブチルに分散させた第三の懸濁体を作成するホモジナイザー装置は、操作が簡便な超音波方式のホモジナイザー(例えば、日本エマソン株式会社ブランソン事業部のソニフィアー250A)を用いた。なお、鉄のナノ粒子は有害物質を分解して無害化する性質を持つため、汚染された水や土壌の浄化やダイオキシンの分解などに適応できる。また、燃料電池セルや電気分解電極に、また、軟磁性微粒子、各種合金微粒子の原料として用いられる。
最初に、オクチル酸鉄の48.6g(0.1モルに相当する)を0.5リットルのメタノールに分散する。この分散液に、フタル酸ジブチル83.5g(0.3モルに相当する)を投入して攪拌する。この混合液の一部を容器に充填し、容器を65℃に昇温してメタノールを気化させ、第一の懸濁体を作成した。さらに、容器にホモジナイザー装置のホーンを投入し、20kHzの超音波信号を第一の懸濁体に加え、第二の懸濁体を作成した。さらに、大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に容器を1分間入れ、オクチル酸鉄を熱分解し、第三の懸濁体を作成した。この後、容器を真空チャンバーに入れ、真空ポンプで0.01kPaまでチャンバー内の圧力を低下させ、フタル酸ジブチルを気化させ、気化したフタル酸ジブチルを回収し、この後、チャンバーを大気に戻し、容器内に析出した微粒子の集まりを回収した。
次に、第三の懸濁体と回収した試料について、電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。電子顕微鏡による観察は次の3つの手法を用いた。
最初に、第三の懸濁体と試料とからの反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行なった。40nm〜60nmの大きさの粒状の微粒子が、第三の懸濁体では個々の微粒子が分散し、試料では吸着して微粒子の集まりになっていた。
次に、第三の懸濁体と試料とからの反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって粒状の微粒子の材質を観察した。濃淡が認められず、粒状微粒子の集まりは同一の元素から構成されていることが分かった。
さらに、粒状の微粒子について、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状の微粒子を構成する元素を分析した。鉄原子のみが存在することが確認できた。
これらの結果から次のことが分かった。オクチル酸鉄の微細結晶の集まりを個々の微細結晶に分離させ、フタル酸ジブチルに個々の微細結晶を分散させた第二の懸濁体を熱処理すると、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の鉄のナノ粒子が、独立してフタル酸ジブチルに析出し、個々の鉄のナノ粒子がフタル酸ジブチルに分散した第三の懸濁体を形成した。さらに、鉄のナノ粒子が必要になった際に、フタル酸ジブチルを気化させると鉄のナノ粒子の集まりが析出し、強磁性の性質によって磁気吸着した鉄のナノ粒子の集まりが得られた。図1に、鉄のナノ粒子1の集まりを拡大して模式的に図示した図示した。
以上に説明した鉄のナノ粒子を製造する実施例は一事例に過ぎない。つまり、21段落で説明したように、オクチル酸金属化合物はオクチル酸鉄に限らず、様々な金属のオクチル酸金属化合物が存在するため、様々な金属のナノ粒子が本実施例に準じて製造できる。
本実施例は、熱分解で金属を析出する金属化合物として、20段落で説明した無機物のイオンないしは分子が配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を用い、金属のナノ粒子を製造する事例であり、金属のナノ粒子として、銀のナノ粒子を製造する実施例である。なお、20段落で説明したように、無機物のイオンないしは分子が配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体は、様々な金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体が存在するため、銀のナノ粒子に限らず、様々な金属のナノ粒子が製造できる。
銀の原料として、2個のアンミンが銀イオンに配位結合した金属錯体であるジアンミン銀(I)クロライド[Ag(NH]Cl(例えば、田中貴金属販売株式会社の製品)を用いた。また、有機化合物として、沸点が295℃のフタル酸ジエチルC(CCOO)(例えば、昭和化学株式会社の製品)を用いた。なお、ジアンミン銀(I)クロライドは、20段落で説明したように、アンモニアNHが配位子となって銀イオンに配位結合するジアンミン銀錯イオン[Ag(NH]−を有する塩化物からなる錯体で、他の銀錯イオンを有する錯体に比べて合成が最も容易であり、最も安価に製造できる。また、フタル酸ジエチルは、酢酸セルロース、メタクリル酸樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレンに相溶性があるため、これらプラスチック樹脂の可塑剤として用いられる汎用的な工業用薬品である。なお、フタル酸ジエチルは、融点が−40℃の液体で、メタノールに溶解する。また、銀のナノ粒子は、導電性ペースト材料として、また、積層セラミックコンデンサ、プリント配線板、半導体、蛍光表示管、プラズマディスプレイパネルに使用され、様々な抗菌材料として用いられている。
最初に、ジアンミン銀(I)クロライドの17.7g(0.1モルに相当する)を0.5リットルのメタノールに分散する。この分散液にフタル酸ジエチル66.7g(0.3モルに相当する)を投入して攪拌する。この混合液の一部を容器に充填し、容器を65℃に昇温してメタノールを気化させ、第一の懸濁体を作成した。さらに、容器にホモジナイザー装置のホーンを投入し、20kHzの超音波信号を第一の懸濁体に加え、第二の懸濁体を作成した。さらに、容器をアンモニアガス雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、ジアンミン銀(I)クロライドを熱分解し、第三の懸濁体を作成した。この後、容器を真空チャンバーに入れ、真空ポンプで0.2Paまでチャンバー内の圧力を低下させ、フタル酸ジエチルを気化させ、気化したフタル酸ジエチルを回収し、この後、チャンバーを大気に戻し、容器内に析出した微粒子の集まりを回収した。
実施例1と同様に、第三の懸濁体と回収した試料を電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。この結果、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の銀のナノ粒子が、独立してフタル酸ジエチルに析出し、個々の銀のナノ粒子がフタル酸ジエチルに分散した第三の懸濁体を形成していた。さらに、銀のナノ粒子が必要になった際に、フタル酸ジエチルを気化させると、銀のナノ粒子の集まりが析出し、この銀のナノ粒子は、互い金属結合せず、凝集もしなかった。この結果は、実施例1の鉄のナノ粒子と同様であるため図示しない。
以上に説明した銀のナノ粒子を製造する実施例は一事例に過ぎない。つまり、20段落で説明したように、無機物のイオンないしは分子が配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体は、様々な金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体が存在するため、銀のナノ粒子に限らず、様々な金属のナノ粒子が製造できる。
本実施例は、熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物として、22段落で説明したカルボン酸金属化合物を用い、金属酸化物のナノ粒子を製造する第一の事例であり、金属酸化物のナノ粒子として、酸化鉄の一種であるマグヘマイトγ−Feのナノ粒子を製造する実施例である。なお、22段落で説明したように、熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物として、様々な金属元素からなる酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ないしはナフテン酸金属化合物が存在するため、酸化鉄のナノ粒子に限らず、様々な金属酸化物のナノ粒子が製造できる。
マグヘマイトγ−Feは、22段落で説明したように、ナフテン酸鉄Fe(C10COを熱分解して酸化鉄(II)FeOを析出させ、さらに、酸化鉄(II)FeOを大気中で昇温して、酸化鉄(II)FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+の全てを三価の鉄イオンFe3+に酸化させると、酸化鉄(III)Feのγ相であるマグヘマイトγ‐Feになる。なお、ナフテン酸鉄(例えば東栄化工株式会社の製品)は、塗料、印刷インキの乾燥促進剤として用いられている金属石鹸の一種である。また、有機化合物として、沸点が415℃で融点が−26.5℃のオレイン酸ブチルCH(CHCH:CH(CHCOOC(例えば、和光純薬工業株式会社の製品)を用いた。なお、オレイン酸ブチルはプラスチック材料の可塑剤や化粧品の原料として用いられている汎用的な工業用薬品である。また、マグヘマイトは強磁性で電気絶縁性の性質を持ち、モース硬度が5.5の硬い物質である。このため、マグヘマイトのナノ粒子は、各種磁性材料に対する絶縁被膜の形成や磁気記録材料として用いることができる。
最初に、ナフテン酸鉄の39.8g(0.1モルに相当する)を0.5リットルのメタノールに分散する。この分散液にオレイン酸ブチル101.6g(0.3モルに相当する)を投入して攪拌する。この混合液の一部を容器に充填し、容器を65℃に昇温してメタノールを気化させ、第一の懸濁体を作成した。さらに、容器にホモジナイザー装置のホーンを投入し、20kHzの超音波信号を第一の懸濁体に加え、第二の懸濁体を作成した。さらに、容器を340℃の大気雰囲気の熱処理炉に1分間放置し、ナフテン酸鉄(II)を熱分解した。この後、熱処理炉の温度を340℃から1℃/min.の昇温速度で390℃まで昇温し、390℃に容器を30分間放置し、第三の懸濁体を作成した。さらに、熱処理炉の温度を420℃まで昇温し、オレイン酸ブチルを気化させ、気化したオレイン酸ブチルを回収し、この後、容器内に析出した微粒子の集まりを回収した。
実施例1と同様に、第三の懸濁体と回収した試料とを電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。40nm〜60nmの大きさの粒状の微粒子が、第三の懸濁体では個々の微粒子が分散し、試料では吸着して微粒子の集まりになっていた。
次に、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって粒状微粒子を構成する元素の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。鉄原子と酸素原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化鉄からなる粒状のナノ粒子であることが分かった。さらに、極低加速電圧SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、結晶構造の解析を行なった。この結果から、粒状のナノ粒子が酸化鉄(III)のγ相であるマグヘマイトγ−Feであることが分かった。
以上の結果から次のことが分かった。ナフテン酸鉄の微細結晶の集まりを個々の微細結晶に分離させ、オレイン酸ブチルに個々の微細結晶を分散させた第二の懸濁体を熱処理すると、40nm〜60nmの大きさからなる粒状のマグヘマイトのナノ粒子が、独立してオレイン酸ブチルに析出し、個々のマグヘマイトのナノ粒子がオレイン酸ブチルに分散した第三の懸濁体を形成した。さらに、マグヘマイトのナノ粒子が必要になった際に、オレイン酸ブチルを気化させるとマグヘマイトのナノ粒子の集まりが析出し、強磁性の性質によって磁気吸着したマグヘマイトのナノ粒子の集まりが得られた。この結果は、実施例1の鉄のナノ粒子と同様であるため図示しない。
以上に説明した酸化鉄(II)FeOのナノ粒子を酸化させてマグヘマイトのナノ粒子を製造する実施例は、一事例に過ぎない。つまり、22段落で説明したように、熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物として、様々な金属元素からなる酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ないしはナフテン酸金属化合物が存在するため、酸化鉄(II)FeOに限らず、様々な金属酸化物のナノ粒子が製造できる。
本実施例は、熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物として、22段落で説明したカルボン酸金属化合物を用い、金属酸化物のナノ粒子を製造する第二の事例であり、金属酸化物のナノ粒子として、酸化チタン(IV)TiOのナノ粒子を製造する実施例である。
酸化チタンの原料としてテトラ安息香酸チタンTi(CCOO)(CAS番号24742‐16‐3、輸入品)を用いた。テトラ安息香酸チタンは、安息香酸亜鉛、安息香酸銅、安息香酸ニッケル、安息香酸アルミニウムのように、容易に合成できる安息香酸金属塩である。また、有機化合物として、沸点が351℃で融点が−20℃のオレイン酸メチルCH(CHCH:CH(CH2)(例えば、和光純薬工業株式会社の製品)を用いた。なお、オレイン酸メチルは繊維用油剤や合成樹脂用滑剤として用いられている汎用的な工業用薬品である。酸化チタン(IV)のナノ粒子は、食品、衣料品、化粧品などの着色剤の材料として、また、光触媒やオフセット印刷の感光体の材料として用いられる。
最初に、テトラ安息香酸チタンの53.2g(0.1モルに相当する)を0.5リットルのメタノールに分散する。この分散液にオレイン酸メチルの89g(0.3モルに相当する)を投入して攪拌する。この混合液の一部を容器に充填し、容器を65℃に昇温してメタノールを気化させ、第一の懸濁体を作成した。さらに、容器にホモジナイザー装置のホーンを投入し、20kHzの超音波信号を第一の懸濁体に加え、第二の懸濁体を作成した。さらに、容器を320℃の大気雰囲気の熱処理炉に1分間放置し、テトラ安息香酸チタンを熱分解し、第三の懸濁体を作成した。さらに、熱処理炉の温度を355℃まで昇温し、オレイン酸メチルを気化させ、気化したオレイン酸ブチルを回収し、容器内に析出した微粒子の集まりを回収した。
実施例1と同様に、第三の懸濁体と回収した試料とを電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。40nm〜60nmの大きさの粒状の微粒子が、第三の懸濁体では個々の微粒子が分散し、試料でも微粒子は凝集せずに分散する微粒子の集まりになっていた。
次に、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって粒状微粒子を構成する元素の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状のナノ粒子を構成する元素を分析した。チタン原子と酸素原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化チタンからなる粒状のナノ粒子であることが分かった。さらに、極低加速電圧SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、結晶構造の解析を行なった。この結果から、粒状のナノ粒子が正方晶のアナターゼ型の酸化チタン(IV)TiOであることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。テトラ安息香酸チタンの微細結晶の集まりを
個々の微細結晶に分離させ、オレイン酸メチルに個々の微細結晶を分散させた第二の懸濁体を熱処理すると、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の酸化チタンのナノ粒子が、独立してオレイン酸メチルに析出し、個々の酸化チタンのナノ粒子がオレイン酸メチルに分散した第三の懸濁体を形成した。さらに、酸化チタンのナノ粒子が必要になった際に、オレイン酸メチルを気化させると、酸化チタンのナノ粒子の集まりが析出し、このナノ粒子は、互い金属結合せず、凝集もしなかった。この結果は、実施例1の鉄のナノ粒子と同様であるため図示しない。
以上に説明した酸化チタン(IV)TiOのナノ粒子を製造する実施例は、一事例に過ぎない。つまり、22段落で説明したように、熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物として、様々な金属元素からなる酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ないしはナフテン酸金属化合物が存在するため、酸化チタン(IV)TiOのナノ粒子に限らず、様々な金属酸化物のナノ粒子が製造できる。
以上に説明した様々な実施例は一部の事例に過ぎない。つまり、20段落で説明した無機物のイオンないしは分子が配位子になって、様々な金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を金属のナノ粒子の原料として用い、ないしは、21段落で説明した様々な金属元素からなるオクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ないしはステアリン酸金属化合物を金属のナノ粒子の原料として用い、ないしは、22段落で説明した様々な金属元素からなる酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ないしはナフテン酸金属化合物を金属酸化物のナノ粒子の原料として用い、さらに、これら金属化合物の熱分解温度より沸点が高い24段落〜26段落で説明した有機化合物を用いることで、様々な金属ないしは様々な金属酸化物からなる個々のナノ粒子が、有機化合物に分散された懸濁液が製造できる。この懸濁液から有機化合物を気化させるだけで、不純物を含まない様々な金属ないしは様々な金属酸化物からなる個々のナノ粒子の集まりが凝集せずに析出し、用いる金属化合物の量の制約がないため、製造できるナノ粒子の量の制約がない。従って、本発明は、著しく安価な製造費用で、不純物を含まない様々な金属ないしは様々な金属酸化物からなるナノ粒子の集まりを凝集させずに析出させることができる技術であり、また、製造できるナノ粒子の量の制約がない技術である。
1 鉄のナノ粒子

Claims (6)

  1. 金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体の製造は、
    熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、融点が20℃より低い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解が完了する温度より高い第三の性質とを兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して混合液を作成し、この後、前記混合液から前記アルコールを気化させ、前記金属化合物の微細結晶の集まりが前記有機化合物に析出した第一の懸濁体を作成し、さらに、前記第一の懸濁体をホモジナイザー装置で処理し、前記金属化合物の微細結晶の集まりを個々の微細結晶に分離し、該分離された個々の微細結晶が前記有機化合物に分散された第二の懸濁体を作成し、この後、前記第二の懸濁体を熱処理して前記金属化合物を熱分解する、これによって、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が前記有機化合物に分散された懸濁体が製造されることを特徴とする、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体の製造。
  2. 請求項1に記載した熱分解で金属を析出する第一の金属化合物が、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体であることを特徴とする、請求項1に記載した熱分解で金属を析出する第一の金属化合物。
  3. 請求項1に記載した熱分解で金属を析出する第二の金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物であることを特徴とする、請求項1に記載した熱分解で金属を析出する第二の金属化合物。
  4. 請求項1に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物からなる錯体であることを特徴とする、請求項1に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物。
  5. 請求項1に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類ないしはグリコール類ないしはグリコールエーテル類のいずれかに属する1種類の有機化合物であることを特徴とする、請求項1に記載した有機化合物。
  6. 金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体を製造する製造方法は、
    熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、融点が20℃より低い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解が完了する温度より高い第三の性質とを兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して混合液を作成する第二の工程と、前記混合液から前記アルコールを気化させ、前記有機化合物に前記金属化合物の微細結晶の集まりが析出した第一の懸濁体を作成する第三の工程と、前記第一の懸濁体をホモジナイザー装置で処理し、前記金属化合物の個々の微細結晶が前記有機化合物に分散された第二の懸濁体を作成する第四の工程と、前記第二の懸濁体を熱処理して前記金属化合物を熱分解する第五の工程とからなり、これら5つの工程を連続して実施する製造方法が、金属ないしは金属酸化物からなる個々のナノ粒子が前記有機化合物に分散された懸濁体を製造する製造方法であることを特徴とする、金属ないしは金属酸化物からなるナノ粒子が有機化合物に分散された懸濁体を製造する製造方法。
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