JP6223507B1 - 真空断熱パネルの製造方法及び真空断熱パネル - Google Patents
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Abstract
Description
真空断熱パネル1は、断熱性を有する素材からなる芯材10と、この芯材10を挟むように配置される第1金属板20及び第2金属板30と、を備える。
第1金属板20及び第2金属板30は、中央部に膨出部21、31が設けられている。その膨出部21、31の内面側の凹部に芯材10を収容した状態で、第1金属板20と第2金属板30とが重ね合わされている。
重ねあわせた第1金属板20及び第2金属板30の周縁部40(4辺)はシーム溶接されている。
裏当て材50と、第2金属板30と、封止材60とは、後述するようにレーザ溶接され、真空断熱パネル1の内部は真空状態に保たれている。
芯材10は、断熱性を有する素材であるガラス繊維やロックウール等の無機繊維や、合成繊維や天然繊維等の有機繊維を用いて、所定の厚みを有するように積層されて構成されている。
本実施形態では、第1金属板20及び第2金属板30は、平面視において芯材10よりも一回り大きな矩形形状に形成され、芯材10の上面及び下面を覆うように配置される。
第1金属板20及び第2金属板30の材料としては、アルミニウム合金板及びステンレス鋼板等の各種金属板を用いることができるが、耐変形性や長期に亘っての外観維持の観点から、強度及び耐食性に優れたステンレス鋼板を用いることが好ましい。
第1金属板20及び第2金属板30の厚さは、真空断熱パネル1の内部の真空状態を好適に保ちつつ、真空断熱パネル1を軽量化する観点から、0.1mm〜0.3mmであることが好ましい。
第1金属板20及び第2金属板30には芯材収容用に膨出部21,31が設けられている。膨出部21,31は、第1金属板20及び第2金属板30のそれぞれの内面側が芯材10に対応する形状に凹んで外面側に膨出した形状を有する。
第2金属板30の膨出部31の中央には排気口32が設けられている。
裏当て材50は、円環形状を有し、中央には、第2金属板30に設けた排気口32と同一径の開口部51が設けられている。封止材60は円板状であり、実施形態では裏当て材50と同一径である。実施形態で裏当て材50及び封止材60は磁性体であるSUS430を用いる。ただし、これに限定されず、裏当て材50は磁性体に限らず他の金属部材であってもよく、また封止材60は他の磁性体であってもよい。
つぎに、上述の真空断熱パネル1を製造する真空断熱パネル製造装置2について説明する。図3は、真空断熱パネル製造装置2のブロック図である。真空断熱パネル製造装置2は、第1金属板20及び第2金属板30の外周のシーム溶接工程を行うシーム溶接装置100と、シーム溶接が行われて、まだ内部が真空にされていない状態のパネルの内部を真空にして封止する真空装置3とを備える。真空装置3は、真空吸引部200とレーザ溶接部300とを備える。
まず、シーム溶接装置100について説明する。図4はシーム溶接装置100を説明する図、図5はシーム溶接装置100の概略斜視図である。
シーム溶接装置100は、複数の下側電極130と、複数の上側電極140と、これら複数の上側電極140を支持する複数の上側電極支持部材150と、上側電極移動機構160と、第1電極間距離可変機構170と、第2電極間距離可変機構180と、を備える。
本実施形態では、下側電極130、上側電極140、上側電極支持部材150、上側電極移動機構160、及び第1電極間距離可変機構170は、それぞれ、2つずつ設けられている。
上側電極支持部材150は、上側電極140を、下側電極130の延びる方向に回転可能に支持する。本実施形態では、上側電極支持部材150は、上側電極140の側方にそれぞれ配置され、上側電極140の回転中心に連結され水平方向に延びる軸部材151と、この軸部材151を回転可能に支持する本体部152と、を備える。
本実施形態では、上述の2つの下側電極130のうちの一方は、固定テーブル182の上面に固定され、他方は可動テーブル183の上面に固定される。また、2つの上側電極移動機構160及び第1電極間距離可変機構170のうちの一方は、支持フレーム190を介して固定テーブル182の上面に固定され、他方は支持フレーム190を介して可動テーブル183の上面に固定される。
可動テーブル183は、下側電極130の延びる方向に直交する方向Xにスライド移動する。これにより、2つの下側電極130の間の距離W及び2つの上側電極の間の距離Wを変更させられる。
次に、真空断熱パネル製造装置2の真空装置3について説明する。図6は、真空断熱パネル製造装置2の真空装置3を説明する図である。真空装置3は、真空吸引部200と、レーザ溶接部300とを備える。図中、わかりやすいように一部断面で示すが、必ずしも全体を断面で示すわけではない。
真空吸引部200は、底部が開口しているチャンバ210と、チャンバ210内に設けられた封止材昇降機構250とを備える。
チャンバ210は底部が開口(開口部211)している。その開口部211の外周には、パッキン217が円周方向の全周に亘り配置されている、このパッキン217と第2金属板30の表面とが密着することでシール性が保たれ、真空引きが可能となっている。
柱部材218の上端は、封止材昇降機構250を保持する上板219に固定されている。上板219は、円環状で中央部に円形の上板開口部220が設けられている。
保持プレート251は、中央に穴252の開いた円環状で、磁石が内部に取り付けられている。上述のように封止材60は磁性体で製造されているので、保持プレート251は封止材60を磁力で保持することができる。
なお、保持プレート251の磁力は、作業者が手で簡単に保持プレート251から封止材60を脱着可能な程度である。
支持棒253は、チャンバ210の上面の石英ガラス214の周囲の3か所を、チャンバ210の気密状態を保持しつつ上下動可能に挿通されている。
昇降プレート255は、中央に穴256の開いた円環状で、保持プレート251を支持する支持棒253が固定されている個所の外周側には、ねじ穴257が設けられている。
図3においては左右対称に2か所にねじ穴257が設けられているように示すが、実施形態では周方向に均等に3か所に取り付けられている。
昇降棒258の上端には、鎖歯車260が取り付けられている。3本の昇降棒258の鎖歯車260の間には鎖261が架け渡されている。鎖261は、鎖歯車260との歯車と噛み合っている。昇降棒258のうちの1つの、鎖歯車260の上部には、回転ノブ262が取り付けられている。
上述した真空吸引部200の外側を覆うような形で、枠部材301が配置されている。枠部材301は、ベース部材302と、ベース部材302の外周部より上方に延びる柱部材303と、柱部材303の上端に固定された上枠部304とを備え、連結棒306で真空吸引部200と固定されている。
上枠部304と柱部材303を固定しているナット307とバネ308の作用により、ナット307を時計方向または反時計方向に回すと上枠部304が上下に移動し、封止前の真空断熱パネル1の固定ならびに封止後の真空断熱パネル1の開放が可能な構造となっている。上枠部304の中央には円形の穴305が設けられている。
上枠部304の上部には、レーザ溶接部300が配置されている。レーザ溶接部300はレーザ照射部310を備える。レーザ照射部310は、真空装置3の軸線Aを中心として回転可能である。すなわち、軸線Aを中心とした所定径の円周に沿って移動可能である。
次に、真空断熱パネル製造装置2を用いた真空断熱パネル1の製造方法について説明する。図7は、真空断熱パネル製造装置2を用いた真空断熱パネル1の製造方法を説明する図である。
真空断熱パネル1の製造方法は、重ね合わせ工程と、シーム溶接工程と、真空引き工程と、レーザ溶接工程と、切断工程と、を備える。
図7(a)は、重ね合わせ工程を説明する図である。
まず、膨出部21が形成された第1金属板20を膨出部21が下方を向くように配置し、その第1金属板20の上面の凹部に芯材10を収容する。
芯材10の上に、裏当て材50を載置する。裏当て材50は、芯材10のほぼ中央になるように配置する。
そして、第1金属板20、芯材10及び裏当て材50の上に、膨出部31が形成された第2金属板30を膨出部31が上側を向くように重ね合わせて積層体1Aを形成する。
このとき、裏当て材50の開口部51と、第2金属板30の排気口32とが一致するように調整する。
図7(b)はシーム溶接工程を説明する図である。シーム溶接工程では、重ね合わせ工程で製造された積層体1Aにおける、第1金属板20及び第2金属板30の縁部(4辺)をシーム溶接する。縁部は、膨出部21,31よりも外側で、内部に芯材10が含まれていない部分である。このシーム溶接工程は、大気中で行われる。
まず、重ね合わせ工程で製造された積層体1Aをシーム溶接装置100にセットする。
具体的には、図4においての可動テーブル183をスライド移動させて、2つの下側電極130の間の距離を、シーム溶接する2つの辺L1(図5に図示)の間の距離に一致させておく。
そして、積層体1Aをシーム溶接する2つの辺L1が下側電極130の上面に位置するように配置する。
具体的には、まず、第1電極間距離可変機構170により2つの上側電極140を下降させてそれぞれ下側電極130との間に第1金属板20及び第2金属板30を挟み込む。
上側電極移動機構160により2つの上側電極140をそれぞれ下側電極130の延びる方向に同時に回転移動させつつ、第1金属板20と第2金属板30とをシーム溶接する。
これにより、第1金属板20及び第2金属板30の互いに対向する2つの辺L1が同時にシーム溶接される。
これにより、第1金属板20及び第2金属板30の互いに対向する2つの辺L1と、それと直交し且つ互いに対向する辺L2とがシーム溶接される。
以上のシーム溶接工程により、内部が真空にされていないパネル1Bが製造される。
図7(c)は真空引き工程を説明する図である。
まず、保持プレート251に封止材60を装着する。このとき、保持プレート251はチャンバ210の開口部211よりも上方に位置している。また、封止材60の中心が軸線Aに来るようにする。このとき、封止材60は磁性体で製造されており、保持プレート251の磁力により、容易に着脱可能である。
この際、チャンバ210の底部には、パッキン217が取り付けられているので、パネル1Bの第2金属板30の上面との密閉性がよい。
チャンバ210のチャンバ排気穴215に接続された図示しない真空ポンプを作動させ。チャンバ210内が目標真空度以下になるまで真空引きを行う。
真空引き当初の排気口32と封止材60との間の距離は、乱気流によるグラスウールの飛散を防止する観点から、0.5mm〜3.0mmであることが好ましい。
図6に示す回転ノブ262を回転する。そうすると、鎖261により回転力が伝達され、鎖歯車260がそれぞれ回転する。鎖歯車260が回転すると、鎖歯車260に連結した昇降棒258も回転し、昇降棒258のねじ部と螺合している昇降プレート255が上下動する。昇降プレート255が下降すると、昇降プレート255に支持された支持棒253及び支持棒253の下端に支持された保持プレート251が降下し、保持プレート251に保持された封止材60も降下する。
このように封止材60を降下させ、排気口32側に押圧する。この押圧により、パネル1B内に挿入されている裏当て材50と降下した封止材60とで、第2金属板30を挟む形となるため、降下した封止材60と、第2金属板30と、裏当て材50との3枚が重ねられた部分は、隙間なく抑えられた状態になる。
その後、レーザ溶接部300のレーザ照射部310より、封止材60と、第2金属板30と、裏当て材50とが3枚重ねられた部分にレーザを照射する。レーザの照射は、レーザ照射部310を回転させることにより、排気口32の周囲に全周に亘って行う。
ここで、降下した封止材60と第2金属板30との他に、裏当て材50が配置されている。第2金属板30は薄いので、レーザ溶接時において封止材60と第2金属板30のみの場合、溶け落ちる可能性がある。しかし、本実施形態では更に裏当て材50が配置されているので、溶け落ちの可能性が低い。
レーザ照射部310より照射されたレーザ光により、封止材60と、第2金属板30と、裏当て材50とが3枚重ねられた部分は、円周溶接され、第1金属板20及び第2金属板30により挟まれて芯材10が配置されている内部空間を完全封止することが可能であり、これにより真空断熱パネル1が完成する。
切断工程では、レーザ溶接工程を経て内部空間が封止された真空断熱パネル1を、枠部材301のナット307を緩めて真空装置3から取り外し、真空断熱パネル1の外周部における余剰部分を切断し、真空断熱パネル1が完成する。
以下の条件の下、上述の製造方法により、実際に真空断熱パネル1を製造した。
芯材10として、約1200g/m2の目付のグラスウールを用い、第1金属板20及び第2金属板30を重ね合わせた際に、後述の膨出部の内面側をすき間なく充填できる寸法の物を使用した。
第1金属板20及び第2金属板30として、SUS304の鋼板を用いた。寸法は220mm×220mm×0.1mmである。そして、第1金属板20及び第2金属板30に、190mm×190mm×5.0mmの膨出部21,31をそれぞれプレス成形により作製した。
第2金属板30の膨出部31の中央の排気口32は、直径20mmとした。
裏当て材50及び封止材60は、磁性体であるSUS430を用いた。寸法は、厚さ0.3mm、外径寸法40mmのものを用いた。裏当て材50の開口部51は、第2金属板30に設けた排気口32と同一となる直径20mmとした。
石英ガラス214は、波長1μmのレーザ光が透過可能な外径40mmの円形の石英ガラスを用いた。
真空断熱パネル1の性能は、英弘精機社製の熱伝導率測定装置(型式:FOX200)を用い、真空断熱パネル1の中央部の平均温度が25℃となる条件で熱伝導率を測定し評価した。
同様の条件で3体の真空断熱パネル1を試作し、熱伝導率を測定した結果、何れのサンプルも熱伝導率は2.5〜3.0mW/m・Kの範囲に収まっており、断熱性能に優れ耐熱性にも優れたステンレス製の真空断熱パネル1を試作可能な事が確認できた。
(1)本実施形態の真空断熱パネル1の製造方法によると、第2金属板30の排気口32の部分の内側に裏当て材50を配置する。したがって、レーザ溶接による溶け落ちの可能性が少なく、その裏当て材50が配置されている部分へのレーザ溶接が可能となる。ゆえに、排気口32のレーザ溶接を用いた封止材60による封止が可能となる。
レーザ溶接は、ロウ付けのような溶接個所の加熱が必要なく、石英ガラス214を通してチャンバ210の外部より照射可能である。したがって、チャンバ210内に、加熱部等を配置する必要がなく。チャンバ210の小型化が可能であり、真空断熱パネル1の製造コストを削減することができる。
2 真空断熱パネル製造装置
3 真空装置
10 芯材
20 第1金属板
20 金属板
21 膨出部
30 第2金属板
30 金属板
31 膨出部
32 排気口
50 裏当て材
60 封止材
100 シーム溶接装置
200 真空吸引部
210 チャンバ
211 開口部
214 石英ガラス
217 パッキン
250 封止材昇降機構
251 保持プレート
255 昇降プレート
300 レーザ溶接部
Claims (9)
- 断熱性を有する芯材の一面側に第1金属板を重ね、開口が設けられた裏当て材と排気口が設けられた第2金属板とを、前記開口と前記排気口とが重なるようにして、前記芯材の他面側に、前記芯材側から前記裏当て材、第2金属板の順に重ね合わせる重ね合わせ工程と、
前記第1金属板及び前記第2金属板における前記芯材よりも外周側を溶接する第1溶接工程と、
前記排気口から、前記第1金属板及び前記第2金属板により挟まれて前記芯材が配置されている内部を真空引きする真空引き工程と、
前記真空引き工程により前記内部が真空引きされた状態で、前記排気口を封止材により塞ぎ、前記封止材、前記第2金属板、及び前記裏当て材をレーザ溶接するレーザ溶接工程と、
を備える真空断熱パネルの製造方法。 - 前記レーザ溶接工程は、
レーザ光を通過させるための穴が設けられた保持プレートによって外周が保持された封止材を降下させて前記排気口を封止材により塞ぎ、
前記封止材を前記排気口側に押圧することにより、
前記裏当て材と前記封止材とで前記第2金属板を挟み、前記封止材と、前記第2金属板と、前記裏当て材とが重ねられた部分を隙間なく押さえた状態で、
前記封止材と前記第2金属板と前記裏当て材とをレーザ溶接する、
請求項1に記載の真空断熱パネルの製造方法。 - 前記真空引き工程は、前記第2金属板の前記排気口を含む部分領域にチャンバを被せ、
前記封止材を、一旦下降させて前記排気口に近接させた状態で、
前記排気口から、前記第1金属板及び前記第2金属板により挟まれて前記芯材が配置されている内部の真空引きを開始する、
請求項1または2に記載の真空断熱パネルの製造方法。 - 前記レーザ溶接工程は、レーザを前記チャンバの外側より照射する、請求項3に記載の真空断熱パネルの製造方法。
- 前記封止材は磁性体で製造され、
前記封止材を保持する保持プレートは、磁石を含み、前記封止材を磁力によって保持する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の真空断熱パネルの製造方法。 - 前記封止材を保持する保持プレートは外周に沿った3か所に取り付けられた支持棒に支持され、
前記支持棒は、上部中央に石英ガラスが取り付けられた窓が設けられているチャンバの前記窓が設けられた部分の外周を貫通して上端が昇降プレートに固定されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の真空断熱パネルの製造方法。 - 前記第1溶接工程は、シーム溶接工程である、請求項1から6のいずれか1項に記載の真空断熱パネルの製造方法。
- 断熱性を有する芯材と、
前記芯材の一面側に配置された第1金属板と、
前記芯材の他面側に配置された、開口部が設けられた裏当て材と、
前記芯材の前記他面側において、前記裏当て材を挟んで配置され、前記開口部と重なる位置に排気口が設けられた第2金属板と、
前記開口部を封止する封止材と、を備え、
前記第1金属板と前記第2金属板とにおける前記芯材が間に挟まれている領域の外側が溶接され、
前記封止材と、前記第2金属板と、前記裏当て材とが溶接され、
前記第1金属板と前記第2金属板との間が真空状態である真空断熱パネル。 - 前記封止材は磁性体である、
請求項8に記載の真空断熱パネル。
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