本発明では、光出力波形の立ち上がりと立ち下がりのなまりを改善するオーバーシュート電流及びアンダーシュート電流が重畳された所定電流に、さらに加算電流を重畳させることで、所望の光出力波形を得る。
(第一の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の概要について説明する。
図1は、光源の発光遅延時間を説明する図である。図1では、光源に供給される駆動電流の波形と、駆動電流が供給された光源の光出力波形を示している。尚図1では、光源の出力は光量で示されるものとした。
図1に示す発光遅延時間tは、光源に対する駆動電流の供給が開始されてから、光源が所定光量Poを出力するまでの時間を示す。所定光量Poは、予め設定された目標光量である。発光遅延時間tは、寄生遅延時間taと応答遅延時間tbの和である。寄生遅延時間taは光源と回路を接続する配線や光源のパッケージ内配線などに存在する光源に並列に生じる寄生容量への充電時間である。尚寄生遅延時間taの詳細は後述する。寄生遅延時間taは、寄生容量が大きくなる程充電量および充電時間が増大するため、これに応じて増大する傾向にある。
応答遅延時間tbは、光源に所定電流Iopが供給されて光源が発光を開始してから所定光量Poを出力するまでの応答時間である。所定電流Iopは、所定光量Poを得るために予め設定された電流値である。応答遅延時間tbは、光源の特性によるものであり、例えば微分抵抗による影響がある。応答遅延時間tbは、微分抵抗が大きくなるほど光源への電流が流れにくくなるため、これに応じて増大する傾向にある。
尚駆動電流が光源に供給されるまでの発光遅延時間には、実際には寄生遅延時間と応答遅延時間以外の回路基板上の配線遅延時間等含まれるが、本明細書の説明では配線遅延時間等は無視し、発光遅延時間を寄生遅延時間と応答遅延時間の和とした。また本明細書の説明では、駆動電流波形と光出力波形のそれぞれの立下がりを揃えた状態で示す。
以下に図2を参照して寄生容量について説明する。図2は、光源の寄生容量を説明する図である。
本実施形態では、光源を例えばLD(Laser Diode)とした。図2に示すLDは、所定電流Iopが供給されると所定光量Poを出力する。図2に示すCは、寄生容量である。寄生容量Cは、例えばLDがLDドライバ等の回路と共に回路基板等に実装された際に、LDとLDドライバ等の回路とを接続する配線に発生する寄生容量を含む。また寄生容量Cは、LDやLDドライバ等の回路がパッケージ化されている場合には、パッケージ等の寄生容量も含む。
LDに所定電流Iopが供給されると、所定電流Iopの一部の電流Icは、寄生容量Cに供給されて寄生容量Cの充電を行う。寄生容量Cが所定電流Iopにより充電されている間、LDには所定電流Iopの一部である電流(Iop−Ic)が供給される。そして寄生容量Cの充電が完了すると、所定電流IopがLDに対して供給される。すなわち電流Icによる寄生容量Cの充電時間は、LDには所定電流Iopの一部の電流(Iop−Ic)しか供給されないため、光出力を得られない時間となる。この光出力が得られない時間が寄生遅延時間とである。
次に図3を参照して本発明の光源駆動回路から光源に供給する駆動電流について説明する。図3は、第一の実施形態の駆動電流について説明する第一の図である。図3には、光源駆動回路から光源に供給される駆動電流波形を示している。
光源に供給される駆動電流Ikは、所定電流Iopと、オーバーシュート電流Iovと、アンダーシュート電流Iudと、所定電流Iopに加算(重畳)される加算電流I′とを含む。
所定電流Iopは、光源から所定光量Poを得るための電流である。オーバーシュート電流Iovは、所定電流Iopの立ち上がりと同期して所定電流Iopに重畳される。アンダーシュート電流Iudは、所定電流Iopの立ち下がりと同期して所定電流Iopに重畳される。この3つの電流により得られる光出力波形は、図3に示す波形31である。
本実施形態の加算電流I′は、光源の出力光量を所定光量Poより大きい光量P1とするために光源に供給される電流である。本実施形態の加算電流I′は、加算所定電流Iop′と、加算オーバーシュート電流Iov′と、加算アンダーシュート電流Iud′とで構成される。加算電流I′により得られる光出力波形は、図3に示す波形32である。
本実施形態の加算所定電流Iop′は、光量を所定光量PoからP1とするために必要となる電流であり、所定電流Iopが光源に供給された後に所定のタイミングで光源に供給される。本実施形態の加算所定電流Iop′の値は、予め設定されている。
本実施形態の加算オーバーシュート電流Iov′は、加算所定電流Iop′の立ち上がりに同期して加算所定電流Iop′に重畳される。本実施形態の加算アンダーシュート電流Iud′は、加算所定電流Iop′の立ち下がりに同期して加算所定電流Iop′に重畳される。
本実施形態の加算オーバーシュート電流Iov′と加算アンダーシュート電流Iud′の詳細は後述する。
本実施形態では、図3に示すような駆動電流Ikを光源に供給することで、光源から所望の光量を得ることができる。また本実施形態では、加算電流I′に加算オーバーシュート電流Iov′と加算アンダーシュート電流Iud′を含むため、加算電流I′の印加による波形32の立ち上がりと立ち下がりのなまりを改善できる。
図4は、第一の実施形態の画像形成装置の構成の概略を説明する図である。
本実施形態の画像形成装置10は、光走査装置20、感光体30、書込制御部40、クロック生成回路50を有する。
本実施形態の光走査装置20は、ポリゴンミラー21、走査レンズ22、光源駆動回路100、発光素子(光源)であるLD(Laser Diode;半導体レーザ)、受光素子となるPD(フォトディテクタ)を有する。尚本実施形態では光源をLDとしたが、これに限定されない。光源は、半導体レーザアレー(LDA;Laser Diode Array)、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser;垂直共振器面発光レーザ)等であっても良い。
LDから発光されたレーザ光は、回転するポリゴンミラー21によりスキャンされ、走査レンズ22を介して被走査媒体である感光体30上に照射される。照射されたレーザ光は感光体30上で光スポットとなり、これにより感光体30上に静電潜像が形成される。またポリゴンミラー21は、1ラインの走査が終わる毎にレーザ光をPDに照射する。PDはレーザ光が照射されると、これを電気信号に変換し、この電気信号を書込制御部40の有する位相同期回路41に入力する。位相同期回路41は、電気信号が入力されると次の1ライン分の画素クロックを生成する。また位相同期回路41には、クロック生成回路50から高周波クロック信号が入力されており、これにより画素クロックの位相同期が図られている。
書込制御部40は、生成された画素クロックに従って基準パルス信号を光源駆動回路100へ供給する。また書込制御部40は、目標光量設定信号を光源駆動回路100に供給し、LDを駆動する。これにより、画像データの静電潜像が感光体30上に形成される。
以下に図5を参照して本実施形態の光源駆動回路100を説明する。図5は、第一の実施形態の光源駆動回路を説明する図である。
本実施形態の光源駆動回路100は、CPU(Central Processing Unit)110、メモリ120、DAC(Digital to Analog Converter)130、LPF(Low-pass Filter)140、ADC(Analog to Digital Converter)150、LDドライバ200、抵抗R1を有する。尚抵抗R1は、光源駆動回路100に含まれなくても良い。この場合抵抗R1は、光源駆動回路100の外部に設けられる。
本実施形態の光源駆動回路100は、LDとPDとに接続されており、LDの光量に応じてPDから出力される電気信号に基づきLDの駆動を制御する。
CPU110は、光源駆動回路100の各種動作を制御する。メモリ120は、光源駆動回路100の動作に用いられる各種の値等を格納する。CPU110の機能及びメモリ120に格納される値の詳細は後述する。
DAC130は、CPU110から出力される信号をアナログ値に変換する。LPF140は、PDから出力された電気信号のうち所定帯域の信号を通過させる。ADC150は、LPF140から出力された電気信号をデジタル値に変換する。
LDドライバ200は、基準パルス信号と目標光量設定信号とに基づきLDへ駆動電流を供給し、LDの発光タイミングを制御する。
また、本実施形態のLDドライバ200は、LDを駆動するために通常印加する所定電流の立ち上がりと同期したオーバーシュート電流Iovと、所定電流の立ち下がりと同期したアンダーシュート電流IudとをLDへ印加する。
以下に本実施形態のLDドライバ200について説明する。本実施形態のLDドライバ200は、スイッチング電流源210、加算所定電流源220、オーバーシュート電流源230、加算オーバーシュート電流源240、アンダーシュート電流源250、加算アンダーシュート電流源260を有する。また本実施形態のLDドライバ200は、スイッチ211、221、231、241、251、261を有する。
スイッチング電流源210、加算所定電流源220、オーバーシュート電流源230、加算オーバーシュート電流源240、アンダーシュート電流源250、加算アンダーシュート電流源260は、LDの駆動電流Ikを生成する。本実施形態の駆動電流Ikは、各電流源から出力される電流値を加算した電流である。
スイッチング電流源210は、CPU110からの点灯制御信号に基づき、所定電流Iopを生成する。スイッチング電流源210は、スイッチ211を介してLDと接続されている。スイッチ211は、例えばトランジスタ等により構成され、CPU110から供給される点灯制御信号に基づきオン/オフが制御される。また所定電流Iopの値は、CPU110からの指示により設定される。
加算所定電流源220は、CPU110からの加算所定電流生成信号に基づき所定の加算所定電流Iop′を生成する。加算所定電流源220は、スイッチ221を介してLDと接続されている。スイッチ221は、例えばトランジスタ等により構成され、CPU110から供給される加算電流生成信号に基づきオン/オフが制御される。また加算所定電流Iop′の値は、CPU110からの指示により設定される。本実施形態のスイッチ221は、加算所定電流生成信号がハイレベルの期間(以下、加算所定時間Top′)オンされる。本実施形態では、加算所定時間Top′は、予め設定されている。
オーバーシュート電流源230は、パルス信号S1の立ち上がりに、所定電流Iopを補助する第一の補助駆動電流としてのオーバーシュート電流Iovを生成する。オーバーシュート電流源230は、スイッチ231を介してLDと接続されている。スイッチ231は、例えばトランジスタ等により構成され、CPU110から供給されるオーバーシュート生成信号に基づきオン/オフが制御される。本実施形態では、オーバーシュート生成信号がオンの期間がオーバーシュート時間Tovである。具体的には本実施形態のスイッチ231は、スイッチング信号の立ち上がりからオーバーシュート時間Tovの間オンとされる。本実施形態では、オーバーシュート時間Tov、予め設定されており、オーバーシュート電流Iovの値は動的調整される。
加算オーバーシュート電流源240は、スイッチ241のオン/オフにより、LDとの接続が制御される。加算オーバーシュート電流源240は、加算所定電流Iop′を補助する第一の加算補助電流としての加算オーバーシュート電流Iov′を生成する。加算オーバーシュート電流源240は、スイッチ241がオンされると、加算所定電流Iop′の立ち上がりと同期して加算オーバーシュート電流Iov′をLDに供給する。スイッチ241は、CPU110から供給される加算オーバーシュート生成信号によりオン/オフが制御される。具体的にはスイッチ241は、加算オーバーシュート生成信号がハイレベルの期間(以下、加算オーバーシュート時間Tov′)オンされる。本実施形態では、加算オーバーシュート時間Tov′は、予め設定されている。
アンダーシュート電流源250は、スイッチ251のオン/オフにより、LDとの接続が制御される。アンダーシュート電流源250は、所定電流Iopを補助する第二の補助駆動電流としてのアンダーシュート電流Iudを生成する。スイッチ251がオンされると、所定電流Iopの立ち下がりと同期してアンダーシュート電流IudをLDに供給する。スイッチ241は、CPU110から供給されるアンダーシュート生成信号によりオン/オフが制御される。具体的にはスイッチ251は、アンダーシュート生成信号がハイレベルの期間(以下、アンダーシュート時間Tud)オンされる。本実施形態では、アンダーシュート時間Tudとアンダーシュート電流Iudの値とは、予め設定されている。
加算アンダーシュート電流源260は、スイッチ261のオン/オフにより、LDとの接続が制御される。加算アンダーシュート電流源260は、加算所定電流Iop′を補助する第二の加算補助電流としての加算アンダーシュート電流Iud′を生成する。加算アンダーシュート電流源260は、スイッチ261がオンされると、加算所定電流Iop′の立ち下がりと同期して加算アンダーシュート電流Iud′をLDに供給する。スイッチ261は、CPU110から供給される加算アンダーシュート生成信号によりオン/オフが制御される。具体的にはスイッチ261は、加算アンダーシュート生成信号がハイレベルの期間(以下、加算アンダーシュート時間Tud′)オンされる。本実施形態では、加算アンダーシュート時間Tud′は、予め設定されている。
以下に図6を参照して本実施形態のCPU110の機能とメモリ120に格納された値について説明する。図6は、CPUの機能構成及びメモリに格納された値を説明する図である。
本実施形態のCPU110は、電流制御部111、パルス生成部112、Iov値設定部113、Iud値設定部117を有する。また本実施形態のCPU110は、加算所定電流値設定部(Iop′値設定部)131、加算オーバーシュート電流値設定部(加算Iov′値設定部)132、加算アンダーシュート電流値設定部(加算Iud′値設定部)133を有する。
メモリ120は、電流値記憶部121、遅延時間記憶部122、点灯パターン記憶部123、相関関数記憶部124を有する。電流値記憶部121には、光源駆動回路100の有する各種電流源における設定値が記憶されている。具体的には電流値記憶部121には、所定電流Iop、加算所定電流Iop′の電流値と、オーバーシュート電流Iov及びアンダーシュート電流Iudそれぞれの初期値が設定されている。
遅延時間記憶部122は、オーバーシュート時間Tovとアンダーシュート時間Tudを決めるための遅延時間が格納されている。また遅延時間記憶部122は、加算所定時間Top′、加算オーバーシュート時間Tov′と加算アンダーシュート時間Tud′を決めるための遅延時間が格納されている。
点灯パターン記憶部123には、後述するIov値設定部113及びIud値設定部117によるオーバーシュート電流Iovの値の調整及びアンダーシュート電流Iudの値の調整の際に使用されるLDの点灯パターン信号が格納されている。
相関関数記憶部124には、加算Iov′値設定部132による加算オーバーシュート電流Iov′の値の設定と、加算Iud′値設定部133による加算アンダーシュート電流Iud′の値の設定に使用される相関関数が格納されている。本実施形態の相関関数は、LDに供給される電流とLDの光量(すなわちPDの出力)との関係を示す応答特性を示す関数である。
CPU110において、電流制御部111は、電流値記憶部121に格納された各種電流源の設定値を取得し、各種電流源に対してDAC130を介して設定値に対応する電流を出力させる。
パルス生成部112は、遅延時間記憶部122に格納された遅延時間と、基準パルス信号とに基づき、オーバーシュート生成信号、アンダーシュート生成信号、加算オーバーシュート生成信号及び加算アンダーシュート生成信号を生成する信号生成部である。またパルス生成部112は、点灯パターン信号も生成しても良い。
尚本実施形態の点灯パターン信号は、Iov値設定部113によるオーバーシュート電流Iovの値の調整の際にスイッチ211に供給される信号である。スイッチ211は、画像形成装置10が画像形成動作を行っている場合には、書込制御部40から供給される画像データに基づいた点灯制御信号により、オン/オフが制御される。
Iov値設定部113は、PDの出力に基づきオーバーシュート電流Iovを算出し設定する。本実施形態のIov値設定部113は、電流値選択部114、積分光量算出部115、判定部116を有する。Iov値設定部113の処理の詳細は後述する。
本実施形態のIud値設定部117は、例えばIov値設定部113により設定されたIov値に基づき、アンダーシュート電流量がオーバーシュート電流量と等しくなるようにアンダーシュート電流Iudの値を設定する。アンダーシュート電流Iudの電流量は、アンダーシュート電流Iudの値とアンダーシュート時間Tudの積で決まる。よってアンダーシュート時間Tudとオーバーシュート時間Tovが等しい場合にはアンダーシュート電流Iudの値は、オーバーシュート電流Iovの値の極性を逆にした値となる。
本実施形態のIop′値設定部131は、加算所定電流Iop′の値を設定する。加算所定電流Iop′の値は、電流値記憶部121に格納されていても良い。尚本実施形態の加算所定電流Iop′は、例えば所定電流Iopとの比率に基づき設定されても良い。
本実施形態のIov′値設定部132は、加算オーバーシュート電流Iov′の値を設定する。本実施形態のIud′値設定部133は、加算アンダーシュート電流Iud′の値を設定する。
本実施形態のIov′値設定部132とIud′値設定部133は、例えば相関関数記憶部124に格納された相関関数を参照し、適正な加算オーバーシュート電流Iov′及び加算アンダーシュート電流Iud′の値を設定する。尚本実施形態では、加算オーバーシュート電流量と加算アンダーシュート電流量とが等しくなるように加算オーバーシュート電流Iov′の値と加算アンダーシュート電流Iud′の値と設定しても良い。加算オーバーシュート電流Iov′及び加算アンダーシュート電流Iud′の値の詳細は後述する。
次に図7を参照して本実施形態のパルス生成部112による各種信号の生成について説明する。図7は、パルス生成部により信号の生成について説明する第一の図である。
本実施形態のパルス生成部112には、例えば遅延時間記憶部122から遅延時間t1を取得する。遅延時間t1は、オーバーシュート時間Tov及びアンダーシュート時間Tudと一致する時間である。パルス生成部112は、基準パルス信号を遅延時間t1分遅延させたパルス信号S1を生成する。パルス生成部112は、例えば基準パルス信号がハイレベルであり、且つパルス信号S1がローレベルのときオーバーシュート時間Tovがオン(ハイレベル)となるオーバーシュート生成信号を生成する。またパルス生成部112は、基準パルス信号がローレベルであり、且つパルス信号S1がハイレベルのときアンダーシュート時間Tudがオン(ハイレベル)となるアンダーシュート生成信号を生成する。
尚本実施形態では、遅延時間t1がメモリ120に格納されたものとしたが、これに限定されない。本実施形態の遅延時間t1は、上記以外の方法で取得されても良い。本実施形態のパルス生成部112は、例えばインバータ列やバッファ列によりパルス信号S1を生成しても良い。また本実施形態では、抵抗とコンデンサ等からなるローパスフィルタで基準パルス信号を遅延させた後、波形整形した信号をパルス信号S1として用いても良い。どちらの場合も、遅延量を変更する事は段数やフィルタ定数の変更により容易に実施する事が出来る。
このときオーバーシュート電流Iovが印加されるオーバーシュート時間Tov(遅延時間t1)は、例えば0.4〜0.5nsecの間とすることが好ましい。オーバーシュート時間Tovは、LDの特性や感光体の感度特性等を考慮し、階調再現性がもっとも良好となる時間に設定されれば良い。
また図7では図示していないが、本実施形態のパルス生成部112は、オーバーシュート生成信号及びアンダーシュート生成信号と同様の手法により、加算オーバーシュート生成信号及び加算アンダーシュート生成信号を生成する。
具体的には本実施形態のパルス生成部112は、遅延時間記憶部122から例えば遅延時間Tを取得する。遅延時間Tは、加算オーバーシュート時間Tov′及び加算アンダーシュート時間Tud′と一致する時間である。
パルス生成部112は、遅延時間記憶部122から加算所定時間Top′と対応する時間を取得し、この時間がハイレベルとなる加算基準パルス信号と、この加算基準パルス信号を遅延時間T遅延させたパルス信号sを生成する。パルス生成部112は、例えば加算基準パルス信号がハイレベルであり、且つパルス信号sがローレベルのとき加算オーバーシュート時間Tov′がオン(ハイレベル)となる加算オーバーシュート生成信号を生成する。
またパルス生成部112は、加算基準パルス信号がローレベルであり、且つパルス信号sがハイレベルのとき加算アンダーシュート時間Tud′がオン(ハイレベル)となる加算アンダーシュート生成信号を生成する。
尚以上の説明では、加算所定時間Top′は遅延時間記憶部122に予め記憶されているものとしたが、これに限定されない。加算所定時間Top′は、所定電流Iopがオンされる時間に応じて動的に決められても良い。
図8は、パルス生成部により信号の生成について説明する第二の図である。図8は、パルス生成部112が2つの遅延時間t1,t2を用いてオーバーシュート電流Iovとアンダーシュート電流Iudの印加時間を異ならせる場合の例を示す。
図8の例ではパルス生成部112には、例えば遅延時間記憶部122から遅延時間t1t2を取得する。遅延時間t1は、オーバーシュート時間Tovと一致する時間であり、遅延時間t2はアンダーシュート時間Tudと一致する時間である。パルス生成部112は、基準パルス信号を遅延時間t1分遅延させたパルス信号S1と、基準パルス信号を遅延時間t2遅延させたパルス信号S2と、を生成する。パルス生成部112は、例えば基準パルス信号がローレベルであり、且つパルス信号S2がハイレベルのときアンダーシュート時間Tudがオン(ハイレベル)となるアンダーシュート生成信号を生成する。
また本実施形態のパルス生成部112は、図8に示す手により加算オーバーシュート生成信号及び加算アンダーシュート生成信号を生成することもできる。
本実施例では、以上のように複数の遅延時間記憶部122に複数の遅延時間を設定することで、オーバーシュート時間Tov、アンダーシュート時間Tudのそれぞれを必要に応じて変更することができる。
次に図9を参照して本実施形態のCPU110の動作を説明する。図9は、第一の実施形態の光源駆動回路のCPUの動作を説明するフローチャートである。
本実施形態のCPU110は、Iov値設定部113により、点灯パターン信号に基づきLDを発光させた際のPDの出力波形の積分光量比が所定範囲内となったとき、電流値をオーバーシュート電流Iovとして設定する。積分光量比は、点灯パターン信号1周期分の積分光量に対するPDの出力波形の積分光量の割合を示す値である。
CPU110は、オーバーシュート電流Iovの値の設定指示を受けると、各電流値の設定対象となるLDを設定する(ステップS901)。本実施形態では、具体的には例えば、画像形成装置10がスリープモードから起動するときや、画像形成装置10の筐体に設けられたドアが開かれた後に閉じられたとき等に設定指示を受け付ける。
続いてIov値設定部113は、電流値記憶部121から所定電流Iopの値を読み出す(ステップS902)。続いてIov値設定部113は、点灯パターン信号記憶部123から点灯パターン信号を読み出す(ステップS903)。本実施形態の点灯パターン信号は、例えば1画素分LDを点灯させ、1画素分LDを消灯させるように予め生成された信号である。
続いてIov値設定部113は、遅延時間記憶部122から遅延時間t1、すなわちオーバーシュート時間Tovを読み出す(ステップS904)。
続いてIov値設定部113は、電流値記憶部121からオーバーシュート電流Iovの初期値を読み出し、電流値選択部114により、この初期値を選択する電流値選択信号をDAC130へ出力する(ステップS905)。電流値選択部114は、DAC130において出力可能な電流値のうち、初期値の次に値の小さい電流値から順に選択する。DAC130は、CPU110から電流値選択信号を受けると、選択された電流値をアナログ値に変換してオーバーシュート電流源230へ出力する。オーバーシュート電流源230は、選択された電流値をLDへ供給する。このときスイッチ231には、点灯パターン信号の立ち上がりと同期して、オーバーシュート生成信号が供給される。このオーバーシュート生成信号は、オーバーシュート時間Tovだけ、スイッチ231をオンとする。
続いてIov値設定部113は、積分光量算出部115により、PDの出力波形の積分光量比を算出する(ステップS906)。続いてIov値設定部113は、判定部116により、算出した積分光量比が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS907)。判定部116による積分光量の判定の詳細は後述する。
ステップS907において、積分光量比が所定範囲内であるとき、Iov値設定部113はこのとき選択した電流値をオーバーシュート電流Iovとして設定する(ステップS908)。ステップS907において、積分光量比が所定範囲内にないとき、Iov値設定部113はステップS905へ戻り、次に大きい電流値を選択する。
本実施形態では、以上のようにオーバーシュート電流Iovを設定することで、寄生遅延時間taと応答遅延時間tbの和である発光遅延時間tを短縮することができる。
次に本実施形態の積分光量の判定について説明する。図10は、積分光量の判定について説明する図である。
図10では、PDの出力波形を発光遅延のない理想的な波形に近づけるために、積分光量の所定範囲を例えば48%以上52%未満とした場合を示している。
図10の(1)は、電流値選択部114によりオーバーシュート電流Iovの値が選択されておらず、駆動電流Ikが点灯パターン信号に同期した所定電流Iopとなる場合のPDの出力波形を示す。この場合、点灯パターン信号の1周期分の期間HにおけるPDの出力波形の積分光量は、48%未満となる。
図10の(2)は、電流値選択部114により、オーバーシュート電流Iovの初期値Iovsが印加された場合のPDの出力波形を示す。このとき駆動電流Ikは、立ち上がりからオーバーシュート時間Tovの間、電流値Iovs分オーバーシュートされる。このときも、点灯パターン信号の1周期分の期間HにおけるPDの出力波形の積分光量は48%未満である。
続いて図10の(3)は、電流値選択部114により、電流値Iovsよりも大きい電流値Iovが選択された場合のPDの出力波形を示す。このとき駆動電流Ikは、立ち上がりからオーバーシュート時間Tovの間、電流値Iov分オーバーシュートされる。この場合、点灯パターン信号の1周期分の期間HにおけるPDの出力波形の積分光量は50%となる。したがってIov値設定部113は、電流値Iovをオーバーシュート電流として設定する。
次に、図11を参照して本実施形態の加算電流I′について説明する。図11は、加算電流と光出力波形の例を示す図である。図11(A)は、加算電流I′が所定加算電流Iop′のみであった場合の加算電流I′と光出力波形とを示す図である。図11(B)は、加算電流I′に加算オーバーシュート電流Iov′と加算アンダーシュート電流Iud′を含む場合の加算電流I′と光出力波形とを示す図である。
図11(A)に示す光出力波形では、光量が所定光量Poから所望の光量P1になるまでの立ち上がりと立ち下がりに、LDの応答特性に応じた応答遅延時間が発生する。したがって図11(A)に示す光出力波形の立ち上がりと立ち下がりにはなまりが生じる。
これに対して図11(B)に示す光出力波形では、加算オーバーシュート電流Iov′と加算アンダーシュート電流Iud′とが印加されるため、応答遅延時間が短縮され、光出力波形のなまりが改善されていることがわかる。
本実施形態の加算オーバーシュート電流Iov′及び加算アンダーシュート電流Iud′の値は、LDの応答特性を示す相関関数に基づき設定される。本実施形態では、オーバーシュート電流Iovの値は、寄生遅延時間taと応答遅延時間tbとの和である発光遅延時間tを短縮するように設定される。よって光量がPoとなった際に、寄生容量はオーバーシュート電流Iovにより充電される。
よって光量が所定光量Poの状態において、LDに加算電流I′を印加した場合に生じる遅延時間は、応答遅延時間taのみとなる。したがって本実施形態の加算オーバーシュート電流Iov′及び加算アンダーシュート電流Iud′の値は、LDの応答特性を示す相関関数から決めれば良い。
本実施形態では、以上のように加算電流I′に、加算オーバーシュート電流Iov′と加算アンダーシュート電流Iud′とを含めることで、所望の光出力波形を得ることができる。
また本実施形態では、1波形の駆動電流Ikについて1波形の加算電流I′を印加する場合について説明したが、これに限定されない。
尚本実施形態では、LDに対する所定電流Iopの供給が開始されてからアンダーシュート電流Iudの供給が停止されるまでを1波形の駆動電流Ikとした。また本実施形態では、LDに対して加算所定電流Iop′の供給が開始されてから加算アンダーシュート電流Iud′の供給が停止されるまでを加算電流I′の1波形とした。
本実施形態では、例えば1波形の駆動電流Ikに対して複数波形の加算電流I′が加算されても良い。
図12は、第一の実施形態の駆動電流について説明する第二の図である。
図12に示す駆動電流Ikには、複数波形の加算電流I′が加算されている。1つ目の加算電流I′は加算所定電流Iop′の立ち上がりと所定電流Iopの立ち上がりとが同期するようにLDに印加される。2つ目の加算電流I′は、所定電流Iopの立ち下がりと加算所定電流Iop′の立ち下がりとが同期するようにLDに印加される。
1つ目の加算電流I′は、加算所定電流Iop′1と、加算所定電流Iop′1の立ち上がりと同期して印加される加算オーバーシュート電流Iov′1と、加算所定電流Iop′1の立ち下がりと同期して印加される加算アンダーシュート電流Iud′1とを含む。
2つ目の加算電流I′は、加算所定電流Iop′2と、加算所定電流Iop′2の立ち上がりと同期して印加される加算オーバーシュート電流Iov′2と、加算所定電流Iop′2の立ち下がりと同期して印加される加算アンダーシュート電流Iud′2とを含む。
この駆動電流IkがLDに印加された場合の光出力波形は、1つ目の加算電流I′に対応した波形33と、2つ目の加算電流I′に対応した波形34とが波形31に重畳された波形となる。
このように本実施形態では、所定電流Iopに加算オーバーシュート電流Iov′と加算アンダーシュート電流Iud′とを含む加算電流I′を加算することで、所望の光出力波形を得ることができる。
したがって本実施形態では、例えば感光体30に照射に照射されるレーザ光の光量を任意に調整し、感光体30に対するトナーの付着状態を制御できる。
例えば図3に示すように、所定電流Iopの立ち上がりから立ち下がりまでの間に1波形の加算電流I′が加算された駆動電流IkをLDに供給した場合、画像の中央部分におけるレーザ光の光量が大きくなり、感光体30に対するトナーの付着量が増える。
したがって図3に示す駆動電流IkをLDに供給した場合には、例えばエッジ効果による画像の濃度むらを抑制することができる。エッジ効果とは、面積の広い画像の周辺部で画像の濃度が高く、中央部では画像の濃度が低く現像される現象である。エッジ効果は、感光体上に形成される静電潜像の境界部分では強い電界(縁端電界)が生じ、面積の広い静電潜像の中においては電界が弱くなるために生じる。
例えば図12に示すように、所定電流Iopの立ち上がりと立ち下がりのそれぞれに同期した複数波形の加算電流I′が加算された駆動電流IkをLDに供給した場合、画像の境界におけるレーザ光の光量が大きくなり、感光体30に対するトナーの付着量が増える。
したがって図12に示す駆動電流IkをLDに供給した場合には、例えばハロー効果による画像の劣化を抑制することができる。ハロー効果とは、画像のベタ部分とハーフトーン部分の境界にトナーが付かず、画像が白く抜けてしまう現象である。
また例えば形成する画像が細線等である場合には、図12に示す駆動電流IkをLDに供給すれば、画像の境界部分のトナーの付着量を増やすことができ、画像の鮮鋭性を向上させることができる。
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態では、所定電流Iopに加算電流を加算することで、光量を所定光量Poより小さい光量とする点のみ第一の実施形態と相違する。よって以下の第二の実施形態の説明では、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
図13は、第二の実施形態の光源駆動回路を説明する図である。
本実施形態の光源駆動回路100Aは、LDドライバ200Aを有する。本実施形態のLDドライバ200Aでは、加算所定電流Iop′を負の電流として生成する点のみ第一の実施形態と相違する。本実施形態のLDドライバ200Aは、加算所定電流源220Aを有する。加算所定電流源220Aは、スイッチ221Aを介してLDと接続されている。
以下に図14を参照して本実施形態の光源駆動回路100Aにより生成される駆動電流Ikを説明する。図14は、第二の実施形態の駆動電流について説明する図である。
本実施形態の加算電流I′では、LDに対する加算所定電流Iop′の供給が開始されるタイミングと同期して、加算アンダーシュート電流Iud′が加算所定電流Iop′に加算される。すなわち本実施形態では、加算所定電流Iop′の負の方向への立ち上がりに同期して、加算アンダーシュート電流Iud′が印加される。
また本実施形態の加算電流I′では、LDに対する加算所定電流Iop′の供給が停止されるタイミングと同期して、加算アンダーシュート電流Iud′が加算所定電流Iop′に加算される。すなわち本実施形態では、加算所定電流Iop′の負の方向への立ち下がりに同期して、加算オーバーシュート電流Iov′が印加される。
本実施形態では、以上のように負の加算電流I′を所定電流Iopに印加することで、光量を所定光量Poよりも小さい光量P2とすることができる。
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。