以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の「受信装置」に相当する携帯機の構成図である。図1の携帯機1は、いわゆるスマートエントリーシステムの一部を構成する電子キーである。すなわち、携帯機1は、車両のユーザに携帯され、車両に搭載された車載装置から送信されたリクエスト信号に応答してIDコードを含むレスポンス信号を送信する。車載装置は、そのレスポンス信号に含まれたIDコードと、マスターIDコードとの照合を行い、照合成功の場合には、車両ドアの施錠又は解錠を許可したり、車両のエンジン始動を許可したりする。なお、車載装置は、車室内や車両ドア周囲(車両ドアから数mの範囲)にリクエスト信号を送信する。そのリクエスト信号の周波数帯はLF(low frequency)の周波数帯(例えば約134kz)である。
以下、図1を参照して、携帯機1の構成を説明する。携帯機1は、X軸アンテナ11a、Y軸アンテナ11b、Z軸アンテナ11c、コンデンサ12a〜12c、受信IC13、制御部17、送信部18、送信アンテナ19、ロックスイッチ8及びアンロックスイッチ9を備えている。
X軸アンテナ11a、Y軸アンテナ11b及びZ軸アンテナ11cは、上述のリクエスト信号(LF信号)を受信するための所定の受信帯域及び所定の利得をもつアンテナ(つまり、LFアンテナ)である。また、X軸アンテナ11a、Y軸アンテナ11b及びZ軸アンテナ11cは、あらゆる方位からの電波(つまり、信号)を受信可能なように3軸方向に対して設けられている。そして、X軸アンテナ11a、Y軸アンテナ11b及びZ軸アンテナ11cは、信号を受信した場合に、受信した信号を受信IC13に送る。なお、LFアンテナ11a〜11cの受信帯域は、LF信号の周波数である134.2kHzにピークが合わさるよう設定されているとともに、LFアンテナ11a〜11cの受信周波数特性の半値幅がこのピークから例えば前後に約2kHzずつとなるように設定されている。また、LFアンテナ11a〜11cの利得は、任意に設定可能なものであって、正規のLF信号(リクエスト信号)を十分に受信できる程度に設定されている。本実施形態では、例えばデフォルトのLFアンテナ11a〜11cの利得は、一般的なスマート携帯機のLFアンテナの利得と同程度になるように設定されているものとする。
コンデンサ12a〜12cは、それぞれX軸アンテナ11a、Y軸アンテナ11b及びZ軸アンテナ11cに接続されて並列共振回路を構成している。詳しくは、コンデンサ12aはX軸アンテナ11aに接続されてコンデンサ12aとX軸アンテナ11aとで並列共振回路を構成しており、コンデンサ12bはY軸アンテナ11bに接続されてコンデンサ12bとY軸アンテナ11bとで並列共振回路を構成しており、コンデンサ12cはZ軸アンテナ11cに接続されてコンデンサ12cとZ軸アンテナ11cとで並列共振回路を構成している。なお、コンデンサ12a〜12cとして、容量を変化させることによってLFアンテナ11a〜11cの共振周波数を変更させ、LFアンテナ11a〜11cの受信帯域の微調整を行うことを可能にする可変コンデンサを用いる構成としてもよい。また、可変コンデンサの容量の変化は、受信IC13からの信号によって行うものとする。
受信IC13は、CPU14、ダンプ抵抗(ダンピング抵抗)15a〜15c、及びスイッチ16a〜16cを少なくとも含んでいる。ダンプ抵抗15a〜15cは、周知の電気抵抗であって、並列共振回路に並列に接続されることによって共振回路の共振の鋭さ(Q)、つまり、LFアンテナ11a〜11cの利得を低下させるものである。詳しくは、ダンプ抵抗15aはX軸アンテナ11aに接続され、ダンプ抵抗15bはY軸アンテナ11bに接続され、ダンプ抵抗15cはZ軸アンテナ11cに接続されている。また、図2に示すように、各ダンプ抵抗15a〜15cはそれぞれ、並列に接続された複数の抵抗151から構成されている。各抵抗151の値は同じであっても良いし、異なっていたとしても良い。本実施形態では、各抵抗151の値は同じであるものとする。
スイッチ16a〜16cは、ダンプ抵抗15a〜15cに直列に接続され、CPU14からの指示にしたがってスイッチング状態を切り替えることによってダンプ抵抗15a〜15cの有効無効の状態を切り替えるものである。詳しくは、スイッチ16aはダンプ抵抗15aに接続され、スイッチング状態がオンのときにダンプ抵抗15aを有効の状態に切り替えさせ、スイッチング状態がオフのときにダンプ抵抗15aを無効の状態に切り替えさせる。また、スイッチ16bはダンプ抵抗15bに接続され、スイッチング状態がオンのときにダンプ抵抗15bを有効の状態に切り替えさせ、スイッチング状態がオフのときにダンプ抵抗15bを無効の状態に切り替えさせる。また、スイッチ16cはダンプ抵抗15cに接続され、スイッチング状態がオンのときにダンプ抵抗15cを有効の状態に切り替えさせ、スイッチング状態がオフのときにダンプ抵抗15cを無効の状態に切り替えさせる。
より詳しくは、各スイッチ16a〜16cは、図2に示すように、各ダンプ抵抗15a〜15cを構成する複数の抵抗151のそれぞれに直列に接続された複数のスイッチ161から構成されている。これら複数のスイッチ161のうちのオンにするスイッチの個数を制御することで、ダンプ抵抗15a〜15cの値を切り替えることができるようになっている。具体的には、全てのスイッチ161がオンのときにダンプ抵抗15a〜15cの値(有効状態になる抵抗151の合成抵抗値)は最も小さくなり、LFアンテナ11a〜11cの利得としては最も低くなる。そして、オンにするスイッチ161の個数が減るにしたがって、ダンプ抵抗15a〜15cの値(有効状態になる抵抗151の合成抵抗値)は大きくなっていき、これにともないLFアンテナ11a〜11cの利得も高くなっていく。全てのスイッチ161がオフのときに、ダンプ抵抗15a〜15cは無効の状態となり、LFアンテナ11a〜11cの利得としては最も高くなる。なお、ダンプ抵抗15a〜15cの値(有効状態になる抵抗151の合成抵抗値)が小さくなるほど、LFアンテナ11a〜11cの受信信号の電流がダンプ抵抗15a〜15cに流れ込みやすくなり、後段の回路に送られる信号の電流が少なくなるので、LFアンテナ11a〜11cの利得としては低くなる。
CPU14は、LFアンテナ11a〜11cのうちの少なくともいずれかで信号を受信した場合に、そのLFアンテナから送られてくる信号に応じた処理を実行する。また、CPU14は、スイッチ16a〜16c(スイッチ161)のオンオフ制御を行うことで、LFアンテナ11a〜11cの利得(ダンプ抵抗15a〜15cの値)を調整する処理を実行する。さらに、CPU14は、LFアンテナ11a〜11cで信号(車両からのリクエスト信号)の受信が無い時にはスリープ状態となり、信号の受信を受けた場合に起動する。なお、本実施形態では、スリープ状態とは、常時動作をしている場合に比べて消費電力を抑えた状態をいうものとし、具体的には、間欠動作をする状態や、信号の受信を受けたときに起動しそれ以外はスリープしている状態をいう。また、本実施形態では、「信号を受けた場合に起動」における起動とは、常時動作をする状態をいう。CPU14が実行する処理の詳細は後述する。
受信IC13は、図1に示す構成以外の構成を含んでいる。ここで、図3は、受信IC13の詳細な構成を示している。なお、図3では、受信IC13以外に、アンテナ部の一部を構成するLFアンテナ11a〜11c、コンデンサ12a〜12cも図示するとともに、CPU14の図示を省略している。
図3に示すように、受信IC13は、検波回路21、比較電圧発生回路22、比較回路28、タイマ29及びダンプ抵抗選択マップ30をさらに含む。検波回路21は、LFアンテナ11a〜11c、コンデンサ12a〜12c、ダンプ抵抗15a〜15c及びスイッチ16a〜16cから構成されたアンテナ部に接続されており、そのアンテナ部から送られてくる変調信号を復調する回路である。車載装置は例えばAM変調のLF信号を送信するが、検波回路21はこのAM変調されたLF信号を復調する回路として構成されている。具体的には、検波回路21は、アンテナ部からの信号を増幅するアンプや、LF帯の信号を低周波の信号に変換する周波数変換器や、周波数変換後の信号を包絡線検波する検波部などから構成されている。そして、検波回路21は、包絡線検波後の信号の振幅電圧(受信信号レベル)を比較回路28に出力する。
なお、検波回路21は、LFアンテナ11a〜11cごとに設けられている。すなわち、検波回路21は、X軸アンテナ11a、コンデンサ12a、ダンプ抵抗15a及びスイッチ16aから構成されたX軸アンテナ部に接続されて、そのX軸アンテナ部から送られた信号を検波(復調)する第1の検波回路211を含む。また、検波回路21は、Y軸アンテナ11b、コンデンサ12b、ダンプ抵抗15b及びスイッチ16bから構成されたY軸アンテナ部に接続されて、そのY軸アンテナ部から送られた信号を検波(復調)する第2の検波回路212を含む。また、検波回路21は、Z軸アンテナ11c、コンデンサ12c、ダンプ抵抗15c及びスイッチ16cから構成されたZ軸アンテナ部に接続されて、そのZ軸アンテナ部から送られた信号を検波(復調)する第3の検波回路213を含む。比較回路28もLFアンテナ11a〜11cごとに設けられているが、第1の検波回路211は第1の比較回路281に信号の振幅電圧を出力し、第2の検波回路212は第2の比較回路282に信号の振幅電圧を出力し、第3の検波回路213は第3の比較回路283に信号の振幅電圧を出力する。
比較電圧発生回路22は、抵抗24とコンデンサ25とのRC回路として構成されている。詳しくは、比較電圧発生回路22は、バッテリ23、抵抗24、コンデンサ25及びスイッチ26を含み、抵抗24、コンデンサ25及びスイッチ26が直列に接続されるとともに、抵抗24、コンデンサ25及びスイッチ26から構成された直列回路の両端にバッテリ23が接続される形で構成されている。バッテリ23は、携帯機1の全体の電力を供給するバッテリ(電池)とすることができる。スイッチ26がオンすると、バッテリ23からの電荷が時間の経過とともに次第にコンデンサ25に蓄えられていき、それに伴いコンデンサ25の充電電圧が次第に大きくなっていく。そして、比較電圧発生回路22の出力端子27からコンデンサ25の充電電圧が出力されるようになっている。なお、スイッチ26がオンしてからのコンデンサ25の充電電圧(出力端子27の電圧)の時間変化は、抵抗24の値とコンデンサ25の容量とで定まる時定数により定まる。比較電圧発生回路22(出力端子27)から出力される充電電圧を比較電圧Vrefとして、比較電圧発生回路22は比較電圧Vrefを比較回路28に出力する。なお、比較電圧Vrefが本発明の「基準電圧」に相当する。
なお、比較電圧発生回路22は、LFアンテナ11a〜11cごとに設けられたとしても良いし、1つだけ設けられたとしても良い。本実施形態では、比較電圧発生回路22は1つだけ設けられているとする。比較電圧発生回路22は、比較電圧Vrefを第1の比較回路281にも出力するし、第2の比較回路282にも出力するし、第3の比較回路283にも出力する。
比較回路28は、検波回路21から出力された振幅電圧Vam(受信信号レベル)と、比較電圧発生回路22から出力された比較電圧Vrefとを比較し、その比較結果を出力する回路である。詳しくは、比較回路28は、比較電圧Vrefが振幅電圧Vam以下の場合には比較結果として「0」を出力し、比較電圧Vrefが振幅電圧Vamより大きい場合には比較結果として「1」を出力する。
また、上述したように、比較回路28は、各LFアンテナ11a〜11cに対応して3つの比較回路281〜283を含む。第1の比較回路281は、第1の検波回路211から出力された振幅電圧Vam1(X軸アンテナ11aで受信した信号の振幅電圧)と比較電圧Vrefとの比較結果を出力する。第2の比較回路282は、第2の検波回路212から出力された振幅電圧Vam2(Y軸アンテナ11bで受信した信号の振幅電圧)と比較電圧Vrefとの比較結果を出力する。第3の比較回路283は、第3の検波回路213から出力された振幅電圧Vam3(Z軸アンテナ11cで受信した信号の振幅電圧)と比較電圧Vrefとの比較結果を出力する。
タイマ29は、時間を計測するものであり、ノイズレベルの測定開始から比較回路28が「1」の比較結果を出力するまでの時間Tcntを計測するために用いられる。なお、タイマ29は、LFアンテナ11a〜11cごとに3つ設けられたとしても良いし、1つだけ設けられとしても良い。本実施形態では、タイマ29は1つだけ設けられているものとする。
ダンプ抵抗選択マップ30は、受信IC13のメモリに記憶され、LFアンテナ11a〜11cが受信したノイズの強度(ノイズレベル)と、後述する処理で選定するダンプ抵抗15a〜15cの値との関係を示したマップである。ここで、図4は、ダンプ抵抗選択マップ30の概念図を示している。図4に示すように、ダンプ抵抗選択マップ30は、ノイズレベルに相関するタイマ29の計測時間Tcntに対するダンプ抵抗の値(有効状態にする抵抗151(図2参照)の合成抵抗値)の関係として構成されている。計測時間Tcnt(ノイズレベル)が長くなるほどダンプ抵抗の値が小さくなっている。これは、ノイズレベルが大きくなるほど、ダンプ抵抗の値を小さくして、LFアンテナの利得を下げる必要があるからである。
なお、ダンプ抵抗選択マップ30として、図5に示すように、計測時間Tcntと、有効の状態にする抵抗151(図2参照)の個数(オンにするスイッチ161の個数)との関係として構成しても良い。この図5のマップでは、計測時間Tcntが長くなるほど、有効の状態にする抵抗151の個数が多くなっている。
なお、図4、図5のマップでは、分かりやすくするために、計測時間Tcntに比例してダンプ抵抗の値や個数が変化する例を示しているが、計測時間Tcntとダンプ抵抗の値や個数は比例関係になるとは限らない。図4、図5のマップにおけるダンプ抵抗の値や個数は、各LFアンテナ11a〜11cが受信したノイズを、受信IC13が信号受信と認識しないレベル(所定レベル以下)まで減衰させ、かつ、正規のLF信号を所定レベル以下まで減衰しないように、定められる。
図1の説明に戻り、制御部17は、通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU、ROMやRAMなどのメモリ、I/O、及びこれらの構成を接続するバスライン(図示外)を備えている。なお、制御部17のROMには固有のIDコードや各種の制御プログラム等が格納されている。制御部17は、受信IC13(詳しくは受信IC13のCPU14)からウェークアップの指示を受けた場合に起動し、ROMに格納されているIDコードのデータを送信部18に送る。なお、制御部17が起動される場合には、バッテリ23(図3参照)から必要な電力が供給されるようになっているものとする。また、制御部17は、制御部17で行う処理が完了した後に受信IC13(詳しくは受信IC13のCPU14)に完了信号を送り、スリープ状態に移行する。
また、制御部17にはロックスイッチ8及びアンロックスイッチ9が接続されている。そして、制御部17は、ロックスイッチ8がユーザにより操作された場合には、車両ドアの施錠を指示する信号(施錠指示信号)を送信部18に送信させる。車載装置は、この施錠指示信号を受信した場合には、車両ドアを施錠する。また、制御部17は、アンロックスイッチ9がユーザにより操作された場合には、車両ドアの解錠を指示する信号(解錠指示信号)を送信部18に送信させる。車載装置は、この解錠指示信号を受信した場合には、車両ドアを解錠する。このように、携帯機1は、スマートエントリーシステムの電子キー(スマート携帯機)の機能に加えて、ユーザのスイッチ操作により車両から離れた場所から車両ドアの施解錠を可能にするワイヤレスキーの機能も有している。
送信部18は、制御部17から送られてきたIDコードのデータを、RF信号に変換して送信アンテナ19に送る。送信アンテナ19は、送信部18から送られてきたRF信号を送信する。
次に、受信IC13のCPU14が実行する処理の詳細を説明する。図6は、CPU14が実行する処理のフローチャートを示している。CPU14(受信IC13)は、信号の受信が無い間は間欠動作(スリープ状態)しているものとして、図6の処理はCPU14が間欠動作における起動時に実行される。また、図6の処理の開始時点では、各ダンプ抵抗15a〜15cの値は、前回のS7の処理で設定された値又は後述の図11の処理によりリセットされた状態となっている。
図6の処理を開始すると、先ず、LFアンテナ11a〜11cのうちの少なくともいずれかのLFアンテナで所定レベル以上の信号を受信したか否かを判定する(S1)。いずれのLFアンテナ11a〜11cからも所定レベル以上の信号が送られてこない場合には(S1:No)、S1に戻って、間欠動作を繰り返す(スリープ状態を継続する)。
LFアンテナ11a〜11cのうちの少なくともいずれかのLFアンテナから所定レベル以上の信号が送られてきた場合には(S1:Yes)、間欠動作モード(スリープ状態)から常時動作モードに移行する(S2)。次に、LFアンテナ11a〜11cから送られてくる信号のうち最も出力レベルが高いLFアンテナを選択する(S3)。
次に、S3で選択したLFアンテナである被選択LFアンテナから送られてきた信号をもとに、被選択LFアンテナで正規のLF信号(車両からのリクエスト信号)を受信したか否かを判定する(S4)。具体的には、例えば被選択LFアンテナから送られてくる信号の波形と予め登録しておいた正規のLF信号の波形とを比較し、正規のLF信号の波形に実質的に一致する波形をもつ信号を一定時間以内に検出できた場合に、正規のLF信号を受信したと判定する。これに対し、正規のLF信号の波形に実質的に一致する波形をもつ信号を一定時間以内に検出できなかった場合には、ノイズを受信したと判定する。また、例えば被選択LFアンテナから送られてくる信号の通信レート(通信速度)を算出し、その通信レートが、正規のLF信号として予め定められた値に一致するか否かに基づいて、正規のLF信号を受信したか否かを判定しても良い。
正規のLF信号を受信したと判定した場合には(S4:Yes)、通常通信を行う(S5)。すなわち、CPU14は、被選択LFアンテナに正規のLF信号の受信を継続させるとともに、正規のLF信号の受信が完了した場合には、制御部17にウェークアップの指示を行う。その後、CPU14は、制御部17から完了信号が送られてくるまで待機する。そして、制御部17から完了信号が送られてきた場合に、S7の処理に移行する。なお、制御部17は、CPU14からのウェークアップの指示に基づき起動し、起動後に送信部18にIDコードを含むレスポンス信号を送信させる。制御部17は、レスポンス信号の送信後に、通信完了を通知する完了信号をCPU14に送る。
一方、S4において正規のLF信号を受信しなかったと判定した場合には(S4:No)、一定時間、正規のLF信号の受信を待ち受け、その一定時間に正規のLF信号の受信が無い場合には、その待ち受けを打ち切る(タイムアウト)(S6)。その後、S7の処理に移行する。
S7では、LFアンテナ11a〜11cの受信信号レベルをノイズレベルとして測定して、そのノイズレベルに応じた値のダンプ抵抗を選択するダンプ抵抗選択処理を実行する。このダンプ抵抗選択処理の詳細は後述する。その後、CPU14(受信IC13)はスリープ状態(間欠動作モード)に移行し(S8)、S1の処理に戻る。
次に、S7のダンプ抵抗選択処理の詳細を説明する。なお、本実施形態では、例えば、携帯機1が車室内に位置しているなど、スマートエントリーシステムの車載装置以外の機器からノイズが継続的に出されている状況を想定している。つまり、正規のLF信号の通信中及び通信後もノイズが存在する状況を想定している。そのため、正規のLF信号の受信中にダンプ抵抗選択処理を実行しようとすると、正規のLF信号とノイズとを両方受信してしまうことになり、正確にノイズレベルを測定できない。また、正規のLF信号の受信前では、受信IC13はスリープ状態(間欠動作)となっており、ダンプ抵抗選択処理を実行するためには、受信IC13を起動する必要があり、消費電力が増加してしまう。そのために、正規のLF信号の受信後又はノイズによる誤起動後に、S7のダンプ抵抗選択処理を実行している。
図7は、ダンプ抵抗選択処理のフローチャートを示している。図7の処理を開始すると、先ず、ダンプ抵抗選択に関連する構成の通電を開始する(S11)。具体的には、図3に示す比較電圧発生回路22のスイッチ26をオンにして、コンデンサ25への充電を開始する。以降、比較電圧発生回路22からは、時間経過に伴い次第に大きくなる比較電圧Vrefが出力される。また、S11では、スイッチ26のオンと同時に、タイマ29による時間計測を開始する。さらに、S11では、各比較回路281〜283の通電を開始する。以降、比較回路281〜283からは、各LFアンテナ11a〜11cで受信した信号の振幅電圧Vamと比較電圧Vrefとの比較結果Com_refが出力される。
次に、各LFアンテナ11a〜11cの受信信号レベルをノイズレベルとして測定する(S12)。具体的には、図8〜図10の処理を実行する。図8は、X軸アンテナ11aのノイズレベルを測定する処理のフローチャートを示している。図9は、Y軸アンテナ11bのノイズレベルを測定する処理のフローチャートを示している。図10は、Z軸アンテナ11cのノイズレベルを測定する処理のフローチャートを示している。これら図8〜図10の処理は同時に実行される。
図8の処理から説明すると、先ず、第1の比較回路281から出力される比較結果Com_res1が「1」であるか「0」であるかを判定する(S21)。「0」の場合には(S21:No)、「1」になるまで待機する。この場合には、現時点では比較電圧Vrefは、X軸アンテナ11aから送られてくる信号の振幅電圧Vam1よりも小さい。比較結果Com_res1が「1」になった場合、つまり、比較電圧Vrefが振幅電圧Vam1より大きくなった場合には(S21:Yes)、タイマ29で計測中の時間(タイマカウント値)Tcnt1を取得する(S22)。このタイマカウント値Tcnt1は、X軸アンテナ11aで受信するノイズのレベルに相関する。具体的には、タイマカウント値Tcnt1が大きいほどノイズレベルは大きい。タイマカウント値Tcnt1の取得後、図8の処理を終了して、図7の処理に戻る。
同様に、図9、図10の処理では、第2、第3の比較回路282、283から出力される比較結果Com_res2、Com_res3が「1」になったか否かを判定し(S31、S41)、「0」の場合には(S31:No、S41:No)「1」になるまで待機し、「1」になった場合には(S31:Yes、S41:Yes)、タイマ29によるタイマカウント値Tcnt2、Tcnt3を取得する(S32、S42)。タイマカウント値Tcnt2はY軸アンテナ11bのノイズレベルに相関し、タイマカウント値Tcnt3はZ軸アンテナ11cのノイズレベルに相関する。
図7の処理に戻って、S12により、タイマカウント値Tcnt1、Tcnt2、Tcnt3のいずれかを取得した後、S13に移行して、全てのタイマカウント値Tcnt1、Tcnt2、Tcnt3を取得できたか否かを判定する(S13)。未だ取得できない場合には(S13:No)、S12の処理に戻って、取得できていないタイマカウント値の測定を継続する。全てのタイマカウント値Tcnt1、Tcnt2、Tcnt3を取得できた場合には(S13:Yes)、S14の処理に移行する。
S14の処理では、各タイマカウント値Tcnt1、Tcnt2、Tcnt3に基づいて、各ダンプ抵抗15a〜15cの値を選定する。具体的には、タイマカウント値Tcnt1と、ダンプ抵抗選択マップ30(図4又は図5のマップ)とに基づいて、X軸アンテナ11aに接続されたダンプ抵抗15aの値又は個数を選定する。すなわち、図4のマップから、タイマカウント値Tcnt1に対応するダンプ抵抗の値を読み取り、又は図5のマップから、タイマカウント値Tcnt1に対応するダンプ抵抗の個数(オンにするスイッチ161(図2参照)の個数)を読み取る。同様に、タイマカウント値Tcnt2とダンプ抵抗選択マップ30とに基づいて、Y軸アンテナ11bに接続されたダンプ抵抗15bの値又は個数を選定する。同様に、タイマカウント値Tcnt3とダンプ抵抗選択マップ30とに基づいて、Z軸アンテナ11cに接続されたダンプ抵抗15cの値又は個数を選定する。
次に、S14で選定した抵抗値又は個数となるように、各ダンプ抵抗15a〜15cの値を切り替える(調整する)(S15)。具体的には、タイマカウント値Tcnt1に基づいて選定した抵抗値又は個数となるように、図2の各スイッチ161のオンオフを制御して、ダンプ抵抗15aの値を調整する。同様に、タイマカウント値Tcnt2に基づいて選定した抵抗値又は個数となるように、図2の各スイッチ161のオンオフを制御して、ダンプ抵抗15bの値を調整する。同様に、タイマカウント値Tcnt3に基づいて選定した抵抗値又は個数となるように、図2の各スイッチ161のオンオフを制御して、ダンプ抵抗15cの値を調整する。これによって、以降、各LFアンテナ11a〜11cから受信IC13にノイズが送られるのを抑制でき、正規のLF信号のみが送られるようにすることができる。
次に、ダンプ抵抗選択に関連する構成の通電を停止(オフ)する(S16)。具体的には、比較電圧発生回路22のスイッチ26をオフにし、タイマ29による時間計測を停止し、比較回路281〜283の通電を停止する。なお、S16の処理は、S13の処理後、S14の処理前に実行しても良い。その後、図7の処理を終了して、図6の処理に戻る。図6の処理に戻った後、上述したように、CPU14(受信IC13)はスリープ状態(間欠動作モード)に移行する(S8)。
CPU14は、図7のダンプ抵抗選択処理で選択したダンプ抵抗をリセットする処理も実行する。CPU14は、ダンプ抵抗のリセット処理として、図11の処理と図12の処理の少なくとも一方を実行する。図11は、ダンプ抵抗のリセット処理の第1例のフローチャートを示している。図11の処理は、CPU14が起動された時に開始する。図11の処理を開始すると、CPU14は、制御部17に問い合わせることで、ロックスイッチ8、アンロックスイッチ9(図1参照)のいずれかが操作されたか否かを判定する(S51)。いずれも操作されていない場合には(S51:No)、図11の処理を終了する。この場合には、現状のダンプ抵抗の値が維持される。
これに対し、ロックスイッチ8、アンロックスイッチ9のいずれかが操作された場合には(S51:Yes)、全てのダンプ抵抗15a〜15cにおける全てのスイッチ161(図2参照)をオフすることで、全てのダンプ抵抗15a〜15cを無効の状態(リセット)にする(S52)。これによって、LFアンテナ11a〜11cの利得を最高利得にすることができるので、以降、正規のLF信号を受信しやすくできる。その後、図11の処理を終了する。
図12は、ダンプ抵抗のリセット処理の第2例のフローチャートを示している。図12の処理は、CPU14が図6の通常通信処理時に開始する。図12の処理を開始すると、CPU14は、LFアンテナ11a〜11cが受信した受信信号が、車両から送信されたダンプ抵抗リセットコマンドか否かを判定する(S61)。ダンプ抵抗リセットコマンド以外の場合には(S61:No)、図12の処理を終了する。この場合には、現状のダンプ抵抗の値が維持される。
これに対し、ダンプ抵抗リセットコマンドが受信された場合には(S61:Yes)、全てのダンプ抵抗15a〜15cにおける全てのスイッチ161(図2参照)をオフすることで、全てのダンプ抵抗15a〜15cを無効の状態(リセット)にする(S62)。これによって、LFアンテナ11a〜11cの利得を最高利得にすることができるので、以降、正規のLF信号を受信しやすくできる。その後、図12の処理を終了する。なお、車両は、車両のイグニッションスイッチがオンされた時など所定条件が成立した時に、ダンプ抵抗リセットコマンドをLF信号として送信する。
以上説明したように、本実施形態によれば、正規のLF信号の受信完了後、又はノイズによる誤起動後、スリープ状態に移行する前に、ノイズレベルを測定して、そのノイズレベルに基づいてダンプ抵抗の値を切り替えているので、ノイズを受信するたびに段階的に有効にするダンプ抵抗を増やす手法に比べて、短時間でダンプ抵抗を適切な値にすることができる。よって、ノイズにより誤起動する頻度を減らすことができ、携帯機のバッテリの消耗を低減できる。また、正規のLF信号が受信できないということを抑制できる。
また、本実施形態では、各LFアンテナごとに、各LFアンテナのノイズレベルに応じた値のダンプ抵抗に切り替えているので、どの方向からノイズが到来したとしてもそのノイズを除去できるとともに、どの方向から正規のLF信号が到来したとしてもそのLF信号を認識することができる。
また、本実施形態では、ダンプ抵抗の選択に関連する構成(比較電圧発生回路22、タイマ29、比較回路28)を、図7の処理時のみに通電しているので、常時通電する場合に比べて、バッテリ消耗を抑制できる。
また、本実施形態では、抵抗24やコンデンサ25から構成された比較電圧発生回路22、タイマ29、比較回路28で、ノイズレベルを測定しているので、AD変換器でノイズレベル(受信信号レベル)の値を直接測定する場合に比べて、簡単な構成でノイズレベルに相関する指標を得ることができるとともに、消費電力(バッテリ消耗)を抑制できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない限度で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、スマートエントリーシステムにおける携帯機に本発明を適用した例を説明したが、他の受信装置に本発明を適用しても良い。例えば、スマートエントリーシステムにおける車両側の受信機(携帯機からのRF信号を受信する受信機)に本発明を適用しても良い。
また、上記実施形態では、コンデンサの充電電圧が信号の振幅電圧より大きくなるまでの時間をノイズレベルとして測定したが、AD変換器により信号の振幅電圧の値をノイズレベルとして直接測定しても良い。これによって、より正確なノイズレベルを得ることができる。
また、上記実施形態では、正規のLF信号の受信完了後と、ノイズによる誤起動後の両方で、ダンプ抵抗選択処理を実行したが、いずれか一方のみでダンプ抵抗選択処理を実行しても良い。
また、上記実施形態では、携帯機に3軸のLFアンテナを備える構成を示したが、2軸のLFアンテナを備える構成であっても良いし、1軸のLFアンテナを備える構成であっても良い。
また、上記実施形態では、全てのLFアンテナのノイズレベルを測定して、全てのダンプ抵抗の値を調整していたが、図6のS3で選択した被選択LFアンテナのみに対して、S7のダンプ抵抗選択処理を実行しても良い。これによって、処理を簡素化できるとともに、誤起動を起こさせた被選択LFアンテナの利得を低くできるので、以降、誤起動を抑制できる。
なお、上記実施形態において、図6のS4の処理を実行するCPU14が本発明における「判定手段」に相当する。図6のS2、S8の処理を実行するCPU14が本発明における「動作制御手段」に相当する。図7のS11、S12の処理を実行するCPU14、比較電圧発生回路22、比較回路28、及びタイマ29が本発明における「測定手段」に相当する。図7のS14の処理を実行するCPU14及びダンプ抵抗選択マップ30が本発明における「選定手段」に相当する。図7のS15の処理を実行するCPU14及びスイッチ16a〜16c(スイッチ161)が本発明における「切替手段」に相当する。また、比較電圧発生回路22が本発明における「電圧発生手段」に相当する。図7のS11の処理を実行するCPU14が本発明における「スイッチ制御手段」に相当する。比較回路28(281〜283)が本発明における「比較手段」に相当する。タイマ29が本発明における「時間測定手段」に相当する。また、ロックスイッチ8、アンロックスイッチ9が本発明における「操作部」に相当する。図11のS52の処理を実行するCPU14及びスイッチ16a〜16c(スイッチ161)が本発明における「第1の無効化手段」に相当する。また、図12のS62の処理を実行するCPU14及びスイッチ16a〜16c(スイッチ161)が本発明における「第2の無効化手段」に相当する。また、図12のダンプ抵抗リセットコマンドが本発明における「ダンプ抵抗無効化指令」に相当する。