JP6215690B2 - 高耐熱延伸フィルム - Google Patents
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Description
また特許文献4にはPENフィルムの主たる結晶構造をβ晶構造にすることで高温下での260℃近辺でのハンダ加工耐性が得られることが記載されている。
<熱可塑性ポリエステル>
本発明における熱可塑性ポリエステルは、ジオールとジカルボン酸との重縮合によって得られるポリマーであり、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが好ましく例示され、特に高温領域での強度、寸法安定性の観点からポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが好ましく、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが最も好ましい。
本発明の高耐熱延伸フィルムはフィルム中にガラス短繊維を含み、その直径は0.1μm以上、7.0μm以下、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上3.0μm以下である。また、該ガラス短繊維の繊維長は1μm以上300μm以下、好ましくは3μm以上100μm以下、さらに好ましくは5μm以上50μm以下である。
また、本発明においては、ガラス短繊維を潤滑剤で処理してもよい。潤滑剤としてはシリコンオイルなどを使用できるが、カリックスアレーンが特に好ましい。
ガラス短繊維の含有量が下限に満たない場合、実用レベルの熱固定温度及び処理時間で十分な耐熱寸法安定性と優れた機械強度とを両立できないことがある。一方、上限を超えるガラス短繊維を用いても、それ以上の寸法安定性が得られにくくなる一方で、延伸が困難になり、またフィルム表面が荒れやすくなり、フレキシブル回路基板への適用が難しくなることがある。
本発明の高耐熱延伸フィルムは、粘弾性測定における260℃での貯蔵弾性率がフィルム長手方向において200MPa以上であり、さらに好ましくは400MPa以上、特に好ましくは500MPa以上である。
本発明の高耐熱延伸フィルムは融点近傍の260℃程度の高温領域での機械強度および耐熱寸法安定性が高いことが特徴であり、その達成手段として、特定サイズのガラス短繊維を含有することに加え、フィルム製膜工程において260℃近傍で、通常適用される熱固定時間の範囲内で熱処理することで、260℃での機械強度が向上する。
本発明の高耐熱延伸フィルムは、260℃で10分間熱処理したときのフィルム長手方向および幅方向の熱収縮率がともに1.0%以下であり、好ましくは0.5%以下である。本発明の高耐熱延伸フィルムは融点近傍の260℃程度の高温領域での機械強度および耐熱寸法安定性が高いことが特徴であり、その達成手段として、特定サイズのガラス短繊維を含有することに加え、フィルム製膜工程において260℃近傍で、通常適用される熱固定時間の範囲内で熱処理することで、260℃での機械強度を向上させつつ、260℃での熱収縮率も低減させることができる。
本発明の高耐熱延伸フィルムは、ガラス短繊維を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる、少なくとも1層からなる延伸フィルムであり、前記のガラス短繊維を含む熱可塑性ポリエステル樹脂層の少なくとも片面にさらにガラス短繊維を含まないか少量のガラス短繊維を含む熱可塑性ポリエステル樹脂層を有してもよい。また、前記のガラス短繊維を含む熱可塑性ポリエステル樹脂層を芯層とし、さらにガラス短繊維を含まないか少量のガラス短繊維を含む熱可塑性ポリエステル樹脂層を表層とする3層フィルムとしてもよい。
ガラス短繊維を含む層に積層させる熱可塑性ポリエステル樹脂層のガラス短繊維含有量が上記範囲内であることにより、回路を形成するフィルム面を平滑化でき、より線幅の細い回路を形成することができる。
本発明の高耐熱延伸フィルムのフィルム厚みは10μm以上300μm以下であることが好ましく、より好ましくは50〜250μmであり、適宜フィルム厚みを選択することができる。
本発明の高耐熱延伸フィルムは、少なくとも1方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましく、さらに二軸延伸フィルムであることが好ましい。
二軸延伸フィルムを例としてフィルム製造方法について説明すると、公知の逐次二軸延伸方法や、同時二軸延伸方法を用いて製膜することができ、その方法は特に制限されない。
逐次延伸法を用いる製膜方法として、樹脂組成物を押出機に供給してTダイよりシート状に成形し、表面温度10〜60℃の冷却ドラムで冷却固化後、例えばロール加熱または赤外線加熱によって加熱し、長手方向(縦方向、MD方向と称することがある)に延伸し、縦延伸フィルムを得る。縦延伸温度は組成物のガラス転移点(Tg)より高い温度、更にはTgより20〜40℃高い温度とするのが好ましい。縦延伸倍率は、使用する用途の要求に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは2.5倍以上5.0倍以下、更に好ましくは3.0倍以上4.5倍以下である。
横延伸倍率は、使用する用途の要求に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは2.5倍以上5.0倍以下、更に好ましくは3.0倍以上4.5倍以下である。
その後、必要に応じて熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、かかる処理はフィルムを走行させながら行う。熱固定を行うに際し、250〜270℃の温度範囲で熱固定処理を行い、また本発明における熱固定時間は30〜300秒で行うのが好ましい。本発明のフィルムは、260℃というポリエステルの融点近傍の耐熱寸法安定性と機械特性とを高めるにあたり、特定サイズのガラス短繊維を存在させることにより、短い熱固定時間で260℃もの高温で耐熱寸法安定性を高めることができる。熱固定時間は上限を超えて施してもよいが、実用的にはかかる範囲内で熱固定を行うことが好ましい。
塗布層をさらに設ける場合、フィルム延伸工程において塗布する方法が挙げられる。この場合、塗布液は水性塗布液の形態で使用されることが好ましい。水性塗布液の固形分濃度は、通常20重量%以下、好ましくは1〜10重量%である。
本発明の高耐熱延伸フィルムは、260℃という高温領域で優れた強度および耐熱寸法安定性を有することから、フレキシブル回路基板用フィルムとして好適に使用することができる。フレキシブルプリント回路基板は、本発明の高耐熱延伸フィルムの少なくとも片面に銅箔または導電ペーストからなる金属層を積層させ、金属層に微細な回路パターンを形成することによって得られる。
電子マイクロメータ(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
フィルムサンプルを幅5mm、長さ35mmに切り、(株)パーキンエルマー製の動的粘弾性測定装置(DMA8000)を用い、周波数1Hzで室温から260℃まで2℃/分で昇温して測定した。得られたチャートより各温度での貯蔵弾性率を求めた。
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに260℃の温度のオーブンで10分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)において、それぞれ下記式(1)にて熱収縮率を算出した。各方向ともサンプル5点について測定し、その平均値を各方向の熱収縮率とした。
熱収縮率(%)=((L0−L)/L0)×100・・・(1)
(式中、L0は熱処理前の標点間距離、Lは熱処理後の標点間距離をそれぞれ示す。)
ミクロトーム(RM2255、ライカ社製)にてフィルム断面を削り、走査型電子顕微鏡(S−4700、日立製)で400倍の倍率で観察し、ガラス短繊維の繊維径と繊維長を測定した。
試料を450℃で3時間加熱し、加熱前後の重量からガラス短繊維含有量を算出した。
フィルムを溶融はんだ浴上に浮かせ、260℃×30秒間処理を行い、その外観を下記の基準で評価した。
◎:変化なし
○:フィルムエッジに若干のシワが発生するもののほとんど変化なし
△:多少のシワは見られるが、試験前の形態を維持している。
×:試験前の形態を維持していない。
P1:固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを得た。
P2:固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートを得た。
P3:二軸押出成形機を用い、溶融したP1に対して30重量%(樹脂組成物100重量%を基準として)となるように直径3μm、繊維長150μmのガラス短繊維を添加し、溶融混練を行ってペレットを作製した。
P4:二軸押出成形機を用い、溶融したP1に対して30重量%(樹脂組成物100重量%を基準として)となるように直径5μm、繊維長200μmのガラス短繊維を添加し、溶融混練を行ってペレットを作製した。
P5:二軸押出成形機を用い、溶融したP2に対して30重量%(樹脂組成物100重量%を基準として)となるように直径3μm、繊維長150μmのガラス短繊維を添加し、溶融混練を行ってペレットを作製した。
ガラス短繊維の含有量が10重量%となるようにP1とP3を表1の組成割合で準備し、170℃で6時間乾燥後、300℃に加熱された押出機に供給し、ダイスリットより溶融押出してキャスティングドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを作成した。この未延伸フィルムを表1に示す条件で縦方向(MD方向)、横方向(TD方向)に二軸延伸し、さらに表1に示す条件で金枠に固定して熱処理を施した。本実施例のフィルムは260℃の熱固定温度で1分間の熱固定時間でありながら、260℃での熱収縮が小さく、ハンダ耐熱評価ではフィルムに多少のシワは見られるものの形状は維持していた。さらに本実施例は260℃での貯蔵弾性率も高く、機械特性にも優れていた。
熱処理条件を260℃×2minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。
本実施例のフィルムは260℃での熱収縮が小さく、ハンダ耐熱評価ではフィルムに多少のシワは見られるものの形状は維持していた。さらに本実施例は260℃での貯蔵弾性率も高く、機械特性にも優れていた。
熱処理温度を260℃×5minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。
本実施例のフィルムは260℃での熱収縮が小さく、ハンダ耐熱評価ではフィルムに多少のシワは見られるものの形状は維持していた。さらに本実施例は260℃での貯蔵弾性率も高く、機械特性にも優れていた。
ガラス短繊維の含有量が20重量%となるようにP1、P3を表1の組成割合に変更し、また延伸倍率を表1の条件に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは260℃での熱収縮が小さく、ハンダ耐熱評価ではフィルム外観に変化はなかった。さらに本実施例は260℃での貯蔵弾性率も高く、機械特性に優れていた。
ガラス短繊維の含有量が20重量%となるようにP1、P3を表1の組成割合に変更し、また延伸倍率を表1の条件に変更、熱処理温度を260℃×2minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは260℃での熱収縮が小さく、ハンダ耐熱評価ではフィルム外観に変化はなかった。さらに本実施例は260℃での貯蔵弾性率も高く、機械特性に優れていた。
ガラス短繊維の含有量が20重量%となるようにP1、P3を表1の組成割合に変更し、また延伸倍率を表1の条件に変更、熱処理温度を260℃×5minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは260℃での熱収縮が小さく、ハンダ耐熱評価ではフィルム外観に変化はなかった。さらに本実施例は260℃での貯蔵弾性率も高く、機械特性に優れていた。
ガラス短繊維の含有量が20重量%となるようにP1、P4を表1の組成割合に変更、また延伸倍率を表1の条件に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは実施例1で得られたフィルムよりも260℃の熱収縮が小さく、ハンダ耐熱評価ではフィルムエッジに若干シワが入ったものの、フィルム外観にほとんど変化はなかった。さらに本実施例は260℃での貯蔵弾性率も高く、機械特性にも優れていた。
熱処理温度を260℃×2minに変更した以外は実施例7と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは260℃での熱収縮が小さく、ハンダ耐熱評価ではフィルムエッジに若干シワが入ったものの、フィルム外観にほとんど変化はなかった。さらに本実施例は260℃での貯蔵弾性率も高く、機械特性にも優れていた。
熱処理温度を260℃×5minに変更した以外は実施例7と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは260℃での熱収縮が小さく、ハンダ耐熱評価ではフィルムエッジに若干シワが入ったものの、フィルム外観にほとんど変化はなかった。さらに本実施例は260℃での貯蔵弾性率も高く、機械特性にも優れていた。
ガラス短繊維を含むポリエステルの種類をP4からP5に変更し、熱処理温度を260℃×5minに変更した以外は実施例7と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは260℃での熱収縮が小さく、ハンダ耐熱評価ではフィルムに多少のシワは見られるものの形状は維持していた。さらに本実施例は260℃での貯蔵弾性率も高く、機械特性にも優れていた。
ガラス短繊維を含まないP1のみからなる組成割合に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。ガラス短繊維を含まないポリエチレンナフタレートフィルムの場合、実施例と同じ熱固定条件(260℃で1分間)では260℃での熱収縮率が大きく、また機械特性も特に260℃での低下が大きく、ハンダ耐熱評価ではフィルムが変形してしまった。
ガラス短繊維を含まないP1のみからなり、熱処理温度を260℃×2minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。ハンダ耐熱評価ではフィルムが変形してしまった。
ガラス短繊維を含まないP1のみからなり、熱処理温度を260℃×5minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。ハンダ耐熱評価ではフィルムが変形してしまった。
ガラス短繊維を含まないP2のみに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。ハンダ耐熱評価ではフィルムが変形してしまった。
ガラス短繊維を含まないP2のみからなり、熱処理温度を260℃×2minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。ハンダ耐熱評価ではフィルムが変形してしまった。
ガラス短繊維を含まないP2のみからなり、熱処理温度を260℃×5minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。ハンダ耐熱評価ではフィルムが変形してしまった。
ガラス短繊維の含有量が5重量%となるようにP1、P3を表1の組成割合に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。ハンダ耐熱評価ではフィルムが変形してしまった。
ガラス短繊維の含有量が5重量%となるようにP1、P3を表1の組成割合に変更し、熱処理温度を260℃×2minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。ハンダ耐熱評価ではフィルムが変形してしまった。
ガラス短繊維の含有量が5重量%となるようにP1、P3を表1の組成割合に変更し、熱処理温度を260℃×5minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。ハンダ耐熱評価ではフィルムが変形してしまった。
表1に示すようにP1のみの組成に変更し、熱処理温度を260℃×240minに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、50μm厚みの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。ガラス短繊維を含まない場合、本発明と同等の耐熱寸法安定性および機械特性を得るためには、熱固定時間を相当長くする必要があり、実用的には適用が難しい製造条件が必要であった。
Claims (4)
- ガラス短繊維を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる延伸フィルムであって、かかるガラス短繊維の直径が0.1〜5.0μm、平均繊維長が1〜300μmであり、該延伸フィルムの粘弾性測定における260℃の貯蔵弾性率がフィルム長手方向において200MPa以上であり、かつ260℃、10分間熱処理したときのフィルム長手方向および幅方向の熱収縮率がともに1.0%以下であることを特徴とする高耐熱延伸フィルム。
- 前記熱可塑性ポリエステル樹脂がポリエチレンナフタレンジカルボキシレートである請求項1に記載の高耐熱延伸フィルム。
- 前記樹脂組成物の重量を基準として該ガラス短繊維の含有量が5重量%を超え50重量%以下の範囲である、請求項1〜2のいずれかに記載の高耐熱延伸フィルム。
- フィルム全層厚さが10〜300μmである請求項1〜3のいずれかに記載の高耐熱延伸フィルム。
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