JP6187423B2 - 自動車のボンネット構造 - Google Patents

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Description

この発明は、ボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルとを有するボンネットの後部が車体にヒンジを介して軸支されたような自動車のボンネット構造に関する。
一般に、自動車のボンネットはボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルとを備えており、該ボンネットはエンジンルーム上方を開閉可能に覆うように、その後部がヒンジを介して車体に軸支されている。
上述のボンネットには、少なくとも次の各要件が求められる。すなわち、走行振動や走行風の風圧などに起因して当該ボンネットに撓みや振動が発生しないように車体に確実に支持されていること、車両の衝突時(前突時)にボンネット後端がヒンジを介して車両後方へ後退移動しないこと、歩行者などの衝突物との衝突時において、その衝撃エネルギを吸収することができること、の各要件である。
従来、衝突物との衝突時に衝撃エネルギを吸収することを目的として、ボンネットインナパネルの中央部に上方へ隆起する中央隆起部を設けることが知られている。
このような中央隆起部を採用した自動車のボンネット構造としては、特許文献1、特許文献2に開示されたものがある。
特許文献1に開示された従来構造は、ボンネットインナパネルの中央部に、車幅方向に延びる複数の凹凸部をもった中央隆起部を一体形成すると共に、ボンネット剛性を確保するために上記中央隆起部の前方、後方、左右の各側方の四方を囲む環状溝を設け、かつ、ボンネット後部をヒンジを介して車体に支持したものである。
この特許文献1に開示された従来構造において、ボンネット後部のヒンジ支持剛性をさらに高めるためには改善の余地があった。
特許文献2に開示された従来構造は、ボンネットインナパネルの中央部に、前後方向に延びる複数の凹凸部をもった中央隆起部を一体形成すると共に、ボンネットインナパネル側部の後端から該中央隆起部まで延びるヒンジレインフォースメントを設けたものである。
この特許文献2に開示された従来構造は、上述のヒンジレインフォースメントのみによりボンネット後部のヒンジ支持剛性を図っており、ボンネットインナパネルそれ自体の構成によりボンネット後部のヒンジ支持剛性の向上を図るものではない。
特許第5542082号公報 特開2011−213283号公報
そこで、この発明は、中央隆起部を有するボンネットにおいて、ボンネット後部のヒンジ支持剛性を高め、走行振動や走行風の風圧などに起因するボンネットの撓みや振動の発生を防止することができる自動車のボンネット構造の提供を目的とする。
この発明による自動車のボンネット構造は、ボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルとを有するボンネットの後部が車体にヒンジを介して軸支された自動車のボンネット構造であって、上記ボンネットインナパネルには、車両正面視で上方に突出する形状の中央隆起部と、その後方に位置する後側隆起部とが前後方向に並んで設けられ、上記両隆起部の間に深絞り溝が車幅方向に延設され、上記後側隆起部の側方から上記深絞り溝の側方を通り上記中央隆起部の後端にかけてヒンジレインフォースメントが延設され、上記後側隆起部の上面には、上記ボンネット後端から前方に離間して車幅方向に延びて、上記ボンネットアウタパネルを支持する凸部が設けられ、上記中央隆起部は、斜め後方下方に延びる傾斜後面が形成され、上記ヒンジレインフォースメントの前端は、上記中央隆起部の上記傾斜後面の下縁よりも前方で、当該傾斜後面の上縁と同等乃至後方の車幅方向側方に位置するように設けられたものである。
上述の深絞り溝は、複数回のプレス加工により深さが深い凹形状に形成することができる。
上記構成によれば、ヒンジレインフォースメントを、後側隆起部の側方から深絞り溝の側方を通って中央隆起部の後端まで延ばすことにより、左右のヒンジレインフォースメント間に車幅方向に架け渡される深絞り溝で、ボンネットの車幅方向中央部位の上下曲げ剛性を高めることができると共に、ヒンジレインフォースメントにより深絞り溝の口開き変形やボンネット後部の上下曲げ変形を防止すべくその剛性向上を図ることができる。
要するに、中央隆起部を有するボンネットにおいて、ボンネット後部のヒンジ支持剛性を高めて、走行振動や走行風の風圧などに起因するボンネットの撓みや振動の発生を防止することができる。
この発明の一実施例においては、上記深絞り溝は、平面視でその車幅方向中央部が車両前方に突出するよう湾曲しており、湾曲中央部が上記ヒンジレインフォースメント前端よりも車両前方に位置しているものである。
上記構成によれば、上述の深絞り溝の湾曲構造により、ヒンジレインフォースメント前端よりも前方部位までヒンジ支持剛性の向上を図ることができ、また、該湾曲構造により、深絞り溝の口開き変形に対する剛性向上をも図ることができる。
この発明の一実施態様においては、上記ボンネットインナパネルの左右両側部に、上記深絞り溝よりも下方に窪む側溝が前後方向に延設され、該側溝の側部における上記深絞り溝よりも下方位置に上記ヒンジレインフォースメントが固定されたものである。
上記構成によれば、上述の側溝にて深絞り溝や後側隆起部を補強することができると共に、ヒンジレインフォースメントは深絞り溝よりも下方位置に固定されているので、このヒンジレインフォースメント上方におけるインパクタ緩衝用のクラッシュスペースの拡大を図ることができる。
この発明によれば、中央隆起部を有するボンネットにおいて、ボンネット後部のヒンジ支持剛性を高め、走行振動や走行風の風圧などに起因するボンネットの撓みや振動の発生を防止することができる効果がある。
本発明のボンネット構造を備えた自動車の前部斜視図 ボンネットアウタパネルを取外して自動車のボンネット構造を示す斜視図 図2の側面図 ボンネット構造を車幅方向中央部で縦断した状態にて示す断面図 (a)は図4の前部の拡大断面図、(b)は図4の後部の拡大断面図 ボンネットインナパネルの平面図 ボンネットインナパネルに対するヒンジレインフォースメントの取付け構造を示す側面図 図6の状態からスティフナを取外した状態で示すボンネットインナパネルの前部拡大平面図 図8の斜視図 (a)〜(d)は車両前突時におけるボンネットの変形状態を順に示す概略側面図
中央隆起部を有するボンネットにおいて、ボンネット後部のヒンジ支持剛性を高め、走行振動や走行風の風圧などに起因するボンネットの撓みや振動の発生を防止するという目的を、ボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルとを有するボンネットの後部が車体にヒンジを介して軸支された自動車のボンネット構造において、上記ボンネットインナパネルには、車両正面視で上方に突出する形状の中央隆起部と、その後方に位置する後側隆起部とが前後方向に並んで設けられ、上記両隆起部の間に深絞り溝が車幅方向に延設され、上記後側隆起部の側方から上記深絞り溝の側方を通り上記中央隆起部の後端にかけてヒンジレインフォースメントが延設され、上記後側隆起部の上面には、上記ボンネット後端から前方に離間して車幅方向に延びて、上記ボンネットアウタパネルを支持する凸部が設けられ、上記中央隆起部は、斜め後方下方に延びる傾斜後面が形成され、上記ヒンジレインフォースメントの前端は、上記中央隆起部の上記傾斜後面の下縁よりも前方で、当該傾斜後面の上縁と同等乃至後方の車幅方向側方に位置するように設けられるという構成にて実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、自動車のボンネット構造を示し、図1は当該ボンネット構造を備えた自動車の前部斜視図であって、図1において、エンジンルーム1の上方を開閉可能に覆うボンネット10を設けている。
上述のエンジンルーム1の前方はフロントバンパ2で覆われており、エンジンルーム1の左右両側方は左右のフロントフェンダ3,3で覆われている。
上述のボンネット10の後方には、エンジンルーム1と車室とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル12(図2参照)上部のカウル部4から斜め後方かつ上方に延びるようにフロントウインド部材としてのフロントウインドガラス5が設けられており、このフロントウインドガラス5の左右両端部はフロントピラー6で支持されており、フロントウインドガラス5の上端部は、ルーフパネル7の前端部下面に接着固定されたフロントヘッダで支持されている。
なお、図1において、8はサイドウインドガラス8aを備えたフロントドア、9は前輪である。
図2はボンネットアウタパネルを取外した状態で自動車のボンネット構造を示す斜視図、図3は図2の側面図、図4はボンネット構造を車幅方向中央部で縦断した状態にて示す断面図、図5の(a)は図4のボンネット前部の拡大断面図、図5の(b)は図4のボンネット後部の拡大断面図、図6はボンネットインナパネルの平面図、図7はボンネットインナパネルに対するヒンジレインフォースメントの取付け構造を示す側面図、図8は図6の状態からスティフナを取外した状態で示すボンネットインナパネルの前部拡大平面図、図9は図8の斜視図である。
図2,図3,図4に示すように、エンジンルーム1と車室11とを車両前後方向に仕切るダッシュロアパネル12を設け、このダッシュロアパネル12の上部には図4に示すように、カウルパネル13を接合固定すると共に、該カウルパネル13の下部前端から車両前方に延びるようにカウルフロントパネル14を接合固定し、さらに、該カウルフロントパネル14の前下部にカウルフロントレインフォースメント15を接合固定することで、オープンカウル構造のカウル部4を形成している。
上述のカウルフロントパネル14とカウルフロントレインフォースメント15との間には、車幅方向に延びる閉断面16が形成されており、これによりカウル剛性の向上を図っている。
また、上述のカウル部4の上方にはカウルグリル17を設ける一方、カウル部4の前方にはカウルグリルフロント18を設けている。
図3に示すように、エプロンレインフォースメントの付け根部に位置するカウルサイドパネル19の上端折曲げ部19aには、ボンネットヒンジ20を介して上述のボンネット10が開閉可能に取付けられている。
上述のボンネットヒンジ20は、図7にも示すように、カウルサイドパネル19の上端折曲げ部19aにボルト、ナットなどの取付け部材21を用いて固定されるボディ側ヒンジブラケット22と、このボディ側ヒンジブラケット22にヒンジピン23を介して連結されるボンネット側ヒンジブラケット24とを備えており、このボンネット側ヒンジブラケット24が上述のボンネット10の後端部左右両サイド下面に連結固定されている。
図4に示すように、上述のボンネット10は鉄板製のボンネットアウタパネル25と、アルミニウムまたはアルミ合金製のボンネットインナパネル26とを有しており、該ボンネット10の後部がボンネットヒンジ20(図3,図7参照)を介して車体に軸支されている。
図6にボンネットアウタパネル25を取外した状態のボンネットインナパネル26を平面図で示すように、該ボンネットインナパネル26は前辺部26Fと左右の側辺部26L,26Rと、後辺部26Bとを有し、各辺部26F,26L,26R,26Bの端縁部がボンネットアウタパネル25の対応部にヘミング加工にて一体的に固定されている。
図6に示すように、上述の前辺部26Fに沿って凹設形成され車幅方向に延びる横溝27と、上述の左側の側辺部26Lに沿って凹設形成され車両前後方向に延びる側溝28と、上述の右側の側辺部26Rに沿って凹設形成され車両前後方向に延びる側溝29とで、平面視で後方側が開放したコ字状の枠状溝30が形成されている。
図2,図3,図4,図6に示すように、上述の横溝27と左右の側溝28,29との各溝(つまり枠状溝30)で三方が囲繞されたボンネットインナパネル26の中間部には、車両正面視で上方に突出する形状の中央隆起部31が設けられている。
また、上述の中央隆起部31の後方に位置するようにボンネットインナパネル26の後辺部26Bに沿って車幅方向に延びる後側隆起部32が設けられている。
そして、上述の中央隆起部31と、その後方の後側隆起部32とが前後方向に並んで設けられると共に、これら両隆起部31,32間には、補強部としての凹溝形状の深絞り溝33が車幅方向に延設形成されている。
上述の深絞り溝33は、複数回のプレス加工により深さが深い凹溝形状に形成されたものである。
ここで、上述の後側隆起部32は、図5の(b)、図7に示すように、前低後高状に傾斜する前壁32aと、側壁32bとを有すると共に、該後側隆起部32の上面前縁には、ボンネット後端から前方に離間して車幅方向に延びて、ボンネットアウタパネル25を支持する凸部32cが設けられており、この凸部32cにより上述の深絞り溝33の溝深さを更に深く形成すると共に、後側隆起部32の後縁に凸部を設ける構造に対して、ヒンジ支持剛性の向上およびボンネットアウタパネル25後部の張り剛性向上を図るように構成している。
また、上述の凸部32cの形状により、図5の(b)に示すように、車幅方向に延びる少なくとも1つの稜線X1を形成している。
図2,図6,図7に示すように、後側隆起部32の側壁32bの側方から深絞り溝33の側方を通って上述の中央隆起部31の後端にかけて左右のヒンジレインフォースメント40,40が取付けられている。
図6,図7に示すように、このヒンジレインフォースメント40は正面視で凹形状に形成されており、図7に示すように、該ヒンジレインフォースメント40の前後両部はリベット41,41を用いてボンネットインナパネル26に結合されると共に、ヒンジレインフォースメント40の前後方向中間部はボルト、ナットなどの取付け部材42,42を用いてボンネットインナパネル26および、ボンネット側ヒンジブラケット24に共締め固定されている。
このように、ヒンジレインフォースメント40を、後側隆起部32の側方から深絞り溝33の側方を通って中央隆起部31の後端まで延ばすことにより、左右のヒンジレインフォースメント40,40間に車幅方向に架け渡される深絞り溝33で、ボンネット10の車幅方向中央部位の上下曲げ剛性を高めると共に、ヒンジレインフォースメント40により深絞り溝33の口開き変形やボンネット後部の上下曲げ変形を防止すべくその剛性向上を図るように構成している。
すなわち、中央隆起部31を有するボンネット10において、ボンネット10後部のヒンジ支持剛性を高めて、走行振動や走行風の風圧などに起因するボンネット10の撓みや振動の発生を防止するように構成したものである。
上述の深絞り溝33は、図4,図5の(b)に示すように、その溝前部に一段深い副溝33aが形成されており、この副溝33aの形成により、該副溝33aに沿う複数の稜線X2,X3,X4が形成されている。
図2,図6に示すように、上述の深絞り溝33は、平面視でその車幅方向中央部が車両前方に突出するように湾曲しており、湾曲中央部33cが上述のヒンジレインフォースメント40の前端よりも車両前方に位置している。
上述の深絞り溝33の湾曲構造により、ヒンジレインフォースメント40前端よりも前方部位までヒンジ支持剛性の向上を図り、さらに、該湾曲構造により、深絞り溝33の口開き変形に対する剛性向上を図るように構成したものである。
図2,図6に示すように、上述の枠状溝30における左右の側溝28,29は、ボンネットインナパネル26の左右両側部において前後方向に延びる溝であって、これら左右の側溝28,29は、上述の深絞り溝33よりも下方に窪むように形成されており、同図に示すように各側溝28,29の側部において深絞り溝33よりも下方位置に上述のヒンジレインフォースメント40が固定されている。
そして、上述の左右の各側溝28,29により深絞り溝33および後側隆起部32を補強すると共に、ヒンジレインフォースメント40が深絞り溝33よりも下方位置に固定されていることで、当該ヒンジレインフォースメント40上方におけるインパクタ緩衝用(つまり衝突物緩衝用)のクラッシュスペースの拡大を図るように構成したものである。
ところで、前述の中央隆起部31は、衝突物との衝突時に衝撃エネルギを吸収するものであり、図2に示すように、この実施例では、中央隆起部31の上部は凹凸形状に形成されている。
すなわち、該中央隆起部31は、上部前側に位置して車幅方向に延びる凸部31aと、この凸部31aの後方において車幅方向に延びる凸部31bと、この凸部31bのさらに後方において車幅方向に延びる凸部31cと、中央隆起部31の上部後側に位置して車幅方向に延びる凸部31dと、上記各凸部31a,31b間、凸部31b,31c間、凸部31c,31d間において車幅方向に延びる凹部31e,31f,31gと、を有するものである。
また、上述の中央隆起部31は、図2,図6に示すように凸部31aから斜め前方下方に延びる傾斜前面31hと、凸部31dから斜め後方下方に延びる傾斜後面31iと、中央隆起部31の上部左右から斜め下方外方に延びる左右の各傾斜側面31j,31kと、を備えている。
一方、図4,図5の(a)、図8,図9に示すように、ボンネットインナパネル26の前部車幅方向中央には、横溝27と対応する位置にストライカレインフォースメント50を取付けており、このストライカレインフォースメント50とボンネットインナパネル26とを挟持するようにストライカ51を取付けている。
このストライカ51は、ボンネットインナパネル26の前部車幅方向中央から下方に突出するように設けられており、該ストライカ51は車体側のラッチと係合可能に構成されている。
図4,図5の(a)に示すように、上述の中央隆起部31の傾斜前面31hとボンネットインナパネル26の前端部(前辺部26F)との間には、上述のストライカ51の取付け部から上方に離間するように補強部材としてのスティフナ60を架設している。
そして、上述の深絞り溝33と枠状溝30とスティフナ60とにより、通常時のボンネット剛性を確保しつつ、中央隆起部31と後側隆起部32とスティフナ60とにより、全体的に慣性質量をボンネット10上部に集中させつつ、上下方向のクラッシュストロークを大きくし、衝突物緩衝時の反力を初期に高く、後期に低く持続する反力特性を確保するように構成している。
図2,図6に示すように、上述のスティフナ60には上下複数の開口61,62が形成されており、上側の開口61と下側の開口62との間には上下方向に湾曲して車幅方向に延びる横ビード63が形成されており、該横ビード63の左右両部には、車幅方向外方に湾曲して前後方向に延びる縦ビード64,64が形成されており、補強ビードそれ自体が折れ起点となって衝突物の緩衝ストロークが低減することを防止すべく構成している。
図8,図9にボンネットインナパネル26を拡大して示すように、上述の中央隆起部31の上部と下部とには略環状の稜線X5,X6が形成されている。
上述の中央隆起部31の前側の左右のコーナ部には、上下の稜線X5,X6を寸断する一対のスリット43,43と、一対のスリット43,43間に位置する柱状部44とが設けられており、衝突物の衝突エネルギ吸収時における変形抵抗の増大や底付きを防止すると共に、上記柱状部44にて通常時の剛性確保を図り、かつ衝突物緩衝時の初期反力向上を図るように構成している。
上述の枠状溝30のうちの横溝27には、図5の(a)、図8,図9に示すように、当該横溝27よりも一段深く、車幅方向に延びる副溝27aが凹設形成されている。そして、該副溝27aの前後両部には車幅方向に延びる稜線X7,X8が形成されている。
また、図6,図8,図9に示すように、中央隆起部31の傾斜前面31hの左右には開口部45,45が開口形成されている。さらに、同図に示すように、中央隆起部31の凹部31e、凹部31gには、軽量化用の開口部46…が複数開口形成されている。
加えて、図6に示すように、上述の中央隆起部31の各凸部31a,31b,31c,31dと、後側隆起部32の凸部32cとにおけるトップデッキ面には、ボンネットインナパネル26をボンネットアウタパネル25に対して接着固定する充填剤47(図6において小径の白抜き丸印にて示す)が設けられるものである。
なお、図示の便宜上、図2,図3,図7〜図9においては充填剤47の図示を省略している。
ところで、図3,図6に示すように、ボンネットインナパネル26のロック部を構成するストライカレインフォースメント50と上述のヒンジレインフォースメント40との間の部位には、車両前突時にボンネット10の上方への屈曲を促進する山折れ起点52が設けられている。
この実施例では、上述の山折れ起点52は、ボンネットインナパネル26の下面、詳しくは側溝28,29の底壁部から上方に窪んだ窪形状部53と、この窪形状部53から上方に延びる第1の縦壁としての中央隆起部31の傾斜側面31j,31kとで形成されている。
上述の山折れ起点52,52を設けることで、図6に示すように、左右の山折れ起点52,52を車幅方向に結ぶ山折れラインL3が形成されている。
上述の山折れ起点52,52よりも後方の部位に、図3,図6に示すように、車幅方向に延びて車両前後方向の耐力以上の入力荷重で下向きに変形する補強部としての深絞り溝33と、ヒンジレインフォースメント40前端とが車幅方向に並んで設けられている。
上述の深絞り溝33とヒンジレインフォースメント40の前端とは、何れも剛性変化点として作用し、これら深絞り溝33とヒンジレインフォースメント40前端とが車幅方向に並ぶことで、通常時のボンネット10後部の曲げ剛性およびヒンジ支持剛性の向上を図るように構成している。
また、剛性変化点としての深絞り溝33とヒンジレインフォースメント40前端とが車幅方向に並ぶことにより、前突時に当該剛性変化点に応力が集中して、深絞り溝33およびヒンジレインフォースメント40前端が下向きに変形(下折れ、谷折れ)し、ボンネットヒンジ20を車体に押付ける曲げモードにして、下折れ変形を促進すると共に、荷重分散を図るように構成している。
つまり、ボンネット10のヒンジ支持剛性の確保と、車両前突時におけるボンネット10後部の後退防止とを両立するように構成したものである。
図2,図3,図7に示すように、補強部としての深絞り溝33は凹溝により形成されており、図7に示す如く、上述のヒンジレインフォースメント40の前端が該深絞り溝33(つまり凹溝)前縁まで車両前方に延びている。
そして、ヒンジレインフォースメント40によって上記凹溝(深絞り溝33)の口開き変形に対する補強を図って、軽量高剛性化を図ると共に、車両前突時には上記深絞り溝33が強力に下折れ変形を促進し、ボンネットヒンジ20が車体に押付けられることで、前突荷重の分散を図るように構成している。
図6,図7に示すように、上述のヒンジレインフォースメント40の前端は、中央隆起部31の傾斜後面31iの下縁よりも前方で、傾斜後面31iの上縁と同等乃至後方の側方に位置するように設けられている。
これにより、中央隆起部31の下縁を、上述のヒンジレインフォースメント40で補強して、軽量高剛性化を図ると共に、ヒンジレインフォースメント40の前端位置で通常時の剛性をコントロールし得るように構成している。
図3,図6に示すように、補強部としての深絞り溝33に対して、ヒンジレインフォースメント40よりも上方に前突荷重伝達経路Z(具体的には中央隆起部31の上面と傾斜側面31j,31k)が車両前後方向に延設されている。
これにより、前突荷重伝達経路Z(中央隆起部31の上面と傾斜側面31j,31k)がヒンジレインフォースメント40よりも上方に存在することで、衝突初期に荷重を確実に後方へ伝達すると共に、ヒンジレインフォースメント40と前突荷重伝達経路Zとの間の上下方向のオフセット量の確保により、下折れ変形をより一層確実に促進するように構成している。
上述の前突荷重伝達経路Z(中央隆起部31の上面と傾斜側面31j,31k)の後方において、深絞り溝33と、ヒンジレインフォースメント40前端とを車幅方向に並んで設けることにより、図6に示すように、当該左右のヒンジレインフォースメント40,40前端を車幅方向に結ぶ谷折れラインL4が形成されている。
図3,図6に示すように、上述の補強部としての深絞り溝33は、ボンネットインナパネル26上面から下方に窪んだ凹形状部と、該凹形状部から下方に延びる第2の縦壁33b(詳しくは、図6に示す深絞り溝33の溝底部と左右の側溝28,29との間の縦壁)とで形成されており、この第2の縦壁33bにより通常時の剛性確保を図るように構成している。
さらに、図3に示すように、上述の窪形状部53と、第1の縦壁である中央隆起部31の傾斜側面31j,31kとから成る山折れ起点52を設け、この山折れ起点52の後方部位に、上述の凹形状部と第2の縦壁33bとで形成された深絞り溝33を設けることにより、山折れ起点52と補強部(深絞り溝33)とで変形による荷重吸収量の増大を図り、またヒンジレインフォースメント40に付勢される前突荷重を、下向きに折れ変形する当該ヒンジレインフォースメント40から車体に荷重分散させて、ボンネット10後部の後退を抑制するように構成したものである。
ところで、図6に平面図で示すように、上述のボンネットインナパネル26には、上述の山折れラインL3、谷折れラインL4に加えて、中央隆起部31の傾斜前面31hにおいて左右の開口部45,45およびスリット43,43を車幅方向に結ぶ谷折れラインL1(衝突物との衝突時に谷折れ変形するライン)と、中央隆起部31の前側コーナ部に形成された左右の柱状部44,44をその下部から上部に結んだ後に、柱状部44,44上部相互間を、凸部31a後面に沿って車幅方向に結ぶプリ山折れラインL2(前置山折れ起点部)と、が形成されている。
図10の(a)〜(d)は車両前突時におけるボンネット10の変形状態を順に示す概略側面図である。
図10の(a)に示すように、車両前突時には、まずプリ山折れラインL2(前置山折れ起点部)に応力が集中すると共に、前突荷重伝達経路(中央隆起部31の上面と傾斜側面31j,31k)を介して後方に荷重が伝達される。
次に、図10の(b)に示すように、プリ山折れラインL2が曲がり、ボンネット10が山折れ変形すると共に、上述の前突荷重伝達経路から後方に伝達される荷重により、剛性変化点(深絞り溝33とヒンジレインフォースメント40の前端)に応力が集中して、深絞り溝33が谷折れ変形を開始する。
次に、図10の(c)に示すように、深絞り溝33の谷折れ変形の進行により、ボンネットヒンジ20のボンネット側ヒンジブラケット24が車体に干渉して、応力を分散する一方で、ボンネット側ヒンジブラケット24と車体との干渉により行き場を失った応力が山折れ起点52に集中する。
次に、図10の(d)に示すように、上述の山折れ起点52により中央隆起部31が山折れ変形して、荷重を吸収することで、前突荷重のボンネット10後方への伝達量を低減させると共に、深絞り溝33がさらに谷折れ変形することで、前突荷重のボンネット10後方への伝達量をより一層減少させるので、ヒンジピン23への後退荷重が減少して、ボンネット10後部の車両後方への移動を防止する。このため、ボンネット10はヒンジピン23の前方において三つ折り状態に変形する。
なお、図10において、αは通常時(前突前)のストライカ51の位置を示す。また、図3において、48はカウルシールである。さらに、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示す。
このように、上記実施例の自動車のボンネット構造は、ボンネットアウタパネル25とボンネットインナパネル26とを有するボンネット10の後部が車体にヒンジ(ボンネットヒンジ20参照)を介して軸支された自動車のボンネット構造であって、上記ボンネットインナパネル26には、車両正面視で上方に突出する形状の中央隆起部31と、その後方に位置する後側隆起部32とが前後方向に並んで設けられ、上記両隆起部31,32の間に深絞り溝33が車幅方向に延設され、上記後側隆起部32の側方から上記深絞り溝33の側方を通り上記中央隆起部31の後端にかけてヒンジレインフォースメント40が延設されたものである(図2,図4,図6参照)。
この構成によれば、ヒンジレインフォースメント40を、後側隆起部32の側方から深絞り溝33の側方を通って中央隆起部31の後端まで延ばすことにより、左右のヒンジレインフォースメント40,40間に車幅方向に架け渡される深絞り溝33で、ボンネット10の車幅方向中央部位の上下曲げ剛性を高めることができると共に、ヒンジレインフォースメント40により深絞り溝33の口開き変形やボンネット10後部の上下曲げ変形を防止すべくその剛性向上を図ることができる。
要するに、中央隆起部31を有するボンネット10において、ボンネット10後部のヒンジ支持剛性を高めて、走行振動や走行風の風圧などに起因するボンネット10の撓みや振動の発生を防止することができる。
また、この発明の一実形態においては、上記深絞り溝33は、平面視でその車幅方向中央部が車両前方に突出するよう湾曲しており、湾曲中央部33cが上記ヒンジレインフォースメント40前端よりも車両前方に位置しているものである(図6参照)。
この構成によれば、上述の深絞り溝33の湾曲構造により、ヒンジレインフォースメント40前端よりも前方部位までヒンジ支持剛性の向上を図ることができ、また、該湾曲構造により、深絞り溝33の口開き変形に対する剛性向上をも図ることができる。
さらに、この発明の一実施形態においては、上記ボンネットインナパネル26の左右両側部に、上記深絞り溝33よりも下方に窪む側溝28,29が前後方向に延設され、該側溝28,29の側部における上記深絞り溝33よりも下方位置に上記ヒンジレインフォースメント40が固定されたものである(図6参照)。
この構成によれば、上述の側溝28,29にて深絞り溝33や後側隆起部32を補強することができると共に、ヒンジレインフォースメント40は深絞り溝33よりも下方位置に固定されているので、このヒンジレインフォースメント40上方におけるインパクタ緩衝用のクラッシュスペース(つまり衝突物緩衝用のクラッシュスペース)の拡大を図ることができる。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のヒンジは、実施例のボンネットヒンジ20に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
以上説明したように、本発明は、ボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルとを有するボンネットの後部が車体にヒンジを介して軸支された自動車のボンネット構造について有用である。
10…ボンネット
20…ボンネットヒンジ(ヒンジ)
25…ボンネットアウタパネル
26…ボンネットインナパネル
28,29…側溝
31…中央隆起部
31i…傾斜後面
32…後側隆起部
32c…凸部
33…深絞り溝
33c…湾曲中央部
40…ヒンジレインフォースメント

Claims (3)

  1. ボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルとを有するボンネットの後部が車体にヒンジを介して軸支された自動車のボンネット構造であって、
    上記ボンネットインナパネルには、車両正面視で上方に突出する形状の中央隆起部と、その後方に位置する後側隆起部とが前後方向に並んで設けられ、
    上記両隆起部の間に深絞り溝が車幅方向に延設され、
    上記後側隆起部の側方から上記深絞り溝の側方を通り上記中央隆起部の後端にかけてヒンジレインフォースメントが延設され
    上記後側隆起部の上面には、上記ボンネット後端から前方に離間して車幅方向に延びて、上記ボンネットアウタパネルを支持する凸部が設けられ、
    上記中央隆起部は、斜め後方下方に延びる傾斜後面が形成され、
    上記ヒンジレインフォースメントの前端は、上記中央隆起部の上記傾斜後面の下縁よりも前方で、当該傾斜後面の上縁と同等乃至後方の車幅方向側方に位置するように設けられた
    自動車のボンネット構造。
  2. 上記深絞り溝は、平面視でその車幅方向中央部が車両前方に突出するよう湾曲しており、
    湾曲中央部が上記ヒンジレインフォースメント前端よりも車両前方に位置している
    請求項1記載の自動車のボンネット構造。
  3. 上記ボンネットインナパネルの左右両側部に、上記深絞り溝よりも下方に窪む側溝が前後方向に延設され、
    該側溝の側部における上記深絞り溝よりも下方位置に上記ヒンジレインフォースメントが固定された
    請求項1または2記載の自動車のボンネット構造。
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