JP5405968B2 - フラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルム - Google Patents

フラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルム Download PDF

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Description

本発明はフラットケーブル用難燃性積層フィルムに関するものである。更に詳しくは、難燃性、熱融着性および高温下での寸法安定性に優れた二軸配向積層ポリエステルフィルムに関する。
従来より、電線の実装技術において、断面が偏平な複数の配線パターンを有する導電体を両側から電気絶縁性樹脂でサンドイッチ状に被覆したフラットケーブルが、配線作業の効率化のために広く用いられている。このようなフラットケーブルは、例えば特許文献1に開示されており、軽量で取り付けが簡単であるため、特に自動車業界において配線作業の効率化や車体の軽量化のため、その採用が検討されている。
近年、フラットケーブルの用途は多岐にわたっているが、特に、電気機器部材、自動車用途などに使用する場合には難燃性が要求されるようになってきた。フラットケーブルの難燃化方法としては、例えば特許文献2に開示されているように、基材上に難燃剤を含有する接着剤層を形成した2枚の接着フィルムの接着剤層側を対向させ、接着剤層間に配線パターンを有する導電体を挟み込んで密封する方法が開示されている。
しかしながら、この方法では難燃剤の添加によって接着剤層の接着力が低下するばかりでなく、接着剤層と基材間の接着力を保持するために、基材上にプライマー処理が別途必要となり、製造工程が複雑になるため、より簡便な方法で難燃性と接着力を有するフラットケーブル被覆材が求められている。
一方、ポリエステル樹脂の難燃化方法の1つとして、リン化合物をポリエステルに共重合化させる方法が検討されており、例えば特許文献3にはポリエチレンテレフタレートにカルボキシホスフィン酸を共重合する方法が開示されている。また特許文献4には、カルボキシホスフィン酸成分の中でも特定のカルボキシホスフィン酸成分を用いることにより、他のリン化合物を併用しなくても少量でポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに高い難燃性を付与できることが開示されている。しかしながら未だフラットケーブル被覆材として適したポリエステル系難燃性フィルムは提案されていない状況である。
特開平5−282922号公報 特開平5−303918号公報 特開昭53−13479号公報 特開2007−9111号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解消し、高い難燃性、熱融着性および高温下での寸法安定性を有しており、しかも難燃性むらおよび熱融着性むらがなく耐屈曲性に優れるフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いたフラットケーブルを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明の難燃成分および層構成により、接着剤を別途用いることなく、より簡便な方法で難燃性と接着力を有するフラットケーブル被覆材を提供できることを見出した。そして、難燃性を高めるカルボキシホスフィン酸を一定量含む共重合ポリエステル層と、ポリエステルを95重量%以上含有する層とを含む積層構成において、融点の低い共重合ポリエステル層を十分に溶融させることにより熱融着性が得られること、しかしながら共重合ポリエステル層の低融点化に伴い、製膜工程で他層との溶融粘度差が生じ、共重合ポリエステル層の厚み斑が大きくなる結果、得られたフィルムに難燃性むらおよび熱融着性むらが生じることを鑑みて本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の目的は、カルボキシホスフィン酸成分を含む共重合ポリエステルを主たる成分とする層(A)およびポリエステル成分を層の重量を基準として95重量%以上含有する層(B)とを含む積層構造を有し、該カルボキシホスフィン酸成分が下記式(I)で表わされ、
Figure 0005405968
(式中、Rは炭素数6〜18のアリール基、R及びRは炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、モノヒドロキシアルキル基または水素原子、Xは炭素数1〜18の2価の炭化水素基をそれぞれ表わし、R〜Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
該カルボキシホスフィン酸成分の含有量が層(A)の重量を基準として10重量%以上40重量%以下であり、層(A)と層(B)が同一の主たるポリエステル成分であって、かつ層(A)に用いられるポリエステルの固有粘度が0.63dl/g以上1.0dl/g以下であるフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルムによって達成される。
また本発明のフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルムは、その好ましい態様として、全層における層(A)の厚み割合が10%以上50%以下であること、150℃で10分間加熱処理したときのフィルムの熱収縮率がフィルムの少なくとも一方向において1.8%以下であること、カルボキシホスフィン酸成分が、(2−カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸、(3−カルボキシプロピル)フェニルホスフィン酸のうち少なくとも1種であること、層(A)、層(B)を構成するポリエステルの主たる構成成分がエチレンテレフタレートまたはエチレンナフタレンジカルボキシレートであること、の少なくともいずれか一つを具備するものを包含する。
本発明はまた、本発明のフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルムのA層同士が対向するように熱融着され、両方のA層の間に配線パターンを形成した導電体が挟み込まれてなるフラットケーブルに関するものである。
本発明のフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルムは、均一な熱融着性および難燃性を有しており、しかも高温寸法安定性、耐屈曲性に優れることから、接着剤層を設けなくても十分な熱融着性が発現し、フラットケーブルの基材に好適な難燃性積層ポリエステルフィルムを提供することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
<層(A)>
本発明の難燃性積層ポリエステルフィルムは、難燃性を付与するカルボキシホスフィン酸成分を含む共重合ポリエステルを主たる成分とする層(A)をその積層構造の少なくとも1層として有する。
(カルボキシホスフィン酸成分)
本発明の難燃性積層ポリエステルフィルムは、難燃性を付与する成分として下記式(I)で表わされるカルボキシホスフィン酸成分を含有する。
Figure 0005405968
(式中、Rは炭素数6〜18のアリール基、R及びRは炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、モノヒドロキシアルキル基または水素原子、Xは炭素数1〜18の2価の炭化水素基をそれぞれ表わし、R〜Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
上述の式(I)で表わされるカルボキシホスフィン酸成分を用いることにより、他のリン化合物を併用しなくても単独で高い難燃性が発現し、しかもポリエステルが本来有する耐熱寸法安定性や機械特性の低下が少ないという特徴を有する。一方、式(I)以外のカルボキシホスフィン酸成分を用いた場合、同等の難燃性を得るためにはより多くの量を配合する必要があることから、耐熱寸法安定性や機械特性を損なう。
式(I)で表わされるカルボキシホスフィン酸成分としては、カルボキシメチルフェニルホスフィン酸、(2−カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸、(2−カルボキシエチル)トルイルホスフィン酸、(2−カルボキシエチル)2,5−ジメチルフェニルホスフィン酸、(2−カルボキシエチル)シクロヘキシルホスフィン酸、(3−カルボキシプロピル)フェニルホスフィン酸、(4−カルボキシフェニル)フェニルホスフィン酸、(3−カルボキシフェニル)フェニルホスフィン酸およびそれらの低級アルコールエステル、低級アルコールジエステルなど挙げられる。これらの中でも特に好ましい化合物として、(2−カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸および(3−カルボキシプロピル)フェニルホスフィン酸が挙げられ、これらのカルボキシホスフィン酸成分のうち少なくとも1種を用いることが好ましく、2種以上併用してもよい。
これらのカルボキシホスフィン酸成分は、カルボキシホスフィン酸成分を含む層(A)の重量を基準として10重量%以上40重量%以下の範囲で含有される。また、カルボキシホスフィン酸成分の含有量の下限値は、好ましくは12重量%、より好ましくは15重量%である。カルボキシホスフィン酸成分の含有量の上限値は、好ましくは35重量%、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは25重量%である。カルボキシホスフィン酸成分の含有量が下限値に満たない場合にはフィルムとして充分な難燃性能が発現しない。また上限値を超える場合、樹脂の溶融粘度が大きく低下するため積層フィルムにした際に層(B)と相対的な溶融粘度差が大きくなり、層(A)の厚みを均一にするのが困難となる結果、熱融着性、難燃性の均一な難燃性積層ポリエステルフィルムが得難い。
(共重合ポリエステル)
本発明で用いられる層(A)はカルボキシホスフィン酸成分を含む共重合ポリエステルを主たる成分として形成される。層(A)の主たるポリエステル成分は層(B)の主たるポリエステル成分と同一である。層(B)と同一の主たるポリエステル成分を用いることにより、両層の溶融粘度差を調整しやすく、層(A)の厚み斑を均一にすることができ、かつ層(A)と層(B)の界面について高い界面接着性が得られる。
層(A)を構成する共重合ポリエステルの主たる構成成分は、エチレンテレフタレート(以下PETと略記することがある)またはエチレンナフタレンジカルボキシレート(以下PENと略記することがある)であることが好ましい。また、エチレンナフタレンジカルボキシレートはさらにエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであることが好ましい。ここで「主たる」とは、層(A)の重量に対して50重量%以上、好ましくは55重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上を意味する。
層(A)を構成する共重合ポリエステルは、カルボキシホスフィン酸成分を共重合成分としている。カルボキシホスフィン酸成分は、少なくともその一部が共重合成分としてポリエステルと結合していればよい。具体的には、含有する全カルボキシホスフィン酸成分のうち60モル%〜100モル%がポリエステルの共重合成分として共重合化していることが好ましく、より好ましくは80モル%〜100モル%、特に好ましくは90モル%〜100モル%である。カルボキシホスフィン酸成分が上述の範囲内でポリエステルに共重合化されることにより、層(A)のポリエステル融点が低下し、熱融着性が発現する。
共重合ポリエステルはカルボキシホスフィン酸成分以外の共重合成分をさらに有していてもよい。かかる共重合成分は、ポリエステルの全繰り返し単位のモル数を基準として10モル%以下の範囲で用いることができる。
かかる共重合成分として、分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができ、例えば蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸、或いはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコールの如きジオールを好ましく用いることができる。これらの共重合成分は、1種または2種以上用いてもよい。これらの共重合成分の中で、好ましい酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−オキシ安息香酸であり、好ましいジオール成分としては、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物である。これらの共重合成分は、モノマー成分として共重合化されたものでもよく、また他のポリエステルとのエステル交換反応により共重合化されたものでもよい。
本発明の共重合ポリエステルは、公知の方法を適用して製造することができる。例えば、ジオール成分、ジカルボン酸成分および共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。また、かかる溶融重合によって得られたポリエステルをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において固相重合することもできる。
前記カルボキシホスフィン酸成分は、ポリエステル製造時の任意の時期に添加されるが、より好ましい添加時期は、エステル化反応あるいはエステル交換反応により得られた低重合体を重縮合反応させる時期である。
特にエステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重縮合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的で、通常トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物が通常添加されるが、本発明のカルボキシホスフィン酸成分をエステル交換反応の終了後、重縮合反応開始前に添加することにより、前記エステル交換反応抑制剤を添加しなくても同等の効果が得られることがある。なお、エステル交換触媒を失活させる目的で通常用いられるリン化合物を添加する場合、リン元素として100ppm以下のごく少量の範囲内で使用され、その量も極めて少量であって難燃性能を付与する目的で添加されるものではない。
(その他成分)
本発明の難燃性積層ポリステルフィルムを構成する層(A)には、上記のポリエステル以外の樹脂成分が更に含まれていてもよい。例えばポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテルおよびフェノキシ樹脂が挙げられる。かかる樹脂は、層(A)の重量に対して好ましくは10重量%以下の範囲内で用いる。かかる樹脂を上限を超えて用いた場合、共重合ポリエステルが本来有する物理的特性を損なうことがある。
(層(A)の固有粘度)
本発明の層(A)に用いられるポリエステルの固有粘度は0.63dl/g以上1.0dl/g以下であり、好ましくは0.63dl/g以上0.90dl/g以下、さらに好ましくは0.63dl/g以上0.80dl/g以下、特に好ましくは0.63dl/g以上0.75dl/g以下である。ここで、層(A)に用いられるポリエステルの固有粘度とは、フィルム製膜工程に供する前のポリエステルの固有粘度であり、かかる固有粘度は、o−クロロフェノール中、35℃において測定される値である。また、かかるポリエステルが固相重合によるポリエステルであり、o−クロロフェノール溶媒に不溶の場合は、重量比が6:4のフェノール:テトラクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃の温度にて測定して求めることができる。
本発明において、層(A)はカルボキシホスフィン酸を多量に含み、共重合成分量が多いことから共重合ポリエステルの融点が低下し、相対的に層(B)との融点差が生じる。そのため、層(A)に用いられるポリエステルの固有粘度が下限値に満たないと製膜工程で他層との溶融粘度差が生じ、共重合ポリエステル層(A)の厚み斑が大きくなり、層厚みを均一にするのが困難となる。その結果、得られたフィルムに難燃特性むらおよび熱融着性むらが生じる。一方、層(A)に用いられるポリエステルの固有粘度はより高い方が好ましいものの、上限値を超えるような高い固有粘度のポリマーを得るためには重合時間を長くする必要があり経済的でない他、これ以上粘度を高くしても燃焼特性や熱融着性の向上がみられない。
本発明においては、層(A)に用いられるポリエステルの固有粘度を高くすることによって低融点の共重合ポリエステルでありながら製膜時に他層との溶融粘度差を小さくでき、A層厚みの均一化を可能にしたものであり、フィルムの難燃特性むらおよび熱融着性むらをなくすことができる。
<層(B)>
本発明の難燃性積層ポリエステルフィルムは、層(A)に加え、ポリエステル成分が層の重量を基準として95重量%以上である層(B)をその積層構造の少なくとも1層として有する。層(B)を構成するポリエステル成分は、さらに好ましくは97重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。
層(B)を構成するポリエステルは、層(A)の主たるポリエステル成分と同一である。層(A)と同一の主たるポリエステル成分を用いることにより、両層の溶融粘度差を調整しやすく、層(A)の厚み斑を均一にすることができ、かつ層(A)と層(B)の界面について高い界面接着性が得られる。かかるポリエステルの具体例として、フィルム成形性、特に溶融成型によるフィルム成型性を有する熱可塑性ポリエステルであり、例えば、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とする熱可塑性ポリエステルである。
熱可塑性ポリエステルの中でも主たる構成成分は、エチレンテレフタレートまたはエチレンナフタレンジカルボキシレートであることが好ましい。また、エチレンナフタレンジカルボキシレートはさらにエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであることが好ましい。ここで「主たる」とは、ポリエステルの全繰り返し単位のモル数を基準として80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上を意味する。
層(B)のポリエステルは、共重合成分が20モル%以内の共重合ポリエステルであってもよい。かかる共重合成分として層(A)で用いられる共重合ポリエステルの共重合成分の中から少なくとも1種用いることができる。なお、層(B)においてカルボキシホスフィン酸成分を含む場合は10モル%以下の範囲で使用してもよい。
また層(B)のポリエステルは、他のポリエステルとの混合体であってもよい。他のポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレン−2,7−ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン−4,4’−テトラメチレンジフェニルジカルボキシレート、ポリネオペンチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステルを挙げることができる。
これらのブレンド成分の中でも、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが特に好ましい成分として挙げられる。これらのブレンド成分は、層(B)を構成するポリエステルの全繰り返し単位のモル数を基準として20モル%以下の範囲で用いることが好ましく、また1種であっても2種以上を併用してもよい。
層(B)を構成するポリエステルは、層(A)を構成する共重合ポリエステルと同様の重縮合方法を用いて得ることができる。
層(B)に用いられるポリエステルの固有粘度は0.48〜0.90dl/gであることが好ましい。層(B)に用いられるポリエステルの固有粘度が下限値に満たない場合、フィルムの製膜時の破断が発生し易くなる他、得られたフィルムが脆くなることがある。また層(B)に用いられるポリエステルの固有粘度が上限値を超えると、層(A)との溶融粘度差が大きくなりやすく、またポリマーの固有粘度をかなり高くする必要があり、通常の合成手法では重合に長時間を要し生産性が悪くなる。
さらに、層(B)に用いられるポリエステルの固有粘度は、層(A)に用いられるポリエステルの固有粘度より0.01〜0.1dl/g低いことが好ましく、特に0.03〜0.07dl/g低いことが好ましい。層(A)と層(B)に用いられるポリエステルの固有粘度差がかかる範囲にあることにより、両層の溶融時の粘度差を適切な範囲にすることができ、熱融着性、難燃性をより均一にすることができる。
なお、かかる固有粘度は層(A)に用いられるポリエステルと同様、o−クロロフェノールを溶媒として用いて、35℃で測定した値(単位:dl/g)である。また、層(B)に用いられるポリエステルが固相重合によるポリエステルであり、o−クロロフェノール溶媒に不溶の場合は、重量比が6:4のフェノール:テトラクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃の温度にて測定して求めることができる。
<他添加剤>
本発明の難燃性積層ポリステルフィルムには、フィルムの取り扱い性を向上させるため、発明の効果を損なわない範囲で不活性粒子などが添加されていても良い。かかる不活性粒子は層(A)、層(B)のいずれの層に配合されてもよい。不活性粒子としては、例えば、周期律表第IIA、第IIB 、第IVA 、第IVBの元素を含有する無機粒子(例えばカオリン、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素など)、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂粒子等のごとき耐熱性の高いポリマーよりなる粒子などを含有させることができる。
不活性粒子を含有させる場合、不活性粒子の平均粒径は、0.001〜5μmの範囲が好ましく、フィルム全重量に対して0.01〜10重量%の範囲で含有されることが好ましい。
本発明の難燃性積層ポリステルフィルムには、さらに必要に応じて更に熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。これら添加剤は、いずれの層に配合されても構わない。
<難燃性積層ポリエステルフィルム>
本発明の難燃性積層ポリエステルフィルムは、カルボキシホスフィン酸成分を含む共重合ポリエステルを主たる成分とする層(A)、およびポリエステル成分を層の重量を基準として95重量%以上含有する層(B)とを含む積層構造を有する。
かかる積層ポリエステルフィルムにおいて、層(A)が主に難燃性、熱融着性を発現する機能を有し、層(B)が主に耐熱性、機械特性を維持させる機能を有する。
難燃性積層ポリエステルフィルムは、フィルム厚みが5〜250μmであることが好ましく、より好ましくは8〜150μm、更に好ましくは10〜100μmの範囲である。
積層ポリエステルフィルムの厚み比は、全層における層(A)の厚み割合が10%以上50%以下であることが好ましい。層(A)の厚み割合は、より好ましくは12%以上40%以下、さらに好ましくは15%以上35%以下、特に好ましくは18%以上30%以下である。層(A)の厚み割合が下限値に満たない場合、熱融着性および難燃性が十分でないことがある。また、層(A)の厚み割合が上限値を超える場合、フィルムの機械特性が低下することがある。
本発明の難燃性積層ポリエステルフィルムの層構成は、上述の2層構成以外に、さらに3層以上の構成であってもよく、層(A)/層(B)/層(A)が例示される。かかる層数の上限は、特に制限されないが201層であることが好ましい。
<塗膜層>
本発明において、難燃性積層ポリエステルフィルム表面に各種の機能を付与するため、少なくとも一方の面に塗膜層が形成されてもよい。塗膜層はいずれの面に形成してもよいが、熱融着性を有しない層(B)側の面に形成するのが好ましい。塗膜層を構成するバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の各種樹脂を使用し得る。たとえば、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、およびポリオレフィン、ならびにこれらの共重合体やブレンド物が挙げられる。中でもポリエステル、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリウレタンが好ましく例示される。かかるバインダー樹脂は、更に架橋剤を加えて架橋されたものでも良い。塗膜層はコーティングによって形成されるのが好ましく、コーティング塗剤の溶媒として、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶媒および混合物が使用され、また水を溶媒としてもよい。
本発明の塗膜層は、構成成分として、さらにポリアルキレンオキサイドなどの界面活性剤および不活性粒子を含んでいてもよい。また、塗膜層を形成する成分として、本発明の目的を損ねない範囲で、上記成分以外にメラミン樹脂等の上述以外の樹脂、軟質重合体、フィラー、熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、充填剤、硬化剤、難燃剤などを配合してもよい。
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に前記成分からなる塗膜を形成させる方法として、例えば延伸可能なポリエステルフィルムに塗膜形成成分を含む水溶液を塗布した後、乾燥、延伸し必要に応じて熱処理することにより積層することができる。
上記の延伸可能なポリエステルフィルムとは、未延伸ポリエステルフィルム、一軸延伸ポリエステルフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルムであり、これらの中でもフィルムの押出方向(縦方向または長手方向)に一軸延伸した縦延伸ポリエステルフィルムが特に好ましい。
塗布方法としては、公知の任意の塗布方法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法などを単独または組み合わせて用いることができる。
<熱収縮率>
本発明の難燃性積層ポリエステルフィルムの熱収縮率は、150℃で10分間加熱処理したときのフィルムの長手方向(以下、連続製膜方向、縦方向、MD方向と称することがある)、幅方向(以下、横方向、TD方向と称することがある)の少なくとも一方向において1.8%以下であることが好ましい。また本発明における熱収縮率は、好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1.3%以下である。フィルムの熱収縮率が上限値を超える場合は、フラットケーブルを作製する工程においてフィルムの寸法変化が大きいため、導体間が狭い場合良好なケーブルを作製できないことがある。かかる熱収縮率特性は、4.0倍以下の延伸倍率でフィルム延伸を行うことによって得ることができる。
<フィルム製造方法>
本発明の積層ポリエステルフィルムを製造する方法として、熱可塑性ポリエステルを溶融押出し固化成形したシートを少なくとも一方向に延伸するフィルム製造方法が挙げられ、二方向に延伸した二軸配向フィルムであることが好ましい。
フィルム製膜方法は、公知の製膜方法を用いて製造することができ、例えば層(A)用に調整したカルボキシホスフィン酸を含む共重合ポリエステルを十分に乾燥させた後、融点〜(融点+70)℃の温度で押出機内で溶融する。同時に層(B)用に調整したポリエステルを十分に乾燥させた後、他の押出機に供給し、融点〜(融点+70)℃の温度で溶融する。続いて、両方の溶融樹脂をダイ内部で積層する方法、例えばマルチマニホールドダイを用いた同時積層押出法により、積層された未延伸フィルムが製造される。かかる同時積層押出法によると、一つの層を形成する樹脂の溶融物と別の層を形成する樹脂の溶融物はダイ内部で積層され、積層形態を維持した状態でダイよりシート状に成形される。
次いで該未延伸フィルムを逐次または同時二軸延伸し、熱固定する方法で製造することができる。逐次二軸延伸により製膜する場合、未延伸フィルムを縦方向に60〜100℃で2.3〜5.5倍、より好ましくは2.5〜5.0倍の範囲で延伸し、次いでステンターにて横方向に80〜130℃で2.3〜5.0倍、より好ましくは2.5〜4.8倍の範囲で延伸する。なお、上述の熱収縮率特性を有するフィルムを得るためには、縦方向、横方向の延伸倍率の上限はそれぞれ4.0倍であることが好ましい。
熱固定は、130〜260℃、より好ましくは150〜240℃の温度で緊張下又は制限収縮下で熱固定するのが好ましく、熱固定時間は1〜1000秒が好ましい。また同時二軸延伸の場合、上記の延伸温度、延伸倍率、熱固定温度等を適用することができる。また、熱固定後に弛緩処理を行ってもよい。
<フラットケーブル>
本発明の難燃性積層ポリエステルフィルムはフラットケーブル用に使用でき、以下の方法でフラットケーブルを作成することができる。
フラットケーブルは、導電体が電気絶縁性被覆材でサンドイッチ状に被覆されたフラットな形状のケーブルである。具体的には、本発明の難燃性積層ポリエステルフィルムを2枚用いて層(A)同士を対向させ、その間に配線パターンを形成した導電体を挟みこみ、その後層(A)の融点以上、層(B)の融点以下の温度範囲で、層(A)を溶融させた状態でプレスして熱融着させることによりフラットケーブルを作成することができる。
導電体としては、フラットケーブルに使用される通常の導電体を使用でき、例えば銅、メッキされた銅、銀などが挙げられる。導電体は箔状や平角状であり、直線、曲線またはこれらの組合せで複数の自由な配線パターンが形成される。
本発明の難燃性積層ポリエステルフィルムを用いて得られたフラットケーブルは、熱融着性に優れており、しかも熱融着性むらがないため、さらにプライマー処理や接着剤層を設けなくても2枚のフィルム間の接着力を高めることができる。また難燃性に優れ、難燃性のばらつきが小さいため信頼性が高く、難燃性が必要とされる使途に好適に使用できる。さらに高温下での寸法安定性に優れるため、高温下で使用される使途、例えば自動車の内部配線として使用することができる。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
(1)固有粘度
ポリエステルチップの固有粘度([η]dl/g)は、35℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。o−クロロフェノール溶媒に不溶の場合は、重量比が6:4のフェノール:テトラクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃の温度にて測定して求めることができる。
(2)ポリエステル成分量
フィルムサンプルの各層について、H−NMR測定よりポリエステルの成分および共重合成分及び各成分量を特定した。
(3)厚み割合
積層フィルムの各層厚みは、フィルム全幅の中心をセンター部とし、センター部を含むフィルムの小片をエポキシ樹脂(リファインテック(株)製の商品名「エポマウント」)中に包埋し、Reichert−Jung社製Microtome2050を用いて包埋樹脂ごと50nm厚さにスライスし、透過型電子顕微鏡(LEM−2000)により加速電圧100KVで測定して求めた。
得られた各層厚みをもとに、下記式(1)により厚み割合(%)を求めた。
厚み割合(%)=(T(A)/T(T))×100 ・・・(1)
(式(1)中、T(A)は層(A)の厚み、T(T)は積層フィルム全体の厚みをそれぞれ表わす)
(4)層(A)の層厚み比のばらつき
フィルム全幅の中心をセンター部とし、フィルム全幅方向においてセンターから95%の位置をエッジ部とし、センター部およびエッジ部の層(A)厚み比を上記の(3)厚み割合の方法に準じて求め、下記式(2)により層(A)の層厚み比のばらつきを求め、下記基準で判定した。
層(A)の層厚み比のばらつき=T(A)/T(A) ・・・(2)
(式(2)中、T(A)はエッジ部の層(A)厚み比、T(A)はセンター部の層(A)厚み比をそれぞれ表わす)
○: 層(A)の層厚み比のばらつき 0.7以上2.5未満
△: 層(A)の層厚み比のばらつき 0.4以上0.7未満、2.5以上4.0未満
×: 層(A)の層厚み比のばらつき 0.4未満、4.0以上
(5)熱収縮率
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに150℃ のオーブンで10分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム連続製膜方向(MD方向)と、製膜方向に垂直な方向(TD方向)において、下記式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=((熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離)×100
(6)燃焼性
フィルムサンプルをUL−94VTM法に準拠して評価した。サンプルを20cm×5cmにカットし、23±2℃、50±5%RH中で48時間放置し、その後、試料下端をバーナーから10mm上方に離し垂直に保持した。該試料の下端を内径9.5mm、炎長19mmのブンゼンバーナーを加熱源とし、3秒間接炎した。VTM−0,VTM−1,VTM−2の評価基準に沿って難燃性を評価し、n=5の測定回数のうち、同じランクになった数の最も多いランクとした。
(7)燃焼性のばらつき
(6)の方法での難燃性評価において、測定回数5回のうちのいくつが(6)で求めたランクになったかにより、燃焼性のばらつきを評価した。
(8)熱融着性(接着性)
2枚のフィルムサンプルの層(A)(カルボキシホスフィン酸成分を配合してなる層)同士を熱融着させて接着したものにつき、10mm幅×150mm長さの試料を引張り速度100mm/分で引き剥がし、ヒートシール接着強度を測定した。n=5の測定回数の平均値より、下記基準で判定した。
○: 引き剥がし強さ50g/mm以上
△: 引き剥がし強さ20g/mm以上50g/mm未満
×: 引き剥がし強さ20g/m m 未満
(9)熱融着性のばらつき
(8)の方法での熱融着性評価において、測定回数5回のうちの最大値と最小値との差を求め、下記基準で判定した。
○: 引き剥がし強さの最大値と最小値の差 平均値の30%以下
×: 引き剥がし強さの最大値と最小値の差 平均値の30%こえる
(10)耐屈曲性
フィルムの間に銅箔を挟んで作製したフラットケーブルサンプルを幅1.5cm×6cmに切り出し、1kgの荷重を加えて吊るし、試料を左右方向に90°繰り返し屈曲させ、試料の平角導体が断線するまでの屈曲回数を測定した。
○:屈曲回数2000回以上
△:屈曲回数1500回以上2000回未満
×:屈曲回数1500回未満
[実施例1]
層(A)用に、テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03重量部、滑剤として平均粒径0.5μmの炭酸カルシウム粒子を0.4重量%含有するように添加して、常法に従ってエステル交換反応をさせた。滑剤はフィルム重量に対する配合量を示す。ついで、2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸を配合量で層Aの20重量%になるよう添加し、三酸化アンチモン0.024重量部を添加して、引き続き高温高真空下で常法にて重縮合反応を行い、固有粘度0.64dl/gのポリエステルを得た。得られたポリエステルは組成物の重量を基準として2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸量が15重量%であり、全てポリエステルと共重合化していた。得られたポリエステルを120℃ドライヤーで8時間乾燥後、押出機に投入し、250℃で溶融混練した。
一方、層(B)用に、固有粘度0.59dl/gのポリエチレンテレフタレートを170℃ドライヤーで3時間乾燥後、他方の押出機に投入し、溶融温度280℃で溶融した。
それぞれ溶融した状態で2層に積層し( 厚み比率 層(A):層(B)=1:4)、かかる積層構造を維持した状態でダイスリットより押出した後、表面温度20℃に設定したキャスティングドラム上で冷却固化させて2つの層からなる未延伸フィルムを作成した。
この未延伸フィルムを100℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に3.5倍で延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向(横方向)に4.0倍で延伸した。その後テンタ−内で200℃の熱固定を行い、180℃で1%の弛緩後、均一に除冷して室温まで冷やし、50μm厚み(層(A):10μm,層(B):40μm)の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本実施例のフィルムは、難燃性、熱融着性、耐熱寸法安定性に優れていた。さらに、銅箔を挟んだサンプルの耐屈曲性も良好であった。
[実施例2]
2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸の配合量を10重量%に変更した以外は実施例1と同様に重縮合、製膜を行い、厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た。なお得られた層(A)用のポリエステルは、組成物の重量を基準として2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸量が7重量%であり、全てポリエステルと共重合化していた。また得られたポリエステルの固有粘度は0.63dl/gであった。
得られたフィルムの特性は表1の通りである。本実施例のフィルムは、難燃性、熱融着性、耐熱寸法安定性に優れていた。さらに、銅箔を挟んだサンプルの耐屈曲性も良好であった。
[実施例3]
厚み比率を層(A):層(B)=1:9とした以外は実施例1と同様にし、厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本実施例のフィルムは、難燃性、耐熱寸法安定性、銅箔を挟んだサンプルの耐屈曲性に優れていた、また、熱融着性は実施例1よりやや低下するものの実用可能な範囲であった。
[実施例4]
2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸の代わりに2−カルボキシプロピルフェニルホスフィン酸を用いた以外は実施例1と同様に重縮合、製膜を行い、厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た。本実施例のフィルムは、難燃性、熱融着性、耐熱寸法安定性に優れていた。さらに、銅箔を挟んだサンプルの耐屈曲性も良好であった。
[実施例5]
層(A)用に、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03重量部、滑剤として平均粒径0.5μmの炭酸カルシウム粒子を0.25重量%、平均粒径0.2μmの球状シリカ粒子を0.06重量%、および平均粒径0.1μmの球状シリカ粒子を0.1重量%を含有するように添加して、常法に従ってエステル交換反応をさせた。それぞれの滑剤はフィルム重量に対する配合量を示す。ついで、2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸を配合量で層Aの20重量%になるよう添加し、三酸化アンチモン0.024重量部を添加して、引き続き高温高真空下で常法にて重縮合反応を行い、固有粘度0.63dl/gのポリエステルを得た。得られたポリエステルは組成物の重量を基準として2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸量が15重量%であり、全てポリエステルと共重合化していた。得られたポリエステルを120℃ドライヤーで8時間乾燥後、押出機に投入し、270℃で溶融混練した。
一方、層(B)用に、固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを180℃ドライヤーで5時間乾燥後、他方の押出機に投入し、溶融温度280℃で溶融した。
それぞれ溶融した状態で2層に積層し(厚み比率 層(A):層(B)=1:4)、かかる積層構造を維持した状態でダイスリットより押出した後、表面温度60℃に設定したキャスティングドラム上で冷却固化させて2つの層からなる未延伸フィルムを作成した。
この未延伸フィルムを140℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に3.5倍で延伸し、60℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き150℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向(横方向)に4.0倍で延伸した。その後テンタ−内で200℃の熱固定を行い、180℃で1%の弛緩後、均一に除冷して室温まで冷やし、50μm厚み(層(A):10μm ,層(B):40μm)の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本実施例のフィルムは、難燃性、熱融着性、耐熱寸法安定性に優れていた。さらに、銅箔を挟んだサンプルの耐屈曲性も良好であった。
[実施例6]
厚み比率を層(A):層(B)=1:9とした以外は実施例5と同様にし、厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本実施例のフィルムは、難燃性、耐熱寸法安定性、銅箔を挟んだサンプルの耐屈曲性に優れていた、また、熱融着性は実施例1よりやや低下するものの実用可能な範囲であった。
[実施例7]
層(A)のポリエステルが表1に示す割合になるよう、原料モノマーを変更した以外は実施例5と同様に重縮合、製膜を行い、厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本実施例のフィルムは、難燃性、熱融着性、耐熱寸法安定性に優れていた。さらに、銅箔を挟んだサンプルの耐屈曲性も良好であった。
[比較例1]
層(A)に用いたポリエステルの固有粘度が0.57dl/gであること以外は実施例1と同様にし、厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本比較例のフィルムは層(A)の厚みが十分に均一でなく、難燃性、熱融着性にばらつきが見られた。
[比較例2]
2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸の配合量を層Aの5重量%になるよう変更した以外は実施例1と同様に重縮合、製膜を行い、厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたポリエステルは組成物の重量を基準として2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸量が3.5重量%であり、全てポリエステルと共重合化していた。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本比較例のフィルムは、難燃性、熱融着性、耐屈曲性が十分ではなかった。
[比較例3]
2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸の配合量を層Aの5重量%になるよう変更した以外は実施例5と同様に重縮合、製膜を行い、厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたポリエステルは組成物の重量を基準として2−カルボキシエチルフェニルホスフィン酸量が3.5重量%であり、全てポリエステルと共重合化していた。得られたフィルムの特性は表1の通りである。本比較例のフィルムは、難燃性、熱融着性、耐屈曲性が十分ではなかった。
Figure 0005405968
本発明のフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルムは、均一な熱融着性および難燃性を有しており、しかも高温寸法安定性、耐屈曲性に優れることから、接着剤層を設けなくても十分な熱融着性が発現し、フラットケーブルの基材に好適な難燃性積層ポリエステルフィルムを提供することができる。

Claims (6)

  1. カルボキシホスフィン酸成分を含む共重合ポリエステルを主たる成分とする層(A)およびポリエステル成分を層の重量を基準として95重量%以上含有する層(B)とを含む積層構造を有し、該カルボキシホスフィン酸成分が下記式(I)で表わされ、
    Figure 0005405968
    (式中、Rは炭素数6〜18のアリール基、R及びRは炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、モノヒドロキシアルキル基または水素原子、Xは炭素数1〜18の2価の炭化水素基をそれぞれ表わし、R〜Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
    該カルボキシホスフィン酸成分の含有量が層(A)の重量を基準として10重量%以上40重量%以下であり、層(A)と層(B)が同一の主たるポリエステル成分であって、かつ層(A)に用いられるポリエステルの固有粘度が0.63dl/g以上1.0dl/g以下であることを特徴とするフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルム。
  2. 全層における層(A)の厚み割合が10%以上50%以下である請求項1に記載のフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルム。
  3. 150℃で10分間加熱処理したときのフィルムの熱収縮率がフィルムの少なくとも一方向において1.8%以下である請求項1または2に記載のフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルム。
  4. カルボキシホスフィン酸成分が、(2−カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸、(3−カルボキシプロピル)フェニルホスフィン酸のうち少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルム。
  5. 層(A)、層(B)を構成するポリエステルの主たる構成成分がエチレンテレフタレートまたはエチレンナフタレンジカルボキシレートである請求項1〜4のいずれかに記載のフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のフラットケーブル用難燃性積層ポリエステルフィルムのA層同士が対向するように熱融着され、両方のA層の間に配線パターンを形成した導電体が挟み込まれてなるフラットケーブル。
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