JP7359702B2 - 粒子線治療システム、イオンビームの生成方法、および、制御プログラム - Google Patents

粒子線治療システム、イオンビームの生成方法、および、制御プログラム Download PDF

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Description

本発明は、陽子または炭素イオン等の重イオンを加速する加速器と粒子線治療システム、ならびに加速器の運転方法に関する。
粒子線治療や物理実験などで使用する高エネルギーのイオンビームは加速器を用いて生成される。
核子当たりの運動エネルギーが200MeV前後のビームを得る加速器には種類がいくつかある。例えば、サイクロトロンやシンクロトロン、特許文献1に記載されているようなシンクロサイクロトロン、特許文献2に記載されているような可変エネルギー加速器が知られている。
サイクロトロンおよびシンクロサイクロトロンの特徴は静磁場中を周回するビームを高周波電場で加速する点であり、加速されるにつれてビームはその軌道の曲率半径を増し、外側の軌道に移動し、最高エネルギーまで到達した後に取り出される。そのため取り出すビームのエネルギーは基本的には固定される。
一方、シンクロトロンは、ビームを偏向する電磁石の磁場と加速する高周波電場の周波数を時間的に変化させることでビームは一定の軌道を周回する。そのため、設計上の最大エネルギーに到達する前にビームを取り出すことが可能であり、取り出しエネルギーが制御可能である。
特許文献1のシンクロサイクロトロンでは、半径Rの略円形の断面を有する一対の強磁性体のポールが、中心軸を一致させて、正中面を挟んで上下に配置されている。一対のポールは、ギャップによって離隔され、このギャップは、正中面に対して実質的に対称なプロファイルを有するキャビティを形成している。ギャップの高さは、ポールの半径方向において変化している。ギャップの高さは、中心軸ではHcenterであり、中心軸から半径R2までの円形の部分では、半径が大きくなるにつれてHcenterから徐々に増大し、半径R2において最大値Hmaxとなる。半径R2より大きい環状の部分は、半径が大きくなるにつれて、そのギャップの高さが徐々に減少し、ポールの縁におけるギャップの高さは、Hedgeである。このようなギャップ形状のキャビティを備えるシンクロサイクロトロンは、ギャップ内の磁場を最小化する一方で、シンクロサイクロトロンのサイズを最小化することができると特許文献1には開示されている。
また、特許文献2の可変エネルギー加速器は、異なる複数種類のイオンを発生させる複数のイオン源と、磁場を発生させる電磁石と、高周波電場を発生させる高周波空胴と、を備える。イオンの軌道の中心は、加速に伴い偏心している。電磁石が発生させる磁場は、軌道の動径方向外側に低下する磁場分布である。高周波空胴は、入射するイオンの核種に応じた周回周波数に合わせた高周波電場をイオンに印加し、所定エネルギーまでイオンを加速する。このとき高周波空洞からイオンに印加される高周波電場の周波数は、イオンのエネルギーに追従して変化させる。ビーム軌道が一方向に偏心しているため、特許文献2の加速器は、サイクロトロンと同様に磁場中を周回するビームを高周波電場で加速しながらも、所望のエネルギーまで加速されたイオンビームを出射させることができるため、出射されるイオンビームのエネルギーを変化させることができる。
特表2013-541170号公報 特開2019-96405号公報
特許文献1に記載のシンクロサイクロトロンは、主磁場中を周回するビームを高周波電場で加速する類型の加速器である。このようなシンクロサイクロトロンでは、ビームのエネルギー増加に伴いビームの周回周波数が低下していく特性があり、ビームの周回周波数に同調して高周波電場の周波数を変調する必要がある。そのため、低エネルギーのビームを入射してから加速して取り出し、さらに再度ビームを入射するまでが一つの運転周期となる。シンクロサイクロトロンの運転周期は、高周波電場を励起する空胴の共鳴周波数の掃引速度で決められ、一般に数ミリ秒程度となる。この数ミリ秒の運転周期に1回の割合で周回しているビームの全量が取り出される。また、取り出されるビームのエネルギーは、基本的に固定されている。
粒子線治療では、治療計画などで予め定められた照射線量の許容範囲を超過することなく照射対象の腫瘍にビームを照射することが求められる。すると、シンクロサイクロトロンを用いる粒子線治療装置では、シンクロサイクロトロンの一運転周期内で加速・取り出しの可能なビーム量を照射線量の許容範囲に対して十分小さくする必要が有る。よって、一運転周期に加速する電荷量が加速器の性能で決まる上限より小さくせざるを得ず、照射完了に時間がかかる、との課題が有る。
また、従来のサイクロトロンも、取り出しビームのエネルギー変更は不可能である。一方、シンクロトロンは、取り出しビームのエネルギーは可変であるが、現状は軌道の半径は数m以上と大型であり、小型化は困難である、との課題がある。
特許文献2の可変エネルギー加速器は、取り出しビームのエネルギーが可変であるため、治療計画で定められた照射線量に合わせたエネルギーのビームを出射することができる。よって、シンクロサイクロトロンと比較して粒子線治療のビーム照射時間を短縮することができる。また、加速器のサイズも、サイクロトロンやシンクロサイクロトロンと同等であり小型である。そのため、粒子線治療装置の加速器として、粒子線治療のビーム照射時間のさらなる短縮が期待されている。
本発明の目的は、小型で、取り出しビームのエネルギーが変更可能な加速器を用いる粒子線治療システムにおいて、加速器内におけるビームの運動量分散を低減し、ビームの取り出し効率を向上させることにある。
上記目的を達成するために、本発明によれば、イオンを所定のエネルギーに到達するまで加速したイオンビームを出射する加速器と、加速器から出射されたイオンビームを標的に照射する照射装置とを有する粒子線治療システムが提供される。加速器は、イオンを周回させる空間に所定の強度分布の磁場を発生する磁石と、空間にイオンを入射するイオン源と、イオンを加速するために空間の所定の領域に加速用高周波電場を印加する加速電極と、加速電極が発生する加速用高周波電場を制御する制御部とを備える。制御部は、標的に照射すべきイオンビームのエネルギーまでイオンを加速するために必要な加速用高周波電場の印加時間を設定するとともに、エネルギーに応じて、加速用高周波電場の電圧振幅を調節する。
本発明によれば、小型で、取り出しビームのエネルギーが変更可能な加速器内の、ビームの運動量分散を低減できるため、加速器からのビーム取り出し効率を向上させることができ、粒子線治療におけるビーム照射時間の短縮が可能である。
本発明の第1の実施例の加速器の全体概形を示す斜視図。 第1の実施例の加速器の縦断面図。 第1の実施例の加速器の横断面図。 第1の実施例の加速器の制御系を示すブロック図。 第1の実施例の加速器における周回中のビームのエネルギーと周回周波数の関係を示すグラフ。 第1の実施例の加速器における設計軌道形状を示す説明図。 第1の実施例の加速器における周回中のビームエネルギーと設計軌道上の磁場との関係を示すグラフ。 第1の実施例の加速器の高周波加速空洞21の基本モードの電磁場分布と表面電流分布を示す説明図。 第1の実施例の加速器における高周波バケツの概形と、加速ギャップ223を通過する際の粒子の位相と運動量分散を示すグラフ。 第1の実施例の加速器の運転時の各部の動作タイミングを示すダイアグラム。 第1の実施例の粒子線治療システムの制御動作を示すフローチャート。 第3の実施例の粒子線治療システムの全体構成を示すブロック図。
以下に本発明の粒子線治療システムおよび加速器の実施例を、図面を用いて説明する。
<<<第1の実施例>>>
本発明の好適な一実施例である第1の実施例の粒子線治療システムの加速器を図1乃至図11を用いて以下に説明する。
本実施例の加速器は、周波数変調型の可変エネルギー加速器である。この加速器は時間的に一定な磁場を主磁場として持ち、主磁場中を周回する陽子を高周波電場によって加速する円形加速器であり、出射するイオンビームのエネルギーを変更することができる。また、本実施例の加速器1では、加速器1内におけるビームの運動量分散を低減するように制御を行う制御部(40,45)を備える。制御部(40,45)は、標的に照射すべきイオンビームのエネルギーまでイオンを加速するために必要な加速用高周波電場の印加時間を設定するとともに、照射すべきエネルギーに応じて、加速用高周波電場の電圧振幅を調節する。これにより、ビームの運動量分散を低減し、加速器1からのビームの取り出し効率を向上させる。加速器1の外観を図1に、その縦断面図を図2に、横断面図を図3に示す。また、制御部の構成を図4に示す。
<<加速器1の構成>>
図1に示すように、加速器1は、上下に分割可能な電磁石11を有する。電磁石11の内部には、分割接続面を挟んで対称なキャビティ(空間)11aが形成されている。電磁石11は、キャビティ11a内の加速・周回中のビームが通過する領域(以下、ビーム通過領域20と呼ぶ)内に主磁場を励起する。電磁石11のキャビティ11a内は、図示を省略した真空ポンプによって真空引きされている。
電磁石11には、外部とビーム通過領域20とを接続する貫通口が図1~図3に示すように複数設けられている。例えば、加速されたビームを取り出す取り出しビーム用貫通口111、電磁石11内に配置されたコイル導体を外部に引き出すための引き出し用の貫通口112,113、高周波電力入力用貫通口114等の各種貫通口が上下の分割接続面の面上に図3のように設けられている。
高周波電力入力用貫通口114を通じて、キャビティ11a内に高周波加速空胴(加速電極)21が挿入されている。高周波加速空胴21は、キャビティ11a内のイオンを加速してイオンビームとするための加速用電場Eを形成する。高周波加速空胴21は、後述するように、加速用のディー電極221(図3参照)と加速用電場の周波数を変調するための回転式可変容量キャパシタ(変調部)212とを含む。
図1のように、電磁石11の上部の中心からずれた位置に、水素イオンを供給するためのイオン源12が設置されている。なお、図2ではイオン源12の図示を省略している。また、イオン源12の搭載位置には、電磁石11にビーム入射用貫通口115(図1参照)が設けられ、キャビティ11a内部には入射部130(図2および図3参照)が備えられている。イオン源12の出射するイオンは、ビーム入射用貫通孔115および入射部130を通して、キャビティ11a内に入射する。イオンをビーム通過領域20へ入射させるためには、電力が必要であり、入射部130には、その電力が、貫通口115を通じて外部から供給されている。
次に、加速器1の内部構造について説明する。図2は、電磁石11の分割接続面を上から見たときの様子を示す断面図である。なお、図2では、内部構造の理解を容易にするために断面ではない部分についてもハッチングを付している。
図1に示すように、電磁石11の上下部それぞれは、円筒状のリターンヨーク121と天板122を有しており、その内部側には、図2に示すように、円柱状の磁極123を有している。上下対向した磁極123によって挟まれる円筒状の空間(キャビティ11a)内に、上述のビーム通過領域20がある。上下の磁極123が互いに対向している面を磁極面123aと定義する。磁極面123aに挟まれ、上下の磁極面123aから互いに等距離にある面を軌道面と呼ぶ。
磁極123とリターンヨーク121の間に形成される凹部には、円環状のコイル13が磁極123の外周側の壁に沿って設置されている。コイル13に電流を流すことによって上下対向する磁極123が磁化し、ビーム通過領域20に後述する所定の強度分布で磁場が励起される。
高周波加速空胴21は、λ/4型の共振モードによってイオンを加速するための加速用高周波電場を加速ギャップ223に励起する。高周波加速空胴21のうち、特にキャビティ11a内に固定的に配置された扇型の部分をディー電極221と定義する。ディー電極221は、ビーム通過領域20の一部領域を覆う一対の扇型の板状電極を、ビーム通過領域20を挟んで上下に対向配置した形状である。ディー電極221の扇形の板状電極は、入射部130の近傍の点を頂点とし、所定の広がり角の扇形である。ディー電極221の扇形の板状電極の円弧状の周縁部は、キャビティ11aの外周に沿う形状である。貫通高周波加速空洞21は、ディー電極22の円弧状の周縁部から高周波電力入力用貫通口114を貫通するように電磁石11の外側に引き出されている。
電磁石11の外部に引き出された高周波加速空洞21には、回転式可変容量キャパシタ(変調部)212が取り付けられている。回転式可変容量キャパシタ212は、図1のように回転軸213を有し、回転軸213にはサーボモータ214(図4参照)が取り付けられている。サーボモータ214が回転することで回転軸213が回転し、回転軸213の回転角が時間的に変化することで静電容量を時間的に変調させ、高周波加速空胴21の基本モードの共振周波数を変化させる。これにより、高周波加速空洞21が発生する加速用高周波電場の周波数を変化させることできる。また、高周波加速空胴21には、高周波電力を入力するための入力カプラ211が備えられている。
ディー電極221の広がり角方向の両端の直線状の端部には、その端面に対して対向するように、接地電極222が配置されている。ディー電極221と接地電極222とによって挟まれる領域が、加速ギャップ223である。加速ギャップ223は、入射部130の近傍において最も狭く、ディー電極221の円弧状の周縁部(キャビティ11aの外周部)に近づくほど大きくなるように設定されている。高周波加速空胴21が、加速ギャップ223に高周波電場を励起することにより、入射部130から入射したイオンは加速され、キャビティ11aの軌道面を周回する。
加速ギャップ223の高周波電場の周波数は、ビームの周回周波数に同期するために、ビームの周回周波数の整数倍となるように、回転軸213の回転数が設定される。本実施例の加速器1では、高周波電場の周波数は、ビームの周回周波数の1倍としている。
磁極123の磁極面123aには、磁場の微調整用に環状のトリムコイル33が複数系統設けられている。最大径のトリムコイル33最大径のトリムコイル33の中心は、電磁石11の中心に一致にするように配置され、径が小さくなるにつれ、トリムコイル33の中心が、入射部130に向かって徐々に近づくように配置されている。すなわち、トリムコイル33の中心は、偏心している。トリムコイル33は、貫通口112,113を通じて外部の電源に接続されている。各系統の励磁電流を個別に調整することで、後述の主磁場分布に近づけ、安定なベータトロン振動を実現することができる。なお、運転前にトリムコイル電流が調整される。
このような加速器1では、イオン源12で生成されたイオンは、入射部130の引き出し電極に印加された電圧によって低エネルギーのイオンの状態でビーム通過領域20に引き出される。入射されたイオンは、周回しながら加速ギャップ223を通過する毎に、高周波加速空胴21によって励起されている高周波電場によって加速され、イオンビームとなる。
また、図2および図3に示すように、加速器1内で加速したビームを外に取り出すために、四極磁場や六極以上の多極磁場を励磁する二か所の付加磁場発生用シム(キック部)311と、攪乱用高周波電場をビームに印加するための擾乱用電極(擾乱部)313が、磁極面123aの一部に、磁極面123aに対して電気的に絶縁された状態で設置されている。また、磁極面123aの端部の一か所に、取り出し用セプタム電磁石312の入射部が設置されている。
擾乱用電極313は、微小な振幅の高周波(RF)電場を攪乱用高周波電場としてビームに印加することにより、周回中のビームの粒子のベータトロン振動振幅を増大させ、付加磁場発生用シム311が励起するキック磁場の作用が及ぶ領域を通過させる。付加磁場発生用シム311のキック磁場は、粒子を設計軌道の外側にビームをキックし、設計軌道から外れさせる。ビームは、取り出し用セプタム電磁石312が形成する磁場が及ぶ範囲に到達し、取り出し軌道322上を通り、加速器1の取り出しビーム用貫通孔111から外部に取り出される。付加磁場発生用シム311のキック磁場は、ビーム通過領域20中を周回するイオンビームに対して安定領域を制限し、安定領域外に出た粒子を取り出し用セプタム電磁石312に導入する作用をする。本実施例の加速器1では、付加磁場発生用シム311は一対であり、それぞれ逆極性の磁場を磁極123が形成する主磁場に対して重畳励磁する構成である。
このように、擾乱用電極313が発生する攪乱用高周波電場をオン/オフすることにより、それに同期してビームの取り出しをオン/オフ制御することができる。擾乱用電極313や付加磁場発生用シム311の動作の詳細については後述する。
加速器1では、軌道面において主磁場は面内成分がほぼ0となるように、上下の磁極123、コイル13、トリムコイル33、付加磁場発生用シム311、取り出し用セプタム電磁石312、擾乱用電極313の形状と配置が設計されており、軌道面に対して面対称の配置・電流分布となっている。また、磁極123、ディー電極221、コイル13、トリムコイル33、擾乱用電極313の形状は、図3に示すように、加速器1を上面側から見たときに、貫通口114の中心部と貫通口112の中心部を結ぶ線分に対して左右対称の形状となっている。
加速器1の制御部を図4を用いて説明する。高周波加速空胴21の回転式可変容量キャパシタ212の回転軸213を回転させるサーボモータ214には、モーター制御装置41接続されている。また、高周波加速空胴21の入力カプラ211には、高周波電力を生成する低レベル高周波発生装置42およびアンプ43が接続されている。また、攪乱用電極313には、高周波電源46が接続され、この高周波電源46には、制御する擾乱高周波制御装置47が接続されている。低レベル高周波発生装置、モータ制御装置41および攪乱高周波制御装置47には、これらを制御する全体制御装置40が接続されている。
本実施例では、全体制御装置40には、電圧振幅計算装置45と治療計画データベース60が接続されている。治療計画データベース60には、複数の照射位置と、照射位置ごとに照射すべき粒子線のエネルギーとその線量が格納されている。電圧振幅計算装置45は、治療計画データベース60に予め定められた照射すべきビームのエネルギーを読み込んで、高周波加速空洞21が加速ギャップ223に励起する高周波電場の振幅を算出する。全体制御装置40は、電圧振幅計算装置45が算出した振幅の高周波電場を加速ギャップ223に励起されるように、低レベル高周波発生装置42の出力を制御する。このように加速ギャップ223の高周波電場の振幅を照射すべきビームの照射量に応じて設定することにより、加速器1内を周回するビームの運動量分散を低減させることができるため、加速器1からのビームの取り出し効率を向上させることができる。高周波電場の振幅の算出方法については、後で詳しく説明する。
<<加速器1内のビーム加速と取り出し>>
次に、本加速器1中を周回するビームの軌道および運動について述べる。
ビームは、ビーム通過領域20中を、入射部130を中心として周回しながら加速ギャップ223を通過するたびに加速される。本実施例の加速器1における取り出し可能なビームの運動エネルギーは最小70MeV、最大235MeVである。運動エネルギーが大きいほどビームの周回周波数は小さくなり、入射直後の運動エネルギービームでは76MHz、235MeVに達したビームは59MHzでビーム通過領域20中を周回する。これらのエネルギーと周回周波数の関係は図5のようになる。
加速器1において電磁石11およびトリムコイル33によって形成される主磁場は、ビームの軌道に沿って一様、かつエネルギーが高くなるにつれ磁場が低下していくような分布を作る。つまり、径方向外側の磁場が低下するような磁場を形成する。このような磁場下においては、ビームを構成するイオン(粒子)は、ビームの軌道面内の動径方向と軌道面に対して垂直な方向のそれぞれに対して安定にベータトロン振動する。主磁場の分布について、後で詳しく説明する。
各エネルギーの軌道を図6に示す。図6のように、周回軌道は、最も外側に、最大エネルギー252MeVの軌道に対応した半径0.497mの円軌道が存在し、そこから、0MeVまで磁気剛性率で51分割した都合51本の円軌道が存在している。点線は、各軌道の同一の周回位相を結んだ線であり、等周回位相線と呼ぶ。
図6に示すように、本実施例の加速器1では、ビームの加速に従ってビームの軌道中心(設計軌道)が、軌道面内で一方向(図5のX=0におけるY方向)に移動する。設計軌道が一方向に移動する結果、異なる運動エネルギーの軌道が互いに近接している箇所(周回軌道が集約する領域:集約領域)と互いに遠隔している領域(周回軌道が離散する領域:離散領域)が形成されている。すなわち、ビームの設計軌道が偏心している。
集約領域において、設計軌道同士が最も近接している設計軌道の各点(集約点)を結ぶ線分は、すべての設計軌道に対して直交する線分となる。また、離散領域において、設計軌道同士が最も遠隔している設計軌道の各点を結ぶ線分は、すべての設計軌道に直交する線分となる。これら二つの線分は、同一直線上(図6ではX=0におけるY方向)に存在する。この直線を対称軸と定義すると、設計軌道の形状は、対称軸を通り、軌道面に垂直な面に対して面対称となる。
図6に示す等周回位相線は、集約領域から周回位相π/20ごとにプロットしている。ディー電極221とディー電極221に対向する接地電極222との間に形成される加速ギャップ223は集約点から見て±90度周回した等周回位相線に沿って設置される。
上記のような軌道構成と軌道周辺での安定な振動を生じさせるために、本実施例の加速器1においては、設計軌道の偏向半径方向外側に行くにつれ磁場の大きさが小さくなる主磁場分布としている。また、主磁場は、設計軌道に沿って一定である。よって、設計軌道は円形となり、ビームエネルギーが高まるにつれてその軌道半径・周回時間は増大する。
このような体系では、設計軌道から半径方向に微小にずれた粒子は、設計軌道に戻すような復元力を受けると同時に、軌道面に対して鉛直な方向にずれた粒子も軌道面に戻す方向に主磁場から復元力を受ける。すなわち、ビームのエネルギーに対して適切に磁場を小さくしていけば、常に設計軌道からずれた粒子は設計軌道に戻そうとする向きに復元力が働き、設計軌道の近傍を振動(ベータトロン振動)することになる。これにより、主磁場によって、安定にビームを周回・加速させることが可能である。各エネルギーのビームにおける主磁場の値を図7に示した。主磁場は、入射部130で最大の5Tであり、最外周では4.91Tまで低下している。
上述の主磁場分布は、電磁石11のコイル13とそれを補助するトリムコイル33に所定の励磁電流を流すことにより、磁極123が磁化されることで、励起される。イオンの入射部130で磁場を大きくし、外周に向かって磁場を小さくする分布を形成するために、磁極123の磁極面123aが対向する距離(ギャップすなわちキャビティ11aの高さ)は、入射部130において最も小さく、外周に向かって大きくなるように磁極面123aの形状が定められている。さらに、磁極面123の形状は、ギャップ中心を通る平面(軌道面)に対して面対称の形状であり、軌道面上においては軌道面に垂直な方向の磁場成分のみを持つ。さらに、磁場分布の微調整を磁極面に設置されたトリムコイル33に印加する電流を調整することで行い、所定の主磁場分布を励起している。
上述のように高周波加速空胴21は、加速ギャップ223に高周波電場を励起する。上述したように高周波加速空洞21には、図8に示すように、低レベル高周波発生装置42およびアンプ43が入力カプラ211(図1参照)を通じて接続されている。高周波加速空洞21には、低レベル高周波発生装置42が発生し、アンプ43が増幅した高周波電力が導入され、これにより高周波加速空洞21のディー電極221と接地電極222の間の加速ギャップ223に高周波電場が励起される。一般に、ディー電極221が励起する電磁場は、電極形状によって定まる特定の共振周波数および空間分布の電磁場となる。特定の周波数と空間分布を持つ電磁場を固有モードと称するが、固有モードには複数種類あり、加速のために励起するモードを基本モードと称する。基本モードの電磁場分布と表面電流分布を図8に示す。図8には太線で高周波加速空洞(共振器)21の外形、太矢印にて高周波電場(E)の分布、点線矢印で磁場(B)の分布、実線矢印で共振器表面の電流(J)の分布の概形を示している。基本モードでは、加速ギャップ223のいたるところでディー電極221から接地電極221に対して同じ向きの電場(E)が生じる。
本発明の加速器1においては、ビームの周回に同期して高周波電場を励起するために、電場の周波数を周回中のビームのエネルギーに対応して変調させる(図5)。本発明に用いられるような共振モードを用いた高周波加速空胴21では、共振の幅よりも広い範囲で高周波の周波数を掃引する必要がある。そのために高周波加速空胴21の共振周波数も変更する必要が有る。その制御は高周波加速空胴21の端部に設置された回転式可変容量キャパシタ212の静電容量を変化せることで行う。回転式可変容量キャパシタ212の回転軸213には、導体板が接続されており、回転軸213を回転させることにより、導体板と外部導体との間に生じる静電容量を回転軸213の回転角によって制御することができる。すなわち、ビームの加速に伴い回転軸213の回転角を変化させることにより、高周波加速空胴21の共振周波数を変更することができる。
次いで、本実施例の加速器1のビーム入射から取り出しまでのビームの挙動をさらに説明する。
まずイオン源12から低エネルギーのイオンが出力され、ビーム入射用貫通口115および入射部130を介してビーム通過領域20にビームが導かれる。
ビーム通過領域20に入射されたビームは、加速ギャップ223を通過するたびに高周波電場による加速を受け、そのエネルギーが増大するとともに、軌道の回転半径を増加させていく。その後ビームは高周波電場による進行方向安定性を確保しながら加速される。
図9に、加速ギャップ223の通過時の粒子の位相と、その粒子の運動量の分散の周回ごとの変化を示す。図9において、横軸は、加速ギャップ223の通過時の粒子の位相を示し、縦軸は、その粒子の運動量pの基準粒子の運動量に対する分散Δp/pを示す。上述したように加速ギャップ223に励起する高周波電場の周波数は、ビームの周回周波数のちょうど整数倍の比で同期するように設定されている。本実施例では、粒子が、高周波電場が最大となる時刻に加速ギャップ223を通過するのではなく、時間的に高周波電場が減少している所定の位相で、粒子が加速ギャップ223を通過するように設定する。そのため、高周波電場の所定の位相で加速ギャップ223を通過して加速された粒子は、次のターンもほぼ同じ位相で加速ギャップ223を通過し加速される。一方、高周波電場の所定の位相よりも早い位相で、加速ギャップ223を通過して加速された粒子は、所定の位相で加速ギャップ223を通過して加速された粒子よりも、その加速量が大きいため、次のターンでは、前のターンよりも遅れた位相で加速ギャップ223を通過し、加速を受ける。また逆に、所定の位相より遅い位相で加速ギャップ223を通過し加速された粒子は、所定の位相で加速ギャップ223を通過して加速された粒子よりも、その加速量が小さいため、次のターンでは、前のターンよりも進んだ位相で加速ギャップを通過し、加速を受ける。このように、所定の位相からずれたタイミングの加速ギャップ223を通過する粒子は、所定の位相に戻る方向に加速作用が働き、この作用によって、図9に示した運動量分散Δpと位相からなる位相平面(進行方向)内において安定に振動する。この振動をシンクロトロン振動と呼ぶ。すなわち、加速中の粒子はシンクロトロン振動をしながら、徐々に加速され、所定のエネルギーに達する。安定なシンクトロン振動をする間、個々の粒子は、位相平面上に高周波バケツ710(図9)と呼ばれる安定領域内で回転運動をする。
この高周波バケツの運動量の分散(Δp/p)方向の幅は、高周波加速空胴21に印加する電圧振幅の平方根に比例すること、および、高周波バケツ710の面積は、単位時間当たりのビームのエネルギー増加(加速速度)に対して単調減少することが知られている。すなわち、回転式可変容量キャパシタ212の回転軸213の回転速度によって決まる運転周期(高周波加速空洞12の高周波電場Eの周波数)下では、ビームの加速速度は、自然と決まるため、高周波加速空胴21に印加する高周波電力の電圧振幅が、ある電圧振幅以下では高周波バケツ710の面積が0となり、安定なシンクロトロン振動を実現できない。ここで、高周波バケツ710の面積が初めて0を超える高周波電力の電圧振幅を臨界電圧Vcと呼ぶことにする。臨界電圧Vcは、加速中のビームエネルギーに対して単調増加となる。逆に、一定の電圧振幅になるように高周波加速空胴21に対して高周波電力を入力したとき、ビームの加速に伴い、高周波バケツ710の面積は徐々に小さくなる。高周波バケツ710の面積が徐々に小さくなる状況下においては加速中のビームの運動量分散も小さくなる。
全体制御装置40は、所定の取り出しビームを目標のエネルギーで加速器1から取り出すために、高周波加速空胴21に印加されている高周波電場の振幅を、徐々に低くし、ビームが目標エネルギーに達したところで高周波電場の振幅が0となるように、低レベル高周波発生装置42とアンプ43の出力を制御する。これにより、ビームは、目標エネルギーで安定に加速器1内を周回する。
この状態で、擾乱用電極313に対して、ビームのベータトロン振動の周波数に一致する高周波電圧を印加すると、ビームは、進行方向の位置、すなわち擾乱用電極313を通過する時刻に依存する擾乱を受ける。特定の粒子に着目すると、擾乱用電場と周回のベータトロン振動の周波数が一致しているため、両者は共鳴し、ある粒子のベータトロン振動振幅が増大する。その粒子のベータトロン振動振幅が増大し続けると、設計軌道の外側に設置された付加磁場発生用シム311が励起するキック磁場の作用が及ぶ領域を通過する。これにより、キック磁場の作用を受けて、急激にベータトロン振動が発散し、設計軌道から見て外側に、ビームが変位する。その結果、ビームは、取り出し用セプタム電磁石312が形成する磁場が及ぶ範囲に到達し、取り出し軌道322上を通り、加速器1の取り出しビーム用貫通孔111から外部に取り出される。
上述のようにビームが、加速器1内で目標エネルギーに達してから加速器1から取り出されるまでの間、ビームを構成する個々の粒子は、付加磁場発生用シム311が形成する四極磁場および六極以上の多極磁場によって、ビームの水平方向の位置と傾きで定まる位相空間上において、安定に周回できる領域と不安定に軌道ずれが増大し続ける領域とに分けられた状態で周回する。この安定領域と不安定領域の境界をセパラトリクスと称する。
別の表現で説明すると、加速器1では、セパラトリクスの内側に存在する粒子は、安定にベータトロン振動を続けるが、外にいる粒子は、付加磁場発生用シム311によるキック作用が周回ごとに蓄積し、設計軌道に対して水平方向に大きな変位を生じることになる。水平方向に大きな変位を生じた粒子は、擾乱用電極313による擾乱用電場と、あらかじめ設置された取り出し軌道322上の取り出し用セプタム電磁石312によって形成される磁場とによって取り出し軌道322上を通り、加速器1外に取り出される。
また、擾乱用電極313に印加される電場が切られるとビームのベータトロン振動振幅の増大が停止し、安定領域内でビームが周回するため、ビームの取り出しを停止することができる。
上記ビームの取り出しのプロセスにおいて、周回中のビームの運動量分散Δpを抑制することができれば、ビームの空間的な広がりを抑えることができ、セプタム電磁石312などに衝突して失われるビームの量を減らすことができ、加速器1からのビームの取り出し効率を向上させることができる。そのため、本実施例では、高周波バケツ710の面積が、ビームの加速終了時点でなるべく小さくなるようにし、周回中のビームの運動量分散Δpを抑制するため、加速ギャップ223における高周波電場の振幅を制御する。
高周波バケツ710の面積の収縮と、ビームの運動量分散Δpの関係についてさらに説明する。加速器1においては、高周波加速空胴21が発生する加速電場の減衰は、高周波加速空胴21の共振のQ値に基づいてある程度の時間がかかる。典型的にはQ値は3000程度であり、高周波加速空胴21への電力入力を停止した時刻から3000周期程度の時間をかけて高周波電場の電圧振幅が小さくなり、高周波バケツ710が消失する。この高周波電場の振幅の減衰中には、高周波バケツ710の収縮に伴い、高周波バケツ710から粒子が徐々にこぼれていく(外れていく)ため、高周波バケツ710から粒子が外れる時刻が異なれば、粒子の到達エネルギーが異なるため、各粒子の到達エネルギーがばらつく。よって、高周波バケツ710の消失に時間をかけるほど、その時間に比例してその後の周回ビームの運動量分散Δpが広がる。
そこで、本実施例では、高周波加速空胴21の高周波電圧の振幅を、ビームを加速中においては高周波バケツ710を形成でき、かつ、加速できるビームの電荷量が充分確保できるような振幅であって、高周波バケツ710をサイズがなるべく小さく維持できるような振幅に設定する。
しかしながら、高周波加速空胴21の高周波電場の電圧振幅を過少にすると、ビームの加速途中で高周波バケツ710が消失し、ビームを目的のエネルギーまで加速できないことも起こり得る。たとえば、70MeVまで粒子を加速する場合には、それに最適な高周波電場の電圧振幅の値が存在し、その高周波電場の電圧振幅によって235MeVまで加速しようとしても、加速途中で高周波バケツ710が消失し、235MeVまで加速できない。すなわち、目標とするビームの到達エネルギーに応じて、取り出し効率あるいは照射時間の観点で、最適な高周波電場の電圧振幅が存在する。
そこで、本実施例では、電圧振幅計算装置45が、治療計画により定められたビームのエネルギーに応じて、最適な高周波電場の電圧の振幅を算出する。全体制御装置40は、電圧振幅計算装置が算出した高周波電場の電圧振幅の高周波を高周波加速空胴21が加速ギャップ223に励起するように、低レベル高周波発生装置42およびアンプ43を制御する。これにより、ビームの運動量分散Δpを抑制し、セプタム電磁石312などに衝突して失われるビームの量を減らすことにより、加速器1からビームを取り出す際の取り出し効率を向上させる。結果的に、粒子線治療におけるビームの照射時間の短縮を図る。
上述のような原理によってビームを加速し、あるひとつのエネルギーのビームを加速器1外に取り出すときの各機器の制御動作を、図10のダイアグラムと図11のフローチャートを用いて説明する。
図10のダイアグラムの縦軸は、上から順に、回転式可変容量キャパシタ212の回転軸213の回転角、高周波加速空胴21の共振周波数、高周波加速空胴21に入力する高周波電力の周波数、加速ギャップ223における高周波電場の電圧振幅、イオン源12が出力するビーム電流波形、擾乱用電極313に入力される擾乱用高周波電場の振幅、加速器1内のビームの水平エミッタンス(ビームサイズ)、加速器1から出力されるビーム電流波形を示している。図10に示すダイアグラムの横軸はすべて時間である。
図11のフローは、全体制御装置40および電圧振幅計算装置45の動作を示す。全体制御装置40および電圧振幅計算装置45は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、CPUが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、図11のフローの動作をソフトウエアにより実現する。なお、全体制御装置40および電圧振幅計算装置45は、その一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて全体制御装置40および電圧振幅計算装置45の一部または全部を構成し、図11のフローの動作を実現するように回路設計を行えばよい。
ユーザからビームの照射開始を指示されたならば、図11のステップS111において、電圧振幅計算装置45は、治療計画データベース60から照射すべきビームのエネルギーを読み込んで、当該エネルギーまでビームを加速器1内で加速する際に運動量分散Δpが最も小さくなる最適な加速用高周波電場の電圧振幅Eを算出する。具体的には、電圧振幅計算装置45は、予め求めておいたビームのエネルギーと振幅Eとの関係を定めたテーブルや、数式に基づいて、読み込んだビームのエネルギーに最適な加速用高周波電場の電圧振幅E1を算出する。なお、ここでは、運動量分散Δpが最も小さくなる最適な電圧振幅Eを算出しているが、必ずしも運動量分散Δpは最小でなくてもよく、予め定めた値以下の運動量分散Δpとなる電圧振幅を最適な電圧振幅Eとして設定してもよい。
つぎに、ステップS112において、全体制御装置40は、照射すべきビームのエネルギーまでビームを加速するために必要な高周波電場の印加時間Tを算出する。また、全体制御装置40は、電圧振幅Eを低下させ始めるタイミングTdについても算出する。具体的には、全体制御装置40は、ビームのエネルギーごとに予め求めておいたそのエネルギーまで加速するのに要する高周波電場の印加時間Tとの関係を定めたテーブルや数式に基づいて、読み込んだビームのエネルギーまで加速するのに必要な高周波電場の印加時間T1を算出する。また、全体制御装置40は、ビームのエネルギーごとに予め求めておいた電圧低下タイミングTdの関係を定めたテーブルや数式に基づいて、読み込んだビームのエネルギーに対応する低下開始タイミングT1dを算出する。この低下開始タイミングTdは、そのタイミングで高周波加速空胴21への高周波電力の電圧振幅を低下または停止させた場合、加速ギャップ223の加速用高周波電場が0になる時点で、ビームが目標エネルギーに到達すると見込まれるタイミングである。
ステップS113において、全体制御装置40は、モータ制御装置41に指示し、図10に示すように、サーボモータ214を動作させ、回転式可変容量キャパシタ212の回転軸213を所定の角速度で回転させる。その回転軸213の回転角によって、図10のように高周波加速空胴21の基本モードの共振周波数f1が周期的に変化する。この時間では、まだ加速用の高周波電力は、高周波加速空洞21には入力されていない。
ステップS114において、全体制御装置40は、図10に示すように、運転周期の開始直後から、イオン源12から所定時間ビームを出力させる。これにより、加速器1の入射部130から加速器1の内部に、イオンビームが所定時間入射する。
ステップS115において、イオン源12の入射直後から全体制御装置40は、ステップS111で電圧振幅計算装置45が算出した電圧振幅E1で、かつ、回転軸213の回転角によって変化する高周波加速空胴21の基本モードの共振周波数f1に同期した周波数f2の高周波電力を、高周波加速空洞21に低レベル高周波発生装置42およびアンプ43から入力させる。これにより、加速器1の安定なシンクロトロン振動が可能な範囲に入射したビームは、加速ギャップ223を通過することにより高周波電場Eにより加速されながら加速器1の内部を周回する。これに対し、シンクロトロン振動が安定しない粒子は、加速されずに加速器1内部の構造物に衝突し、失われる。共振周波数が低下するにつれてビームは加速されていき、所定の取り出しエネルギー近くまで加速される。
ステップS116において、高周波電力の入力開始からステップS112で定めた時刻Tdに達したならば、高周波電圧の振幅Eを停止させる。高周波加速空胴21が発生する加速用高周波電場は、高周波加速空胴21の共振のQ値に基づいて徐々に電圧振幅が小さくなり(漸減)、上述の高周波バケツ710が消失していく。
ステップS117において、全体制御装置40は、この時刻Tdから擾乱高周波の立ち上げを開始するように攪乱高周波制御装置47に指示する。これにより、攪乱高周波制御装置47は、高周波電源46を動作させ、攪乱用電極313に高周波電力を出力する。高周波電源46から擾乱用電極313に出力される高周波電力の電圧値は、擾乱高周波制御装置47によって制御されており、その指定値は取り出しビームエネルギーと取り出しビームの出力電流から一意に定まる値として治療計画データベース60によって定められ、全体制御装置40より指示される。攪乱用電極313は、攪乱用高周波電場を発生し、加速器1を周回しているビームは、この電場により擾乱を受けて、図10のように水平方向のエミッタンスが増大する。
ステップS118において、ステップS112で定めた印加時間Tが経過した時点で加速用高周波電場の電圧振幅がゼロになる。加速用高周波電場の電圧振幅が十分小さくなった時点で、加速器1内のビームは所定の取り出しエネルギーに達している。このとき、運動量分散Δpが最も小さくなる最適な加速用高周波電力の電圧振幅Eで加速しているため、ビームの運動量分散Δpは抑制されている。
同時に、ビームの水平エミッタンス(ビームサイズ)は、攪乱用電極313の擾乱高周波電場からの作用で増大しており、付加磁場発生用シム311が励起するキック磁場の作用が及ぶ領域を通過し、取り出し用セプタム電磁石312が形成する磁場が及ぶ範囲に到達し、取り出し軌道322上を通り、加速器1の取り出しビーム用貫通孔111から外部に取り出される。ビームの運動量分散Δpは抑制されているため、セプタム電磁石312などに衝突して失われるビームの量を低減することができ、高効率で加速器1からビームを取り出す際の取り出すことができる。
ステップS119において、全体制御装置40は、ビームを取り出す時間が治療計画データベース60により予め定められた時間を経過するまで、攪乱用電極313に擾乱高周波電力の印加を継続する。その間、攪乱用電極313の攪乱用高周波電場の作用により、加速器1からのビームの取り出しが継続される。ビーム取り出し時間は、周回中の全電荷が加速器1からすべて取り出されるか、取り出したビームが、治療計画で定められた所定の照射線量に到達する時間に設定されている。本実施例では、高効率で加速器1からビームを取り出す際の取り出すことができるため、ビーム取り出し時間を従来よりも短く設定することができる。
この間、高周波加速空胴21に付随のサーボモータ214は回転を続け、共振周波数は変動を続けるが、高周波加速空胴21には加速用高周波が入力されていないため、ビームに対する影響はほとんど生じない。よってビームは一定のエネルギーで周回しながら、印加されている擾乱高周波によって順次取り出されていく。
ビーム取り出し時間が経過したならば、全体制御装置40は、ステップS120に進み、攪乱用電極313への擾乱高周波電力の印加を停止する。擾乱高周波の強度によってではあるが、擾乱高周波をオン/オフすることにより、ビームのオン/オフの制御が可能である。また、図10に示すように、運転周期よりも長い期間ビームを取り出すことも可能である。なお、ここでいう運転周期とは、共振周波数が最大となる時刻から次に最大となる時刻までの期間である。
照射が終了すると、ステップS111に戻り、電圧振幅計算装置45は、次に取り出すべきビームのエネルギーを治療計画データベースから読み込み、加速用高周波電場の振幅Eが算出される。ステップS112以降が上述のフローと同様に行われる。図10に示した例では、後半の運転周期では、前の運転周期よりも大きなエネルギーのビームを照射するため、高周波電場の印加時間T2を前の運転周期の加速用高周波電場の印加時間T1より長く設定して、大きなエネルギーまでビームを加速している。また、前述のとおり、加速後の周回ビームの運動量分散Δpを小さく抑制するために、加速用高周波電場の振幅E2は、前の運転周期の加速用高周波電場の振幅E1よりも大きな最適値に定められている。
これにより高周波バケツを不要に大きくすることを避け、加速器1内を周回するビームの運動量分散Δpを抑制できる。さらに、取り出し効率の増加や照射時間の短縮が実現できる。これにより、治療計画で設定されたエネルギーのビームを、設定された線量で取り出し可能な加速器1を実現することができる。
なお、上述の実施例では、高周波加速空胴21の発生する加速用高周波電場の電圧振幅の大きさを設定することにより、ビームの運動量分散Δpを抑制する構成について説明したが、加速用高周波電場の振幅の時間変化を変調させることにより、ビームの運動量分散Δpを抑制してもよい。例えば、加速用高周波電場の振幅を低下させはじめるタイミングを調節したり、高周波加速空洞21のQ値を変化させる等して、加速用高周波電場の振幅低下速度を変化させたり、振幅低下時の振幅変化を変調させることにより、高周波バケツ710の面積消滅の速度やタイミングを変化させ、ビームの運動量分散Δpを抑制してもよい。
<<<第2の実施例>>>
本発明の第2の実施例の加速器、および加速器の運転方法を説明する。
第1の実施例の加速器1では、加速核種を水素イオンであったが、第2の実施例の加速器は、加速核種を炭素イオンとしたものである。本実施例の加速器は、炭素イオンを核子当り運動エネルギー140MeV~430MeVの範囲での取り出しが可能な周波数変調型の可変エネルギー加速器である。
動作原理・機器構成・操作手順は第1の実施例の加速器1と同一であるので詳細な説明は省略する。
第1の実施例の加速器1と異なるのは、軌道半径の大きさと磁場とエネルギーの関係、周回周波数とエネルギーの関係である。それらは、第1の実施例に示した加速器1から、ビームの磁気剛性率の比に軌道半径と磁場の積を比例させることで決定することができる。
よって、本発明の第2の実施例の加速器においても、前述した第1の実施例の加速器1と同様の構成・手法によって、周回ビームの運動量分散を抑制することができ、従来の運転方法を適用するよりも、取り出し効率の増加や照射時間の短縮が実現できる。
<<<第3の実施例>>>
本発明の第3の実施例の粒子線治療システムについて図12を用いて説明する。第1の実施例と同じ構成には同一の符号を示し、説明は省略する。
第3の実施例は、第1実施例に挙げた加速器1、あるいは第2の実施例に挙げた加速器が用いられた粒子線治療システムである。システムの全体構成図を図12に示す。
粒子線治療システム1000は、患者5の患部(標的)に対して、患部の体表からの深さに応じて適切なエネルギー値の陽子線あるいは炭素線(以下ではまとめてビームと呼ぶ)を照射する装置である。図12に示すように、治療システム1000は、イオンを加速する加速器1と、加速器1で加速されたビームを後述する照射装置に対して輸送するビーム輸送系2と、ビーム輸送系2によって輸送されたビームを治療台4に固定された患者5内の標的に照射する照射装置3と、加速器1、ビーム輸送系2および照射装置3を制御する全体制御装置40および照射制御装置50と、標的に対するビームの照射計画を作成する治療計画装置70と、この治療計画装置70によって作成された治療計画が記憶された治療計画データベース60と、を備えている。また、全体制御装置40には、第1の実施例で説明した電圧振幅計算装置45が接続され、加速器1内のビームの運動量分散Δpを抑制する加速用高周波電圧の振幅が算出される。
粒子線治療システム1000では、照射する粒子線のエネルギーと線量は、治療計画データベース60に記憶された治療計画のデータを読み込むことによって定められる。治療計画が定めた、粒子線のエネルギーと照射量を全体制御装置40から照射制御装置50に順次入力し、適切な照射量を照射した時点で次のエネルギーに移行して再度粒子線を照射する。このとき、図10および図11を用いて説明したように、電圧振幅計算装置45によって算出された加速用高周波電圧が設定されるため、加速器1内のビームの運動量分散Δpが抑制され、加速器1からのビームの取り出し効率を向上させることができる。よって、従来よりも短時間で、治療計画で定められた線量のビームを取り出すことができる。
本発明の第3の実施例の粒子線治療システムによれば、前述した第1の実施例の加速器1や第2の実施例の加速器の特性である、短時間で照射完了できる点を利用して、患者5への照射時間の短いシステムを提供できる。
なお、粒子線治療システム1000のビーム輸送系2は、図8に示すような固定されたものに限られず、回転ガントリと呼ばれる照射装置3ごと患者5の周りを回転可能とした輸送系とすることができる。また、照射装置3は一つに限られず、複数設けることができる。更には、ビーム輸送系2を設けずに、加速器1から直接照射装置3に対してビームを輸送する形態とすることができる。
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
1…加速器
2…ビーム輸送系
3…照射装置
11…電磁石
12…イオン源
13…コイル
20…ビーム通過領域
21…高周波加速空胴
33…トリムコイル
40…全体制御装置
41…モーター制御装置
42…低レベル高周波発生装置
43…アンプ
45…電圧振幅計算装置
46…高周波電源
47…擾乱高周波制御装置
50…照射制御装置
60…治療計画データベース
111…取り出しビーム用貫通口
112,113…コイル接続用貫通口
114…高周波電力入力用貫通口
115…ビーム入射用貫通口
121…リターンヨーク
122…天板
123…磁極
130…入射部
211…入力カプラ
212…回転式可変容量キャパシタ
213…回転軸
214…サーボモータ
221…ディー電極
222…接地電極
223…加速ギャップ
311…付加磁場発生用コイル
312…取り出し用セプタム電磁石
313…擾乱用電極
322…取り出し軌道
1000…粒子線治療システム

Claims (7)

  1. イオンを所定のエネルギーに到達するまで加速したイオンビームを出射する加速器と、
    前記加速器から出射されたイオンビームを標的に照射する照射装置とを有し、
    前記加速器は、イオンビームを周回させる空間に所定の強度分布の磁場を発生する磁石と、前記空間にイオンを入射するイオン源と、記空間の所定の領域に加速用高周波電場を印加してイオンビームを周回させながら加速する加速電極と、イオンを周回させる空間の外周部に配置された付加磁場発生部および擾乱用電場発生部と、制御部とを有し、
    前記加速電極は、前記加速用高周波電場の周波数を変調する変調部を備え、
    前記イオン源は、前記空間の中心からずれた位置にイオンを入射させ、
    前記磁石は、周回するイオンのエネルギーに応じて偏心した設計軌道を形成する強度分布の主磁場を発生し、
    前記付加磁場発生部は、所望のエネルギーの前記イオンビームを前記設計軌道の外側に変位させ、
    前記擾乱用電場発生部は、前記所望のエネルギーのイオンビームを前記加速器から出射させるために、動径方向の擾乱を与えてベータトロン振動振幅を増大させる攪乱用高周波電場を発生し、
    前記制御部は、前記加速電極が発生する前記加速用高周波電場と、攪乱用電極が発生する攪乱用高周波電場とを制御し、
    前記制御部は、電圧振幅計算部を有し、
    前記電圧振幅計算部は、前記加速用高周波電場により加速するイオンビームの運動量分散Δpが、所定値以下になるように、前記加速用高周波電場の電圧振幅Eを、前記標的に照射すべきエネルギーに応じて算出し、
    前記制御部は、前記標的に照射すべきイオンビームのエネルギーまで前記イオンを加速するために必要な前記加速用高周波電場の印加時間Tを算出し、
    前記制御部は、前記イオン源からイオンが入射した後、前記加速電極に高周波電圧を入力し、前記加速電極から前記電圧振幅Eの前記加速用高周波電場を前記領域に印加し、前記印加時間Tに到達後、前記攪乱用高周波電場により前記イオンビームを前記加速器から出射させる
    ことを特徴とする粒子線治療システム。
  2. 請求項1に記載の粒子線治療システムであって、
    前記制御部は、前記加速電極への高周波電圧の入力を停止する時刻Tdをさらに算出し、
    前記時刻Tdは、前記加速電極への高周波電圧の入力を当該時刻Tdで停止させた場合に、前記加速用高周波電場が前記加速電極の共振のQ値に基づいて漸減して前記印加時間Tにおいて0になる時刻であり、
    前記制御部は、前記加速電極が印加する前記電圧振幅Eの前記加速用高周波電場により前記イオンビームを周回させながら加速し、前記時刻Tdに達したならば、前記加速電極への高周波電圧の入力を停止させるとともに、前記攪乱用電極に高周波電力の入力を開始し、前記攪乱用高周波電場の立ち上げを開始させ、前記印加時間Tに到達後、前記攪乱用高周波電場により前記イオンビームを前記加速器から出射させる
    ことを特徴とする粒子線治療システム。
  3. 請求項1に記載の粒子線治療システムであって、前記制御部は、前記照射すべきイオンビームのエネルギーが大きいほど、前記加速用高周波電場の電圧振幅を大きくすることを特徴とする粒子線治療システム。
  4. 請求項1に記載の粒子線治療システムであって
    前記電圧振幅計算部は、予め定められた治療計画から前記標的に照射すべきイオンビームのエネルギー値を読み込んで、前記エネルギー値に対応する前記加速用高周波電場の電圧振幅を算出することを特徴する粒子線治療システム。
  5. 請求項に記載の粒子線治療システムであって、前記電圧振幅計算部は、予め求めておいた、照射すべきイオンビームのエネルギー値と、イオンビームの運動量分散Δpが所定値以下になる加速用高周波電場の電圧振幅との関係を用いて、前記治療計画から読みこんだ前記エネルギー値に対応する前記加速用高周波電場の電圧振幅を算出することを特徴とする粒子線治療システム。
  6. 加速器を用いたイオンビームの生成方法であって、
    前記加速器は、イオンビームを周回させる空間に所定の強度分布の磁場を発生する磁石と、前記空間にイオンを入射するイオン源と、記空間の所定の領域に加速用高周波電場を印加してイオンビームを周回させながら加速する加速電極と、イオンを周回させる空間の外周部に配置された付加磁場発生部および擾乱用電場発生部とを有し、
    前記加速電極は、前記加速用高周波電場の周波数を変調する変調部を備え、
    前記イオン源は、前記空間の中心からずれた位置にイオンを入射させ、
    前記磁石は、周回するイオンのエネルギーに応じて偏心した設計軌道を形成する強度分布の主磁場を発生し、
    前記付加磁場発生部は、所望のエネルギーの前記イオンビームを前記設計軌道の外側に変位させ、
    前記擾乱用電場発生部は、前記所望のエネルギーのイオンビームを前記加速器から出射させるために、動径方向の擾乱を与えてベータトロン振動振幅を増大させる攪乱用高周波電場を発生し、
    前記加速用高周波電場により加速する際にイオンビームの運動量分散Δpが所定値以下になる前記加速用高周波電場の電圧振幅Eを、標的に照射すべきエネルギーに応じて算出する工程と、
    前記標的に照射すべきイオンビームのエネルギーまで前記イオンを加速するために必要な前記加速用高周波電場の印加時間Tを算出する工程と、
    所定の強度分布の発生させた空間に、イオンを入射させる工程と、
    前記空間の所定の領域に、前記電圧振幅Eの前記加速用高周波電場を印加して所定のエネルギーまでイオンを加速してイオンビームを形成する工程と、
    前記印加時間Tに到達後、前記攪乱用高周波電場により前記空間から前記イオンビームを取り出して出射させる工程とを含むイオンビームの生成方法
  7. 加速器を制御して、イオンビームを生成する制御プログラムであって、
    前記加速器は、イオンビームを周回させる空間に所定の強度分布の磁場を発生する磁石と、前記空間にイオンを入射するイオン源と、記空間の所定の領域に加速用高周波電場を印加してイオンビームを周回させながら加速する加速電極と、イオンを周回させる空間の外周部に配置された付加磁場発生部および擾乱用電場発生部とを有し、
    前記加速電極は、前記加速用高周波電場の周波数を変調する変調部を備え、
    前記イオン源は、前記空間の中心からずれた位置にイオンを入射させ、
    前記磁石は、周回するイオンのエネルギーに応じて偏心した設計軌道を形成する強度分布の主磁場を発生し、
    前記付加磁場発生部は、所望のエネルギーの前記イオンビームを前記設計軌道の外側に変位させ、
    前記擾乱用電場発生部は、前記所望のエネルギーのイオンビームを前記加速器から出射させるために、動径方向の擾乱を与えてベータトロン振動振幅を増大させる攪乱用高周波電場を発生するものであり、
    コンピュータに、
    前記加速用高周波電場により加速する際にイオンビームの運動量分散Δpが所定値以下になる前記加速用高周波電場の電圧振幅Eを、標的に照射すべきエネルギーに応じて算出する工程と、
    前記標的に照射すべきイオンビームのエネルギーまで前記イオンを加速するために必要な前記加速用高周波電場の印加時間Tを算出する工程と、
    所定の強度分布の発生させた空間に、イオンを入射させる工程と、
    前記空間の所定の領域に、前記電圧振幅Eの前記加速用高周波電場を印加して所定のエネルギーまでイオンを加速してイオンビームを形成する工程と、
    前記印加時間Tに到達後、前記攪乱用高周波電場により前記空間から前記イオンビームを取り出して出射させる工程とを実行させるための制御プログラム。
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