JP6172562B2 - 色素増感型太陽電池およびその電極 - Google Patents

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Description

本発明は、色素増感型太陽電池およびその電極に関するものである。
太陽電池などの光子エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子は、その発電過程においてCOなどの有害物質を排出しないなど環境負荷が少ないため、クリーンなエネルギー源として大きく期待されており、すでにシリコン系太陽電池などが実用化されている。
しかし、シリコン系太陽電池のうち単結晶シリコン太陽電池は、理論値で30%を超えるほど光電変換効率は高いものの、高純度材料の原料を必要とするなど、製造コストが高いのが大きな課題となっている。一方、アモルファスシリコン太陽電池は、原料をシランガスから製造できるため製造コストは低いものの、光電変換効率で単結晶シリコン太陽電池に及ばない。また、多結晶シリコン太陽電池も、単結晶シリコン太陽電池のコスト低減を目的としたものであるが、結晶粒界や粒内欠陥といった結晶欠陥の存在が太陽電池の性能に悪影響を及ぼしている。
そこで、近年、必ずしも高純度材料などを必要としないためシリコン系太陽電池よりも製造コストが低く、また発電機構もシリコン系太陽電池とは異なる、湿式太陽電池が注目を集めている。
特に、半導体の表面に光を吸収する色素(以下、増感色素)を吸着させることで、半導体では電子の励起が生じない、半導体のバンドギャップよりも光子エネルギーが小さい長波長の可視光も、増感色素が吸収して増感色素の電子が励起することで、その光子エネルギーも電気エネルギーに変換させることができ、電池全体としての光電変換効率を高めることができる、いわゆる色素増感型太陽電池に関する研究が盛んに行われている。
従来の色素増感型太陽電池では、増感色素を担持した半導体層および集電体として機能する導電性基板からなる光電極を、半導体層が形成された面が対極と対向するように配置している。なお、対極は導電性基板などからなるもので、光電極側の面に白金などの触媒層を付与したものもある。
そして色素増感型太陽電池は、増感色素が入射光を吸収することで電子が励起し、半導体層、導電性基板、次いで外部回路を通じて対極に達し、そこから電解質層を経由して再び増感色素に戻るというサイクルを繰り返すことで、発電を行なっている。
従って、増感色素に入射光が到達するためには、光電極と対極のうち少なくともいずれか一方の導電性基板は、光透過性を有している透明導電膜である必要があった。なお、透明導電膜としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO),フッ素ドープ酸化スズ(FTO),酸化インジウム(IO),酸化スズ(SnO)のような透明導電性の金属酸化物およびそれらにアンチモンをドープしたものが使用されている。
しかし、光を透過させる特性と電気を流す特性は相反するものであり、光の透過率または電気伝導度のいずれか、あるいは両方とも低下させてしまうので、透明導電膜を使用する従来の色素増感型太陽電池は、結果として光電変換効率は満足いくものではなかった。
また従来の透明導電性の金属酸化物は、真空蒸着法,イオンプレーティング法,スパッタリング法,プラズマCVD法などで生成するため、製造コストが高くなってしまった。
また、従来半導体層に用いられていた金属酸化物半導体は、表面が平滑で内部に細孔を持たないものであった。そのため増感色素が担持可能な有効面積は限られ、増感色素の担持量が少ない光電極しか得られなかった。このような光電極では、半導体層表面に担持された単分子層の増感色素しかエネルギーの発生に寄与することができず、その光の吸収量は最大吸収波長でも入射光の1%以下にすぎなかった。
そこで、光捕集力を高めるために増感色素を多層にする試みも提案されているが、概して充分な効果は得られてはいない。
このような状況の中でグレッツェルらは、透明導電膜である伝導性ガラスからなる光電極を使用しつつも金属酸化物からなる半導体層を多孔質化することで、増感色素が担持可能な有効面積を著しく増大させる方法を提案した(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
しかし、半導体層を多孔質化することにより、より多くの増感色素を担持させることが可能になったが、複雑な構造でしかも孔が細い半導体層の深部には光が届きにくく、依然として光電変換効率は満足いくものではなかった。
そこで、多孔質な金属酸化物半導体層を用いつつ、透明導電膜よりも抵抗率の低い金,白金,銀,銅,アルミニウムなどの電極材に透明導電膜を置き換えることで抵抗による損失を減少させることも試みられたが、これらの電極材は光の透過率が低いため半導体層に到達する光量が著しく減少してしまうことから、半導体層を固定する集電体として利用されることはなかった。
そして次にこのような課題に対し、半導体層と集電体の配設順序を逆にして、光透過性基板の面上に半導体層を配設し、半導体層のもう一方の面上に貫通孔を有する導電性基板を配設したものを光電極に用いることが提案されている(例えば、特許文献2)。
また、透明導電膜の代わりに金属製グリッドを用いて、これに酸化物半導体焼結物を一体的に結合させたものを光電極に用いることも提案されている(例えば、特許文献3)。
しかし、特許文献2に例示される、光透過性基板の面上に半導体層を配設し、半導体層のもう一方の面上に貫通孔を有する導電性基板を配設したものを光電極とする場合、光透過性基板上に金属酸化物を焼結させる必要があり、フィルムのようなフレキシブル化には適当ではない。
また、特許文献3に例示される、透明導電膜の機能のうち集電体の部分を金属製グリッドに置き換え、これに酸化物半導体焼結物を一体的に結合させたものを光電極とする場合、金属製グリッドの格子が形成された領域では、半導体層は金属製グリッドの格子の影に隠れてしまうため、入射光が到達可能な半導体層の有効面積が限られてしまう。そのため、エネルギーの発生に寄与する増感色素の数が減少してしまい、光電変換効率は満足いくものではなかった。
そこで、貫通孔が形成された導電性基板上に、前記貫通孔を覆うように金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層を形成したものを光電極に用いることが提案されている(例えば、特許文献4)。
このような方法であると確かに、封止層、すなわち太陽光の光入射基板である光透過性基板として、導電体でない透明基板の使用が可能である。
しかし、特許文献4の方法による場合、半導体微粒子を含む多孔質な半導体層上に、透明樹脂からなる光透過性基板が形成され、光透過性基板とは反対側の導電性基板に形成された貫通孔を通して、電解質は半導体層に含浸される。
そのため、電解質は貫通孔近傍の半導体層には多く含浸されるが、光透過性基板側に行くに従い電解質の含浸は十分ではなくなり、光透過性基板近傍では電解質はほとんど含浸されなくなってしまう。特許文献4には、半導体層が複数の層が積層された場合の一例として、導電性基板と接する空孔率の高い第一層と、前記第一層上に形成され、かつ前記第一層よりも空孔率が低い第二層からなる半導体層が挙げられているが、複数の層が積層された場合の一例としてわざわざ空孔率が異なるものを挙げたということは、半導体層が単一の層からなる場合であっても、複数の層が積層された場合の一例として挙げられたものと同様の空孔率の分布が導電性基板側と光透過性基板側との間には存在しているものと考えられることから、導電性基板側と光透過性基板側とで含浸の程度が異なっているものと推察される。
さらには、特許文献4の方法による場合、半導体層は貫通孔を覆うように形成されるのであるから、半導体層側の導電性基板の表面に沿うように半導体層が存在することになり、光透過性基板近傍で貫通孔と接している半導体層がほとんどなくなることも、光透過性基板側での含浸性の低下を招く一因となっている。
よって、電子が励起して酸化状態になっても電解質層を介して還元可能な増感色素が付与された半導体層の面と、電解質層との界面の上部に、エネルギーの発生には寄与しない半導体微粒子を含む多孔質な半導体層があるため、エネルギーの発生には寄与しない半導体層を入射光が通過することになる。そのため通過する際に乱反射などが生じ、いったん色素増感型太陽電池内に入射してきた太陽光の一部が再び電池の外に出て行ってしまうため、光電変換効率を低下させてしまい、満足いくものではなかった。
また、光電極の導電性基板と電解質層が接触してしまうことで、局部電池が形成されて、導電性基板である金属基板が腐食されるとともに、逆電子反応が生じて、増感色素から励起して半導体層を経由して伝わってきた電子が外部回路を経由せずに電解質層に移動してその分電力を失うことになるため、光電変換効率は満足いくものではなかった。
そこで、製造コストの低減とあわせて入射光の透過度の増加を目的として、透明導電性酸化物ではない光透過性基板と対極との間に半導体層を、半導体層と対極との間に貫通孔を有する光電極の導電性基板をそれぞれ配置し、光透過性基板と半導体層とは隔離しうるものとし、対極と光透過性基板との間を電解質層で満たした色素増感型太陽電池が提案されている。そしてさらに、貫通孔がその底部の中心に位置する直方体状の凹部を導電性基板に形成したものも提案されている(例えば、特許文献5)。
このような方法であると確かに、透明導電性酸化物ではないものを光入射基板である光透過性基板として用いるため光透過率が高くなり、光透過性基板と半導体層との間にも電解質層が存在するため、半導体層を入射光が通過することによって生じる乱反射は起きにくくなり、電池内に入射してきた太陽光の一部が再び電池の外に出て行ってしまうということも少なくなり、光電変換効率の改善が見込まれる。
しかし、特許文献5においては、依然として貫通孔を覆うように半導体層が形成されており、中には半導体層ではなく半導体微粒子が貫通孔をふさいでいるものもあり、光透過性基板側の半導体層近傍での電解質イオンの拡散の低下を招いてしまい、光電変換効率は満足いくものではなかった。
また、貫通孔がその底部の中心に位置する直方体状の凹部を一例とする、導電性基板上への突出部の形成について、その目的および効果が特許文献5には明らかにされてはいないが、少なくとも特許文献5において例示されている形状の導電性基板の上に半導体層を形成したものを光電極に用いる場合、凹部での半導体層の形成は凹部の底部および壁面上にて行なわれるが、貫通孔を覆うように半導体層を形成せず、電解質イオンの拡散の低下を防ぐことができたとしても、凹部の表面側部と底部とでは形状が変わらず、壁面は導電性基板に対して垂直になっているため、太陽光の入射角度が変わった際に吸収漏れが生じてしまい、光電変換効率は満足いくものではなかった。
特開平1−220380号公報 特開2001−283941号公報 特開2003−123855号公報 特開2010−225317号公報 特開2010−277999号公報
B.Oregan,M.Gratzel,Nature,353,737(1991)
本発明はこのような問題点に鑑みたもので、太陽光の入射角度が変化しても入射光の吸収漏れを抑え、またより多くの増感色素を担持させることで、光電変換効率の高い光電極および前記光電極を用いた色素増感型太陽電池を提供することを目的とするものである。
そこで本発明者らは、太陽光の入射角度の変化に対応可能とし、かつ、より多くの増感色素を担持可能とするためには、光電極はどのような電極構造にすべきか探求し、光電変換効率に優れた光電極および前記光電極を用いた色素増感型太陽電池を見出した。
本発明にかかる光電極は、貫通孔を有する導電性基板と、半導体層と、半導体層に担持させた増感色素からなる色素増感型太陽電池用電極において、凹部を導電性基板の少なくとも一方の面に形成し、凹部の表面側部よりも底部のほうが面積が小さく、導電性基板の凹部を有する一面に半導体層を形成したことを特徴とする。
また本発明にかかる光電極は、導電性基板が弁金属を含有するものであることが好ましい。
また本発明にかかる光電極は、貫通孔の、導電性基板の半導体層が形成されている一方の面における、開口部の総面積が導電性基板の投影面積の20〜50%であること、貫通孔のうち70%以上の貫通孔が、貫通孔の、導電性基板の半導体層が形成されている一方の面における、開口部の外接円の直径が0.2〜20μmであること、凹部のうち70%以上の凹部が、その表面側部の外接円の直径が1.0〜50μmであり、その深さが1.0〜50μmであること、貫通孔および/または凹部を、塩化物イオンを含む電解液中でのアノード溶解によって形成することが、それぞれ好ましい。
また本発明にかかる光電極は、導電性基板の半導体層が形成されていない面および貫通孔の内壁に絶縁層が形成されていること、絶縁層を陽極酸化によって形成することが、それぞれ好ましい。
また本発明にかかる光電極は、半導体層が酸化チタンであること、導電性基板の凹部を有する一面に蒸着またはスパッタリングでチタンを付与すること、半導体層である酸化チタンを陽極酸化によって形成することが、それぞれ好ましい。
本発明にかかる色素増感型太陽電池は、光透過性基板と対極との間に前記光電極を、増感色素を担持させた半導体層が形成されている面を光透過性基板の側に向けて配置し、光透過性基板と対極との間を電解質層で充填したことを特徴とする。また本発明にかかる色素増感型太陽電池は、光透過性基板が導電性を有しない、または、光透過性基板に導電性の物質を付与しないことが好ましい。
本発明にかかる色素増感型太陽電池は、光電極の導電性基板に貫通孔に加えて、後工程で半導体層を形成する面に、その表面側部よりもその底部のほうが面積が小さい形状をした凹部を形成するため、太陽光の入射角度が変化しても吸収漏れを抑えることができ、またより多くの増感色素を担持させることができるので光捕集力が高まり、光の利用効率が高くなる。また、増感色素及び半導体層が付与された光電極の導電性基板が、一方の面からその反対の面まで電解質イオンが移動可能な貫通孔を有するため、増感色素と導電性基板を挟んで反対側に位置する対極との間で電荷の移動が可能となり、電気伝導度の高い導電性基板を使用することが可能となるので、発電した電力の損失が減少し、光電変換効率が向上する。
また、光透過性基板が必ずしも電気伝導性を有していなくても、発電が可能となる。
また、半導体層を形成しない光電極の導電性基板の表面および貫通孔の内壁に絶縁層を形成することにより、局部電池の形成によって導電性基板が腐食されることを防止するとともに、逆電子反応によって増感色素から励起して伝わってきた電子が外部回路を経由せずに電解質層に移動して電力が損失することも防ぎ、光電変換効率を向上させる。
これらのことにより、高い光電変換効率を有する光電極および前記光電極を用いた色素増感型太陽電池を提供することができる。
本発明の光電極の一例を示す断面模式図である。 本発明の光電極の一例を示す平面模式図である。 本発明の光電極の他の一例を示す断面模式図である。 本発明の光電極の他の一例を示す断面模式図である。 本発明の光電極の他の一例を示す断面模式図である。 本発明の色素増感型太陽電池の一例を示す断面模式図である。 本発明の色素増感型太陽電池の他の一例を示す断面模式図である。 本発明の色素増感型太陽電池の他の一例を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態である、光電極の断面模式図もしくは平面模式図を表した図1から図5および色素増感型太陽電池の断面模式図を表した図6から図8をもとに、本発明を実施するための形態について以下説明する。なお、以下の説明におけるものは本発明の実施形態の一つにすぎず、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
1.光透過性基板8
本発明において、光透過性基板8は、色素増感型太陽電池7内に入射光を取り込む光入射基板として機能する。
従って、本発明における光透過性基板として、入射光が増感色素4に到達し、吸収漏れを抑えて効率よく増感色素4に吸収されるようにするためには、光透過性基板8の厚み100μmあたりのヘーズが2%以下であることが好ましい。
なお、後述するとおり、励起した電子を外部回路に引き出す集電体としての機能は光電極の導電性基板が担うため、本発明における光透過性基板としては、導電性を有しないものも用いることができ、また光透過性基板に導電性の物質を付与しなくてもかまわない。
本発明における光透過性基板の材質としては無機材料か有機材料かは問わないが、太陽光に直接触れることを考えれば、耐光性、耐熱性のある材質が好ましく、例えば、ガラスおよび、ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリカーボネート,ポリスチレン,ポリエーテルスルホン,トリアセチルセルロースなどのフィルムを用いることができる。
厚さは特に限定されないが、強度を保つ目的で0.01〜1.0mmが望ましい。
また、必要に応じて耐候性を高めるハードコート等の表面処理を行なってもよい。
2.光電極1
本発明にかかる色素増感型太陽電池用電極、すなわち、光電極は、少なくとも一方の面にその表面側部よりもその底部のほうが面積が小さい形状をした凹部5および貫通孔6を有する導電性基板2,導電性基板2の凹部5を有する一面に形成した半導体層3,および半導体層3に担持させた増感色素4からなるものである(例えば、図1,図6)。
また、導電性基板2の凹部5が形成されていない面および貫通孔6の内壁に絶縁層12が形成されていることが好ましい(例えば、図7)。
なお、光電極における貫通孔と凹部の位置関係については何ら制約は受けない。すなわち、凹部のところから貫通孔が発生して、貫通孔の開口部がくぼんだ状態になっているものと、凹部以外のところから貫通孔が発生して、凹部と貫通孔が別々の位置に独立して形成されているもの(例えば、図2)、貫通孔と凹部の位置関係についてこれら2種類のものが混在している光電極もあれば、どちらか一方にそろった光電極もあり、いずれも本発明にかかる光電極に含まれる。
(1)導電性基板2
本発明において、光電極1における導電性基板2は、増感色素4から励起した電子を外部回路に引き出す集電体として機能する。
従って、電子が速やかに移動して発電効率が低下しないようにするためには、銅,アルミニウムなどの電子伝導性に優れたものが好ましい。また、後述する絶縁層12を陽極酸化によって形成することを可能とするためには、アルミニウム,タンタル,ニオブ,チタン,ハフニウム,ジルコニウム,亜鉛,タングステン,ビスマス,アンチモンなどの弁金属が好ましい。
形態としては、金属箔状のものの他に、電池のセパレータなどに使われる多孔質高分子フィルムに弁金属などを蒸着したものを用いることもできるが、この場合はすでに貫通孔が存在しているため、重ねて後述する方法などによって貫通孔を形成する必要はない。
なお、集電体としての機能を果たすことができるのであれば、前記金属の合金箔もしくは合金を蒸着した多孔質高分子フィルムを用いることもできる。
また、厚さは特に限定されないが、電池の小型化に向けた薄膜化を考慮に入れた場合は、20〜110μmが好ましい。
(2)凹部5
本発明において、光電極1の導電性基板2の少なくとも一方の面に、他方の面にまで穴が達しない凹部5を形成する目的は、半導体層3を形成する導電性基板2にあらかじめ凹部5を形成して半導体層3も導電性基板2にそった凹凸構造にすることで、i)太陽光の入射角度が変化してもその角度に応じて入射光を吸収できる位置に増感色素4を担持させ、高い光電変換効率を保つことを可能とする ii)半導体層3が形成可能な面積が増え、その結果入射光を吸収できる増感色素4を増加させ、光電変換効率を高くすることを可能とする ことにある。
従って、特に該i)の目的を達成可能とする凹部5の形状は、その表面側部Aの面積よりもその底部Bの面積のほうが小さい形状、例えば、半球状(図1),四角錐台状(図3),角錐状などであり、特に半球状が好ましい。この点につき、特に好ましい形状として例示した半球状の凹部5を用いて説明すると、凹部が半球状の場合、導電性基板2の表面から中に行くに従って導電性基板の表面と平行に切断した凹部5の切断面の径は徐々に減少していくため、凹部5の壁面が導電性基板2の表面に対して垂直であったものが徐々に傾いていき、凹部5の底部においては導電性基板2の表面と平行になる。本発明においては凹部5の壁面にこのような傾斜があるため、太陽光がどのような角度で入射してきても、必ず凹部5の壁面と入射光が直角に交わる、入射光の吸収漏れがないところに増感色素4を吸着させることができるため、入射光の吸収漏れによる光電変換効率の低下を防ぐことができるのである。
なお、本発明におけるその表面側部よりもその底部のほうが面積が小さい形状とは、特に好ましい形状として例示した半球状のように、導電性基板の表面から中に行くに従って導電性基板の表面と平行に切断した凹部の切断面の面積が必ず減少していくというものに限定されるのではなく、凹部の底部に達するまでの間に凹部の表面に突起部のような一部面積が増加する箇所が途中にあることによって、凹部の切断面の面積がいったん増加することがあったとしても、表面側部よりも底部のほうが面積が小さくなっている形状であれば、本発明における凹部に含まれる。
さらには、凹部を複数積み重ねたものも、最初に形成した凹部の表面側部よりも最後に形成した凹部の底部のほうが面積が小さい形状になっていれば、本発明における凹部に含まれる。例えば、表面側部よりも底部のほうが面積が小さい形状の凹部を1段形成した後に、さらに最初に形成した凹部の表面側部よりもその表面側部の面積が小さく、かつ底部がその表面側部よりも面積が小さくなる凹部を順次形成したものにおいて、直前に形成した凹部の底部よりも次に形成した凹部の表面側部のほうが面積が大きくなった場合のように、最初に形成した凹部の表面側部から最後に形成した凹部の底部に至るまでの途中に、導電性基板の表面と平行に切断した凹部の切断面の面積が増加する箇所があったとしても、最初に形成した凹部の表面側部よりも最後に形成した凹部の底部のほうが面積が小さい形状になっていれば、本発明における凹部5bに含まれる(例えば、図4)。そして、このようにして凹部を複数積み重ねたものは、導電性基板の表面がより粗面化されることによって、導電性基板と半導体層との密着性が向上して内部抵抗が小さくなるため、半導体層から導電性基板への電子伝導性がより優れたものとなり、色素増感型太陽電池の特性がさらに良くなることから、凹部を1段しか形成しなかったものよりも好ましい。さらには、導電性基板と半導体層との密着性が向上することによって電解質層に対する耐食性も増すので、その点からも、凹部を1段しか形成しなかったものよりも複数積み重ねたもののほうが好ましい。
また本発明で言うところの半球状,四角錐台状,角錐状とは、数学的・幾何学的に正確な形状に限定されるのではなく、概ね各形状になっていれば、本発明における凹部に含まれる。また半球状と角柱状など複数の形状の凹部が混在していてもよく、凹部の形状は必ずしも1種類に限定されるものではない。
また、凹部の表面側部の大きさおよび深さは、小さすぎたり浅すぎたりすると、後工程において形成する半導体層3によって凹部5が埋まってしまい、前記i)およびii)の目的を果たすことができなくなってしまう。また大きすぎたり深すぎたりしても、半導体層3が形成可能な面積を効果的に増やすことができず、前記ii)の目的を果たせなくなってしまう。そのため、凹部5の表面側部の外接円の直径は1.0〜50μmであり、深さは1.0〜50μmであることが好ましい。しかし、凹部5の形状が必ずしもすべて同一になるとは限らない。そこで本発明においては、凹部5のうち70%以上の凹部が、その表面側部の外接円の直径は1.0〜50μmであり、その深さは1.0〜50μmであれば上記目的を達するのに十分であるため、好ましいとするものである。なお、以降において、その表面側部の外接円の直径1.0〜50μmであり、その深さは1.0〜50μmである凹部の割合のことを、凹部径の占有率と称する。
なお、本発明における表面側部の外接円とは、その中に当該表面側部を内包することが可能な円の中で径が最小のものを意味しており、この外接円の定義は後述する貫通孔においても同様である。
また、少なくとも一方の面に凹部5を有するのであるから、凹部5を導電性基板2の両面に形成した場合も本発明に含まれる(例えば、図5)。すなわち、凹部5を導電性基板2の両面に形成した場合には、前記i)およびii)の目的が達成可能な凹部5を有する面であってもどちらか一方の面については後工程において半導体層3が形成されないということもありうるが、そのような導電性基板2を用いた光電極1cおよびその光電極1cを用いた色素増感型太陽電池も本発明に含まれる。
凹部5は、導電性基板2を、塩化物イオンをはじめとするハロゲン化物イオンを含む塩酸などと、例えば硝酸などを混合した電解液中で、対極に白金電極,カーボン電極などを用いたアノード溶解を行なうことによって形成することができる。
なお、凹部5の表面側部の外接円の直径および深さは、電解液の組成、濃度、液温、電流密度および処理時間を変えることによって制御することができる。
また、導電性基板表面の脱脂および自然酸化皮膜の除去を目的としたアルカリ性溶液への浸漬などの前処理を、アノード溶解の前に行なってもよい。
(3)貫通孔6
本発明において、光電極1の導電性基板2に貫通孔6を形成する目的は、電子が励起して外部回路に取り出されて酸化状態になった増感色素4を還元するために、電解質イオンが対極10から電子を受け取って増感色素4に到達するための経路を確保することにある。
従って、導電性基板2の表面における貫通孔6の開口部の大きさとして、電解質イオンが移動可能であることが本発明の目的を達する上で最低限必要である。しかし、大きければ大きいほどいいというわけでもない。開口部が過剰に存在すると、増感色素4を担持した半導体層3が形成可能な導電性基板2の表面積そのものが減少してしまい、色素増感型太陽電池7全体としての光電変換効率は逆に低下してしまうからである。そのため、導電性基板2の表面における貫通孔6の開口部は、その総面積は導電性基板2の投影面積の20〜50%であることが好ましく、また、貫通孔6のうち70%以上の貫通孔6が、その外接円の直径は0.〜20μmであることが好ましい。なお、以降において、貫通孔6の開口部の総面積が占める導電性基板の投影面積に対する割合のことを貫通孔6の開口率、その開口部の外接円の直径が0.〜20μmである貫通孔6の割合のことを貫通孔径の占有率と、それぞれ称する。
なお、貫通孔は途中で枝分かれしていても、電解質イオンが導電性基板の対極側から光透過性基板側まで移動可能であれば、特段の問題は生じないが、少しでも短い距離で反対の面まで到達するのが好ましい。
貫通孔6は、少なくとも一方の面に凹部5を形成した導電性基板2を、塩化物イオンをはじめとするハロゲン化物イオンを含む塩酸などの電解液中で、対極に白金電極,カーボン電極などを用いたアノード溶解を行なうことによって形成することができる。
そして、前記方法によって貫通孔6を形成した場合には貫通孔形成後に、導電性基板2の表面および貫通孔6の内壁に残留している塩化物イオンなどの除去および貫通孔6の径の拡大を目的として、硫酸などを含む酸性溶液に浸漬する。
なお、貫通孔の開口部の総面積の割合および外接円の直径は、各工程の電解液の組成、濃度、液温、電流密度および処理時間を変えることによって制御することができる。
(4)絶縁層12
本発明において、光電極1の導電性基板2の次工程において半導体層3を形成しない面に絶縁層12を形成する目的は、局部電池の形成によって導電性基板2が腐食されることを防止するとともに、逆電子反応によって増感色素4から励起して伝わってきた電子が外部回路を経由せずに電解質層9に移動して電力が損失することも防ぐことにある。
光電極7の導電性基板2のうち、次工程によって酸化チタンなどからなる半導体層3を形成しない対極と対向させる面および貫通孔6の内壁はそのまま電解質層9に曝されてしまう。そして、色素増感型太陽電池における電解質には後述するようにヨウ素またはヨウ化物が用いられることが多く、これらは金属との反応性が強いためそのまま導電性基板2を電解質層9に曝すと腐食してしまい、光電変換効率の低下を招いてしまう。そのため、次工程において半導体層3を形成しない面および貫通孔6の内壁を絶縁層12で保護することが好ましい(例えば、図7)。
絶縁層12は、少なくとも一方の面に凹部5を形成し次いで貫通孔6を形成した導電性基板2を、ほう酸,りん酸,アジピン酸,シュウ酸などのうち少なくとも1種類以上含む中性の電解液中で陽極酸化することによって形成することができる。
なお、次工程において半導体層を形成する面まで陽極酸化してしまうと、その後その絶縁層の上に半導体層を形成しても、増感色素から励起した電子が導電性基板に伝わるのが絶縁層によって阻害されてしまうので、十分な光電変換効率は得られない。そのため、次工程において半導体層3を形成する凹部5を有する面にはアクリル板などをあてて、その面に電解液が触れないようにクリップなどで固定してから導電性基板2を電解液の中に入れる。
また、絶縁層12の厚さは特に制限はされないが、電解液の組成、濃度、液温、電圧および処理時間を変えることによって、電解質層9中の電解質の組成に応じて十分な耐食性が得られる厚さに制御することができる。
(5)半導体層3
本発明において、導電性基板2の凹部5を有する一面に半導体層3を形成する目的は、i)半導体層3のバンドギャップより光子エネルギーが大きい短波長の入射光を吸収して、半導体層3の電子を励起させる ii)後述する増感色素4において励起し、半導体層3の伝導帯に注入された電子、および、半導体層3において伝導帯に励起した電子を導電性基板2に受け渡す ことにある。
そして、半導体層形成後、次工程において半導体層3に増感色素4を担持させるため、増感色素4の担持量は半導体層3の構造に左右される。
従って、本発明における半導体層は、導電性基板3への電子伝達作用を有した半導体材料で、増感色素4を多く担持させるべく多孔質状に形成されることが好ましい。
本発明における半導体層3に、例えば下記の半導体材料を用いることができる。
a)金属酸化物
Ti,Ta,Nb,Cd,Zn,In,Pb,Mo,W,Sb,Bi,Cu,Hg,Ag,Mn,Fe,V,Sn,Zr,Sr,Ga,Si,Crなどの酸化物
b)ペロブスカイト型酸化物
SrTiO,BaTiO,CaTiOなど
c)金属硫化物
CdS,ZnS,In,PbS,MoS,WS,Sb,Bi,ZnCdS,CuSなど
d)金属セレン化物
CdSe,InSe,WSe,HgSe,PbSeなど
e)金属テルル化物
CdTe,MoTe,WTeなど
f)その他
GaAs,Si,Se,Cd,Zn,InP,AgBr,PbI,HgI,BiIなど
g)a)〜f)の中から選ばれる少なくとも一種を含む複合体
CdS/TiO、CdS/AgI,AgS/AgI,CdS/ZnO,CdS/HgS,CdS/PbS,ZnO/ZnS,ZnO/ZnSe,CdS/HgS,CdS/CdSe1−x,CdS/Te1−x,CdSeCdS/Te1−x,ZnS/CdSe,ZnSe/CdSe,CdS/ZnS,TiO/Cd,CdS/CdSeCdZn1−yS,CdS/HgS/CdSなど
中でもTiOが、電解質層9への光溶解の回避と高い光電変換特性を実現できる点で好ましい。
また、TiOの複数ある結晶構造のうち光触媒活性が高いアナターゼ型がより好ましいが、高い光電変換効率を維持できるのに十分なほどアナターゼ型が含有されているなど、ルチル型との混合物もなお、より好ましい実施形態に含まれる場合もある。
半導体層3を形成する方法として、導電性基板2の凹部5を有する一面に、真空,電子ビーム蒸着,アークプラズマ蒸着などの蒸着のほかに、スパッタリングやCVD(化学気相蒸着)などによってチタンなどの層を作り、それを、ほう酸,りん酸,アジピン酸,シュウ酸などのうち少なくとも1種類以上含む中性の電解液中で陽極酸化することによっても、半導体層3を形成することができる。
また、蒸着などによってチタンなどの層を形成した後、陽極酸化に代えて熱処理を行なうことによっても、半導体層3を形成することができる。
なお、導電性基板2の材質がチタンの場合には、蒸着などによって別途チタン層を形成することなく、陽極酸化もしくは熱処理を行なうこともできる。
また、導電性基板2の凹部5を有する一面に、酸化チタンの半導体微粒子を分散させたチタニアゾルなどを塗布した後、乾燥もしくは熱処理を行なう。
塗布方法としては、ドクターブレード法,スキージ法,スピンコート法,スクリーン印刷法,バーコート法などを用いることができるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
また、酸化チタンなどの半導体微粒子も同一の粒径のものに限定されるものではなく、粒径が異なる複数の種類の半導体微粒子を組み合わせて塗布することもできる。
ただし、チタニアゾルなどを塗布する方法による場合、貫通孔6の開口部が一部半導体層に覆われてしまい、電解質イオンの拡散の低下を招き、光電変換効率の低下につながってしまうこともある。しかし、蒸着などによってチタンなどの層を形成し、次いでこの層を陽極酸化もしくは熱処理する方法による場合、導電性基板2の表面のうち、チタンなどが付着している部分にのみ半導体層3が形成されるため、貫通孔6が半導体層3で覆われてしまい、電解質イオンの拡散の低下を招くというおそれがない。
従って、陽極酸化もしくは熱処理する方法のほうが、塗布する方法よりも好ましい。
更には、導電性基板2との密着性や半導体層3内部の電気抵抗などにも鑑みると、蒸着などによってチタンなどの層を形成し、次いでこの層を陽極酸化する方法が特に好ましい。
(6)増感色素4
本発明において、半導体層3にいわゆる増感色素4と呼ばれる色素を担持させる目的は、半導体層3に太陽光を照射しても、電子が励起するバンドギャップよりも大きい光子エネルギーを持つ光は紫外線などの短波長のものに限られ、半導体層3だけでは十分な光電変換効率は得られないため、半導体層3では電子が励起しない長波長の可視光も半導体層3に担持させた増感色素4に吸収させることで増感色素4の電子も励起させ、その光子エネルギーも電気エネルギーに変換させることで光電変換効率を高くすることにある。
従って、本発明における増感色素4とは、半導体層3では吸収されない可視光域及び/又は赤外光域に吸収スペクトルを持つ色素となる。そして半導体層3との吸着性を考慮すると、カルボキシル基を有している色素が好ましく、従来の色素増感性光電変換素子で常用される色素であれば全て使用できる。
本発明における増感色素4として、例えば下記のものを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
a)無機色素
RuL(HO)タイプのルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体(以下、本発明における組成式中のLは、4,4´−ジカルボキシル−2,2´−ビピリジン)、ルテニウム−トリス(RuL)、ルテニウム−ビス(RuL)、オスニウム−トリス(OsL)、オスニウム−ビス(OsL)タイプの遷移金属錯体、亜鉛−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄−ヘキサシアニド錯体、フタロシアニンなど
b)有機色素
9−フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、テトラフェニルメタン系色素、キノン系色素、アゾ系色素、インジゴ系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素など
この中でもルテニウム−ビス(RuL)タイプの遷移金属錯体は、可視光域で広い吸収スペクトルを有し、かつ、カルボキシル基も有するため、特に好ましい。
半導体層3表面に増感色素4を担持させる方法は、例えば、増感色素4を溶かした溶液に、半導体層3を付与した導電性基板2を浸漬させる方法が挙げられる。この溶液の溶媒としては、水,アルコール,トルエン,ジメチルホルムアミドなど増感色素を溶解可能なものであれば全て使用できる。また、増感色素溶液に半導体層を付与した導電性基板を浸漬しているときに、加熱したり、超音波を印加することもできる。
増感色素溶液から半導体層3を付与した導電性基板2を取り出した後、固着していない増感色素4を取り除くために、半導体層3を付与した導電性基板3を適当な温度(例えば、室温または沸点)のアルコールで洗浄することが望ましい。
3.電解質層9
本発明における電解質層9は、液体状,ゲル状又は固体状のいずれの形態からなるものであっても構わない。
(1)液体状の電解質層
液体状の場合は、電解質と溶媒を含有している。
また、開回路電圧を向上させる目的で、4−tert−ブチルピリジンやベンズイミダゾリウム類などの添加剤を加えることもできる。
a)電解質
本発明において電解質を用いる目的は、入射光の吸収により電子が励起して酸化状態となった増感色素4を、電解質イオンが対極10から受け取った電子で還元することで、色素4の増感機能を回復させることにある。また、光電変換効率の主たるパラメーターの一つである開回路電圧にも電解質は関与している。
従って、本発明における電解質とは、適切な酸化還元電位を有し、拡散が速く、長期間安定であるものが好ましく、従来の色素増感性光電変換素子で常用される電解質であれば全て使用できる。
本発明における電解質として、例えば下記のものを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
i)I 3− /I
LiI,NaI,KI,CsI,CaIなどの金属ヨウ化物とIとの組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド,ピリジニウムヨーダイド,イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩などのヨウ化物とIとの組み合わせ
ii)Br 3− /Br
LiBr,NaBr,KBr,CsBr,CaBrなどの金属臭化物とBrとの組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムブロマイド,ピリジニウムブロマイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩などの臭化物とBrとの組み合わせ
iii)金属酸化還元系
フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩,フェロセン−フェリシニウムイオンなどの金属錯体
iv)イオウ化合物
ポリ硫化ナトリウム,アルキルチオール−アルキルジスルフィドなど
v)有機酸化還元系
ビオロゲン色素,ヒドロキノン−キノンなど
これらの中でも、LiI,ピリジニウムヨーダイド,イミダゾリウムヨーダイドとIとの組み合わせが好ましい。
b)溶媒
本発明における溶媒としては、イオン移動度を向上させるために粘度が低く、有効キャリア濃度を向上させるために誘電率が高い、優れたイオン伝導性を発現させる化合物が望ましい。
本発明における溶媒として、例えば下記のものを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
i)カーボネート化合物
エチレンカーボネート,プロピレンカーボネートなど
ii)複素環化合物
3−メチル−2−オキサゾリジノンなど
iii)エーテル化合物
ジオキサン,ジエチルエーテルなど
iv)鎖状エーテル類
エチレングリコールジアルキルエーテル,プロピレングリコールジアルキルエーテル,ポリエチレングリコールジアルキルエーテル,ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなど
v)アルコール類
メタノール,エタノール,エチレングリコールモノアルキルエーテル,プロピレングリコールモノアルキルエーテル,ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル,ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなど
vi)多価アルコール類
エチレングリコール,プロピレングリコール,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,グリセリンなど
vii)ニトリル化合物
アセトニトリル,グルタロジニトリル,メトキシアセトニトリル,プロピオニトリル,ベンゾニトリルなど
viii)ラクトン化合物
γ−ブチロラクトン,α−メチル−γ−ブチロラクトン,β−メチル−γ−ブチロラクトン,γ−バレロラクトン,3−メチル−γ−バレロラクトンなど
ix)非プロトン極性物質
ジメチルスルフォキシド,スルフォランなど
x)その他
水など
(2)ゲル状の電解質層
ゲル状の場合は、物理ゲル,化学ゲルのいずれも用いることができるが、液体状のものにゲル化剤,架橋モノマーなどを溶解させた、熱的に安定な化学ゲルのほうが好ましい。
(3)固体状の電解質層
固体状の場合は、液体状のものにポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーを添加して固体状にしたものの他に、CuI,ポリピロールなどの正孔移動物質も用いることができる。
4.対極10
本発明において対極10は、色素増感型太陽電池7としたときに正極として、すなわち、電子が励起して酸化状態となった増感色素4を還元して今度は自身が酸化状態となった電解質イオンを、外部回路を経由して到達した電子で還元することで電解質イオンの還元能を回復する機能を担っている。
そして、そのために対極10は電解質層9と隣接して配置されているわけであるが、電解質層9は腐食性が強いため、そのまま色素増感型太陽電池に用いた場合、対極に用いる材質によっては対極10が腐食してしまう。
従って、本発明における対極10としては、導電性基板,もしくは絶縁性基板であってもその表面に導電性材料からなる導電層を形成したもの、いずれかの基板において光電極1と対向させる側の表面に、電解質イオンの還元能回復を促すことで光電変換効率の向上を図る触媒機能を有し、強腐食性の電解質層またはこれに代わる正孔移動物質に対する耐食性を有した、保護層を形成したものが好ましい。
本発明における対極10として、例えば、導電性基板もしくは導電性材料としては白金,金,銀,銅,アルミニウム,マグネシウム,インジウムなどが、また保護層としてはある程度電気伝導度をもち耐食性に優れたカーボン,導電性高分子などが、それぞれ好ましい。
中でも、アルミニウム,銅などの金属基板にカーボン層を形成したものが望ましい。
導電層および保護層を形成する方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法,電子ビーム蒸着法,アークプラズマ蒸着法,スパッタリング法,CVD法,塗布法,ゾルゲル法などが挙げられる。
5.セパレータ13
色素増感型太陽電池の発電機構上、セパレータは必ずしも必須のものではないが、近年望まれているフレキシブル化のために光透過性基板にフィルムなどを用いた場合、光電極と対極が接触してショートを引き起こす可能性がある。またガラス基板でも、薄くした大面積のものを用いる場合には、たわみによってショートを引き起こす可能性がある。
従って、本発明においても、光電極1と対極10を隔離して接触によるショートを防止するために、光電極1と対極10の間にセパレータ13を配置してもかまわない(例えば、図8)。
なおその場合は、電解質層9またはこれに代わる正孔移動物質を充填させる前に、光電極1と対極10の間にセパレータ13を配置する。
本発明におけるセパレータ13として、強腐食性の電解質層9に対して耐久性を有し、かつ、光電極1と対極10との間を電解質イオンが移動可能とするために多孔性を有した、電池や電気化学キャパシターに使用されるセパレータ、例えば、樹脂フィルム,不織布,紙などの有機材料といったものなどを用いることができる。
6.色素増感型太陽電池7の作製
光透過性基板8と対極10との間に、少なくとも一方の面にその表面側部よりもその底部のほうが面積が小さい形状をした凹部5および貫通孔6を有する導電性基板2,導電性基板2の凹部5を有する一面に形成した半導体層3,および半導体層3に担持させた増感色素4からなる光電極1を、光が入射する光透過性基板8側に増感色素4を担持した半導体層3が形成されている面が向くように、配置する。そして、光透過性基板8と対極10の間に、電解質層9またはこれに代わる正孔移動物質を充填させる。電解質層9を充填させた後、電解質層9の液漏れを防ぐために、光透過性基板8、光電極1および対極10の両端部を樹脂11を用いて封止する(例えば、図6)。
また、光透過性基板8と対向させる面とは反対側の導電性基板2の面および貫通孔6の内壁に絶縁層12が形成されている光電極を用いた色素増感型太陽電池7dが好ましい(例えば、図7)。
また、光電極1の導電性基板2と対極10との間にセパレータ13を配置した色素増感型太陽電池7eでもかまわない(例えば、図8)。
また、光透過性基板は導電性を有していないものでもかまわない。
以上のようにして作製した色素増感型太陽電池7に、光透過性基板8に太陽光を当てて光を入射させると、増感色素4と半導体層3が付与された光電極1と対極10との間に、起電力が発生して発電が行なわれ、本発明にかかる光電極1を用いることによって、高い光電変換効率を得ることができる。
7.光電極1の構造の評価
(1)凹部5の構造解析
凹部5および貫通孔6を形成した後、絶縁層12もしくは半導体層3を形成する前に、カラーコンフォーカル(共焦点)顕微鏡(レーザーテック製、OPTELICSシリーズ、H1200(WIDE))を用いて、凹部5の表面側部の外接円の直径および深さを計測し、凹部径の占有率を求める。
なお、凹部5の形状が、その表面側部よりもその底部のほうが面積が小さい形状をしているのか否かの判断もここで行なう。
(2)貫通孔6の構造解析
凹部5および貫通孔6を形成した後、絶縁層12もしくは半導体層3を形成する前に、デジタルマイクロスコープ(キーエンス製、VHX−600)を用いて、貫通孔6の開口部の外接円の直径および開口部の面積を計測し、貫通孔径の占有率および開口率を求める。
なお、構造解析において、試料観察面の反対の面から光を当てときに明るくなっている部分(以下、明部)を貫通孔とする。貫通孔6は導電性基板2の表裏を貫いているのであるから、その部分に光を当てれば光が箔を通り抜けてくるため、明部を貫通孔6とし、黒くなっている暗部を貫通孔6以外の部分とするのである。よって開口率は、光を当てたときの明部と暗部の面積を比較して求める。
(3)半導体層3の同定
半導体層3を形成した後、増感色素4を担持させる前に、光電極1の半導体層3が形成された面についてX線回折を行ない、得られたスペクトルによって半導体層3の同定を行なう。
8.色素増感型太陽電池7の特性の評価
作製した色素増感型太陽電池7をポテンショスタット(北斗電工製、HAB−151)に接続して、AM1.5,100mW/cmの疑似太陽光を照射して、電流−電圧特性を計測する。得られた電流−電圧特性をもとに、開回路電圧、閉回路電流、フィルファクター(FF)、光電変換効率の各特性の初期値を求める。
なお、実施例1および2については、擬似太陽光の照射を開始してから10日後に再度同様の計測を行なって各特性を求め、初期値と比較することで電池の劣化を評価する。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.光電極の作製・その1:導電性基板への凹部および貫通孔の形成
有効電極部4cm×5cmに電気導入部として使う枝(0.5cm×2cm)をつけた厚さ50μmのアルミニウム箔を、塩酸20g/L,硝酸5g/Lを含んだ水溶液に浸漬して、対極に白金を用いて電流密度75mA/cmで5秒間アノード溶解を行ない、アルミニウム箔の表面に半球状の凹部を形成した。
次に、塩酸20g/Lを含んだ水溶液に浸漬して、対極に白金を用いて電流密度50mA/cmで10分間アノード溶解を行ない、貫通孔を形成した。
その後、0.5%の硫酸を含む溶液で6秒間洗浄して、塩化物イオンを洗い落とした。
2.光電極の作製・その2:半導体層の形成および増感色素の担持
市販のアナターゼ型チタニアゾル溶液(TiO:粒径15nm)と界面活性剤(三洋化成工業製、サンモリン11)の4%希釈液とを重量比100:7で混合した。
凹部および貫通孔を形成したアルミニウム箔を別のアルミニウム板の上に固定し、手動にてチタニアゾル−界面活性剤混合溶液をバーコートした。バーとしてはガラス棒を用いた。またスペーサーを敷設することで、混合溶液の膜の厚みが50μmとなるようにした。
その後、室温にて乾燥させ、半導体層を形成した。なお、半導体層を形成したアルミニウム箔の目付を測定し、塗布したチタニアの目付けを求めたところ約13g/mであった。
次に、この半導体層を形成したアルミニウム箔をビス(4,4′−ジカルボキシ−2,2′−ビピリジル)ジチオシアネートルテニウムのエタノール溶液に5分間浸漬して、色素を半導体層の上に吸着させた。
その後、増感色素のエタノール溶液から引き上げたアルミニウム箔をエタノールで洗浄して、室温にて乾燥させ、光電極を作製した。
3.色素増感型太陽電池の作製
n−ブチロニトリル50mLと3−メトキシプロピオニトリル50mLに、ヨウ化リチウム2水和物3.4g,ヨウ素2.6g,ヨウ化1−メチル−3−n−プロピルイミダゾリウム2.5gおよびt−ブチルピリジン1.3gを混合して、電解液を調製した。
厚さ100μm,4cm×5cmのガラス基材と、前記光電極と、対極としての厚さ30μm,4cm×5cmのカーボン層を形成したアルミニウム電極箔(日本蓄電器工業製、30CA1)を、それぞれ25μm程度の間隔をあけて重ねた。このときに半導体層がガラス基材に向くように配置して色素を吸着した半導体層が光を受けられるようにした。また光電極の電気導入部が、ガラス基材および対極より外側に出るように配置した。
調製した該電解液を3つの基材の間に注入して、中の液体が漏れないように、3つの基材の両端部を樹脂で封をして、色素増感型太陽電池セルを作製した。
1.光電極の作製・その1:導電性基板への凹部および貫通孔の形成
前記実施例1と同様にして、半球状の凹部および貫通孔を、有効電極部4cm×5cmに電気導入部として使う枝(0.5cm×2cm)をつけた厚さ50μmのアルミニウム箔に形成した。
2.光電極の作製・その2:絶縁層の形成
凹部および貫通孔を形成したアルミニウム箔の片面にアクリル板をあてて、その面に液が触れないようにクリップ等で固定したものを、5ほう酸アンモニウム0.5%の水溶液に浸漬して、対極にカーボン電極を用いて電圧50Vを30分間印加して陽極酸化を行ない、アクリル板に面していない面に絶縁層を形成した。
3.光電極の作製・その3:半導体層の形成および増感色素の担持
アクリル板から絶縁層を形成したアルミニウム箔を取り外し、アクリル板に面して絶縁層が形成されていない面に、前記実施例1と同様にして、半導体層を形成し、増感色素を担持させ、光電極を作製した。
4.色素増感型太陽電池の作製
その後、前記実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池セルを作製した。
前記実施例2の貫通孔の形成工程において、電流密度を63mA/cmにして行なったことを除いては、実施例2と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
前記実施例2の貫通孔の形成工程において、電流密度を75mA/cmにして行なったことを除いては、実施例2と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
前記実施例2の貫通孔の形成工程において、電流密度を87mA/cmにして行なったことを除いては、実施例2と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
前記実施例2の貫通孔の形成工程において、電流密度を100mA/cmにして行なったことを除いては、実施例2と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
前記実施例4の貫通孔形成後の洗浄工程において、洗浄液に含有される硫酸の濃度を2%、洗浄時間を5分にして行なったことを除いては、実施例4と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
なお、本実施例においては、2%の硫酸を含む溶液で5分洗浄することで、塩化物イオンを洗い落とすとともに貫通孔が拡大された。
前記実施例7の凹部の形成工程において、電流密度を100mA/cmにして行なったことを除いては、実施例7と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
1.光電極の作製・その1:導電性基板への凹部、貫通孔および絶縁層の形成
前記実施例8と同様にして、半球状の凹部、貫通孔および絶縁層を、有効電極部4cm×5cmに電気導入部として使う枝(0.5cm×2cm)をつけた厚さ50μmのアルミニウム箔に形成した。
2.光電極の作製・その2:半導体層の形成および増感色素の担持
アクリル板から絶縁層を形成したアルミニウム箔を取り外し、アクリル板に面して絶縁層が形成されていない面に、成膜圧力0.3Pa,基材温度25℃でチタンを真空蒸着して、チタン層を形成した。
チタン層を形成したアルミニウム箔を真空蒸着のチャンバーから取り出した後、大気中450℃で10分間熱処理を行なって、チタン層を酸化チタン半導体層に変換させた。
その後、前記実施例1と同様にして、増感色素を担持させ、光電極を作製した。
3.色素増感型太陽電池の作製
その後、前記実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池セルを作製した。
前記実施例9の半導体層の形成工程において、チタン蒸着層を形成した後、大気中での熱処理に代えて、温度75℃,リン酸5g/Lを含む水溶液に浸漬して、対極にカーボン電極を用いて電圧40Vで10分間陽極酸化を行なったことを除いては、実施例9と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
前記実施例10の凹部の形成工程において、電流密度100mA/cmで5秒間アノード溶解を行なった後に更に電流密度50mA/cmで5秒間アノード溶解を行なったことを除いては、実施例10と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
(比較例1)
1.光電極の作製
厚さ100μm,4cm×5cmのフッ素ドープ酸化スズ透明電極(FTO)の表面に成膜圧力0.3Pa,基材温度25℃でチタンを真空蒸着し、次いで大気中450℃で10分間熱処理を行なって酸化チタン半導体層を形成した。
その後、前記実施例1と同様にして、増感色素を担持させ、光電極を作製した。
2.色素増感型太陽電池の作製
前記光電極と、対極としての厚さ30μm,4cm×5cmのカーボン層を形成したアルミニウム電極箔(日本蓄電器工業製、30CA1)を25μm程度の間隔をあけて重ねた。このときに半導体層が対極に向くように配置した。
その後、前記実施例1と同様にして調製した電解液を2つの基材の間に注入して、中の液体が漏れないように、2つの基材の両端部を樹脂で封をして、色素増感型太陽電池セルを作製した。
(比較例2)
1.光電極の作製・その1:導電性基板への絶縁層の形成
前記実施例2の絶縁層の形成工程において、絶縁層を形成する基材として、凹部および貫通孔を形成したアルミニウム箔に代えて有効電極部4cm×5cmに電気導入部として使う枝(0.5cm×2cm)をつけた厚さ50μmのアルミニウム箔を用いたことを除いては、実施例2と同様にして導電性基板に絶縁層を形成した。
2.光電極の作製・その2:半導体層の形成および増感色素の担持
前記実施例10と同様にして、半導体層を形成し、増感色素を担持させ、光電極を作製した。
3.色素増感型太陽電池の作製
前記光電極と、対極としての厚さ100μm,4cm×5cmのフッ素ドープ酸化スズ透明電極(FTO)を25μm程度の間隔をあけて重ねた。このときに半導体層が対極である透明電極に向くように配置して、色素を吸着した半導体層が光を受けられるようにした。また、光電極の電気導入部が対極と接触することなく対極より外側に出るように配置した。
前記実施例1と同様にして調製した電解液を2つの基材の間に注入して、中の液体が漏れないように、2つの基材の両端部を樹脂で封をして、色素増感型太陽電池セルを作製した。
(比較例3)
前記比較例2において、絶縁層を形成する前に前記実施例8と同様にして半球状の凹部を形成したことを除いては、比較例2と同様にして、色素増感型太陽電池セルを作製した。
(比較例4)
1.光電極の作製
前記比較例3の光電極の作製工程において、半球状の凹部の形成に代えて、前記実施例4と同様にして貫通孔を形成したことを除いては、比較例3と同様にして、光電極を作製した。
2.色素増感型太陽電池の作製
その後、前記実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池セルを作製した。
(比較例5)
前記比較例4において、貫通孔を形成する前に、塩酸20g/L,硝酸10g/L,りん酸3g/L含んだ水溶液に浸漬して、対極に白金を用いて電流密度100mA/cmで12秒間アノード溶解を行ない、アルミニウム箔の表面に底部が圧延面と平行な立方体状の凹部を形成したことを除いては、比較例4と同様にして、色素増感型太陽電池セルを作製した。
なお、本比較例における立方体状の凹部について、その凹部径の占有率は75%であった。
以上の実施例および比較例について、光電極の構造を表1に、色素増感型太陽電池の構造を表2に、色素増感型太陽電池の特性の初期値を表3に、作製後10日での電池の劣化の評価を表4に、それぞれまとめた。
なお、表2において「入射光」の欄に「○」が付いている側から、太陽光を照射するものとする。また「FTO」については1枚で、光電極の導電性基板もしくは対極と、光透過性基板の両方の機能を兼ねている。
Figure 0006172562
Figure 0006172562
Figure 0006172562
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以上の結果より、光電極の導電性基板として、貫通孔のみ形成したものよりも、半導体層を形成する面にその表面側部よりもその底部のほうが面積が小さい形状をした凹部も形成したほうが好ましく、従来の電極構造の色素増感型太陽電池よりすぐれた光電変換効率を得られることが確認された(実施例10および比較例1〜5参照)。
また、導電性基板の半導体層が形成されていない面および前記貫通孔の内壁に絶縁層が形成されていること(実施例1〜2参照)、貫通孔の開口部の総面積が導電性基板の投影面積の20〜50%であること(実施例2〜6参照)、貫通孔のうち70%以上の貫通孔が、その開口部の外接円の直径が0.2〜20μmであること(実施例4および7参照)、その表面側部よりもその底部のほうが面積が小さい形状をした凹部のうち70%以上の凹部が、その表面側部の外接円の直径が1.0〜50μmであり、その深さが1.0〜50μmであること(実施例7〜8参照)、半導体層である酸化チタンを、チタンを蒸着又はスパッタリングによって付与した後、陽極酸化によって形成すること(実施例8〜10参照)、および、表面側部よりも底部のほうが面積が小さい形状の凹部を形成した後に、さらに直前に形成した凹部の表面側部よりもその表面側部の面積が小さく、かつ底部がその表面側部よりも面積が小さくなる凹部を順次形成すること(実施例10〜11参照)が、それぞれ好ましいことが確認された。
本発明は、色素増感型太陽電池およびその電極に用いることができる。
1、1a、1b、1c、 光電極
2 導電性基板
3 半導体層
4 増感色素
5、5a、5b 凹部
6 貫通孔
7、7d、7e 色素増感型太陽電池
8 光透過性基板
9 電解質層
10 対極
11 樹脂
12 絶縁層
13 セパレータ
14 負荷
A 表面側部
B 底部

Claims (13)

  1. 貫通孔を有する導電性基板と、半導体層と、該半導体層に担持させた増感色素からなる色素増感型太陽電池用電極において、凹部を該導電性基板の少なくとも一方の面に形成し、該凹部の表面側部よりも底部のほうが面積が小さく、該導電性基板の該凹部を有する一面に該半導体層を形成したことを特徴とする、色素増感型太陽電池用電極。
  2. 前記導電性基板の前記半導体層が形成されていない面および前記貫通孔の内壁に絶縁層が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  3. 前記貫通孔の、前記導電性基板の前記半導体層が形成されている一方の面における、開口部の総面積が前記導電性基板の投影面積の20〜50%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  4. 前記貫通孔のうち70%以上の貫通孔が、前記貫通孔の、前記導電性基板の前記半導体層が形成されている一方の面における、開口部の外接円の直径が0.2〜20μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池用
    電極。
  5. 前記凹部のうち70%以上の凹部が、その表面側部の外接円の直径が1.0〜50μmであり、その深さが1.0〜50μmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  6. 前記導電性基板が弁金属を含有するものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  7. 前記貫通孔及び/又は前記凹部を、塩化物イオンを合む電解液中でのアノード溶解によって形成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  8. 前記絶縁層を陽極酸化によって形成することを特徴とする、請求項2に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  9. 前記半導体層が酸化チタンからなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  10. 酸化チタンからなる半導体層を形成する工程において、チタンを前記導電性基板の前記凹部を有する一面に蒸着又はスパッタリングによって付与することを特徴とする、請求項9に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  11. 前記半導体層である酸化チタンを陽極酸化によって形成することを特徴とする、請求項9又は10に記載の色素増感型太陽電池用電極。
  12. 光透過性基板と対極との間に、請求項1〜11のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池用電極を、増感色素を担持させた半導体層が形成されている面を該光透過性基板の側に向けて配置し、該光透過性基板と該対極の間を電解質層で充填した、色素増感型太陽電池。
  13. 前記光透過性基板が導電性を有しない、又は、該光透過性基板に導電性の物質を付与しないことを特徴とする、請求項12に記載の色素増感型太陽電池。
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