JP6173979B2 - 磁気ディスク装置 - Google Patents

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Description

この発明の実施形態は、高周波アシスト方式を用いる磁気ディスク装置に関する。
ディスク装置として、例えば、磁気ディスク装置は、ケース内に配設された磁気ディスクと、磁気ディスクを支持および回転するスピンドルモータと、磁気ディスクに対して情報のリード/ライトを行う磁気ヘッドと、を備えている。
近年、記録密度の向上を図る目的で、磁気ヘッドの主磁極の近傍に高周波発振子としてスピントルク発振子を設け、このスピントルク発振子から磁気ディスクの磁気記録層に高周波磁界を印加する高周波アシスト記録方式の磁気ヘッドが提案されている。また、スピントルク発振子に対して定常レベルである第1レベルの駆動信号を連続的に供給し、記録信号の極性反転後の所定時間だけ第1レベルより高い第2レベルの駆動信号をスピントルク発振子に供給する駆動制御方式を用いた磁気ディスク装置が提案されている。
特許第4649519号公報 特開2013−229067号公報 米国特許第8670201号明細書
しかし、高速に第1レベルと第2レベルの駆動信号を高速で切り替える際、例えば、スイッチングノイズ等による予期せぬ高電圧がスピントルク発振子にかかってしまい、かえってスピントルク発振子の発振が不安定となるだけでなく、場合によっては、スピントルク発振子が損傷する可能性もある。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その課題は、高周波アシスト磁気記録において、より高速で安定な記録が可能な磁気ディスク装置を提供することにある。
実施形態によれば、磁気ディスク装置は、記録媒体の記録層に対し記録磁界を印加する主磁極と、前記主磁極を励磁する記録コイルと、前記記録媒体と対向する媒体対向面の近傍で前記主磁極に隣接して設けられ、高周波を発生させるスピントルク発振子と、前記記録コイルに記録電流を供給する記録電流制御回路と、前記スピントルク発振子に一定の駆動電流を供給する駆動電流制御回路と、前記駆動電流の大きさに応じて、前記記録電流の極性反転後のオーバーシュート量を制御するオーバーシュート制御回路と、を備えている。
図1は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置(HDD)を示す斜視図。 図2は、前記HDDにおける磁気ヘッド、サスペンション、記録媒体を示す側面図。 図3は、前記磁気ヘッドのヘッド部および磁気ディスクの一部を拡大して概略的に示す断面図。 図4は、前記磁気ヘッドにおける記録電流波形、スピントルク発振子駆動電流波形、スピントルク発振子の発振挙動を示す図。 図5は、比較例に係る磁気ヘッドの記録電流波形、スピントルク発振子駆動電流波形、スピントルク発振子の発振挙動を示す図。 図6は、第1の実施形態において、スピントルク発振子の発振挙動を駆動電流を変えて測定した場合の、発振強度と発振周波数の関係を示す図。 図7は、第2の実施形態に係る磁気ディスク装置のオーバーシュート制御回路を示すブロック図。 図8は、第2の実施形態に係る磁気ディスク装置において、磁気ヘッドの記録電流波形、スピントルク発振子駆動電流波形を比較して示す図。
以下、図面を参照しながら、種々の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、ディスク装置として、第1の実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)のトップカバーを取り外して内部構造を示し、図2は、浮上状態の磁気ヘッドを示している。図1に示すように、HDDは筐体10を備えている。この筐体10は、上面の開口した矩形箱状のベース11と、図示しない矩形板状のトップカバーとを備えている。トップカバーは、複数のねじによりベースにねじ止めされ、ベースの上端開口を閉塞している。これにより、筐体10内部は気密に保持され、呼吸フィルター26を通してのみ、外部と通気可能となっている。
ベース11上には、記録媒体としての磁気ディスク12および駆動部が設けられている。駆動部は、磁気ディスク12を支持および回転させるスピンドルモータ13、磁気ディスク12に対して情報の記録、再生を行なう複数、例えば、2つの磁気ヘッド33、これらの磁気ヘッド33を磁気ディスク12の表面に対して移動自在に支持したヘッドアクチュエータ14、ヘッドアクチュエータ14を回動および位置決めするボイスコイルモータ(以下VCMと称する)16を備えている。また、ベース11上には、磁気ヘッド33が磁気ディスク12の最外周に移動した際、磁気ヘッド33を磁気ディスク12から離間した位置に保持するランプロード機構18、HDDに衝撃等が作用した際、ヘッドアクチュエータ14を退避位置に保持するイナーシャラッチ20、および変換コネクタ37等の電子部品が実装された基板ユニット17が設けられている。
ベース11の外面には、制御回路基板25がねじ止めされ、ベース11の底壁と対向して位置している。制御回路基板25は、基板ユニット17を介してスピンドルモータ13、VCM16、および磁気ヘッド33の動作を制御する。
図1および図2に示すように、磁気ディスク12は、垂直磁気記録媒体として構成されている。磁気ディスク12は、例えば、直径約2.5インチの円板状に形成され非磁性体からなる基板19を有している。基板19の各表面には、下地層としての軟磁性層23と、その上層部に、磁気記録層22と保護膜24とが順次積層されている。
図1に示すように、磁気ディスク12は、スピンドルモータ13のハブに互いに同軸的に嵌合されているとともにハブの上端にねじ止めされたクランプばね15によりクランプされ、ハブに固定されている。磁気ディスク12は、駆動モータとしてのスピンドルモータ13により所定の速度で矢印B方向に回転される。
図1および図2に示すように、ヘッドアクチュエータ14は、ベース11の底壁上に固定された軸受部21と、軸受部から延出した複数のアーム27と、を備えている。これらのアーム27は、磁気ディスク12の表面と平行に、かつ、互いに所定の間隔を置いて位置しているとともに、軸受部21から同一の方向へ延出している。ヘッドアクチュエータ14は、弾性変形可能な細長い板状のサスペンション30を備えている。サスペンション30は、その基端がスポット溶接あるいは接着によりアーム27の先端に固定され、アームから延出している。各サスペンション30の延出端にジンバルばね41を介して磁気ヘッド33が支持されている。なお、ヘッドアクチュエータ14は、軸受部21のスリーブと、複数のアームとを一体に形成したいわゆるEブロックを備えた構成としてもよい。
図2に示すように、各磁気ヘッド33は、ほぼ直方体形状のスライダ42とこのスライダの流出端(トレーリング端)に設けられた記録再生用のヘッド部44とを有している。2本のアーム27は所定の間隔を置いて互いに平行に位置し、これらのアームに取り付けられたサスペンション30および磁気ヘッド33は、磁気ディスク12を間に挟んで互いに向かい合っている。
各磁気ヘッド33は、サスペンション30およびアーム27上に固定された中継フレキシブルプリント回路基板(配線部材)35、および、基板ユニット17のメインFPC38を介して、基板ユニット17および制御回路基板25に電気的に接続されている。
図1に示すように、VCM16は、軸受部21からアーム27と反対方向に延出した図示しない支持フレーム、および支持フレームに支持されたボイスコイルを有している。ヘッドアクチュエータ14をベース11に組み込んだ状態において、ボイスコイルは、ベース11上に固定された一対のヨーク34間に位置し、これらのヨークおよびヨークに固定された磁石とともにVCM16を構成している。
磁気ディスク12が回転した状態でVCM16のボイスコイルに通電することにより、ヘッドアクチュエータ14が回動し、磁気ヘッド33は磁気ディスク12の所望のトラック上に移動および位置決めされる。この際、磁気ヘッド33は、磁気ディスク12の径方向に沿って、磁気ディスクの内周縁部と外周縁部との間を移動される。
次に、磁気ヘッド33の構成について詳細に説明する。図3は、磁気ヘッド33のヘッド部44および磁気ディスクの一部を拡大して示す断面図である。
図2および図3に示すように、磁気ヘッド33は浮上型のヘッドとして構成され、ほぼ直方体状に形成されたスライダ42と、スライダの流出端(トレーリング)側の端部に形成されたヘッド部44とを有している。スライダ42は、例えば、アルミナとチタンカーバイドの焼結体(アルチック)で形成され、ヘッド部44は複数層の薄膜により形成されている。
スライダ42は、磁気ディスク12の表面に対向する矩形状のディスク対向面(媒体対向面、空気支持面(ABS))43を有している。スライダ42は、磁気ディスク12の回転によってディスク表面とディスク対向面43との間に生じる空気流Cにより、磁気ディスク表面から所定量浮上した状態に維持される。空気流Cの方向は、磁気ディスク12の回転方向Bと一致している。スライダ42は、磁気ディスク12表面に対し、ディスク対向面43の長手方向が空気流Cの方向とほぼ一致するように配置されている。スライダ42は、空気流Cの流入側に位置するリーディング端42aおよび空気流Cの流出側に位置するトレーリング端42bを有している。
図3に示すように、ヘッド部44は、スライダ42のトレーリング端42bに薄膜プロセスで形成された再生ヘッド54および磁気記録ヘッド56を有し、分離型磁気ヘッドとして形成されている。
再生ヘッド54は、磁気抵抗効果を示す磁性膜50と、この磁性膜のトレーリング側およびリーディング側に磁性膜50を挟むように配置されたシールド膜52a、52bと、で構成されている。これら磁性膜50、シールド膜52a、52bの下端は、スライダ42のディスク対向面43に露出している。
磁気記録ヘッド56は、再生ヘッド54に対して、スライダ42のトレーリング端42b側に設けられている。図3に示すように、記録ヘッド56は、磁気ディスク12の表面に対して垂直方向の記録磁界を発生させる高飽和磁化材料からなる主磁極(記録磁極)66と、主磁極66のトレーリング側にギャップ(ライトギャップ)を置いて対向したトレーリングシールド(シールド磁極)68と、主磁極66およびトレーリングシールド68を含む磁気回路(磁気コア)に巻きつくように配置された記録コイル71と、主磁極66のディスク対向面43側の先端部66aとトレーリングシールド68との間で、かつ、ディスク対向面43に面する部分に配置された高周波発振子、例えば、スピントルク発振子74と、を有している。磁気ディスク12に信号を書き込む際、記録コイル71に記録電流を流すことにより、主磁極66に磁束を励起する。
主磁極66は、磁気ディスク12の表面に対してほぼ垂直に延びている。主磁極66の磁気ディスク12側の先端部66aは、ディスク面に向かって先細に絞り込まれている。主磁極66の先端面は、スライダ42のディスク対向面43に露出している。本実施形態において、主磁極66の先端部66aの幅は、磁気ディスク12におけるトラックの幅にほぼ対応している。
トレーリングシールド68は、ほぼL字形状に形成され、その先端部68aは、細長い矩形状に形成されている。トレーリングシールド68の先端面は、スライダ42のディスク対向面43に露出している。トレーリングシールド68は、主磁極66直下の軟磁性層23を介して効率的に磁路を閉じるために設けられている。先端部68aのリーディング側端面は、磁気ディスク12のトラックの幅方向に沿って延びている。このリーディング側端面は、主磁極66のトレーリング側端面とライトギャップWGを置いてほぼ平行に対向している。なお、主磁極66のトラック幅方向の両側へサイドシールドを設置してもよい。このサイドシールドを設置することにより、隣接トラックへのフリンジ磁界の減少が可能となり、トラック幅方向の記録密度を向上することが出来る。
トレーリングシールド68は、ディスク対向面43から離れた位置で、例えばSiO2等の非導電体67を介して主磁極66に連結されている。この非導電体67により、主磁極66とトレーリングシールド68とが電気的に絶縁されている。
記録コイル71は、配線W1を介して記録電流制御回路70に接続されている。記録電流制御回路70は、制御回路基板25、基板ユニット17、あるいは、メインFPC38の中継フレキシブルプリント回路基板(配線部材)35側の端部に配置したプリアンプIC、に設けられ、電源82に接続された記録電流駆動回路76およびオーバーシュート制御回路77を有している。そして、記録電流駆動回路76は、制御回路基板25から送られる記録信号、記録パターンに応じて記録電流Iwを記録コイル71に通電する。これにより、記録コイル71は主磁極66を励磁し、主磁極66から記録磁界を発生させる。また、オーバーシュート制御回路77は、記録電流Iwが極性反転する際、スピントルク発振子74の駆動電流値に応じて、オーバーシュートを制御する。
図3に示すように、スピントルク発振子74は、主磁極66の先端部66aとトレーリングシールド68のリーディング側端面との間に設けられ、ライトギャップWG内に位置している。また、スピントルク発振子74の下端面は、スライダのディスク対向面43に露出し、磁気ディスク12の表面に対して、主磁極66の先端面とほぼ同一の高さ位置に設けられている。すなわち、スピントルク発振子74の下端面は、スライダ42のディスク対向面43と面一に、かつ、磁気ディスク12の表面とほぼ平行に位置している。
スピントルク発振子74は、非磁性導電層からなる下地層、スピン注入層(第1磁性体層)74a、中間層74b、発振層(第2磁性体層)74c、非磁性導電層からなるキャップ層を、主磁極66側からトレーリングシールド68側に順に積層して構成されている。下地層は主磁極66の先端部66aに接して形成され、また、キャップ層はトレーリングシールド68のリーディング側端面に接して形成されている。
発振層74cは、例えば、軟磁性かつ飽和磁束密度が大きなFeCoNi等により形成され、中間層74bは、例えば、スピン拡散長が長いCu等により形成されている。スピン注入層74aは、例えば、保磁力が高くかつスピン偏極率が高いCo/Ni人工格子により形成されている。また、スピン注入層74aは、記録時に発生するギャップ磁界よりも小さい保磁力を有する材料で形成してもよい。なお、主磁極66側から順にスピン注入層74a、中間層74b、発振層74cを積層する構成としたが、これに限らず、主磁極66側から発振層、中間層、スピン注入層の順で積層する構成としてもよい。
スピントルク発振子74は、主磁極66、トレーリングシールド68、および配線W2を介してスピントルク発振子(STO)駆動電流制御回路80に接続されている。STO駆動電流制御回路80は、制御回路基板25、基板ユニット17、あるいは、メインFPC38の中継フレキシブルプリント回路基板(配線部材)35側の端部に配置したプリアンプIC、に設けられ、電源82およびオーバーシュート制御回路77に接続されている。そして、STO駆動電流制御回路80は、制御回路基板25の制御の下、電源82から主磁極66およびトレーリングシールド68に電圧を印加することにより、配線W2、主磁極66、スピントルク発振子74、トレーリングシールド68を通して駆動電流ISTOを直列に通電する。すなわち、STO駆動電流制御回路80は、スピントルク発振子74の膜厚方向に、直流電流を通電する。通電することにより、スピントルク発振子74の発振層74cの磁化が回転し、高周波磁界(マイクロ波)を発生させることが可能となる。これにより、スピントルク発振子74は、磁気ディスク12の記録層に高周波磁界を印加し、記録層の保磁力を低減する。
図4は、記録電流Iwを40mA、STO駆動電流ISTOを2.5mAにそれぞれ設定した時に、記録電流Iwのオーバーシュート量S1をSTO駆動電流の10倍である25mAに設定して駆動した場合の、(A)記録電流波形、(B)STO駆動電流波形、(C)スピントルク発振子74の発振挙動を示した図である。
記録電流波形は、その極性が反転する際にオーバーシュートが重畳し、その後、設定値である一定電流値の40mAとなる波形となっている。オーバーシュート量S1は25mAとなるように制御している。そのため、記録電流波形の極性反転後に示す最大値は65mAのピークを持っている。この時のSTO駆動電流波形は、記録電流Iwの極性反転がない部分では設定値である2.5mAであるが、記録電流の極性反転時には配線W1、W2間のクロストークノイズ(電流)が重畳することで、絶対値で最大約3mA、最小約2.3mAとなるようなレベル変動が生じている。その時のスピントルク発振子74の発振挙動は、記録電流Iwの極性反転後、速やかに発振しており、極性反転後の発振遅れはほとんどない。なお、本実施形態において、オーバーシュート制御回路77により、負極性側のアンダーシュート量S2を、正極性側のオーバーシュート量S1と共通に制御している。
一方、図5は、比較例として、STO駆動電流制御回路80とオーバーシュート制御回路77の接続を切り、記録電流Iwのオーバーシュートを発生させない場合の(A)記録電流波形、(B)STO駆動電流波形、(C)スピントルク発振子の発振挙動を示している。記録電流IwおよびSTO駆動電流ISTOは、それぞれ40mA、2.5mAに設定している。
図5に示すように、比較例において、記録電流Iwは極性反転時のオーバーシュートがほとんどない電流波形となっている。STO駆動電流波形は、記録電流Iwの極性反転時にわずかに配線W1、W2間のクロストークノイズが重畳しているが、その値は、0.1mA程度である。その際のスピントルク発振子74の発振挙動は、発振強度が緩やかに立ち上がるとともに、その発振周波数も低い値から徐々に高い値になっていることが分かる。従って、比較例の場合は、記録磁界反転に対して高周波磁界の発振が遅れて発生していることが分かる。
以上のように、本実施形態に係る磁気ディスク装置では、記録電流Iwが極性反転する際、オーバーシュート制御回路77により、スピントルク発振子74の駆動電流値に応じてオーバーシュート量を制御することにより、極性反転後の発振遅れをほとんど生じることなくスピントルク発振子74を速やかに発振させることができる。そのため、転送速度が上がり、記録周波数が高くなった場合でも、スピントルク発振子74は記録電流反転に追随して発振し、安定した高周波アシストにより良好な記録を行うことができる。
図6は、STO駆動電流ISTOを変えて、スピントルク発振子の発振挙動を測定した場合の、発振強度と発振周波数との関係を示している。ここで用いたスピントルク発振子74の抵抗は50Ωとし、STO駆動電流ISTOを1.2〜4mAまで変化させて測定した。
この図から、ピーク強度が高く発振周波数もほぼ一定となる駆動電圧範囲は、ほぼ100〜180mVであることがわかる。ここで安定した発振が得られる駆動電圧範囲の中点である140mVを駆動電圧とすると、安定した発振が得られる範囲は、およそ140mV(2.5mA)±30%の範囲となっている。従って、STO駆動電流ISTOに配線間のクロストークノイズが重畳した場合でも安定して発振できる範囲は、重畳する成分(電流)が設定駆動電流の±30%に収めることが望ましい。この範囲を超えてしまうと、発振周波数がずれてしまうか、十分な発振強度が得られなくなってしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態によれば、高周波アシスト磁気記録において、より高速で安定な記録が可能な磁気ディスク装置が得られる。
次に、他の実施形態に係るHDDについて説明する。なお、以下に説明する他の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係るHDDにおける、記録ヘッドの記録電流制御回路、スピントルク発振子駆動電流制御回路を概略的に示すブロック図である。
第2の実施形態によれば、HDDは、極性反転時における記録電流Iwの正極性側のオーバーシュートと、負極性側のアンダーシュートとを個別に制御する構成としている。すなわち、図7に示すように、HDDは、配線W1を介して磁気ヘッドの記録コイル71に記録電流を供給する記録電流制御回路70と、配線W2を介してスピントルク発振子(STO)に駆動電流を供給するスピントルク発振子駆動電流制御回路80とを備えている。
記録電流制御回路70は、電源82に接続された記録電流駆動回路76と、STO駆動電流値に応じてオーバーシュート量S1を制御するオ−バーシュート制御回路77と、STO駆動電流値に応じてアンダーシュート量S2を制御するアンダーシュート制御回路90と、を有している。オ−バーシュート制御回路77は、オーバーシュートの振幅を調整する第1振幅制御回路77a、およびオーバーシュートの持続期間(デュレーション)T1を制御する第1期間制御回路77bを含んでいる。同様に、アンダーシュート制御回路90は、アンダーシュートの振幅を調整する第2振幅制御回路90a、およびアンダーシュートの持続期間(デュレーション)T2を制御する第2期間制御回路90bを含んでいる。そして、記録電流制御回路70は、記録電流の極性反転時、オ−バーシュート制御回路77とアンダーシュート制御回路90とを切換えて記録電流を制御する。
図8は、記録電流Iwを40mA、STO駆動電流ISTOを2.5mAにそれぞれ設定した時の、(A)記録電流波形、(B)STO駆動電流波形を示した図である。記録電流Iwのアンダーシュートの場合、スピントルク(STO)発振子駆動電流ISTOに重畳されるクロストークノイズ(電流)は、アンダーシュート後のリングバックが実際のスピントルク発振子のブースト効果に寄与する。そのため、アンダーシュート量S2は、オーバーシュート量S1よりも大きく設定することが望ましい。
アンダーシュートに起因するクロストークノイズ(電流)は、STO駆動電流ISTOを下げる方向に重畳されるため、アンダーシュート量S2を多くしてもスピントルク発振子74の破壊等の問題は生じない。しかし、アンダーシュートに続くリングバックが遅れると発振ブースト効果も遅れてしまう。そのため、アンダーシュートの持続期間(デュレーション)T2は、オーバーシュートの持続期間T1よりも短く設定することが望ましい。
記録電流制御回路70は、オーバーシュート制御回路(正極性に対応)77と、アンダーシュート制御回路(負極性に対応)90とを備え、これらの制御回路を記録電流の極性に合わせて切り替えて使用する。オーバーシュート制御回路77の第1振幅制御回路77aは、オーバーシュートに起因してSTO駆動電流ISTOに重畳されるクロストークノイズ(電流)が設定STO駆動電流の±30%となるように、オーバーシュートの振幅(オーバーシュート量)S1を制御する。
アンダーシュート制御回路90の第2振幅制御回路90aは、記録電流Iwの極性反転時、アンダーシュートの振幅(アンダーシュート量)S2を、オーバーシュートの振幅S1よりも例えば、40ないし60%大きく設定する。また、アンダーシュート制御回路90の第2持続期間制御回路90bは、アンダーシュートの持続期間T2を、オーバーシュートの持続期間T1よりも短く、例えば、2/3程度の期間に設定する。
これにより、記録電流Iwのオーバーシュート時とアンダーシュート時とでSTO駆動電流ISTOを増大させる方向の成分はほぼ同じとなり、正極、負極のいずれの記録電流極性の場合でも良好なスピントルク発振を得ることができた。
第2の実施形態において、HDDの他の構成は、前述した第1の実施形態と同一である。以上のように構成された第2の実施形態よれば、高周波アシスト磁気記録において、第1の実施形態の記録ヘッドよりも、更に高速で安定した記録が可能な磁気ディスク装置を得ることができる。
なお、第2の実施形態において、記録電流Iwの正極側の電流レベルL1と負極側の電流レベルL2とを互いに異なるレベルに設定してもよく、L1>L2あるいはL1<L2としてもよい。
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、高周波発振子は、主磁極のトレーリング側に限らず、主磁極のリーディング側に設けてもよい。記録電流値、駆動電流値、記録電流のオーバーシュート量、アンダーシュート量、持続期間は、上述した実施形態で示した数値に限定されることなく、適宜変更可能である。
10…筺体、11…ベース、12…磁気ディスク、13…スピンドルモータ、
14…ヘッドアクチュエータ、25…制御回路基板、33…磁気ヘッド、
42…スライダ、43…ディスク対向面、44…ヘッド部、54…再生ヘッド、
56…磁気記録ヘッド、66…主磁極、66a…先端部、
68…トレーリングシールド、71…記録コイル、70…記録電流制御回路、
74…スピントルク発振子(STO)、76…記録電流駆動回路、
77…オーバーシュート制御回路、77a…第1振幅制御回路、
77b…第1持続期間制御回路、80…スピントルク発振子駆動電流制御回路、
90…アンダーシュート制御回路、90a…第2振幅制御回路、
90b…第2持続期間制御回路

Claims (6)

  1. 記録媒体の記録層に記録磁界を印加する主磁極と、
    前記主磁極を励磁する記録コイルと、
    前記記録媒体と対向する媒体対向面の近傍で前記主磁極に隣接して設けられ、高周波を発生させるスピントルク発振子と、
    前記記録コイルに記録電流を供給する記録電流制御回路と、
    前記スピントルク発振子に一定の駆動電流を供給する駆動電流制御回路と、
    前記駆動電流の大きさに応じて、前記記録電流の極性反転後のオーバーシュート量を制御するオーバーシュート制御回路と、
    を備える磁気ディスク装置。
  2. 前記記録コイルと記録電流制御回路を接続する第1配線と、前記スピントルク発振子と駆動電流制御回路を接続する第2配線と、を備え、
    前記スピントルク発振子に供給する駆動電流は、前記記録電流印加時の前記第1配線から第2配線へのクロストークによるレベル変動により、前記駆動電流の値よりも絶対値で高くなる部分を有する請求項1に記載の磁気ディスク装置。
  3. 前記オーバーシュート制御回路は、前記クロストークによる駆動電流のレベル変動が、前記駆動電流の値の±30%以内となるように、前記記録電流のオーバーシュート量を制御する請求項2に記載の磁気ディスク装置。
  4. 前記記録電流制御回路は、前記駆動電流の大きさに応じて、前記記録電流の正極性への反転後のオーバーシュート量を制御するオーバーシュート制御回路と、前記駆動電流の大きさに応じて、前記記録電流の負極性への反転後のアンダーシュート量を制御するアンダーシュート制御回路と、を備えている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁気ディスク装置。
  5. 前記アンダーシュート制御回路は、前記オーバーシュート量よりも大きいアンダーシュート量を設定するように構成されている請求項4に記載の磁気ディスク装置。
  6. 前記オーバーシュート制御回路は、オーバーシュートの持続期間を制御する第1持続期間制御回路を備え、前記アンダーシュート制御回路は、アンダーシュートの持続期間を前記オーバーシュートの持続期間よりも短く設定する第2持続期間制御回路を備えている請求項4又は5に記載の磁気ディスク装置。
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