JP2018122322A - 鉛フリーはんだ合金、ソルダペースト、電子回路基板及び電子制御装置 - Google Patents
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Description
鉛フリーはんだ合金は、鉛含有はんだ合金と比較してはんだ付性が多少劣るものの、フラックスやはんだ付装置の改良によってこのはんだ付性の問題はカバーされている。そのため、例えば車載用電子回路基板であっても、自動車の車室内のように寒暖差はあるものの比較的穏やかな環境下に置かれるものにおいては、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金を用いて形成したはんだ接合部でも大きな問題は生じていない。
従って、今後は上述の過酷な環境下でNi/Pd/AuめっきやNi/Auめっきのなされていない電子部品を用いた場合であっても界面付近における亀裂進展抑制効果を発揮し得るはんだ合金及びソルダペーストへの要望も大きくなることが予想される。
例えばSn−3Ag−0.5Cuはんだ合金にBiを数%含有したはんだ合金を用いて形成されたはんだ接合部を寒暖差の激しい環境下に置くと、当該はんだ接合部において、電子部品の電極近傍にて深部にまでに達する亀裂が生じた。そのため当該亀裂近傍の電子部品の電極に応力が集中し、当該はんだ接合部が電子部品側の電極を剥離してしまった。このような現象は、特に3.2mm×1.6mmサイズのチップ部品を用いた場合に顕著に観察された。
(A)0.33≦Bi含有量/31≦1.93
(B)1.52≦(Bi含有量/59)+Ag含有量≦4.02
(C)0.52≦(Bi含有量/59)+Cu含有量≦2.47
(D)0.98≦(Bi含有量/31)+(Ni含有量/0.25)+(Co含有量/0.25)≦3.06
本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、31質量%以上59質量%以下のBiを含有させることができる。
Biを添加した鉛フリーはんだ合金は、BiのSnへの固溶強化機構の発現により高強度である一方、低延性を示すことが報告されている。しかしSn−Bi系合金では全組成域で低延性を示すのではなく、31質量%以上59質量%以下のBi添加量では高い延性を示すことが分かった。
またBiは鉛フリーはんだ合金の固相線温度・液相線温度を低下させるため、はんだ接合時において、当該鉛フリーはんだ合金を用いて形成するはんだ接合部が完全に凝固してから温度雰囲気が室温に低下するまでの温度幅を狭めることができる。
このように本実施形態における鉛フリーはんだ合金は、はんだ接合(特にリフロー)後のはんだ接合部における残留応力の蓄積を低減しつつ、優れた延性により蓄積した残留応力を緩和することで、はんだ接合部が電子部品の電極を剥離する現象を抑制することができる。
Biの含有量は、好ましくは32質量%以上59質量%以下であり、より好ましくは35質量%以上58質量%以下である。
Agの含有量は、好ましくは1質量%以上2.5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上2質量%以下である。
ここで一般的にSn、Ag及びCuを含有する鉛フリーはんだ合金を用いて形成されるはんだ接合部は、Sn粒子同士の界面に金属間化合物(例えばAg3Sn、Cu6Sn5等)が分散し、はんだ接合部に引っ張りの力が加えられた場合であってもSn粒子同士が滑って変形するといった現象を防止し得る構造体となり、これにより所謂機械的特性を発現し得る。即ち、上記金属間化合物がSn粒子の滑り止め的な役割を果たす。
従って本実施形態の鉛フリーはんだ合金の場合、AgとCuの含有量のバランスをAgを1質量%以上3質量%以下、Cuを0質量%超1質量%以下とし、Agの含有量をCuの含有量よりも同量以上とすることで、上記金属間化合物としてAg3Snが形成され易くなり、Cuの含有量が比較的少なくとも良好な機械的特性を発現し得る。つまり、Cuの含有量が1質量%以下であったとしても、その一部が金属間化合物になりつつもAg3Snの滑り止め効果に寄与することから、Ag3SnとCuの両方において良好な機械的特性を発揮し得ると考えられる。
なおCuの含有量の特に好ましい範囲は、0質量%超0.5質量%以下である。
Ni及びCoの少なくとも一方の好ましい含有量は、合計で0.01質量%以上0.25質量%以下であり、より好ましくは合計で0.01質量%以上0.15質量%以下である。
(A)0.33≦Bi含有量/31≦1.93
(B)1.52≦(Bi含有量/59)+Ag含有量≦4.02
(C)0.52≦(Bi含有量/59)+Cu含有量≦2.47
(D)0.98≦(Bi含有量/31)+(Ni含有量/0.25)+(Co含有量/0.25)≦3.06
(A)3.6≦Ag含有量+Sb含有量≦9.0
本実施形態のソルダペーストは、上記鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末と、(A)ベース樹脂と、(B)活性剤と、(C)チキソ剤と、(D)溶剤とを含むフラックス組成物とを含むことが好ましい。
前記ベース樹脂(A)としては、例えば(A−1)ロジン系樹脂及び(A−2)合成樹脂の少なくとも一方を用いることが好ましい。
次に前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物としては、例えばダイマージオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルダイマージオールのようなダイマー酸から誘導される化合物であって、その末端にアルコール基を有するもの等が挙げられ、例えばPRIPOL2033、PRIPLAST3197、PRIPLAST1838(以上、クローダジャパン(株)製)等を用いることができる。
前記ロジン誘導体化合物は、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合することにより得られる。この脱水縮合の方法としては一般的に用いられる方法を使用することができる。また、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合する際の好ましい重量比率は、それぞれ25:75から75:25である。
前記活性剤(B)として、(B−1)炭素数が3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して0.5質量%以上3質量%以下、(B−2)炭素数が5から13のジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下、及び(B−3)炭素数が20から22のジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下含むことが好ましい。
当該活性剤(B)の配合量は、4.5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
また当該炭素数が3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸(B−1)のより好ましい配合量は、フラックス組成物全量に対して0.5質量%から2質量%である。
また前記炭素数が5から13のジカルボン酸(B−2)のより好ましい配合量は、フラックス組成物全量に対して3質量%から12質量%である。
前記炭素数が20から22のジカルボン酸(B−3)としては、常温で液状または半固体状であるものがより好ましく用いられる。なお本明細書において、常温とは5℃から35℃の範囲をいう。また半固体状とは液状と固体状との間に該当する状態をいい、その一部が流動性を有する状態及び流動性はないが外力を与えると変形する状態を言う。このような前記炭素数が20から22のジカルボン酸(B−3)としては、特に特に8−エチルオクタデカン二酸が好ましく用いられる。
また前記炭素数が20から22のジカルボン酸(B−3)のより好ましい配合量は、フラックス組成物全量に対して3質量%から12質量%である。
ここで前記炭素数20から22のジカルボン酸(B−3)は活性力が低く、前記炭素数3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸(B−1)との組み合わせのみでは合金粉末表面の酸化膜を十分に除去できない。そのため特にBiを多く含む前記合金粉末を用いた場合、合金粉末への酸化作用が不十分となり、はんだボールやボイドの抑制効果を十分に発揮し難い。しかし前記フラックス組成物はプリヒート中から強力な活性力を発揮する炭素数が5から13のジカルボン酸(B−2)を上記範囲内で含有するため、フラックス残さの信頼性を確保しつつ、酸化性の高いBiが多く含有された前記合金粉末を用いた場合であっても十分に酸化膜を除去することができるようになる。そのため、本実施形態のソルダペーストは、前記合金粉末同士の凝集力を向上し、且つはんだ溶融時の粘性を低減させることにより、電子部品脇に発生するはんだボールやはんだ接合部に発生するボイドを低減することができる。
このような他の活性剤としては、例えば有機アミンのハロゲン化水素塩等のアミン塩(無機酸塩や有機酸塩)、有機酸、有機酸塩、有機アミン塩等が挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アントラニル酸、ピコリン酸及び3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
当該他の活性剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して0質量%超20質量%以下であることが好ましい。
前記チキソ剤(C)としては、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、飽和脂肪酸ビスアミド類、オキシ脂肪酸、ジベンジリデンソルビトール類が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記チキソ剤(C)の配合量は、フラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
前記溶剤(D)としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルジグリコール、(2−エチルヘキシル)ジグリコール、フェニルグリコール、ブチルカルビトール、オクタンジオール、αテルピネオール、βテルピネオール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ビスイソプロピル等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記溶剤(D)の配合量は、フラックス組成物全量に対して20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
前記酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、一般的にはフラックス組成物全量に対して0.5質量%以上5質量%程度以下であることが好ましい。
前記添加剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
前記合金粉末とフラックス組成物との配合比率は、合金粉末:フラックス組成物の比率で65:35から95:5であることが好ましい。より好ましいその配合比率は85:15から93:7であり、特に好ましい配合比率は87:13から92:8である。
本実施形態の電子回路基板は、前記ソルダペーストを用いて形成されるはんだ接合部とフラックス残さを有することが好ましい。当該電子回路基板は、例えば基板上の所定の位置に電極及びソルダレジスト膜を形成し、所定のパターンを有するマスクを用いて本実施形態のソルダペーストを印刷し、当該パターンに適合する電子部品を所定の位置に搭載し、これをリフローすることにより作製される。
このようにして作製された電子回路基板は、前記電極上にはんだ接合部が形成され、当該はんだ接合部は当該電極と電子部品とを電気的に接合する。そして前記基板上には、少なくともはんだ接合部に接着するようにフラックス残さが付着している。
このようなはんだ接合部を有する電子回路基板は、車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。
<フラックス組成物A>
表1に記載の各成分を混練し、フラックス組成物Aを得た。なお、特に記載のない限り、表1に配合量の単位は質量%である。
※2 日本化成(株)製 ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド
※3 BASFジャパン(株)製 ヒンダードフェノール系酸化防止剤
表2に記載の各成分を混練し、フラックス組成物Bを得た。なお、特に記載のない限り、表2に配合量の単位は質量%である。
※2 日本化成(株)製 ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド
※3 BASFジャパン(株)製 ヒンダードフェノール系酸化防止剤
前記フラックス組成物Aを11質量%と表3及び表4に記載の各鉛フリーはんだ合金の粉末(粉末粒径20μmから38μm)89質量%とを混合し、実施例1から実施例26及び比較例1から21に係る各ソルダペーストAを作製した。また前記フラックス組成物Bを11質量%と表3及び表4に記載の各鉛フリーはんだ合金の粉末(粉末粒径20μmから38μm)89質量%とを混合し、実施例1から実施例26及び比較例1から21に係る各ソルダペーストBを作製した。
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品(Ni/Snめっき)と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極(1.6mm×0.8mm)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストA及び各ソルダペーストBをそれぞれ印刷し、それぞれ前記チップ部品を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ部品を実装した。この際のリフロー条件は、使用した合金粉末の固相線温度−30℃の温度下で90秒間プリヒートを行い、その後、その液相線温度以上の溶融時間で30秒、ピーク温度を液相線温度+40〜45℃の範囲で加熱した。なお酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次に、−40℃(30分間)から125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、冷熱衝撃サイクルを3,000サイクル繰り返す環境下に前記各ガラスエポキシ基板をそれぞれ曝した後これを取り出し、各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤及び硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)、製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、形成されたはんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かを走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の基準にて評価した。各ソルダペーストBの結果を表5及び表6に、各ソルダペーストAの結果を表7及び表8にそれぞれ表す。なお、評価チップ数は10個とした。
◎:はんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生したチップ数が0個
○:はんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生したチップ数が1個以上2個以下
△:はんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生したチップ数が3個以上4個以下
×:はんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生したチップ数が5個以上
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品(Ni/Snめっき)と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極(1.6mm×0.8mm)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストA及び各ソルダペーストBを印刷し、それぞれ前記チップ部品を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ部品を実装した。この際のリフロー条件は、使用した合金粉末の固相線温度−30℃の温度下で90秒間プリヒートを行い、その後、その液相線温度以上の溶融時間で30秒、ピーク温度を液相線温度+40〜45℃の範囲で加熱した。なお酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次に、−40℃(30分間)から125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、冷熱衝撃サイクルを3,000サイクル繰り返す環境下に前記各ガラスエポキシ基板をそれぞれ曝した後これを取り出し、各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤及び硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)、製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、形成されたはんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かを走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、図1に示すような電極剥離現象が発生しているか否かについて以下のように評価した。各ソルダペーストBの結果を表5及び表6に、各ソルダペーストAの結果を表7及び表8にそれぞれ表す。なお、評価チップ数は10個とした。
○:チップ部品の電極剥離現象発生なし
×:チップ部品の電極剥離現象発生あり
6mm×5mm×0.8tmmサイズの1.3mmピッチSON(Small Outline Non−leaded package)部品(端子数8ピン、製品名:STL60N3LLH5、STMicroelectronics社製)と、当該SON部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記SON部品を接続する電極(メーカー推奨設計に準拠)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストA及び各ソルダペーストBを印刷し、それぞれに前記SON部品を搭載した。その後、冷熱衝撃サイクルを1,000、2,000、3,000サイクル繰り返す環境下に各ガラスエポキシ基板を置く以外は上記(1)はんだ亀裂試験と同じ条件にて前記ガラスエポキシ基板をリフロー及び冷熱衝撃を与え、各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤及び硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記SON部品の端子中央断面が分かるような状態とし、はんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かについて走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察した。この観察に基づき、はんだ接合部について、はんだ母材(本明細書においてはんだ母材とは、はんだ接合部のうちSON部品の電極の界面及びその付近以外の部分を指す。以下同じ。なお表5から表8においては単に「母材」と表記する。)に発生した亀裂と、はんだ接合部とSON部品の電極の界面(の金属間化合物)に発生した亀裂に分けて以下のように評価した。各ソルダペーストBの結果を表5及び表6に、各ソルダペーストAの結果を表7及び表8にそれぞれ表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価SON数は20個とし、SON1個あたりゲート電極の1端子を観察し、合計20端子の断面を確認した。
○:3,000サイクルまではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生しない
△:1,001から3,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル以下ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
○:3,000サイクルまで前記界面を完全に横断する亀裂が発生しない
△:1,001から3,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル以下で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
2.0mm×1.2mmのサイズのチップ部品(Ni/Snめっき)と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極(1.25mm×1.0mm)とを備えたガラスエポキシ基板(CuOSP基板)と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストA及び各ソルダペーストBを印刷し、それぞれ前記チップ部品を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ部品を実装した各試験基板を作製した。この際のリフロー条件は、使用した合金粉末の固相線温度−30℃の温度下で90秒間プリヒートを行い、その後、その液相線温度以上の溶融時間で30秒、ピーク温度を液相線温度+40〜45℃の範囲で加熱した。なお酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次いで各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、各試験基板においてはんだ接合部が形成されている領域に占めるボイドの面積率(ボイドの総面積の割合。以下同じ。)を測定した。そして各試験基板中20箇所のランドにおけるボイドの面積率の最大値を求め、以下のように評価した。各ソルダペーストBの結果を表5及び表6に、各ソルダペーストAの結果を表7及び表8にそれぞれ表す。
◎:ボイドの面積率の最大値が5%以下であって、ボイド発生の抑制効果が極めて良好
○:ボイドの面積率の最大値が5%を超え10%以下であって、ボイド発生の抑制効果が良好
△:ボイドの面積率の最大値が10%を超え15%以下であって、ボイド発生の抑制効果が十分
×:ボイドの面積率の最大値が15%を超え、ボイド発生の抑制効果が不十分
また活性剤として前記炭素数が3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸(B−1)、前記炭素数が5から13のジカルボン酸(B−2)及び前記炭素数が20から22のジカルボン酸(B−3)を所定量配合したフラックス組成物Bを用いた実施例に係る各ソルダペーストBを用いて形成したはんだ接合部は、寒暖の差が激しく振動が負荷されるような過酷な環境下においても、また電極にNi/Pd/AuめっきやNi/Auめっきがされているといないとを問わず、はんだ接合部の亀裂進展を抑制できると共に、はんだ接合部による電子部品の電極剥離現象の抑制、並びにはんだ接合部へのボイドの発生をより一層抑制し得ることが分かる。
Claims (10)
- Biを31質量%以上59質量%以下と、Agを1質量%以上3質量%以下含み、残部がSnからなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
- 更にCuを0質量%超1質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
- 更にNi及びCoの少なくとも一方を合計で0.01質量%以上0.25質量%以下含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉛フリーはんだ合金。
- Biを31質量%以上59質量%以下と、Agを1質量%以上3質量%以下と、Cuを0質量%超1質量%以下と、Ni及びCoの少なくとも一方を合計で0.01質量%以上0.25質量%以下含み残部がSnからなり、
BiとAgとCuとNi及びCoの少なくとも一方のそれぞれの含有量(質量%)が下記式(A)から(D)の全てを満たすことを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
(A)0.33≦Bi含有量/31≦1.93
(B)1.52≦(Bi含有量/59)+Ag含有量≦4.02
(C)0.52≦(Bi含有量/59)+Cu含有量≦2.47
(D)0.98≦(Bi含有量/31)+(Ni含有量/0.25)+(Co含有量/0.25)≦3.06 - 更にFe、Mn、Cr及びMoの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- 更にP、Ga及びGeの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末と、
(A)ベース樹脂と、(B)活性剤と、(C)チキソ剤と、(D)溶剤とを含むフラックス組成物であって、前記活性剤(B)の配合量はフラックス組成物全量に対して4.5質量%以上35質量%以下であり、前記活性剤(B)として、(B−1)炭素数が3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して0.5質量%以上3質量%以下、(B−2)炭素数が5から13のジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下、及び(B−3)炭素数が20から22のジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下含むフラックス組成物とを含むことを特徴とするソルダペースト。 - 前記炭素数が3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸(B−1)はマロン酸及びコハク酸の少なくとも一方であり、
前記炭素数が5から13のジカルボン酸(B−2)はグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、2−メチルアゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、2,4−ジメチル−4−メトキシカルボニルウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸及び2,4,6−トリメチル−4,6−ジメトキシカルボニルトリデカン二酸から選ばれる少なくとも1種であり、
前記炭素数が20から22のジカルボン酸(B−3)はエイコサ二酸、8−エチルオクタデカン二酸、8,13−ジメチル−8,12−エイコサジエン二酸及び11−ビニル−8−オクタデセン二酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載のソルダペースト。 - 請求項7または請求項8に記載のソルダペーストを用いて形成されるはんだ接合部を有することを特徴とする電子回路基板。
- 請求項9に記載の電子回路基板を有することを特徴とする電子制御装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017015243A JP2018122322A (ja) | 2017-01-31 | 2017-01-31 | 鉛フリーはんだ合金、ソルダペースト、電子回路基板及び電子制御装置 |
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