以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
本実施形態では、電気光学装置の一例として、薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
<電気光学装置の構成>
図1は、電気光学装置としての液晶装置の構成を示す模式平面図である。図2は、図1に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図である。図3は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の構成を、図1〜図3を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の液晶装置100は、対向配置された素子基板10及び対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層15とを有する。
素子基板10は対向基板20よりも大きく、両基板は、対向基板20の外周に沿って配置されたシール材14を介して接合されている。その隙間に、電気光学材料の一例に係る正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層15を構成している。シール材14は、例えば、熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材14には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(ガラスビーズ)が混入されている。ガラスビーズは、セルギャップを出すために用いられる。
シール材14の内側には、表示に寄与する複数の画素Pが配列した画素領域E(表示領域)が設けられている。画素領域Eの周囲には、表示に寄与しないダミー画素領域(図示せず)が設けられている。また、図1及び図2では図示を省略したが、画素領域Eにおいて複数の画素Pをそれぞれ平面的に区分する遮光部(ブラックマトリックス;BM)が対向基板20に設けられている。
素子基板10の1辺部に沿ったシール材14と該1辺部との間に、データ線駆動回路22が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材14と画素領域Eとの間に、検査回路25が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材14と画素領域Eとの間に走査線駆動回路24が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部に沿ったシール材14と検査回路25との間には、2つの走査線駆動回路24を繋ぐ複数の配線29が設けられている。
対向基板20側における額縁状に配置されたシール材14の内側には、同じく額縁状に遮光膜18(見切り部)が設けられている。遮光膜18は、例えば、遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光膜18の内側が複数の画素Pを有する画素領域Eとなっている。なお、図1では図示を省略したが、画素領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光膜が設けられている。
これらデータ線駆動回路22、走査線駆動回路24に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子61に接続されている。以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。なお、検査回路25の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路22に沿ったシール材14と画素領域Eとの間に設けてもよい。
図2に示すように、第1基材10aの液晶層15側の表面には、画素Pごとに設けられた透光性の画素電極27およびスイッチング素子である薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor、以降、「TFT30」と呼称する)と、信号配線と、これらを覆う無機配向膜28とが形成されている。
また、TFT30における半導体層に光が入射してスイッチング動作が不安定になることを防ぐ遮光構造が採用されている。本発明における素子基板10は、少なくとも画素電極27、TFT30、信号配線、無機配向膜28を含むものである。
対向基板20の液晶層15側の表面には、遮光膜18と、これを覆うように成膜された絶縁層33と、絶縁層33を覆うように設けられた対向電極31と、対向電極31を覆う無機配向膜32とが設けられている。本発明における対向基板20は、少なくとも遮光膜18、対向電極31、無機配向膜32を含むものである。
遮光膜18は、図1に示すように画素領域Eを取り囲むと共に、平面的に走査線駆動回路24、検査回路25と重なる位置に設けられている。これにより対向基板20側からこれらの駆動回路を含む周辺回路に入射する光を遮蔽して、周辺回路が光によって誤動作することを防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が画素領域Eに入射しないように遮蔽して、画素領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
絶縁層33は、例えば、酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して遮光膜18を覆うように設けられている。このような絶縁層33の形成方法としては、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
対向電極31は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなり、絶縁層33を覆うと共に、図1に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部26により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
画素電極27を覆う無機配向膜28および対向電極31を覆う無機配向膜32は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。無機配向膜28,32としては、気相成長法を用いてSiOx(酸化シリコン)などの無機材料を成膜して、負の誘電異方性を有する液晶分子に対して略垂直配向させた無機配向膜が挙げられる。
このような液晶装置100は透過型であって、電圧が印加されない時の画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも大きいノーマリーホワイトや、電圧が印加されない時の画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも小さいノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。
図3に示すように、液晶装置100は、少なくとも画素領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、容量線3bとを有する。走査線3aが延在する方向がX方向であり、データ線6aが延在する方向がY方向である。
走査線3aとデータ線6aならびに容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、画素電極27と、TFT30と、容量素子16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のデータ線側ソースドレイン領域(ソース領域)に電気的に接続されている。画素電極27は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域(ドレイン領域)に電気的に接続されている。
データ線6aは、データ線駆動回路22(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路22から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは、走査線駆動回路24(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路24から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。
データ線駆動回路22からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路24は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極27に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極27を介して液晶層15に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極27と液晶層15を介して対向配置された対向電極31との間で一定期間保持される。
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極27と対向電極31との間に形成される液晶容量と並列に容量素子16が接続されている。容量素子16は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域と容量線3bとの間に設けられている。容量素子16は、2つの容量電極の間に誘電体層を有するものである。
<液晶装置を構成する画素の構成>
図4は、液晶装置のうち主に画素の構造を示す模式断面図である。以下、液晶装置のうち画素の構造を、図4を参照しながら説明する。なお、図4は、各構成要素の断面的な位置関係を示すものであり、明示可能な尺度で表されている。
図4に示すように、液晶装置100は、素子基板10と、これに対向配置される対向基板20とを備えている。素子基板10を構成する第1基材10a、及び対向基板20を構成する第2基材20aは、上記したように、例えば、石英基板等によって構成されている。
図4に示すように、第1基材10a上には、例えば、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)等の材料を含む下側遮光膜3cが形成されている。下側遮光膜3cは、平面的に格子状にパターニングされており、各画素Pの開口領域を規定している。なお、下側遮光膜3cは、導電性を有し、走査線3aの一部として機能するようにしてもよい。第1基材10a及び下側遮光膜3c上には、シリコン酸化膜等からなる下地絶縁層11aが形成されている。
下地絶縁層11a上には、TFT30及び走査線3a等が形成されている。TFT30は、例えば、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、ポリシリコン(高純度の多結晶シリコン)等からなる半導体層30aと、半導体層30a上に形成されたゲート絶縁層11gと、ゲート絶縁層11g上に形成されたポリシリコン膜等からなるゲート電極30gとを有する。走査線3aは、ゲート電極30gとしても機能する。
半導体層30aは、例えば、リン(P)イオン等のN型の不純物イオンが注入されることにより、N型のTFT30として形成されている。具体的には、半導体層30aは、チャネル領域30cと、データ線側LDD領域30s1と、データ線側ソースドレイン領域30sと、画素電極側LDD領域30d1と、画素電極側ソースドレイン領域30dとを備えている。
チャネル領域30cには、ボロン(B)イオン等のP型の不純物イオンがドープされている。その他の領域(30s1,30s,30d1,30d)には、リン(P)イオン等のN型の不純物イオンがドープされている。このように、TFT30は、N型のTFTとして形成されている。
ゲート電極30g及びゲート絶縁層11g上には、シリコン酸化膜等からなる第1層間絶縁層11bが形成されている。第1層間絶縁層11b上には、容量素子16が設けられている。具体的には、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域30d及び画素電極27に電気的に接続された画素電位側容量電極としての第1容量電極16aと、固定電位側容量電極としての容量線3b(第2容量電極16b)の一部とが、誘電体膜16cを介して対向配置されることにより、容量素子16が形成されている。
誘電体膜16cは、例えば、シリコン窒化膜である。第2容量電極16b(容量線3b)は、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)等の高融点金属のうち少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。或いは、Al(アルミニウム)膜から形成することも可能である。
第1容量電極16aは、例えば、導電性のポリシリコン膜からなり容量素子16の画素電位側容量電極として機能する。ただし、第1容量電極16aは、容量線3bと同様に、金属又は合金を含む単一層膜又は多層膜から構成してもよい。第1容量電極16aは、画素電位側容量電極としての機能のほか、コンタクトホールCNT1,CNT3,CNT4を介して、画素電極27とTFT30の画素電極側ソースドレイン領域30d(ドレイン領域)とを中継接続する機能を有する。
容量素子16上には、第2層間絶縁層11cを介してデータ線6aが形成されている。データ線6aは、ゲート絶縁層11g、第1層間絶縁層11b、誘電体膜16c、及び第2層間絶縁層11cに開孔されたコンタクトホールCNT2を介して、半導体層30aのデータ線側ソースドレイン領域30s(ソース領域)に電気的に接続されている。
データ線6aの上層には、第3層間絶縁層11dを介して画素電極27が形成されている。第3層間絶縁層11dは、例えば、シリコンの酸化物や窒化物からなり、TFT30が設けられた領域を覆うことによって生じる表面の凸部を平坦化する平坦化処理が施される。平坦化処理の方法としては、例えば化学的機械的研磨処理(Chemical Mechanical Polishing:CMP処理)やスピンコート処理などが挙げられる。第3層間絶縁層11dには、コンタクトホールCNT4が形成されている。
画素電極27は、コンタクトホールCNT4,CNT3を介して第1容量電極16aに接続されることにより、半導体層30aの画素電極側ソースドレイン領域30d(ドレイン領域)に電気的に接続されている。なお、画素電極27は、例えば、ITO膜等の透明導電膜から形成されている。
画素電極27及び隣り合う画素電極27間の第3層間絶縁層11d上には、酸化シリコン(SiO2)などの無機材料を斜方蒸着した無機配向膜28が設けられている。無機配向膜28上には、シール材14(図1及び図2参照)により囲まれた空間に液晶等が封入された液晶層15が設けられている。
一方、第2基材20a上(液晶層15側)には、例えば、PSG膜(リンをドーピングしたシリコン酸化膜)などからなる絶縁層33が設けられている。絶縁層33上には、その全面に渡って対向電極31が設けられている。対向電極31上には、酸化シリコン(SiO2)などの無機材料を斜方蒸着した無機配向膜32が設けられている。対向電極31は、上述の画素電極27と同様に、例えばITO膜等の透明導電膜からなる。
液晶層15は、画素電極27と対向電極31との間で電界が生じていない状態で無機配向膜28,32によって所定の配向状態をとる。シール材14は、素子基板10及び対向基板20を貼り合わせるための、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、素子基板10と対向基板20の距離を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のスペーサーが混入されている。
<表面処理装置>
図5は、液晶装置に表面処理を施す表面処理装置の構成を示す模式図である。以下、表面処理装置の構造を、図5を参照しながら説明する。
図5に示すように、表面処理装置40は、無機配向膜28,32(斜方蒸着膜)を有する素子基板10及び対向基板20(以降、「被処理基板W」と称する。)に対して、シランカップリング剤の蒸気を導入して表面処理を行うことにより、被処理基板Wに形成された無機配向膜28,32の耐光性を向上させる装置である。
表面処理装置40は、成膜室41と、減圧装置42と、気化装置43と、キャリアガス供給装置44とを備えている。
成膜室41は、内部に無機配向膜28,32を有する被処理基板Wを収容可能な容器である。例えば、ステンレスなどの金属或いは石英からなる。成膜室41は、密閉可能に構成されており、配管45を介して接続される減圧装置42によって内部を減圧可能に構成されている。
また、成膜室41内或いは成膜室41の外には、図示しない抵抗加熱ヒーターが備えられており、成膜室41の内部の温度(被処理基板Wの温度)を所定の温度に維持することが可能となっている。
減圧装置42は、配管45を介して成膜室41に接続されている。配管45には、制御弁V1が設けられている。減圧装置42は、成膜室41内の気体を外部に排出して、成膜室41内の圧力を大気圧よりも低下させることができるように構成されている。
減圧装置42としては、例えば、コンプレッサー等を用いることができる。減圧装置42及び制御弁V1は、図示しない制御装置に接続されており、成膜室41内を所定の圧力に維持できるように構成されている。
気化装置43は、定量的に供給されたシランカップリング剤を気化させるための装置であり、配管46を介して成膜室41に接続されている。気化装置43は、シランカップリング剤を定量的に供給する処理剤供給部47や、供給されたシランカップリング剤を加熱して気化させる加熱部(図示せず)等を備えている。配管46には、制御装置(図示しない)に接続された制御弁V2が設けられ、成膜室41に供給するガスの流量を制御することができるように構成されている。
シランカップリング剤としては、例えば、下記の一般式(1)で表されるものを用いることができる。
ORはアルコキシ基であり、Rはメチル基(CH3)、エチル基(C2H5)等のアルキル基である。
このRとしては非常に選択の幅が広く、シランカップリング剤として、例えば、オクタデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−トリフルオロメチルフェニルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。また、オクチルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びトリデカフルオロテトラヒドロオクチルトリエトキシシラン等も用いることもできる。
キャリアガス供給装置44は、気化装置43を介して成膜室41内にキャリアガスを供給し、キャリアガスと共に気化したシランカップリング剤を成膜室41内に供給するためのもので、配管48を介して気化装置43に接続されている。キャリアガスは使用されるシランカップリング剤の種類に応じて選択され、例えば窒素ガス(N2)やアルゴンガス(Ar)等を用いることができる。キャリアガス供給装置44は、例えば制御装置(図示略)に接続された制御弁V3等によりキャリアガスの供給量を制御することが可能である。
基板保持部51は、成膜室41内に配置され、複数の被処理基板Wを互いに離間させた状態で保持する構成とされている。この基板保持部51は、気化したシランカップリング剤の流れを遮らない構成であることが好ましく、例えば通気性の良いメッシュ状のものでもよい。
また、基板保持部51の上段から中段までは、製品として用いられる被処理基板WPが載置されている。基板保持部51の下段には、被処理基板WPのように製品とはならない、無機配向膜52が形成されたダミー基板WDが載置されている。被処理基板WP及びダミー基板WDの無機配向膜28,32,52は、シリコン酸化膜が斜方蒸着された柱状構造物が複数形成され、多孔質膜となっている。
これにより、被処理基板WPの無機配向膜28,32だけでは補えない水分を、ダミー基板WDの無機配向膜52に吸着した水分(表面吸着水)で補い、これらの水分を基に加水分解を促進させることができる。
また、加水分解に必要な水分を補うことができるので、強制的に水分(水蒸気)を成膜室41の中に供給することなく、単分子状態の水分(表面に単分子状態で吸着していた水分)を供給することができる。よって、成膜室41の中にパーティクルが発生することを抑え、更に、被処理基板WPやダミー基板WDの表面での化学反応の結果として生成した水を次の加水分解反応に利用することができる。
<電気光学装置の製造方法、表面処理方法>
図6は、電気光学装置としての液晶装置の製造方法、及び表面処理方法を工程順に示すフローチャートである。図7は、被処理基板の無機配向膜に処理された処理膜の反応状態を示す模式図である。以下、表面処理方法を含む液晶装置の製造方法、及び処理膜の反応状態を、図6及び図7を参照しながら説明する。
最初に、素子基板10側の製造方法を説明する。まず、ステップS11では、石英基板などからなる第1基材10a上にTFT30を形成する。具体的には、まず、第1基材10a上に、アルミニウムなどからなる下側遮光膜3c(走査線)を成膜する。その後、周知の成膜技術を用いて、シリコン酸化膜などからなる下地絶縁層11aを成膜する。
次に、下地絶縁層11a上に、TFT30を形成する。具体的には、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術、及びエッチング技術を用いて、TFT30を形成する。
ステップS12では、画素電極27を形成する。製造方法としては、上記と同様に、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術、及びエッチング技術を用いて、画素電極27を形成する。
ステップS13では、無機配向膜28を形成する。具体的には、画素電極27などを覆うように無機配向膜28を形成する。無機配向膜28の製造方法としては、例えば、酸化シリコン(SiO2)などの無機材料を斜方蒸着する斜方蒸着法が用いられる。
ステップS14では、被処理基板WP(素子基板10)をアルコール洗浄する。具体的には、無機配向膜28を有した被処理基板WPを用意し、被処理基板WPの表面を常温、液相のアルコールによって洗浄するアルコール洗浄を行う。
本実施形態のアルコール洗浄においては、例えば、イソプロピルアルコール等を用いることができる。次に、被処理基板WPを、例えば加熱オーブン等により加熱する加熱処理を行ってアルコールを気化させ乾燥除去する。以上により、素子基板10側が完成する。次に、対向基板20側の製造方法を説明する。
まず、ステップS21では、ガラス基板等の透光性材料からなる第2基材20a上に、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、対向電極31を形成する。
ステップS22では、対向電極31上に無機配向膜32を形成する。無機配向膜32の製造方法は、無機配向膜28と場合と同様であり、例えば、斜方蒸着法を用いて形成する。
ステップS23では、被処理基板WP(対向基板20)をアルコール洗浄する。具体的には、ステップS14で行ったアルコール洗浄と同様にして行う。以上により、対向基板20側が完成する。次に、ダミー基板WDの製造方法を説明する。
ステップS31では、ダミー基板WDを形成する。具体的には、ダミー基板WDは、例えば、ガラス基板上の全面に無機配向膜52が斜方蒸着されている。なお、ダミー基板WDの大きさは、被処理基板WPと略同等である。
ステップS32では、ダミー基板WDをアルコール洗浄する。具体的には、ステップS14で行ったアルコール洗浄と同様にして行う。以上により、ダミー基板WDが完成する。次に、共通の製造方法を説明する。
ステップS41では、被処理基板WP(10,20)及びダミー基板WDに表面処理を施す。具体的には、図5に示すように、減圧装置42により成膜室41内の圧力を大気圧よりも低い所定の圧力に維持する。次いで、成膜室41の中に、被処理基板WP及びダミー基板WDが載置された基板保持部51を搬入する。
成膜室41内(被処理基板WP及びダミー基板WD)は、抵抗加熱ヒーター(図示略)によって、例えば約100℃〜約200℃程度の温度に加熱しておく。以下、抵抗加熱ヒーターを制御装置によって制御することにより、表面処理が終了するまで成膜室41内の温度を維持する。
次に、被処理基板WPの無機配向膜28,32、及びダミー基板WDの無機配向膜52の表面にシランカップリング剤の処理膜を形成する。具体的には、気化装置43により上記の一般式(1)で表されるシランカップリング剤を大気圧よりも低い圧力下で気化させる。
次いで、気化させたシランカップリング剤をキャリアガス供給装置44によって供給したキャリアガスと共に大気圧よりも低い圧力に維持した成膜室41内に導入する。キャリアガスは、例えば、窒素ガス(N2)を用い、流量は、例えば500cc/min以下(大気圧換算)とする。
成膜室41内に気化させたシランカップリング剤を含むキャリアガスを導入すると共に、減圧装置42によってキャリアガスの排出を行って成膜室41内の圧力を一定にする。これにより、成膜室41内を、例えば、約500Pa程度の圧力に維持する。成膜室41の圧力を大気圧より低い圧力下にするものの、無機配向膜28,32,52に吸着された水分が残り、この水分が加水分解に寄与する。そして、例えば約150℃の温度で約2時間程度、被処理基板WP及びダミー基板WDの表面処理を行う。
成膜室41内には被処理基板WP及びダミー基板WDが配置されているため、被処理基板WP及びダミー基板WDが気化したシランカップリング剤の雰囲気中に晒されて、無機配向膜28,32,52上にシランカップリング剤の処理膜が形成される。次に、図7を参照しながら、処理膜の反応状態について説明する。
図7(a)に示す工程では、成膜室41内に気化させたシランカップリング剤を含むキャリアガスを導入する。図7(b)に示す工程では、上記したように、被処理基板WP及びダミー基板WDに形成された無機配向膜28,32,52が、柱状構造物が複数形成された多孔質膜となっているので、無機配向膜28,32,52に官能基が加水分解されるのに十分な水分が含まれている。そして、シランカップリング剤の「OCH3」と「H2O(水)」が結合することにより、「CH3OH(アルコール)」となる(脱アルコール)。
図7(c)に示す工程では、シランカップリング剤が加水分解により、「SiOH」となる。図7(d)に示す工程では、加水分解されたシランカップリング剤が、そのメトキシ基がOH基となることにより、無機配向膜28,32,52と反応する。そして、水素結合により、脱水縮合反応する。
図7(e)に示す工程では、シランカップリング剤と無機配向膜28,32,52とが化学結合し、被処理基板WPの無機配向膜28,32、及びダミー基板WDの無機配向膜52にシランカップリングの表面処理を施すことができる。
このように、被処理基板WPに加えて、ダミー基板WDにも無機配向膜52を形成するので、被処理基板WPだけでは補えない水分を補うことができる。よって、シランカップリング剤を加水分解させることが可能となり、加水分解したものが、無機配向膜28,32,52の表面に結合する。また、結合した際に、水分が生成するので、この水分を基に次の反応を誘起させることができる。つまり、加水分解と脱水縮合反応とを繰り返すことができる。次に、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる方法を説明する。
ステップS42では、素子基板10上にシール材14を塗布する。詳しくは、素子基板10とディスペンサー(吐出装置でも可能)との相対的な位置関係を変化させて、素子基板10における表示領域Eの周縁部に(表示領域Eを囲むように)シール材14を塗布する。
シール材14としては、例えば、紫外線硬化型エポキシ樹脂が挙げられる。なお、紫外線などの光硬化型樹脂に限定されず、熱硬化型樹脂などを用いるようにしてもよい。また、シール材14には、例えば、素子基板10と対向基板20との間隔(ギャップ或いはセルギャップ)を所定値とするためのスペーサー等のギャップ材が含まれている。
ステップS43では、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる。具体的には、素子基板10に、塗布されたシール材14を介して素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる。
ステップS44では、液晶注入口から構造体の内部に液晶を注入し、その後、液晶注入口を封止材で封止する。以上により、液晶装置100が完成する。
<電子機器の構成>
次に、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置について、図8を参照して説明する。図8は、上記した液晶装置を備えた投射型表示装置の構成を示す概略図である。
図8に示すように、本実施形態の投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。
このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
このような投射型表示装置1000によれば、液晶ライトバルブ1210,1220,1230として、焼き付き等が抑えられた液晶装置100を用いているので、高い表示品質を実現することができる。
なお、液晶装置100が搭載される電子機器としては、投射型表示装置1000の他、撮像装置、ヘッドアップディスプレイ、スマートフォン、EVF(Electrical View Finder)、モバイルミニプロジェクター、携帯電話、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ディスプレイ、車載機器、オーディオ機器、露光装置や照明機器など各種電子機器に用いることができる。
以上詳述したように、本実施形態の表面処理方法、及び液晶装置100の製造方法によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)本実施形態の表面処理方法、及び液晶装置100の製造方法によれば、斜方蒸着法によって無機配向膜28,32が形成された被処理基板WPに加えて、斜方蒸着法によって無機配向膜52が形成されたダミー基板WDを、一緒の雰囲気中に入れて表面処理を行うので、無機配向膜28,32,52にシランカップリング剤を結合させる際に、反応のきっかけとなる水分を雰囲気中に増やすことが可能となる。具体的には、無機配向膜28,32に吸着された水分だけでは補えない水分を、ダミー基板WDの無機配向膜52に吸着した水分を加えることにより、加水分解反応を促進させることができ、無機配向膜28,32,52との反応率(化学結合)を向上させることができる。また、無機配向膜28,32,52に含まれる水分を加水分解に用いるので、強制的に水分を雰囲気中に供給する方法と比較して、水分が過剰になりシランカップリング剤同士の反応が進むことが無いので、パーティクルが発生することを抑えることができる。その結果、被処理基板WPの品質を向上させることができる。また、水分の不足により、無機配向膜表面との反応率が不足することも無い。
(2)本実施形態の表面処理方法、及び液晶装置100の製造方法によれば、シリコン酸化膜などからなる無機配向膜28,32,52を斜方蒸着法により形成するので、無機配向膜28,32,52をポーラスな膜にすることが可能となり、表面積が大きいので、膜の中に水分を取り込みやすくすることができる。よって、シランカップリング剤の加水分解に必要な水分を十分に補うことができる。
なお、本発明の態様は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、本発明の態様の技術範囲に含まれるものである。また、以下のような形態で実施することもできる。
(変形例1)
上記したように、電気光学装置として液晶装置100に適用することに限定されず、例えば、有機EL装置、プラズマディスプレイ、電子ペーパー等に適用するようにしてもよい。