JP7133397B2 - 鉛フリーはんだ合金、電子回路基板及び電子制御装置 - Google Patents
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Description
この鉛フリーはんだ合金としては、例えばSn-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Bi系、Sn-Zn系はんだ合金等がよく知られている。その中でもテレビ、携帯電話等に使用される民生用電子機器や自動車に搭載される車載用電子機器には、Sn-3Ag-0.5Cuはんだ合金が多く使用されている。
鉛フリーはんだ合金は、鉛含有はんだ合金と比較してはんだ付性が多少劣る。しかしフラックスやはんだ付装置の改良によってこのはんだ付性の問題はカバーされている。そのため、例えば車載用電子回路基板であっても、自動車の車室内のように寒暖差はあるものの比較的穏やかな環境下に置かれるものにおいては、Sn-3Ag-0.5Cuはんだ合金を用いて形成したはんだ接合部でも大きな問題は生じていない。
更に、時間の経過と共にはんだ接合部に繰り返し与えられる応力は、発生した亀裂の先端付近に集中するため、当該亀裂ははんだ接合部の深部まで横断的に進展し易くなる。このように著しく進展した亀裂は、電子部品と基板上に形成された電子回路との電気的接続の切断を引き起こしてしまう。特に激しい寒暖差に加え電子回路基板に振動が負荷される環境下にあっては、上記亀裂及びその進展は更に発生し易い。
そのため、上述の過酷な環境下に置かれる車載用電子回路基板及び電子制御装置が増える中で、十分な亀裂進展抑制効果を発揮し得るSn-Ag-Cu系はんだ合金への要望は、今後ますます大きくなることが予想される。
そのためこのような電子部品の場合、基板にスルーホールを設け、当該スルーホールに電子部品の端子を挿入し、フローまたはリフロー工法によりはんだ付けを行う実装方法(スルーホール実装法)が用いられる。前記スルーホールに挿入された電子部品の端子とランドとは、基板上に形成されたはんだ接合部(フィレット)を介して電気的接続されるが、はんだ合金の組成によってはランドと前記フィレットとの間に間隙が生じる現象(リフトオフ現象)が生じる虞がある。そしてこの間隙の発生は、電子部品と基板上に形成された電子回路との電気的接続の切断の原因となり得る。
このように、ランドとの界面付近のフィレットが凝固し難い状態で、フィレットの表面付近及びスルーホール内部からの凝固収縮と基板の熱収縮を起因とした収縮力(基板に垂直に働く)が生じると、フィレット表面がランドから剥離し易くなり、両者の間に間隙が発生する虞がある。
このような現象は以下の理由から生じると推察される。
即ち、Snめっきされるチップ抵抗器の電極及びチップコンデンサの電極は、内側からAgペースト/Niめっき/Snめっきという構成からなる。そして図1及び図2に示す通り、チップコンデンサの電極のAgペーストの厚み(図1のt1参照)は、チップ抵抗器の電極のAgペーストの厚み(図2のt2参照)よりも大きい(厚い)。なお、図1及び図2の電子顕微鏡写真は、同一尺度にて撮影したものである。
ここで、上述の通り、Biが添加されているはんだ合金を用いて形成されるはんだ接合部の場合、その機械的強度は向上する一方、延伸性が低下するため、寒暖差の激しい環境下においては、はんだ接合部のうち電極側面に接する部分に(寒暖差によって生じる)応力が集中し易い。
チップコンデンサの場合、その電極のAgペーストの厚みが大きい(厚い)ため、Agペーストが上記応力を吸収し得る。
しかしチップ抵抗器の場合、その電極のAgペーストの厚みが小さい(薄い)ため、Agペーストでは上記応力を吸収しきれず、そのため、電極のうちはんだ接合部との界面付近において、亀裂が発生し易くなる。
・寒暖の差が激しく、振動が負荷されるような過酷な環境下においてもはんだ接合部のみならずチップ抵抗器の電極に発生する亀裂を抑制できる。
・スルーホール実装時におけるリフトオフ現象の発生を抑制できる。
・はんだ接合時におけるボイドの発生を抑制できる。
・寒暖の差が激しく、振動が負荷されるような過酷な環境下においてもはんだ接合部のみならずチップ抵抗器の電極に発生する亀裂をも抑制できる。
・スルーホール実装時におけるリフトオフ現象の発生を抑制できる。
・はんだ接合時におけるボイドの発生を抑制できる。
本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、1質量%以上4質量%以下のAgを含有させることができる。この範囲内でAgを添加することにより、鉛フリーはんだ合金のSn粒界中にAg3Sn化合物を析出させ、機械的強度を付与することができると共に、鉛フリーはんだ合金の延伸性とのバランスを図ることができる。
但し、Agの含有量が1質量%未満の場合、Ag3Sn化合物の析出が少なく、鉛フリーはんだ合金の機械的強度及び耐熱衝撃性が低下するので好ましくない。またAgの含有量が4質量%を超えると、鉛フリーはんだ合金の延伸性が阻害され、これを用いて形成されるはんだ接合部の耐熱疲労特性が低下する虞があるので好ましくない。
またAgの含有量を3.1質量%以上3.8質量%以下とすると、鉛フリーはんだ合金の強度と延伸性のバランスをより良好にできると共に、形成されるはんだ接合部のボイド発生抑制効果を向上することができる。更に好ましいAgの含有量は3.5質量%以上3.8質量%以下である。
またCuの含有量を0.5質量%以上0.7質量%以下とすると、溶融時の鉛フリーはんだ合金の粘度を良好な状態に保つことができ、リフロー時におけるボイドの発生をより抑制することができ、形成されるはんだ接合部の耐熱衝撃性を向上することができる。更にはこの場合、溶融した鉛フリーはんだ合金のSn結晶粒界に微細なCu6Sn5が分散することで、Snの結晶方位の変化を抑制し、はんだ接合形状(フィレット形状)の変形を抑制することができる。
なおCuの含有量が1質量%を超えると、はんだ接合部と電子部品及び電子回路基板との界面近傍にCu6Sn5化合物が析出し易くなり、接合信頼性やはんだ接合部の延伸性を阻害する虞があるため好ましくない。
従って本実施形態の鉛フリーはんだ合金の場合、AgとCuの含有量のバランスをAgを1質量%以上4質量%以下、Cuを0質量%超1質量%以下とし、Agの含有量をCuの含有量よりも同量以上とすることで、上記金属間化合物としてAg3Snが形成され易くなり、Cuの含有量が比較的少なくとも良好な機械的特性を発現し得る。つまり、Cuの含有量が1質量%以下であったとしても、その一部が金属間化合物になりつつもAg3Snの滑り止め効果に寄与することから、Ag3SnとCuの両方において良好な機械的特性を発揮し得ると考えられる。
実質的に母材(本明細書においては鉛フリーはんだ合金の主要な構成要素を指す。以下同じ。)をSnとする鉛フリーはんだ合金に上記範囲でSbを添加することで、Snの結晶格子の一部がSbに置換され、その結晶格子に歪みが発生する。そのため、このような鉛フリーはんだ合金を用いて形成されるはんだ接合部は、Sn結晶格子の一部のSb置換により前記結晶中の転移に必要なエネルギーが増大してその金属組織が強化される。更にこの場合、Sn粒界に微細なSnSb、ε-Ag3(Sn,Sb)化合物が析出することにより、Sn粒界のすべり変形を防止することではんだ接合部に発生する亀裂の進展を抑制し得る。
またSbの含有量が5質量%を超えると、鉛フリーはんだ合金の溶融温度が上昇してしまい、高温下でSbが再固溶しなくなる。そのため、このような鉛フリーはんだ合金を用いて形成したはんだ接合部を寒暖の差が激しい過酷な環境下に長時間曝した場合、SnSb、ε-Ag3(Sn,Sb)化合物による析出強化のみが行われる。そのためこの場合、時間の経過と共にこれらの金属間化合物が粗大化し、Sn粒界のすべり変形の抑制効果が失効してしまう。またこの場合、鉛フリーはんだ合金の溶融温度の上昇により電子部品の耐熱温度も問題となるため、好ましくない。
Sbの含有量に対するAgの含有量の質量比(Ag/Sb)は0.88以上1.27以下であることが好ましく、1以上1.27以下であることがより好ましい。
一方、本実施形態の鉛フリーはんだ合金は、Niの含有量を0.01質量%以上0.05質量%以下とすることにより、リフロー時のピーク温度を低い温度としなければならない場合であっても、はんだ接合部のフィレットのボイド抑制効果を発揮しつつ耐熱疲労特性を発揮することができ、両者のバランスを良好に保つことができる。
また、本実施形態の鉛フリーはんだ合金へのCoの添加により、Coがはんだ接合時に前記界面領域に移動して微細な(Cu,Co)6Sn5を形成するため、前記界面領域における合金層の成長を抑制することができ、前記界面領域の亀裂進展抑制効果を更に向上させることができる。
一方、本実施形態の鉛フリーはんだ合金は、Coの含有量を0.005質量%以上0.015質量%以下とすることにより、リフロー時のピーク温度を低い温度としなければならない場合であっても、はんだ接合部のフィレットのボイド抑制効果を発揮しつつ耐熱疲労特性を発揮することができ、両者のバランスを良好に保つことができる。
このようなソルダペースト組成物としては、例えば粉末状にした本実施形態の鉛フリーはんだ合金とフラックスとを混練しペースト状にすることにより作製される。
これらの中でもロジン系樹脂、その中でも特に酸変性されたロジンに水素添加をした水添酸変性ロジンが好ましく用いられる。また水添酸変性ロジンとアクリル樹脂の併用も好ましい。
前記溶剤の配合量は、フラックス全量に対して20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
前記添加剤の配合量は、フラックス全量に対して10質量%以下であることが好ましい。またこれらの更に好ましい配合量はフラックス全量に対して5質量%以下である。
本実施形態のソルダペースト組成物を用いて形成されるはんだ接合部としては、例えば以下の方法により形成される。
・表面実装法
基板上の予め定められた所定の位置に所定のパターンの電極及び絶縁層を形成し、このパターンに合わせて前記ソルダペースト組成物を印刷する。そして当該基板上の所定の位置に電子部品を搭載し、これを例えば230℃から260℃の温度でリフローすることにより、本実施形態のはんだ接合部が形成される。このように形成されたはんだ接合部は、前記電子部品に設けられた電極(端子)と前記基板上に形成された電極とを電気接合させる。
なお、前記基板としては、プリント配線板、シリコンウエハ、セラミックパッケージ基板等、電子部品の搭載、実装に用いられるものであればこれらに限らず使用できる。
基板上の予め定められた所定の位置に所定のパターンの電極及び絶縁層を形成すると共に、このパターンに合わせて前記基板にスルーホールを形成し、スルーホールの内側にCuめっきを施す。次いで、スルーホール上部を覆うように前記基板上に前記ソルダペースト組成物を印刷し、電子部品に設けられた端子を当該スルーホール内に挿入するよう搭載する。そしてこれを例えば230℃から260℃の温度でリフローすることにより、本実施形態のはんだ接合部(フィレット)が形成される。このように形成されたはんだ接合部は、前記電子部品の端子と前記基板上に形成された電極とを電気接合させる。
なお、前記基板としては、表面実装法同様、プリント配線板セラミックパッケージ基板等、電子部品の搭載、実装に用いられるものであればこれらに限らず使用できる。
前記はんだ接合部は、上述の鉛フリーはんだ合金により形成されていることから、寒暖の差が激しく、振動が負荷されるような過酷な環境下においても、チップ抵抗器の電極に発生する亀裂を抑制できる。またこのようなはんだ接合部は、はんだ接合時におけるボイドの発生が抑制されていることから、寒暖の差の激しい環境下においても、はんだ接合部自体の亀裂進展抑制効果も発揮することができる。
更には、前記はんだ接合部はリフトオフ現象の発生を抑制し得る合金組成であるため、スルーホール実装法によりはんだ接合を行った場合においても、電極の亀裂抑制及びはんだ接合部の亀裂進展抑制効果並びにリフトオフ現象の発生抑制効果のいずれもを発揮することができる。
また、使用する電子部品や基板の種類によっては、はんだ接合時におけるリフロー温度のピークを低く設定する場合があるが、このような場合であっても本実施形態のはんだ接合部は、特にフィレットに発生するボイドを抑制することができる。
そしてこのようなはんだ接合部を有する電子回路基板は、寒暖の差の激しい環境下に置かれ、高い信頼性が要求される車載用電子回路基板に特に好適に使用することができる。
また本実施形態の電子回路基板を組み込むことにより、本実施形態の電子制御装置が作製される。
以下の各成分を混練し、実施例及び比較例に係るフラックスを得た。
水添酸変性ロジン(製品名:KE-604、荒川化学工業(株)製) 49質量%
コハク酸 0.3質量%
スベリン酸 2質量%
マロン酸 0.5質量%
ドデカン二酸 2質量%
ジブロモブテンジオール 2質量%
脂肪酸アマイド(スリパックスH、日本化成(株)製) 6質量%
ヘキシルジグリコール 35.2質量%
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(製品名:イルガノックス245、BASFジャパン(株)製) 3質量%
前記フラックス11質量%と、表1及び表2に記載の各鉛フリーはんだ合金の粉末(粉末粒径20μmから38μm)89質量%とを混合し、参考例1から参考例3、実施例4から実施例23及び比較例1から比較例18に係る各ソルダペースト組成物を作製した。
以下の用具を用意した。
・2.0mm×1.2mmサイズのチップ抵抗器(Ni/Snめっき)
・上記当該サイズのチップ抵抗器を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ抵抗器を接続する電極(1.25mm×1.0mm)とを備えたガラスエポキシ基板(厚み:1.6mm)
・上記パターンを有する厚さ150μmのメタルマスク
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、それぞれ前記チップ抵抗器を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP-538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ抵抗器とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ抵抗器を実装した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次に、-40℃(30分間)から150℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES-76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、冷熱衝撃サイクルを1,000サイクル、2,000サイクル及び3,000サイクル繰り返す環境下に前記各ガラスエポキシ基板をそれぞれ曝した後これを取り出し、各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤及び硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol-25、丸本ストルアス(株)、製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ抵抗器の中央断面が分かるような状態とし、各チップ抵抗器の電極に亀裂が発生したか否かを走査電子顕微鏡(製品名:TM-1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の基準にて評価した。その結果を表3及び表4に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価チップ抵抗器数は10個とした。
〇:3,000サイクルまでチップ抵抗器の電極に亀裂が発生しない
△:2,000から3,000サイクルの間でチップ抵抗器の電極に亀裂が発生
×:2,000サイクル未満でチップ抵抗器の電極に亀裂が発生
以下の用具を用意した。
・2.0mm×1.2mmサイズのチップコンデンサ(Ni/Snめっき)
・上記当該サイズのチップコンデンサを実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップコンデンサを接続する電極(1.25mm×1.0mm)とを備えたガラスエポキシ基板(厚み:1.6mm)
・上記パターンを有する厚さ150μmのメタルマスク
上記(1)電極亀裂試験と同じ条件にて各試験基板を作成し、以下の基準にて評価した。その結果を表3及び表4に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価チップコンデンサ数は10個とした。
〇:3,000サイクルまでチップコンデンサの電極に亀裂が発生しない
△:2,000から3,000サイクルの間でチップコンデンサの電極に亀裂が発生
×:2,000サイクル未満でチップコンデンサの電極に亀裂が発生
以下の用具を用意した。
・3.2×1.6mmのサイズのチップ抵抗器(Ni/Snめっき)
・上記サイズのチップ抵抗器を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ抵抗器を接続する電極(1.6mm×1.2mm)とを備えたガラスエポキシ基板
・上記パターンを有する厚さ150μmのメタルマスク
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、前記ガラスエポキシ基板1枚につき前記チップ抵抗器を20個搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP-538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ抵抗器とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ抵抗器を実装した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を235℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次いで各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX-160E、(株)島津製作所製)で観察し、各試験基板の20個のチップ抵抗器の電極下の領域(以下、電極下領域という。図5の破線で囲った領域(a))に発生したボイドの総面積がランド面積に占める割合(電極下領域のボイド面積率:電極下領域の総ボイド面積/ランド面積×100)と、フィレットが形成されている領域(図5の破線で囲った領域(b)以下、フィレット領域という。)に発生したボイドの総面積がランド面積に占める割合(フィレット領域のボイド面積率:フィレット領域の総ボイド面積/ランド面積×100)をそれぞれ測定及び算出して、ついて以下のように評価した。その結果を表3及び表4に表す。
<電極下領域のボイド面積率>
〇:ボイド面積率が10%以下であって、ボイド発生の抑制効果が良好
△:ボイド面積率が15%以下であって、ボイド発生の抑制効果が十分
×:ボイド面積率が20%以上であって、ボイド発生の抑制効果が不十分
<フィレット領域のボイド面積率>
〇:ボイド面積率が10%以下であって、ボイド発生の抑制効果が良好
△:ボイド面積率が15%以下であって、ボイド発生の抑制効果が十分
×:ボイド面積率が20%以上であって、ボイド発生の抑制効果が不十分
以下の用具を用意した。
・ガラスエポキシ基板(Cu-OSP処理)(基材名:MCL-E-67、日立化成(株)製、サイズ:50mm×50mm、厚み:1.6mm)
・コネクタ部品(製品名:S15B-EH(LF)(SN)、日本圧着端子製造(株)製)
・5.0mmピッチ間隔で、直径3mmの開口パターンを有する厚さ200μmのメタルマスク
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、前記各スルーホールにコネクタ部品の端子を挿入した。次いで、リフロー炉(製品名:TNP-538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記コネクタ部品とを電気的に接合するはんだ接合部(フィレット)を形成し、前記コネクタ部品を実装した各試験基板を作製した。なおリフロー条件は上記(1)電極亀裂試験と同じ条件にて行った。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤及び硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol-25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記コネクタ部品の端子の中央断面が分かるような状態とし、走査電子顕微鏡(製品名:TM-1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の基準にて評価した。その結果を表3及び表4に表す。なお、評価端子数は8個とした。
○:リフトオフ現象発生なし
×:リフトオフ現象発生
以下の用具を用意した。
・2.0mm×1.2mmサイズのチップ抵抗器(Ni/Snめっき)
・上記当該サイズのチップ抵抗器を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ抵抗器を接続する電極(1.25mm×1.0mm)とを備えたガラスエポキシ基板(厚み:1.6mm)
・上記パターンを有する厚さ150μmのメタルマスク
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、それぞれ前記チップ抵抗器を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP-538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ抵抗器とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ抵抗器を実装した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次に、-40℃(30分間)から125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES-76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、冷熱衝撃サイクルを1,000サイクル、2,000サイクル及び3,000サイクル繰り返す環境下に前記各ガラスエポキシ基板をそれぞれ曝した後これを取り出し、各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤および硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol-25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ抵抗器の中央断面が分かるような状態とし、形成されたはんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かを走査電子顕微鏡(製品名:TM-1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の基準にて評価した。その結果を表3及び表4に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価チップ数は10個とした。
◎:3,000サイクルまではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル以下ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
特に、NiとCoを併用している実施例のうち、Niの含有量に対するSbの含有量の質量比(Sb/Ni)が75以上175以下である実施例4、5、6、8から23、特にAgの含有量が3.1質量%以上3.8質量%以下、Sbの含有量が3質量%以上3.5質量%以下、Cuの含有量が0.5質量%以上0.7質量%以下である実施例4、5、6、9、10、13及び15から23は、電極下に発生するボイドの抑制効果とはんだ亀裂進展抑制効果をより発揮していることが分かる。
またNiとCoを併用している実施例のうち、Niの含有量に対するCoの含有量の質量比(Co/Ni)が0.125以上0.5以下である実施例5から23、特にAgの含有量が3.1質量%以上3.8質量%以下、Snの含有量が3質量%以上3.5質量%以下、Cuの含有量の含有量が0.5質量%以上0.7質量%以下である実施例5、6、9、10及び13はフィレットに発生するボイドの抑制効果とはんだ亀裂進展抑制効果をより発揮していることが分かる。
また、NiとCoを併用している実施例のうち、Niの含有量に対するCoの含有量の質量比(Co/Ni)が0.125以上0.5以下であって、更にAgとSbとCuの含有量の質量比(Ag/Sb/Cu)が1.42以上1.56以下である実施例5及び10は、良好なはんだ亀裂進展抑制効果を発揮しつつ、電極下及びフィレットに発生するボイドの抑制効果をより発揮し得ることが分かる。
また実施例に係る鉛フリーはんだ合金は、スルーホール実装法によるはんだ接合においてもリフトオフ現象発生抑制効果を奏し得ることが分かる。このような鉛フリーはんだ合金は、表面実装法により実装される電子部品と、スルーホール実装法により実装される電子部品とが混載される電子回路基板にも好適に用いることができる。
そしてこのようなはんだ接合部を有する電子回路基板は、車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。更にこのような電子回路基板は、より一層高い信頼性が要求される電子制御装置に好適に使用することができる。
Claims (11)
- Agを1質量%以上4質量%以下と、Cuを0質量%超1質量%以下と、Sbを3質量%以上5質量%以下と、Niを0.01質量%以上0.05質量%以下と、Coを0.005質量%以上0.015質量%以下含み、残部がSnからなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
- Niの含有量に対するSbの含有量の質量比(Sb/Ni)は75以上175以下であることを特徴とする請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
- Niの含有量に対するCoの含有量の質量比(Co/Ni)は0.125以上0.5以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉛フリーはんだ合金。
- Agの含有量は3.1質量%以上3.8質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- Sbの含有量は3質量%以上3.5質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- Cuの含有量は0質量%超0.7質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- AgとSbとCuの含有量の質量比(Ag/Sb/Cu)は1.42以上1.56以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- 更にP、Ga及びGeの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- 更にFe、Cr及びMoの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含むことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金。
- 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の鉛フリーはんだ合金を用いて形成されるはんだ接合部を有することを特徴とする電子回路基板。
- 請求項10に記載の電子回路基板を有することを特徴とする電子制御装置。
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