図1は、本発明の好適な一実施例(第1実施例)である粒子線照射システムの構成を示す図である。
本実施例の粒子線照射システム1は、図1に示すように、イオンビーム発生装置11、ビーム輸送装置14、照射野形成装置(荷電粒子ビームの照射装置、以下、照射装置という)30を備え、ビーム輸送装置14が、イオンビーム発生装置11と治療室内に配置される照射装置30を連絡する。
イオンビーム発生装置11は、イオン源(図示せず)、前段加速器12およびシンクロトロン13を備える。イオン源は前段加速器12に接続され、前段加速器12はシンクロトロン13に接続される。前段加速器12は、イオン源で発生したイオンビーム10をシンクロトロン13に入射可能なエネルギーまで加速する。前段加速器12で加速されたイオンビーム10aは、シンクロトロン13に入射される。
シンクロトロン13は、周回軌道に沿って周回するイオンビーム10bに高周波電圧を印加して目標のエネルギーまで加速する高周波加速装置(加速空胴)17、周回しているイオンビームのベータトロン振動振幅を増大させる出射用高周波電極20a、およびイオンビームを周回軌道から取り出す出射用デフレクター20bを備える。
シンクロトロン13に入射されたビーム10bは、高周波加速空胴17に印加した加速高周波電圧によりエネルギーを付与されることで、所望のエネルギーまで加速する。この際、シンクロトロン13内を周回するイオンビーム10bの周回軌道が一定となるように、イオンビーム10bの周回エネルギーの増加に合わせて偏向電磁石18、四極電磁石19等の磁場強度および、加速空胴17に印加する高周波電圧の周波数を高める。
所望のエネルギーまで加速したイオンビーム10bは、出射条件設定制御により、四極電磁石19および六極電磁石(図示せず)の励磁量を制御することで周回ビーム10bが出射可能な条件(周回ビームの安定限界条件)を成立させる。出射条件設定制御が終了後、出射用高周波電極20aに出射高周波電圧を印加し、シンクロトロン13内を周回するビーム10bのベータトロン振動振幅を増大させる。このベータトロン振動振幅の増大により、安定限界条件を超えた周回ビーム10bはシンクロトロン13からビーム輸送装置14に出射され、照射装置30に輸送される。シンクロトロン13からのビーム出射制御は、出射用高周波電極20aに印加する高周波電圧のON/OFF制御することで高速に実現可能である。
シンクロトロン13からのビーム出射制御が終了後、出射条件解除制御により、四極電磁石19および六極電磁石(図示せず)の励磁量を制御することで出射条件設定時に形成した周回ビーム10bの安定限界条件を解除する。
出射条件解除制御が完了後、偏向電磁石18、四極電磁石19等の磁場強度および、加速空胴17に印加する高周波電圧の周波数を下げることで、シンクロトロン13内を周回するイオンビーム10bを減速し、次の運転周期に遷移する。
照射装置30は、上記ビーム輸送装置14にて導かれたイオンビーム10cを、患者36の体表面からの深さおよび患部形状に合わせて制御して、治療用ベッド上の患者36の患部37に照射する。照射法としてスキャニング照射法(非特許文献1の2086頁、図45)があり、照射装置30はスキャニング照射法によるものである。スキャニング照射法は、直接患部37にイオンビーム10dを照射するためイオンビーム10dの利用効率が高く、従来の散乱体照射法よりも患部形状に合致したイオンビーム10dの照射が可能といった特徴がある。
患部の深さ方向へのビーム飛程調整は、イオンビームのエネルギーを変更することで所望の患部への照射を実現する。特にスキャニング照射法では、シンクロトロン13内を周回するイオンビーム10bのエネルギーを調整した後で出射することで、イオンビームの飛程を患部36の深さに合わせるため、患者への照射治療中に複数回のエネルギーの変更制御が要求される。また、患部平面方向へのビーム照射方法として、スポットスキャニング照射法、ラスタースキャニング照射法などがある。スポットスキャニング照射法は、患部の照射平面上をスポットと呼ばれる線量管理領域に分割し、スポット毎に走査を停止して設定した照射線量に到達するまでビームを照射した後にビームを停止し、次の照射スポット位置に移動する。このようにスポットスキャニング照射法は、照射開始位置をスポット毎に更新する照射法である。また、ラスタースキャニング照射法は、スポットスキャニング照射法と同様に線量管理領域を設定するが、スポット毎にビーム走査を停止せず、ビームを走査経路上を走査しながら照射する。そのため、一回当たりの照射線量を低くし、複数回繰り返し照射するリペイント照射を実施することで照射線量の一様度を向上する。このようにラスタースキャニング照射法は、照射開始位置を走査経路毎に更新する照射法である。なお、スポットスキャニング法においても、ラスタースキャニング法と同様に、一つのスポット位置に対する一度の照射で与える照射線量を低く設定し、照射平面を複数回走査することによって、最終的な照射線量に到達するように制御してもよい。
図2に照射装置30の構成を示す。照射装置30は走査電磁石32a,32bを有し、患部平面上を患部形状に合わせて走査電磁石32a,32bでビームを走査する。また、照射装置30は、患者に照射するビーム10dの照射線量を計測する線量モニタ31やビーム形状モニタ(図示せず)を有し、これらで照射するビーム10dの線量強度やビーム形状を逐次確認する。走査電磁石32a,32bで走査されたビーム10dは、コリメータ34で患者36の患部形状37に合わせて照射野を形成する。
図1に戻り、本実施例の粒子線照射システム1は制御システム100(制御装置)を備えている。制御システム100は、イオンビーム発生装置11およびビーム輸送装置14を制御する加速器制御装置40、粒子線照射システム1全体を統括して制御する統括制御装置41、患者へのビーム照射条件を計画する治療計画装置43、治療計画装置43で計画した情報やイオンビーム発生装置であるシンクロトロン13およびビーム輸送装置14の制御情報等を記憶する記憶装置42、照射装置30を構成する機器と患部37に照射するイオンビーム10dの照射線量を制御する照射制御装置44、シンクロトロン13を構成する機器の同期制御を実現するタイミングシステム50、患者36の安全を担保するために統括制御装置41とは独立したインターロックシステム60、シンクロトロン13を構成する各機器の電源46を制御する電源制御装置45から構成される。記憶装置42は統括制御装置41の一部として統括制御装置41に備えられていてもよい。
電源46はシンクロトロン13を構成する複数の機器の電源の総称であり、図1には複数の機器の電源として偏向電磁石18の電源46B、四極電磁石19の電源46Q、高周波加速空洞17の電源46Fが示されている。電源制御装置45も同様に複数の機器の電源に対応する複数の電源制御装置の総称であり、図1には電源46Bの制御装置45B,電源46Qの制御装置45Q,電源46Fの制御装置45Fが示されている。
従来のシンクロトロン13の運転シーケンスを図13に示す。シンクロトロン13は、一回の運転周期で加速・出射・減速という一連の制御を実施する。出射制御の前後には、出射条件設定および出射条件解除といった、シンクロトロン内のイオンビームを出射するために必要な出射条件設定制御と、出射制御終了後の出射条件解除制御が必要である。
従来のシンクロトロン13の運転制御では、一連の制御に合わせた制御データをパターンデータとして電源制御装置45のメモリに用意しておき、電源制御装置45は、シンクロトロン13を構成する機器の制御タイミングを管理するタイミングシステム50から出力されるタイミング信号51に基づき、制御データを更新する。
図13に示したように、シンクロトロン13は一回の運転周期で、加速から減速までを制御しているため、出射するイオンビーム10cのエネルギーを変更するには、出射制御終了後に減速制御に遷移し残存ビームを減速した後、運転周期を更新する。運転周期を更新し再びイオンビーム10bを加速することで、所望のエネルギーへの変更制御を実現する。そのため、従来のシンクロトロン13の運転制御ではイオンビーム10bのエネルギー変更時間には、ほぼ一回の運転周期と同じ時間が掛かるため、治療時間が長くなり、線量率を向上していく上での課題であった。
特許文献1、特許文献2および非特許文献2には、一回の運転周期内で複数のエネルギーのイオンビームの出射を実現する、イオンシンクロトロンの多段出射制御運転について示されている。このような多段出射制御運転により、スキャニング照射法でのエネルギー変更時間の短縮が実現できる。しかし、イオンビームの照射を途中で終了した場合に、照射途中終了時の出射エネルギーから減速制御に至る間のエネルギー変更制御データの更新(ビーム照射の伴わない制御)或いは、入射エネルギーから照射再開の目標エネルギーに至る間のエネルギー変更制御データの更新(ビーム照射の伴わない制御)が必要となる。そのため、照射途中終了時の出射エネルギーから減速制御に速やかに遷移できない、或いは、引き続きビームの照射を再開する際に、入射エネルギーから照射再開の目標エネルギーに速やかに到達できないという課題がある。
本実施例の特徴である、多段出射運転時の運転制御データの構造と、この運転制御データを用いた運転シーケンスについて、図3A〜図9Cを用いて説明する。
図3Aは、シンクロトロン13を構成する機器の運転制御データ7の構成を示す図であり、機器の制御データの代表例として、偏向電磁石18の励磁電流を示している。本実施例では、ある患者の治療のために照射するビームのエネルギー数が10エネルギー(Ea〜Ej)であり、シンクロトロン13が1回の運転周期内で出射可能な最大のエネルギー数が4エネルギーの場合を想定している。なお、照射するビームのエネルギー数は治療計画に基づいて決定され、1回の運転周期内で出射可能なエネルギー数はシンクロトロンの性能に基づいて決定される。また、本実施例では低いエネルギーから高いエネルギーに順次ビームを照射するような運転パターンデータを示しているが、高いエネルギーから低いエネルギーに順次ビームを照射する場合でも同様の効果が得られる。
図3Aにおいて、シンクロトロン13を構成する機器の運転制御データはその全体が符号7で示されている。この運転制御データ7は、シンクロトロン13から出射されるべきイオンビームのエネルギー範囲を分割した複数のエネルギー範囲のそれぞれに対応して生成した複数の運転パターンデータで構成される。本実施例では、シンクロトロン13から出射されるべきイオンビームのエネルギー範囲(Ea〜Ej)をシンクロトロン13が1回の運転周期内で出射可能な4エネルギー以下で構成されかつエネルギー範囲が互いに重複しない3つのエネルギー範囲(Ea〜Ed),(Ee〜Eh),(Ei,Ej)に分割し、それぞれのエネルギー範囲に対応した運転パターンデータ70ad,70eh,70ijで運転制御データ7を構成する。
図3Bに示すように、運転パターンデータ70adは、初期加速制御データ701aと、複数の出射制御データ702a〜702dと、複数の出射制御データ702a〜702dのそれぞれに対応した複数の減速制御データ706a〜706dと、複数の出射制御データ702a〜702d間のそれぞれを接続する複数のエネルギー変更制御データ705ab,705bc,705cdとを含む構成とする。ここで、出射制御データは、出射条件設定データ703a〜703dと出射条件解除データ704a〜704dから構成される。これらの運転パターンデータ70adを構成する各制御データはそれぞれ時系列データで構成される。例えば、偏向電磁石18の制御データであれば、所定の偏向磁場強度を発生する際に必要な偏向電磁石電源45Bに設定する励磁電流と電圧(図示せず)の時系列データで構成される。
図3C,3Dにそれぞれ示す運転パターンデータ70eh,70ijも同様に構成されている。すなわち、運転パターンデータ70ehは、初期加速制御データ701eと、複数の出射制御データ702e〜702hと、複数の出射制御データ702e〜702hのそれぞれに対応した複数の減速制御データ706e〜706hと、複数の出射制御データ702e〜702h間のそれぞれを接続する複数のエネルギー変更制御データ705ef,705fg,705ghとを含む構成とする。出射制御データは、それぞれ、出射条件設定データ703e〜703hと出射条件解除データ704e〜704hから構成される。運転パターンデータ70ijは、初期加速制御データ701iと、複数の出射制御データ702i〜702jと、複数の出射制御データ702i〜702jのそれぞれに対応した複数の減速制御データ706i〜706jと、複数の出射制御データ702i〜702j間を接続する1つのエネルギー変更制御データ705ijとを含む構成とする。出射制御データは、それぞれ、出射条件設定データ703i〜703jと出射条件解除データ704i〜704jから構成される。
以下の説明では、説明の簡略化のため、特に区別する必要が無い限りは、運転パターンデータを70、初期加速制御データを701、出射制御データを702、変更制御データを705、減速制御データを706と表記して説明する。
なお、本実施例では、3つの運転パターンデータ70ad,70eh,70ijの全てが複数の出射制御データ702により多段出射制御を行えるものとしかつ複数の出射制御データ702に対応した複数の減速制御データ706を含む構成としたが、従来技術に対して、イオンビームの照射を途中で終了した場合に、ビーム照射の伴わない制御を極力減らすという本発明の課題を達成するためには、少なくとも1つの運転パターンデータが複数の出射制御データ702により多段出射制御を行える構成であり、かつ最終段の出射制御データ702に対応した1つの減速制御データ706を備えていればよい。この場合、複数の運転パターンデータ70は、その少なくとも1つが、1つの初期加速制御データ701と、複数の出射制御データ702と、前記複数の出射制御データ702間を接続する少なくとも1つのエネルギー変更制御データ705と、少なくとも1つの減速制御データ706とを含むものとなる。
運転パターンデータ70は、タイミングシステム50から出力されるタイミング信号51に関連付けられている。本実施例のタイミング信号51は、加速制御開始タイミング信号511、出射条件設定タイミング信号512、出射制御待機タイミング信号513、出射条件解除タイミング信号514、エネルギー変更制御タイミング信号515、減速制御開始タイミング信号516、減速制御終了タイミング信号517から構成されている。
図3B〜図3Dにおいて、電源制御装置45にタイミング信号51(511〜517)が入力されると、電源制御装置45は、タイミング信号51(511〜517)に関連付けられた制御データ701〜706を選択し、選択した制御データ701〜706を構成する時系列データの開始値からデータの更新を開始する。
タイミング信号51(511〜517)の入力に対する運転パターンデータ70adの更新制御について、図3Bを用いて説明する。加速制御タイミング信号511の入力により、入射エネルギー(Einj)から初段の出射エネルギー(Ea)までの初期加速制御データ701aを更新してビームを加速する。出射制御タイミング信号512の入力により、出射条件設定データ703aを更新する。出射制御待機タイミング信号513の入力により、出射条件設定データ703aの更新を停止し、出射用高周波電圧を印加することでビーム出射制御を実施する。照射制御装置44は、出射制御中の照射線量311を逐次計測し、計測結果に基づき線量満了信号442を出力し、出射用高周波電圧の印加を停止し出射制御を終了する。この後、出射条件解除タイミング信号514の入力により出射条件解除データ704aの更新を開始する。照射制御装置44は、出射制御終了時の蓄積ビーム電荷量と次の照射エネルギーの有無に応じて、エネルギー変更タイミング信号515を出力し、エネルギー変更制御に遷移するか(出射条件解除データ704aからエネルギー変更制御データ705abに遷移するか)、又は減速制御タイミング信号516を出力し、減速制御に遷移するか(出射条件解除データ704aから減速制御データ706aに遷移するか)を判断する。各制御データ701〜706を構成する時系列データの開始値と終了値は、遷移する前後の制御データが連続的に接続できるように同じ値としておく。例えば、出射条件解除データ704の終了値と次の照射エネルギーに遷移するエネルギー変更制御データ705の開始値(図3Bの場合、704aの終了値と705abの開始値)および、出射条件解除データ704の終了値と入射エネルギーまで減速する減速制御データの開始値(図3Bの場合、704aの終了値と706aの開始値)は同じ値としておく。このようにタイミング信号51の入力に基づいて各制御データ701〜706を更新することで、運転パターンデータ70の更新制御が容易に実現できる。
説明は省略するが、図3C及び図3Dにおけるタイミング信号51(511〜517)の入力に対する運転パターンデータ70eh及び70ijの更新制御についても同様である。
図3Aに示したシンクロトロンを構成する機器の運転制御データ7を用いて多段出射運転を実施する際の照射準備フローについて、図4および図5を併用して説明する。図4は、本実施例の特徴である多段出射運転を実現する制御装置の構成と各装置間の情報伝送(データ伝送フロー)を示す図である。図5は、多段出射運転を開始する前の照射準備フローを示す図である。
まず、治療計画装置43は、患者の治療に必要な照射条件等を含む治療計画情報431を記憶装置42に登録する(800)。統括制御装置41は、照射条件の設定情報に基づき、記憶装置42から照射条件421を読み込む(801)。
統括制御装置41は、照射条件から照射に必要なエネルギーと各照射エネルギーの照射順序と目標照射線量および制御データを記憶装置42から選択する(802)。記憶装置42には、図3A〜図3Dに示した初期加速制御データ701、出射制御データ702、出射条件設定データ703、出射条件解除データ704、エネルギー変更制御データ705、減速制御データ706を含めて、想定されるあらゆる患者の照射条件に対応した全てのエネルギーのビーム出射を可能とする制御データがモジュールデータとして記憶されており、統括制御装置41は、照射条件421に基づいて制御データ(運転パターンデータ70ad,70eh,70ijを構成する制御データ、タイミング信号を含む)を選択して読み込む。
統括制御装置41は、タイミングシステム50に対して、照射に必要なエネルギー情報と照射順序およびこのエネルギーに対応したタイミング信号データ411aを伝送する(803)。
タイミングシステム50は、統括制御装置41から伝送された照射に必要なエネルギー情報と照射順序およびこのエネルギーに対応したタイミング信号データ411aをメモリ内に記憶する(804)。
統括制御装置41は同様に、加速器制御装置40に対して、照射に必要なエネルギー情報と照射順序およびこのエネルギーに対応した制御データを制御データ411bとして伝送し(805a)、照射制御装置44に対して、照射に必要なエネルギー情報と照射順序およびこのエネルギーに対応した制御データを制御データ411cとして伝送する(805b)。このうち、照射制御装置44に伝送する制御データ411cには、各照射エネルギーの目標照射線量が含まれる。
加速器制御装置40は、シンクロトロン13及びビーム輸送装置14を構成する機器の各電源制御装置45に対して、照射に必要なエネルギー情報と照射順序および各機器の制御データを制御データ401として伝送し(806)、電源制御装置45は、照射に必要なエネルギー情報と照射順序および各機器の制御データをメモリ内に記憶する(807)。
照射制御装置44は、各照射エネルギーの照射順序と目標照射線量をメモリ内に記憶する(808)。
図6は、電源制御装置45のメモリに記憶した照射に必要なエネルギー情報と照射順序および制御データを示す図である。この図6に示すように、電源制御装置45には、図3A〜図3Dに示した運転パターンデータ70が、運転パターンデータ毎にそれぞれのエネルギー情報と照射順序および制御データのテーブルデータとして用意される。
次に、図3Aに示したシンクロトロン13を構成する機器の運転制御データ7を用いて多段出射運転を実施する際の照射フローについて、図4および図7を用いて説明する。図7は、多段出射運転時の運転制御フローを示す図である。
統括制御装置41に対してユーザから照射開始指令(図示せず)が入力されると、シンクロトロン13の運転制御を開始する。統括制御装置41はタイミングシステム50、加速器制御装置40、照射制御装置44に対して、シンクロトロン13の運転周期の開始を示す、制御開始指令412を出力する。タイミングシステム50、加速器制御装置40、照射制御装置44は、制御開始指令412に基づき、目標エネルギーを設定する。設定された目標エネルギーに基づき、タイミングシステム50は、これから出射するビームの目標エネルギー情報を設定し、加速器制御装置40は、電源制御装置45に目標エネルギーを設定する。照射制御装置44は、目標エネルギーから、当該エネルギーの各線量管理領域の目標線量値を設定する(809)。電源制御装置45は、後述する図8のフローにしたがって、図6に示した運転パターンデータ70ad,70eh,70ijの中から目標エネルギーに最も早く到達できる運転パターンデータを選択し、設定する(809a)。
タイミングシステム50は制御開始指令412に基づき、加速制御開始タイミング信号511を出力し、電源制御装置45は、設定した運転パターンデータにおける初期加速制御データ701の更新を開始する(810)。加速制御装置40は、初期加速制御が終了した時点で、加速終了後の到達エネルギーを確認し(811)、加速終了後に確認した到達エネルギーが、目標エネルギーと一致するかを判定する(812)。このステップ812の判定は、選択された運転パターンデータによっては初期加速制御終了時の到達エネルギーと目標エネルギーが異なる場合があるため、後述するエネルギー変更制御を実施するか、このままビーム出射制御に遷移するかを判断するために行う必要がある。
加速器制御装置40は、ステップ812の判定結果を示すエネルギー判定信号402をインターロックシステム60に出力する。インターロックシステム60は、加速終了後の到達エネルギーと出射エネルギーが一致しない場合は、タイミングシステム50にエネルギー変更指令611を出力し、タイミングシステム50は電源制御装置45にエネルギー変更制御タイミング信号515を出力し、電源制御装置45はエネルギー変更制御パターンデータ705の更新を実施する(824)。一方、加速終了後の到達エネルギーと出射エネルギーが一致する場合、インターロックシステム60はタイミングシステム50に出射制御指令614を出力し、タイミングシステム50は電源制御装置45に出射条件設定タイミング信号512を出力し、電源制御装置45は出射条件設定データ703の更新を開始する(813)。
タイミングシステム50は、出射条件設定データ703の更新完了に合わせて出射制御待機タイミング信号513を出力し、電源制御装置45は出射条件設定データ703の更新を終了し最終更新値を保持する。インターロックシステム60は電源制御装置45から出力される機器の健全性やエネルギー確認情報といったステータス情報452、シンクロトロン13内の蓄積ビーム量検出手段15での蓄積ビーム量の計測値151に基づき照射制御装置44から出力される出射制御許可信号441等により、ビームの出射制御が可能か判定する(814)。
ステップ814の判定結果が異常(NG)の場合には、インターロックシステム60はタイミングシステム50に対して減速制御指令613を出力し、タイミングシステム50は電源制御装置45に対して減速制御開始タイミング信号516を出力し、電源制御装置45は減速制御データ706を更新する(822)。
一方、ステップ814の判定結果が正常(OK)の場合には、インターロックシステム60は加速器制御装置40に対して出射許可指令615を出力し、加速器制御装置40は高周波電極(図示せず)に出射用高周波電圧を印加することで、ビーム出射制御を実施する(815)。
ビーム出射制御中は、照射装置30に設置されている線量モニタ31にて照射ビームの線量311を逐次計測し、照射制御装置44は、各線量管理領域での積算線量を演算する。この際、照射制御装置44は当該エネルギーの当該線量管理領域での目標線量と積算線量を比較し、積算線量が目標線量に到達(以下、積算線量が満了)したか否かを判断する(816)。
当該線量管理領域の積算線量が満了していない場合、シンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量151を蓄積ビーム量検出手段15で計測し、照射制御装置44はビーム照射の継続に十分な蓄積ビーム量があるか判定し(818)、シンクロトロン13内の蓄積ビーム量が照射制御に十分な量がある場合にはビーム出射制御を継続する(ステップ815へ戻る)。一方、シンクロトロン13内の蓄積ビーム量が枯渇した場合には、照射制御装置44はインターロックシステム60に対して減速制御要求444を出力し、インターロックシステム60はタイミングシステム50に対して減速制御指令613を出力し、タイミングシステム50は電源制御装置45に対して減速制御開始タイミング信号516を出力し、電源制御装置45は減速制御データ706を更新する(822)。
一方、ステップ816で当該線量管理領域の積算線量が満了したと判定した場合、照射制御装置44は、当該エネルギーの照射領域つまり、当該エネルギーでの全ての線量管理領域で照射が完了しているか判定する(817)。
当該エネルギーでの全ての線量管理領域への照射が完了していない場合には、走査電磁石32でまだ照射が完了していないビーム照射領域つまり、照射が完了していない線量管理領域に照射位置を更新する(841)。その後、ステップ816の線量が満了していない場合と同様に、照射制御装置44はビーム照射の継続に十分な蓄積ビーム量があるか判定し(818)、シンクロトロン13内の蓄積ビーム量がビーム照射の継続に十分な量である場合には、ビーム照射を実施する。シンクロトロン13内の蓄積ビーム量が枯渇した場合には、照射制御装置44はインターロックシステム60に対して減速制御要求444を出力する。一方、ステップ817で当該エネルギーでの全ての線量管理領域への照射が完了したと判定した場合には、照射制御装置44は照射完了信号445をインターロックシステム60に出力し、インターロックシステム60はタイミングシステム50に対して照射完了指令612を出力し、タイミングシステム50は電源制御装置45に対して出射条件解除タイミング信号514を出力し、電源制御装置45は出射条件解除データ704の更新を開始する(819)。
ステップ819で出射条件解除データ704の更新制御が終了後、照射制御装置44は、次の照射エネルギーデータが存在するか判定する(820)。次の照射エネルギーが存在する場合には、シンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量151を蓄積ビーム量検出手段15で計測し、照射制御装置44は次の照射エネルギーのビーム照射に十分な蓄積ビーム量があるか判定し(840)、シンクロトロン13内の蓄積ビーム量が次の照射エネルギーでのビーム照射に十分な量である場合には、照射制御装置44は、目標エネルギーデータを次の照射エネルギーデータで更新する(821)。ステップ820で次の目標エネルギーが存在しないと判定した場合、又はステップ840でシンクロトロン13内の蓄積ビーム量が枯渇したと判定した場合には、照射制御装置44はインターロックシステム60に対して減速制御要求444を出力し、インターロックシステム60はタイミングシステム50に対して減速制御指令613を出力し、タイミングシステム50から電源制御装置45に対して減速制御開始タイミング信号516を出力し、電源制御装置45は減速制御データ706を更新する(822)。なお、スポットスキャニング照射法のように線量を管理する照射領域が細かく指定されている(照射領域当たりの必要線量が少ない)場合には、ステップ818に示したように蓄積ビーム量を逐次判定することで適切な照射が可能となるため、ステップ840に記載した蓄積ビーム量の判定処理は省略できる。一方、ラスタースキャニング照射のように一様連続ビームでレイヤー内の照射を実施する際には、照射線量の一様度の担保を容易にし、かつ、線量率を高めるため、照射途中にビーム枯渇が生じないように制御することが望ましい。そのため、次の照射エネルギーのビーム照射に必要な蓄積ビーム量があるか、ステップ840で判定した上で目標エネルギーデータを更新している。ステップ821で目標エネルギーデータを更新した後、現在使用している運転パターンデータ70内に次の照射エネルギーに該当する出射制御データが含まれているか確認する(826)。現在使用している運転パターンデータ70内に次に照射エネルギーに該当する出射制御データが含まれている場合、照射制御装置44は、目標エネルギーデータを次の照射エネルギーデータで更新し(821)、照射制御装置44は、インターロックシステム60に対してエネルギー変更要求443を出力する。インターロックシステム60は、タイミングシステム50に対してエネルギー変更指令611を出力し、タイミングシステム50は電源制御装置45に対してエネルギー変更制御タイミング信号515を出力し、電源制御装置45はエネルギー変更制御タイミング信号515に基づき、エネルギー変更制御パターンデータ705を更新し(824)、ビーム照射制御を継続する(ステップ811に戻る)。
一方、ステップ826で現在使用している運転パターンデータ内の次に照射エネルギーに該当する出射制御データが含まれていないと判定した場合は、照射制御装置44はインターロックシステム60に対して減速制御要求444を出力し、インターロックシステム60はタイミングシステム50に対して減速制御指令613を出力し、タイミングシステム50は電源制御装置45に対して減速制御開始タイミング信号516を出力し、電源制御装置45は現在の出射制御データに対応した減速制御データ706を更新する(822)。
タイミングシステム50は、減速制御データ706の更新完了に合わせて、減速制御終了タイミング信号517を出力する。インターロックシステム60は、減速制御終了タイミング信号517の入力に基づき、減速制御が終了後、全てのエネルギーでの照射を完了したか、或いはステップ814の判定結果が異常(NG)であったかを確認する(823)。全てのエネルギーの照射を完了した場合、或いはステップ814の判定結果が異常(NG)であった場合には、運転周期を終了する。
一方、全てのエネルギーの照射を完了していない場合(823)には、運転周期の開始に戻り、再び運転周期を開始する。
図8は、図7のステップ809aの詳細である運転パターンデータ70の選択フローを示す図である。前記で述べたように多段出射運転を開始する前の照射準備にて統括制御装置41から伝送されたエネルギー情報と照射順序が、図6に示すように、出射エネルギー帯域毎に分割された運転パターンデータ70として、電源制御装置45のメモリ内に記憶されている。電源制御装置45は、運転パターンデータ70の選択にあたり、運転パターンデータにおける目標エネルギーの段を示すnを運転パターンデータの最大エネルギー数(本実施例では4)で初期化し、先頭の運転パターンデータ(パターン1)から検索を始める(901)。検索対象(m番目)の運転パターンデータ(パターンm)に目標エネルギーが含まれているかを判定する(902)。目標エネルギーが含まれている場合は、記憶されている段nより検索したパターンmにおける目標エネルギーの段が小さいか判定する(903)。判定した結果が小さい場合はその段でnを更新し(904)、パターンmを記憶する(905)。最後の運転パターンデータ(パターンN)まで検索が完了すると終了となる(906,907)。このような選択フローを用いることにより、目標エネルギーに対応した出射制御データが最も早く現れる運転パターンデータを選択することができる。
図3Aに示した運転転制御データ7を使用してシンクロトロン13を運転制御した場合の運転例を図9A〜図9Cを用いて説明する。図9A〜図9Cは、制御データの代表として偏向電磁石の励磁電流値の変化を示している。なお、一般に、偏向電磁石の励磁電流値とビームエネルギーは概ね比例関係にあるため、図9A〜図9Cは多段出射運転時のビームエネルギー変化と読むこともできる。
図9Aは、図3Aに示した運転制御データ7を構成する運転パターンデータ70ad,70eh,70ijによる運転周期中にビーム枯渇が生じなかった場合の運転例を示している。
電源制御装置45は、図8のフローにしたがって、図6に示した運転パターンデータ70ad,70eh,70ijの中から最初の目標エネルギーEaに最も早く到達できる運転パターンデータadを選択し、設定する。電源制御装置45は、タイミングシステム50から加速制御タイミング信号511が入力されると、運転パターンデータadにおける初期加速データ701aを選択し、励磁電流データ更新制御を開始する。初期加速制御が終了すると、タイミングシステム50から出射条件設定タイミング信号512が電源制御装置45に入力される。電源制御装置45は、初段の出射エネルギーEaに対応した出射条件設定データ703aの更新を開始する。この後、出射制御待機タイミング信号513の入力により、電源制御装置45は最終更新値を保持し、出射制御を実施する。出射制御が完了すると、タイミングシステム50から出射条件解除タイミング信号514が電源制御装置45に入力され、電源制御装置45は出射条件解除データ704aの更新を開始する。
出射条件解除制御の終了とともに、シンクロトロン内の蓄積ビーム量を計測する。蓄積ビーム量が次のエネルギーのビーム出射量を満足することを確認した上で、タイミングシステム50は、エネルギー変更制御タイミング信号515を出力する。電源制御装置45は、現在の出射エネルギーEaと次の出射エネルギーEbとを接続するエネルギー変更制御パターンデータ705abを選択し、制御データの更新を開始する。これ以降、最後のエネルギーEdの出射制御を終了するまで、上記した出射条件設定制御、出射制御、出射条件解除制御、エネルギー変更制御を繰り返す。
最後のエネルギーEdの出射条件解除データ704dの更新制御が終了後、タイミングシステム50は、減速制御開始タイミング信号516を出力する。電源制御装置45は、減速制御タイミング信号516の入力に伴い、直前の出射条件解除データ704dに対応した減速制御データ706dを選択し、減速制御データの更新を開始する。なお、本実施例の減速制御では、エネルギーを低い方から高い方にビームを出射する制御をしているため(Ea<Eb<Ec<Ed)、減速制御で最大エネルギー(Einit)まで初期化励磁している。
減速制御の終了に合わせて、全てのエネルギーの出射制御が完了しているかを確認する。全てのエネルギーの出射制御が完了していないため、引き続き、目標エネルギーがEeに更新された状態で運転周期を開始する。電源制御装置45は、前記の通り、目標エネルギーEeに最も早く到達できる運転パターンデータehを選択し、設定する。
電源制御装置45は、加速制御タイミング信号511の入力により、運転パターンデータ70ehにおける初期加速制御データ701eの更新を開始する。初期加速制御が終了後、到達エネルギーと目標エネルギーを比較する。初期加速制御データ701eの到達エネルギーはEeであり、目標エネルギーEeと一致するため、その後は、上記に示した出射制御および減速制御と同じ制御を実施する。運転パターンデータ70ehのエネルギー(Ee、Ef、Eg、Eh)の出射制御が完了後、全てのエネルギーの出射制御が完了していないため、目標エネルギーがEiに更新された状態で運転周期を開始する。前記と同様に、電源制御装置45は、目標エネルギーEiに対応した出射制御データが最も早く現れる運転パターンデータ70ijを選択する。その後は、上記に示した初期加速制御、出射制御および減速制御と同じ制御を実施する。運転パターンデータ70ijのエネルギー(Ei、Ej)の出射制御が完了後、全てのエネルギーの出射制御が完了したため、タイミングシステム50は減速制御終了タイミング信号517を出力し、シンクロトロンの運転周期を終了する。
次に、図9Bの運転例について説明する。図9Bは、1回目の運転周期(運転パターンデータ70adの更新中)において、エネルギーEbでのイオンビームを出射した後、蓄積イオンビームが枯渇した場合の運転例を示しており、エネルギーEbでの照射後に蓄積イオンビームの枯渇を検出したため、エネルギーEbに対応した減速制御データ706bに遷移し、減速制御を実施した後に運転周期を更新し、2回目の運転周期でエネルギーEcからビーム出射を再開した場合の運転例を示している。なお、図9Bの2番目のエネルギーEbでの出射制御を終了するまでは、図9Aの運転例と同様の制御となるため、ここでは、それ以降の制御について説明する。
2番目のエネルギーEbの出射制御の終了時点でシンクロトロン内の蓄積ビーム量を計測する。この計測結果が、ビームの枯渇等により次のビーム出射量を満足することができないと判定されたら、タイミングシステム50は、減速制御開始タイミング信号516を出力する。電源制御装置45は、減速制御開始タイミング信号516の入力に基づき、直前の出射条件解除データ704bに連続して接続できる減速制御データ706bの更新制御を開始する。
減速制御終了タイミング信号517の入力に合わせて、全てのエネルギーの出射制御が完了しているかを確認する。全てのエネルギーの出射制御が完了していないため、引き続き、目標エネルギーがEcに更新された状態で運転周期を開始する。前記と同様に、電源制御装置45は、目標エネルギーEcに対応した出射制御データが最も早く現れる運転パターンデータ70adを選択する。電源制御装置45は、 加速制御タイミング信号511の入力により、運転パターンデータ70adにおける初期加速制御データ701aの更新を開始する。初期加速制御が終了後、到達エネルギーと目標エネルギーを比較する。この際、初期加速制御データ701aの到達エネルギーはEaであり、目標エネルギーはEcであるため、エネルギー変更制御タイミング信号515を出力する。電源制御装置45は、エネルギー変更制御タイミング信号515に基づき、エネルギー変更データ705abを更新し、エネルギー変更制御を実施する。エネルギー変更制御終了後、再び到達エネルギーと目標エネルギーを比較する。エネルギー変更制御後の到達エネルギーはEbであり、目標エネルギーはEcであるため、引き続き、エネルギー変更制御タイミング信号515を出力し、エネルギー変更制御パターンデータ705bcを更新する。このような制御を繰り返すことで、到達エネルギーを目標エネルギーと同じEiまで加速する。その後は、上記に示した出射制御および減速制御と同じ制御を実施する。
図9Cは、2回目の運転周期(運転パターンデータ70ehの更新中)において、エネルギーEfでのイオンビームを出射した後、蓄積イオンビームが枯渇した場合の運転例を示しており、エネルギーEfでの照射後に蓄積イオンビームの枯渇を検出したため、エネルギーEfに対応した減速制御データ706fに遷移し、減速制御を実施した後に運転周期を更新し、3回目の運転周期でエネルギーEgからビーム照射を再開した場合の運転例を示している。
本実施例のような運転制御を実施することで、どのエネルギーでビーム照射を中断したとしても、エネルギー変更制御を行わず減速制御に直接遷移することができ、かつ、運転周期を再開する際に、次のビーム照射の目標エネルギーに到達するためのエネルギー変更制御データの更新回数(エネルギー変更制御の回数)を分割した運転パターンデータに含まれる最大エネルギー数未満に抑えられる。このためビーム照射の伴わないエネルギー変更制御を減少させ、シンクロトロン13の運転効率を高め、線量率を向上することができる。
また、粒子線治療装置を構成する機器に異常が生じた場合や、照射ビームのサイズ、位置等の状態に異常が生じた場合にも、異常発生時の出射エネルギーから減速制御に速やかに(直接)遷移することができる。
なお、本実施例の運転パターンデータ70は、どのエネルギーでの出射制御からも減速制御に直接遷移できるよう全ての出射制御データのそれぞれに対応した減速制御データを運転パターンデータに含める構成としたが、最終段のエネルギー出射制御に対応した減速制御データだけを含める構成としてもよい。その場合でも、運転パターンデータ70は、シンクロトロン13から出射するイオンビームのエネルギー範囲(10種類のエネルギー)を分割して生成したものである結果、ビーム照射を途中で終了してから減速制御に遷移するまでに行うエネルギー変更制御の回数を運転パターンデータに含まれる最大エネルギー数未満に抑えられるため、従来技術に比べ、ビーム照射の伴わないエネルギー変更制御を減少させ、シンクロトロン13の運転効率を向上させることができる。