以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重畳した説明を省略する。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る作動制御システムについて、図1〜図8を参照して説明する。本実施形態に係る作動制御システムは、対象システムの作動を制御する作動制御装置と、対象システムの作動を要求する制御信号を無線で送信する携帯機と、を含むシステムである。作動制御装置は、携帯機からの無線信号の信号強度に基づいて、制御信号の受け付け状態を制御する。なお、第1実施形態では、作動制御システムを自動二輪車に適用した場合を例に説明する。しかしながら、作動制御システムは、自動二輪車以外の車両にも適用可能である。
作動制御システムは、携帯機と、携帯機からの制御信号(エンジンの始動信号、エンジンの停止信号、ハンドルのロック信号、ハンドルのアンロック信号等)に応じて車両(対象システム)の作動(エンジン始動、エンジン停止、ハンドルのロック、ハンドルのアンロック等)を制御する車載器(作動制御装置)と、を含むPEPSシステムで有り得る。また、作動制御システムは、携帯機と、携帯機からの制御信号(解錠信号又は施錠信号)に応じて四輪の自動車(対象システム)の作動(ドアの解錠又は施錠)を制御する車載器(作動制御装置)と、を含むRKE(Remote Keyless Entry)システムであってもよい。また、作動制御システムは、携帯機と、携帯機からの制御信号(解錠信号又は施錠信号)に応じて建物(対象システム)の作動(解錠又は施錠)を制御する作動制御装置と、を含むシステムであってもよい。以下、作動制御システムがPEPSシステムである場合を例に説明する。
まず、本実施形態に係るPEPSシステム100のハードウェア構成について説明する。図1は、PEPSシステム100の一例を示す図である。図1のPEPSシステム100は、携帯機1と、車載器2と、を備える。
携帯機1は、車両のドライバなどの、PEPSシステム100の正規のユーザUが携帯する装置である。携帯機1は、スマートキーなどの専用機であってもよいし、所定のアプリケーションをインストールされたスマートフォンなどの汎用機であってもよい。図1の携帯機1は、携帯機受信部11と、携帯機送信部12と、携帯機制御部13と、を備える。
携帯機受信部11は、車載器2が無線で送信した車載器信号を受信するハードウェアである。車載器信号は、Bluetooth(登録商標)における2.4GHz帯の無線信号であるが、これに限られない。携帯機受信部11は、車載器信号(無線信号)を電気信号に変換するアンテナと、車載器信号(電気信号)に復調などの所定の信号処理を施す受信回路と、を備える。受信回路は、ローノイズアンプ、フィルタ、ミキサ、及び復調回路などを含む。携帯機受信部11は、所定の信号処理を施した信号を携帯機制御部13に入力する。なお、受信回路は、独立したIC(Integrated Circuit)であってもよいし、携帯機制御部13に組み込まれていてもよい。
携帯機送信部12は、携帯機信号を無線で送信するハードウェアである。携帯機信号は、例えば、Bluetoothにおける2.4GHz帯の無線信号や、無線LANの2.4GHz〜5.725GHzの信号であるが、これに限られない。携帯機送信部12は、携帯機制御部13が生成した携帯機信号(電気信号)に変調などの所定の処理を施す送信回路と、携帯機信号(電気信号)を無線信号に変換するアンテナと、を備える。送信回路は、変調回路、ミキサ、フィルタ、及びパワーアンプなどを含む。なお、送信回路は、独立したICであってもよいし、携帯機制御部13に組み込まれていてもよい。また、携帯機受信部11及び携帯機送信部12が1つのIC(Bluetoohモジュールなど)に含まれてもよい。
携帯機制御部13は、携帯機1の全体の動作を制御する回路であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む。CPUは、プログラムを実行することにより携帯機1の各構成を制御し、携帯機制御部13の機能を実現する。ROMは、CPUが実行するプログラムや各種のデータを記憶する。ROMには、例えば、携帯機IDや車載器IDが記憶される。携帯機IDは、携帯機1の識別情報である。また、車載器IDは、車載器2の識別情報である。RAMは、CPUに作業領域を提供する。携帯機制御部13は、例えば、マイコンであるが、これに限られない。
なお、携帯機1の構成は、図1の例に限られない。携帯機1は、携帯機受信部11、携帯機送信部12、及び携帯機制御部13に電力を供給する電池や、ユーザUが車両のエンジン始動及びエンジン停止を手動で操作するための始動ボタン及び停止ボタンなどを備える。
車載器2は、作動制御装置の一例であり、車両に搭載され、携帯機1が送信した制御信号(携帯機信号)に応じて、車両の作動を制御する。車載器2は、車両に搭載されたバッテリから電力を供給される。図1の車載器2は、車載器受信部21と、車載器送信部22と、車載器制御部23と、を備える。
車載器受信部21は、携帯機1が送信した携帯機信号(無線信号)を受信するハードウェアである。車載器受信部21は、携帯機信号(無線信号)を電気信号に変換するアンテナと、携帯機信号(電気信号)に復調などの所定の信号処理を施す受信回路と、を備える。受信回路は、ローノイズアンプ、フィルタ、ミキサ、及び復調回路などを含む。車載器受信部21は、所定の信号処理を施した信号を車載器制御部23に入力する。なお、受信回路は、独立したICであってもよいし、車載器制御部23に組み込まれていてもよい。
車載器送信部22は、車載器信号を無線で送信するハードウェアである。車載器送信部22は、車載器制御部23が生成した車載器信号(電気信号)に変調などの所定の処理を施す送信回路と、車載器信号(電気信号)を無線信号に変換するアンテナと、を備える。送信回路は、変調回路、ミキサ、フィルタ、及びパワーアンプなどを含む。なお、送信回路は、独立したICであってもよいし、車載器制御部23に組み込まれていてもよい。また、車載器受信部21及び車載器送信部22が1つのIC(Bluetoothモジュールなど)に含まれてもよい。
車載器制御部23は、車載器2の全体の動作を制御する回路であり、CPU、ROM、及びRAMを含む。CPUは、プログラムを実行することにより車載器2の各構成を制御し、車載器制御部23の機能を実現する。ROMは、CPUが実行するプログラムや各種のデータを記憶する。ROMには、例えば、携帯機ID、車載器ID、及び後述する閾値Ithなどが記憶される。RAMは、CPUに作業領域を提供する。車載器制御部23は、例えば、マイコンであるが、これに限られない。
また、車載器制御部23は、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークに接続され、車載ネットワークを介して接続されたエンジン制御部3と通信し、エンジン制御部3にエンジンの始動又は停止を要求する。エンジン制御部3は、エンジンの始動及び停止を制御する回路であり、車載器制御部23からの要求に応じてエンジンの始動又は停止する。エンジン制御部3は、例えば、マイコンであるが、これに限られない。
なお、車載器2の構成は、図1の例に限られない。車載器2は、車載器受信部21、車載器送信部22、及び車載器制御部23に電力を供給する電池を備えてもよい。
次に、携帯機制御部13の機能構成について説明する。図2は、携帯機制御部13の機能構成の一例を示す図である。図2の携帯機制御部13は、携帯機通信制御部131と、携帯機記憶部132と、を備える。携帯機通信制御部131は、携帯機制御部13のCPUがプログラムを実行することにより実現される。また、携帯機記憶部132は、携帯機制御部13のROMやRAMにより実現される。
携帯機通信制御部131は、携帯機1と車載器2との間の通信を制御する。具体的には、携帯機通信制御部131は、車載器2との間での通信の確立(ペアリングなど)や、携帯機受信部11から入力された車載器信号に含まれる車載器IDに基づく車載器2の認証などを行う。また、携帯機通信制御部131は、携帯機IDを含む携帯機信号(電気信号)を生成し、携帯機送信部12に入力する。携帯機送信部12は、入力された携帯機信号を無線で送信する。
本実施形態において、携帯機信号には、制御信号と、強度測定用信号と、が含まれる。制御信号は、車両の作動を要求する信号であり、始動信号及び停止信号を含む。始動信号は、エンジンの始動を要求する信号であり、停止信号は、エンジンの停止を要求する信号である。携帯機通信制御部131は、ユーザUが始動ボタンや停止ボタンを押下したタイミングで制御信号を生成する。強度測定用信号は、携帯機1と車載器2との間の距離を測定するための、一定の送信レベルが保たれる信号である。携帯機通信制御部131は、強度測定用信号を定期的に生成する。なお、以下では、制御信号と強度測定用信号とが別々に送信される場合を例に説明するが、制御信号及び強度測定用信号はまとめて送信されてもよい。携帯機通信制御部131の動作について、詳しくは後述する。
携帯機記憶部132は、携帯機通信制御部131が通信を制御するために利用する各種のデータ(携帯機IDや車載器IDなど)を記憶する。
次に、車載器制御部23の機能構成について説明する。図3は、車載器制御部23の機能構成の一例を示す図である。図3の車載器制御部23は、車載器通信制御部231と、車載器記憶部232と、信号強度測定部233と、状態制御部234と、作動制御部235と、を備える。車載器通信制御部231、信号強度測定部233、状態制御部234、及び作動制御部235は、車載器制御部23のCPUがプログラムを実行することにより実現される。また、車載器記憶部232は、車載器制御部23のROM及びRAMにより実現される。
車載器通信制御部231は、携帯機1と車載器2との間の通信を制御する。具体的には、車載器通信制御部231は、携帯機1との間での通信の確立(ペアリングなど)や、車載器受信部21から入力された携帯機信号に含まれる携帯機IDに基づく携帯機1の認証などを行う。また、車載器通信制御部231は、車載器受信部21から強度測定用信号を入力される、当該強度測定用信号を信号強度測定部233に入力し、車載器受信部21から制御信号を入力されると、当該制御信号を作動制御部235に入力する。また、車載器通信制御部231は、車載器IDを含む車載器信号(電気信号)を生成し、車載器送信部22に入力する。車載器送信部22は、入力された車載器信号を無線で送信する。なお、車載器通信制御部231の動作について、詳しくは後述する。
車載器記憶部232は、車載器通信制御部231が通信を制御するために利用する各種のデータ(携帯機IDや車載器IDなど)や、状態制御部234が受け付け状態を制御するための各種のデータ(閾値Ithなど)を記憶する。
信号強度測定部233は、車載器受信部21が携帯機1から受信した強度測定用信号の信号強度Iを測定する。信号強度Iは、RSSI(Received Signal Strength Indication)である。強度測定用信号は、送信レベルが一定であるため、その信号強度Iを測定することは、携帯機1と車載器2との間の距離を測定することに相当する。信号強度Iが大きいほど、携帯機1(ユーザU)が車載器2に近いことを意味する。
状態制御部234は、信号強度測定部233が測定した信号強度Iに基づいて、制御信号の受け付け状態を、許可状態又は不許可状態に制御する。許可状態とは、制御信号の受け付けを許可する状態である。不許可状態とは、制御信号の受け付けを拒否する状態である。状態制御部234は、信号強度Iと閾値Ithとを比較することにより、受け付け状態を制御する。閾値Ithは、ユーザUが近くにいるか否か判断するために設定された信号強度Iの閾値である。閾値Ithは、複数の制御信号に対して一律に設定されてもよいし、制御信号ごとにそれぞれ設定されてもよい。
状態制御部234は、信号強度Iが閾値Ith以上の間、受け付け状態を許可状態に制御する。これは、信号強度Iが大きい場合、ユーザUが車両の近くにいると考えられるためである。また、状態制御部234は、信号強度Iが閾値Ith以上になった後に閾値Ith未満となってから所定時間の間、受け付け状態を許可状態に制御する。これは、信号強度Iが大きくなった後、信号強度Iが小さくなった場合であっても、しばらくの間はユーザUが車両の近くにいる可能性が高いと考えられるためである。また、状態制御部234は、上記以外の間(後述する許可時間Tの計測を終了してから信号強度Iが閾値Ith以上となるまでの間)、受け付け状態を不許可状態に制御する。これは、上記以外の間、ユーザUが車両から離れていると考えられるためである。
状態制御部234は、複数の制御信号に対して、一律に受け付け状態を制御してもよい。この場合、始動信号及び停止信号に対する受け付け状態が一律に制御される。また、状態制御部234は、制御信号ごとに受け付け状態を制御してもよい。この場合、始動信号に対する受け付け状態と、停止信号に対する受け付け状態と、がそれぞれ制御される。制御信号ごとに受け付け状態を制御する場合には、対象システムを利用可能にする制御信号(始動信号など)に対して、上記の通り受け付け状態を制御し、対象システムを利用不能にする制御信号(停止信号など)に対して、受け付け状態を常に許可状態に制御するのが好ましい。これにより、停止信号が常に受け付けられるため、対象システムを利用不能にする制御が拒否されることを抑制し、対象システムの防盗性を向上させることができる。なお、状態制御部234の動作について、詳しくは後述する。
作動制御部235は、受け付け状態が許可状態の場合、車載器受信部21が携帯機1から受信した制御信号に応じて車両を作動させる。具体的には、作動制御部235は、始動信号を受信した場合、エンジン制御部3にエンジンの始動を要求し、エンジンを始動させる。また、作動制御部235は、停止信号を受信した場合、エンジン制御部3にエンジンの停止を要求し、エンジンを停止させる。
一方、作動制御部235は、受け付け状態が不許可状態の場合、車載器受信部21が携帯機1から受信した制御信号に応じた車両の作動を拒否する。すなわち、作動制御部235は、車両を作動させない。作動制御部235の動作について、詳しくは後述する。
次に、携帯機1の動作について説明する。図4は、携帯機1の動作の一例を示すフローチャートである。携帯機1は、図4の動作を所定時間T1毎に実行する。
まず、携帯機通信制御部131は、強度測定用信号を前回送信してから所定時間T2(T2≧T1)が経過したか確認する(ステップS101)。携帯機通信制御部131は、所定時間T2が経過していない場合(ステップS101のNO)、ステップS103を実行する。一方、携帯機通信制御部131は、所定時間T2が経過している場合(ステップS101のYES)、強度測定用信号を生成し、携帯機送信部12に入力する。携帯機送信部12は、入力された強度測定用信号を無線で送信する(ステップS102)。
次に、携帯機通信制御部131は、始動ボタンが押下されたか確認する(ステップS103)。
一方、携帯機通信制御部131は、始動ボタンが押下されていない場合、停止ボタンが押下されたか確認する(ステップS105)。携帯機通信制御部131は、停止ボタンが押下されていない場合(ステップS105のNO)、動作を終了する。一方、携帯機通信制御部131は、停止ボタンが押下された場合(ステップS105のYES)、停止信号を生成し、携帯機送信部12に入力する。携帯機送信部12は、入力された停止信号を無線で送信する(ステップS106)。その後、携帯機通信制御部131は、動作を終了する。
以上の動作により、携帯機1は、所定時間T2毎に定期的に強度測定用信号を送信しつつ、始動ボタン又は停止ボタンが押下されたタイミングで制御信号(始動信号又は停止信号)を送信することができる。なお、携帯機1は、制御信号を定期的に送信してもよいし、制御信号を強度測定用信号とまとめて送信してもよい。
次に、車載器2の動作について説明する。以下、車両の作動制御と、受け付け状態制御と、のそれぞれについて説明する。
まず、車両の作動制御について説明する。図5は、車載器2による車両の作動制御の一例を示すフローチャートである。車載器2は、図5の動作を所定時間(制御間隔)T3ごとに実行する。
まず、車載器通信制御部231は、車載器受信部21が始動信号を受信したか、すなわち、車載器受信部21から始動信号を入力されたか確認する(ステップS201)。車載器通信制御部231は、車載器受信部21が始動信号を受信した場合(ステップS201のYES)、車載器受信部21から入力された始動信号を作動制御部235に入力する。
作動制御部235は、始動信号を入力されると、状態制御部234から通知された受け付け状態が許可状態であるか確認する(ステップS202)。作動制御部235は、受け付け状態が不許可状態である場合(ステップS202のNO)、始動信号に応じたエンジンの始動を拒否し、動作を終了する。
一方、作動制御部235は、受け付け状態が許可状態である場合(ステップS202のYES)、始動信号に応じたエンジンの始動を許可し、エンジンを始動させる(ステップS203)。
これに対して、車載器通信制御部231は、車載器受信部21が始動信号を受信していない場合(ステップS201のNO)、車載器受信部21が停止信号を受信したか、すなわち、車載器受信部21から停止信号を入力されたか確認する(ステップS204)。車載器通信制御部231は、車載器受信部21が停止信号を受信していない場合(ステップS204のNO)、動作を終了する。
一方、車載器通信制御部231は、車載器受信部21が停止信号を受信した場合(ステップS204のYES)、車載器受信部21から入力された停止信号を作動制御部235に入力する。
作動制御部235は、停止信号を入力されると、停止信号に応じたエンジンの停止を許可し、エンジンを停止させる。
以上の動作により、車載器2は、受け付け状態が許可状態の間に始動信号を受信した場合、車両のエンジンを始動し、受け付け状態が不許可状態の間に始動信号を受信した場合、車両のエンジンの始動を拒否することができる。また、車載器2は、停止信号を受信した場合、常に車両のエンジンを停止することができる。
なお、図5の例では、制御信号毎に受け付け状態が制御されているが、上述の通り、制御信号は受け付け状態を一律で制御されてもよい。
次に、受け付け状態制御について説明する。図6は、車載器2による受け付け状態制御の一例を示すフローチャートである。車載器2は、図6の動作を所定時間(制御間隔)T4ごとに実行する。
まず、車載器通信制御部231は、車載器受信部21が強度測定用信号を受信したか、すなわち、車載器受信部21から強度測定用信号を入力されたか確認する(ステップS301)。車載器通信制御部231は、車載器受信部21が強度測定用信号を受信していない場合(ステップS301のNO)、動作を終了する。この場合、受け付け状態は維持される。
一方、車載器通信制御部231は、車載器受信部21が強度測定用信号を受信した場合(ステップS301のYES)、車載器受信部21から入力された強度測定用信号を信号強度測定部233に入力する。
信号強度測定部233は、強度測定用信号を入力されると、当該強度測定用信号の信号強度Iを測定する(ステップS302)。信号強度測定部233は、測定した信号強度Iを状態制御部234に入力する。
状態制御部234は、信号強度Iを入力されると、車載器記憶部232から閾値Ithを読み出し、信号強度Iが閾値Ith以上であるか確認する(ステップS303)。状態制御部234は、信号強度Iが閾値Ith以上である場合(ステップS303のYES)、受け付け状態を許可状態に制御し、その旨を作動制御部235に通知する(ステップS304)。その後、状態制御部234は、許可時間Tの計測を開始する(ステップS305)。この際、許可時間Tを計測中である場合には、状態制御部234は、許可時間Tの計測を開始(リスタート)する。
一方、状態制御部234は、信号強度Iが閾値Ith未満である場合(ステップS303のNO)、許可時間Tを計測中か確認する(ステップS306)。状態制御部234は、許可時間Tを計測中でない場合(ステップS306のNO)、すなわち、許可時間Tの計測が終了している場合、受け付け状態を不許可状態に制御し、その旨を作動制御部235に通知する(ステップS307)。
一方、状態制御部234は、許可時間Tを計測中である場合(ステップS306のYES)、動作を終了する。この場合、受け付け状態は許可状態に維持される。
以上の動作により、状態制御部234は、信号強度Iが閾値Ith以上の間、及び信号強度Iが閾値Ith以上になった後に閾値Ith未満となってから所定時間の間、受け付け状態を許可状態に制御し、それ以外の間、受け付け状態を不許可状態に制御することができる。
図7は、受け付け状態の状態遷移を示す図である。図7に示すように、状態制御部234は、不許可状態の間に信号強度Iが閾値Ith以上の強度測定用信号を受信すると、受け付け状態を許可状態に制御し、許可時間Tの計測を開始する。また、状態制御部234は、許可状態の間に、信号強度Iが閾値Ith以上の強度測定用信号を受信すると、受け付け状態を許可状態のまま維持し、許可時間Tの計測をリスタートする。また、状態制御部234は、許可状態の間に、許可時間Tの計測を終了すると、受け付け状態を不許可状態に制御する。
ここで、車載器2の動作について具体的に説明する。図8は、信号強度Iの一例を示す図である。図8の例では、携帯機1を所持したユーザUが車両に接近している場合を想定しており、許可時間Tは制御間隔T4の6倍であり(T=6×T4)、横軸は時刻t、縦軸は信号強度I、及び破線は受け付け状態の制御間隔T4を示している。また、図8の上側矢印は従来の車載器における許可状態の期間、下側矢印は車載器2における許可状態の期間を示している。なお、従来の車載器は、信号強度Iが閾値Ith以上になってから許可時間Tの間、受け付け状態を許可状態に制御するものとする。
図8の例では、ユーザUの接近に伴って、信号強度Iは徐々に上昇しており、時刻t3に閾値Ith以上となっている。また、信号強度Iは、時刻t5,t9に閾値Ith未満まで局所的に小さくなっている。
従来の車載器によれば、時刻t3以降、許可時間Tの間、受け付け状態は許可状態に制御される。このため、信号強度Iが閾値Ith未満となる時刻t5においても、受け付け状態は許可状態となる。しかしながら、従来の車載器では、図8の例のように、許可時間Tの計測終了時(時刻t9)に信号強度Iが局所的に閾値Ith未満になると、次に信号強度Iが閾値Ith以上になるまで、受け付け状態が不許可状態となる。この結果、ユーザUが車両の近くにいるにもかかわらず、ユーザUからの制御信号が拒否されるという不都合が生じる。
これに対して、車載器2が図6の動作を実行すると、時刻t3,t4にそれぞれ受け付け状態が許可状態に制御され(ステップS304)、許可時間Tの計測がリスタートされる(ステップS305)。時刻t5には、許可時間Tの計測中であるため(ステップS306のYES)、許可状態が維持される。また、時刻t6〜t8にそれぞれ受け付け状態が許可状態に制御され(ステップS304)、許可時間Tの計測が開始される(ステップS305)。時刻t9には、許可時間Tの計測中であるため(ステップS306のYES)、許可状態が維持される。その後、時刻t10,t11にそれぞれ受け付け状態が許可状態に制御され(ステップS304)、許可時間Tの計測が開始される(ステップS305)。この結果、ユーザUが車両の近くにいる間(信号強度Iが閾値Ith以上の間、及び信号強度Iが閾値Ith以上になった後に閾値Ith未満となってから所定時間(T−T4)の間)、受け付け状態が許可状態に制御される。
このように、本実施形態によれば、ユーザUが車両の近くにいる間、受け付け状態が許可状態に制御されるため、信号強度Iが局所的に小さくなった場合であっても、ユーザは制御信号により車両を制御することができる。言い換えると、本実施形態によれば、ユーザUが車両の近くにいるにもかかわらずユーザUからの制御信号が拒否される、という不都合を抑制し、ユーザUの利便性を向上させることができる。
なお、本実施形態に係る車載器2は、携帯機1とBluetoothにより通信する車載器として好適に利用できる。これは、Bluetoothで利用される無線信号は、携帯機1の位置や、携帯機1と車載器2との間の遮蔽物(ユーザUの体など)の影響で、信号強度Iが大きく変動しやすいためである。
また、図8からわかるように、従来の車載器であっても、閾値Ithを小さくすることにより、信号強度Iが小さくなった直後(時刻t9から時刻t10までの間)の受け付け状態を許可状態に制御できる。しかしながら、閾値Ithを小さくすると、ユーザU(携帯機1)が離れている場合にも車両のエンジンの始動が可能となるため、車両の防盗性が低下する。
これに対して、本実施形態によれば、閾値Ithを小さくすることなく、信号強度Iが小さくなった直後(時刻t9から時刻t10までの間)の受け付け状態を許可状態に制御できる。したがって、ユーザUの利便性を向上させつつ、車両の防盗性を向上させることができる。
結果として、本実施家形態によれば、車両の防盗性及びユーザUの利便性が高い車載器2及びPEPSシステム100を提供することができる。
また、本実施形態によれば、防盗性及び利便性が高い車載器2の動作を、許可時間Tの計測をリスタートするという単純な制御により実現できる。したがって、防盗性及び利便性が高い車載器2を容易に製造することができる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係るPEPSシステム100について、図9〜図11を参照して説明する。本実施形態では、受け付け状態制御の他の方法について説明する。なお、PEPSシステム100のハードウェア構成、携帯機1及び車載器2の機能構成、携帯機1の動作、及び車載器2による車両の作動制御については、第1実施形態と同様である。
ここで、本実施形態における受け付け状態制御について説明する。図9は、車載器2による受け付け状態制御の一例を示すフローチャートである。車載器2は、図9の動作を所定時間(制御間隔)T4ごとに実行する。
まず、車載器通信制御部231は、車載器受信部21が強度測定用信号を受信したか、すなわち、車載器受信部21から強度測定用信号を入力されたか確認する(ステップS401)。車載器通信制御部231は、車載器受信部21が強度測定用信号を受信していない場合(ステップS401のNO)、動作を終了する。この場合、受け付け状態は維持される。
一方、車載器通信制御部231は、車載器受信部21が強度測定用信号を受信した場合(ステップS401のYES)、車載器受信部21から入力された強度測定用信号を信号強度測定部233に入力する。
信号強度測定部233は、強度測定用信号を入力されると、当該強度測定用信号の信号強度Iを測定する(ステップS402)。信号強度測定部233は、測定した信号強度Iを状態制御部234に入力する。
状態制御部234は、信号強度Iを入力されると、車載器記憶部232から閾値Ithを読み出し、信号強度Iが閾値Ith以上であるか確認する(ステップS403)。状態制御部234は、信号強度Iが閾値Ith以上である場合(ステップS403のYES)、受け付け状態を許可状態に制御し、その旨を作動制御部235に通知する(ステップS404)。
一方、状態制御部234は、信号強度Iが閾値Ith未満である場合(ステップS403のNO)、許可時間Tを計測中か確認する(ステップS406)。状態制御部234は、許可時間Tを計測中である場合(ステップS405のYES)、動作を終了する。この場合、受け付け状態は許可状態に維持される。
一方、状態制御部234は、許可時間Tを計測中でない場合(ステップS405のNO)、すなわち、許可時間Tの計測が終了している、又は許可時間Tの計測が開始されていない場合、前回の信号強度Iが閾値Ith以上であったか確認する(ステップS406)。
状態制御部234は、前回の信号強度Iが閾値Ith以上であった場合(ステップS406のYES)、すなわち、許可時間Tの計測が開始されていない場合、許可状態を維持し、許可時間Tの計測を開始する(ステップS407)。
一方、状態制御部234は、前回の信号強度Iが閾値Ith未満であった場合(ステップS406のNO)、すなわち、許可時間Tの計測が終了している場合、受け付け状態を不許可状態に制御し、その旨を作動制御部235に通知する(ステップS408)。
以上の動作により、状態制御部234は、信号強度Iが閾値Ith以上の間、及び信号強度Iが閾値Ith以上になった後に閾値Ith未満となってから所定時間の間、受け付け状態を許可状態に制御し、それ以外の間、受け付け状態を不許可状態に制御することができる。
ここで、車載器2の動作について具体的に説明する。図10は、信号強度Iの一例を示す図である。図10は、車載器2における許可状態の期間以外、図8と同様である。
車載器2が図9の動作を実行すると、時刻t3,t4にそれぞれ受け付け状態が許可状態に制御される(ステップS404)。時刻t5には、許可時間Tは計測されておらず(ステップS405のNO)、前回(時刻t4)の信号強度Iは閾値Ith以上であるため(ステップS406のYES)、許可状態が維持され、許可時間Tの計測が開始される(ステップS407)。また、時刻t6〜t8にそれぞれ受け付け状態が許可状態に制御される(ステップS404)。時刻t9には、許可時間Tは計測されておらず(ステップS405のNO)、前回(時刻t8)の信号強度Iは閾値Ith以上であるため(ステップS406のYES)、許可状態が維持され、許可時間Tの計測が開始される(ステップS407)。その後、時刻t10,t11にそれぞれ受け付け状態が許可状態に制御される(ステップS404)。この結果、ユーザUが車両の近くにいる間(信号強度Iが閾値Ith以上の間、及び信号強度Iが閾値Ith以上になった後に閾値Ith未満となってから所定時間(許可時間T)の間)、受け付け状態が許可状態に制御される。
このように、本実施形態によれば、ユーザUが車両の近くにいる間、受け付け状態が許可状態に制御されるため、信号強度Iが局所的に小さくなった場合であっても、ユーザは制御信号により車両を制御することができる。したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、車両の防盗性及びユーザUの利便性が高い車載器2及びPEPSシステム100を提供することができる。
なお、以上の各実施形態において、車載器2が強度測定用信号を定期的に送信し、携帯機1が信号強度測定部を備え、車載器2が送信した強度測定用信号の信号強度Iを測定してもよい。この場合、携帯機1は、測定した信号強度Iを含む信号を無線で送信すればよい。車載器2は、受信した信号に含まれる信号強度Iに基づいて、受け付け状態を制御することができる。携帯機1が信号強度Iを測定する場合には、車載器2は、信号強度測定部233を備えてもよいし、備えなくてもよい。携帯機1及び車載器2がそれぞれ信号強度測定部を備える場合には、車載器2は、携帯機1から受信した信号強度I1と、信号強度測定部233が算出した信号強度I2と、の平均値を算出するなどの方法により、信号強度Iをより正確に測定することができる。
また、状態制御部234は、信号強度Iが大きいほど、許可時間Tを長くしてもよい。これは、信号強度Iが大きいほど、携帯機1を所持したユーザUが車両の近くにいると考えられるためである。これにより、状態制御部234は、ユーザUの位置に応じて、受け付け状態をより適切に制御することができる。具体的には、閾値Ithを複数設定し、大きい閾値Ithほど、長い許可時間Tを割り当てればよい。状態制御部234は、信号強度Iがいずれかの閾値Ith未満となった場合、当該閾値Ithに対応する許可時間Tを計測すればよい。
また、制御信号は、図11に示すように車両側に設けられたボタン(スイッチ)24に連動して、車載器2の制御装置25などから出力されても良い。この場合、車載器2の制御装置25と、車載器制御部23と、が有線で接続され、車載器制御部23は、車載器2の制御装置25から入力された制御信号に応じて、車載器2の作動を制御すればよい。この場合でも、携帯機1は、強度測定用信号を送信し、車載器受信部21は、携帯機1から受信した強度測定用信号の信号強度Iを測定し、状態制御部234は、測定した信号強度Iに基づいて、制御信号の受け付け状態を、許可状態又は不許可状態に制御する。制御信号の受け付け状態を、許可状態又は不許可状態に制御する方法は、第1実施形態や第2実施形態と同一である。
車両側に設けられたボタン24に連動して制御信号が出力される場合においても、PEPSシステム100によって、車載器2の作動を制御することにより、利便性と防盗性を両立できる。PEPSシステム100を用いれば、携帯機1が車両に近づいているにも関わらず、車両側のボタン24によって車両を操作できない状態を防ぐことができる。よって、利便性の低下を防げる。一方、PEPSシステム100を用いれば、携帯機1が離れているにも関わらず、車両側のボタン24によって車両を操作できる状態を防げる。よって、防盗性の低下を防げる。また、建物のドア等にボタンを設けた場合も、同様である。
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
また、本国際出願は、2017年12月14日に出願した日本国特許出願第2017−239875号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。