JP6200534B2 - 鉛フリーはんだ合金、電子回路基板および電子制御装置 - Google Patents
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Description
この鉛フリーはんだ合金としては、例えばSn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系、Sn−Zn系はんだ合金等がよく知られている。その中でもテレビ、携帯電話等に使用される民生用電子機器や自動車に搭載される車載用電子機器には、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金が多く使用されている。
鉛フリーはんだ合金は、鉛含有はんだ合金と比較してはんだ付性が多少劣るものの、フラックスやはんだ付装置の改良によってこのはんだ付性の問題はカバーされている。そのため、例えば車載用電子回路基板であっても自動車の車室内のように寒暖差はあるものの比較的穏やかな環境下に置かれるものにおいては、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金を用いて形成したはんだ接合部でも大きな問題は生じていない。
しかし近年では、例えば電子制御装置に用いられる電子回路基板のように、エンジンコンパートメントやエンジン直載、モーターとの機電一体化といった寒暖差が特に激しく(例えば−30℃から110℃、−40℃から125℃、−40℃から150℃といった寒暖差)、加えて振動負荷を受けるような過酷な環境下での電子回路基板の配置の検討および実用化がなされている。このような寒暖差が非常に激しい環境下では、実装された電子部品と基板との線膨張係数の差によってはんだ接合部に大きな応力が発生する。冷熱サイクルと共にはんだ接合部に繰り返し生じるこの応力は、はんだ接合部の塑性変形を何度も引き起こす。そのため、繰り返し塑性変形したはんだ接合部は非常に亀裂が生じ易くなり、また発生した亀裂の先端付近のはんだ接合部にはひずみが集中するため、亀裂は横断的にはんだ接合部の深部まで進展し易くなる。また激しい寒暖差に加え電子回路基板に振動が負荷される環境下にあっては、亀裂およびその進展は更に発生し易い。そうして著しく進展した亀裂は電子部品と基板上に形成された電子回路との電気的接続を切断してしまう。
上述する過酷な環境下に置かれる車載用電子回路基板および電子制御装置が増える中で、十分な亀裂進展抑制効果を発揮し得るSn−Ag−Cu系はんだ合金を用いたソルダペースト組成物への要望は、今後ますます大きくなることが予想される。
はんだ接合時において、Snめっきされた電子部品は、Snめっきおよびはんだ接合部に含まれるSnとリード部分や前記下面電極に含まれるCuとの相互拡散を発生させ易い。この相互拡散により、前記リード部分および前記下面電極とはんだ接合部の界面付近にて、金属間化合物であるCu3Sn層が凸凹状に大きく成長する。前記Cu3Sn層は元々硬くて脆い性質を有する上に、凸凹状に大きく成長したCu3Sn層は更に脆くなる。そのため、特に上述する過酷な環境下においては、前記界面付近ははんだ接合部と比較して亀裂が発生し易く、また発生した亀裂はこれを起点として一気に進展するため、電気的短絡が生じ易い。
従って、今後は前記のような過酷な環境下でNi/Pd/Auめっきがなされていない電子部品を用いた場合であっても前記界面付近における亀裂進展抑制効果を発揮し得る鉛フリーはんだ合金への要望も大きくなることが予想される。
通常、リフローによるはんだ接合工程における冷却プロセスにおいては、基板の電子回路側から電子部品の電極側へはんだ合金が凝固し、はんだ接合部が形成される。そのため、その残留応力ははんだ接合部の上部に蓄積しやすい。ここで、Biの添加により延伸性が低下した鉛フリーはんだ合金はこの残留応力を緩和することが難しく、特に寒暖差の激しい環境下においては、はんだ接合部の電子部品電極近傍にて深部にまでに達する亀裂が生じ易くなる。その結果、この亀裂近傍の電子部品の電極に応力が集中してしまい、はんだ接合部が電子部品側の電極を剥離してしまうものと推測される。
この現象は、延伸性が良好なSn−3Ag−0.5Cuはんだ合金では確認されておらず、従ってBiを鉛フリーはんだ合金に添加したことによって生じた弊害であると捉えられる。即ち、鉛フリーはんだ合金の高強度化のみでは電子部品の電極剥離現象の抑制は難しいものと考えられる。
本実施形態の鉛フリーはんだ合金は、Agを1重量%以上4重量%以下と、Cuを0.5重量%以上1重量%以下と、Sbを1重量%以上5重量%以下と、NiおよびCoの少なくとも一方を合計で0.05重量%以上0.25重量%以下含み、実質的に残部がSnからなる。
但し、Agの含有量が1重量%未満の場合、Ag3Sn化合物の析出が少なく、鉛フリーはんだ合金の機械的強度および耐熱衝撃性が低下するので好ましくない。またAgの含有量が4重量%を超えると、鉛フリーはんだ合金の延伸性が阻害され、これを用いて形成されるはんだ接合部が電子部品の電極剥離現象を引き起こす虞があるので好ましくない。
またAgの含有量を2重量%以上3.8重量%以下とすると、鉛フリーはんだ合金の強度と延伸性のバランスをより良好にできる。
但し、Cuの含有量が0.5重量%未満では十分なCu食われ防止効果が得られず、1重量%を超えるとCu6Sn5化合物が接合界面近傍に集中して析出するようになり、接合信頼性が低下すると共に、鉛フリーはんだ合金の延伸性が阻害されるので好ましくない。
また特にCuの含有量が0.5重量%の場合、Cuランドに対するCu食われ防止効果を発揮することができると共に、溶融時の鉛フリーはんだ合金の粘度を良好な状態に保つことができ、リフロー時におけるボイドの発生を抑制し、形成するはんだ接合部の耐熱衝撃性を向上することができる。
さらにCuの含有量が0.9重量%から1重量%の場合、Cuランドに対するCu食われ防止効果を十分に発揮することができると共に、Cuランドから溶融した鉛フリーはんだ合金へのCuの拡散を防止することで電子部品側でのCu6Sn5化合物の粗大化が抑制され、はんだ接合部の耐熱衝撃性を向上させることができる。更には、溶融した鉛フリーはんだ合金のSn結晶粒界に微細なCu6Sn5が分散することで、Snの結晶方位の変化を抑制し、はんだ接合形状(フィレット形状)の変形を抑制することができる。
なお、鉛フリーはんだ合金にCuを含有させる場合、その量が多いと上述の通り接合界面近傍にCu6Sn5化合物が析出し易くなり、接合信頼性や鉛フリーはんだ合金の延伸性を阻害する虞がある。しかし本実施形態に係る鉛フリー合金の構成であれば、Cuの含有量を0.9重量%から1重量%としても当該Cu6Sn5化合物の粗大化を抑制すると共にその良好な延伸性を保つことができ、接合信頼性の低下を抑制することができる。
即ち、実質的に母材をSnとする鉛フリーはんだ合金に上記範囲でSbを添加することで、Snの結晶格子の一部がSbに置換され、その結晶格子に歪みが発生する。そのため、このような鉛フリーはんだ合金を用いて形成されるはんだ接合部は、Sn結晶格子の一部のSb置換により前記結晶中の転移に必要なエネルギーが増大してその金属組織が強化される。更には、Sn粒界に微細なSnSb、ε−Ag3(Sn,Sb)化合物が析出することにより、Sn粒界のすべり変形を防止することではんだ接合部に発生する亀裂の進展を抑制し得る。
但し、NiおよびCoの少なくとも一方の含有量が0.05重量%未満であると、前記界面付近のNiおよび/またはCoの量が少なくなり、金属間化合物の改質効果が不十分となるため、十分な亀裂抑制効果は得られ難い。またNiおよびCoの少なくとも一方の含有量が0.25重量%を超えると、鉛フリーはんだ合金が酸化し易くなり、その濡れ性が阻害されるので好ましくない。
NiおよびCoの少なくとも一方の好ましい含有量は0.05重量%以上0.25重量%以下であり、より好ましい含有量は0.05重量%以上0.15重量%以下である。
なお、本実施形態に係る鉛フリーはんだ合金は、NiおよびCoの少なくとも一方を0.05重量%以上含有させれば、これらが電子部品とはんだ接合部の界面に微細な(Cu,Ni)6Sn5または(Cu,Co)6Sn5(両方含有させた場合はその双方)を形成するため、前記亀裂進展抑制効果の向上を実現することができる。
また本実施形態に係る鉛フリーはんだ合金にNiおよびCoの両方を含有させる場合、Coの含有量に対するNiの含有量の質量比(Ni/Co)は、0.25重量%以上4重量%以下であることが好ましい。
更には、本実施形態に係る鉛フリーはんだ合金にNiまたはCoのいずれかを含有させる場合、それぞれの好ましい含有量は0.05重量%から0.25重量%であり、より好ましいその含有量は0.05重量%から0.15重量%である。
本発明のはんだ合金に添加するInの含有量が6重量%を超えると、鉛フリーはんだ合金の延伸性を阻害すると共に、寒暖の差が激しい過酷な環境下に長時間曝されている間にγ−InSn4が形成され、鉛フリーはんだ合金が自己変形してしまうため好ましくない。
なお、Inのより好ましい含有量は、4重量%以下であり、1重量%から2重量%が特に好ましい。
なお、Znのより好ましい含有量は、5重量%以下であり、より好ましい含有量は3重量%以下である。
本実施形態の電子回路基板および電子制御装置に用いるソルダペースト組成物は、例えば粉末状にした前記鉛フリーはんだ合金とフラックスとを混練しペースト状にすることにより作製される。
前記添加剤の配合量は、フラックス全量に対して10重量%以下であることが好ましい。またこれらの更に好ましい配合量はフラックス全量に対して5重量%以下である。
フラックスまたはこれを用いたソルダペースト組成物を用いて基板上にチップ部品を表面実装し、当該基板上にフラックス残渣を形成する。当該フラックス残渣は前記基板、前記チップ部品および前記はんだ接合部とに囲まれる空間に介在し、これらに接着するように形成される。
その後、冷熱衝撃試験装置等を用いて前記基板に−40℃/30分から125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与える。
本実施形態の電子回路基板の構成を図1を用いて説明する。本実施形態の電子回路基板100は、基板1と、絶縁層2と、電極部3と、電子部品4と、はんだ接合体10とを有する。はんだ接合体10は、はんだ接合部6とフラックス残渣7とを有し、電子部品4は、外部電極5と、端部8を有する。
基板1としては、プリント配線板、シリコンウエハ、セラミックパッケージ基板等、電子部品の搭載、実装に用いられるものであればこれらに限らず基板1として使用することができる。
電極部3は、はんだ接合部6を介して電子部品4の外部電極5と電気的に接合している。またフラックス残渣7は、絶縁層2、はんだ接合部6および電子部品4とに囲まれた空間を充填し、これらに接着するように形成される。更にこれとは別に、フラックス残渣7は絶縁層2、はんだ接合部6、電子部品4の端部8を覆うようにも形成される。
また本実施形態の電子回路基板100は、フラックス残渣7が絶縁層2、はんだ接合部6および電子部品4とをより強固に接着しており、このような構成により、上記亀裂進展および電極剥離現象の抑制効果を更に向上させることができる。
先ず、所定のパターンとなるように形成された絶縁層2および電極部3を備えた基板1上に、前記ソルダペースト組成物を上記パターンに従い印刷する。
次いで印刷後の基板1上に電子部品4を実装し、これを220℃から260℃の温度でリフローを行う。このリフローにより基板1上にはんだ接合部6およびフラックス残渣7を有するはんだ接合体10が形成されると共に、基板1と電子部品4とが電気的接合された電子回路基板100が作製される。
以下の各成分を混練し、実施例および比較例に係るフラックスを得た。
水添酸変性ロジン(製品名:KE−604、荒川化学工業(株)製) 51重量%
硬化ひまし油 6重量%
エイコサ二酸 5重量%
マロン酸 1重量%
ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩 2重量%
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(製品名:イルガノックス245、BASFジャパン(株)製) 1重量%
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル 34重量%
前記フラックス11.0重量%と、表1から表5に記載の各鉛フリーはんだ合金の粉末(粉末粒径20μmから36μm)89.0重量%とを混合し、実施例17、18、20から55、64から74および76から79、参考例1から16、19、56から63、75および80(表1から表3)、および比較例1から34(表4から表5)に係る各ソルダペースト組成物を作製した。
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジストおよび前記チップ部品を接続する電極(1.6mm×1.2mm)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、それぞれ前記チップ部品を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ部品を実装した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を2℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次に、−40℃(30分間)から125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、冷熱衝撃サイクルを1,000、1,500、2,000、2,500、3,000サイクル繰り返す
環境下に前記各ガラスエポキシ基板をそれぞれ曝した後これを取り出し、各試験基板を作製した。
そして、各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤および硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)、
製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、形成されたはんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かを走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の基準にて評価した。その結果を表6から表10に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価チップ数は20個とした。
◎:3,000サイクルまではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,501から3,000サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
△:2,001から2,500サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
×:2,000サイクル未満ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
冷熱衝撃サイクルを1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500サイクル繰り返す環境下に各ガラスエポキシ基板を置く以外ははんだ亀裂試験と同じ条件にて各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤および硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、図2に表すような、はんだ接合部が前記チップ部品の電極を剥離してしまうような現象が発生しているか否かについ
て走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下のように評価した。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価チップ数は20個とした。その結果を表6から表10に表す。
◎:3,500サイクルまでチップ部品の電極剥離現象発生せず
○:3,001から3,500サイクルの間でチップ部品の電極剥離現象発生
△:2,001から3,000サイクルの間でチップ部品の電極剥離現象発生
×:2,000サイクル未満でチップ部品の電極剥離現象発生
26mm×26mm×1.6mmtサイズの0.5mmピッチQFP部品(リード数176ピン、製品名:R5F5630ADDFC、ルネサスエレクトロニクス(株)製)と、当該QFP部品を実装できるパターンを有するソルダレジストおよび前記QFP部品を接続する電極(0.25mm×1.3mmの電極が176個)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、それぞれに前記QFP部品を搭載した。その後、冷熱衝撃サイクルを1,000、2,000、3,000サイクル繰り返す環境下に各ガラスエポキシ基板を置く以外ははんだ亀裂試験と同じ条件にて前記ガラスエポキシ基板に冷熱衝撃を与え、各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤および硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記QFP部品の中央断面が分かるような状態とし、はんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かについて走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、はんだ母材に発生した亀裂と、はんだ接合部とQFP部品のリードとの界面(の金属間化合物)に発生した亀裂に分けて以下のように評価した。その結果を表6から表10に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価QFP数は20個とし、QFP1個あたり4角の8リードを観察し、合計160リードの断面を確認した。
・はんだ母材に発生した亀裂
◎:3,000サイクルまではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
・はんだ接合部とQFP部品のリードとの界面に発生した亀裂
◎:3,000サイクルまで前記界面を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
6mm×5mm×0.8tmmサイズの1.3mmピッチSON(Small Outline Non−leaded package)部品(端子数8ピン、製品名:STL60N3LLH5、STMicroelectronics社製)と、当該SON部品を実装できるパターンを有するソルダレジストおよび前記SON部品を接続する電極(メーカー推奨設計に準拠)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用いる以外はSnめっきQFPにおけるはんだ亀裂試験と同じ条件にて各試験基板を作製し、およびはんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かについて走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察した。この観察に基づき、はんだ母材に発生した亀裂と、はんだ接合部とSON部品の電極の界面(の金属間化合物)に発生した亀裂に分けて以下のように評価した。その結果を表6から表10に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価SON数は20個とし、SON1個あたりゲート電極の1端子を観察し、合計20端子の断面を確認した。
・はんだ母材に発生した亀裂
◎:3,000サイクルまではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
はんだ接合部とSON部品の電極の界面に発生した亀裂
◎:3,000サイクルまで前記界面を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
実施例および比較例に係る各鉛フリーはんだ合金について、示差走査熱量測定装置(製品名:EXSTAR DSC6200、セイコーインスツル(株))を用いて液相線温度を測定した。なお、測定条件は、昇温速度を常温から150℃までは10℃/min、150℃から250℃までは2℃/minとし、そのサンプル量を10mgとした。その結果を表6から表10に表す
はんだ亀裂試験と同様の条件にてチップ部品を各ガラスエポキシ基板上に搭載した各試験基板を作製した。そして各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、はんだ接合部が形成されている領域に占めるボイドの総面積の割合(ボイドの面積率)を測定した。ボイドの発生状況は各試験基板中40箇所のランドにおけるボイドの面積率の平均値を求めて、以下のように評価した。その結果を表6から表10に表す。
◎:ボイドの面積率の平均値が3%以下であって、ボイド発生の抑制効果が極めて良好
○:ボイドの面積率の平均値が3%超5%以下であって、ボイド発生の抑制効果が良好
△:ボイドの面積率の平均値が5%超10%以下であって、ボイド発生の抑制効果が十分
×:ボイドの面積率の平均値が10%超15%以下であって、ボイド発生の抑制効果が不十分
銅配線の厚さが35μmのFR4基板を適宣な大きさに裁断した。そしてその銅配線面にプリフラックスを塗布した後、60秒間予備加熱して試験用基板の温度を約120℃にした。次いで、実施例および比較例に係る各鉛フリーはんだ合金を溶融させた噴流はんだ槽を準備し、各試験用基板をこの噴流はんだ槽の噴流口から2mm上部に置いて、墳流している溶融はんだ中に3秒間浸漬させた。この浸漬工程を繰り返し行い、各試験用基板の銅配線のサイズが半減するまでの浸漬回数を測定し、以下のように評価した。その結果を
表6から表10に表す。
○:4回以上の浸漬でも銅配線のサイズが半減しない。
×:3回以下の浸漬で銅配線のサイズが半減した。
また特にInを配合した鉛フリーはんだ合金にあっては、亀裂進展抑制および電極剥離現象抑制効果を阻害することなく、その液相線を低下することができる。
従って、このようなはんだ接合部を有する電子回路基板は車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。更にこのような電子回路基板は、より一層高い信頼性が要求される電子制御装置に好適に使用することができる。
2 絶縁層
3 電極部
4 電子部品
5 外部電極
6 はんだ接合部
7 フラックス残渣
8 端部
10 はんだ接合体
100 電子回路基板
Claims (13)
- Agを2質量%以上3.8質量%以下と、Cuを0.5質量%と、Sbを1質量%以上5質量%以下と、Coを0.05質量%以上0.15質量%以下含み、残部がSnからなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
- Agを2質量%以上3.8質量%以下と、Cuを0.5質量%と、Sbを1質量%以上5質量%以下と、NiおよびCoを合計で0.05質量%以上0.25質量%以下含み、残部がSnからなり、Coの含有量に対するNiの含有量の質量比(Ni/Co)が0.25以上4以下であることを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
- Agを2質量%以上3.8質量%以下と、Cuを0.5質量%と、Sbを1質量%以上5質量%以下と、Niを0.05質量%以上0.15質量%以下と、Inを0.5質量%以上6質量%以下含み、残部がSnからなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
- 更にInを0.5質量%以上6質量%以下含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉛フリーはんだ合金。
- Agを2質量%以上3.8質量%以下と、Cuを0.5質量%と、Sbを1質量%以上5質量%以下と、Niを0.05質量%以上0.15質量%以下と、Biを0.5質量%以上3質量%以下含み、残部がSnからなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
- 更にBiを0.5質量%以上3質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
- Agを2質量%以上3.8質量%以下と、Cuを0.5質量%と、Sbを1質量%以上5質量%以下と、Niを0.05質量%以上0.15質量%以下と、Inを0.5質量%以上6質量%以下と、Biを0.5質量%以上3質量%以下含み、残部がSnからなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
- Agを2質量%以上3.8質量%以下と、Cuを0.5質量%と、Sbを1質量%以上5質量%以下と、Coを0.05質量%以上0.15質量%以下と、Inを0.5質量%以上6質量%以下と、Biを0.5質量%以上3質量%以下含み、残部がSnからなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
- 更にP、Ga、およびGeの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含むことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- 更にFe、Mn、Cr、およびMoの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- 更にZnを0.5質量%以上8質量%以下含有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- 請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金を用いて形成されるはんだ接合部を有することを特徴とする電子回路基板。
- 請求項12に記載の電子回路基板を有することを特徴とする電子制御装置。
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