JP6174301B2 - 銀粉および導電性ペースト - Google Patents
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電子部品の小型化、導体パターンの高密度化、ファインライン化などに対応するため、焼成型導電性ペーストによる硬化膜には、焼成前から焼成後において膨れを生じないことが求められる。さらに、当該焼成型導電性ペースト用の銀粉には、粒径が1μmまたは、それ以上で、粒度が揃い、高い分散性を有すること、等が要求される。
前記表面処理剤は、ジクロロメタンからなる有機溶媒に溶解し、前記表面処理剤が存在する銀粉を溶解した水溶液と有機溶媒との混合物を水相と有機相とに分液した場合には、有機相へ移行する表面処理剤であって、
前記有機相中の有機溶媒を蒸発乾燥した後に、炭素分析により求められる炭素量から表面処理剤量を定量した場合に、強熱減量差(質量%)=[強熱減量値(質量%)−表面処理剤量(質量%)]として定義される強熱減量差の値が0.1質量%以下であることを特徴とする銀粉である。
但し、前記強熱減量値とは、前記表面処理剤が存在する銀粉の秤量値をw1、当該秤量された銀粉を800℃、30分間加熱した後、室温まで冷却した後の再度の秤量値をw2としたとき、強熱減量値(質量%)=(w1−w2)/w1×100で定義される値であり、
前記表面処理剤量とは、前記表面処理剤が存在する銀粉を酸溶解した銀溶液へ、有機溶媒としてジクロロメタンを添加して前記表面処理剤を有機相へと移行させた後、水相と有機相とに分液後の前記有機相中の前記表面処理剤を多孔質ボードに吸着させ、前記有機溶媒を蒸発乾燥させた後の、前記多孔質ボードから炭素量を測定することで求めた表面処理剤量(質量%)の値である。
累積粒度分布D50が、1μm以上8μm以下であることを特徴とする第1の発明に記載の銀粉である。
第1または第2の発明に記載の銀粉を含むことを特徴とする導電性ペーストである。
本発明に係る銀粉は、50〜900℃の範囲における熱膨張率測定において、50℃における値を基準とした熱膨張率の最大値が0.3%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。この結果、本発明に係る銀粉を用いた焼成型導電性ペーストから生成した硬化膜は、焼成時において膨れを生じることがない。この結果、本発明に係る銀粉を用いた焼成型導電性ペーストを用いた場合、生成した硬化膜において回路ショートが発生せず、且つ、電気抵抗値が低く保たれる。
具体的には、熱膨張率測定装置(マックサイエンス/ブルカーエイエックス社製のDILATO METAER 5000型)を使用した。そして、金型に入れた銀粉に圧力250kg/cm2を加えて一軸成形した直径5mmのペレット状の銀粉試料を、50℃から900℃まで昇温速度10℃/分で加熱した場合の試料の長さを測定し、(式3)により熱膨張率を求めた。
50℃からT℃まで昇温した際における熱膨張率(%)=(LT−L50)/L50×100・・・(式3)
ここで、L50は、試料温度50℃におけるペレット状の銀粉試料の長さ(mm)であり、
LTは、試料温度T℃におけるペレット状の銀粉試料の長さ(mm)である。
後述する銀粉の製造方法により製造した、本発明に係る銀粉のBET値(比表面積)は、0.1m2/g以上、0.9m2/g以下である。
当該BET値を有する銀粉は、焼成型導電性ペースト用銀粉に適しており好ましい。
具体的には、BET値が0.1m2/g以上であると、銀粉と樹脂溶剤とが分離し難くなり、良好な導電性ペーストを得ることができる為である。一方、BET値(比表面積)が0.9m2/g以下であれば、ペースト作製時に高粘度とならず、必要な樹脂量が多くならずに、銀含有量を増量出来、良好な導電性ペーストを得ることが出来るからである。
本発明に係る銀粉の強熱減量差は0.1質量%以下である。
強熱減量差が0.1質量%以下であることは、本発明に係る銀粉表面において、当該銀粉に必要な表面処理剤以外の有機物質の量が0.1質量%以下であることを意味している。
表面処理剤以外の有機物質の量が0.1質量%以下であることにより、本発明に係る銀粉は、50〜900℃の範囲において50℃の時を基準とした熱膨張率の最大値が0.3%以下となる。そして、本発明に係る銀粉を用いて製造した焼成型導電性ペーストから生成した硬化膜は、焼成の際に熱膨張しないので電気抵抗値の上昇や回路ショートがみられない。
本発明に係る銀粉の「強熱減量差」は下記(式1)で定義される。
強熱減量差(質量%)=[強熱減量値(質量%)−表面処理剤量値(質量%)]・・・(式1)
(式1)より、強熱減量差を求める為には、強熱減量値(質量%)と表面処理剤量値(質量%)とを測定する必要がある。以下、強熱減量値、表面処理剤量値の順に説明する。
強熱減量値の測定は、銀粉試料(例えば、2g)を準備して精密に秤量(秤量値:w1)して磁性るつぼに入れ、800℃で加熱する。さらに恒量になるまで30分間加熱した後、冷却し、再度秤量(秤量値:w2)する。当該w1、w2を下記(式2)に代入し、強熱減量値を求めることが出来る。
強熱減量値(質量%)=(w1−w2)/w1×100・・・(式2)
本発明に係る銀粉を所定量(例えば、2g)準備して精密に秤量する。当該精秤した銀粉へ酸を添加し銀溶液とする。添加する酸としては、濃度6M〜12Mの硝酸等が好ましく使用できる。酸の添加量は、精秤した銀粉の反応当量に比して過剰量を加える。例えば、濃度6M〜10Mの硝酸を添加するなら20mlを加える。当該溶解の際、混合物の温度が50℃以下を保つように留意し、銀溶液のpH値は3以下とすることが好ましい。
測定された炭素量から、本発明に係る銀粉に含有された表面処理剤量値の定量を行うことが出来る。この分析により銀粉に表面処理剤が存在するか、をも判定できる。
後述する製造方法により製造された本発明に係る銀粉は、当該銀粉を構成する銀粒子の D50が1〜8μmであり、(D90−D10)/D50の値が1.5以下である銀粉である。
つまり、粒度分布のピーク幅が狭く、粒径のばらつきが少なく、揃った銀粉である。
湿式レーザー回折式の粒度分布測定は、銀粉0.3gをイソプロピルアルコール30mLに加え、出力45Wの超音波洗浄器により5分間分散させた。そして当該分散液中の銀粒子の粒度分布を、マイクロトラック粒度分布測定装置(ハネウエル(Haneywell)−日機装製9320HRA(X−100))を用いて測定した。当該測定結果をグラフ化し、銀粒子の粒度分布の頻度と累積を求めた。そして、累積10%粒径をD10、累積50%粒径をD50、累積90%粒径をD90と表記した。
本発明に係る銀粉の製造方法について説明する。
まず、水溶性の銀塩として、例えばAgNO3水溶液を準備する。当該AgNO3水溶液の濃度は、0.01〜10mol/Lであることが好ましい。次に、当該AgNO3水溶液へ等モル量以上のアンモニア水を添加して、銀のアンミン錯体を形成させ、本発明に係る銀イオンを含有する水性反応系を得る。
当該銀イオンを含有する水性反応系の液温は5〜80℃とすることが好ましく、20〜40℃であればさらに好ましい。
ここで、本発明に係る好ましい高分子アミンの具体例としては、アミノ化合物、イミン化合物が挙げられる。中でもPEI(ポリエチレンイミン)が好ましい。特に、イミン化合物であるPEIは、その構造が分子中に第一アミンおよび第二アミンの両者を共に有する網状構造であり、本発明において好ましい結果を与える。
銀イオンを含有する水性反応系への還元剤の添加方法については、生成する銀粉の粒径を揃え、かつ凝集を防ぐために、1当量/min以上の速度で添加することが好ましい。還元剤の添加速度は速いほど好ましく、例えば100当量/min以上の速度であっても良い。また、還元の際には、より短時間で反応を終了させる観点から反応液を攪拌することが好ましい。
尚、銀イオンを含有する水性反応系へ、高分子アミンと還元剤とを同時に添加することも可能である。銀の結晶析出の前後、または、結晶析出中に添加しても良い。還元剤の添加により銀は結晶析出するため、この還元剤の添加タイミングにより、結晶析出前後、または同時と高分子アミンの添加タイミングを図ることができる。
当該分散剤としては、ステアリン酸などの脂肪酸や、アゾール構造を有する化合物の他、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属キレート形成剤、保護コロイド等が使用可能である。
脂肪酸のその他の具体例としては、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
そして、上記含銀スラリーを、ろ過、水洗、乾燥し、乾燥粉を得た。当該乾燥粉を、解砕、分級、篩別等し、本発明に係る銀粉を得る。
銀粒子とその表面の観察は、SEM(日本電子製JSM−6100)を使用し、10000倍にて観察を行った。
本発明に係る銀粉を用いて、公知の方法により焼成型の導電性ペーストが製造できる。
例えば、本発明に係る銀粉83.4質量%と、エチルセルロースをターピネオールに溶解し調製したビヒクル16.6質量%との混合物を、3本ロールにより混練することで、本発明に係る焼成型導電性ペーストを得ることが出来る。
そして、表面粗さ形状測定器にて当該硬化膜の膜厚T(μm)を測定し、デジタルマルチメーターで当該硬化膜の実測抵抗値を測定し、(式4)より当該硬化膜の体積抵抗率を算出出来る。
体積抵抗率(μΩ・cm)=導体幅500(μm)×膜厚T(μm)×実測抵抗値(Ω)×100/抵抗測定長37500(μm)・・・(式4)
[実施例1]
Agを43.16g含有する硝酸銀溶液を3887g準備し、そこへ濃度28質量%のアンモニア水溶液を97.1g加えて銀イオンを含有する水性反応系を調製し、液温を34.5℃とした。
当該銀イオンを含有する水性反応系へ、分子量300のPEIをAg重量に対して0.1質量%(43.16mg)を加え、さらに還元剤としてヒドラジン水溶液7.5gを加え十分に撹拌し、銀粉を含むスラリーを得た。
さらに、得られたスラリーへ0.12質量%のステアリン酸を加え、十分に撹拌した後、熟成させた。
前記により熟成されたスラリーを濾過、水洗し、解砕して実施例1に係る銀粉を得た。
ここで、実施例1に係る銀粉について熱膨張率と温度との関係を、図1(a)(b)に太実線をもって示す。当該図1(a)は、縦軸に熱膨張率をとり、横軸に温度をとったグラフである。図1(b)は、図1(a)における熱膨張率−10〜+6%、温度100〜600℃の範囲を拡大表示したグラフである。
図1(a)より、実施例1に係る銀粉は50℃における体積に対して、50〜900℃の温度範囲において最大熱膨張率が0.14%であり、熱膨張率はないと判断した。次に、実施例1に係る銀粉のBET値を測定したところ0.17m2/gであった。
作製された実施例1に係る焼成型導電性ペーストをアルミナ基板上にスクリーン印刷し、200℃で加熱して脱バインダー後、小型ボックス炉に装填し、昇温速度20℃/minで800℃迄加熱、10分間保持して焼成を行い、その後、室温に戻して、導体幅500(μm)、抵抗測定長37500(μm)の硬化膜を得た。
そして、表面粗さ形状測定器にて当該硬化膜の膜厚T(μm)を測定し、デジタルマルチメーターで当該硬化膜の実測抵抗値を測定し、上述した(式4)より当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、1.6μΩ・cmであった。
銀イオンを含有する水性反応系へ添加するPEIを分子量600のものとし、Ag重量に対して0.1質量%(43.16mg)を加えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係る銀粉を得た。
実施例2に係る銀粉の表面処理剤(ステアリン酸)含有量は0.11質量%、強熱減量値は0.11質量%であった。従って、強熱減量差は0.00質量%であることが判明した。
次に、実施例2に係る銀粉のBET値を測定したところ0.16m2/gであった。
熱膨張率測定では膨張が観測されないことが判明した。
当該熱膨張率と温度との関係を図1(a)(b)に太長破線をもって示す。実施例2に係る銀粉は50℃における体積に対して、50〜900℃の温度範囲において熱膨張率がマイナスの値であり熱膨張は観測されなかった。
さらに、実施例2に係る銀粉の湿式法による累積粒度分布測定結果を図3に示す。
図3は、横軸に銀粉の粒径を採り、左縦軸に所定粒径を有する銀粉の頻度を、左縦軸に前記頻度の累積を採ったグラフであり、所定粒径を有する銀粉の頻度を棒グラフで、前記頻度の累積を折れ線グラフで記載したものである。
当該実施例2に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。
そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、1.6μΩ・cmであった。
銀イオンを含有する水性反応系へ添加するPEIを分子量600のものとし、Ag重量に対して0.5質量%(215.8mg)を加えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係る銀粉を得た。
次に、実施例3に係る銀粉のBET値を測定したところ0.19m2/gであった。
熱膨張率測定では50〜900℃の温度範囲において熱膨張率がマイナスの値であり熱膨張が観測されないことが判明した。
実施例3に係る銀粉を用い、実施例1と同様にして実施例2に係る焼成型導電性ペーストを得た。
当該実施例3に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。
そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、1.6μΩ・cmであった。
銀イオンを含有する水性反応系へ添加するPEIを分子量600のものとし、Ag重量に対して0.005質量%(2.158mg)を加えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る銀粉を得た。
次に、実施例4に係る銀粉のBET値を測定したところ0.12m2/gであった。
熱膨張率測定では50〜900℃の温度範囲において熱膨張率がマイナスの値であり熱膨張が観測されないことが判明した。
実施例4に係る銀粉を用い、実施例1と同様にして実施例4に係る焼成型導電性ペーストを得た。
当該実施例4に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。
そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、1.6μΩ・cmであった。
銀イオンを含有する水性反応系へ添加するPEIを分子量600のものとし、Ag質量に対して0.1質量%(43.16mg)を加え、さらに、当該銀イオンを含有する水性反応系へ、Ag質量に対して0.42質量%のステアリン酸を加えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例5に係る銀粉を得た。
次に、実施例5に係る銀粉のBET値を測定したところ0.12m2/gであった。
熱膨張率測定では50〜900℃の温度範囲において熱膨張率がマイナスの値であり熱膨張が観測されないことが判明した。
実施例5に係る銀粉を用い、実施例1と同様にして実施例5に係る焼成型導電性ペーストを得た。
当該実施例5に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。
そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、1.6μΩ・cmであった。
銀イオンを含有する水性反応系へ添加するPEIを分子量600のものとし、Ag質量に対して0.1質量%(43.16mg)を加え、さらに、当該銀イオンを含有する水性反応系へ、Ag質量に対して0.12質量%のベンゾトリアゾールを加えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例6に係る銀粉を得た。
次に、実施例6に係る銀粉のBET値を測定したところ0.17m2/gであった。
熱膨張率測定では50〜900℃の温度範囲において最大熱膨張率が0.18%であり、熱膨張はないと判断した。
実施例6に係る銀粉を用い、実施例1と同様にして実施例6に係る焼成型導電性ペーストを得た。
実施例6に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、2.0μΩ・cmであった。
当該体積抵抗率は、他の実施例に比べやや高い値である。これは、実施例6においては、実施例1等に用いた銀粉の表面処理剤であるステアリン酸を、ベンゾトリアゾールへ代替したのに、ペースト組成は代替しなかった為、当該表面処理剤とペースト組成とが若干不適合であったものと考えられる。従って、ペースト組成を検討し、表面処理剤と適合をとれば、他の実施例と同等の低い体積抵抗率を保つことができると考えられる。
銀イオンを含有する水性反応系へ添加するPEIを分子量1200のものとし、Ag重量に対して0.1質量%(43.16mg)を加えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る銀粉を得た。
次に、比較例1に係る銀粉のBET値を測定したところ0.14m2/gであった。
熱膨張率測定では、約380℃において0.47%の膨張が観測された。
当該熱膨張率と温度との関係を図1(a)(b)に細実線をもって示す。
当該比較例1に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。
そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、1.7μΩ・cmであった。
銀イオンを含有する水性反応系へ添加するPEIを分子量1800のものとし、Ag重量に対して0.1質量%(43.16mg)を加えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例2に係る銀粉を得た。
次に、比較例2に係る銀粉のBET値を測定したところ0.15m2/gであった。
熱膨張率測定では、約250℃において0.40%の膨張が観測された。
当該熱膨張率と温度との関係を図1(a)(b)に細短破線をもって示す。
当該比較例2に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。
そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、1.7μΩ・cmであった。
銀イオンを含有する水性反応系へ添加するPEIを分子量10000のものとし、Ag重量に対して0.1質量%(43.16mg)を加えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例3に係る銀粉を得た。
次に、比較例3に係る銀粉のBET値を測定したところ0.15m2/gであった。
熱膨張率測定では、約360℃において1.68%の膨張が観測された。
当該熱膨張率と温度との関係を図1(a)(b)に細一点鎖線をもって示す。
当該比較例3に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。
そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、2.0μΩ・cmであった。
銀イオンを含有する水性反応系へ添加するPEIを分子量600のものとし、Ag重量に対して1.00質量%(431.6mg)を加えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例4に係る銀粉を得た。
次に、比較例4に係る銀粉のBET値を測定したところ0.14m2/gであった。
熱膨張率測定では、約350℃において0.62%の膨張が観測された。
当該比較例4に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。
そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、1.7μΩ・cmであった。
銀イオンを含有する水性反応系へPEIを添加しないこととした以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例5に係る銀粉を得た。
比較例5に係る銀粉の表面処理剤(ステアリン酸)含有量は0.06質量%、強熱減量値は0.15質量%であった。従って、強熱減量差は0.09質量%であることが判明した。
次に、比較例5に係る銀粉のBET値を測定したところ0.91m2/gであった。
熱膨張率測定では膨張が観測されないことが判明した。
当該比較例5に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。
そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、1.7μΩ・cmであった。
銀イオンを含有する水性反応系へPEIを添加しないこととし、さらに、ヒドラジン水溶液7.5gをホルマリン水溶液66.80gに代替した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例6に係る銀粉を得た。
比較例6に係る銀粉の表面処理剤(ステアリン酸)含有量は0.13質量%、強熱減量値は0.58質量%であった。従って、強熱減量差は0.45質量%であることが判明した。
次に、比較例6に係る銀粉のBET値を測定したところ0.32m2/gであった。
熱膨張率測定では、約290℃において0.89%の膨張が観測された。
当該比較例6に係る焼成型導電性ペーストを、実施例1と同様に焼成して硬化膜を得た。
そして、実施例1と同様に当該硬化膜の体積抵抗率を算出した。すると、焼成された導電性ペーストから生成した硬化膜の体積抵抗率は、1.7μΩ・cmであった。
比較例6で得た銀粉に対し、150℃、6時間の熱処理を実施し、比較例7に係る銀粉を得た。
比較例7に係る銀粉のBET値を測定したところ0.26m2/gであった。
熱膨張率測定では、約250℃において0.35%の膨張が観測された。
比較例6で得た銀粉に対し、100℃、20時間の熱処理を実施し、比較例8に係る銀粉を得た。
比較例8に係る銀粉のBET値を測定したところ0.27m2/gであった。
熱膨張率測定では、約290℃において3.8%の膨張が観測された。
すなわち、焼成による有機分を除去しても熱膨張が観測されることがわかった。
Claims (3)
- 表面処理剤が存在し、50〜900℃の範囲において、50℃における値を基準とした熱膨張率の最大値が0.3%以下であり、かつ、BET値(比表面積)が0.1m2/g以上0.9m2/g以下であり、
前記表面処理剤は、ジクロロメタンからなる有機溶媒に溶解し、前記表面処理剤が存在する銀粉を溶解した水溶液と有機溶媒との混合物を水相と有機相とに分液した場合には有機相へ移行する表面処理剤であって、
前記有機相中の有機溶媒を蒸発乾燥した後に、炭素分析により求められる炭素量から表面処理剤量を定量した場合に、強熱減量差(質量%)=[強熱減量値(質量%)−表面処理剤量(質量%)]として定義される強熱減量差の値が0.1質量%以下であることを特徴とする銀粉。
但し、前記強熱減量値とは、前記表面処理剤が存在する銀粉の秤量値をw1、当該秤量された銀粉を800℃、30分間加熱した後、室温まで冷却した後の再度の秤量値をw2としたとき、強熱減量値(質量%)=(w1−w2)/w1×100で定義される値であり、
前記表面処理剤量とは、前記表面処理剤が存在する銀粉を酸溶解した銀溶液へ、有機溶媒としてジクロロメタンを添加して前記表面処理剤を有機相へと移行させた後、水相と有機相とに分液後の前記有機相中の前記表面処理剤を多孔質ボードに吸着させ、前記有機溶媒を蒸発乾燥させた後の、前記多孔質ボードから炭素量を測定することで求めた表面処理剤量(質量%)の値である。 - 累積粒度分布D50が、1μm以上8μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の銀粉。
- 請求項1または2に記載の銀粉を含むことを特徴とする導電性ペースト。
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