JP6228782B2 - 発泡金属の製造方法 - Google Patents
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Description
鋳造法は、例えば、母材の純アルミニウムの溶湯にカルシウム等を添加して増粘させ、二水素化チタン等の発泡剤を添加して発泡させる方法である(例えば、特許文献1を参照)。
プリカーサ法では、プリカーサを作製した後に、プリカーサを加熱して、発泡剤を分解してガスを発生させ、このガスの発生により軟化した母材を膨張させる。プリカーサ法の具体的な方法としては、様々な方法が提案されており、例えば、粉末冶金法や圧延接合法がある。粉末冶金法は、例えば、アルミニウム合金等の母材の粉末と、発泡剤の粉末とを均一になるまで混合して、混合物を押し出し成型する。その後、赤外線炉等で加熱して発泡剤を発泡させる(例えば、特許文献2、3を参照)。
圧延接合法は、母材の板材を複数用意して、板材に必要に応じて表面処理を施した後、板材の間に発泡剤を挟んで圧延し、複数の板材を接合する。この圧延の工程を繰り返して母材中に発泡剤を均一に分散させ、発泡金属前駆体とする(例えば特許文献4を参照)。
また、鋳造法では、発泡剤を溶解した金属に均一に分散させることが難しいため、気泡の大きさや分布等を制御することが難しい。そのため、必要以上に気泡が大きくなり、必要な強度が得られないことによって、発泡金属の用途が限定される。
さらに、粉末冶金法では、気泡の形態の制御が容易になる利点はあるが、原料である母材の粉末が板材と比較して高価であり、さらに、プリカーサを製造する工程が複雑で製作時間がかかるため生産性が低く、高価な発泡金属になる。
また、圧延接合法は、圧延によって板材を接合するので、焼鈍や接合面の表面処理等の前処理が必要であること、圧延の前後で熱処理を行うのでエネルギー消費が大きいこと、発泡剤を均一に分散させるためには圧延を多数回繰り返す必要があること、圧延を繰り返すごとに圧延材を切断する必要があること等により、生産性がさらに低く、発泡金属の製作費がさらに高くなる。
以上に説明したように、発泡金属は、様々な可能性を秘めた発展途上にある材料であるが、製造原理からもたらされる種々の問題点が、新たな分野の開拓の障害になっている。
本発明は、前記した5つの要件を満たす全く新たな製法であり、従来の製法とは製造原理が異なるため、従来技術における原理的な問題点を一切持たない。
熱分解で磁性を有する金属が析出する第一の有機金属化合物と、熱分解で金属を析出する熱分解温度が前記第一の有機金属化合物の熱分解温度より高い第二の有機金属化合物とを、アルコールに分散し、前記2種類の有機金属化合物が前記アルコールに分散された分散液を作成する第一の製造工程と、前記アルコールの沸点より融点が高い第一の性質と、前記第二の有機金属化合物の熱分解温度より気化点が高い第二の性質とを兼備する有機化合物の粉体の集まりを前記分散液に投入し、該有機化合物の粉体の集まりと前記分散液とからなる混合物を作成する第二の製造工程と、前記混合物を容器に充填する第三の製造工程と、前記容器を前記アルコールの沸点に昇温する第四の製造工程と、前記容器を大気雰囲気で前記第一の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する第五の製造工程と、前記容器を大気雰囲気で前記第二の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する第六の製造工程と、前記容器を大気雰囲気で前記有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第七の製造工程とからなる、これら7つの製造工程を連続して実施する製造方法によって、第一の金属と第二の金属とからなる2種類の金属の粒状微粒子の集まりが空孔の殻を形成し、前記第二の金属の粒状微粒子同士の金属結合で前記空孔の殻同士が接合された該空孔の殻の集合体からなる発泡金属が、前記容器の形状を反映した形状として該容器内に製造される、発泡金属の製造方法である。
また、本製造方法は、以下に説明する5つの特徴点に基づく作用効果を発揮する。
第一の特徴点は、2種類の金属の粒状微粒子の集まりからなる多層構造で空孔の殻を構成する。つまり、2種類の有機金属化合物の熱分解で析出した微粒子の集まりで多層構造を形成する。有機金属化合物の熱分解温度が金属ないしは合金の融点より著しく低く、高温の熱処理に係わる問題や、高温の熱処理によってもたらされる制約が一切ない。
第二の特徴点は、有機化合物の粉体の気化によって空孔を形成する。つまり、有機化合物の気化点が、2種類の有機金属化合物の熱分解温度より高いため、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に、2種類の金属の粒状微粒子の集まりで多層構造を形成した後に有機化合物を気化させ、これによって、空孔が形成できる。従って、無機化合物の発泡剤を使用しないため、発泡剤の使用に係わる問題が一切ない。
第三の特徴点は、大気雰囲気で2種類の有機金属化合物の熱分解と有機化合物の気化とを連続して処理することで、発泡金属を製造するため、安価な発泡金属が製造できる。
第四の特徴点は、様々な金属からなる有機金属化合物が容易に合成できるため、様々な金属の粒状微粒子で空孔の殻が形成でき、発泡金属が様々な性質を持つ。
第五の特徴点は、粒状微粒子の集まりからなる多層構造の厚みは、有機化合物の粉体に吸着させた有機金属化合物の量で自在に変えられ、空孔の大きさは、有機化合物の粉体の大きさで自在に変えられ、発泡金属の形状と大きさは、容器の形状で自在に変えられる。
これら第四と第五の特徴点によって、発泡金属に求められる性質と形状とが自在に設計でき、この設計した発泡金属が製造できる。このため、発泡金属が持つ性質が飛躍的に拡大でき、様々な性質を持つ発泡金属を様々な部品に適応拡大が図られる。
以上に説明したように、本発泡金属の製造方法は、発泡金属を製造する原理が従来とは全く異なり、従来技術の原理的な問題点を持たず、6段落で説明した5つの要件を満たす製法である。
ここで、前記した本製造方法における5つの特徴点を、新たな製法における5つの原理による作用効果として改めて説明する。第一の原理は、有機金属化合物の大気雰囲気での熱分解で金属の粒状粒子の集まりが析出し、この金属微粒子の集まりが空孔の殻を構成する。これによって、金属ないしは合金を融解させることが不要になる。この原理は、有機金属化合物の熱分解温度が、金属ないしは合金の融点より著しく低い性質に基づく。
第二の原理は、固体ないしは液体の1モルが気化すると、気体の体積は22.4リットルを占める自然科学上の原則に則る。この原則を有機化合物の粉体ないしは融解した粉体に適応すれば、有機化合物の粉体の気化によって空孔が形成できる。この原理は、有機化合物の気化点が、有機金属化合物の熱分解温度より高い性質に基づく。さらに、有機化合物の粉体の大きさは自在に変えられるため、空孔の大きさが自在に変えられる。
第三の原理は、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の集まりを接近させ、この状態で粉体ないしは融解した粉体の表面に金属粒状微粒子の集まりを析出させると、金属微粒子同士の金属結合を介して、粉体同士ないしは融解した粉体同士が接合される。この原理は、有機金属化合物の熱分解で析出した金属は、不純物を持たない活性状態にあるため、隣接して析出した金属の粒状微粒子同士が接触点で金属結合によって結合し、金属微粒子同士の金属結合を介して、有機化合物の粉体同士ないしは融解した粉体同士が接合する。このため、アルコールの気化によって、有機化合物の微粉の表面に、2種類の有機金属化合物を吸着させる。第一の有機金属化合物は、大気雰囲気での熱分解で磁性を有する第一の金属を析出する。第二の有機金属化合物は、大気雰囲気での熱分解で第二の金属を析出し、熱分解温度は第一の有機金属化合物より高い。このような性質を持つ2種類の有機金属化合物が吸着した有機化合物の微粉の集まりを、第一の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、磁性を有する第一の金属の粒状微粒子の集まりが析出し、金属微粒子同士の金属結合で第一の多層構造を形成して有機化合物の粉体ないしは融解した粉体を覆うとともに、金属粒状微粒子が発する磁気によって粉体同士ないしは融解した粉体同士が接近する。さらに、第二の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、第二の金属の粒状微粒子の集まりが第一の多層構造の表面に析出し、金属微粒子同士が金属結合し、第一の多層構造の表面に第二の多層構造を形成するとともに、粉体ないしは融解した粉体は金属微粒子同士の金属結合を介して接合される。この後、有機化合物の気化点を超える温度に昇温すると、粉体ないしは融解した粉体の体積が爆発的に膨張し、多層構造を形成する金属微粒子同士の結合部の一部が破壊され、有機化合物の気体が発散して空孔になり、第一の多層構造と第二の多層構造で覆われた空孔同士が、第二の多層構造を介して接合された空孔の集まりからなる発泡金属が製造される。従って、大気雰囲気での熱処理を4回連続して実施して発泡金属が製造でき、従来に比べて極めて安価な発泡金属が製造できる。
なお、多層構造を形成する粒状微粒子の集まりは、隣接する金属微粒子同士は点接触に近い接触で金属結合する。一方、粒状微粒子は大きさにばらつきがあるため、粒状微粒子の集まりからなる多層構造は、各層ごとに金属微粒子の結合力が相対的に弱い部分を必ず持つ。このため、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体が気化する際に、気体の体積が爆発的に膨張し、各層ごとの金属微粒子の結合力が相対的に弱い結合部が優先的に破壊され、有機化合物の気体が発散して空孔を形成する。一方、多層構造が薄い場合は、多層構造を形成する金属微粒子同士の結合力が弱くなり、粉体の体積が爆発的に膨張する際に、多層構造がバラバラに分解し、空孔の殻が破壊される。従って、微粒子の集まりからなる多層構造は、空孔の大きさに応じた厚みを持つ必要がある。
また、第一の有機金属化合物の熱分解が有機化合物の微粉の表面で始まると、有機酸と第一の金属(分子クラスターの状態にある)とに分離するが、比重が大きい金属は有機化合物の粉体の表面に留まり、比重が小さい有機酸は金属の上に移動する。従って、有機酸の上に第二の有機金属化合物のごく薄い被膜が存在する。さらに温度が上昇すると、蒸発熱を奪って有機酸の気化が始まる。有機酸は第二の有機金属化合物の被膜を貫通して蒸発し、蒸発が終了すると、金属は熱エネルギーを得て粒状の微粒子を形成して安定化し、熱分解を終える。さらに昇温すると、第二の有機金属化合物の熱分解が始まり、有機酸と第二の金属に分離し、有機酸が気化した後に、第二の金属は、第一の金属からなる粒状微粒子の多層構造の上に、粒状の微粒子を析出して熱分解を終える。こうして、有機化合物の微粉の表面は、第一の金属微粒子と第二の金属微粒子とからなる多層構造で覆われる。
第四の原理は、金属の微粒子の原料が、有機酸と金属との化合物である有機金属化合物である。この原理は、有機化合物の粉体に有機金属化合物を吸着させ、有機化合物を昇温すると、有機化合物の粉体の表面で有機金属化合物の熱分解反応が進むことに基づく。すなわち、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点に至ると、有機金属化合物は有機酸と金属に分解し、さらに昇温すると、有機酸が気化熱を奪って気化し、有機酸の気化が完了した後に、金属の粒状微粒子が有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に析出して熱分解を終える。この際、10−100nmの大きさの幅に収まる金属の粒状微粒子が一斉に析出する。また、有機金属化合物の熱分解温度は400℃以下で、金属や合金の融点より著しく低い。これによって、発泡金属を製造する際に消費する熱エネルギーが著しく低減され、また、高温の熱処理に伴う様々な問題点は発生しない。さらに、有機金属化合物は、様々な金属と有機酸とを反応させて容易に合成されるため、様々な金属微粒子の安価な原料になる。さらに、多層構造の厚みは、有機化合物の粉体に吸着させた有機金属化合物の量で決まる。従って、多層構造の材質と厚みを自在に変えることができ、様々な性質を持つ発泡金属が製造できる。さらに、空孔を形成する有機化合物は、400℃程度の気化点を持てばよい。従って、安価な材料を用いて、金属ないしは合金の融点より著しく温度で発泡金属が製造できるため、安価な費用で発泡金属が製造できる。
第五の原理は、空孔を形成する物質が発泡剤ではなく、有機化合物の粉体を用いる。このため、空孔の大きさは有機化合物の粉体の大きさで決まる。従って、発泡剤を使用することによる問題は一切発生しない。例えば、モル質量が166.13g/モルで、密度が1.522g/cm3の有機化合物が、100μmの球体である場合は、有機化合物の粉体が気化すると0.86mm3の空孔を形成する。この際、粉体は860倍に体積が膨張する。このように、粉体の気化で空孔が容易に作成でき、空孔の大きさは粉体の大きさで決まる。さらに、有機化合物の粉体の大きさと分布とを制御することが容易であるため、空孔の大きさと分布とは容易に制御できる。これによって、製造する発泡金属の性質が飛躍的に拡大する。
以上に説明したように、本製造方法は全く新たな5つの原理に基づいて発泡金属を製造するため、従来技術における様々な課題を解決するだけではなく、様々な性質を持つ発泡金属が安価に製造でき、新たな分野への発泡金属の適応拡大が図れる。
前記した製造方法で製造した発泡金属を構成する金属と異なる第三の金属が熱分解で析出する無機金属化合物を、アルコールに分散し、該無機金属化合物が前記アルコールに分散された分散液を作成する第一の製造工程と、前記した製造方法で製造した発泡金属の集まりを、前記分散液に浸漬し、該発泡金属の集まりと前記分散液とからなる混合物を作成する第二の製造工程と、前記混合物を容器に充填する第三の製造工程と、前記容器を前記アルコールの沸点に昇温する第四の製造工程と、前記容器を還元雰囲気で前記無機金属化合物が熱分解する温度に昇温する第五の製造工程とからなる、これら5つの製造工程を連続して実施する製造方法によって、前記発泡金属の表面が、前記第三の金属の粒状粒子で覆われた発泡金属の集まりが、前記容器内に製造される、発泡金属の製造方法である。
第一の工程は、無機金属化合物をアルコールに分散して分散液を作成するだけの処理である。第二の工程は、発泡金属の集まりを分散液に混合して混合物を作成するだけの処理である。第三の工程は、混合物を容器に充填するだけの処理である。第四の工程は、容器をアルコールの沸点に昇温するだけの処理である。第五の工程は、容器を還元雰囲気で前記の無機金属化合物が熱分解される温度に昇温するにさらすだけの処理である。いずれの工程も極めて簡単な処理である。こうした簡単な処理を連続することで、付加価値の高い性質を持つ発泡金属の集まりが安価に製造できる。
つまり、本製造方法によれば、無機金属化合物の還元雰囲気での熱処理で、有機金属化合物の大気雰囲気での熱処理で析出する金属とは異なる金属が析出する。こうした金属の中に、付加価値が高い白金族元素の金属や貴金属の金属がある。いっぽう、無機金属化合物は、有機金属化合物より高価な工業用薬品であり、使用量が少ないことが望ましい。従って、8段落で説明した方法で発泡金属を作製し、この発泡金属の表面を新たな金属の粒状微粒子の薄い層で覆えば、無機金属化合物の使用量は少量で済み、付加価値の高い機能を表層に形成でき、結果として、付加価値の高い発泡金属が安価に製造できる。こうした発泡金属の例として、白金族の金属微粒子で覆われた触媒作用を持つ発泡金属がある。
すなわち、無機金属化合物は、還元雰囲気で熱処理すると、200℃より低い温度で無機物と金属(分子クラスターの状態にある)とに分解され、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物の気化が完了した後に、金属が析出して還元反応を終える。従って、無機金属化合物が吸着した発泡金属の集まりを還元処理すると、発泡金属の表面で無機金属化合物の還元反応が進み、10−100nmの大きさの幅に収まる金属の粒状微粒子の集まりが析出して還元反応を終え、発泡金属の表層の金属と金属結合して発泡金属を覆う。この結果、発泡金属は無機金属化合物の熱分解で析出した金属微粒子の性質を持つ。例えば、発泡金属が白金の微粒子で覆われれば、発泡金属は新たに触媒作用を持つ。このように、無機金属化合物の使用量がわずかで、200℃程度の温度で還元されるため、付加価値の高い発泡金属が安価に製造できる。
つまり、8段落で説明した方法で発泡金属を作製する。この発泡金属に、無機金属化合物を吸着させる。この発泡金属の集まりを還元雰囲気で熱処理し、無機金属化合物を還元して新たな金属の粒状微粒子を析出させる。この際、発泡金属の表層が還元雰囲気にさらされ活性状態になる。この表層に、新たな金属の粒状微粒子が析出するため、新たな金属微粒子は、活性化された発泡金属の表層の金属微粒子と金属結合して、発泡金属を覆う。
本製造方法は、熱処理を2回連続して実施するだけで、付加価値の高い発泡金属の集まりを製造するため、新たな性質を持つ発泡金属が極めて安価に製造できる。
すなわち、本製造方法において、無機物からなる配位子が金属イオンに配位結合する金属錯体を還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が最初に分断され、無機物と金属(分子クラスターの状態にある)とに分離され、さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物が気化した後に、金属が析出して還元反応を終える。これによって、有機金属化合物の熱分解では析出しない金属が析出する。
つまり、金属錯体を構成するイオンの中で金属イオンが最も大きいため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。このため、金属錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解される。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物が気化した後に、金属が析出して還元反応を終える。
このような性質持つ金属錯体を発泡金属に吸着させ、発泡金属を還元処理すると、発泡金属の表面で金属錯体の還元反応が進み、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状の金属微粒子が発泡金属の表面に析出して還元反応を終える。これによって発泡金属が新たな性質を持つ。例えば、白金族の金属微粒子で発泡金属を覆えば、発泡金属は新たに触媒作用を持つ。このような金属錯体として、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン錯体、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ錯体、シアノ基CN−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ錯体、臭素イオンBr−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ錯体、沃素イオンI−が配位子イオンとなって金属イオンと配位結合するヨード錯体などの様々な金属錯体がある。このような金属錯体を形成する配位子は、いずれも低分子量の無機物から構成され、200℃より低い温度で無機金属化合物の熱分解が始まる。また、これら金属錯体の中で、アンミン錯体とクロロ錯体は合成が相対的に容易であり、相対的に安価な金属錯体として合成できる。
すなわち、同一の無機物からなる配位子が異なる金属イオンに配位結合する複数種類の金属錯体を還元雰囲気で熱処理すると、複数種類の金属錯体が同一の無機物から構成されるため、複数種類の金属錯体が同時に無機物と金属(分子クラスターの状態にある)とに分離され、無機物の気化が完了した後に、複数種類の金属錯体のモル濃度に応じた複数種類の金属は、金属の比率に応じた組成割合からなる合金を析出して還元反応を終える。このため、同一の無機物からなる配位子が異なる金属イオンに配位結合する複数種類の金属錯体は、前記した第三の金属の粒状微粒子で覆われた発泡金属の集まりを製造する製造方法において、合金の原料になる。
つまり、金属錯体を構成するイオンの中で金属イオンが最も大きいため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する複数種類の金属錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、複数種類の金属と無機物とに分離される。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物の気化が完了した後に、複数種類の金属錯体のモル濃度に応じた複数種類の金属は、金属の比率に応じた組成割合からなる合金を析出して還元反応を終える。
従って、同一の配位子が異なる金属イオンに配位結合する複数種類の金属錯体を発泡金属に吸着させ、発泡金属の表面で複数種類の金属錯体の還元反応を進めると、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状の合金の微粒子が発泡金属の表面を覆って還元反応が終える。これによって、8段落で説明した有機金属化合物の熱分解では製造できない合金の粒状微粒子が発泡金属の表面を覆い、発泡金属が新たな機能を持つ。例えば、白金族元素の金属を含む合金の粒状微粒子で発泡金属を覆えば、発泡金属は新たに触媒作用を持つ。
一方、無機物からなる配位子が金属イオンに配位結合する金属錯体は、有機金属化合物より高価な工業用の化学薬品であるため、使用量が少ないことが望ましい。従って、発泡金属の表面を合金の粒状微粒子のわずかな層で覆えば、わずかな金属錯体の使用量で、付加価値の高い発泡金属が安価に製造できる。
つまり、8段落で説明した方法で発泡金属を作製する。この発泡金属の集まりに、同一の無機物が異なる金属イオンに共有結合する複数種類の金属錯体を吸着させる。この発泡金属の集まりを還元雰囲気で熱処理し、複数種類の金属錯体を同時に還元して合金の粒状微粒子を析出させる。この際、発泡金属の表層が還元雰囲気にさらされ活性状態になる。この表層に、新たな合金の粒状微粒子が析出するため、合金微粒子は、活性化された発泡金属の表層の金属微粒子と金属結合して発泡金属を覆う。このように、熱処理を2回連続して実施して、付加価値の高い発泡金属の集まりを製造するため、新たな性質を持つ発泡金属が極めて安価に製造できる。
すなわち、同一の有機酸からなる複数種類の有機金属化合物を昇温すると、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点を超えると、複数種類の有機金属化合物が同時に有機酸と複数種類の金属(分子クラスターの状態にある)とに熱分解し、有機酸の気化が完了した後に、有機金属化合物のモル濃度に応じた複数種類の金属が、金属の比率に応じた組成割合からなる合金として析出して熱分解反応を終える。さらに、有機金属化合物は、様々な金属が有機酸と反応して容易に合成されるため、様々な有機酸からなる複数種類の有機金属化合物を熱分解することで、様々な材質からなる合金が容易に生成でき、発泡金属の性質が様々な合金の性質に拡大される。
つまり、有機化合物の粉体の表面に、第一の有機金属化合物と、複数種類の有機金属化合物とを吸着させる。第一の有機金属化合物は、熱分解で磁性を有する金属を析出する。複数種類の有機金属化合物は、同一の有機酸からなる複数種類の有機金属化合物であり、熱分解温度は第一の有機金属化合物より高い。従って、有機化合物の粉体を第一の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の表面に、磁性を有する金属の粒状微粒子が析出して熱分解反応が終える。この際、磁性を有する金属の粒状微粒子同士が金属結合し、有機化合物の表面を第一の多層構造で覆う、とともに、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体は、微粒子が発する磁気によって互いに接近する。さらに、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体の集まりを、同一の有機酸からなる複数種類の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温すると、複数種類の金属が各々の有機金属化合物のモル濃度に応じて析出し、この析出した複数種類の金属の比率に応じた組成割合からなる合金が、10−100nmの大きさの幅に収まる粒状の微粒子として析出して熱分解反応を終える。この際、合金の粒状微粒子同士が金属結合し、第一の多層構造の表面に第二の多層構造を形成する、とともに、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体は合金の微粒子同士の金属結合を介して接合される。この後、有機化合物の粉体ないしは融解した粉体を気化させると、粉体の体積が爆発的に膨張し、多層構造を形成する微粒子同士の結合の一部を破壊し、有機化合物の気体が発散して空孔になり、発泡金属が製造される。従って、本製造方法も熱処理を4回連続して実施して発泡金属を製造するため、従来に比べて安価な発泡金属が製造できる。
すなわち、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンと共有結合によって結合するカルボン酸金属化合物は、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が切れて、カルボン酸と金属(分子クラスターの状態にある)に分解する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に、金属を析出して熱分解反応を終える。こうした性質を兼備するカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などのカルボン酸金属化合物がある。なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって複数種類の金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化銅Cu2Oと酸化銅CuOとが同時に析出し、酸化銅Cu2Oと酸化銅CuOとを銅に還元する処理費用を要する。特に、酸化銅Cu2Oは、酸素ガスが大気雰囲気よりリッチな雰囲気で一度酸化銅CuOに酸化させた後に、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、処理費用がかさむ。
前記したカルボン酸金属化合物を有機化合物の粉体に吸着させ、有機化合物の粉体の表面でカルボン酸金属化合物の熱分解反応を進めると、カルボン酸が気化した後に、有機化合物の粉体に10−100nmの大きさの幅に収まる粒状の金属微粒子が一斉に析出して熱分解反応を終える。これによって、粒状の金属微粒子の集まりが、発泡金属の空孔の殻を形成する。なお、同一のカルボン酸からなる複数種類のカルボン酸金属化合物を、有機化合物の粉体に吸着させ、複数種類のカルボン酸金属化合物を熱分解させる場合は、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出し、複数種類の金属の比率に応じた組成割合からなる合金の粒状微粒子の集まりが有機化合物の粉体に析出して熱分解反応を終える。これによって、合金の粒状微粒子の集まりが、空孔の殻を構成する。
また、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわちカルボン酸を強アルカリと反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、カルボン酸金属化合物が合成される。さらに、カルボン酸は、有機酸の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であるため、大気雰囲気において400℃以下の低い熱処理で金属が析出する。このため、熱処理費用が安価で済む。従って、安価な工業用の薬品を用いて、安価な熱処理費用で発泡金属の空孔の殻が形成できるため、カルボン酸金属化合物は、有機金属化合物を用いて発泡金属を製造する製造方法において、安価な発泡金属の空孔の殻を形成する原料になる。
さらに、芳香族カルボン酸に属するC6H4(COOH)2で化学式が示されるテレフタル酸は、大気中で融点が402℃であり、融点を超えると昇華する性質を持つ。複数種類の有機金属化合物を、メタノールないしはn−ブタノールに分散した分散液に、テレフタル酸の粉体の集まりを分散し、メタノールないしはn−ブタノールを気化すれば、テレフタル酸がメタノールないしはn−ブタノールに溶解ないしは分散しないため、テレフタル酸の粉体の表面に複数種類の有機金属化合物が吸着する。さらに、複数種類の有機金属化合物が熱分解する温度に段階的に昇温すると、テレフタル酸の粉体を覆っていた複数種類の有機金属化合物が段階的に熱分解し、金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりで、テレフタル酸の粉体を覆うとともに、金属ないしは合金の粒状微粒子同士の金属結合で、テレフタル酸の粉体が接合される。さらに、テレフタル酸を昇華すれば発泡金属が製造される。このように、テレフタル酸も、有機化合物の粉体を用いて発泡金属を製造する製造方法において、発泡金属の空孔を形成する原料になる。なお、テレフタル酸は、エチレングリコールと反応させてポリエチレンテレフタレートを合成する原料となり、ペットボトルや衣料の原材料となる安価な工業用の化学薬品である。
さらに、多環芳香族炭化水素、例えば、C14H10で化学式が示されるアントラセンは、ベンゼン環が3個縮合したアセン系多環芳香族炭化水素であり、融点が218℃で、気化点が342℃の性質を持つ。複数種類の有機金属化合物をメタノールないしはn−ブタノールに分散した分散液に、アントラセンの粉体の集まりを分散し、メタノールないしはn−ブタノールを気化すれば、アントラセンがメタノールないしはn−ブタノールに溶解ないしは分散しないため、アントラセンの粉体の表面に複数種類の有機金属化合物が吸着する。さらに、複数種類の有機金属化合物が熱分解する温度に段階的に昇温すると、アントラセンの粉体を覆っていた複数種類の有機金属化合物が段階的に熱分解し、金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりで、融解したアントラセンを覆うとともに、金属ないしは合金の粒状微粒子同士の金属結合で、融解したアントラセンが接合される。さらに、アントラセンを気化すれば、発泡金属が製造される。このように、アントラセンも、有機化合物の粉体を用いて発泡金属を製造する製造方法において、発泡金属の空孔を形成する原料になる。なおアントラセンは、コールタールから分離精製することで工業的に生産され、カーボンブラックの原料として用いられる安価な工業用の化学薬品である。
以上に説明したように、飽和脂肪酸ないしは芳香族カルボン酸ないしは多環芳香族炭化水素からなる有機化合物の中に、メタノールないしはn−ブタノールに溶解ないしは分散せず、メタノールないしはn−ブタノールの沸点より高い融点を持ち、有機金属化合物の熱分解温度より高い気化点を持つ有機化合物がある。こうした性質を持つ有機化合物の粉体の集まりに、複数種類の有機金属化合物を吸着させ、吸着した複数種類の有機金属化合物を段階的に熱分解させると、金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりで、有機化合物の粉体ないしは融解した有機化合物を覆うとともに、金属ないしは合金の粒状微粒子同士の金属結合で、有機化合物の粉体ないしは融解した有機化合物が接合される。さらに、有機化合物を気化させると、発泡金属が製造される。このような簡単な処理を連続して実施して発泡金属が製造できるため、安価な発泡金属を製造するうえで、有機化合物は、有機化合物の粉体を用いて発泡金属を製造する製造方法において、発泡金属の空孔を形成する原料になる。
ここで、鉄微粒子が析出する有機鉄化合物を具体例として説明する。有機鉄化合物から鉄微粒子が生成される化学反応が、粉体の表面で起こる必要がある。有機鉄化合物から鉄が生成される化学反応の中で、最も簡単な処理による化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機鉄化合物を昇温するだけで、有機鉄化合物が熱分解して鉄が析出する。さらに、有機鉄化合物の合成が容易でれば、有機鉄化合物を安価に製造できる。こうした性質を兼ね備える有機鉄化合物にカルボン酸鉄がある。つまり、カルボン酸鉄を構成するイオンの中で、最も大きいイオンは鉄イオンである。従って、カルボン酸鉄におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、鉄イオンと共有結合すれば、鉄イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの距離が、イオン同士の結合距離の中で最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸鉄を昇温させると、カルボン酸鉄を構成するカルボン酸の沸点において、カルボン酸と鉄とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した瞬間に鉄が析出する。また、カルボン酸鉄は合成が容易で、安価な有機鉄化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属が生成される。このカルボン酸アルカリ金属を、硫酸鉄などの無機鉄化合物と反応させると、カルボン酸鉄が生成される。なお、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄が熱分解すると、複数種類の鉄の酸化物からなるナノ粒子が析出する。以下に、カルボン酸鉄の実施形態を説明する。なお、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となって鉄イオンに近づき、酸素イオンが鉄イオンに配位結合するカルボン酸鉄は、鉄イオンと酸素イオンとの距離が短くなるため、熱分解によって酸化鉄を生成する。
カルボン酸鉄の組成式はRCOO−Fe−COORで表わせられ、Rは炭化水素で、組成式はCmHnである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸鉄を構成する物質の中で、組成式の中央に存在する鉄イオンFe2+が、最も大きい物質になる。従って、鉄イオンFe2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合する場合は、鉄イオンFe2+と酸素イオンO−との距離が最大になる。この理由は、鉄イオンFe2+の共有結合半径は116pmであり、酸素イオンO−の共有結合半径は63pmであり、炭素原子の共有結合半径は75pmであり、酸素原子の共有結合半径は57pmであることによる。このため、鉄イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸鉄は、カルボン酸の沸点において、結合距離が最も長い鉄イオンと酸素イオンとの結合部が最初に切断され、鉄とカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した瞬間に鉄が析出する。こうしたカルボン酸鉄として、オクチル酸鉄(2−エチルヘキサン酸鉄ともいう)、ラウリン酸鉄(ドデカン酸鉄ともいう)、ステアリン酸鉄(オクタデカン酸鉄ともいう)などがある。
さらに、飽和脂肪酸で構成されるカルボン酸鉄について、飽和脂肪酸の沸点が相対的に低ければ、カルボン酸鉄は相対的に低い温度で熱分解し、鉄の粒状微粒子の析出に関わる熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。従って、分子量が相対的に小さい飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄は、熱分解温度が相対的に低くなるので、鉄の粒状微粒子の原料として望ましい。
また、飽和脂肪酸が分岐鎖構造からなる場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点が低くなる。このため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄は、相対的に低い温度で熱分解する。さらに、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄も極性を持ち、極性を持つアルコールに相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸はCH3(CH2)3CH(C2H5)COOHの構造式で示され、CHでCH3(CH2)3とC2H5とのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃で、ラウリン酸より沸点が68℃低い。従って、鉄の粒状微粒子の原料として、オクチル酸鉄が望ましい。
以上に説明したように、金属微粒子の原料は、アルコールに分散する有機金属化合物の中で、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物が望ましい。さらに、飽和脂肪酸からなるカルボン酸で構成されるカルボン酸金属化合物が望ましい。直鎖が短い飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物がさらに望ましい。分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるオクチル酸金属化合物がさらに望ましい。
なお、オクチル酸鉄は商品化されていないため、次の製法で新たに合成した。組成式がC7H15COOHで表されるオクチル酸(協和発酵ケミカル株式会社の製品)を水酸化ナトリウムNaOH(試薬一級品)の水溶液と反応させると、オクチル酸のカルボキシル基COOHを構成する水素が電離し、電離したカルボキシル基にナトリウムが結合し、C7H15COONaの組成式で表されるオクチル酸ナトリウムが析出する。このオクチル酸ナトリウムを水洗して、オクチル酸ナトリウムを精製する。次に、オクチル酸ナトリウムを硫酸鉄FeSO4(試薬一級品)の水溶液と反応させると、組成式がC7H17COO−Fe−C7H17COOで表されるオクチル酸鉄が析出する。析出したオクチル酸鉄を水洗して、オクチル酸鉄を精製する。合成したオクチル酸鉄は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了して鉄が析出し、メタノールやn−ブタノールなどに10重量%まで分散する。
いっぽう、2種類のカルボン酸金属化合物を原料として用いるため、第二の金属の粒状微粒子の原料である第二のカルボン酸金属化合物は、第一の金属の粒状微粒子の原料である第一のカルボン酸金属化合物より、熱分解温度が高いことが必要になる。従って、長鎖飽和脂肪酸と金属からなるラウリン酸金属化合物は、第二のカルボン酸金属化合物として用いることができる。
さらに、合金の粒状微粒子を析出する原料として、同一の飽和脂肪酸から構成される複数種類のカルボン酸金属化合物を用いることができる。つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物が同一の飽和脂肪酸から構成されるため、飽和脂肪酸の沸点で複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解し、飽和脂肪酸の気化が完了した瞬間に、各々のカルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出する。この金属は不純物を持たない活性状態にあり、析出した複数種類の金属の比率を組成割合とする合金が生成される。
白金を析出する原料も、カルボン酸金属化合物と同様に、アルコールに分散し、熱分解によって白金を析出する性質を持つことが必要になる。こうした性質を兼備する白金化合物として、還元雰囲気での熱処理で白金に還元される白金錯体がある。白金錯体の中で、最も大きい物質は白金イオンPt2+ないしはPt4+である。ちなみに、白金原子の単結合における共有結合半径は123pmであり、酸素原子の単結合における共有結合半径である63pmの2倍に近い大きさを持つ。従って、白金イオンが配位子イオンと配位結合する配位結合部が最初に切れ、白金が析出する。このような白金錯体として、アンモニアNH3が配位子となって白金イオンに配位結合するアンミン錯体や、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって白金イオンに配位結合するクロロ錯体は、他の白金錯体に比べて相対的に合成が容易であるため、白金錯体の中でも相対的に安価な化学薬品である。こうした白金錯体は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の比較的低い温度で白金が析出する。また、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。
以上に白金の原料を例として説明したように、白金族元素の金属と銅を除く貴金属の金属からなる粒状微粒子を析出する原料は、無機物の配位子が金属イオンに配位結合する金属錯体が望ましい。こうした金属錯体は、前記したカルボン酸金属化合物に比べて高価な原料になるが、発泡金属に高付加価値をもたらす金属ないしは合金の粒状微粒子を析出する原料になる。
なお、合金の粒状微粒子を製造する原料は、同一の配位子から構成される複数種類の金属錯体を用いることができる。つまり、複数種類の金属錯体が同一の配位子から構成されるため、複数種類の金属錯体を還元処理すると、複数種類の金属錯体が同時に無機物と複数種類の金属とに熱分解し、無機物の気化が完了した瞬間に、各々の金属錯体のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出する。複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属の比率に応じた組成割合からなる合金が生成される。
本実施例は、鉄微粒子と銅微粒子とからなる多層構造で覆われた空孔の集まりからなる発泡金属を製造する実施例である。本実施例では、有機化合物として粉末のテレフタル酸(市販品、例えば株式会社日立プラントテクノロジーの製品)を用い、平均粒径が50μmの粉体として微粉化した。また、鉄微粒子の原料となるオクチル酸鉄を、32段落で説明した製法で合成した。さらに銅微粒子の原料となるラウリン酸銅(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用意した。
図1に、発泡金属を製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸鉄の1モルとラウリン酸銅の2モルとを、6リットルのn−ブタノールに分散する(S10工程)。この分散液に、テレフタル酸の微粉の100gを加えて混合する(S11工程)。この混合液を容器に充填する(S12工程)。容器は円筒形状である。次に、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールは回収機で回収する(S13工程)。さらに、容器を290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸鉄を熱分解する(S14工程)。次に、容器を360℃の熱処理炉に1分間放置し、ラウリン酸銅を熱分解する(S15工程)。さらに、容器を410℃の熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を昇華させ、昇華したテレフタル酸は回収機で回収する(S16工程)。最後に容器の底に製作された円形の発泡金属を取り出す。
次に、前記した条件で製作した発泡金属の観察と分析とを行ない、空孔の殻を構成する多層構造を観察した。発泡金属の一部を試料として切り出し、試料を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料が観察できる特徴を有する。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。40−60nmの大きさの幅に入る粒状の微粒子が、試料の表面全体を覆っていることが分かった。また、試料の断面の観察から、空孔は直径が0.3mmの球に近い形状であり、空孔同士の間には、粒状微粒子が70層−80層の厚みで多層構造を形成していることが分かった。次に、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料の断面における粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。空孔の近傍は鉄原子の集まりで覆われ、鉄原子の層の外側に銅原子が2倍近い厚みで存在することが分かった。
以上に説明した電子顕微鏡による試料の観察結果から、空孔と空孔との間隙は40−60nmの大きさの幅に入る粒状微粒子の集まりで充填され、鉄微粒子が25層前後の層をなして空孔を覆い、銅微粒子は鉄微粒子の層の外側に2倍に近い層をなして鉄微粒子の層を覆い、空孔同士は銅微粒子の金属結合で接合されていることが分かった。作成した発泡金属の開口率は94%前後と考えられる。なお、フタル酸の微粉の大きさを大きくするほど、開口率は増える。さらに、鉄微粒子の層の厚みと銅微粒子の厚みとは、原料であるオクチル酸鉄とラウリン酸銅との使用する量に応じて如何様にも変えられる。また、S12工程で混合液を充填する容器の形状に応じて、製作される発泡金属の形状が決まる。本実施例では円筒形状の容器であったため、円板状の発泡金属になった。容器が正四角柱であれば発泡金属は正方形になり、容器が二重の同心円筒形状であれば発泡金属はリング形状になる。このように、発泡金属を、どのような形状で、どのような性質を持たせるかに応じて、容器の形状、テレフタル酸の微粉の大きさ、カルボン酸金属化合物の種類と使用量を変えることで、如何様にも変えられる。
本実施例の発泡金属は、銅の性質が優勢になり、銅は銀に次いで熱伝導性と電気導電性に優れるため、ヒートシンク、ラジエター、熱交換器など放熱と吸熱とが求められる部品への応用が可能になる。さらに、薄板状の発泡金属は、優れた熱伝導性と電気導電性とを兼備する回路基板として用いることもできる。
本実施例は、鉄微粒子とアルミニウム微粒子とからなる多層構造で覆われた空孔の集まりからなる発泡金属を製造する実施例である。本実施例では、実施例1と同様に、有機化合物としてテレフタル酸の平均粒径が50μmの微粉を用いた。また、鉄微粒子の原料は、実施例1と同様にオクチル酸鉄を用いた。さらに、アルミニウム微粒子の原料として、ラウリン酸アルミニウム(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用意した。
図2に、発泡金属を製造する製造工程を示す。オクチル酸鉄の1モルとラウリン酸アルミニウムの2モルとを、6リットルのn−ブタノールに分散する(S20工程)。分散液に、テレフタル酸の微粉100gを加えて混合する(S21工程)。混合液を容器に充填する(S22工程)。容器は正四角柱である。次に、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールは回収機で回収する(S23工程)。さらに、容器を290℃の熱処理炉に1分間放置しオクチル酸鉄を熱分解する(S24工程)。次に、容器を360℃の熱処理炉に1分間放置し、ラウリン酸アルミニウムを熱分解する(S25工程)。さらに、容器を410℃の熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を昇華させ、昇華したテレフタル酸は回収機で回収する(S26工程)。最後に容器の底にある正方形の発泡金属を取り出す。
次に、製作した発泡金属の観察と分析とを行なった。発泡金属の一部を試料として切り出し、実施例1と同様に、試料を電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。40−60nmの大きさの幅に入る粒状の微粒子が、試料の表面全体を覆っていることが分かった。また、試料の断面の観察から、空孔は直径が0.3mmの球に近い形状であり、空孔同士の間には、粒状微粒子が70−80層の厚みで多層構造を形成していることが分かった。次に、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料の断面における粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。この結果、空孔の近傍は鉄原子の集まりで覆われ、鉄原子の層の外側にアルミニウム原子が2倍近い厚みで存在することが確認できた。
以上に説明した電子顕微鏡による試料の観察結果から、空孔と空孔との間隙は40−60nmの大きさの幅に入る粒状微粒子の集まりで充填され、鉄微粒子が25層前後の層をなして空孔を覆い、アルミニウム微粒子は鉄微粒子の層の外側に2倍に近い層をなして鉄微粒子の層を覆い、空孔同士はアルミニウム微粒子の金属結合で接合されていることが確認できた。作成した発泡金属の開口率は94%前後と考えられる。
この発泡金属は、アルミニウムの性質が優勢になり、アルミニウムは銀、銅、金に次いで熱伝導性と電気導電性に優れ、銅の密度の3割程度の密度からなるため、軽量なヒートシンク、ラジエター、熱交換器など放熱と吸熱とが求められる軽量部品への適応が可能になる。さらに、薄板状の発泡金属は、優れた熱伝導性と電気導電性とを兼備する軽量な回路基板として用いることもできる。また、多層構造の内側が鉄微粒子からなるため、発泡金属は磁性を持ち、磁性体に磁気吸着する。
本実施例は、鉄微粒子とニッケル微粒子とからなる多層構造で覆われた空孔の集まりからなる発泡金属を製造する実施例である。本実施例は、実施例1及び実施例2と同様に、有機化合物としてテレフタル酸の平均粒径が50μmの微粉を用いた。また、鉄微粒子の原料は、実施例1と同様にオクチル酸鉄用いた。さらに、ニッケル微粒子の原料として、ラウリン酸ニッケル(例えば、日油株式会社の製品)を用意した。
図3に、発泡金属を製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸鉄の1モルとラウリン酸ニッケルの2モルを、6リットルのn−ブタノールに分散する(S30工程)。この分散液に、テレフタル酸の微粉100gを加えて混合する(S31工程)。この混合液を容器に充填する(S32工程)。容器は円筒形状である。次に、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールは回収機で回収する(S33工程)。さらに、容器を290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸鉄を熱分解する(S34工程)。次に、容器を360℃の熱処理炉に1分間放置し、ラウリン酸ニッケルを熱分解する(S35工程)。さらに、容器を410℃の熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を昇華させ、昇華したテレフタル酸は回収機で回収する(S36工程)。最後に容器の底にある円形の発泡金属を取り出す。
次に、製作した発泡金属の観察と分析とを行ない、空孔の殻を構成する多層構造を観察した。発泡金属の一部を試料として切り出し、実施例1及び実施例2と同様に、試料を電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。40−60nmの大きさの幅に入る粒状の微粒子が、試料の表面全体を覆っていることが確認できた。また、試料の断面の観察から、空孔は直径が0.3mmの球に近い形状であり、空孔同士の間には、粒状微粒子が70−80層の厚みで多層構造を形成していることが確認できた。次に、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料の断面における粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。空孔の近傍は鉄原子の集まりで覆われ、鉄原子の層の外側に、ニッケル原子が2倍近い厚みで存在することが確認できた。
以上に説明した電子顕微鏡による試料の観察結果から、空孔と空孔との間隙は40−60nmの大きさの幅に入る粒状微粒子の集まりで充填され、鉄微粒子が25層前後の層をなして空孔を覆い、ニッケル微粒子は、鉄微粒子の層の外側に2倍に近い層をなして鉄微粒子の層を覆い、空孔同士はニッケル微粒子の金属結合で接合されていることが確認できた。作成した発泡金属の開口率は94%前後と考えられる。
この発泡金属は、ニッケルの性質が優勢になり、ニッカド・ニッケル水素電池の正極の極板や電磁波遮蔽用のシールド材などの部品への適応が可能になる。
以上に、鉄微粒子の集まりを多層構造の第1層として形成し、その外側に、銅あるいはアルミニウムあるいはニッケルの微粒子の集まりで、多層構造の第2層を形成する3つの実施例を説明したが、第2層が銅やアルミニウムやニッケルに限られることはない。ラウリン酸金属化合物もオクチル酸金属化合物と同様に、様々な金属からなるラウリン酸金属化合物が容易に合成できるので、様々な金属の微粒子によって多層構造の第2層が形成できる。また、多層構造の第1層が鉄に限られることはない。オクチル酸ニッケルないしはオクチル酸コバルトを用いれば、強磁性のニッケル微粒子ないしはコバルト微粒子が形成できる。このように、金属微粒子の原料が、合成が容易で安価なカルボン酸金属化合物であるため、様々な金属微粒子の組み合わせからなる発泡金属が容易に製造でき、様々な性質を持つ発泡金属が安価に製造できる。
本実施例は、実施例3における発泡金属の表面を、白金の粒状微粒子で覆った発泡金属を製造する。本実施例は、例えば、電極板としての発泡金属の表面に触媒機能を持たせる部品に適応することができる。つまり、触媒作用を兼備する電極板になる。
図4に、発泡金属を製造する製造工程を示す。予め、実施例3に基づき、空孔が鉄微粒子とニッケル微粒子とからなる多層構造で覆われた空孔の集まりからなる発泡金属を製造する(S40工程)。次に、白金微粒子の原料である白金錯体の0.2モルを1リットルのメタノールに分散する(S41工程)。白金錯体は、6個の塩素イオンCl−が配位子となって白金イオンPt4+に配位結合する、ヘキサクロロ白金酸イオン[PtCl6]2−からなるアンモニウム塩であるヘキサクロロ白金酸ジアンモニウム[NH4]2[PtCl6](例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。この分散液を容器に充填し、予め製作した発泡金属を分散液に浸漬する(S42工程)。次に、容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化し、気化したメタノールは回収機で回収する(S43工程)。さらに、容器をアンモニアガス雰囲気の220℃に昇温された熱処理炉に5分間放置し、ヘキサクロロ白金酸ジアンモニウムを還元する(S44工程)。最後に容器から発泡金属を取り出す。
次に、製作した発泡金属の観察と分析とを行ない、空孔の殻を構成する多層構造を観察した。発泡金属の一部を試料として切り出し、実施例1−3と同様に、試料を電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状微粒子を構成する元素を分析した。白金原子のみが存在していることが分かった。また、試料の断面の観察から、白金の粒状微粒子は5層前後の厚みで発泡金属の表面を覆っていることが分かった。
以上に説明した電子顕微鏡による試料の観察結果から、発泡金属の表面にヘキサクロロ白金酸ジアンモニウムを吸着させて還元すると、40−60nmの大きさからな白金の粒状微粒子の集まりが、発泡金属の表面を覆うことが分かった。
なお、白金錯体の代わりにパラジウム錯体を用いれば、発泡金属の表面はパラジウムの粒状微粒子で覆われ、パラジウム微粒子による触媒機能を発揮する。なお、パラジウムの原料としては、例えば、4個のアンミンがパラジウムイオンPd2+に配位結合した塩化物である、テトラアンミンパラジウムジクロライド水和物[Pd(NH3)4]Cl2・H2Oがある。このパラジウム錯体のメタノール分散液に発泡金属を浸漬し、水素ガスの雰囲気の200℃の焼成炉で還元すれば、発泡金属の表面にパラジウムの粒状微粒子が析出し、発泡金属はパラジウムの粒状微粒子で覆われる。
本実施例は、実施例2における発泡金属の表面を、白金の粒状微粒子で覆った発泡金属を製造する実施例である。本実施例は、例えば、ヒーターとしての発泡金属の表面が触媒作用を持つ部品に適応できる。つまり、白金微粒子を高温状態にすることで、触媒作用がより活性化する。このため、発熱源になる鉄微粒子の厚みを、熱伝達媒体となるアルミニウム微粒子の厚みより厚くするため、実施例2におけるオクチル酸鉄の使用量を2モルとし、ラウリン酸アルミニウムの使用量を1モルとした。これによって、鉄微粒子が50層前後の厚みで多層構造の内側を構成し、アルミニウム微粒子が25層前後の厚みで多層構造の外側を構成する。また、本実施例では、発泡金属の表面を白金の微粒子の集まりで覆うが、パラジウムの微粒子で覆うことによっても、発泡金属は触媒の機能を持つ。
図5に、発泡金属を製造する製造工程を示す。予め実施例2に基づき、空孔が鉄微粒子とアルミニウム微粒子とからなる多層構造で覆われた空孔の集まりからなる発泡金属を製造する(S50工程)。ただし、オクチル酸鉄の使用量を2モルとし、ラウリン酸アルミニウムの使用量を1モルとした。次に、白金微粒子の原料である白金錯体の0.2モルを1リットルのメタノールに分散する(S51工程)。白金錯体は、6個の塩素イオンCl−が配位子となって白金イオンPt4+に配位結合する、ヘキサクロロ白金酸イオン[PtCl6]2−からなるアンモニウム塩であるヘキサクロロ白金酸ジアンモニウム[NH4]2[PtCl6](例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。この分散液を容器に充填し、予め製作した発泡金属を分散液に浸漬する(S52工程)。次に、容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化し、気化したメタノールは回収機で回収する(S53工程)。さらに、容器をアンモニアガス雰囲気の220℃に昇温された熱処理炉に5分間放置し、ヘキサクロロ白金酸ジアンモニウムを還元する(S54工程)。最後に容器から発泡金属を取り出す。
次に、製作した発泡金属の観察と分析とを行ない、空孔の殻を構成する多層構造を観察した。発泡金属の一部を試料として切り出し、実施例1−4と同様に、試料を電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状微粒子を構成する元素を分析した。白金原子のみが存在していることが分かった。また、試料の断面の観察から、白金の粒状微粒子は5層前後の厚みで発泡金属の表面を覆っていることが分かった。
以上に説明した電子顕微鏡による試料の観察結果から、発泡金属の表面にヘキサクロロ白金酸ジアンモニウムを吸着させて還元すると、40−60nmの大きさからな白金の粒状微粒子の集まりが、発泡金属の表面を覆うことが分かった。
なお白金錯体の代わりに、実施例4と同様に、パラジウム錯体を用いれば、発泡金属の表面はパラジウムの粒状微粒子で覆われ、パラジウム微粒子による触媒機能を発揮する。パラジウムの原料としては、例えば、前記したテトラアンミンパラジウムジクロライド水和物がある。このパラジウム錯体のメタノール分散液に発泡金属を浸漬し、水素ガスの雰囲気の200℃の焼成炉で還元すれば、発泡金属の表面にパラジウムの粒状微粒子が析出し、発泡金属はパラジウムの粒状微粒子で覆われる。
実施例4と実施例5とに、空孔の殻が、鉄微粒子の集まりとニッケル微粒子ないしはアルミニウム微粒子の集まりで構成された発泡金属を、白金の粒状微粒子で覆った実施例を説明したが、発泡金属の構成は、鉄微粒子の集まりとアルミニウム微粒子ないしはニッケル微粒子の集まりに限定されない。ラウリン酸金属化合物もオクチル酸金属化合物と同様に、様々な金属からなるラウリン酸金属化合物が容易に合成できるため、様々な金属の微粒子によって空孔の殻が形成できる。さらに、発泡金属の表面を覆う金属微粒子が、白金とパラジウムに限定されることはない。白金族元素の様々な金属からなるクロロ錯体あるいはアンミン錯体が容易に合成できるため、様々な白金族元素の金属微粒子によって発泡金属を覆うことができる。このように、発泡金属に必要となる性質に応じて、発泡金属を構成する2種類の金属微粒子の組み合わせを決め、発泡金属の表面を覆う金属の材質を決めればよい。
本実施例は、実施例3における発泡金属の表面を、白金とコバルトとからなる二元合金の粒状微粒子で覆った発泡金属を製造する実施例である。本実施例は、実施例4と同様に、電極板としての発泡金属の表面に触媒機能を持たせる部品に適応できる。つまり、電極板に触媒作用を兼備させる。本実施例では、発泡金属の表面を白金−コバルト合金の微粒子の集まりで覆うが、白金−パラジウム合金の微粒子で覆うことによっても、発泡金属は触媒の機能を持つ。なお、同一の配位子からなる白金錯体とコバルト錯体とを、同時に還元することで、白金−コバルト合金が析出する。コバルトの原料は、6個のアンミンがコバルトイオンCo3+に配位結合した塩化物であるヘキサアンミンコバルトトリクロライド[Co(NH3)6]Cl3である。白金の原料も、6個のアンミンが白金イオンPt2+に配位結合した塩化物であるヘキサアンミン白金テトラクロライド[Pt(NH3)6]Cl4である。これらの原料は、いずれも市販品で、例えば、田中貴金属販売株式会社に製品がある。
図6に、発泡金属を製造する製造工程を示す。予め実施例3に基づき、空孔が鉄微粒子とニッケル微粒子とからなる多層構造で覆われた空孔の集まりからなる発泡金属を製造する(S60工程)。次に、白金錯体の0.1モルとコバルト錯体の0.1モルとを、1リットルのメタノールに分散する(S61工程)。この分散液を容器に充填し、予め製作した発泡金属を分散液に浸漬する(S62工程)。次に、容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化し、気化したメタノールは回収機で回収する(S63工程)。さらに、容器を水素ガス雰囲気の220℃に昇温された熱処理炉に5分間放置し、白金錯体とコバルト錯体とを同時に還元する(S64工程)。最後に容器から発泡金属を取り出す。
次に、前記した条件で製作した発泡金属の一部を試料として切り出し、SEMで試料の観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたので、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状微粒子を構成する元素を分析した。白金原子とコバルト原子とが共存し、双方の原子が偏在する箇所が見られなかったため、白金―コバルト合金であることが分かった。また、試料の断面の観察から、合金の粒状微粒子は5層前後の厚みで発泡金属の表面を覆っていることが分かった。
以上に説明した観察結果から、発泡金属の表面に、同一の配位子からなる白金錯体とコバルト錯体とを吸着させて還元すると、40−60nmの大きさからなる粒状の白金−コバルト合金の粒状微粒子が、発泡金属の表面を覆うことが分かった。これによって、電極板としての発泡金属は、新たに白金−コバルト合金の触媒作用を持つことになる。
さらに、同一の配位子からなる白金錯体とパラジウム錯体とを用いれば、発泡金属の表面は、触媒作用を持つ白金−パラジウム合金の粒状微粒子で覆われる。パラジウムの原料は、4個のアンミンがパラジウムイオンPd2+に配位結合した塩化物であるテトラアンミンパラジウムジクロライド水和物[Pd(NH3)4]Cl2・H2Oを用いる。また白金の原料も、4個のアンミンが白金イオンPt2+に配位結合した塩化物であるテトラアンミン白金ジクロライド[Pt(NH3)4]Cl2を用いる。これら2種類の金属錯体のメタノール分散液に発泡金属を浸漬し、水素ガスの雰囲気の200℃の焼成炉で還元すれば、発泡金属の表面に白金−パラジウム合金の粒状微粒子が析出し、発泡金属は白金−パラジウム合金の粒状微粒子で覆われる。電極板としての発泡金属は、白金−パラジウム合金の触媒作用を持つことになる。
本実施例は、実施例2で製造した発泡金属の表面を、鉄とパラジウムとからなる二元合金の粒状微粒子で覆った発泡金属を製造する実施例である。本実施例も、実施例5と同様に、ヒーターとしての発泡金属の表面に触媒機能を持たせる部品に適応できる。つまり、鉄−パラジウム合金の微粒子を高温状態にして、鉄−パラジウム合金の触媒作用がより活性化する。従って、実施例5と同様に、実施例2におけるオクチル酸鉄の使用量を2モルとし、ラウリン酸アルミニウムの使用量を1モルとして発泡金属を作製した。なお、鉄−パラジウム合金は、同一の配位子からなる鉄錯体とパラジウム錯体とを同時に還元することで製作する。このため、パラジウムの原料は、4個の塩素イオンCl−が配位子となってパラジウムイオンPd2+に配位結合する、テトラクロロパラジウム酸イオン(PdCl4)2−からなる金属錯体である、テトラクロロパラジウム酸ジアンモニウム(NH4)2・(PdCl4)を用いた。鉄の原料も、4個の塩素イオンCl−が配位子となって鉄イオンFe3+に配位結合するテトラクロロ鉄酸イオン(FeCl4)−からなる金属錯体であるテトラクロロ鉄酸アンモニウム(NH4)・(FeCl4)を用いた。これらの原料は、いずれも市販品があり、例えば三津和化学薬品株式会社に製品がある。
図7に、発泡金属を製造する製造工程を示す。予め実施例2に基づき、空孔が鉄微粒子とアルミニウム微粒子とからなる多層構造で覆われた空孔の集まりからなる発泡金属を製造する(S70工程)。ただし、オクチル酸鉄の使用量を2モルとし、ラウリン酸アルミニウムの使用量を1モルとした。次に、パラジウム錯体の0.1モルと鉄錯体の0.1モルとを、1リットルのメタノールに分散する(S71工程)。分散液を容器に充填し、予め製作した発泡金属を分散液に浸漬する(S72工程)。次に、容器を65℃の熱処理炉に入れてメタノールを気化し、気化したメタノールは回収機で回収する(S73工程)。さらに、容器をアンモニアガス雰囲気の200℃に昇温された熱処理炉に5分間放置し、パラジウム錯体と鉄錯体とを同時に還元する(S74工程)。最後に容器から発泡金属を取り出す。
次に、製作した発泡金属の一部を試料として切り出し、試料の観察と分析とをSEMで行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたので、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状微粒子を構成する元素を分析した。鉄原子とパラジウム原子とが共存し、双方の原子が偏在する箇所が見られなかったため、鉄―パラジウム合金であることが分かった。また、試料の断面の観察から、合金の粒状微粒子は5層前後の厚みで発泡金属の表面を覆っていることが分かった。
以上に説明した試料の観察結果から、発泡金属の表面に、同一の配位子からなる鉄錯体とパラジウム錯体とを吸着させて還元すると、40−60nmの大きさからなる粒状の鉄−パラジウム合金の粒状微粒子の集まりが、発泡金属の表面を覆うことが分かった。これによって、発泡金属は、新たに鉄−パラジウム合金の性質を持つことになる。
さらに、同一の配位子からなる金属錯体の組み合わせとして、白金錯体とコバルト錯体とを用いれば、発泡金属の表面は白金−コバルト合金の粒状微粒子で覆われ、白金−コバルト合金の触媒機能を有することになる。コバルトの原料として、6個のアンミンがコバルトイオンCo3+に配位結合した塩化物であるヘキサアンミンコバルトトリクロライド[Co(NH3)6]Cl3を用いる。白金の原料も、6個のアンミンが白金イオンPt2+に配位結合した塩化物であるヘキサアンミン白金テトラクロライド[Pt(NH3)6]Cl4を用いる。これら2種類の金属錯体のメタノール分散液に発泡金属を浸漬し、水素ガス雰囲気の220℃の焼成炉で還元すれば、発泡金属の表面に白金−コバルト合金の粒状微粒子が析出し、発泡金属はパラジウムの粒状微粒子で覆われる。
さらに、同一の配位子からなる白金錯体とパラジウム錯体とを用いれば、発泡金属の表面は、触媒作用を持つ白金−パラジウム合金の粒状微粒子で覆われる。パラジウムの原料は、4個のアンミンがパラジウムイオンPd2+に配位結合した塩化物であるテトラアンミンパラジウムジクロライド水和物[Pd(NH3)4]Cl2・H2Oを用いる。また白金の原料も、4個のアンミンが白金イオンPt2+に配位結合した塩化物であるテトラアンミン白金ジクロライド[Pt(NH3)4]Cl2を用いる。これら2種類の金属錯体のメタノール分散液に発泡金属を浸漬し、水素ガス雰囲気の200℃の焼成炉で還元すれば、発泡金属の表面に白金−パラジウム合金が析出し、発泡金属は白金−パラジウム合金の粒状微粒子で覆われる。
実施例6と実施例7とに、鉄微粒子の集まりと、ニッケル微粒子ないしはアルミニウム微粒子の集まりでの集まりで発泡金属を構成し、発泡金属の表面を二元合金の粒状微粒子で覆った事例を説明した。発泡金属の構成は、鉄微粒子の集まりと、ニッケル微粒子ないしはアルミニウム微粒子の集まりに限定されることはない。ラウリン酸金属化合物もオクチル酸金属化合物と同様に、様々な金属からなるラウリン酸金属化合物が容易に合成できるので、様々な金属の微粒子によって多層構造が形成できる。また、発泡金属の表面を覆う二元合金の微粒子についても、様々な金属からなるクロロ錯体あるいはアンミン錯体が容易に合成できるため、様々な二元合金の微粒子によって発泡金属を覆うことができる。さらに、3種類の金属錯体を用いれば、金属錯体の各々のモル濃度に応じて3種類の金属が析出し、これら3種類の金属の比率からなる組成割合で構成される三元合金からなる微粒子で覆うこともできる。つまり、発泡金属の性質に応じて、発泡金属を構成する金属微粒子の組み合わせを決め、発泡金属の表面を覆う合金の組成を決めればよい。
本実施例は、ニッケルの微粒子の集まりが空孔の殻の内側を構成し、鉄とニッケルとの二元合金の微粒子の集まりが、空孔の殻の外側を構成する空孔の集まりからなる発泡金属を製造する実施例である。このような発泡金属は、鉄−ニッケル合金の性質を利用して、各種フィルター、ミストコレクター、サイレンサー、脱臭器などの構造部品、各種コアや電磁波シール材などの機能部品に用いることができる。なお本実施例では、鉄−ニッケル合金の組成を1対1のモル比で構成したが、合金の原料であるラウリン酸鉄とラウリン酸ニッケルとのモル数に応じて、鉄−ニッケル合金の組成割合を変えることができる。また、空孔の殻の内側を、鉄微粒子の集まりで構成してもよい。
本実施例では、実施例1と同様に、有機化合物としてテレフタル酸の平均粒径が50μmの微粉を用いた。また、ニッケル微粒子の原料はオクチル酸ニッケル用いた(例えば、日本化学産業株式会社の製品)。さらに、鉄−ニッケル合金微粒子の原料として、ラウリン酸鉄(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)とラウリン酸ニッケル(例えば、日油株式会社の製品)を用いた。
図8に、発泡金属を製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸ニッケルとラウリン酸鉄とラウリン酸ニッケルとの各々の1モルを、6リットルのn−ブタノールに分散する(S80工程)。この分散液に、テレフタル酸の微粉100gを加えて混合する(S81工程)。この混合液を容器に充填する(S82工程)。容器は正四角柱である。次に、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールは回収機で回収する(S83工程)。さらに、容器を290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸ニッケルを熱分解する(S84工程)。次に、容器を360℃の熱処理炉に1分間放置し、ラウリン酸鉄とラウリン酸ニッケルを同時に熱分解する(S85工程)。さらに、容器を410℃の熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を昇華させ、昇華したテレフタル酸は回収機で回収する(S86工程)。最後に容器の底にある正方形の発泡金属を取り出す。
次に、前記した条件で製作した発泡金属の一部を試料として切り出し、試料の観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。また、試料の断面の観察から、空孔は直径が0.3mmの球に近い形状であり、空孔同士の間には、粒状微粒子が70−80層の厚みで多層構造を形成していることが確認できた。次に、試料からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたので、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料の断面における粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。空孔の近傍はニッケル原子の集まりで覆われ、ニッケル原子の層の外側に鉄原子とニッケル原子とが共存し、双方の原子が偏在する箇所が見られなかったため、鉄―ニッケル合金であることが分かった。また、合金層がニッケル層の2倍近い厚みで存在することが確認できた。
以上に説明した電子顕微鏡による試料の観察結果から、空孔と空孔との間隙は40−60nmの大きさの幅に入る粒状微粒子の集まりで充填され、ニッケル微粒子が25層前後の層をなして空孔を覆い、鉄−ニッケル合金の微粒子はニッケル微粒子の層の外側に2倍に近い層をなして鉄微粒子の層を覆い、空孔同士は合金微粒子の金属結合で接合されていることが確認できた。これらの結果から、発泡金属の開口率は94%前後と考えられる。
本実施例は、本実施例は、鉄の微粒子の集まりが空孔の殻の内側を構成し、銅とアルミニウムとの二元合金の微粒子の集まりが、空孔の殻の外側を構成する発泡金属を製造する実施例である。このような発泡金属は、銅−アルミ合金の性質が優勢になるため、銅より引張強度が大きく、耐食性に優れ、より硬度が高いヒートシンク、ラジエター、熱交換器など放熱と吸熱とが求められる部品への適応が可能になる。なお、本実施例では、銅−アルミニウム合金の組成を4対1のモル比で構成したが、合金の原料であるラウリン酸銅とラウリン酸アルミニウムとのモル数に応じて、銅−アルミニウム合金の組成を変えることができる。また、空孔の殻の内側をニッケル微粒子の集まりで構成してもよい。
本実施例では、前記した実施例と同様に、有機化合物としてテレフタル酸の平均粒径が50μmの微粉を用いた。また、鉄微粒子の原料は、実施例1−3と同様にオクチル酸鉄用いた。さらに銅−アルミニウム合金微粒子の原料として、ラウリン酸銅(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)とラウリン酸アルミニウム(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
図9に、発泡金属を製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸鉄の1モルとラウリン酸銅の1.6モルとラウリン酸アルミニウムの0.4モルとを、6リットルのn−ブタノールに分散する(S90工程)。この分散液に、テレフタル酸の微粉の100gを加えて混合する(S91工程)。この混合液を容器に充填する(S92工程)。容器は正四角柱である。次に、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールは回収機で回収する(S93工程9。さらに、容器を290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸鉄を熱分解する(S94工程)。次に、容器を360℃の熱処理炉に1分間放置し、ラウリン酸銅とラウリン酸アルミニウムを同時に熱分解する(S95工程)。さらに、容器を410℃の熱処理炉に2分間放置し、テレフタル酸を昇華させ、昇華したテレフタル酸は回収機で回収する(S96工程)。最後に容器の底に製作された正方形の発泡金属を取り出す。
次に、製作した発泡金属の一部を試料として切り出し、試料の観察と分析とをSEMで行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。また、試料の断面の観察から、空孔は直径が0.3mmの球に近い形状であり、空孔同士の間には、粒状微粒子が70−80層の厚みで多層構造を形成していることが確認できた。次に、試料の断面からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたので、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料の断面における粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。空孔の近傍は鉄原子の集まりで覆われ、鉄原子の層の外側に銅原子とアルミニウム原子とが4対1の割合で共存し、双方の原子が偏在する箇所が見られなかったため、銅とアルミ二ウムとの組成が4対1からなる銅−アルミニウム合金であることが分かった。また、合金層が鉄層の2倍近い厚みで存在することが確認できた。
以上に説明した電子顕微鏡による試料の観察結果から、空孔と空孔との間隙は、40−60nmの大きさの幅に入る粒状微粒子の集まりで充填され、鉄微粒子が25層前後の層をなして空孔を覆い、銅−アルミニウム合金の微粒子は鉄微粒子の層の外側に2倍に近い層をなして鉄微粒子の層を覆い、空孔同士は合金微粒子の金属結合で接合されていることが確認できた。これらの結果から、発泡金属の開口率は94%前後と考えられる。
本実施例は、鉄の微粒子の集まりが空孔の殻の内側を構成し、銅とニッケルとの組成比率が1対2となる銅−ニッケル二元合金の微粒子の集まりが空孔の殻の外側を構成する発泡金属を製造する実施例である。このような発泡金属は、銅−ニッケル合金の性質が優勢になるため、銅の電気抵抗の3倍近く電気抵抗が高まるが、銅より引張強度が3倍大きくなり、熱抵抗が1/4以上小さくなり、耐食性に優れ、半田付け性は銅と変わらないため、回路基板材として用いることができる。なお、本実施例では、銅とニッケルとの組成割合が1対2のモル比で合金を構成したが、合金の原料であるラウリン酸銅とラウリン酸ニッケルとのモル数に応じて、銅−ニッケル合金の組成を変えることができる。また、空孔の殻の内側をニッケル微粒子の集まりで構成してもよい。
本実施例は、前記した実施例と同様に、有機化合物としてテレフタル酸の平均粒径が50μmの微粉を用いた。また鉄微粒子の原料は、実施例1−3と同様にオクチル酸鉄を用いた。さらに銅−ニッケル合金微粒子の原料として、ラウリン酸銅(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)とラウリン酸ニッケル(例えば、日油株式会社の製品)を用いた。
図10に、発泡金属を製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸鉄の1モルとラウリン酸銅の0.67モルとラウリン酸ニッケルの1.34モルとを、6リットルのn−ブタノールに分散する(S100工程)。この分散液に、テレフタル酸の微粉100gを加えて混合する(S101工程)。この混合液を容器に充填する(S102工程)。容器は正四角柱である。次に、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールは回収機で回収する(S103工程)。さらに、容器を290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸鉄を熱分解する(S104工程)。次に、容器を360℃の熱処理炉に1分間放置し、ラウリン酸銅とラウリン酸ニッケルを同時に熱分解する(S105工程)。さらに、容器を410℃の熱処理炉に2分間放置してテレフタル酸を昇華させ、昇華したテレフタル酸は回収機で回収する(S106工程)。最後に容器の底にある正方形の発泡金属を取り出す。
次に、前記した条件で製作した発泡金属の一部を試料として切り出し、試料の観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。また、試料の断面の観察から、空孔は直径が0.3mmの球に近い形状であり、空孔同士の間には、粒状微粒子が70−80層の厚みで多層構造を形成していることが確認できた。次に、試料の断面からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたので、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料の断面における粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。空孔の近傍は鉄原子の集まりで覆われ、鉄原子の層の外側に銅原子とニッケル原子とが1対2の割合で共存し、双方の原子が偏在する箇所が見られなかったため、銅とニッケルとの組成が1対2からなる銅−ニッケル合金であることが分かった。また、合金層が鉄層の2倍近い厚みで存在することが確認できた。
以上に説明した電子顕微鏡による試料の観察結果から、空孔と空孔との間隙は、40−60nmの大きさの幅に入る粒状微粒子の集まりで充填され、鉄微粒子が25層前後の層をなして空孔を覆い、銅−ニッケル合金の微粒子は鉄微粒子の層の外側に2倍に近い層をなして鉄微粒子の層を覆い、空孔同士は合金微粒子の金属結合で接合されていることが確認できた。これらの結果から、発泡金属の開口率は94%前後と考えられる。
実施例8−10に、ニッケルないしは鉄からなる強磁性微粒子の集まりを多層構造の第1層として形成し、その外側に鉄−ニッケル合金あるいは銅−アルミニウム合金あるいは銅−ニッケル合金の二元合金の微粒子の集まりで多層構造の第2層を形成する3つの実施例を説明したが、第2層を形成する合金が3つの実施例に限られることはない。ラウリン酸金属化合物もオクチル酸金属化合物と同様に、様々な金属からなるラウリン酸金属化合物が容易に合成できるので、様々な二元合金の微粒子によって多層構造の第2層が形成できる。さらに、合金の組成割合も、ラウリン酸金属化合物のモル濃度に応じて自在に変えられる。また、多層構造の第1層も、オクチル酸金属化合物に応じて、磁性を有する金属微粒子が変えられる。このように、金属微粒子の原料が、合成が容易で熱分解温度が低いカルボン酸金属化合物を用いるため、様々な金属微粒子の組み合わせからなる発泡金属が容易に製造でき、様々な性質を持つ発泡金属が安価に製造できる。さらに、3種類のラウリン酸金属化合物を用いれば、ラウリン酸金属化合物の各々のモル濃度に応じて3種類の金属が析出し、これら3種類の金属の比率からなる組成割合で構成される三元合金で多層構造の第2層が形成できる。つまり、実現したい発泡金属の性質に応じて、金属微粒子の組み合わせを決め、これに応じて、原料となるカルボン酸金属化合物を用いれば、必要となる性質を持つ発泡金属が製造できる。
本実施例は、鉄の微粒子の集まりが空孔の殻の内側を構成し、ニッケルが76%、クロムが16%、鉄が8%との組成比率からなるインコネルと呼ばれる三元合金の微粒子の集まりが空孔の殻の外側を構成する空孔の集まりからなる発泡金属を製造する実施例である。インコネルは、900℃以上の高温まで酸化に耐え、様々な環境条件下での耐食性があり、またクリープ限度の高い耐熱合金として知られている。こうした性質を持つインコネルが多層構造の表層を形成する発泡金属は、高温で耐食性が必要な様々な環境で使用される各種フィルター、ミストコレクター、サイレンサー、脱臭器などの部品に用いることができる。なお、本実施例では、鉄微粒子の集まりからなる多層構造の厚みと、インコネルからなる多層構造の厚みの双方を薄くし、より多くの微粒子同士の金属結合部が破壊された発泡金属を製造し、発泡金属の内部を、気体や粉塵などの微粒子が貫通しやすい構造とした。
本実施例では、前記した実施例と同様に、有機化合物としてテレフタル酸の平均粒径が50μmの微粉を用いた。また、鉄微粒子の原料は、実施例1−3と同様にオクチル酸鉄を用いた。さらにインコネルの原料として、ラウリン酸ニッケル(例えば、日油株式会社の製品)とラウリン酸クロム(三津和化学薬品株式会社の試作品)とラウリン酸鉄(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
図11に発泡金属を製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸鉄の0.5モルとラウリン酸ニッケルの0.76モルとラウリン酸クロムの0.16モルとラウリン酸鉄0.08モルとを、4リットルのn−ブタノールに分散する(S110工程)。分散液にテレフタル酸の微粉100gを加えて混合する(S111工程)。混合液を容器に充填する(S112工程)。容器は正四角柱である。次に、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールは回収機で回収する(S113工程)。さらに、容器を290℃の熱処理炉に1分間放置しオクチル酸鉄を熱分解する(S114工程)。次に、容器を360℃の熱処理炉に1分間放置し、ラウリン酸ニッケルとラウリン酸クロムとラウリン酸鉄とを同時に熱分解する(S115工程)。さらに、容器を410℃の熱処理炉に2分間放置してテレフタル酸を昇華し、昇華したテレフタル酸は回収機で回収する(S116工程)。最後に容器の底にある正方形の発泡金属を取り出す。
次に、製作した発泡金属の一部を試料として切り出し、試料の観察と分析とをSEMで行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。また、試料の断面の観察から、空孔は直径が0.3mmの球に近い形状であり、空孔同士の間には、粒状微粒子が35層前後の厚みで多層構造を形成していることが確認できた。次に、試料の断面からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたので、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料の断面における粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。空孔の近傍は鉄原子の集まりで覆われ、鉄原子の層の外側にニッケル原子とクロム原子と鉄原子とが10対2対1に近い割合で共存し、双方の原子が偏在する箇所が見られなかった。このため、鉄原子の層の外側の材質は、3種類のラウリン酸金属化合物のモル濃度からインコネルであることが分かった。また、合金層が鉄層の2倍近い厚みで存在することが確認できた。
以上の試料の観察結果から、空孔と空孔との間隙は40−60nmの大きさの幅に入る粒状微粒子の集まりで充填され、鉄微粒子が12層前後の層をなして空孔を覆い、インコネルの微粒子は鉄微粒子の層の外側に2倍に近い層をなして鉄微粒子の層を覆い、空孔同士は合金微粒子の金属結合で接合されていることが確認できた。これらの結果から、発泡金属の開口率は98%前後と考えられる。
本実施例は、鉄微粒子の集まりで空孔の殻の内側を構成し、鉄が54%、ニッケルが29%、コバルトが17%の組成比率からなるコバールと呼ばれる三元合金の微粒子の集まりが、空孔の殻の外側を構成する発泡金属を製造する実施例である。コバールは常温付近での熱膨張率が金属の中でも小さく、硬質ガラスに近いので、硬質ガラス、セラミック封着用、電子管、電子部品などで接合部材として使用されている。一方、コバールは非常に粘りがあり、溶製材で製作したコバールは加工や切削の難しい材料である。しかしながら、発泡金属は必要な形状の製品が製作できるため、本実施例で製作した発泡金属は、硬質ガラスやセラミックスからなる部品同士を接合させる接合部材に適応することができる。なお、本実施例は、実施例10と同様に、鉄微粒子の集まりからなる多層構造の厚みと、コバールからなる多層構造の厚みを薄くし、接合時の応力で発泡金属が変形しやすい構造とした。
本実施例では、前記した実施例と同様に、有機化合物としてテレフタル酸の平均粒径が50μmの微粉を用いた。また、鉄微粒子の原料は、実施例1−3と同様にオクチル酸鉄を用いた。さらにコバールの原料として、ラウリン酸鉄(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)、ラウリン酸ニッケル(例えば、日油株式会社の製品)とラウリン酸コバルト(三津和化学薬品株式会社の試作品)を用いた。
図12に、発泡金属を製造する製造工程を示す。最初に、オクチル酸鉄の0.5モルとラウリン酸鉄の0.54モルとラウリン酸ニッケルの0.29モルとラウリン酸コバルト0.17モルとを、4リットルのn−ブタノールに分散する(S120工程)。この分散液に、テレフタル酸の微粉100gを加えて混合する(S121工程)。この混合液を容器に充填する(S122工程)。容器は正四角柱である。次に、容器を120℃の熱処理炉に入れてn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールは回収機で回収する(S123工程)。さらに、容器を290℃の熱処理炉に1分間放置し、オクチル酸鉄を熱分解する(S124工程)。次に、容器を360℃の熱処理炉に1分間放置し、ラウリン酸鉄とラウリン酸ニッケルとラウリン酸コバルトとを同時に熱分解する(S125工程)。さらに、容器を410℃の熱処理炉に2分間放置してテレフタル酸を昇華し、昇華したテレフタル酸は回収機で回収する(S126工程)。最後に容器の底にある正方形の発泡金属を取り出す。
次に、前記した条件で製作した発泡金属の一部を試料として切り出し、試料の観察と分析とをSEMで行なった。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の表面を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが分かった。また、試料の断面の観察から、空孔は直径が0.3mmの球に近い形状であり、空孔同士の間には、粒状微粒子が35層前後の厚みで多層構造を形成していることが確認できた。次に、試料の断面からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたので、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料の断面における粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。空孔の近傍は鉄原子の集まりで覆われ、鉄原子の層の外側に鉄原子とニッケル原子とコバルト原子とが3対2対1に近い割合で共存し、双方の原子が偏在する箇所が見られなかった。このため、鉄原子の層の外側の材質は、3種類のラウリン酸金属化合物のモル濃度からコバールであることが分かった。また、合金層が鉄層の2倍近い厚みで存在することが確認できた。
以上に説明したSEMによる試料の観察結果から、空孔と空孔との間隙は40−60nmの大きさの幅に入る粒状微粒子の集まりで充填され、鉄微粒子が12層前後の層をなして空孔を覆い、インコネルの微粒子は鉄微粒子の層の外側に2倍に近い層をなして鉄微粒子の層を覆い、空孔同士は合金微粒子の金属結合で接合されていることが確認できた。これらの結果から、発泡金属の開口率は98%前後と考えられる。
実施例11と実施例12とに、鉄微粒子の集まりで多層構造の第1層を形成し、その外側に3元合金の微粒子の集まりで多層構造の第2層を形成する実施例を説明したが、3元合金が2つの実施例に限られない。ラウリン酸金属化合物もオクチル酸金属化合物と同様に、様々な金属からなるラウリン酸金属化合物が容易に合成でき、ラウリン酸金属化合物の各々のモル濃度に応じて3種類の金属が同時に析出し、3種類の金属の比率からなる組成割合で構成される様々な三元合金が形成できる。また、多層構造の第1層の材質も、オクチル酸金属化合物に応じて変えられる。このように、金属微粒子の原料が、合成が容易で熱分解温度が低いカルボン酸金属化合物を用いるため、様々な金属微粒子の組み合わせからなる発泡金属が容易に製造でき、様々な性質を持つ発泡金属が安価に製造できる。
Claims (7)
- 第一の金属と第二の金属とからなる2種類の金属の粒状微粒子の集まりが空孔の殻を形成し、前記第二の金属の粒状微粒子同士の金属結合で前記空孔の殻同士が接合された該空孔の殻の集合体からなる発泡金属の製造方法は、
熱分解で磁性を有する金属が析出する第一の有機金属化合物と、熱分解で金属を析出する熱分解温度が前記第一の有機金属化合物の熱分解温度より高い第二の有機金属化合物とを、アルコールに分散し、前記2種類の有機金属化合物が前記アルコールに分散された分散液を作成する第一の製造工程と、前記アルコールの沸点より融点が高い第一の性質と、前記第二の有機金属化合物の熱分解温度より気化点が高い第二の性質とを兼備する有機化合物の粉体の集まりを前記分散液に投入し、該有機化合物の粉体の集まりと前記分散液とからなる混合物を作成する第二の製造工程と、前記混合物を容器に充填する第三の製造工程と、前記容器を前記アルコールの沸点に昇温する第四の製造工程と、前記容器を大気雰囲気で前記第一の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する第五の製造工程と、前記容器を大気雰囲気で前記第二の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する第六の製造工程と、前記容器を大気雰囲気で前記有機化合物の気化点を超える温度に昇温する第七の製造工程とからなる、これら7つの製造工程を連続して実施する製造方法によって、第一の金属と第二の金属とからなる2種類の金属の粒状微粒子の集まりが空孔の殻を形成し、前記第二の金属の粒状微粒子同士の金属結合で前記空孔の殻同士が接合された該空孔の殻の集合体からなる発泡金属が、前記容器の形状を反映した形状として該容器内に製造される、発泡金属の製造方法。 - 請求項1に記載した製造方法で製造した発泡金属を構成する金属と異なる第三の金属が熱分解で析出する無機金属化合物を、アルコールに分散し、前記無機金属化合物が前記アルコールに分散された分散液を作成する第一の製造工程と、請求項1に記載した製造方法で製造した発泡金属の集まりを、前記分散液に浸漬し、該発泡金属の集まりと前記分散液とからなる混合物を作成する第二の製造工程と、前記混合物を容器に充填する第三の製造工程と、前記容器を前記アルコールの沸点に昇温する第四の製造工程と、前記容器を還元雰囲気で前記無機金属化合物が熱分解する温度に昇温する第五の製造工程とからなる、これら5つの製造工程を連続して実施する製造方法によって、請求項1に記載した製造方法で製造した発泡金属の表面が、前記第三の金属の粒状粒子によって覆われた発泡金属の集まりが前記容器内に製造される、発泡金属の製造方法。
- 請求項2に記載した発泡金属の製造方法において、請求項2に記載した熱分解で第三の金属を析出する無機金属化合物が、無機物からなる配位子が金属イオンに配位結合する金属錯体である、請求項2に記載した発泡金属の製造方法。
- 請求項3に記載した発泡金属の製造方法において、請求項3に記載した無機物からなる配位子が金属イオンに配位結合する金属錯体が、同一の無機物からなる配位子が異なる金属イオンに配位結合する複数種類の金属錯体である、請求項3に記載した発泡金属の製造方法。
- 請求項1に記載した発泡金属の製造方法において、請求項1に記載した第二の有機金属化合物が、同一の有機酸からなる複数種類の有機金属化合物である、請求項1に記載した発泡金属の製造方法。
- 請求項1または請求項5に記載した発泡金属の製造方法において、前記有機金属化合物が、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合する第一の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物である、請求項1または請求項5に記載した発泡金属の製造方法。
- 請求項1または請求項5に記載した発泡金属の製造方法において、前記有機化合物が、飽和脂肪酸ないしは芳香族カルボン酸ないしは多環芳香族炭化水素からなるいずれかの有機化合物である、請求項1または請求項5に記載した発泡金属の製造方法。
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