JP6200368B2 - 荷電粒子照射システムおよび荷電粒子ビーム照射システムの制御方法 - Google Patents

荷電粒子照射システムおよび荷電粒子ビーム照射システムの制御方法 Download PDF

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Description

本発明は粒子線治療システムにおける荷電粒子照射システムおよびその制御方法に係り、特に、陽子や炭素イオン等の荷電粒子ビーム(イオンビーム)をがん患部に照射して治療するための粒子線治療システムに好適な荷電粒子照射システムおよびその制御方法に関する。
近年、がん罹患率が増加している。それに伴い、様々ながんの治療方法が進歩しており、粒子線治療もその一つである。粒子線治療は陽子や炭素イオン等の荷電粒子ビームを加速し、がんの病巣に照射してがん細胞のDNAを破壊する放射線治療の1つである。低侵襲で体に負担が少なく、治療後の生活の質を高く維持できることから、近年注目されている。
粒子線治療システムは、荷電粒子ビーム発生装置、高エネルギービーム輸送系および照射装置とそれらを制御する制御装置とで構成されている。
この粒子線治療システムでは、照射装置で患部形状に合わせて荷電粒子ビームを照射する際に、ビームを電磁石で走査して患部に照射するスキャニング照射法が注目されている。
スキャニング照射法では、患部となる照射対象を体表からの深さ毎にレイヤーと呼ばれる照射領域に分割し、このレイヤーの平面上をスポットと呼ぶ細かな線量管理領域に分割する。その上で、ビームの照射は、照射平面上のスポット毎に線量を管理しながら荷電粒子ビームを走査し、照射平面の変更は照射する荷電粒子ビームのエネルギーの変更により実現する。
具体的には、走査電磁石の電流値を設定し、目標スポットへ到達すると、設定された線量の照射を行い、照射線量が設定値に達すると次のスポットへ移動する。照射位置の移動が完了すると再び荷電粒子ビームを出射し、1つのレイヤー内の照射が終わるまで繰り返す。1つのレイヤーへの照射が完了すると、次のレイヤーのエネルギーに変更して、同様の照射を繰り返す。このように照射スポット間の移動中に照射荷電粒子ビームをOFFする方法をスポットスキャニング法と称する。
スポットスキャニング法では、患部形状に合わせた荷電粒子ビームの照射が可能であり、従来の散乱体照射法のようにボーラスやコリメータ等の患部形状に合わせた患者固有具が不要となる。よって、荷電粒子ビーム発生装置から照射装置に供給される荷電粒子ビームを効率よく患部に照射することが可能である。
粒子線治療システムでの荷電粒子ビーム発生装置として、シンクロトロンが広く利用されている。このシンクロトロンから照射装置へのビーム出射法として、高周波ビーム出射法が知られている。
高周波ビーム出射法では、出射用高周波電圧の印加により周回荷電粒子ビームのベータトロン振動振幅を増大させて、安定限界条件を超えた振幅の大きい粒子から出射する方法である。
この出射法は、シンクロトロンを構成する電磁石の設定値を出射中に一定に設定できるため、出射荷電粒子ビームの軌道安定度が高く、照射荷電粒子ビームの高精度な照射位置制御を実現することができる。また、各スポットの照射終了時に出射用高周波電圧を停止(OFF)することで、容易に荷電粒子ビームを停止することができる(例えば、非特許文献1参照)。
ニュークリア インスツルメンツ アンド メソッド イン フィジックス リサーチ A 489巻(2002年)の第59〜67頁(Nuclear Instruments and Method in Physics Research A 489 (2002) P59−67)
しかしながら、出射用高周波電圧を停止(OFF)してから出射荷電粒子ビームが実際に遮断されるまでには、周回荷電粒子ビームのシンクロトロン振動周期に応じた時間が掛かる。そのため、荷電粒子ビーム停止時間を短縮する方法が要求される。
荷電粒子ビーム停止時間はシンクロトロン振動で規定されていることから、荷電粒子ビーム停止時間を短縮するためにはシンクロトロン振動を高める必要がある。このシンクロトロン振動を高めるためには加速用高周波電圧を高める必要がある。しかし、ビーム出射の際に加速用高周波電圧を常に高めていては出射時の荷電粒子ビームの運動量分散が大きいものから出射されるため、荷電粒子ビームの飛程の変動が大きくなり、荷電粒子ビームの照射量が目標値に対してずれが生じることが懸念される、との問題がある。
本発明は、荷電粒子ビーム出射停止時の停止時間を短縮するとともに、荷電粒子ビームの運動量分散を抑制することが可能な荷電粒子照射システムおよび荷電粒子ビーム照射システムの制御方法を提供する。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、荷電粒子ビームを加速して出射するシンクロトロンと、このシンクロトロンから出射された前記荷電粒子ビームを照射する照射装置と、前記荷電粒子ビームを前記シンクロトロンから前記照射装置まで導くビーム輸送系と、前記シンクロトロン、前記ビーム輸送系および前記照射装置を制御する制御装置とを備えた荷電粒子ビーム照射システムであって、前記シンクロトロンは、高周波加速電圧で前記荷電粒子ビームを所定のエネルギーまで加速する加速空胴を有し、前記制御装置は、前記加速空胴に印加する高周波電圧を制御する加速用高周波制御部であって、前記荷電粒子ビームの照射線量が照射中のスポットに対して設定された規定線量に到達すると前記加速空胴に印加する高周波電圧の振幅値を増加させ、この増加させた高周波電圧の振幅値を前記規定線量に到達後も維持し、前記荷電粒子ビームの次のスポットの照射開始前の所定のタイミングから減少させる制御を行う加速用高周波制御部を有することを特徴とする。
本発明によれば、荷電粒子ビーム出射停止時の停止時間を短縮するとともに、荷電粒子ビームの運動量分散を抑制することができる。
粒子線治療システムの構成の一例を示す図である。 本発明の荷電粒子照射システムの実施形態における出射荷電粒子ビームの電流波形の一例を示す図である。 本発明の荷電粒子照射システムにおける加速用高周波電圧のタイミング制御を実施する加速用制御装置とその周辺の機器の構成の一例を示す図である。 本発明の荷電粒子照射システムの実施形態における加速用高周波電圧の振幅値増加および減少の開始タイミングの決定方法の一例を示す図である。 従来法による出射荷電粒子ビームの電流波形の一例を示す図である。
本発明の荷電粒子照射システムおよび荷電粒子ビーム照射システムの制御方法の実施形態を、図1乃至図5を用いて説明する。
図1は粒子線治療システムの構成の一例を示す図、図2は本発明の荷電粒子照射システムの実施形態における出射荷電粒子ビームの電流波形の一例を示す図、図3は本発明の荷電粒子照射システムにおける加速用高周波電圧のタイミング制御を実施する加速用制御装置とその周辺の機器の構成の一例を示す図、図4は本発明の荷電粒子照射システムの実施形態における加速用高周波電圧の振幅値増加および減少の開始タイミングの決定方法の一例を示す図、図5は従来法による出射荷電粒子ビームの電流波形の一例を示す図である。
本実施形態の粒子線治療システム1は、図1に示すように、荷電粒子ビーム発生装置11、高エネルギービーム輸送系14、照射装置30および制御システムを備えている。
荷電粒子ビーム発生装置11は、荷電粒子源(図示せず)、入射器12およびシンクロトロン13を備えている。荷電粒子源は入射器12に接続され、入射器12はシンクロトロン13に接続される。入射器12は、荷電粒子源で発生した荷電粒子ビームをシンクロトロン13に入射可能なエネルギーまで加速する。入射器12で加速された入射荷電粒子ビーム10aは、シンクロトロン13に入射される。
シンクロトロン13は、周回軌道に沿って周回する荷電粒子ビーム10bに高周波電圧を印加して目標のエネルギーまで加速する高周波加速装置(加速空胴)15、周回している荷電粒子ビームのベータトロン振動振幅を増大させる出射用高周波電極19、荷電粒子ビームを周回軌道から取り出す出射用デフレクター19bおよび偏向電磁石16を備えている。
高エネルギービーム輸送系14は、荷電粒子ビーム発生装置11と治療室内に配置される照射装置30とを接続しており、荷電粒子ビーム発生装置11から出射された荷電粒子ビーム10cを照射装置30まで輸送する。
照射装置30は、ビーム輸送系14によって輸送された荷電粒子ビームを水平および垂直方向に偏向させて照射対象の断面形状に合わせて2次元的に走査する走査電磁石32、この走査電磁石32で走査された荷電粒子ビーム10dの位置、サイズ(形状)、線量を監視する線量モニタ31等で構成される。
粒子線治療システム1の制御システムは、荷電粒子ビーム発生装置11および高エネルギービーム輸送系14を制御する加速器制御装置40、粒子線治療システム1全体を統括して制御する統括制御装置41、患者への荷電粒子ビーム照射条件を計画する治療計画装置43、この治療計画装置43で計画した情報や荷電粒子ビーム発生装置11および高エネルギービーム輸送系14の制御情報等を記憶する記憶装置42、荷電粒子ビーム発生装置11を構成する機器の同期制御を実現するタイミング信号51を生成・出力するタイミングシステム50、加速用制御装置18、出射用制御装置21、シンクロトロン13からビームを出射するためのビーム出射制御指令332を出力する照射制御装置33、線量モニタ31での線量値をカウントする積算線量カウンタ34、積算線量カウンタ34でのカウント値と目標値とを比較する比較器35、患者の安全を担保するために統括制御装置41とは独立のインターロックシステム(図示せず)を備えている。出射用制御装置21は、荷電粒子ビーム発生装置11から高エネルギービーム輸送系14への荷電粒子ビームを出射する際に利用する高周波電圧を制御する。加速用制御装置18は、シンクロトロン13内を周回する荷電粒子ビームを加速するための高周波電圧を制御する。
上述したシンクロトロン13では、加速用高周波信号181を加速用高周波増幅器17で増幅して生成した高周波電圧を加速空胴15に印加する。これにより、シンクロトロン13に入射した荷電粒子ビーム10bは、加速空胴15を通過する際にエネルギーが付与されることで所望のエネルギーまで加速される。この際、シンクロトロン13内を周回する荷電粒子ビーム10bの周回軌道が一定となるように、シンクロトロン内荷電粒子ビーム10bの周回エネルギーの増加に合わせて偏向電磁石16、四極電磁石(図示せず)等の磁場強度および加速空胴15に印加する高周波電圧の周波数を高める。
所望のエネルギーまで加速された荷電粒子ビーム10bは、出射準備制御により、四極電磁石および六極電磁石(図示せず)の励磁量によって周回荷電粒子ビーム10bが出射可能な条件(周回荷電粒子ビームの安定限界条件)を形成する。そして、出射準備制御が終了したことを確認した後に、出射用制御装置21から出力された出射用高周波信号211を出射用高周波増幅器20で増幅して出射用高周波電圧を生成する。その後、生成した出射用高周波電圧を出射用高周波電極19に印加し、シンクロトロン13内を周回する荷電粒子ビーム10bのベータトロン振動振幅を増大させる。このベータトロン振動振幅の増大により、安定限界条件を超えた周回荷電粒子ビーム10bはシンクロトロン13から高エネルギー荷電粒子ビーム輸送系14に出射される。シンクロトロン13からの荷電粒子ビーム出射制御は、出射用制御装置21によって出射用高周波電極19に印加する出射用高周波信号211のON/OFF制御により実現可能である。この際、ビーム出射時に加速空胴15に印加する加速用高周波電圧は印加した状態を維持する。すなわち、出射用高周波信号がOFFの場合でも、加速用高周波電圧は印加を停止しない。
シンクロトロン13から出射された荷電粒子ビーム10cは、高エネルギービーム輸送系14により照射装置30に輸送される。照射装置30では、患者に照射する荷電粒子ビーム10dの照射線量を計測する線量モニタ31にて照射する荷電粒子ビーム10dの線量強度を逐次確認し、走査電磁石32で患部形状に合わせて荷電粒子ビーム10dを走査する。また、患部深さ方向の荷電粒子ビーム飛程変更は、シンクロトロン13で加速する荷電粒子ビーム0bのエネルギーを変更して出射することで、患部形状に合わせた照射野を形成する。
ここで、本実施形態において重要となるシンクロトロン振動の制御について述べる。
上述のように、シンクロトロンでの荷電粒子ビームの加速は、ビームの周回軌道上に設置された加速空胴15によって、荷電粒子ビームがシンクロトロン内を周回する度に加速用高周波電圧を印加することで行う。この加速空胴15によって高周波電圧を印加することで、高周波バケットと呼ばれる安定領域を形成する。
この高周波バケットは、加速用高周波電圧の位相に対して安定に周回可能な荷電粒子ビームの運動量幅を示したものであり、高周波バケットの高さは加速用高周波電圧の振幅値により規定される。
シンクロトロン内を周回する荷電粒子のうち、加速用高周波電圧の周波数と一致した周回粒子は、加速用高周波電圧が規定する運動量と一致するため、加速用高周波電圧の中心位相に分布する。また、加速用高周波電圧の周波数からずれた周回粒子は、加速用高周波電圧が規定する運動量から相対的にずれるため、高周波電圧の中心位相からずれた領域に分布し、高周波バケット内の位相空間上を周回運動する。この高周波バケット内の位相空間上の周回運動をシンクロトロン振動と呼ぶ。荷電粒子ビームはシンクロトロン振動をしながら高周波バケット内を周回するため、荷電粒子ビームが安定に周回する上で重要な運動である。
シンクロトロン振動周波数(fSYNC)は、次式(1)で示され、加速用高周波電圧(VRF)、周回周波数(Ω)および、同期位相(φ)で制御できる。
Figure 0006200368
ここで、シンクロトロン振動がシンクロトロン内を周回する荷電粒子ビームに与える影響は加速時と出射時とで異なるため、式1を用いながら以下説明する。
荷電粒子ビームの加速時には、シンクロトロン内を周回する荷電粒子ビームの周回周波数が高まることで荷電粒子ビームのエネルギー(つまり、運動量)が増大する。このとき、シンクロトロン振動が大きいと高周波バケット内を周回する荷電粒子の振動周期が短くなるため、加速制御による運動量の増大とシンクロトロン振動による運動量の変動により、荷電粒子ビーム損失を生じる恐れがある。そのため、加速制御時には加速用高周波電圧(VRF)と同期位相(φ)の変化を緩やかにし、シンクロトロン振動の急激な変化を抑える必要がある。
一方、荷電粒子ビームの出射時は、加速用高周波電圧(VRF)も周回周波数(Ω)も一定で制御するため、シンクロトロン振動は一定である。また、荷電粒子ビームは出射用高周波電圧の印加によりベータトロン振動振幅を増大させることで安定限界の中から安定限界の外に出射される。このときの荷電粒子ビームの応答、すなわちビームON/OFF応答時間はシンクロトロン振動周波数(fSYNC)に依存する。
ここで、出射制御中に常に加速用高周波電圧(VRF)を高めることでシンクロトロン振動周波数(fSYNC)を高くし、荷電粒子ビームのON/OFF応答時間を速くすることはできる。しかし、周回荷電粒子ビームはシンクロトロン振動により運動量の高い荷電粒子ビームから出射される傾向があるため、加速用高周波電圧(VRF)を高めるとシンクロトロンから出射される荷電粒子ビームの運動量変化が大きくなるという課題がある。
そこで、本実施形態では、荷電粒子ビーム停止時間がシンクロトロン振動に規定されていることに着目し、荷電粒子ビーム停止時に加速用高周波電圧によりシンクロトロン振動を制御することで荷電粒子ビーム停止時間を短縮しつつ、シンクロトロンから出射される荷電粒子ビームの運動量変化を低減する制御を実施する。以下その詳細について、従来法と比較しながら説明する。
図5に従来法による高周波電圧の制御タイミングチャートを示し、図2に本発明による高周波電圧の制御タイミングチャートを示す。
図5において、従来法では、加速用高周波電圧は荷電粒子ビーム停止時および出射時に一定であり、出射用高周波電圧のON/OFFにより荷電粒子ビーム停止および出射を制御している。このため、従来法では、上述したように、出射用高周波電圧を停止(OFF)してから出射荷電粒子ビームが実際に遮断されるまでには、周回荷電粒子ビームのシンクロトロン振動周期に応じた時間が掛かり、図5(d)に示すような荷電粒子ビーム停止に伴う余剰な照射ビーム10e2が発生していた。
これに対し本発明では、図2に示すように、荷電粒子ビームの停止時に加速用高周波電圧の振幅値を高めることでシンクロトロン振動を高め、荷電粒子ビーム停止時間を短縮する。そして、ビームを再び出射する直前までに加速用高周波電圧の振幅値を元の値に戻し、荷電粒子ビーム出射時の運動量分散(飛程変動)を抑制する。
この制御を実施するための加速用高周波電圧の制御ブロックダイアグラムについて図3を用いて説明する。
図3において、加速用制御装置18は、線量モニタ31を通過する荷電粒子ビームが規定線量に到達したタイミングで加速用高周波電圧の振幅値を第1振幅値181a(V1)から第2振幅値181b(V2)に増加する電圧パターンを生成するとともに、次の照射開始までに加速用高周波電圧の振幅値を第2振幅値V2から第1振幅値V1に減少させるための電圧パターンを生成するパターン生成器182と、加速用高周波電圧(VRF)のパターン生成タイミングを制御するタイミング制御器186を有している。
タイミング制御器186は、比較器35の出力する比較器出力信号351の内容と加速器制御装置40から出力された目標線量331および規定線量187とにより、パターン生成タイミング信号185を生成し、パターン生成器182に対して出力する。
パターン生成器182は、パターン生成タイミング信号185の内容に応じて加速空胴15に印加する加速用高周波電圧の振幅値をV1からV2に増加する電圧パターンを生成するとともに、振幅値をV2からV1に減少させるための電圧パターンを生成し、生成した電圧パターンを加速用高周波信号181として加速用高周波増幅器17に出力する。その後、加速用高周波信号181は加速用高周波増幅器17で増幅され、加速空胴15に高周波電圧が印加される。
図3において、スポット照射開始時にゼロクリアされた積算線量カウンタ34によって線量モニタ31から出力される線量パルス188をカウントアップし、カウント値341が比較器35に出力される。比較器35では、加速器制御装置40から出力され、スポット毎に予め値が設定された目標線量331および規定線量187と積算線量カウンタ34のカウント値341とを比較する。そしてカウント値341が規定線量187に達したときは、加速用制御装置18のタイミング制御器186に対して規定線量に到達した旨の比較器出力信号351を出力する。この信号の入力を受けたタイミング制御器186は、カウント値341が目標線量331に到達するまでに加速用高周波電圧をV1からV2に増加させる電圧パターンを生成するためのパターン生成タイミング信号185をパターン生成器182に対して出力する。パターン生成器182では、この信号の入力を受けて、加速用高周波電圧の振幅値をV1からV2に増加する電圧パターンを生成し、電力増幅器17に出力する。この増加させる電圧パターンは、図2(e)に示すような直線的な増加パターンに限られず、時間的に連続的に増加させるパターンや段階的に増加させるパターンとすることができる。
なお、規定線量187の決定方法の一例について、図4を参照して以下説明する。
図4において、シンクロトロン13から出射され、照射装置30にて照射される荷電粒子ビームの単位時間当たりの増加線量を線量率λと定義すると、この線量率λは出射用高周波電圧の強度で制御することができるため、線量率λは予め与えられたパラメータである。
ここで加速用高周波電圧の振幅値を第1振幅値181a(V1)から第2振幅値181b(V2)へ上げるのに要する時間をΔT、このΔTの間に上昇する線量値をΔDとすると、
ΔT=ΔD/λ …(
と表せる。この式()を変形すると、
λΔT=ΔD=目標線量−規定線量 …(
と表せる。よって、規定線量は次式()のように
規定線量=目標線量−λΔT …(
と定義することができる。
ここで、加速用高周波電圧の振幅値がV2に必ず達するようにするため、()式において、時間的な余裕を見てT分の時間を追加すると、規定線量は次式()に示すように、
規定線量=目標線量−λ(ΔT+T) …(
とすることが望ましい。
同様に、比較器35は、カウント値341が目標線量331に達したときは、目標線量到達タイミング信号を照射制御装置33に対して出力し、照射制御装置33はこの比較器35の出力信号に基づき、ビーム出射制御指令332のOFF指令を出力して、出射用制御装置21は出射用高周波電圧をOFFにする。
ここで、常に加速用高周波電圧の振幅値を高めたままとしておくと、荷電粒子ビーム出射時の高周波バケットの高さが高くなり、周回荷電粒子ビームの運動量分散が高周波バケットの高さに沿って広がる。これに伴い、出射荷電粒子ビームの運動量分散(飛程変動)が次第に大きくなるため、この方法では所定の出射荷電粒子ビーム性能を満足することができなくなる恐れがある。
そこで、タイミング制御器186は、走査電磁石32の電流値が次スポット照射における目標電流値に達したこと、ビーム輸送系14内の高速ステアリング電磁石(不図示)がOFFになったこと等を示す次スポット照射準備信号333の入力を受けると、加速用高周波電圧をV2からV1に減少させる電圧パターンを生成するためのパターン生成タイミング信号185をパターン生成182に対して出力する。パターン生成器182では、この信号の入力を受けて、加速用高周波電圧の振幅値をV2からV1に減少させる電圧パターンを生成し、電力増幅器17に出力する。照射制御装置33は、この加速用高周波電圧の振幅値がV1になったと判定されると、次のスポットの照射の開始を始めるよう制御する。この減少させる電圧パターンについても、図2(e)に示すような直線的な減少パターンに限られず、時間的に連続的に減少させるパターンや段階的に減少させるパターンとすることができる。
このような加速用制御装置18内のタイミング制御器186およびパターン生成器182によってパターンが生成され、加速用高周波増幅器17に送られることで本発明による加速空胴15に印加する加速用高周波電圧の振幅値の増減の制御が実施される。このタイミング制御に基づいて、荷電粒子ビーム出射時は、従来法と同様に加速用高周波電圧を印加した状態であり、スポット線量値が規定線量を超えたあたりから加速用高周波電圧の振幅値を高めていき、スポット線量が目標線量値に達したところで電圧を一定に保ち、次の照射の開始までに加速用高周波電圧の振幅値を下げ始めるよう加速用高周波電圧が制御される。これにより、図2(c)に示すような余剰な照射ビーム10e1は、図(d)に示すような従来法における余剰な照射ビーム10e2に比べて大幅に減少させることができ、余剰線量を低減することが可能となる。
このように、シンクロトロン13からのビーム出射制御時とビーム出射停止時で加速空胴15に印加する高周波電圧の振幅値を切り替えることによって、ビーム出射の停止(OFF)前に加速空胴に印加する高周波電圧の振幅値を高めることでビーム停止時のシンクロトロン振動周波数を高めることができ、荷電粒子ビーム停止時間を短縮することができる。また、ビーム出射(ON)を開始する前に加速用高周波電圧を低くすることで、ビーム出射時の運動量分散(飛程変動)を抑制することができ、荷電粒子ビームの照射量が目標値に対してずれが生じることを抑制することができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
1 粒子線照射システム、
10a 入射荷電粒子ビーム、
10b 加速荷電粒子ビーム、
10c 出射荷電粒子ビーム、
10d 照射荷電粒子ビーム、
10e1 本実施形態における余剰な照射ビーム、
10e2 従来法における余剰な照射ビーム、
11 荷電粒子ビーム発生装置、
12 入射器、
13 シンクロトロン、
14 ビーム輸送系、
15 加速空胴、
16 偏向電磁石、
17 加速用高周波増幅器、
18 加速用制御装置、
181 加速用高周波信号、
182 パターン生成器、
185 パターン生成タイミング信号、
186 タイミング制御器、
187 規定線量、
188 線量パルス、
19 出射用高周波電極、
20 出射用高周波増幅器、
21 出射用制御装置、
211 出射用高周波信号、
30 照射装置、
31 線量モニタ、
32 走査電磁石、
33 照射制御装置、
331 目標線量、
332 荷電粒子ビーム出射制御指令、
333 次スポット照射準備信号、
34 積算線量カウンタ、
341 カウント値、
35 比較器、
351 比較器出力信号、
40 加速器制御装置、
41 統括制御装置、
42 記憶装置、
43 治療計画装置、
50 タイミングシステム、
51 タイミング信号。

Claims (5)

  1. 荷電粒子ビームを加速して出射するシンクロトロンと、
    このシンクロトロンから出射された前記荷電粒子ビームを照射する照射装置と、
    前記荷電粒子ビームを前記シンクロトロンから前記照射装置まで導くビーム輸送系と、
    前記シンクロトロン、前記ビーム輸送系および前記照射装置を制御する制御装置とを備えた荷電粒子ビーム照射システムであって、
    前記シンクロトロンは、高周波加速電圧で前記荷電粒子ビームを所定のエネルギーまで加速する加速空胴を有し、
    前記制御装置は、前記加速空胴に印加する高周波電圧を制御する加速用高周波制御部であって、前記荷電粒子ビームの照射線量が照射中のスポットに対して設定された規定線量に到達すると前記加速空胴に印加する高周波電圧の振幅値を増加させ、この増加させた高周波電圧の振幅値を前記規定線量に到達後も維持し、前記荷電粒子ビームの次のスポットの照射開始前の所定のタイミングから減少させる制御を行う加速用高周波制御部を有する
    こと特徴とする荷電粒子ビーム照射システム。
  2. 請求項1に記載の荷電粒子ビーム照射システムにおいて、
    前記加速用高周波制御部は、目標線量に到達するまでに前記高周波電圧の振幅値を第1振幅値から第2振幅値に増加させるのに要する時間に基づいて前記規定線量を決定する
    こと特徴とする荷電粒子ビーム照射システム。
  3. 荷電粒子ビームを加速して出射するシンクロトロンと、このシンクロトロンから出射された前記荷電粒子ビームを照射する照射装置と、前記荷電粒子ビームを前記シンクロトロンから前記照射装置まで導くビーム輸送系と、前記シンクロトロン、前記ビーム輸送系および前記照射装置を制御する制御装置とを備えた荷電粒子ビーム照射システムの制御方法であって、
    前記シンクロトロンからビームを出射する際に前記シンクロトロンの加速空胴に印加する高周波電圧の振幅値を、
    照射開始時に第1振幅値に設定し、
    照射線量が照射中のスポットに対して設定された規定線量に到達した時点で前記第1振幅値から第2振幅値に増加させ始め、
    前記規定線量に到達後は前記振幅値を前記第2振幅値に維持し、
    前記荷電粒子ビームの次のスポットの照射開始前の所定のタイミングで前記第2振幅値から前記第1振幅値に減少させる
    ことを特徴とする荷電粒子ビームの照射システムの制御方法。
  4. 請求項3に記載の荷電粒子ビーム照射システムの制御方法において、
    目標線量に到達するまでに前記高周波電圧の振幅値を前記第1振幅値から前記第2振幅値に増加させるのに要する時間に基づいて前記規定線量を決定する
    こと特徴とする荷電粒子ビーム照射システムの制御方法。
  5. 請求項4に記載の荷電粒子ビーム照射システムの制御方法において、
    前記目標線量に到達するまでに前記高周波電圧の振幅値を前記第2振幅値まで増加させる
    こと特徴とする荷電粒子ビーム照射システムの制御方法。
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