JP5781421B2 - 粒子線治療システム - Google Patents
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Description
粒子線治療システムは、イオン源で発生したビームを光速近くまで加速するシンクロトロンなどの加速器と、加速器の出射ビームを輸送するビーム輸送系と、患部の位置や形状に合わせてビームを患者に照射する照射装置から構成される。
そこで最近、より高精度な照射方法として、加速器からの細径ビームを電磁石で偏向し患部形状に合わせて走査するスキャニング照射法の市場ニーズが高まっている。
この方法では、シンクロトロンの出射関連機器の運転パラメータを出射中に一定に設定できるため、出射ビームの軌道安定度が高く、スポットスキャニング法に要求される照射ビームの高い位置精度を達成できる。
しかしながら、その方法ではビーム遮断時に広げた安定限界付近に存在する振動振幅の大きなビーム粒子は、次のスポット照射開始時に安定限界を狭めた際に、出射用高周波の強度とは無関係に急激に出射されスパイク状のビーム波形を生じる。そこで、従来は特許文献1,2に記載の対策が考えられた。
この方法では遅延照射やスパイク状の出射ビーム波形の原因となる安定限界付近の振動振幅が大きな粒子は、照射スポット間の時間帯に出射されビーム輸送系の途中で廃棄される。
図1は、本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムの構成を示すシステム構成図である。
なお、本実施例の図1では、安定限界の大きさを高速で制御する専用の高速四極電磁石28と、高速四極電磁石28に励磁電流を供給する電源28Aを別途設けているが、前記四極電磁石22を用いて安定限界の大きさを制御することも可能である。
図2は、本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムにおけるシンクロトロンからの荷電粒子ビームの出射方法の説明図である。
図2(A)は、シンクロトロンで荷電粒子ビームを加速終了後、出射開始前の水平方向の位相空間を示している。図2(B)は、出射開始後の出射中の水平方向の位相空間を示している。図2(C),(D)は後述する。
この出射方法の特長は、出射中に電磁石励磁量が一定で安定領域や出射ブランチが不変なので、出射ビームの位置やサイズが安定であり、スキャニング法に好適な照射ビームが得られることにある。
図3は、本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムに用いる照射装置の構成を示した図であり、図3(A)は正面図で、図3(B)は照射ビームを上流側から見た説明図である。
1つの照射スポットSPの線量が満了すると照射ビームを高速で遮断したのち、照射ビームをOFFした状態で次の照射スポットに移動し、同様に照射を進めていくことにより、スポットスキャニングを行える。
図4は、本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムにおけるスポットスキャニング法の動作を示すタイミングチャートである。
図4の最上部には、制御装置600が出射期間(出射区間)中に用いるタイミング信号である、スポット照射開始と線量満了(出射停止)信号、及び出射用高周波の帯域中心周波数の切替信号を示している。
図4(A)の縦軸は、制御装置600から走査電磁石51の電源500Aに供給される走査指令信号に応じて、電源500Aから走査電磁石51に供給される励磁電流を示している。
図4(B)の縦軸は、制御装置600から出射装置26の電源26Aに供給される周波数制御信号に応じて、電源26Aから出射装置26に供給される出射用高周波の帯域中心周波数を示している。
図4(C)の縦軸は、制御装置600から出射装置26の電源26Aに供給される電力制御信号に応じて、電源26Aから出射装置26に供給される出射用高周波の電力を示している。
図4(D)の縦軸は、制御装置600から高速四極電磁石28の電源28Aに供給される励磁指令信号に応じて、電源28Aから高速四極電磁石28に供給される励磁電流を示している。
図4(E)の縦軸は、シンクロトロン200からビーム輸送系300に出射される出射ビーム電流を示している。
図4(G)の縦軸は、照射装置500から照射される照射ビーム電流のON/OFF状態を示している。照射ビームがONのとき、スポットS1,S2,S3,S4が形成される。
なお、各照射スポット位置に対して必要な走査電磁石励磁電流に静定した時点でスポット照射開始のタイミング信号が発生し、照射装置500のビームモニタ52からの伝送信号(図1で(H)と記載)に基づき線量を監視し、所定線量に到達した時点でスポット線量満了(出射停止)や出射用高周波の帯域中心周波数切替のタイミング信号が発生する。
また、図4(B),(C),(E),(G)において、比較のために、特許文献1に記載の公知技術をスポットスキャニング法に適用した場合の動作を破線で示している。
そして、スポットスキャニング法では、図4(A),(G)に示すように、ビーム走査を停止した状態で各照射スポットS1,S2,S3,S4に所定の線量を照射し、照射ビームをOFFしてから走査電磁石の励磁量を変更して次の照射スポットに移動する。
また、照射装置500への荷電粒子ビームの供給を遮断する期間であるスポット間移動時には、出射装置26への高周波電力の供給を停止して出射装置26に印加する高周波電力をOFFにする。この照射装置500への荷電粒子ビームの供給を遮断する際には、図4(D)に示すように、同時にシンクロトロンに設置した高速四極電磁石28で安定限界の大きさを広げてビーム出射を停止する。
上記の従来技術では、図2(C)において、ビーム遮断時に安定限界を広げた際に、出射されずに、広がった安定領域SAに再捕獲された振動振幅の大きなビーム粒子は、図中の破線の三角形で囲んだ領域BM*の境界付近に存在することになる。また、照射スポット間隔が離れている遠隔スポット照射の場合は、照射スポット間の移動に長い時間を要し、この時間の間に、シンクロトロンの周回ビームが残留ガスとの散乱で振動振幅が増大する。そのため、図中の破線の三角形で囲んだ領域BM*の境界付近の粒子密度は高くなり、しかもそれらのビーム粒子は既に安定限界を超えているため、図2(D)において、次のスポット照射開始時に安定限界を狭めて図2(B)の出射中と同じ面積の安定領域に戻した際、出射用高周波の強度とは無関係に振動振幅の大きなビーム粒子が急激に出射されることになる。このスパイク状の出射ビーム波形は、次のスポット照射開始時に安定限界付近のビーム粒子に共鳴する周波数成分f2(第2の値)を含む出射用高周波を出射期間の最初から供給する上記従来技術(特許文献1)では更に顕著になる。
本実施形態により、スポット照射期間の後半の第2の期間では安定限界の境界付近の荷電粒子ビームと共鳴するため、安定限界の境界付近のビーム粒子を選択的に効率良く出射でき、スポット照射開始時のスパイク状ビーム波形の原因となる安定限界の境界付近の粒子密度を十分に低減できる。同時に、スポット照射開始(出射開始)時には安定限界の内側のビーム粒子を選択的に効率よく出射させるため、たとえ遠隔スポット照射の場合でも、スポット照射開始時のスパイク状ビーム波形の原因となる安定限界の境界付近のビーム粒子の出射を抑制でき、より効果的にスパイク状ビーム波形の抑制を図ることができる。
本実施形態では、スポット照射期間の後半の第2の期間では安定限界の境界付近のビーム粒子が選択的に出射されるため、図2(C)において、スポット照射終了時には安定限界付近の粒子密度が減少して、実質的に周回ビームのコア部分は図中の実線の三角形で囲んだ領域BMに縮小する。その結果、本実施形態では、遠隔スポット照射の場合であっても、周回ビームが残留ガスとの散乱で振動振幅が増大しても、図2(D)に示すように、周回ビームのコア部分の領域BMは次のスポット照射開始時の安定限界の内側に収まる。
以上の効果によって、図4(E)実線、図4(G)実線に示すように、スパイクの無い理想的な出射ビーム波形と照射ビーム波形が本実施形態では得られる。
しかしながら、タイミング信号を用いて帯域中心周波数を切替えることは必須ではなく、スポット照射期間内で変化させる、特に出射開始時はf1(第1の値)に設定し、出射終了時までの間においてf2(第2の値)に設定すれば、その間で帯域中心周波数fがf1(第1の値)からf2(第2の値)まで時間的に連続的に変化したり、直線的に変化しても同様な効果がある。
その場合の出射用高周波の帯域中心周波数の制御方法の例を図5と図6に示す。図5ではスポット照射開始時のf1(第1の値)からスポット線量満了時のf2(第2の値)までの間、帯域中心周波数を連続的に滑らかに変化させている。一方、図6では帯域中心周波数の切替指示タイミングに基づき、切替指示タイミングを受信後に帯域中心周波数をf1からスポット線量満了時のf2まで直線的に変化させている。この他にも、スポット照射開始時のf1から終了時のf2まで直線的に変化させてもよい。
破線で示した従来技術では、安定限界より内側の振動振幅が小さなビーム粒子に共鳴する周波数成分(第1の値f1)と安定限界付近の振動振幅が大きなビーム粒子に共鳴する周波数成分(第2の値f2)を含む出射用高周波を同時に印加するために、高周波電源は高電圧で且つ大電流出力が必要であった。
しかし、本発明では、スポット照射期間の後半の第2の期間では、安定限界の境界付近の荷電粒子ビームと共鳴するため、安定限界の境界付近のビーム粒子を選択的に効率良く出射できる。これにより、スパイク状の出射ビーム波形の原因となる安定限界の境界付近の粒子密度を、小さな高周波電力、すなわち小型の高周波電源で十分に低減可能となる。また、本発明では、第1の値f1と第2の値f2とを同時に印加せずに、スポット照射期間内で高周波電力の帯域中心周波数を変化させているため、印加する電力を大幅に低減でき、高周波電源を必要以上に大型化させる必要がない。
以上の効果で本実施形態では高周波電源回りのコストを低減できる。
図7は、本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムにおける、シンクロトロンの出射制御に関わる部分の制御装置と電源の構成図である。
ここで、線量監視部63で測定した線量が所定値に到達した時点で、スポット線量満了や出射用高周波の帯域中心周波数の切替指示のタイミング信号が生成される。
また、シンクロトロンに設置した六極電磁石の励磁量の制御で、高速四極電磁石と同様に安定限界の大きさを制御することも可能である。
もちろんこれらの場合でも本発明は適用でき、同様の効果が得られる。
図8は、本発明の第2の実施形態による粒子線治療システムの構成を示すシステム構成図である。以下、第1の実施形態との相違点に関して説明する。
その代わりに、ビーム輸送系300には、治療室内の照射装置500への荷電粒子ビームの供給をON/OFFするビーム遮断用電磁石33と、ビーム遮断用電磁石33に励磁電流を供給する電源33Aと、ビーム遮断用電磁石33で除去したビーム成分を廃棄するビームダンプ34が設けられている。
図9において横軸は時間tを示している。
図9(A)(B)(C)(E)(G)の縦軸は、図4(A)(B)(C)(E)(G)の縦軸と同じである。
図9(F)の縦軸は、制御装置600からビーム遮断用電磁石33の電源33Aに供給されるビーム遮断制御信号に応じて、電源33Aからビーム遮断用電磁石33に供給される励磁電流のON/OFF状態を示している。
ここで、前実施形態との相違は、各照射スポットで所定線量が満了したタイミングで照射装置への荷電粒子ビームの供給を遮断する際に、出射装置26に印加する高周波電力をOFFするとともに、図9(F)に示すように、ビーム輸送系300に設置したビーム遮断用電磁石33を高速で励磁して照射装置500へのビーム軌道から外して荷電粒子ビームの輸送を遮断している点である。また、照射装置500に荷電粒子ビームを供給する際には出射装置26に印加する高周波電力をONするとともに、ビーム輸送系300に設置したビーム遮断用電磁石33の励磁を高速で停止して照射装置500へのビーム軌道に合わせ荷電粒子ビームの輸送を開始する点である。
図9(B)の破線で示すように、特許文献2の従来技術では、照射装置に荷電粒子ビームを供給するスポット照射期間で、出射装置に印加する高周波電力の帯域中心周波数を安定限界の内側の荷電粒子ビームと共鳴する値f1(第1の値)に固定している。そのため、安定限界の内側の荷電粒子ビームは振動振幅が大きくなり常に安定限界付近に供給されるため、スポット線量が満了して出射ビームを停止するタイミングで安定限界付近のビーム粒子の密度が高くなっている。その結果、図9(E)の破線に示すように、スポット線量満了直後の遅延出射ビーム量が大きく、その後も振動振幅が大きなビーム粒子は照射スポット間の時間に漏れビームとして出射される。それら遅延照射やスポット照射開始時にスパイク状ビーム波形の原因となる振動振幅が大きなビーム粒子は、ビーム輸送系に設置したビーム遮断電磁石で廃棄されるので、従来技術ではビーム利用効率の低下の問題があった。
本実施形態により、スポット照射期間の後半の第2の期間では安定限界の境界付近の荷電粒子ビームと共鳴するため、安定限界の境界付近のビーム粒子を選択的に効率良く出射でき、安定限界の境界付近の粒子密度を十分に低減できる。したがって、従来技術ではビーム輸送系に設置したビーム遮断電磁石で廃棄する必要のあった遅延照射やスポット照射開始時にスパイク状ビーム波形の原因となる振動振幅が大きなビーム粒子は、本実施形態ではスポット照射期間の後半の第2の期間で出射されて治療照射に有効に利用されるため、ビーム利用効率の低下を抑制することができる。
しかしながら、それは必須ではなく、前実施形態の場合と同様に、スポット照射期間の出射開始時がf1(第1の値)で、出射終了時までの間においてf2(第2の値)に設定されていれば、図5,6に示すようなスポット照射期間の間で帯域中心周波数fがf1(第1の値)からf2(第2の値)まで時間的に連続的に変化しても同様な効果がある。
21…偏向電磁石(シンクロトロン)、
22…収束/発散型四極電磁石(シンクロトロン)、
23…六極電磁石、
24…入射装置、
25…加速空胴、
26…出射装置、
27…出射偏向装置、
28…高速四極電磁石、
31…偏向電磁石(ビーム輸送系)、
32…収束/発散型四極電磁石(ビーム輸送系)、
33…ビーム遮断用電磁石、
34…ビームダンプ、
41…患者、
42…患部、
51…走査電磁石、
52…ビームモニタ、
61…運転データ生成部、
62…タイミング信号生成部、
63…線量監視部、
64…高周波発振器、
65…高周波切替器、
66…帯域信号発生器、
67…乗算器、
68…振幅変調器、
69…高周波電力増幅器、
100…粒子線治療システム、
200…シンクロトロン、
300…ビーム輸送系、
400…治療室、
500…照射装置、
600…制御装置、
25A,26A,28A,33A,500A…電源。
Claims (5)
- 荷電粒子ビームを所定のエネルギーまで加速し、出射装置に高周波電力を印加して発生させた高周波電磁場で安定限界を超えさせて荷電粒子ビームを断続的に複数回に分けて出射するシンクロトロンと、前記シンクロトロンから断続的に出射された荷電粒子ビームを治療室まで導くビーム輸送系と、前記治療室で患者の患部形状に合わせて荷電粒子ビームを断続的に照射する照射装置から構成される粒子線治療システムにおいて、
前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する期間では前記出射装置に印加する高周波電力をONし、前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を遮断する期間では前記出射装置に印加する高周波電力をOFFするとともに、前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する期間内で前記出射装置に印加する高周波電力の帯域中心周波数を変化させる制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する期間の出射開始時において、前記出射装置に印加する高周波電力の帯域中心周波数を前記安定限界の内側の荷電粒子ビームと共鳴する第1の値に設定し、
前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する期間の出射終了時において、前記出射装置に印加する高周波電力の帯域中心周波数を前記安定限界の境界付近の荷電粒子ビームと共鳴する第2の値に設定することを特徴とする粒子線治療システム。 - 請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記制御装置は、
前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する期間の前記出射開始時を含む第1の期間において、前記出射装置に印加する高周波電力の帯域中心周波数を前記第1の値に設定し、
前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する期間の後半の前記出射終了時までの第2の期間において、前記出射装置に印加する高周波電力の帯域中心周波数を前記第2の値に設定することを特徴とする粒子線治療システム。 - 請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記制御装置は、
前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する期間の前記出射開始時と前記出射終了時の間において、前記出射装置に印加する高周波電力の帯域中心周波数を前記第1の値から前記第2の値に連続的に変化させることを特徴とする粒子線治療システム。 - 請求項1〜3のいずれか1項記載の粒子線治療システムにおいて、
前記制御装置は、
前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する際には、前記出射装置に印加する高周波電力をONするとともに、前記シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて前記安定限界を狭めて荷電粒子ビームの出射を開始し、
前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を遮断する際には、前記出射装置に印加する高周波電力をOFFするとともに、前記シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて前記安定限界を広げて荷電粒子ビームの出射を停止することを特徴とする粒子線治療システム。 - 請求項1〜3のいずれか1項記載の粒子線治療システムにおいて、
前記制御装置は、
前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する際には、前記出射装置に印加する高周波電力をONするとともに、前記ビーム輸送系に設置した電磁石の励磁量を変化させて前記照射装置へのビーム軌道に合わせて荷電粒子ビームの輸送を開始し、
前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を遮断する際には前記出射装置に印加する高周波電力をOFFするとともに、前記ビーム輸送系に設置した電磁石の励磁量を変化させて前記照射装置へのビーム軌道から外して荷電粒子ビームの輸送を遮断することを特徴とする粒子線治療システム。
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