JP6206660B2 - 透明撥水体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、このようなナノ錐体構造の耐磨耗性を向上させるために、特許文献1に開示されたような表面にナノ粒子を配置した構造が知られている。
さらに、ボディパネルに用いることによって、水しみ等の汚れを防ぐことができるものと期待されている。
第2微細凹凸構造は第1微細凹凸構造の上にあり、
第2微細凹凸構造を形成する凸部は、第1微細凹凸構造内に収容されるとともに、柱状構造及び/又は針状構造であり、
第1微細凹凸構造を形成する凹凸はそのピッチが100nm〜500nmであり、且つ第1微細凹凸構造によって規定される面の表面粗さRyが40nm〜400nmである。
自己組織化により微細凹凸構造を形成する材料を基材表面に用いて、第1微細凹凸構造を基材表面に形成し、
第1微細凹凸構造に、第2微細凹凸構造を形成する無機酸化物の凸部を形成する、ことを特徴とする。
この混合塗液を基材表面に塗付し乾燥させて、第1微細凹凸構造と第2微細凹凸構造を基材表面に同時に形成する。
図1は、本発明の透明撥水体の一実施形態を示す部分拡大断面図である。
同図において、透明撥水体1は基材40を有し、基材40の表面には第1微細凹凸構造10と第2微細凹凸構造20が形成されている。
図示のように、第2微細凹凸構造20は第1微細凹凸構造10の上にあり、第2微細凹凸構造を形成する凹凸である凹部20r、凸部20pは、第1微細凹凸構造を形成する凹凸である凹部10r、凸部10pの上にある。
この観点から、第1微細凹凸構造10を形成する凹凸10r及び10pについては、そのピッチ、即ち平均した頂点間(10p−10p)又は谷間間(10r−10r)の距離が100〜200nm程度となる。
なお、本発明の透明撥水体を自動車のウィンドシールドなどに適用するためには、100〜150nmとすれば、光の散乱が殆ど無くなり透明性が顕著に向上する。
この範囲を逸脱すると、上記のピッチと同様な不具合が生じるが、この範囲内にあることで透明性が顕著に向上する。
ここで、「径」は凸部20pが円柱状の場合などのように、典型的には円柱底面の直径を意味するがこれに限定されるものではなく、凸部20pの太さの最大値(平均値)を意味する。
換言すると、凸部20pは第1微細凹凸構造10の凸部10p同士が形成する凹領域から露出ないしは突出していない方がよく(図1参照)、これにより、凸部20pが第1微細凹凸構造10によって保護される。
なお、以下、図1に示した透明撥水体の場合と実質的に同一の部材・要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図2において、この透明撥水体は、第1微細凹凸構造10及び第2微細凹凸構造20の上に、撥水性を有する薄膜30を有している。
しかしながら、第1微細凹凸構造や第2微細凹凸構造を構成する材料が無機酸化物の場合、表面自由エネルギーは30mJ/m2を超えることがほとんどである。
本実施形態では、これらの表面をフッ素系の表面処理材料やDLCやグラフェンなどの炭素系薄膜で被覆することにより、その表面自由エネルギーを小さくしている。
これら薄膜の膜厚は第2微細凹凸構造の形状を損なわなければ特に限定されないが、20nm以下であれば、第2微細凹凸構造の形状を損なうことなく撥水性を向上できる。
第1微細凹凸構造を構成する材料としては、特に限定されず、アクリル系のハードコート樹脂や樹脂内に無機系の粒子や分子構造を持つ有機無機ハイブリッド材料、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化チタンなどの無機酸化物、複数の金属元素が混在した無機酸化物などが用いられる。
摩耗に対して耐性を上げるためには硬度が高いほうがよく、これらの中でも無機酸化物が好ましい。更に好ましくは、屈折率が小さい酸化ケイ素中に靭性向上のための酸化チタンを添加した材料がよい。この場合、酸化チタンの添加する割合は1〜10質量%が好ましい。
例えば、親水性の強いテトラエトキシシランのゾル液と疎水性を持つメチルトリエトキシシランのゾル液を混合することで、これらの成分が相分離し、ガラス基材上に凹凸を形成する。
例えば、ガラスをサンドブラストやウェットブラスト、表面エッチング又はナノインプリントなどの直接成形により凹凸を成形する方法がある。
また、ナノ粒子としてゾル液に添加できるアルミナやベーマイトなどの無機針状粒子も好ましい。アスペクト比2〜100の針状粒子も好適に用いることができる。これらの第2微細凹凸構造を構成する材料については、第1微細凹凸構造と第2微細凹凸構造による階層構造を作製する工程により使い分けられる。
例えば、透明撥水体の表面が無機酸化物などで形成されている場合は、アルコキシシランなどの金属や半金属のアルコキシドを官能基として持つ試薬をウェットプロセスにより直接塗布することができる。また、防汚表面の反応性が低くウェットプロセスを適用できない場合は、スパッタや蒸着によって最表面にシリカなどの無機薄膜を形成すれば官能基の導入が容易になる。
かかる薄膜としては、炭素を主成分とする薄膜、パーフルオロアルキル基を含む薄膜、パーフルオロポリエーテルを含む薄膜などを例示できる。
例えば、自動車用グレージング材に用いることにより、雨の日もクリアな視界を確保できる。特にウィンドウシールドでは、ワイパーをほとんど作動させること無く走行することも可能になる。また、この他にもミラーやラジエーターフィン、エバポレーターなどに使用することで様々な効果を発現できると考えられる。
特に限定されるものではないが、具体的には2つの製造方法を例示できる。
第1の方法としては、第1微細凹凸構造を上述のような相分離により形成し、得られた表面に対し、酸化亜鉛ナノロッドなどに代表されるC軸配向性の無機材料からなる第2微細凹凸構造を形成する。
更に、市販のフッ素系表面処理剤(例えば、フロロサーフFG5020)などを塗布して薄膜を形成してもよい。
薄膜形成には、真空製膜によるDLC処理を用いてもよい。また、DLC処理とフッ素系表面処理剤を併用することも可能である。
これは、第1微細凹凸構造を形成する層分離可能なゾル液に予め無機針状粒子などを分散させておき、塗付後、乾燥と焼結を行なうことで、簡便に第1微細凹凸構造と大2B委細凹凸構造による階層構造を形成できる。
表面処理については、第1の方法と同様にフッ素系表面処理剤と真空製膜によるDLCコーティングなどが適用される。
表1記載の組成によりゾルA及びゾルBを調製し、これを表1記載の割合で混合し、スピンコーター用いて塗布した。塗付サンプルを表1記載の湿度雰囲気下で乾燥させ、焼結させた。作製した凹凸の形状は表2に記載した。
なお、表1中「TEOS」はテトラエトキシシラン、「TPOT」はテトラプロポキシチタネート、「MTES」はメチルトリエトキシシランを示している。
また、表2中「SG1」、「SG2」、「SG3」はゾルゲル法により成形された第1微細凹凸構造(表面A)を示す。
テクノクリア(奥野製薬社製)を用いて、第2の微細凹凸構造を作製した。
テクノクリアは洗浄工程、触媒形成工程(Sn層、Ag層、Pd層の3工程)、ZnO形成工程の5段階の処理工程からなり、表3に示す濃度の溶液に調製し、その溶液に第1微細凹凸を形成した基材を任意の時間浸漬した。
第2の微細凹凸の形状は表4に記載した。また、第1の微細凹凸との組合せと評価結果は表5に記載する。
また、テクノクリアZN−R−V2&ZN−M−V2は、ジメチルアミンボランのモル溶液と硝酸亜鉛溶液示す。
第1の微細凹凸構造を作製するゾルAに針状粒子を添加し、第1の微細凹凸と同様の方法にて作製することで、表面から針状粒子が露出した階層構造が得られる。詳細な作製条件は表6に記載した。
フッ素系の表面コーティングには、フロロサーフFG5020(フロロテクノロジー社製)又はNOVEC1720(3M社製)を用い、第1の微細凹凸及び第2の微細凹凸を形成した基材を10分間浸漬させ、150℃、1hr加熱した。詳細な作製条件は表7に記載した。
DLCコーティングは、成膜原料ガスにメタンを用い、成膜温度200℃以下、成膜速度500nm/hrのCVD法により、10nmのDLCを成膜した。
(耐摩耗性評価)
耐磨耗性については、トラバース試験機(HEIDON社製)を用いて、100gf/cm2の荷重で7000回摩耗し、静置接触角を測定し、接触角保持率が80%以上を〇、50%〜80%を△、50%未満を×とした。得られた結果を表5及び表7に併記する。
接触角はDSA100(Kruss社製)を用いて測定し、θ/2近似にて静置接触角を導出した。得られた結果を表5及び表7に併記する。
ヘイズメーター(村上色彩社製)により、サンプルのヘイズを測定した。ヘイズがH≦1%のときを◎、1<H≦3のときを○、3<H≦10のときを△、H>10のときを×とした。得られた結果を表5及び表7に併記する。
例えば、第2微細凹凸構造を非常に微細なカーボンナノチューブやカーボンナノホーンなどの強靱な炭素構造体で形成することも可能である。
本発明の透明撥水体は、自動車のウィンドシールドなどに適用しても長期耐候性に優れ、長期間超撥水性を維持できる。
10 第1微細凹凸構造
10p 凸部
10r 凹部
20 第2微細凹凸構造
20p 凸部
20r 凹部
30 薄膜
40 基材
Claims (13)
- 表面に第1及び第2の微細凹凸構造を有する基材を備えた透明撥水体であって、
第2微細凹凸構造は第1微細凹凸構造の上にあり、
第2微細凹凸構造を形成する凸部は、第1微細凹凸構造内に収容されるとともに、柱状構造及び/又は針状構造であり、
第1微細凹凸構造を形成する凹凸はそのピッチが100nm〜500nmであり、且つ第1微細凹凸構造によって規定される面の表面粗さRyが40nm〜400nmである、ことを特徴とする透明撥水体。 - 第2微細凹凸構造を形成する凸部の径が30nm〜150nmであり、その高さが第1微細凹凸構造によって規定される面の表面粗さRyよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の透明撥水体。
- 第1微細凹凸構造を形成する構成材料が酸化ケイ素と酸化チタンの複合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明撥水体。
- 第2微細凹凸構造を構成する構成材料がC軸方向に結晶配向性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の透明撥水体。
- 第2微細凹凸構造の構成材料が酸化亜鉛であことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の透明撥水体。
- 第2微細凹凸構造の構成材料がアスペクト比2〜100の針状粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の透明撥水体。
- 第2微細凹凸構造の構成材料が針状酸化アルミニウム粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の透明撥水体。
- 第1微細凹凸構造及び第2微細凹凸構造上に、表面自由エネルギーが30mJ/m2以下で且つ厚み20nm以下の薄膜を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の透明撥水体。
- 上記薄膜が、炭素を主成分とする薄膜、パーフルオロアルキルを含む薄膜及びパーフルオロポリエーテルを含む薄膜から成る群より選ばれた少なくとも1種の薄膜であることを特徴とする請求項8に記載の透明撥水体。
- 請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の透明撥水体を備えることを特徴とする自動車用部品。
- 請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の透明撥水体を製造するに当たり、
自己組織化により微細凹凸構造を形成する材料を基材表面に用いて、第1微細凹凸構造を基材表面に形成し、
第1微細凹凸構造に、第2微細凹凸構造を形成する無機酸化物の凸部を形成する、ことを特徴とする透明撥水体の製造方法。 - 請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の透明撥水体を製造する当たり、
自己組織化により第1微細凹凸構造を形成する塗液にナノ粒子を混合し、
この混合塗液を基材表面に塗付し乾燥させて、第1微細凹凸構造と第2微細凹凸構造を基材表面に同時に形成する、ことを特徴とする透明撥水体の製造方法。 - 第1微細凹凸構造と第2微細凹凸構造上に、表面自由エネルギーが30mJ/m2以下で且つ厚み20nm以下の薄膜を被覆することを特徴とする請求項11又は12に記載の透明撥水体の製造。
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