JP2012062531A - フレーク状銀粉とその製造方法、樹脂硬化型導電性ペーストおよび導電膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フレーク状銀粉材料に対して、多価カルボン酸を0.01〜0.7質量%被覆させたことを特徴とする、フレーク状銀粉が提供される。このフレーク状銀粉は樹脂硬化型導電性ペーストに配合される。本発明によれば、導電膜の導電性の向上、即ち導電膜の抵抗の低減を実現できる。
【選択図】図2
Description
先ず、多価カルボン酸を被覆させるためのフレーク状銀粉材料1が必要となる。本発明において用いられるフレーク状銀粉材料1は、公知技術である湿式粉砕法または乾式粉砕法によって得られる。フレーク状銀粉材料1は、形状がフレーク状であり、比表面積が5m2/g以下であり、より好ましくは2.0m2/g以下、もしくは1.5m2/g以下である。平均粒径が0.2〜25μmであるものを用いることが好ましい。これは以下の理由からである。即ち、比表面積が5m2/gを超えるものを用いると作製後の樹脂硬化型導電性ペーストの粘度が高すぎ、印刷性が悪化する等の不具合が生じる恐れがある。また、平均粒径が0.2μm未満のものを用いた場合にも作製後の樹脂硬化型導電性ペーストの粘度が高すぎ、印刷性が悪化する等の不具合が生じる恐れがあり、平均粒径が25μm超のものを用いた場合、作製後の樹脂硬化型導電性ペーストをスクリーン印刷に用いる場合に銀粉の目詰まりが発生して生産性が低下する恐れがあるといった問題点がある。
次いで、上記フレーク状銀粉材料1にカルボキシル基を2個以上含む多価カルボン酸を添加する。カルボキシル基を2個以上含む多価カルボン酸としては、例えばアジピン酸、コハク酸、ジグリコール酸、グルタル酸およびマレイン酸が例示される。特に、アジピン酸は少量の添加でもって体積抵抗率が低下する効果があるため、多価カルボン酸としてアジピン酸を用いることが好ましい。また、多価カルボン酸の添加量は、フレーク状銀粉材料1の質量に対して0.01〜0.7質量%が好ましく、さらには0.02〜0.5質量%が好ましい。これは、多価カルボン酸の添加量がフレーク状銀粉材料1の質量に対して0.01質量%未満、あるいは、0.7質量%を超えた場合、作製される導電膜の導電性向上効果が十分に得られないからである。
フレーク状銀粉材料1に多価カルボン酸を添加した後、多価カルボン酸がフレーク状銀粉材料1に均一に被覆されるように乾式の解砕が行われる。乾式の解砕は、多価カルボン酸が添加されたフレーク状銀粉材料1を例えばヘンシェルミキサー、サンプルミル、ブレンダー、コーヒーミル、ボールミル、振動ミル等に入れることで行われる。そして、必要に応じて解砕による摩擦熱やもしくは乾燥工程によって多価カルボン酸を添加させるために用いた溶媒を蒸発させる。これにより多価カルボン酸の被覆されたフレーク状銀粉材料1、即ち、本発明でいうフレーク状銀粉(以下、多価カルボン酸が被覆されたフレーク状銀粉材料1を「フレーク状銀粉」と呼称する)が得られることとなる。
続いて、上述してきた方法で得られたフレーク状銀粉に、樹脂および必要に応じた溶剤・硬化剤を混合することによって樹脂硬化型導電性ペーストが作製される。ここで用いられるフレーク状銀粉は、多価カルボン酸が被覆される前のフレーク状銀粉材料1と同様に、比表面積が5m2/g以下で、平均粒径が0.2μm〜25μmであり、アスペクト比(平均長径L/平均厚みT)が3以上であるものが好ましい。
上記方法で作製された樹脂硬化型導電性ペーストを基板等に塗布し、加熱(樹脂硬化)することにより導電膜が得られ、得られた導電膜の体積抵抗率を測定することで導電膜の評価が行われる。
本発明にかかる樹脂硬化型導電性ペーストおよび導電膜を以下のような条件で作製した。また、作製した導電膜についてはその特性について測定を行った。
銀イオン水溶液としての2.7%の硝酸銀水溶液375kgに、25%アンモニア水溶液19kgを加えて、銀アンミン錯体水溶液を生成した。生成した銀アンミン錯体水溶液に還元剤として37%ホルマリン水溶液25kgを加えた。また、還元剤を加えた直後に、分散剤としてステアリン酸10gを加え、銀粉を含むスラリーを生成した。得られたスラリーをろ過、水洗した後、乾燥熱処理して、銀粉を10kg得た。この得られた銀粉を解砕した時点で、BET1点法により測定した比表面積は0.17m2/g、レーザー回折式粒度分布測定法により測定したD50(平均粒径)は7.9μmであった。この得られた銀粉に、分散剤としてのステアリン酸を0.15質量%加えてよく混ぜ、SUSボール(直径1.6mm)とともに振動ボールミルに入れて、振動数1,200vpm、振幅6mm、処理時間6時間の条件でフレーク化処理を実施し、フレーク状銀粉材料を得た。BET1点法により測定したフレーク状銀粉材料の比表面積は0.25m2/g、レーザー回折式粒度分布測定法により測定したD50(平均粒径)は8.7μm、走査型電子顕微鏡より測定したアスペクト比は9であった。
上記で製造したフレーク状銀粉材料100gと多価カルボン酸として粉末状のアジピン酸0.01gを電動コーヒーミル(メリタジャパン株式会社製、セレクトグラインドMJ−518)に入れ、処理時間10秒間の条件にて混合解砕を行った。さらに、粉末状のアジピン酸0.01gを追加後、処理時間20秒間の条件にて混合解砕を行い、合計で銀粉に対して0.02質量%の多価カルボン酸を被覆した。こうして得たフレーク状銀粉について、BET1点法により測定した比表面積、レーザー回折式粒度分布測定法により測定した平均粒径D50、走査型電子顕微鏡より測定したアスペクト比の結果を表1に示す。なお、表1には本実施例1以外の以下に説明する実施例2〜6および比較例1〜3の測定結果についても、同様に各値を記載している。
平均粒径D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(ハネウエル−日機装株式会社製、MICROTORAC HRA)を用いて、フレーク状銀粉0.3gをイソプロパノール30mLに加え、45W超音波分散処理を5分間行って試料を準備し、全反射モードで測定を行った。
比表面積は、MONOSORB装置(湯浅アイオニクス株式会社製)で、He70%、N230%のキャリアガスを用い、フレーク状銀粉3gをセルに入れて脱気を60℃で10分間行った後、BET1点法により測定を行った。
また、(1)被覆処理後のフレーク状銀粉、(比較例1ではフレーク状銀粉材料)、(2)エポキシ樹脂、(3)硬化剤、(4)溶剤を、下記組成比で混練することによりペーストを作製した。
(1)フレーク状銀粉(フレーク状銀粉材料)・・・89質量部
(2)エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製、EP−4901E)・・・9質量部
(3)硬化剤(味の素ファインテクノ株式会社製、アミキュアMY−24)・・・2質量部
(4)溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)・・・6質量部
96%アルミナ基板上に、前記で得られたペーストを用い、幅500μm、長さ37500μmのペーストの膜をスクリーン印刷機(マイクロ・テック株式会社製、MT−320T)にて印刷した。得られた膜を大気循環式乾燥機を用い、200℃、40分間の条件で加熱処理し、導電膜を形成した。得られた導電膜は表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、SE−30D)を用いて、アルミナ基板上で膜を印刷していない部分と導電膜の部分の段差を0.1mm/secで走査することにより導電膜の膜厚を測定した。導電膜の抵抗は、デジタルマルチメーター(ADVANTEST製、R6551)を用いて、導電膜の長さ(間隔)が37.5mmの位置の抵抗値を測定した。導電膜のサイズ(膜厚、幅、長さ)より、導電膜の体積を求め、この体積と測定した抵抗値から、体積抵抗率(比抵抗)を求めた。体積抵抗率の結果は表1に示す。実施例1の導電膜は、アジピン酸被覆処理を行わないフレーク状銀粉材料を用いて作製された後述する比較例1の導電膜に比べ、低い体積抵抗率を示した。
実施例1で製造したフレーク状銀粉材料100gと多価カルボン酸として粉末状のアジピン酸0.05gを電動コーヒーミル(メリタジャパン株式会社製、セレクトグラインドMJ−518)に入れ、処理時間10秒間の条件にて混合解砕を行った。さらに、粉末状のアジピン酸0.05gを追加後、処理時間20秒間の条件にて混合解砕を行い、合計でフレーク状銀粉材料に対して0.1質量%の多価カルボン酸を添加した。それ以外は、実施例1と同様に導電膜の形成、測定を行った。得られた結果を表1に示した。
実施例1で製造したフレーク状銀粉材料100gと多価カルボン酸として粉末状のアジピン酸0.15gを電動コーヒーミル(メリタジャパン株式会社製、セレクトグラインドMJ−518)に入れ、処理時間10秒間の条件にて混合解砕を行った。さらに、粉末状のアジピン酸0.15gを追加後、処理時間20秒間の条件にて混合解砕を行い、合計でフレーク状銀粉材料に対して0.3質量%の多価カルボン酸を添加した。それ以外は、実施例1と同様に導電膜の形成、測定を行った。得られた結果を表1に示した。
実施例1で製造したフレーク状銀粉材料100gと多価カルボン酸として粉末状のアジピン酸0.25gを電動コーヒーミル(メリタジャパン株式会社製、セレクトグラインドMJ−518)に入れ、処理時間10秒間の条件にて混合解砕を行った。さらに、粉末状のアジピン酸0.25gを追加後、処理時間20秒間の条件にて混合解砕を行い、合計でフレーク状銀粉材料に対して0.5質量%の多価カルボン酸を添加した。それ以外は、実施例1と同様に導電膜の形成、測定を行った。得られた結果を表1に示した。
多価カルボン酸を含有する溶液として、アジピン酸をエタノールに溶解し、10質量%のアジピン酸エタノール溶液を準備した。実施例1で製造したフレーク状銀粉材料100gと10質量%のアジピン酸エタノール溶液0.5gを電動コーヒーミル(メリタジャパン株式会社製、セレクトグラインドMJ−518)に入れ、処理時間10秒間の条件にて混合解砕を行った。さらに、10質量%のアジピン酸エタノール溶液0.5gを追加後、処理時間20秒間の条件にて混合解砕を行い、合計でフレーク状銀粉材料に対して0.1質量%の多価カルボン酸を添加した。更にその後、室温で真空乾燥を1時間行いエタノール成分を蒸発させた。それ以外は、実施例1と同様に導電膜の形成、測定を行った。得られた結果を表1に示した。
実施例1で製造したフレーク状銀粉材料100gと多価カルボン酸として粉末状のコハク酸0.05gを電動コーヒーミル(メリタジャパン株式会社製、セレクトグラインドMJ−518)に入れ、処理時間10秒間の条件にて混合解砕を行った。さらに、粉末状のコハク酸0.05gを追加後、処理時間20秒間の条件にて混合解砕を行い、合計でフレーク状銀粉材料に対して0.1質量%の多価カルボン酸を添加した。それ以外は、実施例1と同様に導電膜の形成、測定を行った。得られた結果を表1に示した。
実施例1で使用したフレーク状銀粉材料に多価カルボン酸の被覆処理を行わずに同様の条件で試験を行った。得られた結果を表1に示した。
実施例1で製造したフレーク状銀粉材料100gと多価カルボン酸として粉末状のアジピン酸0.45gを電動コーヒーミル(メリタジャパン株式会社製、セレクトグラインドMJ−518)に入れ、処理時間10秒間の条件にて混合解砕を行った。さらに、粉末状のアジピン酸0.45gを追加後、処理時間20秒間の条件にて混合解砕を行い、合計でフレーク状銀粉材料に対して0.9質量%の多価カルボン酸を添加した。それ以外は、実施例1と同様に導電膜の形成、測定を行った。得られた結果を表1に示した。
実施例1で製造したフレーク状銀粉材料100gと多価カルボン酸として粉末状のアジピン酸1.5gを電動コーヒーミル(メリタジャパン株式会社製、セレクトグラインドMJ−518)に入れ、処理時間10秒間の条件にて混合解砕を行った。さらに、粉末状のアジピン酸1.5gを追加後、処理時間20秒間の条件にて混合解砕を行い、合計でフレーク状銀粉材料に対して3質量%の多価カルボン酸を添加した。それ以外は、実施例1と同様に導電膜の形成、測定を行った。得られた結果を表1に示した。
Claims (14)
- フレーク状銀粉材料に対して、多価カルボン酸を0.01〜0.7質量%被覆させたことを特徴とする、フレーク状銀粉。
- 前記多価カルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、ジグリコール酸、グルタル酸またはマレイン酸であることを特徴とする、請求項1に記載のフレーク状銀粉。
- 前記フレーク状銀粉材料は、比表面積が5m2/g以下であり、平均粒径が0.2〜25μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のフレーク状銀粉。
- フレーク状銀粉材料に粉末の状態で、フレーク状銀粉材料に対して、多価カルボン酸を0.01〜0.7質量添加することを特徴とする、フレーク状銀粉の製造方法。
- 多価カルボン酸を粉末の状態で添加し、乾式の解砕を行ってフレーク状銀粉材料に対して多価カルボン酸を被覆させることを特徴とする、請求項4に記載のフレーク状銀粉の製造方法。
- フレーク状銀粉材料に溶媒に溶解された状態で、フレーク状銀粉材料に対して、多価カルボン酸を0.01〜0.7質量添加することを特徴とする、フレーク状銀粉の製造方法。
- 前記溶媒に溶解された状態において、多価カルボン酸の濃度は1〜20質量%であることを特徴とする、請求項6に記載のフレーク状銀粉の製造方法。
- 前記溶媒は、アルコール、アセトンまたはエーテルであることを特徴とする、請求項6または7に記載のフレーク状銀粉の製造方法。
- 多価カルボン酸を溶媒に溶解された状態で添加し、乾式の解砕を行ってフレーク状銀粉材料に対して多価カルボン酸を被覆させることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載のフレーク状銀粉の製造方法。
- 乾式の解砕を行ってフレーク状銀粉材料に対して多価カルボン酸を被覆させた後、前記溶媒を蒸発させることを特徴とする、請求項9に記載のフレーク状銀粉の製造方法。
- 前記多価カルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、ジグリコール酸、グルタル酸またはマレイン酸であることを特徴とする、請求項4〜10のいずれかに記載のフレーク状銀粉の製造方法。
- 前記フレーク状銀粉材料は、比表面積が5m2/g以下であり、平均粒径が0.2〜25μmであることを特徴とする、請求項4〜11のいずれかに記載のフレーク状銀粉の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のフレーク状銀粉を含有することを特徴とする、樹脂硬化型導電性ペースト。
- 請求項13に記載の樹脂硬化型導電性ペーストを塗布し、加熱することを特徴とする、導電膜の形成方法。
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