JP5714005B2 - 湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュール - Google Patents

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Description

本発明は、湿式太陽電池および湿式太陽電池モジュールに関する。
化石燃料に代るエネルギー源として、太陽光を電力に変換できる太陽電池が注目されている。現在、結晶系シリコン基板を用いた太陽電池および薄膜シリコン太陽電池が一部実用化され始めている。しかし、前者はシリコン基板の製造コストが高いという問題があり、後者は多種の半導体製造用ガスや複雑な装置を用いる必要があるために製造コストが高くなるという問題がある。このため、いずれの太陽電池においても光電変換の高効率化による発電出力当たりのコストを低減する努力が続けられているが、上記の問題を解決するには至っていない。
特開平01−220380号公報(特許文献1)には、新しいタイプの太陽電池として、金属錯体の光誘起電子移動を応用した湿式太陽電池が提案されている。この湿式太陽電池は、表面上に電極を形成した2枚のガラス基板の電極間に光電変換層を挟持したものである。光電変換層は、光増感色素を吸着させて可視光領域に吸収スペクトルをもたせた光電変換材料と電解質材料とからなる。
上記の湿式太陽電池に光が照射されると、光電変換層で電子が発生し、発生した電子が外部電気回路を通って電極に移動する。移動した電子が電解質中のイオンにより対向する電極に運ばれて光電変換層に戻る。このような一連の電子の流れにより、電気エネルギーが取り出される。
しかしながら、特許文献1に記載の色素増感太陽電池の基本構造は、対向する透明導電膜付きガラス基板間に電解液を注入した形態である。このため、小面積の太陽電池の試作は可能であっても、1m角のような大面積の太陽電池への適用は困難である。つまり、1つの太陽電池セルの面積を大きくすると、発生電流は面積に比例して増加するが、電極部分に用いる透明導電性膜の面内方向の電圧降下が増大し、太陽電池としての内部直列抵抗が増大する。その結果、光電変換時の電流電圧特性におけるFF(曲線因子)、および短絡電流が低下し、光電変換効率が低下するという問題が起こる。
国際公開第97/16838号パンフレット(特許文献2)には、1枚の透明導電膜付きガラス基板上に、複数の色素増感太陽電池を直列接続で配置した色素増感太陽電池モジュールが提案されている。この色素増感太陽電池モジュールは、1つの色素増感太陽電池の透明導電膜と、隣接する色素増感太陽電池の対極とを接触させることにより、両色素増感太陽電池を直列接続している。個々の色素増感太陽電池は、短冊形にパターニングされた透明導電膜(電極)を有する透明基板(ガラス基板)上に、光電変換層となる多孔性半導体層(多孔質酸化チタン層)、多孔性絶縁層(中間多孔性絶縁層)および対極(触媒層)を順次積層している。
特開2002−367686号公報(特許文献3)は、透明基板上に透明導電膜、緻密質からなる第1光電極、多孔質からなる第2光電極(多孔性半導体層)、セパレータおよび触媒(カーボン)層を有する集積化構造の色素増感太陽電池モジュールを開示している。この色素増感太陽電池モジュールは、緻密質からなる第1光電極を第2電極の直下に形成することにより、触媒層材料が透明導電膜に接触することを抑制している。さらに、触媒層材料の微粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径を有する微粒子よりなる光電極層を設けることにより、触媒層微粒子が光電極層を通り抜け導電層に達することを防ぎ、内部短絡を防いでいる。
特開平01−220380号公報 国際公開第97/16838号パンフレット 特開2002−367686号公報
特許文献3の色素増感太陽電池は、第1光電極および第2光電極(多孔性半導体層)が形成されている導電層を有する。カーボン層に接触する導電層部分がレーザースクライブ等により絶縁されている。第1電極および第2電極は、導電層の絶縁部端に合わせて形成されている。光電極をスクリーン印刷で形成する場合には、印刷の性質上、光電極等の印刷体の周囲に膜厚の薄い部分(ダレ)が生じる。このダレがサブミクロンオーダーの凹部となっている導電層の絶縁部に重なると、光電極等の印刷体に剥離が生じ、故障の発生、および歩留まりの低下をもたらす。
また、上記剥離を抑制するために、光電極の形成位置を絶縁部から離すと、その部分は対極導電層と導電層の間に多孔性絶縁層のみが存在する。発明者の検討の結果、対極導電層材料が導電層に接触することによる内部短絡の発生率は、対極導電層と導電層間に存在する層の膜厚に大きく依存することが判明した。よって、上記多孔性絶縁層だけが存在する導電層上では、内部短絡が頻発し、歩留まりの大幅な低下を引き起こすことがわかった。
さらに、特許文献3に開示されているように、緻密層である第1光電極を形成すると、内部短絡が減少する一方で、最も光強度が強くなる部分の色素吸着量が低下し、発生電流が低下するという問題があった。
また、本発明者は、対極導電層と導電層との間の内部短絡の発生率を検討したところ、内部短絡の発生率は、対極導電層と導電層との間に存在する層の膜厚および面積に依存することが明らかとなった。すなわち、対極導電層と導電層との間に多孔性絶縁層のみが存在する場合は、内部短絡が頻発し、歩留まりが大幅に低下することが明らかとなった。
このことから、受光面へ投影された対極導電層の外縁のうち、スクライブライン側に位置しないほうの外縁が、同様に受光面に投影された光電変換層の外縁よりも大きい場合、光電変換層からはみ出た対極導電層は、導電層との間に多孔性絶縁層のみが存在する。このため、多孔性絶縁層の厚みが薄いと、この部分における導電層上で内部短絡が頻発し、歩留まりの大幅な低下を引き起こすという問題があった。
また、受光面に投影された対極導電層の外縁よりも、受光面に投影された光電変換層の外縁が大きい場合には、電極の発電部分上で対極がない部分が存在することになり、性能が著しく低下するという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、内部短絡による故障の発生を抑制し、歩留まりの向上を可能にした湿式太陽電池を提供すること、および該湿式太陽電池を用いた湿式太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
本発明の湿式太陽電池は、光透過性の材料からなる支持体と、該支持体上に、導電層と、多孔性半導体からなる光電変換層と、多孔性絶縁層と、対極導電層とがこの順に積層された積層体を備えたものであって、導電層は、スクライブラインを介して、光電変換層が積層された第1の領域と、光電変換層が積層されていない第2の領域とを有し、光電変換層は、第1の領域の表面の一部に積層され、かつスクライブラインに面した第1の領域の周縁部から光電変換層の周縁部までの距離Dが50μm以上であることを特徴とする。上記の距離Dは500μm以下であることが好ましい。
多孔性絶縁層の膜厚Yが以下の式(1)を満たすことが好ましい。
Y≧0.02D+6.5 …(1)
(式(1)中、Yは多孔性絶縁層の膜厚(μm)であり、Dは距離D(μm)である。)
距離Dが500μmを超え、多孔性絶縁層の膜厚Yが以下の式(2)を満たすことが好ましい。
Y≧16.5 …(2)
(式(2)中、Yは多孔性絶縁層の膜厚(μm)であり、Dは距離D(μm)である。)
本発明の湿式太陽電池は、光透過性の材料からなる支持体と、該支持体上に、導電層と、多孔性半導体からなる光電変換層と、多孔性絶縁層と、対極導電層とがこの順に積層された積層体を備えたものであって、導電層は、スクライブラインを介して、光電変換層が積層された第1の領域と、光電変換層が積層されていない第2の領域とを有し、該光電変換層は、第1の領域の表面の一部に積層され、かつ、スクライブラインに面していない側の受光面に投影された対極導電層の外縁から、光電変換層の外縁までの距離Aが、500μm以下であることを特徴とする。また、光電変換層の外縁が対極導電層の外縁よりも内側にある場合、距離Aと、多孔性絶縁層の膜厚Yとが以下の式(3)を満たすことが好ましい。
Y≧0.02A+6.5 …(3)
(式(3)中、Yは多孔性絶縁層の膜厚(μm)であり、Aは距離A(μm)である。)
本発明の湿式太陽電池は、光透過性の材料からなる支持体と、該支持体上に、導電層と、多孔性半導体からなる光電変換層と、多孔性絶縁層と、対極導電層とがこの順に積層された積層体を備えたものであって、該導電層は、スクライブラインを介して、光電変換層が積層された第1の領域と、光電変換層が積層されていない第2の領域とを有し、光電変換層は、第1の領域の表面の一部に積層され、かつ、スクライブラインに面していない側の受光面に投影された対極導電層の外縁から、光電変換層の外縁までの距離Aが、500μmを超え、該多孔性絶縁層の膜厚が16.5μm以上であることを特徴とする。
本発明によれば、2つ以上の湿式太陽電池が直列に接続された湿式太陽電池モジュールであって、上記いずれかの態様の湿式太陽電池を少なくとも1つ含み、上記直列接続は、隣接する湿式太陽電池の一方の湿式太陽電池の対極導電層と、他方の湿式太陽電池の導電層とが電気的に接続されることにより形成されている湿式太陽電池モジュールが提供される。
本発明によれば、湿式太陽電池において上記で規定する距離Aが500μm以下であるか、または上記で規定する距離Dが50μm以上であることにより、内部短絡による故障の発生を抑制し、歩留まりの向上を可能にした湿式太陽電池を提供することができる。また、該湿式太陽電池を用いた湿式太陽電池モジュールを提供することができる。
(a)は、本発明の湿式太陽電池の層構造を示す概略断面図であり、(b)は、(a)の湿式太陽電池を非受光面側から見た上面図である。 本発明の湿式太陽電池モジュールの層構造を示す概略断面図である。 距離Dと多孔性絶縁層の膜厚Yとの関係を示すグラフである。 距離Aと多孔性絶縁層の膜厚Yとの関係を示すグラフである。
本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、この実施形態は一例であり、種々の形態での実施が本発明の範囲内で可能である。本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
<湿式太陽電池>
図1(a)は、本発明の湿式太陽電池(以下、「太陽電池」または「色素増感太陽電池」ともいう)の要部の層構造を示す概略断面図であり、図1(b)は、図1(a)の湿式太陽電池を非受光面側から見た図である。
本発明の湿式太陽電池10は、図1(a)に示すように、支持体1と、支持体1上に形成された積層体とを備える。この積層体は、導電層2と、光電変換層4と、多孔性絶縁層5と、対極導電層6とがこの順に積層されたものである。対極導電層6の上方にはカバー層7が設けられ、積層体の両脇には封止材8が設けられる。
本発明の湿式太陽電池において、導電層2はスクライブライン3により光電変換層4が積層される第1の領域2aと、光電変換層4が積層されない第2の領域2bとに分割される。上記光電変換層4は、上記導電層2の第1の領域2aの表面の一部に積層される。すなわち、上記第1の領域2aは、光電変換層4が積層される部分と光電変換層4が積層されない部分とを含む。本発明において、スクライブライン3に面した第1の領域2aの周縁部から光電変換層4の周縁部までの距離Dが50μm以上であることを特徴とする。
上記距離Dは、スクライブライン3側に面した光電変換層4の境界の平均線と、第1の領域2aの光電変換層4側に面したスクライブライン3の境界の平均線との間の距離をいう。
上記距離Dが50μm未満になると、印刷時に生じるダレや印刷精度、印刷性低下によるインクの回りこみなどが生じる。これにより光電変換層を構成する多孔性半導体の一部がスクライブラインと重なり、乾燥や焼成等の工程において剥離を生じ、故障、歩留まり低下の原因となる。
上記距離Dは500μm以下であることが好ましい。上記距離Dが500μm以下の場合は、導電層2と対極導電層6との短絡を抑制することができる。この場合、以下の式(1)の関係を満たすことが好ましい。
Y≧0.02D+6.5 …(1)
(式(1)中、Yは多孔性絶縁層の膜厚(μm)であり、Dは上記距離D(μm)、50≦D≦500である。)
発明者の検討によると、触媒層と受光面側に存在する導電層とが短絡し、物理的リークになる箇所は、スクライブラインと光電変換層の間であり、この部分の面積が大きいとリークする確率が高くなる。よって、この部分の面積の増大にしたがって、多孔性絶縁層の膜厚を大きくする必要があり、その関係式が(1)で表される。
一方、Dが500μmを超える場合には、リークする確率が一定となり、下記の式(2)を満たす多孔性絶縁層の膜厚Yを確保すれば、リークを生じないことが判明した。
Y≧16.5 …(2)
(式(2)中、Yは多孔性絶縁層の膜厚(μm)、Dは上記距離D(μm)である。)
なお、多孔性絶縁層の膜厚Yは、導電層2表面から多孔性絶縁層5の最表面までの垂直距離であって、上記第1の領域2aの光電変換層が積層されていない部分における層の厚さをいう。
また、本発明は、図1(b)に示されるように、スクライブライン3に面していない側の受光面に投影された対極導電層の外縁から、光電変換層の外縁までの距離Aが、500μm以下であることを特徴とする。
上記距離Aは、具体的には、スクライブライン3側に面していない側の光電変換層4の外縁の平均線から、光電変換層4の外縁の平均線までの間の距離をいう。
上記距離Aは、スクライブライン側に面していない側の受光面へ投影された対極導電層の外縁からスクライブライン側に面していない光電変換層の外縁までの距離であり、500μm以下であることを特徴とする。上記の距離Aは、100μm以下であることが好ましい。500μmを超えると、光電変換層上(負極)に対極導電層(正極)がない部分の面積が増大し、電解液の移動距離が長くなるため好ましくない。電解液組成物のブラウン運動による移動距離が数百μmであるため、距離Aが500μmを超える場合に電解液組成物の移動による電圧降下により性能が著しく低下する。
光電変換層の外縁が対極導電層の外縁よりも内側にある場合、上記の距離Aが500μm以下の場合には、以下の式(3)の関係を満たすことにより対極導電層と導電層との間のリークを抑制することができる。
Y≧0.02A+6.5 …(3)
(式(3)中、Yは多孔性絶縁層の膜厚(μm)であり、Aは上記距離A(μm)である。)
本発明者らの検討によると、対極導電層が光電変換層よりもはみ出した部分で、触媒層と受光面側に存在する導電層とが短絡し、物理的リークが起こる。このはみ出した部分の面積が大きいとリークする確率が高くなる。よって、この部分の面積の増大にしたがって、多孔性絶縁層の膜厚を大きくする必要があり、その関係式が(3)で表される。
一方、Aが500μmを超える場合には、リークする確率が一定となり、多孔性絶縁層の膜厚を16.5μm以上を確保すれば、リークを生じないことが判明した。すなわち、本発明は、距離Aが500μmを超えるときに、多孔性絶縁層の膜厚を16.5μm以上にすることを特徴とする。
なお、多孔性絶縁層の膜厚Yは、導電層2表面から多孔性絶縁層5の最表面までの垂直距離であって、上記第1の領域2aの光電変換層4が積層されていない部分における多孔性絶縁層の厚さをいう。本発明の湿式太陽電池の各構成について、以下詳細に説明する。
<支持体>
支持体1は、太陽電池の受光面となる部分では光透過性が必要となるため、少なくとも光透過性の材料からなり、厚さ0.2〜5mm程度のものが好ましい。
支持体1を構成する材料は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、例えば、ソーダガラス、溶融石英ガラス、結晶石英ガラスなどのガラス基板、可撓性フィルムなどの耐熱性樹脂板などが挙げられる。
上記可撓性フィルム(以下、「フィルム」ともいう)を構成する材料としては、例えば、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
支持体1上に加熱を伴って他の層を形成する場合、例えば、支持体1上に250℃程度の加熱を伴って導電層2を形成する場合には、上記可撓性フィルムを構成する材料の中でも、250℃以上の耐熱性を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。
また、完成した太陽電池を他の構造体に取り付けるときに支持体1を利用することができる。すなわち、ガラス基板などの支持体1の周辺部を、金属加工部品とねじを用いて他の支持体1に容易に取り付けることができる。
<導電層>
導電層2は、太陽電池の受光面となり、光透過性が必要となるため、光透過性の材料からなる。但し、少なくとも後述する増感色素に実効的な感度を有する波長の光を実質的に透過させる材料であればよく、必ずしもすべての波長領域の光に対して透過性を有する必要はない。
導電層2を形成する光透過性の材料は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、インジウム錫複合酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)などが挙げられる。
本発明において、上記支持体1に導電層2が積層された構造体を透明電極基板11ということがある。このような透明電極基板11としては、具体的には、ソーダ石灰フロートガラスからなる支持体1上に、FTOからなる導電層2を積層した透明電極基板が挙げられ、本発明において好適に用いられる。
上記導電層2の膜厚は0.02〜5μm程度が好ましく、膜抵抗は低いほどよく、40Ω/sq以下が好ましい。
また、導電層2には、低抵抗化のために金属リード線を設けてもよい。金属リード線の材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタンなどが挙げられる。但し、金属リード線を設けることにより、受光面からの入射光量の低下を招く場合には、金属リード線の太さを0.1〜4mm程度にするのが好ましい。
<スクライブライン>
スクライブライン3は、導電層を構成する導電膜をレーザースクライブにより切断して形成する。スクライブライン3により、導電層2は、後述の光電変換層4が積層された部分と光電変換層4が積層されていない部分とを含む第1の領域2aと、光電変換層4が形成されない第2の領域2bとに分割される。スクライブライン3を介した第1の領域2aと第2の領域2bとの距離(スクライブラインの幅)は、湿式太陽電池のサイズなどによるが、例えば10μm〜200μm程度である。
<光電変換層>
光電変換層4は、多孔性半導体からなる層に色素や量子ドットを吸着させかつキャリア輸送材料を充填させてなる。
<多孔性半導体>
上記多孔性半導体は、半導体から構成される。半導体の形態は、バルク状、粒子状、多数の微細孔を有する膜状など、種々の形態のものを用いることができるが、多数の微細孔を有する膜状の形態が好ましい。
多孔性半導体を構成する半導体材料としては、一般に光電変換材料に使用されるものであれば特に限定されない。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化ニッケル、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、硫化鉛、硫化亜鉛、リン化インジウム、銅−インジウム硫化物(CuInS2)、CuAlO2、SrCu22などの化合物およびこれらの組み合せが挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブが好ましく、光電変換効率、安定性および安全性の点から酸化チタンが特に好ましい。また、これらの半導体材料は、2種以上の混合物として用いることもできる。
本発明において、酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸などの各種の狭義の酸化チタンおよび水酸化チタン、含水酸化チタンなどを包含し、これらは単独または混合物として用いることができる。アナターゼ型とルチル型の2種類の結晶系は、その製法や熱履歴によりいずれの形態にもなり得るが、アナターゼ型が一般的である。
上記微粒子の粒径は、投影面積に対して十分に大きい実効表面積を得る観点から、平均粒径5nm以上50nm未満(好ましくは10nm以上30nm以下)が好ましい。このような微粒子を用いることにより入射光を高い収率で電気エネルギーに変換することができる。
なお、本明細書における平均粒径は、XRD(X線回折)の回折ピークから求めた値である。具体的には、XRDのθ/2θ測定における回折角の半値幅とシェラーの式から平均粒径を求める。例えば、アナターゼ型酸化チタンの場合、(101)面に対応する回折ピーク(2θ=25.3°付近)の半値幅を測定すればよい。
多孔性半導体からなる光電変換層の光散乱性は、層形成に用いる半導体材料の粒子径(平均粒径)により調整することができる。
多孔性半導体からなる光電変換層の形成条件にもよるが、具体的には、平均粒径の大きい半導体粒子で形成した多孔性半導体を含む場合は、光散乱性が高く、入射光を散乱させ光捕捉率を向上させることができる。また、平均粒径の小さい半導体粒子で形成した多孔性半導体層は、光散乱性が低く、色素の吸着点をより多くし吸着量を増加させることができる。
したがって本発明において、上記微粒子からなる多結晶焼結体の上に、好ましくは平均粒径が50nm以上、より好ましくは平均粒径が50nm以上600nm以下の半導体粒子からなる層を設けてもよい。このように本発明における光電変換層を構成する多孔性半導体は積層構造であってもよい。
多孔性半導体材料の平均粒径は、本発明の効果を発揮し得る上記の範囲内であれば好ましく、特に限定されない。入射光を光電変換に有効利用するという点では、市販の半導体材料粉末のようにある程度平均粒径が揃っていることがより好ましい。
多孔性半導体からなる光電変換層と対極との間に絶縁層を設けるのが一般的であるが、特開2007−194039号公報で開示されるように粒径の大きい(本発明においては100nm〜500nm程度)微粒子からなる多孔性半導体を含む光電変換層上に対極導電層、あるいは導電層単層を形成しても良い。光散乱性の高い多孔性半導体を含む光電変換層、特に対極導電層6と接触する光電変換層は、構成する半導体材料の平均粒径が大きいために機械的強度が低く、太陽電池の構造としての問題が起こることもある。このような場合には、平均粒径の大きい半導体材料に平均粒径の小さい半導体材料を、例えば材料全体の10重量%以下の割合で配合して、光電変換層を機械的に強化してもよい。
光電変換層(多孔性半導体層)の膜厚は、特に限定されるものではないが、光電変換効率の観点から、0.5〜50μm程度が好ましい。特に、光散乱性の高い、平均粒径50nm以上の半導体粒子からなる層を設ける場合、その層の膜厚は、好ましくは0.1〜40μm、より好ましくは5〜20μm、平均粒径5nm以上50nm未満の半導体粒子よりなる層を設ける場合、その層の膜厚は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。
湿式太陽電池の光電変換効率を向上させるためには、後述する色素を多孔性半導体により多く吸着させて、光電変換層を形成することが必要である。このため、膜状の多孔性半導体は、比表面積の大きなものが好ましく、10〜200m2/g程度が好ましい。
<光増感剤>
多孔性半導体に吸着させる色素としては、光増感剤として機能するものであれば、種々の可視光領域および/または赤外光領域に吸収をもつ有機色素、金属錯体色素などが挙げることができ、これらの色素を1種または2種以上を選択的に用いることができる。
有機色素としては、例えば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素などが挙げられる。
有機色素の吸光係数は、一般的に、遷移金属に分子が配位結合した形態をとる金属錯体色素に比べて大きい。
金属錯体色素としては、Cu、Ni、Fe、Co、V、Sn、Si、Ti、Ge、Cr、Zn、Ru、Mg、Al、Pb、Mn、In、Mo、Y、Zr、Nb、Sb、La、W、Pt、Ta、Ir、Pd、Os、Ga、Tb、Eu、Rb、Bi、Se、As、Sc、Ag、Cd、Hf、Re、Au、Ac、Tc、Te、Rhなどの金属に分子が配位結合した形態のものが挙げられ、これらの中でも、フタロシアニン系金属錯体色素、ルテニウム系金属錯体色素が好ましく、ルテニウム系金属錯体色素が特に好ましい。
特に、下記化学式(4)〜(6)で表されるルテニウム系金属錯体色素が好ましい。
Figure 0005714005
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また、多孔性半導体に色素を強固に吸着させるためには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などのインターロック基を有するものが好ましい。これらの中でも、カルボン酸基およびカルボン酸無水基が特に好ましい。なお、インターロック基は、励起状態の色素と多孔性半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供するものである。
多孔性半導体に吸着して光増感剤として機能する量子ドットとしては、CdS,CdSe,PbS,PbSeなどが挙げられる。
<多孔性絶縁層>
湿式太陽電池において、光電変換層4と対極導電層6との間に多孔性絶縁層5を設けるのが一般的である。多孔性絶縁層5の材料としてはガラスや、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウムなどの伝導帯準位の高い材料が用いられる。また、多孔性絶縁層5としては、粒子状の多孔質により構成されるものが例示され、この場合平均粒径は5〜500nmであることが好ましく、10〜300nmであることがより好ましい。
<対極導電層>
本発明における対極導電層6とは、触媒能を有しキャリア輸送層中の正孔を還元する働きを有する触媒層と、電子収集し、隣接する太陽電池と直列接続する働きを有する導電層を、合わせて対極導電層と呼ぶ。また、これらの働きを併せて有する層、すなわち、触媒層が高い導電性を有する場合、あるいは導電層が触媒能を有する場合は、それぞれ単独で対極導電層6とすることができる。また、対極導電層とは別に触媒層を更に設ける態様も本発明に含まれる。
触媒層と導電層とを形成する場合、通常、多孔性絶縁層5上に触媒層を形成した後に導電層を形成することにより、対極導電層6を形成する。
但し、蒸着法による製膜などを用いて白金などからなる触媒層を形成する場合のように、触媒層の膜強度が弱いと、触媒層上に形成した対極導電層が触媒層から剥離する。そこで、多孔性絶縁層5上に先に導電層を設け、該導電層上に触媒層を形成するというように、通常の湿式太陽電池とは積層順序が逆にしてもよい。この積層順序により、対極導電層の触媒層上からの剥離を防止することができる。
<導電層を構成する材料>
対極導電層6の導電層を構成する材料は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、インジウム錫複合酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物、チタン、タングステン、金、銀、銅、ニッケルなどの金属材料が挙げられる。膜強度を考慮するとチタンが最も好ましい。
蒸着法による対極導電層6の製膜では、膜自体が多孔質になるため、色素溶液やキャリア輸送材料が移動可能な孔を改めて形成する必要はない。蒸着法による対極導電層6の形成の場合、孔の穴は約1nm〜20nmとなるが、対極導電層6上に触媒層形成しても触媒層材料が対極導電層の孔をとおり、多孔性絶縁層5、さらには多孔性半導体層(光電変換層)に到達することがないことを確認している。
触媒層、白金あるいはカーボンの微粒子分散ペーストから塗布法により形成する場合、微粒子の貫通を抑制するために対極導電層6は緻密であることが必要である。この場合、対極導電層6の孔の形成は、触媒層層後に、触媒層同時に行なえばよい。この場合、好ましい対極導電層材料は、インジウム錫複合酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物、チタン、タングステン、金、銀、銅、ニッケルなどの金属材料など、緻密な膜が形成可能な材料であれば特に限定されない。
上記対極導電層6の膜厚は薄すぎると抵抗が高くなり厚すぎるとキャリア輸送材料の移動の妨げとなる材料の比抵抗率に応じて適宜選択すればよい。
孔の形成は、例えば、レーザー光照射により部分的に蒸発させることによって形成される。
上記孔の径が0.1μm〜100μmであり、間隔が1μm〜200μmで形成されていることが好ましい。さらに、上記孔の径が1μm〜100μmであり、間隔が5μm〜200μmで形成されていることがより好ましい。
<触媒層材料>
触媒層を構成する材料は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、例えば、白金、カーボンが好ましい。カーボンの形態としては、カーボンブラック、グラファイト、ガラス炭素、アモルファス炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンホイスカー、カーボンナノチューブ、フラーレン等が好ましい。
<カバー層>
カバー層7は、電解液の揮発と電池内への水などの浸入を防止するために重要である。
カバー層7を構成する材料は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ほうけい酸ガラス、溶融石英ガラス、結晶石英ガラスなどが挙げられる。特に好ましい材料は、ソーダ石灰フロートガラスである。
<封止材>
封止材8は、電解液の揮発と電池内への水などの浸入を防止するために重要である。
また、封止材8は、(i)支持体に作用する落下物や応力(衝撃)を吸収する、(ii)長期にわたる使用時において支持体に作用するたわみなどを吸収する、等の目的を果たすために重要である。
封止材8を構成する材料は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂やポリオレフィン系樹脂やアイオノマー樹脂などのホットメルト樹脂、ガラスフリットなどが好ましく、これらは2種類以上混合して用いたり、または2種以上を2層以上の積層構造にして用いることもできる。酸化還元性電解質の溶剤としてニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤を使用する場合には、シリコーン樹脂、ホットメルト樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、ガラスフリットが特に好ましい。
<キャリア輸送層>
本発明において、「キャリア輸送層」とは、封止材8の内側の導電層2とカバー層7との間に挟持され、封止材8により担持される領域であって、キャリア輸送材料が注入された領域を意味する。したがって、少なくとも光電変換層4および多孔性絶縁層5にはキャリア輸送材料が充填される。
キャリア輸送材料は、イオンを輸送できる導電性材料で構成され、好適な材料として、例えば、液体電解質、固体電解質、ゲル電解質、溶融塩ゲル電解質などが挙げられる。
液体電解質は、酸化還元種を含む液状物であればよく、一般に電池や太陽電池などにおいて使用することができるものであれば特に限定されない。具体的には、酸化還元種とこれを溶解可能な溶剤からなるもの、酸化還元種とこれを溶解可能な溶融塩からなるもの、酸化還元種とこれを溶解可能な溶剤と溶融塩からなるものが挙げられる。
酸化還元種としては、例えば、I-/I3-系、Br2-/Br3-系、Fe2+/Fe3+系、キノン/ハイドロキノン系などが挙げられる。
具体的には、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)などの金属ヨウ化物とヨウ素(I2)の組み合わせ、テトラエチルアンモニウムアイオダイド(TEAI)、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド(TPAI)、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)、テトラヘキシルアンモニウムアイオダイド(THAI)などのテトラアルキルアンモニウム塩とヨウ素の組み合わせ、および臭化リチウム(LiBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)、臭化カルシウム(CaBr2)などの金属臭化物と臭素の組み合わせが好ましく、これらの中でも、LiIとI2の組み合わせが特に好ましい。
また、酸化還元種の溶媒としては、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物、エタノールなどのアルコール類、水、非プロトン極性物質などが挙げられる。これらの中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が特に好ましい。これらの溶媒は2種類以上を混合して用いることもできる。
固体電解質は、電子、ホール、イオンを輸送できる導電性材料で、太陽電池の電解質として用いることができ、流動性がないものであればよい。具体的には、ポリカルバゾールなどのホール輸送材、テトラニトロフロオルレノンなどの電子輸送材、ポリロールなどの導電性ポリマー、液体電解質を高分子化合物により固体化した高分子電解質、ヨウ化銅、チオシアン酸銅などのp型半導体、溶融塩を含む液体電解質を微粒子により固体化した電解質などが挙げられる。
ゲル電解質は、通常、電解質とゲル化剤からなる。
ゲル化剤としては、例えば、架橋ポリアクリル樹脂誘導体や架橋ポリアクリロニトリル誘導体、ポリアルキレンオキシド誘導体、シリコーン樹脂類、側鎖に含窒素複素環式四級化合物塩構造を有するポリマーなどの高分子ゲル化剤などが挙げられる。
溶融塩ゲル電解質は、通常、上記のようなゲル電解質と常温型溶融塩からなる。
常温型溶融塩としては、例えば、ピリジニウム塩類、イミダゾリウム塩類などの含窒素複素環式四級アンモニウム塩化合物類などが挙げられる。
上記の電解質には、必要に応じて添加剤を加えてもよい。
このような添加剤としては、t−ブチルピリジン(TBP)などの含窒素芳香族化合物、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(DMPII)、メチルプロピルイミダゾールアイオダイド(MPII)、エチルメチルイミダゾールアイオダイド(EMII)、エチルイミダゾールアイオダイド(EII)、ヘキシルメチルイミダゾールアイオダイド(HMII)などのイミダゾール塩が挙げられる。
電解質中の電解質濃度は、0.001〜1.5モル/リットルの範囲が好ましく、0.01〜0.7モル/リットルの範囲が特に好ましい。但し、本発明のモジュールにおいて受光面側に触媒層がある場合、入射光が電解液を通して色素が吸着された多孔性半導体層に達し、キャリアが励起する。そのため、受光面側に触媒層があるユニットセルに用いる電解質濃度により、性能は低下する場合があるので、この点を考慮して電解質濃度を設定するのが好ましい。
<取り出し電極>
対極導電層6には、必要に応じて、取り出し電極(図示せず)が設けられる。取り出し電極により、太陽電池から外部へと電流を取り出す。
取り出し電極の構成材料は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。
<湿式太陽電池の製造方法>
図1(a)に示された湿式太陽電池の製造方法について説明する。
本発明の湿式太陽電池の製造方法は、光透過性の材料からなる支持体1の一方の面に導電層2、多孔性半導体に色素を吸着させた光電変換層4、多孔性絶縁層5、対極導電層6が上記の順に積層された積層体を形成する工程と、上記積層体の外周に封止材8を形成する工程と、上記封止材8に支持されるカバー層7を対向配置する工程と、上記封止材8の内側の上記導電層2と上記カバー層7との間に挟持され、封止材8により担持されるキャリア輸送層にキャリア輸送材料を注入する工程とを有する。
支持体1上に導電層2を形成し、透明電極基板11を作製する方法は、特に限定されず、例えば公知のスパッタ法、スプレー法などが挙げられる。
導電層2に金属リード線(図示せず)を設ける場合は、例えば、公知のスパッタ法、蒸着法などにより支持体1上に金属リード線を形成した上で、該金属リード線を含む支持体1上に導電層2を形成してもよいし、支持体1上に導電層2を形成した上で、導電層2上に金属リード線を形成してもよい。
スクライブライン3は、導電層2をレーザースクライブにより切断して形成する。
透明電極基板11の導電層2上に膜状の多孔性半導体からなる層を形成する方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法などにより、半導体粒子を含有するペーストを導電層上に塗布した後、焼成する方法、ゾル−ゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法などにより、導電層上に成膜する方法などが挙げられる。これらの方法の中で、厚膜の多孔性半導体からなる層を低コストで成膜できることから、ペーストを用いたスクリーン印刷法が特に好ましい。
本発明では、多孔性半導体からなる層をスクライブライン3の近傍に形成するが、上記距離Dを50μm以上にすることが好ましい。スクライブラインに面した導電層の周縁部と光電変換層の周縁部までの距離Dの関係については、上述のとおりである。
半導体粒子として酸化チタンを用いて、多孔性半導体からなる層を形成する方法について、具体的に説明する。
まず、チタンイソプロポキシド(キシダ化学株式会社製)125mLを0.1Mの硝酸水溶液(キシダ化学株式会社製)750mLに滴下して加水分解する。そして、この水溶液を80℃で8時間加熱することにより、ゾル液を調製する。その後、得られたゾル液をチタン製オートクレーブ中で230℃で11時間加熱して、酸化チタン粒子を成長させる。該酸化チタン粒子を超音波で30分間分散することにより、平均粒径(平均一次粒径)15nmの酸化チタン粒子を含むコロイド溶液を調製する。次いで、得られたコロイド溶液に2倍容量のエタノールを加え、これを回転数5000rpmで遠心分離することにより、酸化チタン粒子を得る。
次いで、得られた酸化チタン粒子を洗浄した後、エチルセルロースとテルピネオールを無水エタノールに溶解させたものを加え、攪拌することにより酸化チタン粒子を分散させる。その後、混合液を真空条件下で加熱してエタノールを蒸発させることにより、酸化チタンペーストを得る。最終的な組成として、例えば、酸化チタン固体濃度20wt%、エチルセルロース10wt%、テルピネオール64wt%となるように濃度を調整する。
半導体粒子を含有する(懸濁させた)ペーストを調製するために用いる溶剤としては、上記以外にエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグライム系溶剤、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、イソプロピルアルコール/トルエンなどの混合溶剤、水などが挙げられる。
次いで、上記の方法により半導体粒子を含有するペーストを導電層上に塗布し、焼成して光電変換層を得る。乾燥および焼成は、使用する支持体や半導体粒子の種類により、温度、時間、雰囲気などの条件を適宜調整する必要がある。焼成は、例えば、大気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の範囲内で、10秒〜12時間程度で行なうことができる。この乾燥および焼成は、単一の温度で1回または温度を変化させて2回以上行なうことができる。
多孔性半導体からなる層上に膜状の多孔性絶縁層5を形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法が挙げられる。具体的には、スクリーン印刷法、インクジェット法などにより、半導体粒子を含有するペーストを導電層上に塗布した後、焼成する方法、ゾル−ゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法などにより、導電層上に成膜する方法などが挙げられる。これらの方法の中で、厚膜の多孔性絶縁層を低コストで成膜できることから、ペーストを用いたスクリーン印刷法が特に好ましい。
多孔性絶縁層5上に対極導電層6を形成する方法としては、蒸着法、印刷法などが挙げられる。蒸着法による対極導電層の製膜では、膜自体が多孔質になるため、色素溶液やキャリア輸送材料が移動可能な孔を改めて形成する必要はない。
対極導電層6に孔を形成する場合は、例えば、レーザー光照射により部分的に蒸発させる方法を用いることができる。
多孔性半導体からなる層に色素を吸着させる方法としては、例えば導電層2上に形成された多孔性半導体からなる層を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素を溶解させる溶剤としては、色素を溶解するものであればよく、具体的には、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどの窒素化合物類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類、水などが挙げられる。これらの溶剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
溶液中の色素濃度は、使用する色素および溶剤の種類により適宜調整することができるが、吸着機能を向上させるためにはできるだけ高濃度である方が好ましく、例えば、5×10-4モル/リットル以上であればよい。
封止材8は、熱融着フィルムや紫外線硬化樹脂などを積層体の周囲を囲う形に切り出して作製する。
封止材8のパターンは、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ガラスフリットを使用する場合には、ディスペンサーにより形成することができる。また、ホットメルト樹脂を使用する場合には、シート状のホットメルト樹脂にパターニングした穴を開けることにより封止材8のパターンを形成することができる。
封止材8は、透明電極基板11とカバー層7を貼りあわせるようにこれらの間に配置し、加熱や紫外線照射により固定する。
キャリア輸送材料を、カバー層に予め設けてあった電解質(キャリア輸送材料)注入用孔から注入しキャリア輸送層に充填する。電解質注入孔はキャリア輸送材料の注入後に、紫外線硬化樹脂を用いて封止する。
以上の工程により、図1(a)に示すような湿式太陽電池10が製造される。
<湿式太陽電池モジュール>
図2は、本発明の湿式太陽電池モジュールの要部の層構造を示す概略断面図である。
本発明の湿式太陽電池モジュール20は、支持体1と該支持体1上の一方の面に形成された導電層2とからなる透明電極基板11と、上記透明電極基板11の一方の面に形成された導電層2、多孔性半導体からなる層に色素を吸着させた光電変換層4、多孔性絶縁層5、対極導電層6、任意で設けられる触媒層(図示せず)が上記の順に積層された積層体と、上記積層体の外周に形成される封止材8と、上記触媒層とある距離だけ離されて対向配置され、上記封止材8に支持されるカバー層7と、上記封止材8の内側の上記導電層2と上記カバー層7との間に挟持され、上記封止材8により担持されるキャリア輸送層とを有する湿式太陽電池を含む少なくとも2つ以上の太陽電池が直列に接続されてなる。すなわち、湿式太陽電池モジュールを構成する少なくとも2つ以上の太陽電池の中で、少なくとも1つが本発明の湿式太陽電池であればよい。
また、隣接する湿式太陽電池同士は、一方の湿式太陽電池の触媒層または対極導電層と、他方の太陽電池の導電層とが電気的に接続されていることが好ましい。湿式太陽電池モジュール20の最外周の封止材12の外側の導電層2上に集電電極部13を作製してもよい。
本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例および比較例により本発明が限定されるものではない。
<太陽電池基板の作製>
30mm×30mm×厚さ1.0mmの透明電極基板11(日本板硝子株式会社製、SnO2膜付ガラス)を用意した。該透明電極基板11は、ガラスからなる支持体上にSnO2膜からなる導電層が成膜されたものである。透明電極基板11の導電層をレーザースクライブにより切断することにより、スクライブライン3を形成した。次いで、光電変換層4のパターンを有するスクリーン版とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)を用いて、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名:D/SP)を塗布し、室温で1時間レベリングした。その後、得られた塗膜を80℃に設定したオーブンで20分間乾燥し、さらに500℃に設定した焼成炉(株式会社デンケン製、型番:KDF P−100)を用いて空気中で60分間焼成した。この塗布および焼成工程を3回繰り返し、膜厚15μmの光電変換層4を得た。
光電変換層からスクライブラインまでの距離Dを測定し、D=20、30、40、50、100、150、400、500、550、600、750、1000μmの湿式太陽電池を10個ずつ作製した。
次に、光電変換層上にジルコニア粒子(平均粒経50nm)を含むペーストをスクリーン印刷機を用いて塗布した。その後、500℃、60分間で焼成することにより、様々な膜厚の多孔性絶縁層5を形成した。
次いで、所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて、多孔性絶縁層5上に膜厚400nmのチタンを蒸着速度8Å/sで成膜することにより、導電層を形成した。
さらに所定のパターンが形成されたマスクおよび蒸着装置(アネルバ株式会社製、型番:EVD500A)を用いて、対極導電層6上に蒸着速度4Å/sでPtを成膜することにより触媒層を得た。なお触媒層の大きさ、位置は多孔性半導体層と同じとした。
それぞれの湿式太陽電池について内部短絡についてテスターを用いて確認して、短絡を起こさない最低の多孔性絶縁層の膜厚をそれぞれのDの値について測定した。結果を図3に記載する。
但し、D=20、30、40μmの膜については、多孔性半導体層の剥離が生じた。
図3では、距離Dに対し、500μmまではほぼ線形で絶縁膜厚Yが増加するのに対し、500μm以上では、絶縁膜厚がほぼ一定で変化しないことが分かる。
図3において、500μmまでの絶縁膜厚Y(μm)と距離D(μm)の関係を、線形近似ですると、以下の関係式(1)が導き出される。
Y≧0.02D+6.5 (D≦500)…(1)
また、図より、距離Dが500μmを超えると、短絡を起こさない多孔性絶縁層膜の最低膜厚は、16.5μmとなる。
<実施例1〜9、比較例1〜3>
上記の太陽電池基板の作製で、D=50、100、150、400、500、550、600、750、1000μmの基板を用いて湿式太陽電池を作製した。
以下に実施例1〜9の湿式太陽電池の作製方法の手順を示す。なお、D=20μm(比較例1)、30μm(比較例2)、40μm(比較例3)の太陽電池基板は、多孔性半導体層が剥離したため、湿式太陽電池を作製できなかった。
予め調製しておいた色素吸着用溶液に上記の積層体を室温で100時間浸漬した。その後、積層体をエタノールで洗浄し、約60℃で約5分間乾燥させることにより、光電変換層に色素を吸着させた。
吸着用色素溶液は、上記化学式(4)の色素(Solaronix社製、商品名:Ruthenium620 1H3TBA)を濃度4×10-4モル/リットルになるように、体積比1:1のアセトニトリルとt−ブタノールの混合溶剤に溶解させて調製した。
次いで、積層体が形成された基板と、ガラス基板とを、積層体の周囲を囲う形に切り出した熱融着フィルム(デュポン社製、ハイミラン1855)を用いて貼り合せた。そして、約100℃に設定したオーブンで10分間加熱することによりこれらを圧着した。なお、融解した熱融着フィルムが封止材となる。
次いで、ガラス基板にあらかじめ設けてあった電解液注入用孔から予め調製しておいた電解液を注入して、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)を用いて電解液注入用孔を封止することによりキャリア輸送層にキャリア輸送材料を充填した。以上のようにして、湿式太陽電池(単セル)を完成した。
電解液は、溶剤としてアセトニトリルを用い、酸化還元種としてLiI(アルドリッチ社製)が濃度0.1モル/リットル、I2(キシダ化学社製)が濃度0.01モル/リットルになるようにしたものを用いた。さらに添加剤としてt−ブチルピリジン(アルドリッチ社製)が濃度0.5モル/リットル、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(四国化成工業社製)が濃度0.6モル/リットルになるように調製した。
得られた湿式太陽電池に集電電極部としてAgペースト(藤倉化成株式会社製、商品名:ドータイト)を塗布した。以上のようにして実施例1〜9の湿式太陽電池を作製した。
<実施例10〜19>
スクライブラインに面していない側の多孔性半導体層(光電変換層)の外縁から対極導電層の外縁までの距離Aを変えたことが異なる他は、実施例1と同様の方法により湿式太陽電池を作製した。
すなわち、スクライブラインに面していない側の多孔性半導体層(光電変換層)の外縁から対極導電層の外縁までの距離Aを測定し、対極導電層の外縁が光電変換層の外縁よりも外側にある場合において、それらの外縁の距離A=0、100、200、400、500、550、600、750、1000μmの湿式太陽電池を10個ずつ作製した。また、光電変換層の外縁が対極導電層の外縁よりも外側にある場合において、それらの外縁の距離A=100、200、300、400、500、600、750、1000μmの湿式太陽電池を10個ずつ作製した。それぞれの湿式太陽電池について内部短絡についてテスターを用いて確認し、短絡を起こさない最低の多孔性絶縁層の膜厚をそれぞれの距離Aの値について測定した。結果を図4に記載する。
図4では、距離Aに対し、500μmまではほぼ線形で絶縁膜厚Yが増加するのに対し、500μm以上では、絶縁膜厚がほぼ一定で変化しないことが分かる。
図4において、光電変換層の外縁が対極導電層の外縁よりも内側にある場合において、500μmまでの絶縁膜厚Y(μm)と距離A(μm)の関係を、線形近似ですると、以下の関係式(3)が導き出される。
Y≧0.02A+6.5 (0≦A≦500)…(3)
また、図4より、距離Aが500μmを超えると、短絡を起こさない多孔性絶縁層膜の最低膜厚は、16.5μmとなる。
上記で作製した太陽電池基板において、光電変換層の外縁が対極導電層の外縁よりも外側にある場合、距離A=100、200、300、400、および500μmのものにおける多孔性絶縁層の膜厚を8μmとした。一方、対極導電層の外縁が光電変換層の外縁よりも外側にある場合、距離A=0、100、200、400、および500μmのものにおける多孔性絶縁層の膜厚を15μmとした。なお、実施例10〜19と距離Aとの関係は後掲の表2に示す。
<比較例4〜10>
上記の太陽電池基板の作製で、光電変換層の外縁が対極導電層の外縁よりも外側にある場合において、距離A=600、750、1000μmの湿式太陽電池を比較例4〜6として作製した。このときの多孔性絶縁層の膜厚を8μmとした。一方、対極導電層の外縁が光電変換層の外縁よりも外側にある場合において、距離A=550、600、750、1000μmの湿式太陽電池を比較例7〜10として作製した。このときの多孔性絶縁層の膜厚を15μmとした。上記以外は実施例10〜19と同様の方法により作製した。
(評価方法および結果)
実施例1〜19および比較例4〜10の湿式太陽電池の受光面に、開口部の面積が1.0cm2である黒色のマスクを設置して、この湿式太陽電池に1kW/m2の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率(η)を測定した。その結果を表1および表2に示す。比較例1〜3については、太陽電池が製造できなかったため評価していない。
表1より、Dが500μmを超えると多孔性絶縁層の膜厚が20μm以上必要となり、FFの低下を引き起こし、性能が低下する傾向が見られる。
表1より、距離Aが500μmを超えると多孔性絶縁層の膜厚が16.5μm以上必要となり、FFの低下を引き起こし、性能が低下する傾向が見られる。
(湿式太陽電池モジュールの作製)
<実施例20〜32>
図2に示す湿式太陽電池モジュールの作製した。
先ず、支持体1の表面に導電層2が形成された透明電極基板11(日本板硝子社製、商品名:SnO2膜付ガラス:縦60mm×横37mm)を用意し、透明電極基板11表面のSnO2膜をレーザースクライブにより縦方向に平行にスクライブライン3を形成することで、導電層2を切断した。
次に、実施例1に準じて光電変換層を形成した。形成された光電変換層4の膜厚は25μm、幅5mm、長さ50mmのサイズのものがガラス基板の左端から6.9mmの位置を中心として一つ形成され、この多孔性半導体膜の中心から同等の間隔で同様のサイズのものが3つ形成された。
実施例20〜28のDは実施例1〜9と同じ、D=50、100、150、400、500、550、600、750、1000μmとした。
多孔性半導体からなる層上に実施例1に準じて多孔性絶縁層5を形成した。形成した多孔性絶縁層の膜厚は式(1)または式(2)に準じた。
次に、実施例20〜28では、対極導電層6を実施例1に準じて形成した。形成された対極導電層は、透明電極基板11の左端から7.2mmの位置を中心として、幅5.6mm、長さ50mmのサイズで1つ形成され、その左端の多孔性絶縁層5の中心から7mmの間隔で同様のサイズで3つ形成された。
また、実施例29〜32では、対極導電層6を実施例16〜19に準じて形成した。この場合の距離Aは、実施例16〜19と同様にA=100、200、400、500μmとした。形成した多孔性絶縁層の膜厚は、式(3)に準じたものを用いた。
次に、実施例1に準じて対極導電層6上にPtを成膜して、触媒層を積層した。なお触媒層の大きさ、位置は多孔性半導体からなる層4と同じとした。
得られた積層体を実施例1で用いた色素溶液に室温で120時間浸漬し、多孔性半導体からなる層に色素を吸着させて光電変換層4を形成した。
次に、積層体の間およびセルの周囲に紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製 31X−101)をディスペンサー(EFD社製 ULTRASAVER)により塗布し、カバー層として縦60mm×横30mmのガラス基板を貼り合わせた後、紫外線ランプ(EFD社製 NOVACURE)を用いて紫外線を照射することにより、感光性樹脂を硬化させて封止材8および最外周の封止材12を形成した。
その後、カバー層7として用いたガラス基板にあらかじめ設けてあった電解液注入孔より、実施例1と同じ電解液を注入し、さらに紫外線硬化樹脂を塗布し、封止材と同様に紫外線を照射することで硬化させて封止しキャリア輸送層を形成し、モジュールを完成させた。
得られたモジュールに集電電極部としてAgペースト(藤倉化成株式会社製、商品名:ドータイト)を塗布した。
(評価方法および結果)
実施例20〜32の湿式太陽電池モジュールの受光面に、開口部の面積が13cm2である黒色のマスクを設置した。そして、この湿式太陽電池に1kW/m2の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率を測定した。その結果を表1および表2に示す。
Figure 0005714005
Figure 0005714005
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 支持体、2 導電層、3 スクライブライン、4 光電変換層、5 多孔性絶縁層、6 対極導電層、7 カバー層、8,12 封止材、10 湿式太陽電池、11 透明電極基板、13 集電電極部、20 湿式太陽電池モジュール。

Claims (5)

  1. 光透過性の材料からなる支持体(1)と、
    前記支持体(1)上に、導電層(2)と、多孔性半導体からなる光電変換層(4)と、多孔性絶縁層(5)と、対極導電層(6)とがこの順に積層された積層体を備えた湿式太陽電池(10)であって、
    前記導電層(2)は、スクライブライン(3)を介して、前記光電変換層(4)が積層された第1の領域と、前記光電変換層(4)が積層されていない第2の領域とを有し、
    前記光電変換層(4)は、前記第1の領域の表面の一部に積層され、かつ、前記スクライブライン(3)に面した前記第1の領域の周縁部から前記光電変換層(4)の周縁部までの距離Dが50μm以上500μm以下であり、
    前記多孔性絶縁層(5)の膜厚Yが以下の式(1)を満たす、湿式太陽電池(10)。
    Y≧0.02D+6.5 …(1)
    (式(1)中、Yは前記多孔性絶縁層(5)の膜厚(μm)であり、Dは前記距離D(μm)である。)
  2. 光透過性の材料からなる支持体(1)と、
    前記支持体(1)上に、導電層(2)と、多孔性半導体からなる光電変換層(4)と、多孔性絶縁層(5)と、対極導電層(6)とがこの順に積層された積層体を備えた湿式太陽電池(10)であって、
    前記導電層(2)は、スクライブライン(3)を介して、前記光電変換層(4)が積層された第1の領域と、前記光電変換層(4)が積層されていない第2の領域とを有し、
    前記光電変換層(4)は、前記第1の領域の表面の一部に積層され、かつ、前記スクライブライン(3)に面した前記第1の領域の周縁部から前記光電変換層(4)の周縁部までの距離Dが500μmを超え、前記多孔性絶縁層(5)の膜厚Yが以下の式(2)を満たす、湿式太陽電池(10)。
    Y≧16.5 …(2)
    (式(2)中、Yは前記多孔性絶縁層(5)の膜厚(μm)であ。)
  3. 光透過性の材料からなる支持体(1)と、
    前記支持体(1)上に、導電層(2)と、多孔性半導体からなる光電変換層(4)と、多孔性絶縁層(5)と、対極導電層(6)とがこの順に積層された積層体を備えた湿式太陽電池(10)であって、
    前記導電層(2)は、スクライブライン(3)を介して、前記光電変換層(4)が積層された第1の領域と、前記光電変換層(4)が積層されていない第2の領域とを有し、
    前記光電変換層(4)は、前記第1の領域の表面の一部に積層され、かつ、前記スクライブライン(3)に面していない側の受光面に投影された前記対極導電層(6)の外縁から、前記光電変換層(4)の外縁までの距離Aが、500μm以下であり、
    前記光電変換層(4)の外縁が前記対極導電層(6)の外縁よりも内側にある場合、前記距離Aと、前記多孔性絶縁層(5)の膜厚Yとが以下の式(3)を満たす、湿式太陽電池(10)。
    Y≧0.02A+6.5 …(3)
    (式(3)中、Yは前記多孔性絶縁層(5)の膜厚(μm)であり、Aは前記距離A(μm)である。)
  4. 光透過性の材料からなる支持体(1)と、
    前記支持体(1)上に、導電層(2)と、多孔性半導体からなる光電変換層(4)と、多孔性絶縁層(5)と、対極導電層(6)とがこの順に積層された積層体を備えた湿式太陽電池(10)であって、
    前記導電層(2)は、スクライブライン(3)を介して、前記光電変換層(4)が積層された第1の領域と、前記光電変換層(4)が積層されていない第2の領域とを有し、
    前記光電変換層(4)は、前記第1の領域の表面の一部に積層され、かつ、前記スクライブライン(3)に面していない側の受光面に投影された前記対極導電層(6)の外縁から、前記光電変換層(4)の外縁までの距離Aが、500μmを超え、
    前記多孔性絶縁層(5)の膜厚が16.5μm以上である、湿式太陽電池(10)。
  5. 2つ以上の湿式太陽電池(10)が直列接続された湿式太陽電池モジュール(20)であって、
    前記湿式太陽電池モジュール(20)は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記湿式太陽電池(10)を少なくとも1つ含み、
    前記直列接続は、隣接する湿式太陽電池(10)の一方の湿式太陽電池(10)の対極導電層(6)と、他方の湿式太陽電池(10)の導電層(2)とが電気的に接続される、湿式太陽電池モジュール(20)。
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