JP6170654B2 - 熱可塑性セルロースエステル組成物 - Google Patents

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本発明は、熱可塑性セルロースエステル組成物に関する。
セルロースアセテート等のセルロースエステルは一般的に熱可塑性が乏しいため、通常は可塑剤を含む組成物として使用されている。
セルロースエステル用として代表的なリン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート(TPP)と芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
特許文献1は、平均置換度2.7以下のセルロースエステル、可塑剤および充填剤で構成された樹脂組成物に関する発明であり、剛性および寸法精度に優れた樹脂組成物について記載されている。可塑剤としては、TPPなどのリン酸エステル等が記載されている。
特許文献2は、揮発性が低く、優れた難燃性を付与することができる、ナフチルホスフェート系難燃剤に関する発明であり、汎用の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に対して、十分な難燃性を付与することができる旨が記載されている。前記の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂中にはセルロースエステルは含まれておらず、可塑剤についても記載されていない。
特開2005−194302号公報 特開2003−261711号公報
本発明は、高い熱可塑性を有し、機械的強度の良い成形体が得られる熱可塑性セルロースエステル組成物を提供することを課題とする。
本発明は、(A)セルロースエステル、(B)下記一般式(I)で表されるナフチル基を有するリン酸エステルからなる可塑剤を含む、熱可塑性セルロースエステル組成物である。
Figure 0006170654
(式中、nは0〜3の整数で、n=1を主成分として含んでおり、Rは炭素数1〜4のアルキル基、mは0〜3の整数を示す。)
本発明の熱可塑性セルロースエステル組成物は熱可塑性を有しており、得られた成形体の機械的強度等や難燃性も優れている。
本発明で用いる(A)成分のセルロースエステルは公知のものであり、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
その他、ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテート、アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロース、アセチルヒドロキシエチルセルロース、アセチルヒドロキシプロピルセルロース等も挙げることができる。
(A)成分のセルロースエステルは、平均置換度が2.7以下のセルロースアセテートが好ましく、平均置換度が1.7〜2.7のものがさらに好ましい。
(A)成分のセルロースエステルの重合度は、粘度平均重合度が100〜1000、好ましくは100〜500程度である。
本発明の組成物で用いる(B)成分のリン酸エステルは、上記一般式(I)で表される化合物であり、(A)成分の可塑剤として作用する成分である。
(B)成分の一般式(I)で表されるリン酸エステルは公知のものであり、特許文献2(特開2003−261711号公報)において難燃剤として記載されているものである。
(B)成分の一般式(I)で表されるリン酸エステルは、n=1のリン酸エステルを含む混合物であり、前記混合物中のn=1のリン酸エステルの割合がHPLC(高速液体クロマトグラフィー)による測定で80面積%以上であるものが好ましい。
HPLCは次の条件で測定する。
カラム:東ソー株式会社製、ODS−80TM
溶離液:メタノール90体積%−水10体積%
検知器の波長:254nm
本発明の組成物中の(A)成分と(B)成分の含有割合は、(A)100質量部に対して、(B)成分5〜50質量部が好ましく、10〜40質量部がより好ましい。
本発明の組成物は、さらに(C)成分として芳香族リン酸エステル系難燃剤を含有することができる。本発明の(C)成分の芳香族リン酸エステル系難燃剤は(B)成分を含まない。
(C)成分の芳香族リン酸エステル系難燃剤としては、芳香族縮合リン酸エステルが好ましく、例えば大八化学工業(株)製の商品名「PX−200」、商品名「CR−741」を使用することができる。
(C)成分を含有するときの(B)成分と(C)成分の合計量中の割合は、
(B)成分50〜80質量%が好ましく、55〜70質量%がより好ましく、
(C)成分50〜20質量%が好ましく、45〜30質量%がより好ましい。
(C)成分を含有するときの割合は、(A)成分100質量部に対して(C)成分1〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。
本発明の組成物は、さらに(D)としてリン酸エステルを除くエステル系可塑剤を含有することができる。
(D)成分のエステル系可塑剤としては、
芳香族カルボン酸エステル[フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸ジC1-12アルキルエステル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸C1-6アルコキシC1-12アルキルエステル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸C1-12アルキル・アリール−C1-3アルキルエステル、エチルフタリルエチレングリコレート、ブチルフタリルブチレングリコレートなどのC1-6アルキルフタリルC2-4アルキレングリコレート、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシルなどのトリメリット酸トリC1-12アルキルエステル、ピロメリット酸テトラオクチルなどのピロメリット酸テトラC1-12アルキルエステルなど]、
脂肪酸エステル[アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ブトキシエトキシエチル・ベンジル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチルなどのアジピン酸エステル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチルなどのセバシン酸エステル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチルなど]、
多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)の低級脂肪酸エステル[トリアセチン、ジグリセリンテトラアセテートなど]、
グリコールエステル(ジプロピレングリコールジベンゾエートなど)、
クエン酸エステル[クエン酸アセチルトリブチルなど]、
エステルオリゴマー(カプロラクトンオリゴマーなど)などを挙げることができる。
(D)成分としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、グリセリンエステル、クエン酸エステルから選ばれるものが好ましい。
(D)成分を含有するときの(B)成分と(D)成分の合計量中の割合は、
(B)成分20〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、
(D)成分80〜10質量%が好ましく、70〜20質量%がより好ましい。
(B)成分と(D)成分が上記割合であると、流動性を高めることができるため、射出成形性を高める観点から好ましい。
(D)を含有するときの割合は、(A)成分100質量部に対して(D)成分5〜40質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。
本発明の組成物は、さらに充填剤を含有することができる。
充填剤としては、繊維状充填剤、非繊維状充填剤(粉粒状又は板状充填剤など)が含まれ、例えば、特許文献1(特開2005−194302号公報)の段落番号0025〜0032に記載のものを挙げることができる。
充填剤の含有割合は、(A)成分100質量部に対して、5〜50質量部が好ましい。
本発明の組成物は、特許文献1(特開2005−194302号公報)の段落番号0035〜0042に記載のエポキシ化合物、段落番号0043〜0052に記載の有機酸、チオエーテル、亜リン酸エステル化合物等の安定化剤を含有することができる。
本発明の組成物は、用途に応じて、慣用の添加剤、例えば、他の安定化剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、着色剤(染料、顔料など)、難燃剤(本発明の(B)成分及び(C)成分は除く)、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、流動化剤、ドリッピング防止剤、抗菌剤等を含んでいてもよい。
本発明の組成物は、例えば、各成分をタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダーなどの混合機を用いて乾式又は湿式で混合して調製してもよい。
さらに、前記混合機で予備混合した後、一軸又は二軸押出機などの押出機で混練してペレットに調製する方法、加熱ロールやバンバリーミキサー等の混練機で溶融混練して調製する方法を適用することができる。
本発明の組成物は、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形等によって各種成形品に成形することができる。
本発明の組成物は、例えば、OA・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車等の輸送車両分野、家具・建材等の住宅関連分野、雑貨分野等の各パーツ、ハウジング等に使用することができる。
実施例及び比較例
熱可塑化の評価:
(株)東洋精機製作所製のバッチ式混練装置”ラボプラストミル“に、表1に示す成分を投入し、設定温度210℃、ブレードの回転数100r/m、混練時間3分の条件で混練した。この混練過程において熱可塑化の評価を行った。
物性評価:
物性評価は、ヘンシェルミキサーを用いて、ミキサー内の摩擦熱で70℃以上となるように攪拌混合したものを二軸押出機(シリンダー温度:200℃、ダイス温度:220℃)に供給し、押し出してペレット化した。
得られたペレットを、射出成形機に供給して、シリンダー温度200℃、金型温度50℃、成形サイクル30秒(射出15秒、冷却時間15秒)の条件で試験片を射出成形した。得られた試験片について、特性評価を行った結果を表1に示す。
なお、比較例1、2は、熱可塑化試験の評価からも確認できるとおり、熱可塑化できず、ペレット化することができなかった。
<(A)成分>
セルロースアセテート:(株)ダイセル製、商品名「L50」、置換度2.5、粘度平均重合度180
<(B)成分>
特開2003−261711号公報の合成例1(表2)のリン酸エステルを使用した。
<(C)成分>
下記に示す商品名PX−200、商品名CR−741(いずれも大八化学工業(株)製)
Figure 0006170654
<(D)成分>
商品名「DRA150」(トリアセチン)(ジグリセリンテトラアセテート):(株)ダイセル製
商品名「シトロフレックスA−2」(クエン酸アセチルトリエチル):森村商事(株)社製
(熱可塑化)
熱可塑化は、上記条件で混練後の状態を目視で観察して、混練物が均一な塊状になっている場合を「○」(熱可塑性あり)と表示し、混練物が塊状になっておらず、セルロースアセテートが粉体のままである場合を「×」(熱可塑性なし)と表示した。
(MFR:g/10分)
ISO 1133に基づいて、温度220℃及び荷重10kgで測定した。
(引張強さ・呼び歪み)
ISO527に準拠して、試験片の引張強さおよび引張呼び歪みを測定した(引張強さ単位:MPa、呼び歪み単位:%)。
(曲げ強さ)
ISO178に準じて測定した(単位:MPa)。
(曲げ弾性率)
ISO178に準拠し、曲げ弾性率を測定した(単位:MPa)。
(耐衝撃性(シャルピー))
ISO179/1eAに準じてシャルピー衝撃強さ(kJ/m2)を測定した(単位:KJ/m2)。
(加熱変形温度(HDT))
ISO75に準拠し、荷重1.80MPaで測定した(単位:℃)。
(燃焼試験)
UL−94に規定されている垂直燃焼試験を行った。試験片の厚さは3mmである。
Figure 0006170654
表1の実施例1〜3から確認できるとおり、(A)成分のセルロースエステルに対して(B)成分として公知の難燃剤を配合することで、高い熱可塑性を付与することができたほか、難燃性、機械的強度及び耐熱性が優れた成形体が得られた。
そして、表1の比較例1、2から確認できるとおり、(A)成分のセルロースエステルに対して本発明の(B)成分とは異なる公知の難燃剤を配合した場合には、全く熱可塑性を付与することができず、成形することができなかった。
実施例6から確認できるとおり、(B)及び(C)成分を組み合わせることで、実施例1と比べると流動性を高めることができ、一部の機械的強度も高めることができた。
実施例4、5から確認できるとおり、(B)及び(D)成分を組み合わせることで、流動性とシャルピー衝撃強さを高めることができた。

Claims (4)

  1. (A)セルロースエステル100質量部に対して、
    (B)下記一般式(I)で表されるナフチル基を有するリン酸エステルからなる可塑剤を含有
    (A)成分のセルロースエステルが、平均置換度2.7以下のセルロースアセテートである、熱可塑性セルロースエステル組成物。
    Figure 0006170654
    (式中、nは0〜3の整数で、n=1を主成分として含んでおり、Rは炭素数1〜4のアルキル基、mは0〜3の整数を示す。)
  2. (A)成分100質量部に対して(B)成分5〜50質量部を含有する、請求項1記載の熱可塑性セルロースエステル組成物。
  3. さらに(A)成分100質量部に対して(C)芳香族リン酸エステル系難燃剤((B)成分を含まない)を1〜20質量部含有しており、
    (B)成分と(C)成分の合計量中、(C)成分の含有割合が20〜50質量%である、請求項1又は2記載の熱可塑性セルロースエステル組成物。
  4. さらに(D)リン酸エステルを除くエステル系可塑剤を含有しており、
    (D)成分の可塑剤の含有量が(A)成分100質量部に対して5〜40質量部である、請求項1〜3のいずれか1項記載の熱可塑性セルロースエステル組成物。
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