JP6182067B2 - カルボン酸エステル流中の有機ハロ及びオキシラン種の除去 - Google Patents

カルボン酸エステル流中の有機ハロ及びオキシラン種の除去 Download PDF

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Description

本出願は、2010年9月3日出願の「カルボン酸エステルストリーム中の有機ハロ及びオキシラン種の排除(Elimination of Oraganohalo and Oxirane Species in Carboxylic Acid Ester Streams)」という名称の米国仮出願番号第61/380,013号に関する優先権を請求するものである。その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
3−クロロ−1,2−プロパンジオール(3−MCPD)は食物において形成される周知の有機化合物である。これは、食品加工、特に加熱加工された油脂含有食料の副生成物であり、3−MCPDはその加工の際に形成される。
最近の研究によれば、食用油を含む精製油脂及び油において高いレベルの3−MCPDエステルが確認されている。3−クロロ−1,2−プロパンジオール(3−MCPD)及びそのエステルは精製されたすべての植物油において見られる。油の加工及び精製は、これらの望ましくない副生成物、有機ハロ種(例えば、3−クロロ−1,2−プロパンジオール(MCPD))及びグリシドール並びにそのそれぞれのエステルの形成をもたらす。遊離MCPDは試験において遺伝毒性及び発癌性を示すことが発見されており、これらの作用は、特に食品業界においてある種の懸念を惹起している。グリシドールも公知の遺伝毒性及び発癌性の化合物である。3−MCPDエステル又はグリシジルエステルについて、毒性学的プロフィールは知られていない。これらのエステルの毒性は腸内のリパーゼによる遊離3−MCPD又はグリセロール種へのその分解に依存し、これは、現在の関心及び研究の領域である。
現在、油の精製プロセスの間で3−MPCD−エステルがいつどのようにして形成されるかについて、限られた、相反する知見しか得られていない。最も高い3−MPCDエステル含有量が精製油において見られる一方で、バージン油又は未精製油のその含有量はより低いものであり、検出限界以下であることもある。種子(又は果実)を熱で前処理すると、非精製油中のそのレベルに寄与するという考え方がある。3−MCPD/グリシドールエステル形成の機構についての研究はこの分野でなお進行中である。
当技術分野において、油脂及び油、特に食用油の中の3−MCPD及びグリシドール並びにそのそれぞれのエステルの量を限定する又は排除する必要がある。
本発明の技術は、有機ハロ(例えば、3−クロロ−1,2−プロパンジオール)、グリシジル又は他のオキシラン種、例えばエピクロルヒドリン及びそのそれぞれのエステルを含まない脂肪酸グリセリド流及びトリグリセリド油を生成する1つ又は複数の独特の方法を提供する。この方法は、1種又は複数の塩基を添加することによって、粗製油又は精製油を製造及び/又は加工するのに使用される油の処理及び/又は加工流の処理の両方を含む。この方法は、1種又は複数の塩基を、1)トリグリセリド油、又は2)トリグリセリド油の調製において使用されるカルボン酸エステル流のいずれかに添加することを含む。1種又は複数の塩基は、カルボン酸流又はトリグリセリド油の中の脂肪酸又は脂肪酸エステルと反応して、カルボン酸アニオン(せっけん)及びカチオン対イオンを形成する。いくつかの実施形態では、追加の脂肪酸を1種又は複数の塩基と一緒に添加して、カルボン酸アニオンを形成させる。次いでカルボン酸アニオンを有機ハロ又はオキシラン種と反応させて、それぞれ、エステル及び金属ハロゲン化物塩又は金属アルコキシド種を生成させる。これによって有機ハロ(例えば、3−クロロ−1,2−プロパンジオール)、グリシジルエステル又は他のオキシラン種のレベルが減少している脂肪酸グリセリド流又はトリグリセリド油が得られる。いくつかの実施形態では、その脂肪酸グリセリド流又はトリグリセリド油は有機ハロ、グリシジルエステル又は他のオキシラン種を本質的に含まない。
一態様では、本発明の技術は、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種のレベルが減少している又はそれを本質的に含まないカルボン酸エステル流を調製する少なくとも1つの方法を提供する。この方法は、有効量のカルボン酸アニオン及びカチオン対イオンをカルボン酸エステル流に添加して、約80℃〜約275℃、好ましくは約80℃〜約250℃、より好ましくは約140℃〜約250℃で、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種のレベルが減少している又はそれを本質的に含まないカルボン酸エステル流を生成するのに十分な時間、カルボン酸エステル流中に存在する有機ハロ、グリシジル及びオキシラン種と反応させるステップを含む。
いくつかの態様では、本発明の技術は、カルボン酸エステル流又はトリグリセリド油の中での有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の形成を防止する。
他の態様では、本発明の技術は、トリグリセリド油から有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を除去する少なくとも1つの方法であって、有効量の1種又は複数の塩基を有効量の少なくとも1種の脂肪酸と混合して、トリグリセリド油中から有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を減少させる又はそれから除去するのに十分な有効量のカルボン酸アニオン及び対応するカチオン対イオンを生成させるステップと;約80℃〜約275℃、好ましくは約80℃〜約250℃、より好ましくは約140℃〜約250℃で、その有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種のレベルが減少している、又はそれを本質的に含まないのに十分な時間、有効量のカルボン酸アニオンをトリグリセリド油と混合するステップとを含む方法を提供する。
さらに他の態様では、本発明の技術は、トリグリセリド油のための加工又は製造操作中における有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の形成を低減させる、除去する又は防止する方法であって、トリグリセリド油原料を作製するステップと;十分な量の1種又は複数の塩基を添加してトリグリセリド油原料中の脂肪酸と反応させて、その原料中に存在する有機ハロ、グリシジル及び他のオキシラン種と反応させるのに十分な量でカルボン酸アニオン及びカチオン対イオンを生成させるステップと;原料及び1種又は複数の塩基を、約80℃〜約275℃、好ましくは約80℃〜約250℃、より好ましくは約140℃〜約250℃の温度で、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を実質的に含まないトリグリセリド油を製造するのに十分な時間インキュベートするステップとを含む方法を提供する。いくつかの態様では、1種又は複数の塩基を、油加工又は製造操作の開始時に添加する。他の態様では、この方法はさらに、十分な量の脂肪酸を添加して1種又は複数の塩基と反応させて、カルボン酸アニオン及びカチオン対イオンを製造するステップを含む。
いくつかの態様では、トリグリセリド油又はカルボン酸エステル流は、約0.5ppm未満、好ましくは約0.15ppm未満、或いは約0.1ppm未満の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を含む。
驚くべきことに、本発明の技術は、カルボン酸エステル流並びに粗製及び精製トリグリセリド油から、有機ハロ種、グリシジル又は他のオキシラン、例えばエピクロルヒドリン又はそのそれぞれのエステルなどの形成を除去する、低減させる、排除する又は防止する方法を提供する。この方法は、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種が減少している、又は、いくつかの実施形態では、それを本質的に含まない生成カルボン酸エステル流又はトリグリセリド油を生成する。
本発明の技術との関連で、「低減された(reduced)」有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種という用語は、本発明の技術において塩基で処理されていないカルボン酸エステル流又はトリグリセリド油と比較してカルボン酸エステル流又は粗製及び精製トリグリセリド油の中の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の少なくとも25%以上、好ましくは少なくとも40%の減少と定義される。いくつかの実施形態では、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の量は、少なくとも約25%以上、少なくとも約30%以上、或いは約35%以上、或いは約40%以上、或いは約45%以上、或いは約50%以上、或いは約55%以上、或いは約60%以上、或いは約70%以上、或いは約80%以上、或いは約90%以上減少し、これらは、これらに限定されないが、約0.1%、約0.2%、約0.25%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%及びその倍数(multiple factor)(例えば、約0.5×、約1.×、約2.0×、約2.5×等)の増分を含むその間の任意のパーセンテージを含む。
本発明の技術について有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種「を本質的に含まない」という用語は、非常に低いレベル、例えば油の組成物の約0.5ppm未満、より好ましくは約0.15ppm未満、或いは約0.1ppm未満の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種のレベルと定義される。いくつかの実施形態では、「本質的に含まない」ということは、これらの化合物を検出できないレベルを包含する。油中の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の量は、ガスクロマトグラフィー(GC)質量分析法、液体クロマトグラフィー(LC)質量分析法などを含む当業界で公知の任意の手段で計算又は推定することができる。これらの測定を実施することができる民間の試験機関には、これらに限定されないが、Eurofins Central Analytical Laboratories、Metairie、LA及びSGS Gmbh、Hamburg、Germanyが含まれる。
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、目的生成油からの有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の形成を低減させる、除去する又は防止する精製油の作製又は加工において、精製油と未精製油の両方を処理する、且つ/又は加工カルボン酸エステル流を処理する方法を提供する。理論に拘泥するわけではないが、情報及び確信によって、トリグリセリド油の製造の間に1種又は複数の塩基をカルボン酸エステル流に添加すると、目的生成物トリグリセリド油において1種若しくは複数の有機ハロ、グリシジル又はオキシラン種の形成が発生するのが防止されると考える。
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、油を作製する方法においてカルボン酸エステル流を処理して、有機ハロ、グリシジル又はオキシラン種の形成を防止する方法を提供する。
加工の際のトリグリセリド油の処理
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、有機ハロ種(例えば、3−クロロ−1,2−プロパンジオール)、グリシドール又はオキシラン種及びそのそれぞれのエステルのレベルが減少している、又はそれを本質的に含まないカルボン酸エステル流を製造する方法を提供する。この方法は、いくつかの場合ろ過によってそのカルボン酸エステル流からそれを分離できるように、油からの有機ハロ、グリシジル又はオキシラン種を化学的に改変することを含む。この方法は、カルボン酸エステル流の加工及び/又は製造の間か、或いはカルボン酸エステル流が生成した後のいずれかに、少なくとも1種の塩基をトリグリセリド油に添加することを含む。以下に示すように、少なくとも1種の塩基が、カルボキシレート酸(carboxylate acid)流中の脂肪酸又は脂肪酸エステルと反応してカルボン酸アニオン(せっけん)及びそのカチオン対イオンを形成する。

(式中、RはC〜C23の炭素鎖長を表し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、又は窒素若しくはリン含有カチオン種を表す)。
それぞれ以下のようにして、カルボン酸アニオン及びカチオン対イオンを有機ハロ又はグリシジル種と反応させてエステル及び金属ハロゲン化物塩又は金属アルコキシド種を得る。

(式中、RはC〜C24の炭素鎖長を表し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、又は窒素若しくはリン含有カチオン種を表す)。
いくつかの実施形態では、形成された金属ハロゲン化物塩を、精製又は加工されたカルボン酸流からろ別し、有機ハロ(例えば、3−クロロ−1,2−プロパンジオール)、グリシドール又はオキシラン種及びそのそれぞれのエステルのレベルが減少している、又はそれを本質的に含まないろ過されたカルボン酸エステル流を生成することができる。
本発明の技術において、カルボン酸エステル流には、これらに限定されないが、油脂、油、脂肪酸及びグリセロールなどを含む油脂及び油を製造、精製、加工又は純化する流れ中の任意の化合物又は成分が含まれる。脂肪酸及びカルボン酸という用語は、本出願の使用において交換可能である。油脂及び油には、これらに限定されないが、原料油及び精製油、植物油、動物油脂並びに合成油を含むあらゆるトリグリセリド油が含まれる。油脂及び油は、トリグリセリド、グリセロールと脂肪酸のエステルを含む。天然の油脂及び油は基本的にはトリグリセリドを含むが、これらに限定されないが、脂肪酸、部分的なグリセリド、ジグリセリド及びモノグリセリドを含む他の成分が少量存在してもよい。トリグリセリドは、トリアシルグリセロール(TAG)とも称され、グリセロールと3つの脂肪酸から誘導されるエステルである。適切なトリグリセリド油には、これらに限定されないが、ココナツオイル、コーチン油(cochin oil)、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ピーナッツ油、大豆油、ひまわり油、トール油、獣脂、レスクレラ油、キリ油、鯨油、茶油、ゴマ油、サフラワー油、菜種油、魚油、アボカド油、からし油、米ぬか油、アーモンド油、くるみ油、その誘導体及びこれらの組合せが含まれる。
いくつかの実施形態では、油脂及び油を製造、精製、加工又は純化する方法には、当業者に公知の任意の方法が含まれる。これらの方法には、これらに限定されないが、物理的精製、蒸気精製若しくは機械的精製(これらに限定されないが、例えば真空蒸気蒸留を含む)、化学的精製(これらに限定されないが、例えば溶媒抽出及びミセラ精製を含む)並びに漂白土、塩基性又は酸性樹脂、シリカ、アルミナ及び/又は活性炭による処理が含まれる。本発明の技術において、トリグリセリド油又はカルボン酸エステル流の加工ステップの間に少なくとも1種の塩基を添加して有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を除去する。少なくとも1種の塩基を、トリグリセリド油の加工若しくは製造ステップの最初、加工及び製造ステップの間又は加工若しくは製造ステップの後に添加することができる。トリグリセリド油の加工の間又はその加工の後に添加する場合、追加の脂肪酸を添加して十分な量のカルボン酸アニオン及び対カチオンを生成させることも、或いは、すでに形成されているカルボン酸アニオン及び対カチオンを添加することもできる。
本発明の技術において、少なくとも1種の塩基を、十分な量の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種をトリグリセリド油又はカルボン酸流から除去するのに十分な量で添加する。少なくとも1種の塩基の十分な量は、十分な量の脂肪酸と反応して十分な量のカルボン酸アニオン及びカチオン対イオンを生成させて、加工又は製造の間に存在する又は形成される有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種と反応して有機ハロ、グリシジル又はオキシラン種の量を減少させるか、或いは、いくつかの実施形態では、有機ハロ、グリシジル又はオキシラン種を実質的に含まない油を生成させることができる量を含む。少なくとも1種の塩基を、トリグリセリド油の加工又は製造の最初又はその間に添加する場合、少なくとも1種の塩基は、最終的な目的生成物トリグリセリド油中に形成されることが予想される有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の量より過剰に添加することができる。製造及び加工技術に精通している当業者は、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の予想される量を推定することができ、また、その量は、未処理油中の有機ハロ、グリシジル又はオキシラン種の量を測定することによっても決定することができる。
いくつかの実施形態では、油の加工又は製造の間に添加される塩基の量は、トリグリセリド油の全重量に対して約100パーツパーミリオン(ppm)〜約2%、トリグリセリド油の全重量に対して好ましくは約200ppm〜約2%である。その塩基は、存在する又は形成されると予想される有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種に対して、好ましくは約1.1倍〜約10,000倍過剰、好ましくは約1.1倍〜約20倍過剰、好ましくは約2倍〜約10倍過剰で過剰に添加することができる。或いは、塩基は、存在する又は予想される有機ハロ、グリシジル又はオキシラン種に対して、約1.1倍〜約1,000倍過剰、或いは約1.1倍〜約500倍過剰、或いは約1.1倍〜約250倍過剰、或いは約1.1倍〜約100倍過剰、或いは約1.1倍〜約50倍過剰、或いは約1.1倍〜約25倍過剰、或いは約1.1倍〜約20倍過剰、或いは約2倍〜約1000倍過剰、或いは約2倍〜約500倍過剰、或いは約2倍〜約250倍過剰、或いは約2倍〜約100倍過剰、或いは約2倍〜約50倍過剰、或いは約2倍〜約25倍過剰で過剰に添加することができ、これらは、これらに限定されないが、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9又は約1.0倍及びその倍数(例えば、約0.5×、約1.0×、約2.0×、約2.5×、約3.0×、約4.0×、約5.0×、約10×、約50×又は100×以上)の増分を含むその間の任意のパーセンテージ又は範囲を含む。いくつかの実施形態では、その過剰倍数(fold excess)は、塩基の約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約21倍、約22倍、約23倍、約24倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、約65倍、約70倍、約75倍、約80倍、約85倍、約90倍、約95倍、約100倍、約105倍、約110倍、約115倍、約120倍、約125倍、約130倍、約135倍、約140倍、約145倍、約150倍、約175倍、約200倍、約250倍、約300倍、約350倍、約400倍、約450倍、約500倍過剰の塩基であってよい。
いくつかの実施形態では、1種又は複数の塩基を、カルボン酸エステル流又はトリグリセリド油中に少なくとも約350ppm以上、好ましくは少なくとも約400ppm以上のカルボン酸アニオン(せっけん)又はカチオン対イオンを生成させるのに十分な量で添加して、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種と反応させる。いくつかの実施形態では、十分な量のカルボン酸アニオン又はカチオン対イオンを、カルボン酸エステル流又は未精製又は精製トリグリセリド油に直接添加することができる。その十分量は、少なくとも約350ppm以上、より好ましくは約400ppm以上である。いくつかの実施形態では、形成される又は添加されるカルボン酸アニオンの量は、これらに限定されないが、約350ppm以上、約400ppm以上、約450ppm以上、約500ppm以上、約550ppm以上、約600ppm以上、約650ppm以上、約700ppm以上、約800ppm以上、約900ppm以上、約1000ppm以上、約1200ppm以上、約1500ppm以上、約1800ppm以上、約2000ppm以上、約2500ppm以上を含み、これらは、これらに限定されないが、例えば約0.1ppm、約0.25ppm、約0.5ppm、約1ppm、約2ppm、約5ppm、約10ppm、約20ppm、約25ppm、約50ppm、約100ppm及びその倍数(例えば、約0.5×、約1.0×、約2×、約2.5×、約5×等)の増分を含むその間の任意のppm量を含む。
少なくとも1種の塩基は、これらに限定されないが、精製、脱ガム、脱臭、洗浄、漂白、蒸留、精製など及びその任意の組合せを含むトリグリセリド油の加工及び/又は製造のいずれかのステップの間に添加することができる。いくつかの実施形態では、油の加工/製造のどの段階で1種又は複数の塩基を添加するかに応じて、遊離脂肪酸を、1種又は複数の塩基と反応させるのに十分な量で添加し、十分な量のカルボン酸アニオンを生成させて、目的生成物の油から有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を減少又は除去し、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種のレベルが減少している、又はそれを本質的に含まない油を生成することもできる。製造又は加工されている油中の天然の脂肪酸を使用することが好ましい。
カルボン酸アニオン(及びカチオン対イオン)の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種との反応は、約80℃〜約275℃、或いは約80℃〜約250℃、好ましくは約120℃〜約275℃、好ましくは約140℃〜約240℃、より好ましくは約180℃〜約230℃の温度で行い、これらは、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0及びその倍数(例えば、約0.5×、約1×、約2×、約3×、約4×、約5×、約10×)の増分を含むその間の任意の範囲又は温度を含む。適切な温度は、これらに限定されないが、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、約180℃、約190℃、約200℃、約210℃、約220℃、約230℃、約240℃、約250℃、約260℃、約270℃、約275℃を含み、これらは、約0.1、約0.2、約0.25、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0及びその倍数の増分を含むその間の任意の温度を含む。
反応は、トリグリセリド油に有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種が本質的に含まれなくなるまで十分な時間維持する。適切な反応時間は、これらに限定されないが、約30分間以上、好ましくは約1時間以上を含み、これらに限定されないが、例えば約30分間以上、約45分間以上、約50分間以上、約1時間以上、約2時間以上、約3時間以上、約4時間以上、約5時間以上、約6時間以上、約7時間以上を含み、その間の任意の時間を含む。反応時間は、反応混合物中に存在するカルボン酸アニオン及びカチオン対イオンの量と反応温度の両方に依存することになる。一般に、反応時間は、温度範囲の下端の温度を用いる場合長くなり、温度範囲の上端の温度を用いる場合短くなる。同様に、反応流中に存在するカルボン酸アニオン及びカチオン対イオンの量がその範囲の下端である、例えば約350ppm〜約400ppmである場合反応時間は長くなり、約400ppmより多い量が存在する場合それは短くなる。
一実施形態では、本発明の技術は、トリグリセリド油から有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を減少させる又は除去する方法であって、有効量の1種又は複数の塩基を有効量の少なくとも1種の脂肪酸と混合して、トリグリセリド油中から有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を減少させる又はそれから除去するのに十分な有効量のカルボン酸アニオン及び対応するカチオン対イオンを生成するステップと;約80℃〜約275℃、或いは約80℃〜約250℃、好ましくは140℃〜約250℃の温度で、有効量のカルボン酸アニオンをトリグリセリド油と混合するステップとを含む方法を含む。いくつかの実施形態では、次いで反応混合物を、当業界で公知の方法、例えばこれらに限定されないが、フィルタープレス又はバグフィルターでろ過して形成されたハロゲン化物塩種を除去する。ろ過された油は、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種のレベルが低下しているか又はそれを本質的に含まない。
トリグリセリド油の製造及び加工の間、遊離脂肪酸がこれらの油中に見出される。これらは通常、さらなる加工ステップ、例えば物理的若しくは化学的精製又は脱臭の間に除去される。本発明の技術において、トリグリセリド油中に見出される脂肪酸を用いて、添加された1種及び/又は複数の塩基と反応させてカルボン酸アニオン(及びカチオン対イオン)を生成させることができる。トリグリセリド油中に存在する遊離脂肪酸の量によっては、追加の脂肪酸を添加して、トリグリセリド油又はカルボン酸エステル流中に存在する又は推定される有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種と反応させるのに十分な量のカルボン酸アニオン(及びカチオン対イオン)を生成させることができる。
精製油から又はトリグリセリド油を加工した後の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の除去
本発明の技術のいくつかの実施形態では、トリグリセリド油は、すでに加工されている、例えば精製されているか又は精製されていない脂肪酸油である。この方法では、十分な量の1種又は複数の塩基(必要なら、追加量の少なくとも1種の脂肪酸)を添加して、油中の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の量と反応させるのに十分な量のカルボン酸アニオン(及びカチオン対イオン)を生成させる。油中の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の量は、ガスクロマトグラフィー(GC)質量分析法、液体クロマトグラフィー(LC)質量分析法などを含む当業界で公知の任意の手段で計算又は推定することができる。精製油の場合、脂肪酸は精製操作の間に除去されており、したがって脂肪酸も1種又は複数の塩基と一緒に添加される。非精製油の場合、いくらかの遊離脂肪酸を1種又は複数の塩基と反応させるのに利用することができ、油の種類に応じて、1種若しくは複数の塩基と一緒にいくらか余分か又は余分ではない脂肪酸を添加することができる。
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の塩基を脂肪酸(好ましくは、トリグリセリド中の天然の脂肪酸)と反応させて、カルボン酸アニオンを生成させる。次いで、カルボン酸アニオンをトリグリセリド油と反応させて、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を減少させる又は除去する。カルボン酸アニオンを、十分な量の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を減少させる又は除去するのに十分な量で添加して、有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種のレベルが減少している又はそれを本質的に含まないトリグリセリド油を生成する。十分な量のカルボン酸アニオンは、上記したように、少なくとも約350ppm、或いは少なくとも約400ppm以上である。この反応は、上記したように約80℃〜約275℃、或いは約80℃〜約250℃、好ましくは約120℃〜約275℃の温度で実施する。十分な時間は、上記したように、約30分間超、或いは1時間以上、或いは2時間以上である。
カルボン酸アニオンは異なる方法でトリグリセリド油と反応させることができる。例えばカルボン酸アニオンを、トリグリセリド油が形成されている反応器中で生成させるか又はこの反応器に添加することができる(単一ポット法)。或いは、トリグリセリド油を第2反応器又は一連の反応器に添加し、カルボン酸アニオンを第2反応器又は一連の反応器に添加することができる(逐次法)。他の実施形態では、トリグリセリド油流を、カルボン酸アニオン及びカチオン対イオンを含む反応器ベッドにフローオーバーさせることができる。
本発明の技術のカルボン酸アニオン及びそのカチオン対イオンは、以下の構造

(式中、RはC〜C24であり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、又は窒素若しくはリン含有カチオン種である)
の金属カルボキシレートを含む。これらに限定されないが、例えば鉄、銅、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、ナトリウムなどを含む、適切な任意のアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属を使用することができる。いくつかの好ましい実施形態では、食用油で使用できる金属は、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウム、銅、カリウム、ナトリウムなどの体内で生来見出されるものであることが好ましい。金属は、これらに限定されないが、コスト及び最終用途を含むいくつかの要素をもとにして選択することができる。適切な最終用途には、これらに限定されないが、例えば食料品、ペットフード、化粧品、フレーバーキャリア、医薬品などが含まれる。
本発明の技術の油又はカルボン酸エステル流は、当業界で公知の標準的なろ過技術を用いてろ過する。いくつかの実施形態では、油を、これらに限定されないが、例えばバグフィルター、カートリッジフィルター又は加圧板フィルタープレスを含む標準的なろ過装置を用いてろ過する。これらのフィルターの典型的なフィルター細孔サイズは、約0.5ミクロン〜約100ミクロンの範囲の細孔サイズを含む。必要なら、ろ過方法を改善するために珪藻土すなわちキーゼルグール(kieselguhr)などのろ過助剤を使用することができる。
ろ過以外の方法を、油又はカルボン酸エステル流から、得られた金属ハロゲン化物塩又は金属アルコキシド種を除去するのに使用することもできる。使用できるそうした他の方法には、これらに限定されないが、洗浄、遠心分離、脱ろう、抽出、鉱酸を用いた酸性化、沈降及びミセラ精製が含まれる。
カルボン酸エステル流を作製する加工においては、これらに限定されないが、カルボン酸のアルキルエステル、カルボン酸無水物若しくはカルボン酸誘導体、例えばハロゲン化物(ハロゲン化アシル)、カーボネート、他のカルボキシレート種(例えば、混合無水物)又はヘテロ原子誘導体、例えばイミダゾリド、オルトエステル、シリルエステル、ヒドラジン(これらに限定されない)を含む、動物及び植物供給源から誘導された脂肪酸、当業界で公知の任意の原料を含む適切な任意の脂肪酸(カルボン酸)を使用することができる。
本発明の技術において、脂肪酸と反応してカルボン酸アニオンを生成できる適切な任意の塩基を使用することができる。適切な塩基には、これらに限定されないが、例えば炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物、酸化物、アルコキシド、アミン塩基、水素化物、ホスフィンなどが含まれる。いくつかの実施形態では、1種又は複数の塩基を、カルボン酸エステル流又はトリグリセリド油の中の有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の量に対して過剰に添加する。
一実施形態では、本発明の技術は、カルボン酸アニオン及びカチオン対イオンの添加後にトリグリセリド油を脱臭し、上記のように、短鎖及び中位鎖トリグリセリド(例えば、短鎖脂肪酸は2〜5個の炭素を有し、中位鎖トリグリセリドは6〜10個の炭素を有する)から有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種を除去する方法を提供する。脱臭の方法には当業界で公知の標準的な脱臭ステップが含まれ、例えばそうしたステップは、混合物を約2mmHg〜約15mmHの真空下、約180℃〜約200℃の温度で約20〜約30分間加熱し、その混合物に蒸気を通して不純物を除去するステップを含むことができる。脱臭ステップを、短鎖及び中位鎖トリグリセリドから有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の一部を除去するのに用いることができるが、カルボン酸アニオン及びカチオン対イオンの添加なしの脱臭だけでは、トリグリセリド油中に存在するこれらの不純物の量を実質的に低減させるのには不十分である。さらに、C12鎖又はそれ以上のものなどのより高次のトリグリセリドの脱臭は実際には、これらのより高次のトリグリセリド油中での有機ハロ、グリシジル又は他のオキシラン種の形成を引き起こす可能性がある。
本発明の技術は、これらに限定されないが、食用油及び食品グレードの油及びその類似物(モノグリセリド及びジグリセリド)、潤滑油、合成油、特殊ポリマー及びパーソナルケア用途品並びに医薬品を含む当業界で公知の任意のトリグリセリド油から、有機ハロ、グリシジル又はオキシラン種を減少させる又は除去するために用いることができる。
本発明で説明する技術及びその利点は、以下の実施例を参照することによってより良く理解されよう。これらの実施例を、本発明の技術の特定の実施形態を説明するために提供する。これらの特定の実施例を提供することによって本発明の技術の範囲及び趣旨を限定しようとするものではない。当業者は、本発明で説明する技術の全範囲が、本明細書に添付の特許請求の範囲で定義される主題、これらの請求項の任意の変更形態、改変形態又は均等物を包含することを理解されよう。
(例1)
カプリン酸/カプリレート酸からの3−クロロ−1,2−プロパンジオールジエステルの除去
過剰のMCPDをトリグリセリド反応流に添加して、塩基がトリグリセリド油からMCPDを除去できるかどうかを判断した。グリセロール(23.62g、0.256mol)、カプリン酸/カプリル酸脂肪酸(129.1g、0.822mol)、あらかじめ形成された3−クロロ−1,2−プロパンジオール及びC8/C10脂肪酸(3.05g、0.0078mol)のカプリン酸/カプリル酸脂肪酸エステル並びに炭酸カリウム(塩基、2.03g、0.0147mol)を合わせた。反応物を混合し、11.5時間にわたって約210℃に加熱した。約150℃で1時間保持した後、反応溶液を1時間にわたって約210℃に加熱し、次いで約210℃で3時間保持した。溶液を50ミクロンろ紙でろ過した。第2の保持期間の後、有機クロロ種はGCで検出されなかった。
例1は、トリグリセリド油の製造の間に塩基を添加すると、得られるトリグリセリド油からMCPD不純物を効果的に除去できることを例示している。
(例2)
グリセリド反応系における3−クロロ−1,2−プロパンジオールの除去
この例は、トリグリセリド油の製造の間に塩基をトリグリセリド反応流に添加すると、MCPD不純物を除去するのに効果的であることを例示するものである。カプリレート/カプリン酸脂肪酸(52%カプリレート、640.45、4.08mol)、グリセロール、(108.7g、1.18mol)及び炭酸カリウム(塩基)を合わせた。混合物を20分間保持した。ガスの発生が停止した後、活性炭(carbon)(3.54g)と3−クロロ−1,2−プロパンジオール(2.79g、0.0244mol)を反応混合物に添加した。混合物を2時間にわたって約235℃に加熱し、約235℃でさらに4時間保持した。冷却されたら、混合物をろ過し、未反応脂肪酸をメチルエステルに転換させた(メタノール及び硫酸により)。外部研究所、Eurofins Central Analytical Laboratories、Metairie、LAでトリグリセリド油を分析すると、GC質量分析法により、全3−MCPD(遊離及び結合)が全組成物の0.15mg/kg未満であることが判明した。
(例3)
トリグリセリド形成中における3−MCPDの除去
この例は、塩基を、アルキルエステル原料を含む反応流に添加すると、トリグリセリド油の製造の間のMCPD不純物の形成を除去又は防止するのに効果的であることを例示するものである。C8/C10脂肪酸(500g)のメチルエステル及び炭酸カリウム(1.7g)を合わせ、約175℃に加熱した。次いでグリセロール(78.6g)を反応混合物に加え、混合物を約235℃に加熱し、約235℃で3時間保持した。過剰のメチルエステルを真空下で除去し、得られたトリグリセリドを、50ミクロン紙を用いて真空下でろ過した。外部研究所、Eurofins Central Analytical Laboratories、Metairie、LAでGC質量分析を用いて分析すると、全3−MCPD(遊離及び結合)のレベルが約0.15mg/kg未満であることが示された。
(例4)
あらかじめ形成されたトリグリセリドからのグリシジルエステルの除去
この例は、塩基(及び追加の脂肪酸)をトリグリセリド油生成物に添加するとグリシジルエステル不純物を効率的に除去できることを例示するものである。脱臭したカプリレート/カプリン酸トリグリセリド(99.95g)、C8/C10脂肪酸(3.3g)及び炭酸カリウム(0.45g)を合わせ、約200℃に加熱した。約200℃で酪酸グリシジル(1.54g)を添加した。混合物を約200℃で1時間インキュベートし、サンプルをろ過し、グリシジル含量を分析した。ガスクロマトグラフィーでグリシジル種は検出されなかった。
(例5)
反応温度におけるグリセリド反応系中の有機クロロ及びオキシラン種の除去
この例は、塩基を、トリグリセリド反応温度でトリグリセリド反応流に添加すると、トリグリセリド油の製造の間MCPD不純物の形成を除去又は防止するのに効果的であることを例示するものである。C8/C10脂肪酸(647.69g、4.125mol)、炭酸ナトリウム(2.00g、0.0189mol)及び活性炭(3.48g)を合わせ、約210℃に加熱した。グリセロール(108.85g、1.182mol)を4時間にわたって添加した。混合物を約245℃に加熱し、6時間保持した。せっけん濃度は約8,960ppmであった。活性炭をろ過により除去した。外部研究所で分析すると、GC質量分析法で測定して、全3−MCPD(遊離及び結合)は0.15mg/kg未満であることが判明した。
(例6)
反応温度におけるグリセリド反応系中のクロロ及びオキシラン種の除去
この例では、塩基として炭酸カリウムを使用し、せっけん濃度が約1,180ppmであったこと以外は同様の反応物及び同様の反応条件を用いて、例5と同様の実験を行った。外部研究所で分析すると、GC質量分析法で測定して、全3−MCPD(遊離及び結合)が0.15mg/kg未満があることが判明した。
この例は、例5と比較して、より低いせっけん濃度を用いても、MCPD不純物の形成を除去又は防止するのに依然として効果的であることを例示するものである。
(例7)
反応温度におけるグリセリド反応系中のクロロ及びオキシラン種の除去
この例では、せっけん濃度は約660ppmであったこと以外は同様の反応物及び同様の反応条件を用いて例5と同様の実験を行った。外部研究所で分析すると、GC質量分析法で測定して、全3−MCPD(遊離及び結合)は0.23mg/kgであることが判明した。この製造方法からの未処理中位鎖トリグリセリド(MCT)は、GC質量分析法で測定して、概ね0.5ppmより高いMCPDレベルを有する。
この例は、660ppmのせっけん濃度は、MCPDレベルを検出不可能なレベルに低下させるためにこの例で用いた特定の時間及び温度条件下で効果的ではなかったが、同様の未処理トリグリセリドで見られた典型的なレベルと比較してMCPD不純物を約50%減少させるのには効果的であったことを例示するものである。660ppmのせっけん濃度で、反応温度若しくは反応時間又はその両方を増加させると、0.15mg/kg未満の全MCPD濃度となることが予想される。
(例8)
200℃における粗製油流の処理
C8〜C10脂肪酸の未精製トリグリセリド(612.56g)を典型的な製造実験(48,000lb粗生成物)により得た。この物質に炭酸カリウム(0.76g、0.12wt%)を添加した。得られたせっけん濃度は約3,500ppmであった。反応混合物を2時間にわたって約200℃に加熱し、次いで約200℃でさらに2時間保持した。冷却されたら混合物をろ過した。塩基で処理する前後の未精製トリグリセリド中のMCPDレベルを、外部研究所、SGS Gmbh Hamburg、GermanyでGC質量分析法により測定した。処理した後、ろ過された流れ中のMCPDレベルは、0.57mg/kgの出発MCPD濃度と比較して、検出限界以下(<0.10mg/kg)まで減少していた。
(例9)
170℃での粗製油流の処理
C8〜C10脂肪酸の未精製トリグリセリド(604.97g)を典型的な製造実験(48,000lb粗生成物)により得た。この物質に炭酸カリウム(0.85g、0.14wt%)を添加した。得られたせっけん濃度は約3,970ppmであった。反応混合物を2時間にわたって約170℃に加熱し、次いで約170℃でさらに2時間保持した。冷却されたら混合物をろ過した。塩基で処理する前後の未精製トリグリセリド中のMCPDレベルを、外部研究所、SGS Gmbh Hamburg、GermanyでGC質量分析法により測定した。処理した後、ろ過された流れ中のMCPDレベルは、約0.57mg/kgの出発MCPD濃度と比較して、0.33mg/kgまで減少していた。
例8及び9は、有機クロロ及びオキシラン種の除去における、反応時間、反応温度及びせっけん濃度の関係を例示している。例9の反応温度は例8より低く(200℃と比較して170℃)、せっけん濃度は若干高い(3,500ppmと比較して3,970ppm)が、反応時間は同じであった。例8で用いた時間、温度及びせっけん濃度の条件は、MCPD不純物を検出限界以下まで除去するのに十分であったが、例9で用いた条件は、MCPD不純物の一部(約40%の減少)を除去する程度にしか十分でなかった。反応温度と反応時間を例9と同じに保ちながら高いせっけん濃度を用いた場合、例9におけるMCPD濃度は検出限界以下(0.10mg/kg未満)に低下することが予想される。或いは、より高い反応温度若しくはより長い反応時間又はその両方を例9で用いたら、所与のせっけん濃度でより多くのMCPD不純物を除去できたであろう。
関係する当業者が同じことを実施できるように、本発明で説明する技術が、このように完全、明瞭、簡潔及び正確な用語でここに説明されている。上記は本技術の好ましい実施形態を説明するものであり、添付の特許請求の範囲に示される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、そこで改変を加えることができることを理解されよう。
本明細書において、具体的に指示されていない限り、単数の使用は複数を包含する。

Claims (31)

  1. 低減されたレベルの3−クロロ−1,2−プロパンジオール及び/又はグリシジルエステルから選択される副生成物を有するトリグリセリドを調製する方法であって、該方法は、
    有効量のカルボン酸アニオンをトリグリセリドに添加して、80℃〜275℃の温度でトリグリセリド中に存在する副生成物と反応させるステップであって、カルボン酸アニオンが副生成物と、低減されたレベルの副生成物を有するトリグリセリドを生成するのに十分な時間反応するステップ
    を含む上記方法。
  2. トリグリセリド油から3−クロロ−1,2−プロパンジオール及び/又はグリシジルエステルから選択される副生成物を除去する方法であって、該方法は、
    有効量の少なくとも1種の塩基と有効量の少なくとも1種の脂肪酸とを混合して、トリグリセリド油から副生成物を除去するのに十分な、有効量の少なくとも1種のカルボン酸アニオン及び対応するカチオン対イオンを生成するステップと、
    80℃〜275℃の温度で有効量の上記ステップで得られたカルボン酸アニオンとトリグリセリド油とを混合するステップであって、該カルボン酸アニオンが、低減されたレベルの副生成物を有するトリグリセリド油を生成するのに十分な時間副生成物と反応するステップと
    を含む上記方法。
  3. トリグリセリド油の製造中における3−クロロ−1,2−プロパンジオール及び/又はグリシジルエステルから選択される副生成物を除去する方法であって、
    該方法はトリグリセリド油原料を作製するステップと、
    十分な量の少なくとも1種の塩基を添加して、トリグリセリド油原料中の十分な量の脂肪酸と反応させて、前記原料中に存在する副生成物と反応させるのに十分な量でカルボン酸アニオン及びカチオン対イオンを生成させるステップと、
    少なくとも1種の塩基を含む原料を、80℃〜275℃の温度で、低減されたレベルの副生成物を有するトリグリセリド油を生成するのに十分な時間インキュベートするステップと
    を含む、上記方法。
  4. カルボン酸アニオンを前記方法の開始時に添加する、請求項1に記載の方法。
  5. 少なくとも1種の塩基と反応してカルボン酸アニオン及びカチオン対イオンを生成するのに十分な量の少なくとも1種の脂肪酸を添加するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
  6. 精製、脱ガム、脱臭、洗浄、漂白、蒸留又はその組合せの後にカルボン酸アニオンを添加する、請求項1又は3に記載の方法。
  7. トリグリセリド油原料の最初の精製の後に、カルボン酸アニオンを添加する、請求項3に記載の方法。
  8. トリグリセリド油がC〜C24鎖トリグリセリドである、請求項2又は3に記載の方法。
  9. トリグリセリド油がC〜C18鎖トリグリセリドである、請求項8に記載の方法。
  10. トリグリセリド油が食用油である、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 前記食用油中のあらゆる残留副生成物を、トリグリセリド油を脱臭するさらなるステップにより除去する、請求項10に記載の方法。
  12. カルボン酸アニオンのカチオン対イオンが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、窒素若しくはリン含有カチオン種又はその組合せである、請求項3又は4に記載の方法。
  13. カルボン酸アニオン及びカチオン対イオンが式

    (式中、RはC〜C24の炭素であり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、又は窒素若しくはリン含有カチオン種である)
    を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記少なくとも1種の塩基を、トリグリセリド油中の副生成物の量に対して過剰に添加する、請求項2又は3に記載の方法。
  15. 前記塩基を、トリグリセリド油中の副生成物の量の1.1〜10,000倍モル過剰で提供する、請求項14に記載の方法。
  16. 前記塩基を、少なくとも350ppm以上のカルボン酸アニオンを生成するのに十分な量で提供する、請求項14に記載の方法。
  17. 加工されたトリグリセリド油が、0.5ppm未満の副生成物を含む、請求項2から16までのいずれか一項に記載の方法。
  18. トリグリセリド油が、0.15ppm未満の副生成物を含む、請求項17に記載の方法。
  19. 温度範囲が120℃〜250℃である、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
  20. 温度範囲が180℃〜230℃である、請求項19に記載の方法。
  21. カルボン酸アニオンを、トリグリセリド油中の副生成物の量に対して過剰に添加する、請求項1に記載の方法。
  22. カルボン酸アニオンを少なくとも350ppm以上の量で提供する、請求項21に記載の方法。
  23. 加工されたトリグリセリドが0.5ppm未満の副生成物を含む、請求項1に記載の方法。
  24. トリグリセリドが0.15ppm未満の副生成物を含む、請求項23に記載の方法。
  25. 前記反応によって得られた金属ハロゲン化物塩又は金属アルコキシド種を追加の加工ステップにより除去する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記追加の加工ステップが、ろ過、洗浄、遠心分離、脱ろう、抽出、鉱酸を用いた酸性化、沈降及びミセラ精製からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
  27. 十分な時間が30分超である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
  28. 十分な時間が1時間以上である、請求項27に記載の方法。
  29. トリグリセリドが、カルボン酸、カルボン酸のアルキルエステル、カルボン酸無水物、カルボン酸誘導体、ハロゲン化アシル、カーボネート、無水物、ヘテロ原子誘導体又はその組合せを含む、請求項1に記載の方法。
  30. トリグリセリド油原料が、カルボン酸、カルボン酸のアルキルエステル、カルボン酸無水物、カルボン酸誘導体、ハロゲン化アシル、カーボネート、無水物、ヘテロ原子誘導体又はその組合せを含む、請求項3に記載の方法。
  31. トリグリセリド油が、ココナツオイル、コーチン油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ピーナッツ油、大豆油、ひまわり油、トール油、獣脂、レスクレラ油、キリ油、茶油、鯨油、ゴマ油、サフラワー油、菜種油、魚油、アボカド油、からし油、米ぬか油、アーモンド油、くるみ油、その誘導体及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
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