JP5548571B2 - 粒子線照射システム - Google Patents

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Description

本発明は、粒子線照射システム及び荷電粒子ビーム出射方法に係り、特に、陽子または重イオンなどの荷電粒子ビーム(イオンビーム)をがんなどの患部に照射する粒子線治療装置に適応するのに好適な粒子線照射システムに関する。
がんの放射線治療として、陽子または重イオン等のイオンビームを患者のがんの患部に照射して治療する粒子線治療が知られている。この治療に用いる粒子線治療装置は、イオンビーム発生装置,ビーム輸送系、及び照射装置を備える。イオンビーム発生装置は、周回軌道に沿って周回するイオンビームを所望のエネルギーまで加速させるシンクロトロンやサイクロトロンを有する。
シンクロトロンは、周回軌道に沿って周回するイオンビームに高周波電圧を印加して目標のエネルギーまで加速する高周波加速装置(加速空胴)、周回しているイオンビームのベータトロン振動振幅を増大させる出射用高周波電極、及びイオンビームを周回軌道から取り出す出射用デフレクターを備える(例えば、特許文献1)。目標エネルギーまで加速されたイオンビームをシンクロトロンからビーム輸送系へ出射する際、出射用高周波電極に高周波磁場または高周波電場(以下、高周波信号と表記)を印加し、周回しているイオンビームの固有振動であるベータトロン振動振幅を増大させる。ベータトロン振動振幅が増大したイオンビームは、安定限界外に移動し、シンクロトロンからビーム輸送系へ出射され、照射装置に輸送される。
照射装置は、上記イオンビーム発生装置から導かれたイオンビームを、患者の体表面からの深さ及び患部形状に合わせて整形して、治療用ベッド上の患者の患部に照射する。照射装置では、患部形状に合わせてビームを走査し照射するビームスキャニング法(非特許文献1の2086〜2090頁、非特許文献2の297〜302頁)が注目されている。ビームスキャニング法の一種にスポットスキャニングビーム走査法がある(非特許文献1の2087〜2089頁、非特許文献2の297〜298頁)。
スポットビームスキャニング走査法では、患部をスポットと呼ばれる領域に分割し、治療計画によりスポット毎に付与する照射線量を設定する。スポットに照射される線量は、線量モニタにて逐次計測する。線量モニタで計測した照射線量が所定線量に到達すると、イオンビームの照射を停止する。イオンビームの照射停止後、走査電磁石の励磁量を次のスポット位置に対応した励磁量に変更し、イオンビームを照射する。このような走査と照射の繰り返しにより、患部平面方向の照射を実施する。また、患部平面方向の照射を完了したら、照射面の深さ方向を変更する。患部深さ方向の照射は、イオンビームの飛程を変更することで制御する。具体的には、照射装置に供給するイオンビームのエネルギーを変更することで実現できる。
このように、ビームスキャニング法では、患部形状に合わせたイオンビームを照射するため、従来の散乱体照射法のように、患部形状に合わせた一様な吸収線量範囲(拡大ブラックピーク(Spread-Out Bragg Peak)以下、SOBPと表記)を形成するための散乱体(SOBPフィルタ)や、ボーラス,コリメータ等の患部形状に合わせた患者固有具が不要となり、イオンビーム発生装置から照射装置に供給されるイオンビームを効率よく患部に照射することが可能である。
イオンビーム発生装置としてシンクロトロンを利用する場合、照射装置に供給するイオンビームのエネルギーは、加速空胴に供給する高周波信号の周波数と偏向電磁石の磁場強度により制御可能である。また、シンクロトロンから照射装置に供給するイオンビームの電流は、出射用高周波信号の振幅値により制御可能である。スポットスキャニングビーム走査法で要求されるスポット毎のイオンビームの照射制御は、出射用高周波信号のON/OFF制御により実現できる。特に、スポットに対する照射線量が所定線量に到達した際にイオンビームの照射停止の際には、シンクロトロンから出射するイオンビームを素早く停止させることで、照射線量の精度を高める必要がある。シンクロトロンから出射するビームを高速で停止する技術として、加速空胴に供給する加速用高周波信号と高周波電極に供給する出射用高周波信号を同期して停止する技術が知られている(非特許文献3)。
特許第2596292号公報
レビュー オブ サイエンティフィック インスツルメンツ 64巻8号(1993年8月)の第2074〜2093頁(REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS VOLUME 64 NUMBER 8(AUGUST 1993)P2074-2093) ニュークリア インスツルメンツ アンド メソッド イン フィジックス リサーチ A 522巻(2004年)の第196〜204頁(Nuclear Instruments and Method in Physics Research A 522 (2004) P196-204) ニュークリア インスツルメンツ アンド メソッド イン フィジックス リサーチ A 489巻(2002年)の第59〜67頁(Nuclear Instruments and Method in Physics Research A 489 (2002) P59-67)
しかし、上記従来技術には次のような問題があった。シンクロトロンから出射するイオンビームを素早く停止する際に、シンクロトロンに設置された加速空胴に供給する加速用高周波信号と高周波電極に供給する出射用高周波信号を同期して停止すると、イオンビームは素早く停止することは可能である。しかしながら、次の照射スポットに対してイオンビームの照射を開始する際、加速用高周波信号と出射用高周波信号を同期して供給すると、出射ビーム電流波形の先頭にオーバーシュートが発生してしまう課題があった。図6に示すように、従来の加速用および出射用高周波信号の制御では、加速用高周波信号と出射用高周波信号の同期した制御を容易に実現するため、それぞれの高周波信号は低電力制御部で出射制御期間は常に0でない振幅値で出力しておき、それぞれの低電力制御部と高周波増幅器の間に高周波スイッチを設け、照射制御装置からのイオンビームON/OFF制御指令に基づき、高周波スイッチをON/OFF制御している。そのため、シンクロトロン内を周回するイオンビームには、加速空胴および出射用高周波電極に供給される高周波信号が急峻にON/OFF制御されるため、出射開始時のイオンビームの電流波形にはオーバーシュートが生じやすい。
また、照射スポットの目標線量が低い場合、出射ビーム電流波形に生ずるオーバーシュートで照射線量が目標線量に到達してしまう恐れがある。そのため、従来は出射用高周波信号の振幅を低くし、出射ビーム電流を抑えることで、出射ビーム電流波形にオーバーシュートが生じても、オーバーシュートのみで目標線量に到達しないようにしている。このような出射ビーム電流を抑えるような制御を実施すると、単位時間当たりにシンクロトロンから出射されるイオンビームの線量が少なくなり、照射治療時間が掛かってしまう課題があった。
本発明の目的は、シンクロトロンからイオンビームを出射する期間において、イオンビームのON制御時に発生する出射ビーム電流波形のオーバーシュートを抑制した粒子線照射システムを提供することにある。
上記の目的を実現する本発明の特徴は、照射スポットの目標線量よりも低い線量閾値を設け、照射開始からこの線量閾値まではシンクロトロンからイオンビームを出射制御する際の加速用高周波信号と出射用高周波信号の振幅を0から徐々に増加させるように制御する。このような制御により、出射ビーム電流波形に生ずるオーバーシュート波形を抑制することができる。
具体的には、照射制御装置から設定される照射スポットの目標線量よりも低い制御線量閾値を設定する手段と、照射装置内に設けてある線量モニタの出力を積算する手段と、積算した線量値と制御閾値を比較する手段を設け、シンクロトロンの出射制御時に利用する加速用高周波信号と出射用高周波信号の振幅制御データは0から徐々に増加する時系列パターンデータとする。
照射制御装置からのイオンビームON信号により加速用および出射用高周波信号を高周波増幅器へ接続する高周波スイッチをそれぞれONし、これと並行して加速用および出射用高周波信号の振幅制御データを更新し出力する。加速用および出射用高周波スイッチがONされ、振幅制御データが更新し出力することでシンクロトロンからイオンビームが徐々に出射され、線量モニタの出力を積算した結果が制御閾値に到達したら加速用および出射用高周波信号の振幅制御データの更新を停止し、最終更新値を保持した状態で振幅制御データを出力する。
照射制御装置からのイオンビームOFF信号により、加速用および出射用の高周波スイッチをそれぞれOFFし、加速用および出射用高周波信号の振幅制御データの出力を停止後、これらの振幅制御データを初期値に戻す。照射制御装置からのイオンビームOFF信号により振幅制御データを初期値に戻すことで、次の照射スポットへの照射開始時の振幅制御データを0から出力できる。
本発明によれば、シンクロトロンにおいて素早くイオンビームを停止した後の出射制御時に生じる出射ビーム電流波形のオーバーシュートを抑制することができるようになる。
本発明を実現する粒子線照射システムの構成を示す。 本発明を実現する加速用高周波信号と出射用高周波信号の制御ブロックダイアグラムを示す。 本発明による加速用高周波信号と出射用高周波信号の制御による出射ビーム電流波形を示す。 本発明を実現する加速用高周波信号と出射用高周波信号の制御ブロックダイアグラムを示す。 本発明による加速用高周波信号と出射用高周波信号の制御による出射ビーム電流波形を示す。 従来法による加速用高周波信号と出射用高周波信号の制御による出射ビーム電流波形を示す。
以下に、本発明の実施例を説明する。
本実施例の粒子線照射システム1は、図1に示すように、イオンビーム発生装置11,高エネルギービーム輸送系14,照射野形成装置(荷電粒子ビーム照射装置、以下、照射装置という)30を備え、高エネルギービーム輸送系14が、イオンビーム発生装置11と治療室内に配置される照射装置30を接続する。
上記粒子線照射システム1の制御システムは、イオンビーム発生装置11および高エネルギービーム輸送系14を制御する加速器制御装置40、粒子線照射システム1全体を統括して制御する統括制御装置41、患者へのビーム照射条件を計画する治療計画装置43、治療計画装置43で計画した情報やイオンビーム発生装置11および高エネルギービーム輸送系14の制御情報等を記憶する記憶装置42、イオンビーム発生装置11を構成する機器の同期制御を実現するタイミングシステム50、患者の安全を担保するために統括制御装置41とは独立のインターロックシステム(図示せず)を備える。また、出射用制御装置21は、イオンビーム発生装置11から高エネルギービーム輸送系14へのビームを出射する際に利用する高周波電圧を制御する。
イオンビーム発生装置11は、イオン源(図示せず)、前段加速器12及びシンクロトロン13を備える。イオン源は前段加速器12に接続され、前段加速器12はシンクロトロン13に接続される。前段加速器12は、イオン源で発生したイオンビーム10をシンクロトロン13に入射可能なエネルギーまで加速する。前段加速器12で加速されたイオンビーム10aは、シンクロトロン13に入射される。
シンクロトロン13では、加速用高周波信号188を加速用高周波増幅器17で増幅した高周波電圧を加速空胴15に印加し、シンクロトロン13に入射したイオンビーム10bは、加速空胴を通過する際にエネルギーを付与することで、所望のエネルギーまで加速する。この際、シンクロトロン13内を周回するイオンビーム10bの周回軌道が一定となるように、イオンビーム10bの周回エネルギーの増加に合わせて偏向電磁石(図示せず),四極電磁石(図示せず)等の磁場強度および、加速空胴15に印加する高周波電圧の周波数を高める。
所望のエネルギーまで加速したイオンビーム10bは、出射準備制御により、四極電磁石および六極電磁石(図示せず)の励磁量により周回ビーム10bが出射可能な条件(周回ビームの安定限界条件)を成立させる。出射準備制御が終了後、出射用制御装置21から出射用高周波信号217を加速用高周波増幅器17で増幅した後に、出射用高周波電極19に印加し、シンクロトロン13内を周回するビーム10bのベータトロン振動振幅を増大させる。このベータトロン振動振幅の増大により、安定限界条件を超えた周回ビーム10bはシンクロトロン13から高エネルギービーム輸送系14に出射される。シンクロトロン13からのビーム出射制御は、出射用制御装置21によって出射用高周波電極19に印加する出射用高周波信号217のON/OFF制御により実現可能であり、スポットスキャニングビーム走査法で求められる高速でのビームOFF制御を実現するため、加速空胴15に印加する加速用高周波信号188と出射用高周波信号217のON/OFF制御を同期させることで実現する。
シンクロトロン13から出射されたビーム10cは、高エネルギービーム輸送系14により照射装置30に輸送される。照射装置30では、患者に照射するビーム10dの照射線量を計測する線量モニタ31にて、照射するビーム10dの線量強度を逐次確認し、走査電磁石32で患部形状に合わせてビーム10dを走査する。また、患部深さ方向のビーム飛程変更は、シンクロトロン13で加速するビーム10bのエネルギーを変更して出射することで、患部形状に合わせた照射野を形成する。
ここで、本実施例における照射制御時の制御方法について説明する。治療計画装置43で計画された各照射スポットへの目標線量331が照射制御装置33に設定される。照射制御装置33は、各照射スポットへの目標線量331から、加速用高周波信号188および出射用高周波信号217の出力制御を切り替える閾値(以下、制御線量)332を目標線量331に対して予め設定された比率(例えば、10%や20%といった値)により算出する。目標線量331は、積算線量カウンタ34の出力値と比較する比較器351に設定する。制御線量332は、積算線量カウンタ34の出力値と比較する比較器352に設定する。比較器351および352は、積算線量カウンタ34からの出力値と目標線量331および制御線量332を比較し、それぞれの比較結果361,362を加速用制御装置18と出射用制御装置21にそれぞれ出力する。
図2に加速用高周波信号と出射用高周波信号の制御ブロックダイアグラムを示す。
シンクロトロン13で所望のエネルギーまでビーム10bを加速後、出射制御の開始を示すタイミングシステム50からの出射制御タイミング信号51に基づき、加速用制御装置18は、振幅制御データ184を加速制御用パターンデータメモリ181から、出射制御用パターンデータメモリ182に切り替え、出射制御用パターンデータの初期値に設定する。加速用高周波信号188を加速用制御装置18から加速用高周波増幅器17への伝送線路の終段に設けてある高周波スイッチ187は、加速制御中は閉じておく。照射制御装置33は、出射制御の開始を示すタイミングシステム50からの出射制御タイミング信号51に基づき、ビーム出射制御指令333をONし、出射用高周波信号の高周波スイッチ216を閉じる。
出射制御の開始により、加速用高周波信号の出射制御用パターンデータメモリ182から、振幅制御データ184の更新制御を開始し、振幅変調回路186に設定する。同様に出射用高周波信号の出射制御用パターンデータメモリ211から、振幅制御データ214の更新制御を開始し、振幅変調回路215に設定する。
加速用高周波信号188と出射用高周波信号217のそれぞれの出射制御用パターンデータは、振幅設定値の初期値が0であり、更新制御に伴い増加させる。出射ビーム電流波形は、出射用高周波信号217の振幅制御データ214に基づき、徐々に出射ビーム電流が高くなる。加速用高周波信号188の振幅制御データ184を0から徐々に増加することで、周回ビームのシンクロトロン振動の周波数成分が出射ビーム電流波形に重畳することを抑制できる。
また、加速用高周波信号188の振幅値制御には、加速空胴15に印加されている高周波信号の振幅値を空胴電圧モニタ16でモニタし、加速用高周波信号の振幅設定値にフィードバック制御を施すAVC(Automatic Voltage Control)回路185を設けることで、加速用高周波信号の安定な振幅値制御が実現できる。
シンクロトロンから出射されたビーム10cは、高エネルギービーム輸送系14を通過し、照射装置30に供給される。照射装置30に供給されたビームは、走査電磁石32によって所定のスポットに走査し照射される。積算線量カウンタ34は、ビーム出射制御指令333のON指令とともにカウント値341をクリアした後、カウントを開始する。積算線量カウンタ34のカウント値341は、目標線量331と比較する比較器351と、制御線量値332と比較する比較器352に並列して出力される。
積算線量カウンタ34のカウント値341と制御線量値332を比較する比較器352は、積算線量カウント値341が制御線量値332以上となった場合、比較器出力信号362を変更する。加速用高周波信号188および出射用高周波信号217の振幅制御データ184および214の更新制御は、積算線量カウント値が制御線量値以上となった際に出力される比較器362の出力信号362に基づき、更新を停止し、最終更新値の出力を保持する。
積算線量カウンタ34のカウント値341と目標線量値331を比較する比較器351は、積算線量カウント値321が目標線量値331と一致した場合に比較器351の出力信号を変更する。この比較器351の出力変更に基づき、照射制御装置33はビーム出射制御指令333のOFF指令を出力する。ビーム出射制御指令333のOFF指令に基づき、加速用高周波信号188および出射用高周波信号217をそれぞれの加速用高周波増幅器17および出射用高周波増幅器20への伝送線路上に設けた高周波スイッチ187および216を開き、加速用高周波信号188および出射用高周波信号217の伝送を高速に遮断する。この制御によって、ビーム出射制御指令333のOFF指令に基づく高速なビーム遮断制御を実現する。なお、本実施例では詳細を記していないが、加速用高周波信号188の加速用高周波増幅器17まで伝送線路上に設けた高周波スイッチ187は、加速制御中には常に閉じている必要があり、出射制御時のみ、出射用高周波信号217と同期したON/OFF制御を実施する。
加速用高周波信号と出射用高周波信号の制御による出射ビーム電流波形の変化について図3を用いて説明する。ビーム出射制御指令333は、照射スポット毎にビームを照射するため、図3のようにON指令とOFF指令が繰り返し出力される。ビーム出射制御指令333がONになると、加速用高周波信号188と出射用高周波信号217の振幅制御データ184および214が更新され、ビームが出射され始める。この際、加速用高周波信号188と出射用高周波信号217の振幅制御データ184および214は、それぞれ0から徐々に増加するデータを用いることで、図6に示した従来の加速用および出射用高周波信号の制御法のように、一定値で出力されている加速用高周波信号188および出射用高周波信号217を高周波スイッチ187および216でON/OFF制御により、出射ビーム波形にオーバーシュートは発生しない。
積算線量モニタ34のカウント値341は、徐々に増加し、制御線量値332に到達した時点で各振幅制御データ184および214の更新制御を停止し、最終設定値を保持して出力する。これにより、照射スポット区間で目標線量331に到達するまでビームを出射し、目標線量331に到達した時点で高周波スイッチ187と216を開き、加速用高周波信号188および出射用高周波信号217の供給を停止することで、高速に遮断することができる。
加速用高周波信号188および出射用高周波信号217の高速遮断制御と並行して振幅制御データ184および214の出力を停止し、出射制御用パターンデータメモリ182および211の初期値に設定する。出射制御用パターンデータメモリ182および211を初期値に戻すことで、次の照射スポットへのビーム出射に備え、次のスポットへの出射ビームON指令時に加速用および出射用高周波信号の振幅制御データ184および214のON制御を同期させても、出射ビーム電流波形にオーバーシュートを生じずに制御することが可能となる。
以上に示したような高周波信号の制御は、所定のスポットへの照射が完了もしくは、シンクロトロン13内の周回ビーム10bがなくなるまで繰り返し実施し、出射制御が終了したら、加速用高周波信号188の振幅制御パターンデータメモリを出射制御前に利用していた加速制御用パターンデータメモリ181に切り替え、減速制御を実施する。
本実施例によれば、シンクロトロンからイオンビームを出射制御において、イオンビームのON制御時に出射ビーム電流波形のオーバーシュートを抑制することができる。さらに、イオンビームのOFF制御時に出射ビームを高速で停止することができる。
従来法では、オーバーシュートの発生を抑制するため、出射用高周波信号の振幅値を低く制御して出射ビーム電流を抑えたため、照射治療時間が掛かっていたが、本実施例の適用により、出射用高周波信号の振幅制御値を0から徐々に高めるように更新制御することでオーバーシュートを抑制できるため、出射用高周波信号の振幅制御値を必要以上に抑えることが不要となり、単位時間当たりのイオンビーム線量を増やすことができ、照射治療時間を短縮できる。
本発明の他の例である第2実施例を示す。実施例1と異なる点は、出射用高周波信号の制御に出射ビーム電流フィードバック制御を適用している点である。これ以外の部分は実施例1と同様である。
図4に、本実施例のように出射ビーム電流フィードバックを適用した場合の加速用高周波信号と出射用高周波信号の制御ブロックダイアグラムを示す。出射用高周波信号の制御ブロックにおいて、出射制御用パターンデータに目標電流パターンデータと、線量モニタからの出射ビーム電流波形を入力する手段と、出射ビーム電流波形と目標電流パターンデータの偏差より出射用高周波信号の振幅値をフィードバック補正する制御手段を追加する。
図5に示すように、出射ビームON指令により、加速用高周波信号および出射用高周波信号の振幅制御値と、出射ビーム電流の目標電流パターンデータの更新を開始し、高周波スイッチを閉じる。この制御と並行して、線量モニタからの出射ビーム電流波形の入力を開始する。出射ビーム電流の目標電流設定値と線量モニタからの出射ビーム電流出力値の偏差より、出射用高周波信号の振幅制御値の補正量を算出する。算出した補正量を出射用高周波信号の振幅制御値に加算することで、出射ビーム電流フィードバック制御を実現する。
積算線量カウンタのカウント値が制御線量値以上となった場合、比較器の出力を変更し、加速用高周波信号および出射用高周波信号の振幅制御設定値および出射ビーム電流の目標電流設定値の更新を停止し、最終更新地の出力を保持する。出射ビーム電流の目標電流設定値の更新を停止後も、出射ビーム電流フィードバック制御を実施することで、一定のビーム電流で出射することが可能となる。積算線量カウント値が目標線量値と一致した場合に比較器出力信号を変更する。この比較器信号出力の変更に基づき、照射制御装置は出射ビームOFF指令を出力する。出射ビームOFF指令による出射制御用パターンデータの制御は、実施例1と同様である。
このような出射ビーム電流フィードバック制御手段を設けることで、出射ビームON指令に伴う出射ビーム電流波形の精度良い制御が実現できる。
本実施例によれば、シンクロトロンからイオンビームを出射制御において、イオンビームのON制御時に出射ビーム電流波形のオーバーシュートを抑制することができる。さらに、イオンビームのOFF制御時に出射ビームを高速で停止することができる。また、出射ビームの電流強度制御を簡素な装置構成で実現することができる。
従来法では、オーバーシュートの発生を抑制するため、出射用高周波信号の振幅値を低く制御して出射ビーム電流を抑えたため、照射治療時間が掛かっていたが、本実施例の適用により、出射用高周波信号の振幅制御値を0から徐々に高めるように更新制御することでオーバーシュートを抑制できるため、出射用高周波信号の振幅制御値を必要以上に抑えることが不要となり、単位時間当たりのイオンビーム線量を増やすことができ、照射治療時間を短縮できる。
1 粒子線照射システム
10a,10b,10c,10d イオンビーム
11 イオンビーム発生装置
12 前段加速器
13 シンクロトロン
14 高エネルギービーム輸送系
15 加速空胴
16 空胴電圧モニタ
17 加速用高周波増幅器
18 加速用制御装置
19 出射用高周波電極
20 出射用高周波増幅器
21 出射用制御装置
30 照射装置
31 線量モニタ
32 走査電磁石
40 加速器制御装置
41 統括制御装置
42 記憶装置
43 治療計画装置
50 タイミングシステム
51 出射制御タイミング信号
180 加速用コントローラ
181 加速制御用パターンデータメモリ
182,211 出射制御用パターンデータメモリ
183 メモリ切り替え手段
184,214 振幅制御データ
185 AVC回路
186,215 振幅変調回路
187,216 高周波スイッチ
188 加速用高周波信号
217 出射用高周波信号

Claims (5)

  1. イオンビームを加速して出射するシンクロトロンと、
    前記シンクロトロンから出射された前記イオンビームを照射対象に照射する照射装置と、
    前記シンクロトロン及び照射装置を制御する制御装置を備え、
    前記照射装置は、通過するイオンビームを走査する走査電磁石及び前記イオンビームの線量を測定する線量モニタを有し、
    前記制御装置は、
    照射対象の各照射領域に対する目標線量値及び前記目標線量値よりも低い値である閾値を記憶し、
    前記シンクロトロンから出射するイオンビームの出射制御の開始とともに、前記シンクロトロンの加速用高周波信号と出射用高周波信号の出射制御用振幅制御データの更新を開始し、
    前記線量モニタからの出力信号から求めた前記積算線量値が前記閾値に到達した際に、前記加速用高周波信号と前記出射用高周波信号の振幅制御データの更新を停止後、最終更新値を保持して出力し、
    前記線量モニタからの出力信号から求めた積算線量値が目標線量に到達すると、前記加速用高周波信号と前記出射用高周波信号の出力の伝送を停止し、出射制御用振幅制御データを初期値に更新することを特徴とする粒子線照射システム。
  2. 前記制御装置は、
    前記線量モニタからの出力信号から求めた積算線量値が前記目標線量値に到達すると、前記シンクロトロンへの加速用高周波信号及び出射用高周波信号の出力を停止して前記シンクロトロンからの前記イオンビームの出射を停止することを特徴とする請求項1に記載の粒子線照射システム。
  3. 前記制御装置は、
    前記閾値と前記線量モニタからの出力信号に基づく積算線量値を比較する手段と、
    前記シンクロトロンの加速用高周波信号と出射用高周波信号の伝送を遮断する手段と、
    前記シンクロトロンの加速用高周波信号と出射用高周波信号の出射制御用振幅制御データとを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子線照射システム。
  4. 前記シンクロトロンの前記加速用高周波信号及び前記出射用高周波信号の出射制御用振幅制御データは、初期値が0から始まり、徐々に増加する時系列データであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粒子線照射システム。
  5. 前記線量モニタからの出力信号と、出射ビーム電流の目標信号と、これら検出信号と目標信号の偏差に基づき、出射用高周波信号の振幅値に対するフィードバック制御をすることを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子線照射システム。
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