JP5201537B2 - 撥水性構造及び撥水性構造体 - Google Patents
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例えば、自動車や鉄道用車両、船舶、航空機などの各種ウィンドウパネルにこのような微細凹凸構造を適用することによって、ワイパーの要らないウィンドウパネルを実現し、部品数の削減や生産工数削減によるコストの削減が望まれている。また、ボディパネルに適用することによって、水浸みなどの汚れを防ぐことができるものと期待されている。
特に、表面をフッ化処理する場合に、撥水性の高いフッ素化合物が凹凸構造の底部まで反応せず、特に後退接触角が低いために、表面に付着した水滴がより望ましい領域へ移動する(各種ウィンドウパネルの例で示せば、下方など視界の妨げとなりにくい領域に滑り落ちる)速度が低下するという問題がある。なお、「後退接触角」とは、固体表面に接した液滴の界面が固体表面に対し後退するときの接触角をいう。(例えば、「界面化学の測定」http://www.face-kyowa.co.jp/j/interface_chemistry/measurement.html動的接触角の項等を参照。)
また、微細凹凸構造を構成する錐体状突起2の形状例として、円錐形及び四角錐のものを示したが、その底面形状としては、三角形や六角形など、他の多角形であっても良い。
加えて、錐体状突起2の底面の中心と頂点を結ぶ直線は、必ずしも底面に対して垂直である必要もない。
このように、本発明において『錐体状』とは、正確な円錐や角錐のみならず、釣り鐘形や椎の実形、半紡錘形などの変形円錐状や、曲面から成る側面を有する変形角錐状のもの、先端が平坦なもの、丸みを帯びたもの、傾斜したものをも含めた形状を意味する。
すなわち、錐体状突起2の底面は、上記のように円形又は多角形をなすものであるが、円形の場合にはその径、楕円形の場合はその長径、多角形の場合にはその多角形に外接する円の径をもって底面寸法Dbとし、この底面寸法Dbを50μm以下とする必要がある。また、隣接する錐体状突起2間のピッチ(頂部間距離)Pについても50μm以下とする必要があり、これらによって優れた撥水性と共に、透明性を確保することが可能になり、本発明の撥水構造をディスプレイのカバーやウィンドウパネルに適用することができるようになる。
ピッチPが400nmを超えると、回折光が発生し、反射率が大きくなる傾向がある。より望ましくは380nm以下であり、さらに望ましくは250nm以下である。250nm以下であれば、回折光はほとんど観測されなくなる。
また、錐体状突起2のアスペクト比を1以上とすることがさらに望ましい。アスペクト比とは、錐体状突起2の高さHを底面寸法Dbで除した値(H/Db)を意味する。
なお、錐体状突起2の頂部寸法Dtについては、ピッチPの大きさに関わりなく、30nm以下とすることがより好ましい。
なお、上記基材1の材料中、もしくは基材1と下層(ベースフィルムや糊材)の密着部には、静電気によるごみやほこりの付着を防止する観点から、テトラブチルホスホニウム=トリフルオロメタンスルホナート(以下、TBP−TFと略記する。)やテトラブチルホスホニウム=ノナフルオロブタンスルホナート(以下、TBP−NFと略記する。)、ホスホニウム塩類のような帯電防止剤を添加しておくことが望ましい。
特に、光の波長以下の微細凹凸を容易に成形するための方法としては、ナノインプリントが好適に用いられる。このナノインプリントによる成形方法としては、熱や活性エネルギー線のいずれを用いる方法であってもよい。
なお、本発明において、ナノインプリントとは、数nmから数10μm程度の範囲の転写を言う。
また、スタンパの材料としては、シリコンウエハ、各種金属材料、ガラス、セラミック、プラスチック、炭素材料等、強度と要求される精度の加工性を有するものであればよく、 具体的には、Si、SiC、SiN、多結晶Si、ガラス、Ni、Cr、Cu、C、さらにはこれらを1種以上含むものを例示することができる。
なお、図2においては錐台状の突起2を例示したが、図1に示したような錐状の突起から成る微細凹凸構造を備えた基材1を用いることももちろん可能であり、撥水性能の観点からは、頂部平坦部のない錐状の突起による基材を用いることが望ましい。
すなわち、シラノール結合、エーテル結合は形成しやすく、またエステル結合に比べて加水分解を受け難いため、耐磨耗性が向上し、長期に亘って優れた撥水性能を発揮することができる。
なお、基材の凹凸表面上にシリカ層を形成するには、例えばスパッタ法、真空蒸着法、TEOS系のシラノール化合物を含有するプライマーコート剤などを基材1に塗工するなどの方法によって行うことができる。
CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(CH3)2OCH3:n=1〜8
CH3−(Si(CH3)2−O)n−SiCH3(OCH3)2:n=1〜8
CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(OCH3)3:n=1〜8
CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(OC2H5)3:n=1〜6
CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(CH3)2(CH2)3OCH2CH(OH)CH2NH(CH2)3Si(OCH3)3:n=1〜7
(CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(CH3)2(CH2)3OCH2CH(OH)CH2)2N(CH2)3Si(OCH3)3:n=1〜7
CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(OH)3:n=2〜9
CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(CH3)2Cl:n=1〜8
CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(CH3)2(CH2)2SiCH3Cl2:n=1〜7
CH3−(Si(CH3)2−O)n−SiCl3:n=2〜9
CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(OCOCH3)3:n=1〜7
CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(NCO)3:n=1〜8
CH3−(Si(CH3)2−O)n−Si(CH3)2(CH2)3O(CH2)3OCONHSi(NCO)3:n=1〜3
Rf−(CH2)2−(Si(CH3)2−O)n−Si(CH3)2(CH2)3OCH2CH(OH)CH2NHSi(OCH3)3:n=1〜3
(Rf−(CH2)2−(Si(CH3)2−O)n−Si(CH3)2(CH2)3OCH2CH(OH)CH2)2N(CH2)3Si(OCH3)3:n=1〜2などのシラノール化合物において、上記化合物のHの一部がFであるフルオロシラノール化合物、フルオロエタノールなどを用いることが可能である。
上記被覆層Lの厚さとしては、その効果を有効なものとするために、1〜10nm程度とすることが望ましい。また、被覆層L中に含まれる第1の撥水性化合物A及び含炭素化合物Bと無機化合物Cから選択される第2の撥水性化合物の含有量としては、それぞれ40〜90%、10〜60%(ごく微量含まれ得る不純物を除く)とすることが望ましい。
このとき、微細凹凸構造を備えた基材部分と基板とは、同種の材料であっても、接合に問題がない限り異種材料であっても構わない。また、基板と基材を一体化すること、すなわち、基板に直接微細凹凸構造を形成したり、基材と同じ屈折率で成形が容易な材料を塗布して薄膜を作り、そこに上記の錐体状突起を転写したりすることも可能である。
また、自動車やバイクのメーターパネル、携帯電話、電子手帳などのモバイル機器、看板、時計など、雨などの水や、油汚れにさらされる可能性があるような表示装置に使用することができる。
また、樹脂の劣化による黄変を補うためのブルーイング剤や蛍光発色顔料を用いることもできる。
市販の電子線描画装置を用いて、開口径100nm、深さ200nmの円錐状凹部が100nmの間隔に六方最密配列した金型を作製した。この金型に紫外線硬化アクリル樹脂を流し込み、基板としてのPET樹脂を押し当てた状態で紫外線を照射することにより、底面径Db=100nm、高さH=200nmの円錐状突起2(錐体状突起)が頂点間距離P=100nmに六方最密配列された撥水性微細凹凸構造を片面に備えた基材1を得た。
さらに上記シリカ層の上に、CF3−(CF2)7(CH2)2−Si(OCH3)3(第1の撥水性化合物A)/CF3−Si(OCH3)3(第2の撥水性化合物)をそれぞれ90%/10%の配合比で含む被覆層Lをスパッタリングによって5nmの厚さに成膜し、本例の撥水性構造体を得た。
第2の撥水性化合物として三酸化アンチモンを使用したこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって、本例の撥水性構造体を得た。
そして、このようにして得られた撥水性構造体について、上記実施例1と同様の性能評価を行い、その結果を表1に併せて示す。
第2の撥水性化合物として三酸化アンチモンとCF3−Si(OCH3)3とをそれぞれ50%(被覆層L中においてはそれぞれ5%)の配合比で使用したこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって、本例の撥水性構造体を得た。
そして、得られた撥水性構造体について、上記実施例1と同様の性能評価を行い、その結果を表1に併せて示す。
第1の撥水性化合物Aとして、CF3−(CF2)7(CH2)2−OHを使用したこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって、本例の撥水性構造体を得た。
そして、このようにして得られた撥水性構造体について、上記実施例1と同様の性能評価を行い、その結果を表1に併せて示す。
CF3−(CF2)7(CH2)2−Si(OCH3)3のみから成る被覆層を形成したこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって、本比較例の撥水性構造体を得た。
そして、このようにして得られた構造体について、上記実施例1と同様の性能評価を行い、その結果を表1に併せて示す。
CF3−Si(OCH3)3のみから成る被覆層を形成したこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって、本比較例の撥水性構造体を得た。
そして、このようにして得られた構造体について、上記実施例1と同様の性能評価を行い、その結果を表1に併せて示す。
微細凹凸構造のない平板状の基材を用い、上記実施例1と同様の操作を繰り返すことによって平板上に被覆層を形成し、本比較例の撥水性構造体を得た。
そして、このようにして得られた構造体について、上記実施例1と同様の性能評価を行い、その結果を表1に併せて示す。
(1)静止接触角
接触角計(CA−A型:協和界面化学製)を使用し、室温下で6μlの水滴を針先につくり、これを測定試料の表面に触れさせて液滴をつくった。このときに生ずる液滴と面との角度を測定し、三点プロット(θ/2法)で5点測定し、これらの値の平均値を静止接触角とした。
上記各実施例及び比較例によって得られた各構造体について、トラバース式摩耗試験機を用い、キャンバス布(JIS L 3102)から成る摩擦布によって、荷重9.8kPa、ストローク長100mm、摩擦速度30往復/分の条件のもとに、200回往復払拭作動させた。そして、目視観察によって、傷付きがない場合を「○」、傷付きが認められた場合を「×」として示した。
上記した耐乾拭性試験を実施した後、JIS L 1092に規定された方法に基づき、スプレーテスタ(東洋精器製)を用いて、以下の基準によって撥水度を5段階評価した。
1:表面全体に濡れ広がるもの
2:水滴が球状を保持することなく、表面に濡れ広がるもの
3:表面に球状の水滴が付着するもの
4:表面に微小な球状の水滴がわずかに付着するもの
5:表面に水滴が付着しないもの
これに対して、撥水性化合物を1種のみ含有する被覆層を備えた比較例や、微細凹凸構造のない平板上に撥水性被覆層を形成した比較例においては、上記性能のいずれかが優れていても、他の性能面で劣ることが確認された。
2 錐体状突起
Claims (8)
- 円形又は多角形の底面を有し、円形底面の径又は底面多角形に外接する円の径Dbが50μm以下である無数の錐体状突起が50μm以下のピッチPで二次元的に配置されて成る微細凹凸構造を備えた基材の凹凸表面に、フルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物又はフルオロアルキル基を有するエタノール化合物から成る第1の撥水性化合物Aと、第1の撥水性化合物Aよりも炭素数が少ないフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物から成る含炭素化合物B及び/又は三酸化アンチモンから成る第2の撥水性化合物を備えたことを特徴とする撥水性構造。
- 上記錐体状突起の頂部が円形又は多角形の頂面をなし、円形頂面の径又は頂面多角形に外接する円の径Dtと、錐体状突起間のピッチPとが、Dt≦0.4Pの関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の撥水性構造。
- 上記第1の撥水性化合物Aの炭素数が5〜30であって、上記含炭素化合物Bの炭素数が4以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の撥水性構造。
- 第1の撥水性化合物A及び含炭素化合物Bは、上記基材の凹凸表面にシラノール結合又はエーテル結合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の撥水性構造。
- 第1の撥水性化合物A及び含炭素化合物Bは、上記基材の凹凸表面にシリカ層を介して結合していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の撥水性構造。
- 請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の撥水性構造を基板の少なくとも一方の面に備えていることを特徴とする撥水性構造体。
- 透明材料から構成されていることを特徴とする請求項6に記載の撥水性構造体。
- 請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の撥水性構造を備えていることを特徴とする自動車部品。
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