JP6050247B2 - 湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュール - Google Patents

湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュール Download PDF

Info

Publication number
JP6050247B2
JP6050247B2 JP2013545878A JP2013545878A JP6050247B2 JP 6050247 B2 JP6050247 B2 JP 6050247B2 JP 2013545878 A JP2013545878 A JP 2013545878A JP 2013545878 A JP2013545878 A JP 2013545878A JP 6050247 B2 JP6050247 B2 JP 6050247B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solar cell
wet solar
layer
conductive layer
photoelectric conversion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013545878A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2013077209A1 (ja
Inventor
福井 篤
篤 福井
古宮 良一
良一 古宮
山中 良亮
良亮 山中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Publication of JPWO2013077209A1 publication Critical patent/JPWO2013077209A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6050247B2 publication Critical patent/JP6050247B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01GCAPACITORS; CAPACITORS, RECTIFIERS, DETECTORS, SWITCHING DEVICES, LIGHT-SENSITIVE OR TEMPERATURE-SENSITIVE DEVICES OF THE ELECTROLYTIC TYPE
    • H01G9/00Electrolytic capacitors, rectifiers, detectors, switching devices, light-sensitive or temperature-sensitive devices; Processes of their manufacture
    • H01G9/20Light-sensitive devices
    • H01G9/2068Panels or arrays of photoelectrochemical cells, e.g. photovoltaic modules based on photoelectrochemical cells
    • H01G9/2077Sealing arrangements, e.g. to prevent the leakage of the electrolyte
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01GCAPACITORS; CAPACITORS, RECTIFIERS, DETECTORS, SWITCHING DEVICES, LIGHT-SENSITIVE OR TEMPERATURE-SENSITIVE DEVICES OF THE ELECTROLYTIC TYPE
    • H01G9/00Electrolytic capacitors, rectifiers, detectors, switching devices, light-sensitive or temperature-sensitive devices; Processes of their manufacture
    • H01G9/20Light-sensitive devices
    • H01G9/2068Panels or arrays of photoelectrochemical cells, e.g. photovoltaic modules based on photoelectrochemical cells
    • H01G9/2081Serial interconnection of cells
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01GCAPACITORS; CAPACITORS, RECTIFIERS, DETECTORS, SWITCHING DEVICES, LIGHT-SENSITIVE OR TEMPERATURE-SENSITIVE DEVICES OF THE ELECTROLYTIC TYPE
    • H01G9/00Electrolytic capacitors, rectifiers, detectors, switching devices, light-sensitive or temperature-sensitive devices; Processes of their manufacture
    • H01G9/20Light-sensitive devices
    • H01G9/2022Light-sensitive devices characterized by he counter electrode
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01GCAPACITORS; CAPACITORS, RECTIFIERS, DETECTORS, SWITCHING DEVICES, LIGHT-SENSITIVE OR TEMPERATURE-SENSITIVE DEVICES OF THE ELECTROLYTIC TYPE
    • H01G9/00Electrolytic capacitors, rectifiers, detectors, switching devices, light-sensitive or temperature-sensitive devices; Processes of their manufacture
    • H01G9/20Light-sensitive devices
    • H01G9/2027Light-sensitive devices comprising an oxide semiconductor electrode
    • H01G9/2031Light-sensitive devices comprising an oxide semiconductor electrode comprising titanium oxide, e.g. TiO2
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01GCAPACITORS; CAPACITORS, RECTIFIERS, DETECTORS, SWITCHING DEVICES, LIGHT-SENSITIVE OR TEMPERATURE-SENSITIVE DEVICES OF THE ELECTROLYTIC TYPE
    • H01G9/00Electrolytic capacitors, rectifiers, detectors, switching devices, light-sensitive or temperature-sensitive devices; Processes of their manufacture
    • H01G9/20Light-sensitive devices
    • H01G9/2059Light-sensitive devices comprising an organic dye as the active light absorbing material, e.g. adsorbed on an electrode or dissolved in solution
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E10/00Energy generation through renewable energy sources
    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy
    • Y02E10/542Dye sensitized solar cells

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Power Engineering (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • Microelectronics & Electronic Packaging (AREA)
  • Photovoltaic Devices (AREA)
  • Hybrid Cells (AREA)

Description

本発明は、湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュールに関する。
化石燃料に代わるエネルギー源として、太陽光エネルギーを電力エネルギーに変換する太陽電池が注目されている。現在、結晶系シリコン基板を用いた太陽電池および薄膜シリコン太陽電池などが実用化されている。しかし、前者の太陽電池には、シリコン基板の製造コストが高いという問題がある。後者の薄膜シリコン太陽電池には、多種の半導体製造用ガスおよび複雑な装置を用いる必要があるために製造コストが高くなるという問題がある。このため、いずれの太陽電池にも、光電変換の高効率化による発電出力当たりのコストを低減する努力が続けられているが、上記の問題を解決するには至っていない。
特許文献1(特開平01−220380号公報)では、新しいタイプの太陽電池として、金属錯体の光誘起電子移動を応用した湿式太陽電池が提案されている。この湿式太陽電池では、増感色素を吸着させて可視光領域に吸収スペクトルをもたせた光電変換材料と電解質材料とからなる光電変換層が2枚の電極の間に挟持されており、電極のそれぞれはガラス基板の表面に透明導電膜が形成されて構成されている。
上記湿式太陽電池に光が照射されると、光電変換層で電子が発生し、発生した電子が外部電気回路を通って電極に移動し、移動した電子が電解質中のイオンにより対向する電極に運ばれて光電変換層に戻る。このような一連の電子の流れにより、電気エネルギーが取り出される。
上述のように、特許文献1に記載の湿式太陽電池の基本構造は、対向する透明導電膜付きガラス基板の間に電解液を注入した形態である。そのため、小面積の上記湿式太陽電池の試作は可能であっても、特許文献1に記載の湿式太陽電池を1m角のような大面積の太陽電池へ適用することは困難である。つまり、1つの太陽電池セルの面積を大きくすると、発生電流は面積に比例するので増加するが、電極部分に用いる透明導電膜の面内方向の電圧降下が増大し、ひいては太陽電池としての内部直列抵抗が増大する。その結果、光電変換時の電流電圧特性におけるFF(曲線因子)が低下し、さらには短絡電流が低下し、光電変換効率が低下するという問題が起こる。
特許文献2(国際公開第1997/016838号)および特許文献3(特開2002−367686号公報)には、複数の太陽電池が1枚の透明導電膜付きガラス基板上で直列接続されて構成された色素増感型太陽電池モジュールが提案されている。この色素増感型太陽電池モジュールでは、透明導電膜(電極)が短冊形にパターニングされた透明基板(ガラス基板)上に個々の太陽電池が配置されており、個々の太陽電池では、光電変換層となる多孔性半導体層(多孔質酸化チタン層)、多孔性絶縁層(中間多孔性絶縁層)、および対極(触媒層)が順次積層されている。このような色素増感型太陽電池モジュールでは、隣り合う太陽電池のうち一方の太陽電池の透明導電膜と他方の太陽電池の対極とが接触しており、これにより一方の太陽電池と他方の太陽電池とが直列接続されている。
特開平01−220380号公報 国際公開第1997/016838号 特開2002−367686号公報
ところで、色素増感型太陽電池(湿式太陽電池)には、光、熱、または湿度などといった外的環境因子によって耐久性が低下するという課題がある。これにより、逆電流の増加が原因と推測される、光電変換効率の低下が認められる。特に、モノリシック型の湿式太陽電池(湿式太陽電池モジュール)では、熱ストレスを加えた場合に、逆電流の増加が原因と見られる性能劣化が顕著となる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、逆電流の増加が抑制され、よって、光電変換効率が向上した湿式太陽電池を提供することである。
本発明に係る湿式太陽電池は、光透過性の材料からなる支持体と光電変換素子とを備える。光電変換素子は、支持体上に順に設けられた導電層、多孔性半導体層を含む光電変換層、多孔性絶縁層、および対極導電層を有する。このような湿式太陽電池には、光電変換層が導電層上に設けられた第1の領域と、光電変換層が導電層上に設けられていない第2の領域とが、導電層が支持体上に設けられることなく構成されたスクライブライン部を挟んで存在している。対極導電層は第1の領域からスクライブライン部を跨いで第2の領域へ延びており、スクライブライン部のライン幅は70μm以上である。
スクライブライン部のライン幅は、500μm以下であることが好ましい。
スクライブライン部の少なくとも一部は、多孔性絶縁層の空隙に存在する電解液に接していることが好ましい。
多孔性絶縁層は、スクライブライン部上に設けられていることが好ましい。
多孔性絶縁層の細孔径が50μm以上であることが好ましい。
多孔性絶縁層は、酸化ジルコニウム、および平均粒径が100nm以上の酸化チタンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
多孔性半導体層は、平均粒径が100nm以下の酸化チタンを含むことが好ましい。
本発明に係る湿式太陽電池モジュールは、2つ以上の湿式太陽電池が直列接続されて構成されている。湿式太陽電池の少なくとも1つは、本発明に係る湿式太陽電池が備える光電変換素子を備え、湿式太陽電池が有する光電変換素子は、一枚の支持体上に設けられている。隣り合う湿式太陽電池のうちの一方の湿式太陽電池の導電層は、他方の湿式太陽電池の対極導電層に電気的に接続されている。一方の湿式太陽電池と他方の湿式太陽電池との間には、当該一方の湿式太陽電池に含まれる電解液が当該他方の湿式太陽電池へ移動することを防止する絶縁部材が設けられている。
絶縁部材は、スクライブライン部に直接接していないことが好ましい。ここで、「絶縁部材がスクライブライン部に直接接していない」は、絶縁部材とスクライブライン部との接触点が存在しないことを意味する。そのため、「絶縁部材がスクライブライン部に直接接していない」には、絶縁部材がスクライブライン部以外の部材を介してスクライブラインに接続されることは含まれる。
本発明に係る湿式太陽電池では、熱などの外的環境因子による耐久性の低下を防止できるので、光電変換効率が向上する。
本発明の一実施形態に係る湿式太陽電池の概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る湿式太陽電池モジュールの概略断面図である。 サンドイッチセルに対する変換効率の保持率(%)の時間変化の結果を示すグラフである。
以下、本発明の湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュールについて図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
<湿式太陽電池の構成>
図1は、本発明に係る湿式太陽電池10の概略断面図である。本発明に係る湿式太陽電池10では、支持体1の上に導電層2と光電変換層4と多孔性絶縁層5と対極導電層6とキャリア輸送層とが順に設けられており、本発明では、導電層2と光電変換層4と多孔性絶縁層5と対極導電層6とキャリア輸送層とで光電変換素子が構成されている。キャリア輸送層は、カバー層7および絶縁部材8により封止されていることが好ましい。
本発明に係る湿式太陽電池10には、光電変換層4が導電層2の上に設けられた第1の領域と光電変換層4が導電層2の上に設けられていない第2の領域とが存在し、第1の領域と第2の領域とはスクライブライン部3を挟んで存在する。なお、スクライブライン部3は、導電層2が支持体1上に設けられることなく構成されている。
対極導電層6は、第1の領域からスクライブライン部3を跨いで第2の領域へ延びている。そのため、多孔性絶縁層5上に設けられた対極導電層6を第2の領域における導電層2に電気的に接続(たとえば接触)させることが出来る。よって、第2の領域における導電層2上に光電変換層4、多孔性絶縁層5、対極導電層6、およびキャリア輸送層を順に形成すれば、後述の湿式太陽電池モジュール20を製造することができる。
対極導電層6を上記のように形成するためには、スクライブライン部3上には光電変換層4を介することなく多孔性絶縁層5が設けられていることが好ましい。スクライブライン部上に光電変換層を介して多孔性絶縁層が形成されると、光電変換層により導電層2と対極導電層6との短絡が起こりやすくなり、湿式太陽電池の出力が低下する場合がある。また、スクライブライン部上に多孔性絶縁層が設けられていなければ、対極導電層と第1の領域における導電層との接触により短絡が起こりやすくなるため、湿式太陽電池の性能の低下を招くことがある。
本発明に係る湿式太陽電池10では、スクライブライン部3のライン幅Dは70μm以上である。通常、スクライブライン部は、生産のタクトの観点から、一度の加工により形成されることが好ましい。透明導電層付きガラス板を有する他の太陽電池(たとえばシリコン薄膜太陽電池またはCIGS太陽電池など)においても、一度の加工によりスクライブライン部を形成する、または短絡による歩留まり低下を抑制するために間隔を空けて平行に数本のスクライブライン部を形成する。これにより、通常の短絡は十分に抑制することができる。なお、従来のスクライブライン部のライン幅は50μm程度である。
ところで、スクライブライン部のライン幅が50μm程度である2つ以上の湿式太陽電池を1つの基板上で直列接続してモノリシック型湿式太陽電池(本発明に係る湿式太陽電池モジュール)を製造し、得られたモノリシック型湿式太陽電池に対して例えば85℃の耐熱性試験(熱ストレスの付加)を行うと、間隔を空けて平行に複数本のスクライブライン部を形成した場合であっても、モノリシック型湿式太陽電池の光電変換効率が顕著に低下する。その原因は定かではないが、スクライブライン部により区切られた領域間の逆電流の増加が原因と考えられる。
そこで、本発明では、スクライブライン部3のライン幅Dを70μm以上とし、スクライブライン部3により区切られた領域間の逆電流の増加を抑制し、熱などの外的環境因子による光電変換効率の低下を抑制できる。以下、湿式太陽電池10の構成を示す。
<支持体>
支持体1を構成する材料は、一般に湿式太陽電池の支持体に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。しかし、支持体1は、湿式太陽電池10の受光面となる部分では光透過性を必要とするため、光透過性の材料からなることが好ましい。たとえば、支持体1は、ソーダガラス、溶融石英ガラス、または結晶石英ガラスなどのガラス基板であれば良く、可撓性フィルムなどの耐熱性樹脂板であっても良い。ただし、支持体1は、受光面として使用される場合であっても、少なくとも後述の増感色素に実効的な感度を有する波長の光を実質的に透過する(当該光の透過率がたとえば80%以上、好ましくは90%以上)ものであれば良く、必ずしも全ての波長の光に対して透過性を有する必要はない。
可撓性フィルム(以下、「フィルム」ともいう)を構成する材料としては、たとえばテトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、フェノキシ樹脂、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
加熱を伴って支持体1上に他の層を形成する場合、たとえば250℃程度の加熱を伴って支持体1上に多孔性半導体層を形成する場合には、上記のフィルムを構成する材料の中でも250℃以上の耐熱性を有するポリテトラフルオロエチレンを用いることが特に好ましい。
完成した湿式太陽電池10を他の構造体に取り付けるときに、支持体1を利用できる。すなわち、金属加工部品とねじとを用いて、ガラス基板などの支持体1の周辺部を他の支持体に容易に取り付けることができる。
支持体1の厚みは特に限定されないが、光透過性などを考慮すれば0.2mm〜5mm程度であることが好ましい。
<導電層>
導電層2を構成する材料は、一般に湿式太陽電池の導電層に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。しかし、導電層2は、湿式太陽電池10の受光面となるため、光透過性を必要とし、よって光透過性の材料からなることが好ましい。たとえば、導電層2は、インジウム錫複合酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、または酸化亜鉛(ZnO)などからなることが好ましい。ただし、導電層2は、支持体1と同じく、少なくとも後述の増感色素に実効的な感度を有する波長の光を実質的に透過する(当該光の透過率がたとえば80%以上、好ましくは90%以上)ものであれば良く、必ずしも全ての波長の光に対して透過性を有する必要はない。
導電層2の膜厚は、特に限定されないが、0.02〜5μm程度であることが好ましい。導電層2の膜抵抗は、低いほど好ましく、40Ω/sq以下であることが好ましい。
導電層2には、低抵抗化のために金属リード線が設けられていても良い。金属リード線の材料としては、たとえば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、またはチタンなどが挙げられる。金属リード線の太さは特に限定されないが、金属リード線が太すぎると受光面からの入射光量の低下を招くおそれがある。そのため、金属リード線の太さは0.1〜4mm程度であれば好ましい。
本発明では、支持体1に導電層2が積層された構造体を透明電極基板11と記すことがある。このような透明電極基板11としては、たとえばソーダ石灰フロートガラスからなる支持体1上にFTOからなる導電層2が積層された透明電極基板が挙げられ、本発明において好適に用いられる。
<スクライブライン部>
スクライブライン部3のライン幅Dは70μm以上であり、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは200μm以上である。スクライブライン部3のライン幅Dが大きくなればなるほど、スクライブライン部3により区切られた領域間の熱などによる逆電流の増加を抑制できるため、熱などの外的環境因子による光電変換効率の低下を抑制できる。しかし、スクライブライン部3のライン幅Dは500μm以下であることが好ましい。スクライブライン部3のライン幅Dが500μmを超えると、光電変換層4などの縮小化(受光面積率の低下)を招くため、光電変換効率の低下を招くことがあるからである。
スクライブライン部3の一部(好ましくはスクライブライン部3の全体)は、多孔性絶縁層5の空隙に存在する電解液に接していることが好ましい。この場合、本発明の効果が顕著に現れる。ここで、電解液は後述のキャリア輸送材料の一例であり、その組成などは以下で示すとおりである。
スクライブライン部3の形成方法は、特に限定されない。たとえば、導電層2を支持体1の上面全体に形成してから、レーザースクライブ法などにより導電層2のうちスクライブライン部3となる部分を除去しても良い。または、支持体1の上面のうちスクライブライン部3となる部分にマスクなどを設けてから、支持体1の上面のうちマスクなどが設けられていない部分に導電層2を形成し、その後、そのマスクを除去しても良い。
<光電変換層>
光電変換層4は、多孔性半導体層に、増感色素または量子ドットなどが吸着され、且つキャリア輸送材料が充填されて構成されている。
−多孔性半導体層−
多孔性半導体層の形態としては、バルク状、粒子状の半導体材料を含む層、および多数の微細孔が形成された膜状などが挙げられるが、多数の微細孔が形成された膜状であることが好ましい。これにより、増感色素の吸着量およびキャリア輸送材料の充填量などを十分に確保することができる。
多孔性半導体層の多孔性とは、空孔率が20%以上であることを言い、比表面積が0.5〜300m2/gであることを言う。増感色素の吸着量などを十分に確保するという観点では、多孔性半導体層の比表面積は10〜200m2/g程度であることが好ましい。ここで、多孔性半導体層の空孔率は、多孔性半導体層の厚さ(膜厚)、多孔性半導体層の質量、および半導体微粒子の密度から計算によって求められる。多孔性半導体層の比表面積は、気体吸着法であるBET法によって求められる。
多孔性半導体層を構成する半導体材料としては、一般に光電変換材料に使用されるものであれば特に限定されない。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化ニッケル、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、硫化鉛、硫化亜鉛、リン化インジウム、銅−インジウム硫化物(CuInS2)、CuAlO2、またはSrCu22などの化合物が挙げられる。これらの化合物を単独で用いても良いし、これらの化合物を組み合せて用いても良い。これらの化合物の中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、または酸化ニオブを用いることが好ましい。光電変換効率、安定性、および安全性の点では、酸化チタンを用いることが好ましい。
本発明において、多孔性半導体層を構成する材料として酸化チタンを用いる場合、酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、またはオルソチタン酸などの各種の狭義の酸化チタンであっても良いし、水酸化チタンであっても良いし、含水酸化チタンであっても良い。これらを単独で用いても良いし、混合して用いても良い。アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとについては、製法または熱履歴によりどちらの形態にもなり得るが、アナターゼ型酸化チタンが一般的である。
半導体材料の平均粒径は、特に限定されず、光電変換層4の光散乱性が半導体材料の平均粒径により調整可能であることを考慮して適宜設定すれば良い。具体的には、光電変換層4の形成条件などによるため一概には言えないが、光電変換層4が平均粒径の大きい半導体材料で形成された多孔性半導体層を含む場合には、当該光電変換層4は、光散乱性に優れるため、入射光を散乱させて光捕捉率の向上に寄与する。一方、光電変換層4が平均粒径の小さい半導体材料で形成された多孔性半導体層を含む場合には、当該光電変換層4は、光散乱性に優れないが、増感色素の吸着点を増加させるため、吸着量の増加に寄与する。多孔性半導体層は、平均粒径が略同一の半導体材料からなる単層であっても良いが、平均粒径の比較的小さな半導体材料からなる層と平均粒径の比較的大きな半導体材料からなる層とが積層されて構成されていても良い。平均粒径の比較的小さな半導体材料は、5nm以上50nm未満の平均粒径を有していれば良く、10nm以上30nm以下の平均粒径を有していることが好ましい。これにより、投影面積に対して十分に大きい実効表面積が得られるので、入射光を高い収率で電気エネルギーに変換できるという効果も得られる。平均粒径の比較的大きな半導体材料は、50nm以上の平均粒径を有していれば良く、50nm以上600nm以下の平均粒径を有していることが好ましく、50nm以上100nm以下の平均粒径を有していることがより好ましい。なお、入射光を光電変換に有効利用するという点では、市販の半導体材料のように半導体材料の平均粒径はある程度揃っていることが好ましい。
以上のことから、光電変換効率、安定性、安全性、および光散乱性の向上という観点からは、半導体材料は、平均粒径が50nm以上の酸化チタンであることが好ましく、平均粒径が50nm以上100nm以下の酸化チタンであることがより好ましい。また、詳細は不明であるが、本発明における熱などの外的因子による光電変換効率の低下の抑制は、半導体材料として酸化チタンとは異なる酸化物を用いた場合よりも、半導体材料として酸化チタンを用いた場合に、特に顕著に現れる。
ここで、本明細書では、平均粒径は、XRD(X線回折)の回折ピークから求めた値である。具体的には、XRDのθ/2θ測定における回折角の半値幅とシェラーの式とから、平均粒径を求める。たとえば半導体材料がアナターゼ型酸化チタンである場合、(101)面に対応する回折ピーク(2θ=25.3°付近)の半値幅を測定すればよい。
光電変換層(多孔性半導体層)4の膜厚は、特に限定されないが、光電変換効率の観点から、0.5〜50μm程度であることが好ましい。特に、光電変換層4は、平均粒径が50nm以上の半導体材料からなる多孔性半導体層を備えている場合には、好ましくは0.1〜40μmの膜厚を有し、より好ましくは5〜20μmの膜厚を有する。光電変換層4は、平均粒径が5nm以上50nm未満の半導体材料からなる多孔性半導体層を備えている場合には、好ましくは0.1〜50μmの膜厚を有し、より好ましくは10〜40μmの膜厚を有する。
多孔性半導体層からなる光電変換層と対極導電層との間に絶縁層を設けることが一般的である。しかし、たとえば特開2007−194039号公報に開示されているように、平均粒径の大きい(平均粒径が100nm〜500nm程度)半導体材料からなる多孔性半導体層を含む光電変換層上に対極導電層または導電層(単層)を形成しても良い。ところが、光電変換層のうち対極導電層と接触する部分を構成する半導体材料の平均粒径が大きいと、光電変換層の機械的強度の低下を招き、よって、湿式太陽電池の構造として問題が起こる場合がある。このような場合には、平均粒径の大きい半導体材料に平均粒径の小さい半導体材料を配合して、たとえば平均粒径の小さい半導体材料を材料全体の10質量%以下の割合で配合して、光電変換層の機械的強度の強化を図っても良い。
−増感色素−
多孔性半導体層に吸着して光増感剤として機能する色素としては、可視光領域および赤外光領域の少なくとも一方の領域に吸収をもつ有機色素または金属錯体色素などが挙げられる。これらの色素を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
有機色素は、たとえばアゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、フタロシアニン系色素、またはナフタロシアニン系色素などである。有機色素の吸光係数は、一般的に、金属錯体色素の吸光係数よりも大きい。
金属錯体色素は、遷移金属に分子(配位子)が配位結合されて構成されている。遷移金属は、たとえばCu、Ni、Fe、Co、V、Sn、Si、Ti、Ge、Cr、Zn、Ru、Mg、Al、Pb、Mn、In、Mo、Y、Zr、Nb、Sb、La、W、Pt、Ta、Ir、Pd、Os、Ga、Tb、Eu、Rb、Bi、Se、As、Sc、Ag、Cd、Hf、Re、Au、Ac、Tc、Te、またはRhなどである。金属錯体色素としてはフタロシアニン系金属錯体色素またはルテニウム系金属錯体色素が挙げられ、ルテニウム系金属錯体色素が好ましく、下記化学式(1)〜(3)で表されるルテニウム系金属錯体色素がさらに好ましい。
Figure 0006050247
Figure 0006050247
Figure 0006050247
多孔性半導体層に増感色素を強固に吸着させるためには、増感色素が分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、またはホスホニル基などのインターロック基を有することが好ましく、カルボン酸基またはカルボン酸無水基を有することがより好ましい。ここで、インターロック基は、増感色素の励起状態と半導体材料の伝導帯との間の電子の移動を容易にする電気的結合を提供する。
多孔性半導体層に吸着して光増感剤として機能する量子ドットとしては、CdS、CdSe、PbS、またはPbSeなどが挙げられる。
このような増感色素の吸着量は、1×10-8mol/cm2以上1×10-6mol/cm2以下であれば良く、5×10-8mol/cm2以上5×10-7mol/cm2以下であることが好ましい。増感色素の吸着量が1×10-8mol/cm2未満であれば、光電変換効率の低下を招くおそれがある。一方、増感色素の吸着量が1×10-6mol/cm2を超えると、開放電圧が低下するという不具合を招くことがある。
多孔性半導体層に増感色素を吸着させる方法としては、たとえば増感色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に多孔性半導体層を浸漬させる方法が代表的なものとして挙げられる。このとき、色素吸着用溶液を多孔性半導体層の微細孔の奥部まで浸透させるという点において、色素吸着用溶液を加熱することが好ましい。
多孔性半導体層に充填されたキャリア輸送材料については、後述の<キャリア輸送層>で記すとおりである。
<多孔性絶縁層>
湿式太陽電池において、光電変換層4と対極導電層6との間に多孔性絶縁層5を設けることが一般的である。ここで、多孔性絶縁層5の多孔性とは、空孔率が10%以上であることを言い、比表面積が0.5〜300m2/gであることを言う。このような多孔性絶縁層5の細孔径は20μm以上であれば良く、50μm以上500μm以下であることが好ましい。別の言い方をすると、多孔性絶縁層5は、平均粒径が5〜500nmの粒子からなれば良く、平均粒径が10〜300nmの粒子からなることが好ましい。これにより、多孔性絶縁層5がキャリア輸送材料を保持でき、また多孔性絶縁層5の空隙におけるキャリアの移動が容易となる。なお、多孔性絶縁層5の細孔径は、たとえばBET法にしたがって測定される。多孔性絶縁層5の空孔率および多孔性絶縁層5を構成する粒子の平均粒径の各測定方法としては上記<光電変換層>で記した方法を用いることができる。
多孔性絶縁層5の材料は特に限定されず、ガラスであっても良いし、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、またはチタン酸ストロンチウムなどの伝導帯準位の高い絶縁材料であっても良い。好ましくは、多孔性絶縁層5が酸化ジルコニウムおよび平均粒径が100nm以上の酸化チタンの少なくとも一方を含むことである。これにより、正極と負極との短絡を防止でき、湿式太陽電池の性能が向上する。
多孔性絶縁層5の膜厚は、特に限定されないが、正極と負極との電気的絶縁という観点から0.5μm以上30μm以下であれば良く、好ましくは1μm以上15μm以下である。
<対極導電層>
本発明では、触媒能を有し且つキャリア輸送層中の正孔を還元する働きを有する触媒層と、電子を収集し且つ隣り合う湿式太陽電池との直列接続を可能とする導電層とを合わせて、対極導電層6と呼ぶ。そのため、対極導電層6は、触媒層と導電層とが積層されて構成されていても良いし、高い導電性を有する触媒層(単層)であっても良いし、触媒能を有する導電層(単層)であっても良い。また、本発明には、対極導電層6とは別に触媒層を更に設ける態様も含まれる。
対極導電層6が触媒層と導電層との積層構造を有する場合、通常、多孔性絶縁層5上に触媒層を形成し、その触媒層上に導電層を形成する。ただし、蒸着法により触媒層(白金層など)を形成した場合のように形成された触媒層の膜強度がそれほど強くない場合には、多孔性絶縁層上に形成された触媒層上に導電層を形成すると、導電層が触媒層から剥離することがある。この場合には、多孔性絶縁層5上に導電層を設け、その導電層上に触媒層を設ければ良い。
対極導電層6の導電層を構成する材料は、特に限定されず、一般に湿式太陽電池の導電層に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば良い。導電層の材料は、たとえばインジウムと錫との複合酸化物(ITO)、フッ素がドープされた酸化錫(FTO)、または酸化亜鉛(ZnO)などの金属酸化物であっても良いし、チタン、タングステン、金、銀、銅、またはニッケルなどの金属材料であっても良い。導電層の膜強度を考慮すると、導電層を構成する材料はチタンであることが最も好ましい。
蒸着法により対極導電層6の導電層を形成すると、導電層自体が多孔質になるため、色素溶液またはキャリア輸送材料などが移動するための孔を導電層に別途、形成しなくても良い。蒸着法により対極導電層6の導電層を形成した場合、導電層に自動的に形成される孔の孔径は約1nm〜20nmである。この導電層上に触媒層を形成しても、触媒層を構成する材料が導電層に形成された孔の内部を通って多孔性絶縁層5、さらには多孔性半導体層(光電変換層4)に到達するおそれがないことを確認している。
一方、白金またはカーボンからなる微粒子分散ペーストを用いて塗布法により対極導電層6の触媒層を形成する場合には、触媒層を構成する微粒子が対極導電層6の導電層を貫通するおそれがある。この場合には、対極導電層6の導電層は緻密な層であることが好ましく、対極導電層6の触媒層を形成してから、対極導電層6の導電層と対極導電層6の触媒層とに対して孔を同時に形成すれば良い。このような場合には、対極導電層6の導電層の材料は、たとえばインジウムと錫との複合酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、または酸化亜鉛(ZnO)などの金属酸化物であれば良く、チタン、タングステン、金、銀、銅、またはニッケルなどの金属材料であれば良い。
対極導電層6に孔を意図的に形成する場合、たとえばレーザー光を照射して対極導電層6を部分的に蒸発させることが好ましい。このような孔の径は0.1μm〜100μmであれば良く、好ましくは1μm〜100μmである。また、孔の間隔は1μm〜200μmであれば良く、好ましくは5μm〜200μmであれば良い。
対極導電層6の膜厚は、特に限定されない。しかし、対極導電層6の膜厚が薄すぎると対極導電層6の抵抗が高くなり、対極導電層6の膜厚が厚すぎるとキャリア輸送材料の移動の妨げとなる。これを考慮して対極導電層6の膜厚を適宜選択すれば良く、対極導電層6の膜厚は、0.05〜100μm程度であれば良い。
対極導電層6の触媒層を構成する材料は、一般に湿式太陽電池の触媒層に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、たとえば白金、カーボンが好ましい。カーボンの形態としては、カーボンブラック、グラファイト、ガラス炭素、アモルファス炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンホイスカー、カーボンナノチューブ、またはフラーレンなどが好ましい。
なお、対極導電層6には、必要に応じて、取り出し電極(図示せず)が設けられる。取り出し電極により、湿式太陽電池から外部へ電流を取り出すことができる。取り出し電極の材料は、一般に湿式太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。
<カバー層>
カバー層7は、電解液の揮発の防止、および電池内への水などの浸入の防止を目的として、設けられている。カバー層7を構成する材料は、一般に湿式太陽電池のカバー層に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、たとえばソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウ珪酸酸ガラス、溶融石英ガラス、または結晶石英ガラスなどが挙げられ、好ましくはソーダ石灰フロートガラスである。
<絶縁部材>
絶縁部材8は、電解液の揮発の防止、電池内への水などの浸入の防止、支持体1に作用する落下物の衝撃(応力)の吸収、および長期にわたる使用時において支持体1に作用するたわみなどの吸収などを目的として設けられている。それだけでなく、絶縁部材8は、本発明の湿式太陽電池10を用いて後述の湿式太陽電池モジュール20を製造したときに、隣り合う湿式太陽電池10におけるキャリア輸送剤(たとえば電解液)の行き来を防止する。
絶縁部材8を構成する材料は、一般に湿式太陽電池の絶縁部材に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、またはポリイソブチレン系樹脂であっても良く、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、またはアイオノマー樹脂などのホットメルト樹脂であっても良く、ガラスフリットなどであっても良い。これらの材料を2種以上用いて絶縁部材8を構成する場合には、2種以上の材料を混合しても良いし、各材料からなる層を積層しても良い。酸化還元性電解質の溶剤としてニトリル系溶剤、またはカーボネート系溶剤を使用する場合には、絶縁部材8を構成する材料は、シリコーン樹脂、ホットメルト樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、またはガラスフリットであることが好ましい。
<キャリア輸送層>
本発明において、「キャリア輸送層」とは、絶縁部材8の内側に位置し、且つ導電層2とカバー層7とで挟まれた領域に、キャリア輸送材料が注入されて構成されている。したがって、少なくとも光電変換層4および多孔性絶縁層5にはキャリア輸送材料が充填される。
キャリア輸送材料は、イオンを輸送可能な導電性材料であれば良く、たとえば液体電解質、固体電解質、ゲル電解質、または溶融塩ゲル電解質などであれば良い。
液体電解質は、酸化還元種を含む液状物であればよく、一般に電池または太陽電池などにおいて使用できるものであれば特に限定されない。具体的には、液体電解質は、酸化還元種と酸化還元種を溶解可能な溶剤とからなるもの、酸化還元種と酸化還元種を溶解可能な溶融塩とからなるもの、または酸化還元種と上記溶剤と上記溶融塩からなるものであれば良い。
酸化還元種としては、たとえばI-/I3-系、Br2-/Br3-系、Fe2+/Fe3+系、またはキノン/ハイドロキノン系などが挙げられる。具体的には、酸化還元種は、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、またはヨウ化カルシウム(CaI2)などの金属ヨウ化物とヨウ素(I2)との組み合わせであっても良い。酸化還元種は、テトラエチルアンモニウムアイオダイド(TEAI)、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド(TPAI)、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)、またはテトラヘキシルアンモニウムアイオダイド(THAI)などのテトラアルキルアンモニウム塩とヨウ素との組み合わせであっても良い。酸化還元種は、臭化リチウム(LiBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)、または臭化カルシウム(CaBr2)などの金属臭化物と臭素との組み合わせであっても良い。これらの中でも、LiIとI2との組み合わせが特に好ましい。
酸化還元種を溶解可能な溶媒としては、たとえば、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物、エタノールなどのアルコール類、水、または非プロトン極性物質などが挙げられる。これらの中でも、カーボネート化合物またはニトリル化合物が特に好ましい。これらの溶媒を2種類以上混合して用いることもできる。
固体電解質は、電子、ホール、またはイオンを輸送できる導電性材料であり、湿式太陽電池の電解質として用いることができ、且つ流動性がないものであればよい。具体的には、固体電解質は、ポリカルバゾールなどのホール輸送材、テトラニトロフルオレノンなどの電子輸送材、ポリロールなどの導電性ポリマー、液体電解質を高分子化合物により固体化した高分子電解質、ヨウ化銅、チオシアン酸銅などのp型半導体、または溶融塩を含む液体電解質を微粒子により固体化した電解質などが挙げられる。
ゲル電解質は、通常、電解質とゲル化剤からなる。電解質は、たとえば上記液体電解質であっても良いし、上記固体電解質であっても良い。
ゲル化剤としては、たとえば、架橋ポリアクリル樹脂誘導体、架橋ポリアクリロニトリル誘導体、ポリアルキレンオキシド誘導体、シリコーン樹脂類、または側鎖に含窒素複素環式四級化合物塩構造を有するポリマーなどの高分子ゲル化剤などが挙げられる。
溶融塩ゲル電解質は、通常、上記のようなゲル電解質と常温型溶融塩とからなる。
常温型溶融塩としては、たとえばピリジニウム塩類またはイミダゾリウム塩類などの含窒素複素環式四級アンモニウム塩類などが挙げられる。
上記の電解質は、必要に応じて、次に示す添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、t−ブチルピリジン(TBP)などの含窒素芳香族化合物であっても良いし、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(DMPII)、メチルプロピルイミダゾールアイオダイド(MPII)、エチルメチルイミダゾールアイオダイド(EMII)、エチルイミダゾールアイオダイド(EII)、またはヘキシルメチルイミダゾールアイオダイド(HMII)などのイミダゾール塩であっても良い。
電解質の濃度は、0.001〜1.5モル/リットルの範囲が好ましく、0.01〜0.7モル/リットルの範囲が特に好ましい。ただし、本発明に係る湿式太陽電池において受光面側に対極導電層6の触媒層がある場合には、入射光はキャリア輸送層内の電解液を通って増感色素が吸着された多孔性半導体層に達し、キャリアが励起する。そのため、受光面側に触媒層がある湿式太陽電池では、製造が電解質の濃度に依存することがある。この点を考慮して、電解質の濃度を設定することが好ましい。
<湿式太陽電池の製造方法>
図1に示す湿式太陽電池10の製造方法を以下に示す。
支持体1上に導電層2を形成する。ここで、導電層2の形成方法は、特に限定されず、たとえば公知のスパッタ法または公知のスプレー法などであれば良い。また、導電層2に金属リード線(図示せず)を設ける場合には、たとえば、公知のスパッタ法または公知の蒸着法などにより支持体1上に金属リード線を形成してから、得られた金属リード線を含む支持体1上に導電層2を形成しても良いし、支持体1上に導電層2を形成してから、導電層2上に金属リード線を形成しても良い。
次に、レーザースクライブ法により導電層2の一部を切断してスクライブライン部3を形成する。このとき、スクライブライン部3のライン幅Dが所望の値(70μm以上、好ましくは100μm以上500μm以下、より好ましくは200μm以上500μm以下)となるまで、導電層2に対する加工を繰り返し行なえば良い。
続いて、導電層2上に多孔性半導体層を形成する。多孔性半導体層の形成方法は、特に限定されず、スクリーン印刷法またはインクジェット法などにより粒子状の半導体材料を含有するペーストを導電層2上に塗布した後、焼成しても良いし、焼成の代わりに、ゾル−ゲル法または電気化学的な酸化還元反応を利用しても良い。これらの方法の中で、厚膜の多孔性半導体層を低コストで形成できるという観点から、ペーストを用いたスクリーン印刷法が特に好ましい。
半導体材料として酸化チタンを用いた場合の多孔性半導体層の形成方法を以下に具体的に示す。
まず、チタンイソプロポキシド(キシダ化学株式会社製)125mLを0.1Mの硝酸水溶液(キシダ化学株式会社製)750mLに滴下して加水分解させてから、80℃で8時間加熱する。これにより、ゾル液が調製される。得られたゾル液をチタン製オートクレーブ中で230℃で11時間加熱して酸化チタン粒子を成長させ、超音波分散を30分間行ない、平均粒径(平均一次粒径)15nmの酸化チタン粒子を含むコロイド溶液を調製する。得られたコロイド溶液に当該コロイド溶液の2倍容量のエタノールを加え、これを回転数5000rpmで遠心分離する。これにより、酸化チタン粒子を得る。
次いで、得られた酸化チタン粒子を洗浄する。その後、酸化チタン粒子をエチルセルロースとテルピネオールとを無水エタノールに溶解させたものと混合して攪拌する。これにより、酸化チタン粒子が分散する。その後、上記混合液を真空条件下で加熱してエタノールを蒸発させ、酸化チタンペーストを得る。最終的な組成として例えば酸化チタン固体濃度が20wt%、エチルセルロース濃度が10wt%、且つテルピネオール濃度が64wt%となるように、各濃度を調整する。
ここで、酸化チタンペーストを調製するために用いる溶剤としては、上記以外にエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグライム系溶剤、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、イソプロピルアルコール/トルエンなどの混合溶剤、または水などが挙げられる。酸化チタン以外の半導体粒子を含むペーストを調製する場合にも、これらの溶剤を用いることができる。
次いで、上記の方法により酸化チタンペーストを導電層上に塗布し、乾燥させてから焼成する。これにより、酸化チタンからなる多孔性半導体層が得られる。ここで、乾燥条件および焼成条件、たとえば温度、時間、または雰囲気などの条件は、使用する支持体の材料または半導体材料により適宜調整される。焼成は、例えば、大気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下で、50〜800℃程度の範囲内で、10秒〜12時間程度で行なわれることが好ましい。また、乾燥および焼成は、それぞれ、単一の温度で1回行なわれても良いし、温度を変化させて2回以上行なわれても良い。
続いて、多孔性半導体層上に多孔性絶縁層5を形成する。多孔性絶縁層5の形成方法としては、特に限定されず、公知の方法が挙げられる。具体的には、スクリーン印刷法またはインクジェット法などにより多孔性絶縁層5を構成する絶縁材料を含有するペーストを多孔性半導体層上に塗布してから焼成する方法であっても良いし、焼成の代わりにゾル−ゲル法または電気化学的な酸化還元反応を利用した方法などを行なっても良い。これらの方法の中で、多孔性絶縁層5を低コストで形成できるという観点から、ペーストを用いたスクリーン印刷法が特に好ましい。
続いて、多孔性絶縁層5上に対極導電層6を形成する。対極導電層6の形成方法は、特に限定されず、蒸着法または印刷法などであれば良い。蒸着法により対極導電層6を形成すると、対極導電層6自体が多孔質になるため、色素溶液またはキャリア輸送材料が移動可能な孔を別途、対極導電層6に形成しなくて良い。なお、この孔を対極導電層6に形成する場合には、レーザー光照射により対極導電層6を部分的に蒸発させる方法を用いることが好ましい。
続いて、多孔性半導体層に増感色素を吸着させる。増感色素の吸着方法としては、たとえば増感色素が溶解された溶液(色素吸着用溶液)に多孔性半導体層を浸漬する方法が挙げられる。増感色素を溶解させる溶剤としては、増感色素を溶解可能な溶剤であれば良く、具体的には、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどの窒素化合物類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類、または水などが挙げられる。これらの溶剤を2種類以上混合して用いても良い。
色素吸着用溶液中の増感色素濃度は、使用する増感色素および溶剤の種類により適宜調整することができる。しかし、多孔性半導体層への増感色素の吸着機能を向上させるためには、この増感色素濃度は、できるだけ高濃度である方が好ましく、たとえば5×10-4モル/リットル以上であればよい。
続いて、絶縁部材8を所定の位置に設ける。具体的には、まず、支持体1上に形成された積層体(積層体は、光電変換層4、多孔性絶縁層5および対極導電層6が積層されて構成されたもの)の周囲を囲う形に熱融着フィルムまたは紫外線硬化樹脂などを切り出して、絶縁部材8を形成する。絶縁部材8の材料としてシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、またはガラスフリットを使用する場合には、ディスペンサーにより絶縁部材8のパターンを形成することができる。絶縁部材8の材料としてホットメルト樹脂を使用する場合には、ホットメルト樹脂からなるシート部材にパターニングした穴を開けることにより、絶縁部材8を形成することができる。このようにして形成された絶縁部材8を、透明電極基板11とカバー層7とを貼り合わせるように透明電極基板11とカバー層7との間に配置する。そして、加熱または紫外線照射により、絶縁部材8と透明電極基板11およびカバー層7とを固定する。
続いて、カバー層7に予め設けてあった注入用孔からキャリア輸送材料を注入する。キャリア輸送材料が絶縁部材8の内側であって導電層2とカバー層7とで挟まれた部分に充填されたら、紫外線硬化樹脂を用いて注入用孔を封止する。キャリア輸送材料の充填により、キャリア輸送層が形成され、またキャリア輸送材料が光電変換層4および多孔性絶縁層5に保持される。これにより、図1に示す湿式太陽電池10が製造される。
<湿式太陽電池モジュール>
図2は、本発明に係る湿式太陽電池モジュールの概略断面図である。
本発明に係る湿式太陽電池モジュール20では、3つの湿式太陽電池が直列接続されており、各湿式太陽電池が備える光電変換素子が一枚の支持体21上に設けられている。詳細には、1枚の支持体21上に3つの導電層2がスクライブライン部3を隔てて設けられており、これにより、透明電極基板31が構成されている。各導電層2上には、多孔性半導体層に増感色素などが吸着されて構成された光電変換層4、多孔性絶縁層5、対極導電層6、およびキャリア輸送層が設けられている。このような湿式太陽電池モジュール20では、隣り合う湿式太陽電池のうちの一方の湿式太陽電池の対極導電層6はスクライブライン部3を跨いで他方の湿式太陽電池の導電層2へ向かって延び、当該導電層2に電気的に接続されている。
本発明に係る湿式太陽電池モジュール20では、各湿式太陽電池におけるスクライブライン部3のライン幅Dは70μm以上であり、好ましくは100μm以上500μm以下であり、より好ましくは200μm以上500μm以下である。これにより、スクライブライン部3により区切られた領域間の逆電流の増加を抑制できるので、熱などの外的環境因子による光電変換効率の低下が抑制される。
本発明に係る湿式太陽電池モジュール20では、対極導電層6の上には、1枚のカバー層27が支持体21に対向して設けられており、支持体21とカバー層27との間には、絶縁部材8および封止部材32が設けられている。両端の湿式太陽電池は、支持体21、カバー層27、絶縁部材8および封止部材32で封止されており、中央の湿式太陽電池は、支持体21、カバー層27、および2つの絶縁部材8で封止されている。封止部材32の内側であって支持体21とカバー層27との間に位置する領域にはキャリア輸送材料が充填されてキャリア輸送層が形成されているが、隣り合う湿式太陽電池は絶縁部材8により区画されているため、キャリア輸送材料が隣り合う湿式太陽電池の間を行き来することを防止できる。よって、電解液の偏りの防止という効果を得ることができる。
このように、絶縁部材8は、隣り合う湿式太陽電池を区画する機能を有する。そのため、絶縁部材8は、図2に示すように、隣り合う湿式太陽電池のうちの一方の湿式太陽電池の対極導電層6と他方の湿式太陽電池の多孔性絶縁層5との間に設けられる。ここで、対極導電層6はスクライブライン部3を跨いで設けられているため、絶縁部材8はスクライブライン部3に直接接することなく設けられる。このような場合に本発明の効果が顕著に現れる。
支持体21は、本発明に係る湿式太陽電池10における支持体1と同じく光透過性を有する材料からなることが好ましく、具体的には支持体1の材料として使用可能な材料からなれば良い。カバー層27は、本発明に係る湿式太陽電池10におけるカバー層7の材料として使用可能な材料からなれば良い。封止部材32は、絶縁部材8と略同一の材料からなっても良いし、絶縁部材8とは異なる材料(たとえば絶縁性を有していない材料)からなっても良い。
本発明に係る湿式太陽電池モジュール20では、支持体1上のうち封止部材32の外側に集電電極33が設けられていることが好ましく、この集電電極33は両端に位置する湿式太陽電池の導電層2に接続されていることが好ましい。これにより、電流を湿式太陽電池モジュール20から外部へ容易に取り出すことが出来る。
図2に示す湿式太陽電池モジュール20では、中央に位置する湿式太陽電池が本発明に係る湿式太陽電池10に相当し、両端に位置する湿式太陽電池が本発明に係る湿式太陽電池10とはキャリア輸送層などを封止する部材を異にする。しかし、本発明に係る湿式太陽電池モジュール20では、本発明に係る湿式太陽電池10が直列に接続されていても良い。つまり、封止部材32の代わりに絶縁部材8を用いても良い。
なお、本発明に係る湿式太陽電池モジュール20では、当該湿式太陽電池モジュール20を構成する湿式太陽電池の個数は3個に限定されない。
本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例に限定されない。
<実施例1〜7および比較例1〜5>
<太陽電池の製造>
ガラスからなる支持体1上にSnO2からなる導電層2が形成された透明電極基板11(日本板硝子株式会社製、SnO2膜付ガラス)を用意した。この透明電極基板11の大きさは、30mm×30mm×1.0mm(厚さ)であった。透明電極基板11の導電層2の一部をレーザースクライブにより切断し、スクライブライン部3のライン幅D=20、30、40、50、60μm(比較例1〜5)、70、80、90、100、150、200、500μm(実施例1〜7)であるスクライブライン部3を形成した。
次に、光電変換層4のパターンを有するスクリーン版とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)とを用いて、導電層2上に市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名:D/SP、平均粒径は18nm)を塗布し、室温で1時間レベリングした。その後、得られた塗膜を80℃に設定したオーブンで20分間乾燥してから、500℃に設定した焼成炉(株式会社デンケン製、型番:KDF P−100)を用いて空気中で60分間焼成した。酸化チタンペーストの塗布工程、乾燥工程、および焼成工程を3回繰り返して、膜厚15μmの多孔性半導体層を得た。
次いで、スクリーン印刷機を用いて、多孔性半導体層上にジルコニア粒子(平均粒経50nm)を含むペーストを塗布した。その後、500℃、60分間で焼成し、多孔性絶縁層5を形成した。ここで、BET法(ユアサアイオニクス株式会社製、品番AUTOSORB−1)を用いて多孔性絶縁層5の細孔径を測定したところ、その径は100μmであった。
次いで、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて、蒸着速度8Å/sで、多孔性絶縁層5上に膜厚400nmのチタンからなる膜を形成した。これにより、対極導電層6が得られた。
次いで、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて、蒸着速度4Å/sで、対極導電層6上にPtからなる膜を形成した。これにより、対極導電層6上に触媒層が形成され、透明電極基板11上には積層体(積層体は、多孔性半導体層、多孔性絶縁層5、対極導電層6、および触媒層が順に積層されて構成されている)が形成された。なお、触媒層の大きさ、およびその位置は、それぞれ、多孔性半導体層の大きさ、およびその位置と同じであった。
次いで、予め調製しておいた色素吸着用溶液に積層体を室温で100時間浸漬した。その後、積層体をエタノールで洗浄してから約60℃で約5分間乾燥させた。これにより、多孔性半導体層に増感色素が吸着された。
ここで、色素吸着用溶液は、濃度が4×10-4モル/リットルとなるように上記化学式(1)の色素(Solaronix社製、商品名:Ruthenium620 1H3TBA)を体積比が1:1であるアセトニトリルとt−ブタノールとの混合溶剤に溶解させて、調製された。
次いで、積層体の周囲を囲う形に切り出した熱融着フィルム(デュポン社製、ハイミラン1855)を用いて、積層体が形成された透明電極基板11とガラスからなるカバー層7とを貼り合せた。その後、約100℃に設定したオーブンで10分間加熱した。これにより、熱融着フィルムが融解して絶縁部材8となり、融解した熱融着フィルムと透明電極基板11およびカバー層7のそれぞれとが圧着された。
次いで、カバー層7に予め形成されていた電解液注入用孔から、予め調製しておいた電解液を注入した。透明電極基板11とカバー層7と絶縁部材8とで形成される空間内に電解液が充填されたら、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)を用いて電解液注入用孔を封止した。これにより、湿式太陽電池(単セル)が完成した。
ここで、電解液は、次に示す方法にしたがって調製された。溶剤としてのアセトニトリルに、濃度が0.1モル/リットルとなるようにLiI(アルドリッチ社製、酸化還元種)を溶解させ、濃度が0.01モル/リットルとなるようにI2(キシダ化学社製、酸化還元種)を溶解させた。さらに、上記アセトニトリルに、濃度が0.5モル/リットルとなるようにt−ブチルピリジン(アルドリッチ社製、添加剤)を溶解させ、濃度が0.6モル/リットルになるようにジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(四国化成工業社製)を溶解させた。
得られた湿式太陽電池の透明電極基板11上にAgペースト(藤倉化成株式会社製、商品名:ドータイト)を塗布して集電電極を形成した。以上のようにして、実施例1〜7および比較例1〜5の湿式太陽電池を製造した。
<評価方法および結果>
実施例1〜7および比較例1〜5の湿式太陽電池の受光面に、開口部の面積が1.0cm2である黒色のマスクを設置した。そして、この湿式太陽電池に1kW/m2の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率(η)を測定した。
また、黒色のマスクが設置された実施例1〜7および比較例1〜5の湿式太陽電池を85℃の恒温槽内に入れてこれらの湿式太陽電池に熱ストレスを付加し、光電変換効率の時間変化を測定した。リファレンスセルとしてサンドイッチセル(サンドイッチセルは、負極と正極とを別々に形成して貼り合せたもの)を準備し、時間経過に対するサンドイッチセルの光電変換効率の変化も測定した。そして、実施例1〜7および比較例1〜5の湿式太陽電池の光電変換効率をサンドイッチセルの光電変換効率で除して、サンドイッチセルに対する変換効率の保持率を求めた。サンドイッチセルに対する変換効率の保持率が高いほど、光電変換効率に優れていることを意味する。
図3には、サンドイッチセル(リファレンスセル)に対する光電変換効率の保持率の時間変化を示す。図3に示すように、スクライブライン部3のライン幅Dが70μm以上となると、サンドイッチセルに対する変換効率の保持率が高くなり始め、スクライブライン部3のライン幅Dが100μm以上であればサンドイッチセルに対する変換効率の保持率が100%程度であり、スクライブライン部3のライン幅Dが200μm以上であればサンドイッチセルに対する変換効率の保持率が100%を超えた。
<実施例8〜9および比較例6〜7>
<湿式太陽電池モジュールの製造>
図2に示す湿式太陽電池モジュールを製造した。
先ず、支持体21の表面に導電層(SnO2膜)2が形成された透明電極基板31(日本板硝子社製、商品名:SnO2膜付ガラス:縦60mm×横37mm)を用意した。透明電極基板31の導電層2の一部をレーザースクライブにより除去して、透明電極基板31の縦方向に延びるように且つ互いに平行にスクライブライン部3を形成した。スクライブライン部3の形成により、導電層2は3つの領域に分割された。
ここで、スクライブライン部3のライン幅Dは、実施例8では200μmであり、実施例9では500μmであり、比較例6では700μmであり、比較例7では1000μmであった。
次に、実施例1に準じて多孔性半導体層を形成した。具体的には、透明電極基板31の左端から6.9mmの位置を中心として、膜厚が25μm、幅が5mm、長さが50mmのサイズの多孔性半導体層を1つ形成した。2つ目の多孔性半導体層は1つ目の多孔性半導体層の中心から6.9mmの位置を中心として形成され、3つ目の多孔性半導体層は2つ目の多孔性半導体層の中心から6.9mmの位置を中心として形成された。なお、多孔性半導体層の大きさは互いに同一であった。
各多孔性半導体層上に、実施例1に準じて多孔性絶縁層5を形成した。
次いで、各多孔性絶縁層5上に、実施例1に準じて対極導電層6を形成した。透明電極基板31の左端から7.2mmの位置を中心として、幅が5.6mm、長さが50mmのサイズの対極導電層6を1つ形成した。2つ目の対極導電層6は1つ目の対極導電層6の中心から7mmの位置を中心として形成され、3つ目の対極導電層6は2つ目の対極導電層6の中心から7mmの位置を中心として形成された。なお、対極導電層6の大きさは互いに同一であった。
次いで、実施例1に準じて、各対極導電層6上にPtからなる触媒層を形成した。なお、触媒層の大きさおよびその位置は、それぞれ、多孔性半導体層の大きさおよびその位置と同じとした。
このようにして得られた積層体を実施例1で用いた色素吸着用溶液に室温で120時間浸漬し、多孔性半導体層に増感色素を吸着させて光電変換層4を形成した。
次いで、隣り合う積層体の間およびセルの周囲に、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製 31X−101)をディスペンサー(EFD社製 ULTRASAVER)により塗布した。カバー層27として縦60mm×横30mmのガラス基板を紫外線硬化樹脂に貼り合わせた後、紫外線ランプ(EFD社製 NOVACURE)を用いて紫外線を紫外線硬化樹脂に照射した。これにより、紫外線硬化樹脂が硬化されて絶縁部材8および封止部材32が形成された。
その後、カバー層27に予め設けられていた電解液注入用孔より、実施例1と同じ電解液を注入した。透明電極基板31とカバー層27と絶縁部材8または封止部材32とで形成される空間内に電解液が充填されたら、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)を用いて電解液注入用孔を封止した。
支持体21の表面上にAgペースト(藤倉化成株式会社製、商品名:ドータイト)を塗布して集電電極33を形成した。これにより、湿式太陽電池モジュールが完成した。
<評価方法および結果>
実施例8〜9および比較例6〜7の湿式太陽電池モジュールの受光面に黒色のマスクを設置した。そして、この湿式太陽電池モジュールに1kW/m2の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率を測定した。
実施例8および9では、湿式太陽電池モジュールの光電変換効率はほぼ同等であった。また、実施例1に準じて湿式太陽電池モジュールに熱ストレスを付加して光電変換効率の時間変化を測定した場合でも、湿式太陽電池モジュールの変換効率の保持率は実施例7と同様であった。
一方、比較例6および7では、スクライブライン部3のライン幅Dが大きすぎるため、非受光面積の増加を招き、よって、光電変換効率が実施例8よりも低下した。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,21 支持体、2 導電層、3 スクライブライン部、4 光電変換層、5 多孔性絶縁層、6 対極導電層、7,27 カバー層、8 絶縁部材、10 湿式太陽電池、11,31 透明電極基板、20 湿式太陽電池モジュール、32 封止部材、33 集電電極。

Claims (9)

  1. 光透過性の材料からなる支持体と、
    前記支持体上に順に設けられた導電層、多孔性半導体層を含む光電変換層、多孔性絶縁層、および対極導電層を有する光電変換素子とを備えた湿式太陽電池であって、
    前記光電変換層が前記導電層上に設けられた第1の領域と、前記光電変換層が前記導電層上に設けられていない第2の領域とが、前記導電層が前記支持体上に設けられることなく構成されたスクライブライン部を挟んで存在し、
    前記対極導電層は、前記第1の領域から前記スクライブライン部を跨いで前記第2の領域へ延びており、
    前記スクライブライン部のライン幅が200μm以上500μm以下である湿式太陽電池。
  2. 前記スクライブライン部の少なくとも一部は、前記多孔性絶縁層の空隙に存在する電解液に接している請求項1に記載の湿式太陽電池。
  3. 前記多孔性絶縁層は、前記スクライブライン部上に設けられている請求項1または2に記載の湿式太陽電池。
  4. 前記多孔性絶縁層の細孔径が50μm以上である請求項1〜のいずれかに記載の湿式太陽電池。
  5. 前記多孔性絶縁層は、酸化ジルコニウム、および平均粒径が100nm以上の酸化チタンの少なくとも一方を含む請求項1〜のいずれかに記載の湿式太陽電池。
  6. 前記多孔性半導体層は、平均粒径が100nm以下の酸化チタンを含む請求項1〜のいずれかに記載の湿式太陽電池。
  7. 前記対極導電層は、導電性および触媒能を有する粒子状の材料からなる請求項1〜6のいずれかに記載の湿式太陽電池。
  8. 2つ以上の湿式太陽電池が直列接続されて構成された湿式太陽電池モジュールであって、
    前記湿式太陽電池の少なくとも1つは、請求項1に記載の湿式太陽電池が備える光電変換素子を備え、
    前記湿式太陽電池が備える光電変換素子は、一枚の支持体上に設けられており、
    隣り合う湿式太陽電池のうちの一方の湿式太陽電池の導電層は、他方の湿式太陽電池の対極導電層に電気的に接続されており、
    前記一方の湿式太陽電池と前記他方の湿式太陽電池との間には、当該一方の湿式太陽電池に含まれる電解液が当該他方の湿式太陽電池へ移動することを防止する絶縁部材が設けられている湿式太陽電池モジュール。
  9. 前記絶縁部材は、前記スクライブライン部に直接接していない請求項8に記載の湿式太陽電池モジュール。
JP2013545878A 2011-11-21 2012-11-12 湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュール Active JP6050247B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011253937 2011-11-21
JP2011253937 2011-11-21
PCT/JP2012/079214 WO2013077209A1 (ja) 2011-11-21 2012-11-12 湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュール

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2013077209A1 JPWO2013077209A1 (ja) 2015-04-27
JP6050247B2 true JP6050247B2 (ja) 2016-12-21

Family

ID=48469657

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013545878A Active JP6050247B2 (ja) 2011-11-21 2012-11-12 湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュール

Country Status (3)

Country Link
US (1) US20150122322A1 (ja)
JP (1) JP6050247B2 (ja)
WO (1) WO2013077209A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6338458B2 (ja) * 2014-06-05 2018-06-06 シャープ株式会社 光電変換素子、光電変換モジュールおよび光電変換素子の製造方法
WO2019146684A1 (ja) * 2018-01-24 2019-08-01 積水化学工業株式会社 電気モジュール及び電気モジュールの製造方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101485037B (zh) * 2006-07-06 2011-06-15 夏普株式会社 染料敏化太阳能电池组件及其制备方法
EP1936644A3 (en) * 2006-12-22 2011-01-05 Sony Deutschland Gmbh A photovoltaic cell
WO2009075229A1 (ja) * 2007-12-12 2009-06-18 Sharp Kabushiki Kaisha 光増感太陽電池、その製造方法および光増感太陽電池モジュール
JP2010021102A (ja) * 2008-07-14 2010-01-28 Sharp Corp 色素増感太陽電池、その製造方法および色素増感太陽電池モジュール
JP5585070B2 (ja) * 2009-12-18 2014-09-10 アイシン精機株式会社 色素増感型太陽電池

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2013077209A1 (ja) 2015-04-27
US20150122322A1 (en) 2015-05-07
WO2013077209A1 (ja) 2013-05-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4523549B2 (ja) 色素増感太陽電池および色素増感太陽電池モジュール
JP5273709B2 (ja) 色素増感太陽電池、その製造方法および色素増感太陽電池モジュール
JP4761327B2 (ja) 湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュール
JP5714005B2 (ja) 湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュール
WO2010044445A1 (ja) 色素増感太陽電池および色素増感太陽電池モジュール
JP5922242B2 (ja) 光電変換素子、その製造方法、光電変換素子モジュールおよびその製造方法
JP2012009374A (ja) 色素増感太陽電池およびその製造方法、並びに色素増感太陽電池モジュール
WO2013164967A1 (ja) 光電変換素子および光電変換モジュール
JP6050247B2 (ja) 湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュール
JP6594313B2 (ja) 光電変換素子およびこれを含む光電変換素子モジュール
JP2014238969A (ja) 太陽電池
JP5930970B2 (ja) 光電変換素子および光電変換素子モジュール
WO2013114733A1 (ja) 光電変換素子モジュール
JP5956929B2 (ja) 光電変換素子およびその製造方法
JP6009204B2 (ja) 光電変換素子、光電変換素子の製造方法および光電変換素子モジュール
WO2013024642A1 (ja) 光電変換素子
JP2013251229A (ja) 光電変換素子および色素増感太陽電池
JP2014026903A (ja) 光電変換素子および色素増感太陽電池
WO2013161557A1 (ja) 光電変換素子モジュールおよびその製造方法
JP2013251228A (ja) 光電変換素子および色素増感太陽電池
JP2014053150A (ja) 光電変換素子および光電変換モジュール

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151001

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160816

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161004

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161101

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161124

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6050247

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150