JP6175418B2 - 磁気テープ - Google Patents
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Description
しかるに本発明者らの検討の結果、単にバックコート層に潤滑剤を含有させるのみでは、繰り返し走行後にSNRが低下する場合があること、即ち、走行耐久性が改善されない場合があることが判明した。
非磁性支持体の一方の表面上に、非磁性粉末、潤滑剤および結合剤を含む非磁性層を有し、
非磁性層の表面上に、強磁性粉末、潤滑剤および結合剤を含む磁性層を有し、
非磁性支持体の非磁性層および磁性層を有する面とは反対の表面上に、非磁性粉末、潤滑剤および結合剤を含むバックコート層を有し、
磁性層表面の水に対する接触角は95°〜100°の範囲であり、かつ、
バックコート層表面の水に対する接触角は95°〜100°の範囲である、磁気テープ、
を新たに見出し、本発明を完成させた。
平均粒子サイズφ1の非磁性フィラー1と、
φ1(単位:nm)より小さい平均粒子サイズφ2(単位:nm)と非磁性フィラー1のモース硬度より高いモース硬度とを有する非磁性フィラー2と、
を含み、φ1とφ2とは、下記式1:
20nm<φ1−φ2<50nm …式1
を満たす。
磁気テープの磁性層表面の潤滑剤は、通常、ヘッドとの摺動時にヘッドに付着することにより減少するが、磁性層内部や磁性層の下層に位置する非磁性層から磁性層表面へ潤滑剤が移行することにより減少分が補われることで摩擦係数の上昇を抑制することができる。また、磁気テープはドライブ内で一対のリールの一方から送り出し他方に巻き取ることを繰り返しながら走行し、巻き取られた状態では磁性層表面とバックコート層表面とが接触する。したがって、特許文献1に提案されているようにバックコート層に潤滑剤を含有させれば、この接触時にバックコート層表面から磁性層表面へ潤滑剤を移行させることができると考えられる。
しかるに上述のように、本発明者らによる検討によれば、単にバックコート層に潤滑剤を含有させるのみでは、繰り返し走行後にSNRが低下する現象が見られた。即ち、単にバックコート層に潤滑剤を含有させるのみでは、磁気テープの走行耐久性を高めることは困難であった。
そこで本発明者らは更に検討を重ねた結果、磁性層表面の水接触角、バックコート層表面の水接触角を、ともに95°〜100°の範囲とすることにより、バックコート層に潤滑剤を含み、かつ優れた走行耐久性を示すことができる磁気テープが得られることを新たに見出すに至った。各層の表面で測定される水接触角は、その表面に存在する潤滑剤量の指標と本発明者らは考えている。そして、磁性層表面の水接触角、バックコート層表面の水接触角が、ともに95°〜100°の範囲であることは、磁性層表面の潤滑剤存在量とバックコート層表面の潤滑剤存在量が大きく異ならないことを意味していると、本発明者らは推察している。このことが、バックコート層表面から磁性層表面への潤滑剤の移行を促進し、または移行を妨げることなく、磁性層表面に走行耐久性を確保するに足る量の潤滑剤を存在させることに寄与することが、上記磁気テープが優れた走行耐久性を示すことができる理由ではないかと、本発明者らは考えている。
これに対し、バックコート層表面に存在する潤滑剤が、磁性層表面に存在する潤滑剤に対して過少であると(即ちバックコート層の水接触角が、磁性層の水接触角より小さい値であると)、潤滑剤存在量が過少なバックコート層表面に対して磁性層表面から潤滑剤が供給されてしまうことにより磁性層表面の潤滑剤が不足してしまうか、または磁性層表面に対して相対的に潤滑剤量が少ないバックコート層表面から磁性層表面に潤滑剤が十分に供給されないことが、単にバックコート層に潤滑剤を添加するのみでは、走行耐久性を高めることが困難な理由であると、本発明者らは推察している。
ただし、以上は本発明者らによる推察であって、本発明を何ら限定するものではない。
上記磁気テープにおいて、磁性層表面の水接触角は95°〜100°であり、バックコート層表面の水接触角は95°〜100°である。磁性層表面の水接触角、バックコート層表面の水接触角が、それぞれ上記範囲である磁気テープは、良好な走行耐久性を示すことができる。詳しくは、繰り返し走行後も良好なSNRを得ることができる。これは、繰り返し走行中にバックコート層表面から磁性層表面へ、走行耐久性を確保するに足る量の潤滑剤を移行させることができることによるものであると、本発明者らは考えている。これにより磁性層表面やヘッドが繰り返し走行中に削れてスペーシングロスを引き起こすことを抑制することができると、本発明者らは推察している。また、磁性層表面の水接触角、バックコート層表面の水接触角がともに100°以下であることは、磁性層表面からヘッドに付着した潤滑剤によるスペーシングロスに起因する出力低下を抑制することに寄与する、即ち、過剰量の潤滑剤がヘッド表面に付着することを抑制することに寄与すると、本発明者らは考えている。
磁性層表面やヘッドの削れをより効果的に抑制する観点からは、磁性層表面の水接触角、バックコート層表面の水接触角は、少なくとも一方が96°以上であることが好ましく、少なくとも一方が97°以上であることがより好ましく、両方が96°以上であることが更に好ましく、両方が97°以上であることが一層好ましい。
また、磁性層表面からヘッドに付着する潤滑剤によるスペーシングロスをより低減する観点からは、磁性層表面の水接触角、バックコート層表面の水接触角は、少なくとも一方が99°以下であることが好ましく、少なくとも一方が98°以下であることがより好ましく、両方が99°以下であることが更に好ましく、両方が98°以下であることが一層好ましい。
(2−1.潤滑剤)
磁性層に含まれる潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の磁気テープに通常使用される各種潤滑剤を挙げることができる。
例えば、脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸、エライジン酸等を挙げることができ、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。なお脂肪酸は、金属塩等の塩の形態で磁性層に含まれていてもよい。
脂肪酸エステルとしては、上記各種脂肪酸のエステル、例えば、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ネオペンチルグリコールジオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、オレイン酸オレイル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸イソトリデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸ブトキシエチル等を挙げることができる。
脂肪酸アミドとしては、各種脂肪酸のアミド、例えば、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等を挙げることができる。
磁性層は、少なくとも、磁性層内部から磁性層表面へ移行し易い傾向がある脂肪酸を含有することが好ましく、脂肪酸と一種以上の脂肪酸の誘導体とを含むことがより好ましく、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドからなる群から選択される一種以上と脂肪酸とを含むことが更に好ましく、脂肪酸、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドを含むことが一層好ましい。
脂肪酸と脂肪酸の誘導体(エステル、アミド等)とを併用する場合、脂肪酸誘導体の脂肪酸由来部位は、併用される脂肪酸と同様または類似の構造を有することが好ましい。例えば、一例として、脂肪酸としてステアリン酸を用いる場合には、ステアリン酸エステルやステアリン酸アミドを使用することは好ましい。
また、潤滑剤としては、特開2009−96798号公報段落0111に記載されているものを用いることもできる。
磁性層の潤滑剤含有量は、強磁性粉末100.00質量部あたり、例えば2.00〜20.00質量部であり、好ましくは4.00〜15.00質量部、より好ましくは6.00〜10.00質量部である。なお潤滑剤として二種以上の異なる潤滑剤を使用する場合、含有量とは、それらの合計含有量をいうものとする。この点は、本明細書において、特記しない限り、他の成分の含有量についても同様とする。
本発明の磁気テープは塗布型の磁気テープであり、磁性層、ならびに後述する非磁性層およびバックコート層は結合剤を含む。磁性層に含まれる結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などから単独または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂である。これらの樹脂は、後述する非磁性層、バックコート層においても結合剤として使用することができる。以上の結合剤については、特開2010−24113号公報段落0028〜0031を参照できる。また、結合剤については、特開2014−080563号公報段落0014〜0027および同公報の実施例の記載、特開2013−065381号公報0012〜0016、0040〜0136および同公報実施例の記載も参照できる。結合剤含有量は、強磁性粉末100.0質量部に対して、例えば5.00〜50.00質量部の範囲、好ましくは10.00〜30.00質量部の範囲とすることができる。
また、上記樹脂とともに硬化剤を使用することも可能である。硬化剤としては、ポリイソシアネートが好適である。ポリイソシアネートの詳細については、特開2011−216149号公報段落0124〜0125を参照できる。硬化剤は、磁性層形成用組成物(塗布液)中に、結合剤100.00質量部に対して例えば0.00〜80.00質量部、塗膜強度向上の観点からは好ましくは50.00〜80.00質量部の量で添加し使用することができる。
次に、潤滑剤および結合剤とともに磁性層に含まれる強磁性粉末について説明する。
強磁性粉末を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして強磁性粉末を構成する粒子の写真を得る。得られた粒子の写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースし粒子(一次粒子)のサイズを測定する。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
以上の測定を、無作為に抽出した500個の粒子について行う。こうして得られた500個の粒子の粒子サイズの算術平均を、強磁性粉末の平均粒子サイズとする。上記透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いることができる。また、粒子サイズの測定は、公知の画像解析ソフト、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS−400を用いて行うことができる。
本発明において粉末についての平均粒子サイズとは、上記方法により求められる平均粒子サイズをいうものとする。後述の実施例に示す平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H−9000型、画像解析ソフトとしてカールツァイス製画像解析ソフトKS−400を用いて行った。
(1)針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粒子を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、
(2)板状または柱状(ただし、厚さまたは高さが板面または底面の最大長径より小さい)場合は、その板面または底面の最大長径で表され、
(3)球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粒子を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
そして、粒子の形状が特定の場合、例えば、上記粒子サイズの定義(1)の場合、平均粒子サイズは平均長軸長であり、同定義(2)の場合、平均粒子サイズは平均板径であり、平均板状比とは、(最大長径/厚さまたは高さ)の算術平均である。同定義(3)の場合、平均粒子サイズは、平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)である。
磁性層には、強磁性粉末、潤滑剤および結合剤が含まれ、必要に応じて一種以上の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、研磨剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して使用することができる。
以下、添加剤の一態様を説明するが、本発明は下記態様に限定されるものではない。
磁性層には、一種または二種以上の非磁性フィラーが含まれることが好ましい。非磁性フィラーとしては、研磨剤として機能することができる非磁性フィラー、磁性層表面に適度に突出する突起を形成する突起形成剤として機能する非磁性フィラーが挙げられる。突起形成剤は、磁性層表面の摩擦特性制御に寄与し得る成分である。上記磁気テープの磁性層には、これらの少なくとも一方が含まれることが好ましく、両方が含まれることが好ましい。
20nm<φ1−φ2<50nm …式1
なお、研磨剤を含む磁性層に使用され得る添加剤の一例としては、特開2013−131285号公報段落0012〜0022に記載の分散剤を、研磨剤の分散性を向上するための分散剤として挙げることができる。
また、突起形成剤、研磨剤が、各機能をより良好に発揮することができるという観点から、磁性層における非磁性フィラー1(突起形成剤)の含有量は、好ましくは強磁性粉末100.00質量部に対して、1.00〜4.00質量部であり、より好ましくは1.50〜3.50質量部である。一方、非磁性フィラー2(研磨剤)については、磁性層における含有量は、好ましくは強磁性粉末100.00質量部に対して1.00〜20.00質量部であり、より好ましくは3.00〜15.00質量部であり、更に好ましくは4.00〜10.00質量部である。
一般に、磁性層の表面平滑性が高まるほど、高密度記録化には有利である。磁性層の表面平滑性を高めるための手段の1つとしては、強磁性粉末の分散性の向上に寄与する成分(分散剤)の使用が挙げられる。上記磁気テープも、一種または二種以上の分散剤を磁性層に含んでもよく、含むことが好ましい。分散剤としては、公知の分散剤を何ら制限なく用いることができる。
(2−4−3−a.ポリアルキレンイミン鎖)
ポリアルキレンイミン系ポリマーとは、ポリアルキレンイミン鎖を1つ以上含むポリマーである。なお本発明において、ポリマーとは、同一または異なる複数の繰り返し単位により構成される多量体であって、ホモポリマーとコポリマーとを包含する意味で用いるものとする。また、ポリアルキレンイミン鎖とは、同一または異なるアルキレンイミン鎖の2つ以上を含む重合構造である。含まれるアルキレンイミン鎖としては、下記の式Aで表されるアルキレンイミン鎖、および式Bで表されるアルキレンイミン鎖を挙げることができる。下記式で表されるアルキレンイミン鎖の中で、式Aで表されるアルキレンイミン鎖は、他のポリマー鎖との結合位置を含み得るものである。また、式Bで表されるアルキレンイミン鎖は、他のポリマー鎖と塩架橋基(詳細は後述する。)により結合することができる。また、ポリアルキレンイミン鎖は、直鎖構造のみからなるものであっても、分岐した三級アミン構造を有するものであってもよい。分岐構造を含むものとしては、下記式A中の*1において隣接するアルキレンイミン鎖と結合するもの、下記式B中の*2において隣接するアルキレンイミン鎖と結合するものを挙げることができる。
本発明において、ポリアルキレンイミン系ポリマーに含まれるポリアルキレンイミン鎖の数平均分子量とは、ポリアルキレンイミン系ポリマーを加水分解して得られたポリアルキレンイミンについて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算で求められる値をいう。こうして求められる値は、ポリアルキレンイミン系ポリマーを合成するために用いたポリアルキレンイミンについて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算で求められる値と同様である。したがって、ポリアルキレンイミン系ポリマーを合成するために用いたポリアルキレンイミンについて求めた数平均分子量を、ポリアルキレンイミン系ポリマーに含まれるポリアルキレンイミン鎖の数平均分子量として採用することができる。ポリアルキレンイミン鎖の数平均分子量の測定条件については、後述の実施例を参照できる。なおポリアルキレンイミンとは、アルキレンイミンの開環重合により得ることができるポリマーである。
また、ポリアルキレンイミン系ポリマーの加水分解は、エステルの加水分解法として通常用いられている各種方法により行うことができる。そのような方法の詳細については、例えば、「実験化学講座14 有機化合物の合成II−アルコール・アミン(第5版)」(日本化学会編、丸善出版、2005年8月発行)95〜98頁に記載の加水分解法に関する記載、「実験化学講座16 有機化合物の合成IV−カルボン酸・アミノ酸・ペプチド(第5版)」(日本化学会編、丸善出版、2005年3月発行)10〜15頁に記載の加水分解法に関する記載等を参照できる。
得られた加水分解物から、液体クロマトグラフィー等の公知の分離手段によりポリアルキレンイミンを分離し、数平均分子量を求めることができる。
以上記載したポリアルキレンイミン鎖の占める割合は、例えば、合成時に用いるポリアルキレンイミンとポリエステルとの混合比によって制御することができる。
ポリアルキレンイミン系ポリマーは、以上説明したポリアルキレンイミン鎖とともに、他のポリマー鎖を含むことが好ましい。他のポリマー鎖が磁性層を形成するための組成物中で立体反発鎖として強磁性粉末の粒子同士の凝集を抑える作用を果たすことができると考えられる。この点から、好ましいポリマー鎖は、ポリエステル鎖である。ポリエステル鎖は、一態様では、式Aで表されるアルキレンイミン鎖と、式A中の*1において、式Aに含まれる窒素原子Nとカルボニル結合−(C=O)−により結合し、−N−(C=O)−を形成することができる。また、他の一態様では、式Bで表されるアルキレンイミン鎖とポリエステル鎖とが、式B中の窒素カチオンN+とポリエステル鎖が有するアニオン性基により塩架橋基を形成することができる。塩架橋基としては、ポリエステル鎖に含まれる酸素アニオンO−と式B中のN+とにより形成されるものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
R10で表されるアルキル基については、X1、X2で表されるアルキル基について記載した通りである。R11で表されるアルキレン基の詳細については、X1、X2で表されるアルキル基に関する上記の記載を、これらアルキレン基から水素原子を1つ取り去ったアルキレン基に読み替えて(例えば、メチル基はメチレン基に読み替えて)適用することができる。nは2以上の整数であり、例えば10以下、好ましくは5以下の整数である。
カルボン酸は、R12(C=O)OHで表すことができ、R12(C=O)−部が、式1で表されるポリエステル鎖において、X1−(C=O)−部として存在し得る。式2で表されるポリエステル鎖におけるX2−(C=O)−部についても同様である。
R12は、非環状構造(直鎖構造または分岐構造)であってもよく、環状構造であってもよい。R12の詳細は、先に式1中のX1、式2中のX2について記載した通りである。
カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、n−ヘキサン酸、n−オクタン酸、n−デカン酸、n−ドデカン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ステアリン酸、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、シクロヘキシル酢酸、アダマンタンカルボン酸、アダマンタン酢酸、リシノール酸、12−ヒドロキシドデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、2,2−ビス(ヒロドキシメチル)酪酸、[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)]酢酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ブロモ酢酸、ノナフルオロ吉草酸、ヘプタデカフルオロノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、アセチル酢酸、4−オキソバレリン酸、安息香酸、4−フェニル安息香酸、2−ナフトエ酸等が挙げられる。中でも、1分子中の総炭素数(置換基を有するものは置換基の炭素数も含む)が、1〜20のカルボン酸が好ましい。より好ましくは、R12がポリアルキレンオキシアルキル基であるカルボン酸(ポリアルキレンオキシアルキルカルボン酸)、R12がハロアルキル基であるカルボン酸(ハロアルキルカルボン酸)、炭素数6〜20の直鎖脂肪族カルボン酸、炭素数1〜20のヒドロキシル基含有カルボン酸である。
ポリアルキレンイミン系ポリマーの分子量は、重量平均分子量として、例えば1,000以上であり、また例えば80,000以下である。また、ポリアルキレンイミン系ポリマーの重量平均分子量は、1,500以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、3,000以上であることが更に好ましい。また、一態様では、ポリアルキレンイミン系ポリマーの重量平均分子量は、60,000以下であることが好ましく、40,000以下であることがより好ましく、35,000以下であることが更に好ましく、34,000以下であることが一層好ましい。
本発明において、ポリアルキレンイミン系ポリマーの重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で求められる値をいう。測定条件については、後述の実施例を参照できる。
ポリアルキレンイミン系ポリマーの合成方法は、特に限定されるものではない。合成方法の好ましい一態様としては、ポリアルキレンイミン(以下、「成分A−1」と記載する。)とポリエステル(以下、「成分A−2」と記載する。)とを反応させる方法を挙げることができる。
なお上記では酸性基を水中または水性溶媒に関して規定したが、ポリアルキレンイミン系ポリマーは、水系(ここで「系」とは、「含む」の意味で用いる。)溶媒中で用いられるものに限定されるものではなく、非水系溶媒中で好ましく使用され得る。また、後述する磁性層、非磁性層およびバックコート層の各層形成用組成物に含まれる溶媒も、水系溶媒に限定されるものではなく、非水系溶媒でもよく、好ましくは非水系溶媒である。
ポリアルキレンイミン系ポリマーは、ポリマー鎖として、ポリエステル鎖以外のポリマー鎖を有するものであってもよく、ポリエステル鎖とともにポリエステル鎖以外のポリマー鎖を有するものであってもよい。そのようなポリマー鎖も、ポリエステル鎖の導入について上記した方法と同様の方法によって、ポリアルキレンイミン系ポリマーに導入することができる。
磁性層が、以上説明したポリアルキレンイミン系ポリマーを含む場合、強磁性粉末の分散性を高める観点から、磁性層におけるポリアルキレンイミン系ポリマーの含有量は、強磁性粉末100.00質量部に対して0.50質量部以上とすることが好ましく、1.00質量部以上とすることがより好ましい。他方、高密度記録の観点からは、強磁性粉末の充填率を高くするために他の成分の含有量は相対的に低くすることが好ましい。この点からは、磁性層におけるポリアルキレンイミン系ポリマーの含有量は、強磁性粉末100.00質量部に対して50.00質量部以下とすることが好ましく、40.00質量部以下とすることがより好ましい。なお上記ポリアルキレンイミン系ポリマーによれば、例えば平均粒子サイズが50nm以下の高密度記録に好適な粒子サイズの小さな強磁性粉末の分散性を高めることができる。
次に非磁性層について説明する。本発明の磁気テープは、非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有する。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011−216149号公報段落0146〜0150、特開2013−049832号公報段落001〜0020を参照できる。
非磁性層における非磁性粉末の含有量は、好ましくは50〜90質量%の範囲であり、より好ましくは60〜90質量%の範囲である。
本発明の磁気テープは、非磁性支持体の非磁性層および磁性層を有する表面とは反対の表面上にバックコート層を有する。バックコート層は、非磁性粉末、潤滑剤、結合剤を少なくとも含み、公知の添加剤を任意に含むことができる。バックコート層の非磁性粉末については、非磁性層の非磁性粉末に関する上記記載を参照できる。バックコート層の非磁性粉末としては、カーボンブラックとカーボンブラック以外の非磁性粉末を併用するか、またはカーボンブラックを用いることが好ましい。バックコート層形成のための結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方を適用することができる。
次に、非磁性支持体について説明する。非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。
非磁性支持体の厚みは、好ましくは3.00〜80.00μm、より好ましくは3.00〜50.00μm、特に好ましくは3.00〜10.00μmである。
なお、本発明における磁気テープの非磁性層には、非磁性粉末とともに、例えば不純物として、または意図的に、少量の強磁性粉末を含む実質的に非磁性な層も包含されるものとする。ここで実質的に非磁性な層とは、この層の残留磁束密度が10mT以下であるか、保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下であるか、または、残留磁束密度が10mT以下であり、かつ保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下である層をいうものとする。非磁性層は、残留磁束密度および抗磁力を持たないことが好ましい。
高密度記録化の観点から、本発明の磁気テープは、一態様では、磁性層表面において原子間力顕微鏡により測定される中心線平均表面粗さRaが、3.0nm以下であることが好ましい。より好ましくは2.7nm以下、更に好ましくは2.5nm以下である。また、例えば、磁性層表面において原子間力顕微鏡により測定される中心線平均表面粗さRaは、1.0nm以上であることが好ましい。ただし、磁性層表面粗さが低くなり磁性層表面が平滑になるほど、磁性層表面とヘッドとの摺動時の摩擦が増大し走行耐久性が低下する傾向がある。そのような場合にも、磁性層表面の水接触角、バックコート層表面の水接触角を、それぞれ上記範囲とすることにより、優れた走行耐久性を実現することができる。
原子間力顕微鏡により測定される中心線平均表面粗さRaは、磁性層表面の面積40μm×40μmの領域において測定される中心線平均表面粗さRaをいうものとする。原子間力顕微鏡としては、例えば一例として、DIGITALINSTRUMENT社製のNANO SCOPE(登録商標)IIIをコンタクトモードで用いることができる。
また、磁性層表面の表面処理としては、特開平5−62174号公報に記載の研磨手段を用いる研磨処理を挙げることもできる。上記表面処理については、同公報段落0005〜0032および全図面を参照できる。一例としては、特開平5−62174公報に記載のダイヤモンドホイールによる表面処理(同公報の図1〜図3に示されている態様)によって、磁性層の表面処理を行うことができる。
本発明の磁気テープは、塗布型磁気テープであり、磁性層、非磁性層およびバックコート層の各層を形成するための組成物(塗布液)を用いて製造することができる。以下に、磁気テープの製造工程の具体的態様を説明する。ただし本発明の磁気テープは、前述の範囲の磁性層表面の水接触角およびバックコート層表面の水接触角を有するものであればよく、下記態様の製造工程により製造されるものに限定されるものではない。
磁性層形成用組成物(塗布液)は、先に説明した各種成分とともに、通常、溶媒を含む。溶媒としては、一般に塗布型磁気テープ製造のために使用される有機溶媒を挙げることができる。磁性層形成用組成物における溶媒含有量は、強磁性粉末100.0質量部に対して、例えば100.0〜800.0質量部に範囲であり、好ましくは200.0〜600.0質量部の範囲である。
バックコート層形成用組成物(塗布液)の調製の詳細についても、磁性層形成用組成物に関する上述の記載を参照できる。
磁性層は、磁性層形成用組成物を、非磁性層形成用組成物と逐次または同時に重層塗布することにより形成することができる。また、バックコート層は、非磁性支持体の磁性層、非磁性層を形成する表面とは反対の表面にバックコート層形成用組成物を塗布することにより形成することができる。
各層形成のための塗布の詳細については、特開2010−231843号公報段落0066を参照できる。
磁気テープ製造のためのその他の各種工程については、特開2010−231843号公報段落0067〜0070を参照できる。また、磁性層表面の表面処理については、先に記載した通り、特開平5−62174号公報も参照できる。
下記の酸価およびアミン価は、電位差法(溶媒:テトラヒドロフラン/水=100/10(体積比)、滴定液:0.01N(0.01mol/l)水酸化ナトリウム水溶液(酸価)、0.01N (0.01mol/l)塩酸(アミン価))により決定した。
ポリエステル、ポリアルキレンイミン、およびポリアルキレンイミン系ポリマーの平均分子量の測定条件は、それぞれ以下の通りとした。
測定器:HLC−8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel Super HZ 2000/TSKgel Super HZ 4000/TSKgel Super HZ−H(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:0.35mL/min、
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折(RI)検出器
測定器:HLC−8320GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel Super AWM−H(東ソー社製)3本
溶離液:N−メチル−2−ピロリドン(添加剤として10mM臭化リチウム添加)
流速:0.35mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
合成したポリアルキレンイミン系ポリマーを、エステル加水分解法により、例えば、実験化学講座16 有機化合物の合成IV−カルボン酸・アミノ酸・ペプチド(第5版)」(日本化学会編、丸善出版、2005年3月発行)11頁に記載の酸加水分解法により加水分解する。得られた加水分解物から、液体クロマトグラフィーによりポリアルキレンイミンを分離し上記測定条件により測定される数平均分子量を、ポリアルキレンイミン系ポリマーに含まれるポリアルキレンイミン鎖の数平均分子量とすることもできる。
500mL3口フラスコに、カルボン酸としてn−オクタン酸(和光純薬社製)16.8g、ラクトンとしてε−カプロラクトン(ダイセル工業化学社製プラクセルM)100g、触媒としてモノブチルすずオキシド(和光純薬社製)(C4H9Sn(O)OH)2.2gを混合し、160℃で1時間加熱した。ε−カプロラクトン100gを5時間かけて滴下し更に2時間攪拌した。その後、室温まで冷却しポリエステル(i-1)を得た。
合成スキームを以下に示す。
ポリエチレンイミン(日本触媒製SP-006、数平均分子量数平均分子量600)2,4gおよびポリエステル(i−1)100gを混合し、110℃で3時間加熱して、ポリエチレンイミン系ポリマーを得た。
得られたポリアルキレンイミン系ポリマーについて、1H−NMR、13C−NMRの両NMR分析結果および燃焼法による元素分析の分析結果から、ポリアルキレンイミン系ポリマーに占めるポリアルキレンイミン鎖の割合(ポリアルキレンイミン鎖比率)を算出した。結果を表1に示す。算出されたポリアルキレンイミン鎖比率は、ポリアルキレンイミンおよびポリエステルの仕込み量から算出された値と同様の値であった。
(磁性層形成用組成物)
(磁性液)
強磁性バリウムフェライト粉末:100.00部
(Hc:175kA/m(2200Oe)、平均粒子サイズ:27nm)
オレイン酸:1.50部
ポリアルキレンイミン系ポリマーA:10.00部
塩化ビニル共重合体(日本ゼオン製MR−104):10.00部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:4.00部
メチルエチルケトン:150.00部
シクロヘキサノン:150.00部
(研磨剤液)
非磁性フィラー2(α−アルミナ(角形)、平均粒子サイズ100nm、BET法による比表面積19m2/g):6.00部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:0.60部
2,3−ジヒドロキシナフタレン:0.20部
シクロヘキサノン:23.00部
(突起形成剤液)
非磁性フィラー1(コロイダルシリカ、平均粒子サイズ130nm):2.00部
メチルエチルケトン:8.00部
(潤滑剤・硬化剤液)
ステアリン酸:2.50部
ステアリン酸アミド:0.30部
ステアリン酸ブチル:6.00部
メチルエチルケトン:110.00部
シクロヘキサノン:110.00部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製コロネート(登録商標)L):2.50部
カーボンブラック(平均一次粒子サイズ16nm、DBP(Dibutyl phthalate)吸油量74cm3/100g):100.00部
トリオクチルアミン:3.00部
塩化ビニル共重合体(日本ゼオン製MR−104):19.00部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:12.00部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製コロネートL):5.00部
メチルエチルケトン:370.00部
シクロヘキサノン:370.00部
ステアリン酸:1.50部
ステアリン酸アミド:0.30部
ステアリン酸ブチル:1.50部
α−酸化鉄:80.00部
カーボンブラック(平均一次粒子サイズ16nm、DBP吸油量74cm3/100g):20.00部
フェニルホスホン酸:3.00部
塩化ビニル共重合体(日本ゼオン製MR−104):12.00部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:8.00部
アルミナ粉末(比表面積17m2/gのα−アルミナ):5.00部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製コロネートL):5.00部
メチルエチルケトン:600.00部
トルエン:600.00部
ステアリン酸:1.00部
ステアリン酸アミド:0.30部
ステアリン酸ブチル:1.50部
磁性層形成用組成物は以下の方法によって作製した。
上記磁性液をオープン型ニーダーにより混練・希釈処理後、横型ビーズミル分散機により、粒径0.1mmのジルコニア(ZrO2)ビーズ(以下、「Zrビーズ」と記載する)を用い、ビーズ充填率80%、ローター先端周速10m/秒で、1パス滞留時間を2分とし、30パスの分散処理を行った。
研磨剤液は、上記成分を混合して粒径0.3mmのZrビーズとともに横型ビーズミル分散機に入れ、ビーズ体積/(研磨剤液体積+ビーズ体積)が80%になるように調整し、120分間ビーズミル分散処理を行い、処理後の液を取り出し、フロー式の超音波分散濾過装置を用いて、超音波分散濾過処理を施した。
磁性液、突起形成剤液および研磨剤液と、その他の成分としての潤滑剤・硬化剤液をディゾルバー攪拌機に導入し、周速10m/秒で30分間攪拌した後、フロー式超音波分散機により流量7.5kg/分で3パス処理した後に、1μmのフィルタで濾過して磁性層形成用組成物を作製した。
非磁性層形成用組成物は以下の方法によって作製した。
潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸ブチル)およびポリイソシアネートを除く、上記成分をオープン型ニーダーにより混練・希釈処理して、その後、横型ビーズミル分散機により分散処理を実施した。その後、潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸ブチル)およびポリイソシアネートを添加して、ディゾルバー攪拌機にて攪拌・混合処理を施して非磁性層形成用組成物を作製した。
バックコート層形成用組成物は以下の方法によって作製した。
潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸ブチル)およびポリイソシアネートを除く、上記成分をディゾルバー攪拌機に導入し、周速10m/秒で30分間攪拌した後、横型ビーズミル分散機により分散処理を実施した。その後、潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸ブチル)およびポリイソシアネートを添加して、ディゾルバー攪拌機にて攪拌・混合処理を施し、バックコート層形成用組成物を作製した。
厚さ6.00μmの非磁性支持体(ポリエチレンナフタレート支持体)の一方の表面上に、乾燥後の厚さが0.10μmになるように非磁性層形成用組成物を塗布し乾燥させた後、他方の表面上に、バックコート層形成用組成物を乾燥後の厚さが0.50μmになるように塗布し乾燥させた。一度巻き取りロールに巻き取った支持体を70℃の環境下で36時間熱処理を行った。
熱処理後の非磁性層表面上に、乾燥後の厚さが0.07μmになるように磁性層形成用組成物を塗布し乾燥させた。
その後、金属ロールのみから構成されるカレンダで速度40m/min、線圧300kg/cm(294kN/m)、温度100℃で表面平滑化処理(カレンダ処理)を行った。その後、70℃の環境下で36時間熱処理を行った。熱処理後、1/2インチ幅にスリットを行った。スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性層表面に押し当たるように取り付けたテープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行った。その後、得られた磁気テープは、ロール状にリールに巻き取った後、下記の評価方法によりその特性を評価した。
なお本実施例および後述の実施例、比較例について、各層の厚さは、製造条件から算出される設計厚みである。
(磁性層表面、バックコート層表面の水接触角の測定)
接触角測定機(協和界面科学(株)製 接触角測定装置 DropMaster700)により、以下の方法により接触角測定を行った。
ロール状に巻き取った磁気テープをロールの端部から一定長さ切り取り得られたテープサンプルを、バックコート層表面がスライドガラス表面と接触するようにスライドガラス上に設置した。テープサンプル表面(磁性層表面)に測定用液体(水)2.0μlを滴下し、液滴安定時間として1秒間放置後に、上記接触角測定機に付随の接触角解析ソフトウェアFAMASにより液滴像を解析し、テープサンプルと液滴の接触角を測定した。接触角の算出はθ/2法によって行い、1サンプルにつき6回測定した平均値(算術平均)を接触角とした。測定は温度20℃相対湿度25%RHの環境で行い、以下の解析条件で磁性層表面の水接触角を求めた。
同じ磁気テープロールから新たにテープサンプルを切り出し、磁性層表面がスライドガラス表面と接触するようにスライドガラス上に設置し、上記と同様の方法でバックコート層表面の水接触角を求めた。
・手法:液滴法(θ/2法)
・着滴認識:自動
・着滴認識ライン(針先からの距離):50dot
・アルゴリズム:自動
・イメージモード:フレーム
・スレッシホールドレベル:自動
以下の方法により繰り返し走行後のSNR変化量を測定した。測定は、ヘッドを固定した1/2インチ リニアシステムを用いて行った。ヘッド/テープの相対速度は5m/secとした。記録は飽和磁化1.6Tのリングヘッド(トラック幅18μm)を使い、記録電流は各テープの最適電流に設定した。再生ヘッドには素子厚み25nm、シールド間隔0.2μmの異方性型MRヘッド(A−MR)を用いた。
記録波長0.2μmの信号を記録し、再生信号をアドバンテスト製スペクトラムアナライザーで周波数分析し、キャリア信号(波長0.2μm)の出力とスペクトル全域の積分ノイズとの比をS/N比とした。
キャリア信号(波長0.2μm)の出力をモニターしながら、実施例、比較例の磁気記録テープを1パス800mとして繰返し10000パス走行させ、最初のパスのSNR(初期SNR)を0dBとして、10000パス走行後のSNR変化量(初期SNR−10000パス走行後のSNR)を求め、以下の評価基準により走行耐久性を評価した。
評価基準
A:10000パス走行後のSNR変化量が1dB
B:10000パス走行後のSNR変化量が2dB
C:10000パス走行後のSNR変化量が2dBより大きい
磁性層形成用組成物中の非磁性フィラー1、2の種類および平均粒子サイズ、磁性層形成用組成物の磁性液中の塩化ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、ステアリン酸の処方量、バックコート層形成用組成物中のα−酸化鉄、カーボンブラック、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合体、ニトロセルロース、ステアリン酸の処方量、ならびに非磁性層の厚みを表2に示すようにした点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製および評価を行った。
磁性層形成用組成物の突起形成剤液を、以下のものに変更し、下記方法で調製した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製および評価を行った。
(突起形成剤(カーボンブラック)液)
非磁性フィラー1(カーボンブラック、平均一次粒子サイズ130nm):0.50部
トリオクチルアミン:0.05部
シクロヘキサノン:4.50部
(カーボンブラック液の調製)
カーボンブラック液は、以下の処理方法により調製した。攪拌機付きバッチ型超音波分散装置にて、攪拌回転数1500rpmで、6時間超音波処理して液化処理した。液化したカーボンブラック液を横型ビーズミル分散機により、粒径0.5mmのZrビーズを用い、ビーズ充填率80%、ローター先端周速10m/秒で、1パス滞留時間を2分とし、6パスの分散処理を行った。その液をディゾルバー攪拌機で周速10m/秒で30分攪拌後、フロー式超音波分散機にて流量3kg/分で、3パス処理した。
磁性層形成用組成物中の非磁性フィラー1、2の種類および平均粒子サイズ、磁性層形成用組成物の磁性液中の塩化ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、ステアリン酸の処方量、バックコート層形成用組成物中のα−酸化鉄、カーボンブラック、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合体、ニトロセルロース、ステアリン酸の処方量、ならびに非磁性層の厚みを表2に示すようにした点、磁性層形成用組成物にポリアルキレンイミン系ポリマーAを添加しなかった点以外、実施例11と同様に磁気テープの作製および評価を行った。
Claims (13)
- 非磁性支持体の一方の表面上に、非磁性粉末、潤滑剤および結合剤を含む非磁性層を有し、
前記非磁性層の表面上に、強磁性粉末、潤滑剤および結合剤を含む磁性層を有し、
前記非磁性支持体の前記非磁性層および磁性層を有する面とは反対の表面上に、非磁性粉末、潤滑剤および結合剤を含むバックコート層を有し、
前記磁性層表面の水に対する接触角は95°〜100°の範囲であり、かつ、
前記バックコート層表面の水に対する接触角は95°〜100°の範囲であり、
前記磁性層は、
平均粒子サイズφ1の非磁性フィラー1と、
φ1より小さい平均粒子サイズφ2と非磁性フィラー1のモース硬度より高いモース硬度とを有する非磁性フィラー2と、
を含み、φ1およびφ2の単位はnmであり、
φ1とφ2との差分、φ1−φ2、が20nm以上50nm以下である磁気テープ。 - φ1とφ2とが、下記式1: 20nm<φ1−φ2<50nm …式1
を満たす請求項1に記載の磁気テープ。 - 前記非磁性層の厚さは、0.05〜0.50μmの範囲である請求項1または2に記載の磁気テープ。
- 非磁性フィラー1は、無機酸化物粒子およびカーボンブラックからなる群から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気テープ。
- 非磁性フィラー1は、コロイド粒子である請求項4に記載の磁気テープ。
- 非磁性フィラー1は、コロイダルシリカである請求項5に記載の磁気テープ。
- 非磁性フィラー2は、アルミナ粉末および炭化ケイ素粉末からなる群から選択される請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気テープ。
- 前記バックコート層におけるニトロセルロース含有量は、非磁性粉末全量100.00質量部に対して0.00〜1.00質量部の範囲である請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気テープ。
- 前記バックコート層に含まれる非磁性粉末は、無機酸化物粉末およびカーボンブラックを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気テープ。
- 前記バックコート層に含まれる非磁性粉末は、非磁性粉末全量100.00質量部に対して1.00〜30.00質量部の範囲のカーボンブラックを含む請求項9に記載の磁気テープ。
- 前記非磁性層に含まれる非磁性粉末は、カーボンブラックを含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の磁気テープ。
- 前記磁性層に含まれる潤滑剤、非磁性層に含まれる潤滑剤およびバックコート層に含まれる潤滑剤は、それぞれ、脂肪酸、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドからなる群から選択される一種以上の潤滑剤を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁気テープ。
- 前記磁性層に含まれる潤滑剤およびバックコート層に含まれる潤滑剤は、それぞれ、脂肪酸を少なくとも含む請求項12に記載の磁気テープ。
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