JP4155431B2 - 光電変換素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物半導体電極とその表面に吸着した色素と酸化還元対を有する電解質と対向電極とからなる光電変換素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
太陽電池にはいくつかの種類があるが、実用化されているものはシリコン半導体の接合を利用したダイオード型のものがほとんどである。これらの太陽電池は現状では製造コストが高く、このことが普及を妨げる要因となっている。低コスト化の可能性から色素増感型湿式太陽電池が古くから研究されているが、最近、Graetzelらがシリコン太陽電池に匹敵する性能を有するものを発表した(J. Am. Chem. Soc. 115(1993)6382)ことにより、実用化への期待が高まっている。色素増感型湿式太陽電池の基本構造は、金属酸化物半導体電極とその表面に吸着した色素と酸化還元対を有する電解質と対向電極とからなる。Graetzelらは酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物半導体電極を多孔質化して表面積を大きくしたこと及び色素としてルテニウム錯体を単分子妓着させたことにより光電変換効率を著しく向上させた。
【0003】
その後、さらに特性を向上させるべくいくつかの提案がなされている、例えば、特開平9−237641号公報では金属酸化物半導体として酸化ニオブ(Nb25)を用いることにより、開放電圧が大きくなるとされている。また、特開平8−81222号公報ではTiO2電極膜の表面をエッチング処理することにより、格子欠陥や不純物が除去され、変換効率が向上するとされている。
【0004】
しかし、色素増感型湿式太陽電池の光電変換効率を向上させるためには、いかに照射される光を多く吸収するかが最も重要となる。つまり、従来の色素増感型湿式太陽電池においては、照射された光はほとんどセル中を透過してしまい光電変換に利用されていない。そのため、これまでに吸収波長域の広い増感色素の検討が数多くなされている。しかしながら、必ずしも照射光を十分に吸収し、光電変換するまでには至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、このような従来技術の問題点を解決し、照射される光エネルギーの吸収効率を上げることにより、同じ強度の光照射下において光電変換効率を向上させることのできる光電変換素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、従来の金属酸化物半導体電極とその表面に吸着した色素と酸化還元対を有する電解質と対向電極とからなる光電変換ユニットをね合わせる、すなわち光を吸収する働きをする色素が吸着された金属酸化物半導体層を素子内に複数設けることで光の吸収量を上げることにより、光電変換効率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、光の入射側から、第1の透明基板と、第1の透明導電膜と、第1の対向電極と、第1の電解液と、第1の増感色素が表面に吸着した第1の金属酸化物半導体層と、第2の透明導電膜と、第2の透明基板と、第3の透明導電膜と、第2の増感色素が表面に吸着した第2の金属酸化物半導体層と、第2の電解液と、第2の対向電極と、第4の透明導電膜と、第3の透明基板とをこの順に積層してなり、
前記第1の透明導電膜と前記第3の透明導電膜の間の電気的導通をとり、前記第2の透明導電膜及び前記第4の透明導電膜が電流を取り出す電極であることを特徴とする光電変換素子が提供される。また、本発明によれば、上記構成において、第1の透明基板、第3の透明基板、第1の透明導電膜、第3の透明導電膜、第1の対向電極、及び第2の対向電極が同一プロセスで製造可能であることを特徴とする光電変換素子が提供される。また、本発明によれば、上記構成において、一つの金属酸化物半導体層の膜厚が20μm以下であることを特徴とする光電変換素子が提供される。さらに、本発明によれば、上記構成において、第1の増感色素及び第2の増感色素が、それぞれの吸収波長領域が異なる色素であることを特徴とする光電変換素子が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による光電変換素子の構成を、図を用いて説明するが、本発明の実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0009】
まず、図1に従来の色素増感型湿式太陽電池の代表的な構成例を示す。
1はガラス等の透明基板、2はITO、SnO2:F、ZnO:Al等からなる透明導電膜、3は多孔質金属酸化物半導体層、4はルテニウムビピリジル錯体、亜鉛ポルフィリン、銅フタロシアニン、クロロフィル、ローズベンガル、エオシン等の色素、5はI-/I3 -、Br-/Br3 -等の酸化還元対を有する電解液、6はPt等からなる対向電極である。光は図の上方から入射する。
【0010】
次に、本発明の参考形態の一例を図2に基づいて説明する。図2において1a、1b、1cはガラス等の透明基板、2a、2b、2cはITO、SnO2:F、ZnO:Al等からなる透明導電膜、3a、3bは多孔質金属酸化物半導体層、4a、4bはルテニウムビピリジル錯体、亜鉛ポルフィリン、銅フタロシアニン、クロロフィル、ローズベンガル、エオシン等の色素、5a、5bはI/I3 、Br/Br3 等の酸化還元対を有する電解液、6b、6cはPt等からなる対向電極である。光は図の上方から入射する。
【0011】
本構成例は従来のセル構成を二つ重ね、なおかつ上下のセルの電気的導通をとり、2a、2cを電流を取り出す電極とする1つの積層セルとなっている。したがって本素子構成において得られる光起電力は従来の素子構成の約2倍となる。また、入射した光が増感色素4aで吸収されず、透過する光についても、下部の増感色素4bにおいて吸収されるため、発生電流も従来に比べて増大し、光電変換効率も向上する。
なお、4a及び4bの色素は同じものを使用してもよいし、それぞれ別の色素を使用することもできる。特に、それぞれの吸収波長領域が異なる色素を使用する場合、上部の増感色素4aで吸収できなかった光を下部の増感色素4bで吸収できるので、入射光を有効に利用することが出来る。具体的には、ルテニウムビピリジル錯体とフタロシアニンあるいはクロロフィルの組み合わせ等が有効である。
【0012】
また、本発明の実施形態の一例を図3に基づいて以下に説明する。1a、1b、1cはガラス等の透明基板、2a、2b、2b’、2cはITO、SnO2:F、ZnO:Al等からなる透明導電膜、3b、3b’は多孔質金属酸化物半導体層、4b、4b’はルテニウムビピリジル錯体、亜鉛ポルフィリン、銅フタロシアニン、クロロフィル、ローズベンガル、エオシン等の色素、5a、5bはI/I3 、Br/Br3 等の酸化還元対を有する電解液、6a、6cはPt等からなる対向電極である。光は図の上方から入射する。
【0013】
本構成例は図2に示す構成に対して二つの透明導電膜2a、2b間の構成順序が逆転したものであり、なおかつ透明導電膜2aと2b’の間の電気的導通をとり、2b、2cを電流を取り出す電極とする1つの素子となっている。したがって本素子構成において得られる光起電力は従来の素子構成の約2倍となる。また、入射した光が増感色素4bで吸収されず、透過する光についても、下部の増感色素4b’において吸収されるため、発生電流も従来に比べて増大し、光電変換効率も向上する。
【0014】
また、本素子構成においては図2に示す構成に比べて、その製造過程において上部基板1aと下部基板1c、及びその上に形成する透明導電膜2a、2c、対極6a、6cは同一プロセスで製造可能であり、また中央基板1bに形成する金属酸化物半導体層、及び色素の吸着も表裏同一であるため、特に浸漬法などを利用すれば容易に作製可能であるため、低コストで製造可能な素子構成となる。
【0015】
次に、上記太陽電池の製造方法の一例を図3の構成について説明する。
まず、ガラス基板1a、1b、1c上にスパッタリング法、CVD法、ゾルゲル法等により例えばSnO2:F膜2を片面に形成したものを2枚、両面に形成したものを1枚用意する。SnO2:F膜は集電体として機能するためシート抵抗が50Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下とするのが望ましい。
基体には、加熱焼成温度に耐えうるセラミックス、ガラス、耐熱性のプラスチックなどが適用できる。
特に半導体電極を作製する際には金属あるいはITOやSnO2等の透明電極が適用できる。
これらの内、透明導電膜を両面に形成したものについては前述の多孔質金属酸化物半導体薄膜3b、3b’を形成した後、増感色素、例えばルテニウムビピリジル錯体を吸着させる。金属酸化物半導体層の膜厚は1〜20μm程度が好ましい。これは金属酸化物半導体層の膜厚を必要以上に厚くしても得られる電流に限りがある一方で、光の透過率が減少し、第2の金属酸化物半導体層に到達する光が減少するからである。
【0016】
基体に金属酸化物半導体層を形成する塗布液を塗布するためには、例えば、ディッピング、スピンコート、スプレー塗布等の公知の方法が利用できる。
塗布液には基体に対する成膜性を上げるために界面活性剤を加えることができる。また、エチレングリコール等のグリコール類や水溶性高分子などを添加して塗布液の粘性を制御することもできる。
【0017】
金属酸化物半導体層に色素を吸着させるには金属酸化物半導体電極を、水、アルコール、トルエン等の溶媒に該色素を溶かした溶液中に浸漬すればよい。色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基等の官能基を有すると、金属酸化物表面に該色素が化学的に固定されるため好ましい。代表的なものとして[ルテニウム(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)2(イソチオシアナト)2]で表されるルテニウム錯体がある。
前記の片面にSnO2:F膜を形成した基板上にはスパッタリング法、蒸着法、電気化学的方法等により例えばPt(微粒子)層6a、6cを形成する。その膜厚は1〜50nm程度が好ましい。
【0018】
上記のように形成された3枚の基板をスペーサーを介して重ね合わせた後、例えばI-/I3 -酸化還元対を有する電解質溶液5を注入し、シール剤で封止する。電解質溶液としてはエチレンカーボネートとアセトニトリルの混合溶媒にヨウ素とテトラプロピルアンモニウムアイオダイドを加えたもの等が好適に使用できる。
最後に透明導電膜2aと2b’の間の電気的導通をとる。このようにして形成された素子には紫外線を吸収する部材として、例えばCeO2等を含む鉛ガラス(市販のL−40、L−42等のシャープカットフィルターを用いてもよい)を光の入射側に貼り合わせてもよい。
【0019】
参考例1(図2の素子構成)
ガラス基板3枚のうち、2枚については片面、1枚については両面にゾルゲル法によりSnO2:F膜2をシート抵抗が10Ω/□となるように形成した。両面に形成した基板については表裏の導通をとった。このうち基板1b、1cについては真空蒸着法によりPt膜を膜厚20nmに堆積した。また、アナターゼ型酸化チタン粉末(石原テクノ社製)3gに上記過酸化チタンゾル10mlとアセチルアセトン0.2mlを加え、乳鉢で酸化チタン粉末の凝集を解くようにして混合し、塗布液を調製した。この塗布液を上記ガラス基板1a、1b上に塗布し、30分間自然乾燥の後、450℃で30分間加熱焼成し膜厚約10μmの多孔質酸化チタン半導体電極を得た。この多孔質酸化チタン半導体電極を[ルテニウム(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)2(イソチオシアナト)2]で表されるルテニウム錯体のエタノール溶液中に浸漬し、10分間還流してTiO2電極表面にルテニウム錯体を吸着させた。これらの両基板をビーズ又はロッド状の絶縁性スペーサーを介して、約10μmの間隙を保って重ね合わせ、エチレンカーボネートとアセトニトリルの混合溶媒にヨウ素とテトラプロピルアンモニウムアイオダイドを加えた酸化還元電解質溶液を注入した後、エポキシ系接着剤でシールし、光電変換素子を作製した。この光電変換素子の疑似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における光電変換効率は7.5%であった。
【0020】
実施例1(図3の素子構成)
ガラス基板3枚のうち、2枚については片面、1枚については両面にゾルゲル法によりSnO2:F膜2をシート抵抗が10Ω/□となるように形成した。このうち基板1a、1cについては真空蒸着法によりPt膜を膜厚20nmに堆積した。また、アナターゼ型酸化チタン粉末(石原テクノ社製)3gに上記過酸化チタンゾル10mlとアセチルアセトン0・2mlを加え、乳鉢で酸化チタン粉末の凝集を解くようにして混合し、塗布液を調製した。この塗布液を上記ガラス基板1bの両面に塗布し、30分間自然乾燥の後、450℃で30分間加熱焼成し、膜厚約10μmの多孔質酸化チタン半導体電極を得た。この多孔質酸化チタン半導体電極を[ルテニウム(4,4’−ジカルボキシ2,2’−ビピリジン)2(イソチオシアナト)2]で表されるルテニウム錯体のエタノール溶液中に浸漬し、10分間還流してTiO2電極表面にルテニウム錯体を吸着させた。これらの両基板をビーズ又はロッド状の絶縁性スペーサーを介して、約10μmの間隙を保って重ね合わせ、エチレンカーボネートとアセトニトリルの混合溶媒にヨウ素とテトラプロピルアンモニウムアイオダイドを加えた酸化還元電解質溶液を注入した後、エポキシ系接着剤でシールし、光電変換素子を作製した。この光電変換素子の疑似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における光電変換効率は7.8%であった。
【0021】
比較例1(図1の素子構成)
ガラス基板2枚のそれぞれの片面にゾルゲル法によりSnO2:F膜2をシート抵抗が10Ω/□となるように形成した。このうち1枚については真空蒸着法によりPt膜を膜厚20nmに堆積した。
また、アナターゼ型酸化チタン粉末(石原テクノ社製)3gに上記過酸化チタンゾル10mlとアセチルアセトン0.2mlを加え、乳鉢で酸化チタン粉末の凝集を解くようにして混合し、塗布液を調製した。この塗布液をもう一方の上記ガラス基板上に塗布し30分間自然乾燥の後、450℃で30分間加熱焼成し、膜厚約10μmの酸化チタン半導体電極を得た。この多孔質酸化チタン半導体電極を[ルテニウム(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)2(イソチオシアナト)2]で表されるルテニウム錯体のエタノール溶液中に浸漬し、10分間還流してTiO2電極表面にルテニウム錯体を吸着させた。
これらの両基板をビーズ又はロッド状の絶縁性スペーサーを介して、約10μmの間隙を保って重ね合わせ、エチレンカーボネートとアセトニトリルの混合溶媒にヨウ素とテトラプロピルアンモニウムアイオダイドを加えた酸化還元電解質溶液を注入した後、エポキシ系接着剤でシールし、光電変換素子を作製した。
この光電変換素子の疑似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における光電変換効率は6.9%であった。
【0022】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、光の入射側から、第1の透明基板と、第1の透明導電膜と、第1の対向電極と、第1の電解液と、第1の増感色素が表面に吸着した第1の金属酸化物半導体層と、第2の透明導電膜と、第2の透明基板と、第3の透明導電膜と、第2の増感色素が表面に吸着した第2の金属酸化物半導体層と、第2の電解液と、第2の対向電極と、第4の透明導電膜と、第3の透明基板とをこの順に積層してなり、前記第1の透明導電膜と前記第3の透明導電膜の間の電気的導通をとり、前記第2の透明導電膜及び前記第4の透明導電膜が電流を取り出す電極である構成としたので、光電変換効率が向上する。請求項3の発明によれば、一つの金属酸化物半導体層の膜厚を20μm以下にすることにより、複数の色素吸着した金属酸化半導体電極層の光吸収のバランスが良くなるので、光電変換効率がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の光電変換素子の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】参考例1の光電変換素子の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明による光電変換素子の一例を模式的に示す断面図である。

Claims (4)

  1. 光の入射側から、第1の透明基板と、第1の透明導電膜と、第1の対向電極と、第1の電解液と、第1の増感色素が表面に吸着した第1の金属酸化物半導体層と、第2の透明導電膜と、第2の透明基板と、第3の透明導電膜と、第2の増感色素が表面に吸着した第2の金属酸化物半導体層と、第2の電解液と、第2の対向電極と、第4の透明導電膜と、第3の透明基板とをこの順に積層してなり、
    前記第1の透明導電膜と前記第3の透明導電膜の間の電気的導通をとり、前記第2の透明導電膜及び前記第4の透明導電膜が電流を取り出す電極であることを特徴とする光電変換素子。
  2. 第1の透明基板、第3の透明基板、第1の透明導電膜、第3の透明導電膜、第1の対向電極、及び第2の対向電極が同一プロセスで製造可能であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 一つの金属酸化物半導体層の膜厚が20μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 第1の増感色素及び第2の増感色素が、それぞれの吸収波長領域が異なる色素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換素子。
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