JP7399127B2 - 加速器および粒子線治療システム - Google Patents

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Description

本発明は、陽子または炭素イオン等の重イオンを加速する加速器と粒子線治療システム、ならびに加速器の運転方法に関する。
粒子線治療や物理実験などで使用する高エネルギーのイオンビームは加速器を用いて生成される。
粒子線治療は、その粒子線の種類によって分類でき、陽子線を患部に照射する陽子線治療と、炭素やヘリウムなど陽子より重い原子核を照射する重粒子線治療がある。陽子線治療においては230MeV前後の核子当たりの運動エネルギーが必要であり、炭素線の場合は430MeV前後の核子当たりの運動エネルギーが必要である。これらのビームを生成しうる加速器には種類がいくつかある。例えば、サイクロトロンやシンクロトロン、特許文献1に記載されているようなシンクロサイクロトロン、特許文献2に記載されているような可変エネルギー加速器が知られている。
サイクロトロンおよびシンクロサイクロトロンの特徴は、静磁場中を周回するビームを高周波電場で加速する点であり、加速されるにつれてビームはその軌道の曲率半径を増し、外側の軌道に移動し、最高エネルギーまで到達した後に取り出される。そのため取り出すビームのエネルギーは基本的には固定される。
一方、シンクロトロンは、ビームを偏向する電磁石の磁場と加速する高周波電場の周波数を時間的に変化させることにより、ビームは一定の軌道を周回する。そのため、設計上の最大エネルギーに到達する前にビームを取り出すことが可能であり、取り出しエネルギーが制御可能である。
特許文献1のシンクロサイクロトロンでは、半径Rの略円形の断面を有する一対の強磁性体のポールが、中心軸を一致させて、正中面を挟んで上下に配置されている。一対のポールは、ギャップによって離隔され、このギャップは、正中面に対して実質的に対称なプロファイルを有するキャビティを形成している。ギャップの高さは、ポールの半径方向において変化している。ギャップの高さは、中心軸ではHcenterであり、中心軸から半径R2までの円形の部分では、半径が大きくなるにつれてHcenterから徐々に増大し、半径R2において最大値Hmaxとなる。半径R2より大きい環状の部分は、半径が大きくなるにつれて、そのギャップの高さが徐々に減少し、ポールの縁におけるギャップの高さは、Hedgeである。このようなギャップ形状のキャビティを備えるシンクロサイクロトロンは、ギャップ内の磁場を最小化する一方で、シンクロサイクロトロンのサイズを最小化することができると特許文献1には開示されている。
一方、特許文献2には、エネルギーの異なるイオンビームを出射可能な可変エネルギー加速器が開示されている。この加速器は、イオンビームを周回させる外周が円形のキャビティ(空間)を形成する電磁石を備えている。イオン源は、円形のキャビティの中心軸から半径方向に大きくずれた外周に近い所定の位置にイオンビームを入射する。入射したイオンビームには高周波が照射され、加速しながらキャビティ内を周回する。低速のイオンビームは、小さな軌道半径の軌道を周回し、加速されるにつれ軌道半径が徐々に大きくなるように、電磁石の主磁場の磁場分布が設計されている。
このとき、特許文献2の加速器では、軌道半径が大きくなるにつれ、軌道の中心が、徐々に円形のキャビティの中心軸に向かって移動するように電磁石の主磁場分布が設計されている。これにより、特許文献2の図5に開示されているように、すべての軌道を、イオンの入射位置と、キャビティの外周との間の狭い領域を密に通過させることができる。よって、キャビティの最外周に磁場発生部を配置することにより、最外周のみならずその内側の1以上の軌道に対しても、その軌道を周回するイオンが軌道を外れる方向の力を与えることができる。これによりイオンビームに周回軌道から離れる方向の揺らぎを生じさせ、キャビティ外へ出射させる出射軌道に乗せ、加速器外部に出射することができる。
このように許文献2の加速器は、最外周軌道のエネルギーのイオンビームのみならず、その内側の複数の軌道のエネルギーのイオンビームについても出射させることができるため、出射するイオンビームのエネルギーを変化させることができる。
特表2013-541170号公報 特開2019-96405号公報
特許文献1に記載のシンクロサイクロトロンは、主磁場中を周回するビームを高周波電場で加速する類型の加速器である。このようなシンクロサイクロトロンでは、ビームのエネルギー増加に伴いビームの周回周波数が低下していく特性があり、ビームの周回周波数に同調して高周波電場の周波数を変調する必要がある。そのため、低エネルギーのビームを入射してから加速して取り出し、さらに再度ビームを入射するまでが一つの運転周期となる。シンクロサイクロトロンの運転周期は、高周波電場を励起する空胴の共鳴周波数の掃引速度で決められ、一般に数ミリ秒程度となる。この数ミリ秒の運転周期に1回の割合で周回しているビームの全量が取り出される。また、取り出されるビームのエネルギーは、基本的に固定されている。
粒子線治療では、治療計画などで予め定められた照射線量の許容範囲を超過することなく照射対象の腫瘍にビームを照射することが求められる。シンクロサイクロトロンでは運転周期ごとにビームの全量が取り出されるため、シンクロサイクロトロンを用いる粒子線治療システムでは、シンクロサイクロトロンの一運転周期内で加速・取り出しの可能なビーム量を照射線量の許容範囲に対して十分小さく設定する必要が有る。よって、一運転周期に加速する電荷量を、加速器の性能で決まる上限より小さくせざるを得ず、照射完了に時間がかかる、という課題が有る。
また、従来のサイクロトロンは、ビームの周回周波数をエネルギーに寄らず一定にするため、等時性磁場の励磁が必要であり、特に炭素線治療で使われるエネルギー領域まで等時性磁場を励起しビームを加速するのは困難である。さらに、サイクロトロンは、取り出しビームのエネルギー変更が不可能である。一方、シンクロトロンは、取り出しビームのエネルギーは可変であるが、現状では軌道の周長が50m以上と大型である、という課題がある。
一方、特許文献2の加速器は、最外周のみならず、最外周よりも内側の1以上の軌道のエネルギーのイオンビームを出射させることができるが、キャビティの外周部に軌道が密の領域を形成するため、イオン源からイオンビームを入射する位置がキャビティの外周に近い位置になる。特許文献2の図2に示されるように、イオン源は、電磁石の上面に搭載され、電磁石の磁極等にはイオン入射用貫通孔115が設けられ、イオン源からイオンビームは、イオン入射用貫通孔115内を通過してキャビティ内に入射する。イオン入射用貫通孔115は、キャビティの外周に近い位置、すなわち、磁極の外周に近い位置を貫通するように設けられ、磁極を通過する磁力線を横切る配置になる。そのため、イオン入射用貫通孔115の内部を進むイオンビームには、磁極内の磁力線の磁場が印加され、ローレンツ力が生じて、ドリフト運動する。これを回避するためには、例えば、イオン入射用貫通孔115の近傍に一対の電極を配置し、電場をイオンビームに印加し、ローレンツ力と電場から受ける力をつり合わせ、イオンビームがイオン入射用貫通孔115内をまっすぐに進むようにする等の構成が必要である。そのため、特許文献2の加速器は、イオン源からキャビティ内へのイオンビームの入射効率が、イオン入射用貫通孔に印加することのできる電圧の大きさに影響される。
本発明の目的は、小型で、取り出しビームのエネルギーが変更可能な加速器であって、外部イオン源から加速器内へのビーム入射の効率を高め、結果として出射されるイオンビームの線量率を向上させることにある。
上記目的を達成するために、本発明の加速器は、イオンビームを周回させる軌道面を挟んで対向配置された一対の磁極を含み、軌道面に複数の周回軌道を生じさせる主磁場を形成する電磁石と、外部からイオンビームを軌道面の所定の入射位置に導入するために磁極に形成されたイオン入射用貫通孔と、一対の磁極間に形成されたキャビティに挿入され、前記軌道面を周回するイオンビームを加速する高周波を発生する高周波加速空胴と、キャビティの外周に配置された、最外周および最外周よりも内側の1以上の周回軌道上の移動中のイオンビームに磁場を印加して移動方向を周回軌道から外れさせる付加磁場発生部、および、周回軌道を外れたイオンビームをキャビティの外へ導く取出チャネルとを有する。イオンビームが加速されるにつれ、周回軌道は、その半径が徐々に大きくなり、かつ、その中心がキャビティの所定の半径方向に沿って周縁部に近づく方向に移動した後、移動方向を反転して前記キャビティの中心に向かってさらに移動するように、主磁場の軌道面内の強度分布が設計されている。
本発明によれば、小型で、取り出しビームのエネルギーが変更可能な加速器からのビーム照射量の増加が可能となり、粒子線治療システムにおける線量率の向上が実現する。
本発明の第1の実施形態の加速器の全体概形を示す斜視図。 第1の実施形態の加速器の縦断面図。 第1の実施形態の加速器の横断面図。 本発明の第1の実施形態の加速器におけるビームの周回軌道と等周回位相線を示す図。 本発明の第1の実施形態の加速器における代表的な周回軌道とその中心の移動方向を説明する図。 本発明の第1の実施形態の加速器の制御ブロック図。 本発明の第1の実施形態の加速器における主磁場強度のビーム周回軌道エネルギー依存性を示す図。 本発明の第1の実施形態の加速器におけるビームの周回周波数のビーム周回軌道エネルギー依存性を示す図。 本発明の第1の実施形態の加速器における運転のタイミングチャート。 本発明の第1の実施形態の加速器における運転制御のフローチャート。 本発明の第2の実施形態の粒子線治療システムの構成図。 比較例の加速器の縦断面図。 比較例の加速器におけるビームの周回軌道と等周回位相線を示す図。 比較例の加速器における代表的な周回軌道とその中心の移動方向を説明する図。
以下に本発明の加速器および粒子線治療システムの一実施形態を、図面を用いて説明する。
<<<第1の実施形態>>>
第1の実施形態として、粒子線治療システムの加速器1を図面を用いて以下に説明する。
<概要>
まず、加速器1の概要を説明する。加速器1の外観を図1に、その縦断面図を図2に、横断面図を図3に示す。なお、図3では、内部構造の理解を容易にするために断面ではない部分についてもハッチングを付している。図4は、加速器1の周回軌道と等周回位相線を示し、図5は、代表的な周回軌道の中心の移動を示す。図6は、加速器の制御系を示し、図7は、周回軌道のエネルギーごとの主磁場強度を示す。
本実施形態の加速器は、例えば炭素イオンを最大435MeV/uまで加速する周波数変調型の可変エネルギー加速器である。
この加速器は、図1から図3に示すように、電磁石11を含む。電磁石11は、イオンビームを周回させる軌道面20aを挟んで対向配置された一対の磁極123a,123bを備えている。これにより、軌道面20aに複数の周回軌道(図4、図5)を生じさせる主磁場を形成する。
図1および図2のように、磁極123a、123bには、イオン入射用貫通孔115が形成されている。イオン入射用貫通孔115は、外部からイオンビーム25を軌道面20aの所定の入射位置130に導入する。
図2および図3のように、軌道面20aを挟むように一対の磁極123a,123bの間には所定形状のキャビティ(空隙)11aが形成され、キャビティ11a内には高周波加速空胴21が挿入されている。高周波加速空胴21は、軌道面20aを周回するイオンビームを加速する高周波を発生する。
キャビティ11aの外周には、最外周および最外周よりも内側の1以上の周回軌道上のイオンビームに磁場を印加して、周回軌道を外れさせる付加磁場発生部(付加磁場発生用コイル)が配置されている。さらに、周回軌道を外れたイオンビームをキャビティ11aの外部に導く取り出しチャネル312が、キャビティ11aの外周に配置されている。
このとき、電磁石11が形成する主磁場の軌道面内の強度分布は、周回軌道(代表的な周回軌道O1~O12)が図4、図5のような配置になるように設計されている。すなわち、周回軌道のエネルギーに応じて図7に示す大きさ磁場(B)が、その周回軌道の位置に印加されるように主磁場強度分布が設計されている。
具体的には、図4、図5に示した周回軌道は、イオンビームが加速されるにつれ、周回軌道(例えば、図5のO1~O12)の半径が徐々に大きくなり、かつ、その中心(C1~C12)は、キャビティ11aの所定の半径方向Rpに沿って周縁部に近づく方向に移動した後、移動方向を反転してキャビティ11aの中心に向かってさらに移動する。さらに詳しく言うと、その半径が予め定めた第1の半径に到達するまでの周回軌道(O1~O4)は、その中心(C1~C4)が順にキャビティ11aの周縁部に近づく方向に移動し、第1の半径に到達した後の周回軌道(O5~O12)は、その中心(C5~C12)が軌道面20aの中心20cに向かって順に移動していく。
このように、周回軌道(例えばO1~O4)の中心(C1~C4)がいったん軌道面20aの周縁部20bに近づく方向に移動した後、周回軌道(例えばO5~O12)の中心(C5~C12)が軌道面20aの中心20cに向かって移動するように設計したことにより、入射位置130と軌道面20aの周縁部20bとの距離(図4、図5)は、比較例(図12~図14参照)の加速器のように周回軌道の中心位置を一方向に移動させる構成よりも、広くなる。
言い換えると、イオンビームの入射位置130をキャビティ11aの中心20cに近づけて配置することができ、イオンビーム入射用貫通孔115も磁極123aの中心軸20eに近づけて配置することができる。
図2に示すように、磁極123aの中心軸20eに近い領域は、磁極123a内の磁力線90が、イオンビーム入射用貫通孔115の中心軸に対して傾斜している。このため、イオンビーム入射用貫通孔115を磁極123aの中心軸20eに近づけて配置したことにより、イオンビームの進行方向(中心軸)に直交する磁場成分を、図12の比較例のよりも低減することができる。
これにより、本実施形態の加速器1では、イオンビーム入射用貫通孔115内でイオンビーム25が磁場90aから受けるローレンツ力を図12の比較例よりも低減でき、ローレンツ力を打ち消すために印加するイオンビーム25に印加する電場を低減できる。よって、イオンビーム25を直進させるのに十分な電場を容易に印加でき、イオンビーム25の入射位置130への入射効率を高めることができ、結果として加速器から出射されるイオンビームの線量率を向上させることができる。
一方、周回軌道(例えばO1~O4)の中心(C1~C4)がいったん軌道面20aの周縁部20bに近づく方向に移動した後、移動方向を反転して周回軌道(例えばO5~O12)の中心(C5~C12)が軌道面20aの中心20cに向かって移動するように設計したことにより、入射位置130と軌道面20aの周縁部20bとの距離が比較例よりも広いにも関わらず、軌道面20aの周縁部20b近傍には、周回軌道が密に通過する集約領域241を、比較例(図12~図14)と同様に形成することができる。
よって、キャビティ11aの外周に配置された付加磁場発生部311から集約領域241に磁場を印加することにより、最外周および最外周よりも内側の1以上の周回軌道上の移動中のイオンビームの移動方向を周回軌道から外れさせ、取り出しチャネル312からキャビティ11aの外に取り出すことができる。
なお、イオン入射用貫通孔115の中心軸と、キャビティ11aの中心との距離は、キャビティ11aの半径の長さの50%以内に設けられていることが望ましい。
磁極面124aには、イオン入射用貫通孔115と磁極123aの磁極123aの中心との間であって、イオン入射用貫通孔115に隣接する位置に、鉄片等のシム250を配置する構成にしてもよい。これにより、シム250が配置されている領域は、磁場勾配が大きくなるため、図4および図5のように、周回軌道(O1~O4)の中心(C1~C4)を、キャビティ11aの外周に近づく方向に移動させることができる。特に、イオン入射用貫通孔115と磁極123aの中心との間であって、半径方向Rpに沿った各位置の磁場勾配は、シム250が配置されている位置の磁場勾配が最も大きいことが望ましい。
イオン入射用貫通孔115およびシム250は、対向する磁極123a、123bに軌道面20aを挟んで対称な位置にそれぞれ設けられていることが望ましい。
また、一対のシム250間の距離は、イオン入射用貫通孔115と磁極面124aの外周との間の所定の半径方向に沿った位置であってイオン入射用貫通孔に隣接する位置251の一対の磁極面124a,124b間の距離、または、その位置124a、124bに配置されたシムの距離よりも狭いことが望ましい。
イオン入射用貫通孔115とキャビティ11aの外周との間であって、半径方向に沿った各位置の磁場勾配は、キャビティ11aの周縁部の集約領域241が最も大きいことが好ましい。これにより、図4および図5に示したように、キャビティ11aの周縁部の集約領域241に周回軌道を密に配置することができる。
電磁石11の外側には、イオン入射用貫通孔115にイオンビームを入射するイオン源12が設置される。
取り出しチャネル312は、キャビティ11aの所定の半径方向Rpの外周部に配置されていることが好ましい。
磁極面124a,124bには、複数のリング状のトリムコイル33が備えられていることが好ましい。トリムコイル33は、軌道面20aの複数の周回軌道に対応する半径であり、周回軌道に対応する位置の磁極面124a、124bに備えられている。
加速空洞21は、ディー電極221を含んでいる。ディー電極221の辺縁は、軌道面20aに平行にキャビティ11aを横切るように配置されている。ディー電極221の形状は、入射位置130を中心とするW字型である。
以下、本実施形態の加速器1について詳細に説明する。
<<加速器1の構成>>
図1に示すように、加速器1は、分割接続面12aを境に上下に分割可能な電磁石11を有する。図2のように、電磁石11は、分割接続面12aを挟んで対向配置された円柱形の上部磁極123aおよび下部磁極123bと、それら外周にそれぞれ配置された円筒形のリターンヨーク121a、121bと、円盤状の上部天板122aおよび下部天板122bとを備えている。円盤状の上部天板122aは、上部磁極123aの上端面と、リターンヨーク121aの上端面とを覆って連結するように配置されている。同様に下部天板122bは、下部磁極123bの下端面と、リターンヨーク121bの下端面とを覆って連結するように配置されている。本実施形態では、磁極123aとリターンヨーク121aと天板122a、ならびに、磁極123bとリターンヨーク121bと天板122bはそれぞれ一体に形成されている。磁極123aとリターンヨーク121aの間に形成された凹部、および、磁極123bとリターンヨーク121bの間に形成された凹部には、それぞれ円環状のコイル13が配置されている。コイル13は、磁極123の外周壁に沿って巻回されている。
電磁石11の上部磁極123aと、下部磁極123bの互いに対向する面を磁極面124a、124bと定義する。磁極面124a、124bで挟まれたキャビティ11a(空隙)には、コイル13に電流を流すことによって上下方向に主磁場110が形成される。磁極面124a、124bは、分割接続面12aを挟んで対称な凹型の曲面形状であり、磁極面124a、124b間の距離は、磁極123a,123bの中心軸20eにおいて最も大きく、端部に近づくほど小さくなっている。
キャビティ11a内の磁極面124a、124bから等距離にある面がビームの軌道面20aであり、軌道面20aを中心とする所定の厚さの円盤状の領域がビーム通過領域20である。ビーム通過領域20は、キャビティ11a内を加速・周回中のビームが通過する領域である。
ビーム通過領域20に形成される磁場の強度分布は、その位置の周回軌道のエネルギーに応じて勾配するように設計される。磁場の勾配については後で詳しく説明する。なお、電磁石11のキャビティ11a内は、図示を省略した真空ポンプによって真空引きされている。
電磁石11には、外部とビーム通過領域20とを接続する貫通口が複数設けられている。具体的には、加速されたビームを取り出す取り出しビーム用貫通口111、電磁石11内に配置されたコイル導体を外部に引き出すための引き出し用の貫通口112、高周波電力入力用貫通口114等の各種貫通口が上下の分割接続面11bの面上に設けられている。
高周波電力入力用貫通口114を通じて、高周波加速空胴(加速電極)21が電磁石11内に挿入されている。高周波加速空胴21は、キャビティ11a内のイオンを加速してイオンビームとするための加速用電場Eを形成する。高周波加速空胴21は、後述するように、加速用のディー電極221(図3参照)と加速用電場の周波数を変調するための回転式可変容量キャパシタ(変調部)212とを含む。
図1のように、電磁石11の上面の中心軸20eからずれた位置には、イオン(例えば炭素イオン)を供給するためのイオン源12が設置されている。また、イオン源12の搭載位置には、天板122aおよび磁極123aにビーム入射用貫通口115(図1参照)が設けられている。イオン源12の出射するイオンビーム25は、ビーム入射用貫通孔115を通過して、入射位置130からキャビティ11a内に入射する。
このとき、コイル13が発生し、磁極123a、リターンヨーク121aおよび天板122aを通って閉ループを描く磁力線90が、図2のようにビーム入射用貫通孔115を横切るように通過している。イオン源12から出射されたイオンは100KeV程度のエネルギーを有しているため、イオン源12から入射位置130に至るまで、ビーム入射用貫通孔115内の経路上の磁場90aからローレンツ力を受けて進行方向が偏向し、磁力線90に巻き付くようにドリフト運動をする。
このローレンツ力を打ち消す力をイオンに与えるため、ビーム入射用貫通孔115の近傍には、ビーム入射用貫通孔115を挟むように一対の電極91が配置されている。一対の電極91は、イオンビーム25に電場を印加し、イオンビーム25が磁場90aから受けるローレンツ力とつり合う力を生じさせる。電極91が印加する電場の向きは、図2の矢印91aの方向である。なお、図2では、一対の電極91のうち、一方のみを図示している。一対の電極91に印加される電力は、ビーム入射用貫通口115を通じて外部から供給される。ビーム入射用貫通孔115を進むイオンビーム25は、一対の電極91の生じる電場から受ける力と、磁場90aから受けるローレンツ力とがつり合うことによりビーム入射用貫通孔115内をまっすぐに進行して、キャビティ11a内の入射位置130に到達することができる。
また、図示していないが、ビーム入射用貫通孔115の入射位置130近傍には、偏向器が配置されており、ビーム入射用貫通孔115内を進行して軌道面20aに対して垂直な方向から入射位置130に到達したイオンビーム25の進行方向を、軌道面20aに平行な方向に偏向させる。これにより、イオンは、軌道面20aにおいて周回する。
電磁石11内に挿入された高周波加速空胴21のうち、特にキャビティ11a内に固定的に配置された部分をディー電極221と定義する。ディー電極221は、ビーム通過領域20の一部領域を上下から挟むように覆う一対の板状電極である。ディー電極221のビーム通過領域20を面内方向に横切る辺縁221aは、図3に示すように、入射位置130の近傍の頂点とするW字型に成形されている。ディー電極221の周縁部は、最外周軌道を内包しつつ、キャビティ11aの外周に沿う円弧形状である。高周波加速空洞21は、ディー電極22以外の部分は、ディー電極22の円弧状の周縁部から高周波電力入力用貫通口114を貫通し、電磁石11の外側に引き出されている。
電磁石11の外部に引き出された高周波加速空胴21には、図1に示すように、回転式可変容量キャパシタ(変調部)212が取り付けられている。回転式可変容量キャパシタ212は、回転軸213を有し、回転軸213には、サーボモータ214(図6参照)が接続されている。サーボモータ214は、回転軸213を回転駆動し、回転軸213の回転角が時間的に変化することにより、高周波加速空胴21の静電容量が時間的に変調され、高周波加速空胴21の基本モードの共振周波数が変化する。これにより、高周波加速空洞21が発生する加速用高周波電場の周波数を変化させることできる。また、高周波加速空胴21には、高周波電力を入力するための入力カプラ211が備えられている。
ディー電極221のW字型の辺縁221aの端面には、当該端面と所定の間隔をあけて対向するようにW字型の線状の接地電極222が配置されている。ディー電極221と接地電極222とによって挟まれる領域が、加速ギャップ223である。
高周波加速空胴21は、λ/4型の共振モードによってイオンを加速するための加速用高周波電場を加速ギャップ223に励起する。入射位置130から入射したイオンは
ビーム通過領域20の軌道面20a内で周回しながら、加速ギャップ223近傍を通過することにより、加速ギャップ223に冷気されている高周波電場により加速される。
高周波加速空胴21が加速ギャップ223に励起する高周波電場の周波数は、ビームの周回周波数に同期させるために、ビームの周回周波数の整数倍になるように設定する。具体的には、サーボモータ214をモータ制御装置41(図6参照)により制御し、回転軸213の回転数を調整する。本実施形態の加速器1では、加速ギャップ223に高周波電場の周波数が、ビームの周回周波数の1倍となるように制御している。
磁極123a、123bの磁極面124a、124bには、主磁場110の軌道面20aにおける分布を微調整するために、環状のトリムコイル33が複数系統備えられている。トリムコイル33は、軌道面20aの複数の周回軌道に対応する半径であり、周回軌道に対応する位置の磁極面124a,124bに備えられている。例えば、最大径のトリムコイル33の中心は、電磁石11の中心20cに一致にするように配置されている。一方、最小径のトリムコイル33の中心は、入射位置130に一致するように配置されている。すなわち、トリムコイル33の中心は、径が小さいものは、磁極123a、123bの中心に対して偏心している。トリムコイル33の径のサイズと中心位置は、イオンビームの軌道の径と中心の位置に対応している。
トリムコイル33は、貫通口112等を通じて外部の電源に接続され、各系統のトリムコイル33に供給する励磁電流は、運転前に個別に調整される。これにより、磁極123a、123bから軌道面20aに印加される主磁場110に、トリムコイル33からの磁場を重畳して、軌道面20aにおける主磁場110の分布を所望の分布に近づける。これにより、安定なベータトロン振動を実現するとともに、イオンの軌道の中心を、イオンビームの加速につれて所望の移動方向に移動させることができる。イオンの軌道の中心の移動方向については、後で詳しく説明する。
また、図2および図3に示すように、加速器1内で加速したビームを外に取り出すために、四極磁場や六極以上の多極磁場を励磁する一対の付加磁場発生用シム(キック部)311と、攪乱用高周波電場をビームに印加するための擾乱用電極(擾乱部)313が、磁極面124a、124bの一部に、磁極面124a、124bに対して電気的に絶縁された状態で設置されている。また、磁極面124の端部の一か所に、取り出しチャネル312の入射部が設置されている。
擾乱用電極313は、微小な振幅の高周波(RF)電場を攪乱用高周波電場としてビームに印加することにより、周回中のビームの粒子のベータトロン振動振幅を増大させ、付加磁場発生用シム311が励起するキック磁場の作用が及ぶ領域を通過させる。付加磁場発生用シム311のキック磁場は、粒子を設計軌道の外側にビームをキックし、設計軌道から外れさせる。ビームは、取り出しチャネル312が形成する主磁場110を遮蔽された領域に到達し、取り出し軌道322上を通り、加速器1の取り出しビーム用貫通孔111から外部に取り出される。付加磁場発生用シム311によって励磁されるキック磁場は、ビーム通過領域20中を周回するイオンビームに対して安定領域を制限し、安定領域外に出た粒子を取り出しチャネル312に導入する作用をする。本実施形態の加速器1では、付加磁場発生用シム311は一対であり、それぞれ逆極性の磁場を磁極123が形成する主磁場110に対して重畳励磁する構成である。
このように、擾乱用電極313が発生する攪乱用高周波電場をオン/オフすることにより、それに同期してビームの取り出しをオン/オフ制御することができる。擾乱用電極313や取り出しチャネル312、付加磁場発生用シム311の動作の詳細については後述する。
加速器1では、軌道面において主磁場110は面内成分がほぼ0となるように、上下の磁極123a,123b、コイル13、トリムコイル33、付加磁場発生用シム311、取り出しチャネル312、擾乱用電極313の形状と配置が設計されており、軌道面20aに対して面対称の配置・電流分布となっている。また、磁極123、ディー電極221、コイル13、トリムコイル33、擾乱用電極313の形状は、図3に示すように、加速器1を上面側から見たときに、貫通口114の中心部と貫通口112の中心部を結ぶ線分11cに対して左右対称の形状となっている。
加速器1の制御部の構造を図6を用いて説明する。高周波加速空胴21の回転式可変容量キャパシタ212の回転軸213には、これを回転駆動するサーボモータ214が接続されている。サーボモータ214には、モータ制御装置41が接続されている。また、高周波加速空胴21の入力カプラ211には、高周波電力を生成する低レベル高周波発生装置42およびアンプ43が接続されている。また、攪乱用電極313には、高周波電源46が接続され、この高周波電源46には、制御する擾乱高周波制御装置47が接続されている。低レベル高周波発生装置、モータ制御装置41および攪乱高周波制御装置47には、これらを制御する全体制御装置40が接続されている。
本実施形態では、全体制御装置40には、電圧振幅計算装置45と治療計画データベース60が接続されている。治療計画データベース60には、複数の照射位置と、照射位置ごとに照射すべき粒子線のエネルギーとその線量が格納されている。全体制御装置40は、あらかじめ定められた振幅の高周波電場を加速ギャップ223に励起されるように、低レベル高周波発生装置42の出力を制御する。
以下、本実施形態の加速器1によりイオンを加速して、所望のエネルギーのイオンビーム(粒子線)を出射する際の各部の動作について説明する。
<<加速器1内のビーム入射>>
加速器1内にはイオン源12からのイオンがビーム入射用貫通孔115内に入射される。イオンは、ビーム入射用貫通孔115を横切る磁力線90の磁場90aからローレンツ力を受け、ドリフト運動するが、電極91が印加する電場により適切なキックを与えることにより、ほぼ軌道面20aに対して垂直な方向から入射位置130近傍に到達し、軌道面20a付近で、偏向器(不図示)によってビームの運動方向が軌道面20aに平行に偏向される。
すなわちビーム入射用貫通孔115内においてイオンビームが磁場から受ける力と電場からの力をつり合わせるように電場の大きさを設定する必要がある。そのため、ビーム運動方向に対して鉛直な磁場、すなわち軌道面20aに平行な磁場は小さいほうが必要な電場が小さくて済むとともに、ビーム軌道とサイズの制御が容易となり、入射効率の向上が実現できる。
そこで本加速器1では入射位置130を、図12に示した比較例(従来構造)の可変エネルギー加速器よりも、磁極123a、123bの中心20cに近づけて配置している。これにより、その真上に伸びるビーム入射用貫通孔115の入射ビーム経路上に印加される横方向磁場を電場による制御が可能な大きさまでに十分小さくすることができる。その結果、従来(図12)の可変エネルギー加速器と比較し、入射ビーム量が増加し、一つの運転周期で加速および照射可能な電荷量が増加させることができる。
一方、入射位置130が磁極123a,123bの中心寄りになるため、入射位置130とキャビティ11aの外周との間隔が広がる。そこで、軌道からイオンビームを取り出す周縁部の集約領域241の軌道の間隔を、比較例(図12)の加速器の周回軌道(図13)と同様程度に狭くするため、本実施形態では、図4および図5に示したように、周回軌道の軌道半径が最小軌道から大きくなるにつれ、軌道の中心を一旦キャビティ11a(軌道面20a)の周縁方向に移動させた後、さらに軌道半径が大きくなるにつれ軌道の中心を、キャビティ11a(軌道面20a)の中心20cに向かって移動させている。
<<加速器1内のビーム加速と取り出し>>
次に、本加速器1中を周回するビームの軌道および運動について述べる。
ビームは、ビーム通過領域20中を、入射位置130を中心として周回しながら加速ギャップ223を通過するたびに加速される。本実施形態の加速器1における取り出し可能なビームの運動エネルギーは、一例として、最小140MeV/u、最大430MeV/uである。運動エネルギーが大きいほどビームの周回周波数は小さくなり、入射直後の運動エネルギービームでは35MHz、430MeVに達したビームは22MHzでビーム通過領域20中を周回する。これらのエネルギーと周回周波数の関係は図8のようになる。
加速器1において電磁石11およびトリムコイル33によって形成される主磁場110は、ビームの軌道に沿って一様で、かつエネルギーが高くなるにつれ磁場が低下していく(図7参照)のような分布を作る。つまり、径方向外側の磁場が低下するような磁場を形成する。
このような磁場下では、設計軌道から半径方向に微小にずれた粒子は、設計軌道に戻すような復元力を受けると同時に、軌道面に対して鉛直な方向にずれた粒子も軌道面に戻す方向に主磁場110から復元力を受ける。すなわち、ビームのエネルギーに対して適切に磁場を小さくしていけば、常に設計軌道からずれた粒子は設計軌道に戻そうとする向きに復元力が働き、設計軌道の近傍を振動(ベータトロン振動)することになる。これにより、主磁場によって、安定にビームを周回・加速させることが可能である。各エネルギーのビームにおける主磁場110の値を図7に示した。主磁場110は、入射位置130で最大の4.63Tであり、最外周では4.45Tまで低下している。
上述の主磁場110分布は、電磁石11のコイル13とそれを補助するトリムコイル33に所定の励磁電流を流すことにより、磁極123a、123bが磁化され、コイル13由来の磁場と磁極123a、123b由来の磁場の重ね合わせとして励起される。イオンの入射位置130で磁場を大きくし、外周に向かって磁場を小さくする分布を形成するために、磁極123a、123bの磁極面124a、124bが対向する距離(ギャップすなわちキャビティ11aの高さ)は、キャビティ11aの中心部においてもっとも広がり、外周に向かって小さくなるように磁極面124a、124bおよびシム250の形状が定められている。さらに、磁極面123の形状は、ギャップ中心を通る平面(軌道面)に対して面対称の形状であり、軌道面上においては軌道面に垂直な方向の磁場成分のみを持つ。さらに、磁場分布の微調整を磁極面に設置されたトリムコイル33に印加する電流を調整することで行い、所定の主磁場110分布を励起している。
各エネルギーの軌道を図4に示す。図4のように、周回軌道は、最も外側に最大エネルギー435MeVの軌道に対応した半径1.5mの円軌道が存在し、そこから、0MeVまで磁気剛性率で51分割した都合51本の円軌道が存在している。点線は、各軌道の同一の周回位相を結んだ線であり、等周回位相線と呼ぶ。
図5に示すように、本実施形態の加速器1では、ビームの加速に従ってビームの軌道中心(設計軌道)が、軌道面内で一方向(半径方向Rp:図4のX=0におけるY方向)に向きを変えながら移動する。設計軌道が移動する結果、異なる運動エネルギーの軌道が互いに近接している箇所(周回軌道が集約する領域:集約領域240,241)と互いに遠隔している領域(周回軌道が離散する領域:離散領域242、243)が形成されている。すなわち、ビームの設計軌道が偏心している。
加速器1では、設計軌道が集約する集約領域240,241が2か所存在し、いずれの集約領域240,241においても設計軌道同士が最も近接している設計軌道の各点(集約点)を結ぶ線分は、すべての設計軌道に対して直交する線分となる。また、二つの離散領域242、243において、設計軌道同士が最も遠隔している設計軌道の各点を結ぶ線分は、すべての設計軌道に直交する線分となる。これら二つの線分は、同一直線上(図4ではX=0におけるY方向:半径方向Rp)に存在する。この直線を対称軸と定義すると、設計軌道の形状は、対称軸を通り、軌道面に垂直な面に対して面対称となる。
集約領域240,241では磁場の空間的な勾配が周囲と比較して急になるため、それに合わせて磁極123a,123bに対して鉄製のシム250等を配置することで所定の磁場分布を形成している。特に、本加速器1において、磁場勾配は低エネルギー側の集約点において最大となる。そのため、図2に示したように、イオン入射用貫通孔115の縁にシム250が配置されている。なお、図2では、集約領域241に配置されているシムの図示を省略している。
図4に示す等周回位相線は、集約領域から周回位相π/20ごとにプロットしている。ディー電極221とディー電極221に対向する接地電極222との間に形成される加速ギャップ223は集約点から見て±90度周回した等周回位相線244に沿って設置される。等周回位相線244は、図4のように入射位置130を中心とするW字型であるため、ディー電極221の辺縁221aと接地電極222は、等周回位相線244を挟んで対向し、かつ等周回位相線244の形状に沿ったW字型である。
上述のように高周波加速空胴21は、加速ギャップ223に高周波電場を励起する。上述したように高周波加速空洞21には、図6に示すように、低レベル高周波発生装置42およびアンプ43が入力カプラ211(図1参照)を通じて接続されている。高周波加速空洞21には、低レベル高周波発生装置42が発生し、アンプ43が増幅した高周波電力が導入され、これにより高周波加速空洞21のディー電極221と接地電極222の間の加速ギャップ223に高周波電場が励起される。一般に、ディー電極221が励起する電磁場は、電極形状および回転式容量可変キャパシタ212が持つ静電容量によって定まる特定の共振周波数および空間分布の電磁場となる。この場合、ビームが加速ギャップを通過する際に、加速ギャップ223のいたるところでディー電極221から接地電極221に対してある時刻において同じ向きの電場が生じ、ビームが半周して反対側の加速ギャップを通過する際に先ほどの向きとは逆向きに電場が生じる。結果として、加速ギャップ223をビームが通過する際に加速する方向に電場から力を与え、周回しながらビームエネルギーを増大させることができる。
本発明の加速器1においては、ビームの周回に同期して高周波電場を励起するため、電場の周波数を周回中のビームのエネルギーに対応して図8のグラフのように変調し、ビームを所望のエネルギーまで徐々に加速していく(図8)。共振モードを用いた高周波加速空胴21では、共振の幅よりも広い範囲で高周波の周波数を掃引する必要がある。そのために高周波加速空胴21の共振周波数も変更する必要が有る。その制御は高周波加速空胴21の端部に設置された回転式可変容量キャパシタ212の静電容量を変化せることで行う。回転式可変容量キャパシタ212の回転軸213には、導体板が接続されており、回転軸213を回転させることにより、導体板と外部導体との間に生じる静電容量を回転軸213の回転角によって制御することができる。すなわち、ビームの加速に伴い回転軸213の回転角を変化させることにより、高周波加速空胴21の共振周波数を変更することができる。
次いで、本実施形態の加速器1のビーム入射から取り出しまでのビームの挙動をさらに説明する。
まずイオン源12から低エネルギーのイオンが出力され、ビーム入射用貫通口115および入射位置130を介してビーム通過領域20にビームが導かれる。
イオン源12からビーム入射用貫通孔115内に入射した際、イオンは、ビーム入射用貫通孔115を横切る磁力線90の磁場90aからローレンツ力を受け、ドリフト運動するが、電極91が印加する電場により適切なキックを与えることにより、ほぼ軌道面20aに対して垂直な方向から入射位置130近傍に到達し、軌道面20a付近で、偏向器(不図示)によってビームの運動方向が軌道面20aに平行に偏向される。
このとき、本実施形態では、ビーム入射用貫通孔115および入射位置130を、図12、図13に示した比較例(従来構造)の可変エネルギー加速器よりも、磁極123a、123bの中心20cに近づけて配置しているため、磁場90aの入射ビーム経路25に直交する成分を低減することができる。よって、ローレンツ力につり合うキックを与える電極91の電場を、図12の比較例よりも小さくすることができる。その結果、図12の比較例よりも入射位置130に入射することのできる入射ビーム量が増加し、一つの運転周期で加速および照射可能な電荷量が増加させることができる。
ビーム通過領域20に入射されたビームは、加速ギャップ223を通過するたびに高周波電場による加速を受け、そのエネルギーが増大するとともに、軌道の回転半径を増加させていく。その後ビームは高周波電場による進行方向安定性を確保しながら、所望のエネルギーまで加速される。
上述したように加速ギャップ223に励起する高周波電場の周波数は、ビームの周回周波数のちょうど整数倍の比で同期するように設定されている。本実施形態では、粒子が、高周波電場が最大となる時刻に加速ギャップ223を通過するのではなく、時間的に高周波電場が減少している所定の位相で、粒子が加速ギャップ223を通過するように設定する。そのため、高周波電場の所定の位相で加速ギャップ223を通過して加速された粒子は、次のターンもほぼ同じ位相で加速ギャップ223を通過し加速される。一方、高周波電場の所定の位相よりも早い位相で、加速ギャップ223を通過して加速された粒子は、所定の位相で加速ギャップ223を通過して加速された粒子よりも、その加速量が大きいため、次のターンでは、前のターンよりも遅れた位相で加速ギャップ223を通過し、加速を受ける。また逆に、所定の位相より遅い位相で加速ギャップ223を通過し加速された粒子は、所定の位相で加速ギャップ223を通過して加速された粒子よりも、その加速量が小さいため、次のターンでは、前のターンよりも進んだ位相で加速ギャップを通過し、加速を受ける。このように、所定の位相からずれたタイミングの加速ギャップ223を通過する粒子には、所定の位相に戻す復元作用が働き、この作用によって、運動量分散Δpと高周波の位相からなる位相平面(進行方向)内において安定に振動する。この振動をシンクロトロン振動と呼ぶ。すなわち、加速中の粒子はシンクロトロン振動をしながら、徐々に加速され、所定のエネルギーに達する。安定なシンクトロン振動をする間、個々の粒子は、位相平面上に高周波バケツと呼ばれる安定領域内で回転運動をする。
全体制御装置40は、所定の取り出しビームを目標のエネルギーで加速器1から取り出すために、高周波加速空胴21に印加されている高周波電場の振幅を、徐々に低くし、ビームが目標エネルギーに達したところで高周波電場の振幅が0となるように、低レベル高周波発生装置42とアンプ43の出力を制御する。これにより、ビームは、目標エネルギーで安定に加速器1内を周回する。
この状態で、擾乱用電極313に対して、ビームのベータトロン振動の周波数に一致する高周波電圧を印加すると、ビームは、進行方向の位置、すなわち擾乱用電極313を通過する時刻に依存する擾乱を受ける。特定の粒子に着目すると、擾乱用電場と周回のベータトロン振動の周波数が一致しているため、両者は共鳴し、ある粒子のベータトロン振動振幅が増大する。その粒子のベータトロン振動振幅が増大し続けると、設計軌道の外側に設置された付加磁場発生用シム311が励起するキック磁場の作用が及ぶ領域を通過する。これにより、キック磁場の作用を受けて、急激にベータトロン振動が発散し、設計軌道から見て外側に、ビームが変位する。その結果、ビームは、取り出しチャネル312に到達し、取り出し軌道322上を通り、加速器1の取り出しビーム用貫通孔111から外部に取り出される。
上述のようにビームが、加速器1内で目標エネルギーに達してから加速器1から取り出されるまでの間、ビームを構成する個々の粒子は、付加磁場発生用シム311が形成する四極磁場および六極以上の多極磁場によって、ビームの水平方向の位置と傾きで定まる位相空間上において、安定に周回できる領域と不安定に軌道ずれが増大し続ける領域とに分けられた状態で周回する。この安定領域と不安定領域の境界をセパラトリクスと称する。
また、擾乱用電極313に印加される電場が切られるとビームのベータトロン振動振幅の増大が停止し、安定領域内でビームが周回するため、ビームの取り出しを停止することができる。
上述のような原理によってビームを加速し、あるひとつのエネルギーのビームを加速器1外に取り出すときの各機器の制御動作を、図9のダイアグラムと図10のフローチャートを用いて説明する。
図9のダイアグラムの縦軸は、上から順に、回転式可変容量キャパシタ212の回転軸213の回転角、高周波加速空胴21の共振周波数、高周波加速空胴21に入力する高周波電力の周波数、加速ギャップ223における高周波電場の電圧振幅、イオン源12が出力するビーム電流波形、擾乱用電極313に入力される擾乱用高周波電場の振幅、加速器1内のビームの水平エミッタンス(ビームサイズ)、加速器1から出力されるビーム電流波形を示している。図9に示すダイアグラムの横軸はすべて時間である。
図10のフローは、全体制御装置40および電圧振幅計算装置45の動作を示す。全体制御装置40および電圧振幅計算装置45は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、CPUが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、図10のフローの動作をソフトウエアにより実現する。なお、全体制御装置40および電圧振幅計算装置45は、その一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて全体制御装置40および電圧振幅計算装置45の一部または全部を構成し、図10のフローの動作を実現するように回路設計を行えばよい。
ユーザからビームの照射開始を指示されたならば、図10のステップ111において、電圧振幅計算装置45は、治療計画データベース60から照射すべきビームのエネルギーを読み込む。
つぎに、ステップ112において、全体制御装置40は、照射すべきビームのエネルギーまでビームを加速するために必要な高周波電場の印加時間Tを算出する。具体的には、全体制御装置40は、ビームのエネルギーごとに予め求めておいたそのエネルギーまで加速するのに要する高周波電場の印加時間Tとの関係を定めたテーブルや数式に基づいて、読み込んだビームのエネルギーまで加速するのに必要な高周波電場の印加時間Tを算出する。また、全体制御装置40は、ビームのエネルギーごとに予め求めておいた電圧低下タイミングTdの関係を定めたテーブルや数式に基づいて、読み込んだビームのエネルギーに対応する低下開始タイミングT1dを算出する。この低下開始タイミングT1dは、そのタイミングで高周波加速空胴21への高周波電力の電圧振幅を低下または停止させた場合、加速ギャップ223の加速用高周波電場が0になる時点で、ビームが目標エネルギーに到達すると見込まれるタイミングである。
ステップ113において、全体制御装置40は、モータ制御装置41に指示し、サーボモータ214を動作させ、図9に示すように、回転式可変容量キャパシタ212の回転軸213を所定の角速度で回転させる。その回転軸213の回転角によって、図9のように高周波加速空胴21の基本モードの共振周波数f1が周期的に変化する。この時間では、まだ加速用の高周波電力は、高周波加速空洞21には入力されていない。
ステップ114において、全体制御装置40は、図9に示すように、運転周期の開始直後から、イオン源12から所定時間ビームを出力させる。これにより、加速器1の入射位置130から加速器1の内部に、イオンビームが所定時間入射する。
このとき、イオン入射用貫通孔115には、電極91から予め計算しておいた大きさの電場を印加し、イオンビームが受けるローレンツ力につり合わせ、イオンビームの入射位置130への入射効率を高めている。
ステップ115において、イオン源12の入射直後から全体制御装置40は、ステップ111で電圧振幅計算装置45が算出した電圧振幅E1で、かつ、回転軸213の回転角によって変化する高周波加速空胴21の基本モードの共振周波数f1に同期した周波数f2の高周波電力を、高周波加速空洞21に低レベル高周波発生装置42およびアンプ43から入力させる。これにより、加速器1の安定なシンクロトロン振動が可能な範囲に入射したビームは、加速ギャップ223を通過することにより高周波電場Eにより加速されながら加速器1の内部を周回する。これに対し、シンクロトロン振動が安定しない粒子は、加速されずに加速器1内部の構造物に衝突し、失われる。共振周波数が低下するにつれてビームは加速されていき、所定の取り出しエネルギー近くまで加速される。
ステップ116において、高周波電力の入力開始からステップ112で定めた時刻T1dに達したならば、高周波電圧の振幅Eを停止させる。高周波加速空胴21が発生する加速用高周波電場は、高周波加速空胴21の共振のQ値に基づいて徐々に電圧振幅が小さくなり(漸減)、上述の高周波バケツ710が消失していく。
ステップ117において、全体制御装置40は、この時刻T1dから擾乱高周波の立ち上げを開始するように攪乱高周波制御装置47に指示する。これにより、攪乱高周波制御装置47は、高周波電源46を動作させ、攪乱用電極313に高周波電力を出力する。高周波電源46から擾乱用電極313に出力される高周波電力の電圧値は、擾乱高周波制御装置47によって制御されており、その指定値は取り出しビームエネルギーと取り出しビームの出力電流から一意に定まる値として治療計画データベース60によって定められ、全体制御装置40より指示される。攪乱用電極313は、攪乱用高周波電場を発生し、加速器1を周回しているビームは、この電場により擾乱を受けて、図9のように水平方向のエミッタンスが増大する。
ステップ118において、ステップ112で定めた印加時間Tが経過した時点で加速用高周波電場の電圧振幅がゼロになる。加速用高周波電場の電圧振幅が十分小さくなった時点で、加速器1内のビームは所定の取り出しエネルギーに達している。
同時に、ビームの水平エミッタンス(ビームサイズ)は、攪乱用電極313の擾乱高周波電場からの作用で増大しており、付加磁場発生用シム311が励起するキック磁場の作用が及ぶ領域を通過し、取り出し用セプタム電磁石312が形成する磁場が及ぶ範囲に到達し、取り出し軌道322上を通り、加速器1の取り出しビーム用貫通孔111から外部に取り出される。
ステップ119において、全体制御装置40は、ビームを取り出す時間が治療計画データベース60により予め定められた時間を経過するまで、攪乱用電極313に擾乱高周波電力の印加を継続する。その間、攪乱用電極313の攪乱用高周波電場の作用により、加速器1からのビームの取り出しが継続される。ビーム取り出し時間は、周回中の全電荷が加速器1からすべて取り出されるか、取り出したビームが、治療計画で定められた所定の照射線量に到達する時間に設定されている。本実施形態では、高効率で加速器1からビームを取り出す際の取り出すことができるため、ビーム取り出し時間を従来よりも短く設定することができる。
この間、高周波加速空胴21に付随のサーボモータ214は回転を続け、共振周波数は変動を続けるが、高周波加速空胴21には加速用高周波が入力されていないため、ビームに対する影響はほとんど生じない。よってビームは一定のエネルギーで周回し続け、印加されている擾乱高周波によって順次取り出されていく。
ビーム取り出し時間が経過したならば、全体制御装置40は、ステップ120に進み、攪乱用電極313への擾乱高周波電力の印加を停止する。擾乱高周波の強度によってではあるが、擾乱高周波をオン/オフすることにより、ビームのオン/オフの制御が可能である。また、図9に示すように、運転周期よりも長い期間ビームを取り出すことも可能である。なお、ここでいう運転周期とは、共振周波数が最大となる時刻から次に最大となる時刻までの期間である。
照射が終了すると、ステップ111に戻り、電圧振幅計算装置45は、次に取り出すべきビームのエネルギーを治療計画データベースから読み込む。ステップ112以降が上述のフローと同様に行われる。図9に示した例では、後半の運転周期では、前の運転周期よりも大きなエネルギーのビームを照射するため、高周波電場の印加時間T2を前の運転周期の加速用高周波電場の印加時間T1より長く設定して、大きなエネルギーまでビームを加速している。
本実施形態の加速器は、イオン入射用貫通孔115の位置と、周回軌道の移動方向に工夫を凝らしたことにより、小型で、取り出しビームのエネルギーが変更可能な加速器でありながら、外部イオン源から加速器内へのビーム入射の効率を高めることができる。その結果として出射されるイオンビームの線量率を向上させることができる。
<<<第2の実施形態>>>
本発明の第2の実施形態の粒子線治療システムについて図11を用いて説明する。第1の実施形態と同じ構成には同一の符号を示し、説明は省略する。
第2の実施形態は、第1の実施形態の加速器1を用いたた粒子線治療システムである。システムの全体構成図を図11に示す。
粒子線治療システム1000は、患者5の患部(標的)に対して、患部の体表からの深さに応じて適切なエネルギー値の陽子線あるいは炭素線(以下ではまとめてビームと呼ぶ)を照射する装置である。図11に示すように、粒子線治療システム1000は、イオンを加速する加速器1と、加速器1で加速されたビームを後述する照射装置に対して輸送するビーム輸送系2と、ビーム輸送系2によって輸送されたビームを治療台4に固定された患者5内の標的に照射する照射装置3と、加速器1、ビーム輸送系2および照射装置3を制御する全体制御装置40および照射制御装置50と、標的に対するビームの照射計画を作成する治療計画装置70と、この治療計画装置70によって作成された治療計画が記憶された治療計画データベース60と、を備えている。また、加速器1には、第1の実施形態で説明した取り出しチャネル312が接続され、第1の実施形態で説明した仕組みによりビームを取り出すことができる。
粒子線治療システム1000では、照射する粒子線のエネルギーと線量は、治療計画データベース60に記憶された治療計画のデータを読み込むことによって定められる。治療計画が定めた、粒子線のエネルギーと照射量を全体制御装置40から照射制御装置50に順次入力し、適切な照射量を照射した時点で次のエネルギーに移行して再度粒子線を照射する。
なお、粒子線治療システム1000のビーム輸送系2は、図11に示すような固定されたものに限られず、回転ガントリと呼ばれる照射装置3ごと患者5の周りを回転可能とした輸送系とすることができる。また、照射装置3は一つに限られず、複数設けることができる。更には、ビーム輸送系2を設けずに、加速器1から直接照射装置3に対してビームを輸送する形態とすることができる。
<その他>
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
1…加速器
2…ビーム輸送系
3…照射装置
11…電磁石
12…イオン源
13…コイル
20…ビーム通過領域
20a…軌道面
21…高周波加速空胴
33…トリムコイル
40…全体制御装置
41…モーター制御装置
42…低レベル高周波発生装置
43…アンプ
46…高周波電源
47…擾乱高周波制御装置
50…照射制御装置
60…治療計画データベース
91…電極
111…取り出しビーム用貫通口
112…コイル接続用貫通口
114…高周波電力入力用貫通口
115…ビーム入射用貫通口
121…リターンヨーク
122…天板
123…磁極
130…入射部
211…入力カプラ
212…回転式可変容量キャパシタ
213…回転軸
214…サーボモータ
221…ディー電極
222…接地電極
223…加速ギャップ
311…付加磁場発生用コイル
312…取り出しチャネル
313…擾乱用電極
322…取り出し軌道
1000…粒子線治療システム

Claims (13)

  1. イオンビームを周回させる軌道面を挟んで対向配置された一対の磁極を含み、前記軌道面に複数の周回軌道を生じさせる主磁場を形成する電磁石と、
    外部からイオンビームを前記軌道面の所定の入射位置に導入するために前記磁極に形成されたイオン入射用貫通孔と、
    前記一対の磁極間に形成されたキャビティに挿入され、前記軌道面を周回するイオンビームを加速する高周波を発生する高周波加速空胴と、
    前記キャビティの外周に配置された、最外周および最外周よりも内側の1以上の前記周回軌道上の移動中のイオンビームに磁場を印加して移動方向を前記周回軌道から外れさせる付加磁場発生部、および、前記周回軌道を外れたイオンビームを前記キャビティの外へ導く取出チャネルとを有し、
    前記イオンビームが加速されるにつれ、前記周回軌道は、その半径が徐々に大きくなり、かつ、その中心が前記キャビティの所定の半径方向に沿って周縁部に近づく方向に移動した後、移動方向を反転して前記キャビティの中心に向かってさらに移動するように前記主磁場の前記軌道面内の強度分布が設計されていることを特徴とする加速器。
  2. 請求項1に記載の加速器であって、前記周回軌道は、その半径が予め定めた第1の半径に到達するまで、その中心が前記キャビティの前記所定の半径方向に沿って前記キャビティの周縁部に近づく方向に移動し、前記第1の半径に到達した後、前記半径方向に沿って前記キャビティの中心に向かって移動するように、前記電磁石の前記主磁場の前記強度分布が設計されていることを特徴とする加速器。
  3. 請求項1に記載の加速器であって、前記一対の磁極は、それぞれ円筒形であり、前記軌道面を挟んで対称になるように配置された磁極面を有し、
    前記イオン入射用貫通孔は、中心軸が前記軌道面に対して垂直であって、前記所定の半径方向と直交する位置に設けられていることを特徴とする加速器。
  4. 請求項1に記載の加速器であって、前記イオン入射用貫通孔の中心軸と、前記キャビティの中心との距離は、前記キャビティの半径の長さの50%以内に設けられていることを特徴とする加速器。
  5. 請求項3に記載の加速器であって、前記磁極面には、前記イオン入射用貫通孔と前記磁極の中心との間であって、前記イオン入射用貫通孔に隣接する位置に、シムが配置されていることを特徴とする加速器。
  6. 請求項5に記載の加速器であって、前記イオン入射用貫通孔および前記シムは、対向する前記磁極に前記軌道面を挟んで対称な位置にそれぞれ設けられ、
    前記一対のシム間の距離は、前記イオン入射用貫通孔と前記磁極面の外周との間の前記所定の半径方向に沿った位置であって、前記イオン入射用貫通孔に隣接する位置の前記一対の磁極面間の距離、または、その位置に配置されたシムの距離よりも狭いことを特徴とする加速器。
  7. 請求項1に記載の加速器であって、前記電磁石の外側には前記イオン入射用貫通孔にイオンビームを入射するイオン源が設置されていることを特徴とする加速器。
  8. 請求項1に記載の加速器であって、前記取出チャネルは、前記キャビティの前記所定の半径方向の外周部に配置されていることを特徴とする加速器。
  9. 請求項5に記載の加速器であって、前記イオン入射用貫通孔と前記磁極の中心との間であって、前記半径方向に沿った各位置の磁場勾配は、前記シムが配置されている位置の磁場勾配が最も大きいことを特徴とする加速器。
  10. 請求項9に記載の加速器であって、前記イオン入射用貫通孔と前記キャビティの外周との間であって、前記半径方向に沿った各位置の磁場勾配は、前記キャビティの周縁部が最も大きいことを特徴とする加速器。
  11. 請求項3に記載の加速器であって、前記磁極面には、複数のリング状のトリムコイルが備えられ、前記トリムコイルは、前記軌道面の複数の前記周回軌道に対応する半径であり、前記周回軌道に対応する位置の磁極面に備えられていることを特徴とする加速器。
  12. 請求項1に記載の加速器であって、前記加速空洞は、ディー電極を含み、前記ディー電極の辺縁は、前記軌道面に平行に前記キャビティを横切るように配置され、前記辺縁の形状は、前記入射位置の近傍を中心とするW字型であることを特徴とする加速器。
  13. 粒子線ビームを患者に照射する粒子線治療システムにおいて、前記粒子線ビームの発生装置として、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の加速器を用いることを特徴とする粒子線治療システム。
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