JP2012077388A - 不織布およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的物性、高温下での剛性、吸水性に優れたセルロース系不織布を提供する。
【解決手段】熱可塑性セルロースエステルを主成分とする樹脂組成物を溶融紡糸して得られる繊維をウェブ化し,熱エンボスロールによって熱接着を施すことによりシート状物を得た後、得られたシート状物をアルカリケン化処理する。繊維同士がバインダーを介することなく固着し一体化しており、タテ方向引張強度が、1.0(N/5cm)/(g/m2)以上であるセルロース系不織布。
【選択図】図1

Description

本発明は、機械的物性、高温下での剛性、吸水性に優れた不織布、特にセルロース系長繊維不織布に関するものである。
セルロース系材料は、光合成による再生産可能なバイオマス材料として、また、環境中にて生分解可能な材料として昨今の大きな注目を集めつつある。セルロース系繊維に関しては、自然界中で産生する綿や麻などの短繊維をそのまま紡績して使用することが古くから行われてきた。一方、長繊維を得るためには、セルロースを特殊な溶剤系で溶解させ湿式紡糸法で製糸を行うか、あるいはセルロースアセテートのようにセルロースエステルをアセトンや塩化メチレン/アルコール混合液などの有機溶媒に溶解させた後、この溶媒を蒸発させながら紡糸する乾式紡糸法での製糸を行う方法が一般的である。これらの湿式紡糸法あるいは乾式紡糸法では、使用する二硫化炭素、アセトンおよび塩化メチレン等の有機溶剤が環境に対して悪影響を及ぼす懸念が強いため、環境との調和を考える場合には、決して良好な製糸方法とはいえない。さらには、これらの方法は、多量の溶剤を用いて紡糸を行うため、紡糸や溶剤回収に多大のエネルギーを要し、また紡糸速度が低いため生産性が低く、製造原価が高いものとなってしまうという問題がある。これらの製法で得られたセルロース系繊維は、熱可塑性を有していないため、熱軟化挙動を利用しての延伸などは困難であった。また湿式紡糸法あるいは乾式紡糸法を用いた場合には、溶媒除去しなくてはならない制約があり、繊維の断面を任意に設計することが困難であった。
また、セルロース系繊維不織布については、湿式紡糸法により得られるセルロース系長繊維不織布が提案されている。(特許文献1)この湿式紡糸法によるセルロース系長繊維不織布は、セルロース繊維が熱可塑性を有さないために熱接着による繊維の接合が困難である結果、ウォータージェットパンチなど繊維絡合によって得られるものである。このため、柔軟性および吸水性に優れる一方、剛性および機械的強度に乏しく、産業資材および生活資材として使用用途が限定されるものであった。これに対し、溶融紡糸法で得られる繊維、また不織布は、エネルギーコストが低く、生産性が高く、様々な形態の繊維が紡糸可能であるという利点を有している。溶融紡糸法によるセルロース系繊維の製造に関しては、例えば特許文献2には熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維が提案され、該繊維を不織布として用いることができる旨の記載がされている。しかし、熱可塑性であるセルロースアセテートプロピオネート繊維から成る不織布では、耐熱性に乏しく、高温下で使用する場合には、軟化、溶融による剛性の低下などの問題があった。
特公昭52−6381号公報 特開2005−273102号公報
本発明の目的は、従来技術の課題を解決し、機械的物性、高温下での剛性、吸水性に優れたセルロース系不織布を、環境負荷の少ない製造方法で提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
すなわち、
(1)セルロース系繊維から成る不織布であって、繊維同士がバインダーを介することなく固着し一体化した部分を有しており、実質的に融点を有さない不織布。
(2)熱可塑性セルロースエステルを主成分とする樹脂組成物を溶融紡糸して得られる繊維をウェブ化し、熱接着を施すことによりシート状物を得た後、得られたシート状物をアルカリケン化処理することを特徴とする不織布の製造方法。
本発明によれば、機械的物性、高温下での剛性、吸水性に優れた不織布を提供することができる。
図1は、本発明の不織布の表面状態を示す顕微鏡拡大写真の一例である。 図2は、本発明の不織布の繊維が固着し一体化している表面状態を示す顕微鏡拡大写真の一例である。 図3は、本発明の垂れ下がり長さを測定する手段を説明するための側面図である。
本発明の不織布は、セルロース系繊維から成る不織布であって、繊維同士がバインダーを介することなく固着し一体化した部分を有しており、実質的に融点を有さないことが極めて重要である。すなわち、繊維同士の固着し一体化した部分を有することにより高い機械的強度を有し、実質的に融点を有さないことで耐熱性を有することができるものである。
本発明でいう融点とは、示差走査型熱量計(DSC)によって測定して得られる融解に伴う融解吸熱曲線の最大値を与える温度であり、実質的に融点を有さないとは、明確な融解吸熱ピークが現れないことをいう。
繊維同士がバインダーを介することなく固着し一体化するとは、図1、図2の顕微鏡拡大写真に示すように、繊維同士が強固に接合し、繊維同士の界面部分が明確でなくなる程度に固着している状態であることを示す。
セルロースは、融点を有さない高分子であるため、熱接着により繊維を溶融状態として接合、固着することは困難であることが知られている。このため、繊維同士をバインダーを介することなく固着させる方法としては、キュプラアンモニウム法やビスコース法など湿式紡糸にて凝固程度を調整したゲル状の再生セルロース繊維を接触、接合した状態で不織布とし、凝固を完了させる方法や熱可塑性を有するセルロースエステルを溶融紡糸にて得られる繊維をウェブ化し、熱接着させた後、アルカリケン化してセルロース繊維とする方法が上げられる。
特に、熱可塑性を有するセルロースエステルを溶融紡糸にて得られる繊維をウェブ化し、熱接着させた後、アルカリケン化してセルロース繊維とする方法が、溶剤を用いず環境負荷が少ない点や、機械的強度を左右する繊維同士が固着し一体化した部分の面積や接合パターンを熱接着の方法によりコントロールが可能である点から、非常に好ましい方法である。
このため、熱接着の方法としては、熱風を不織布厚み方向に透過させるエアスルー法や熱エンボスロールによる熱圧着を用いることができるが、前記繊維同士の固着し一体化した部分の面積をコントロールし、一定の間隔で形成させることが可能な熱エンボスロールによる方法を好ましく用いることができる。ここでいう一定の間隔とは、熱エンボスロールの表面に彫刻された凹凸の円周方向および円周に直交する方向の間隔が一定であることに由来する。このような熱エンボスロールを用いてウェブを熱圧着することにより、ウェブ上に繊維同士の固着し一体化した部分を一定の間隔で形成することが可能である。
熱エンボスロールによって形成された繊維同士の固着した部分の面積は、不織布の全表面積に対し5〜50%であることが好ましい。より好ましくは8〜30%である。固着部分の面積比率が不織布の全表面積が5%未満である場合、必要な機械的強度が得られ難くなるほか、表面の繊維が毛羽立つ傾向にある。
一方、固着部分の面積比率が不織布の全表面積が50%を越える場合は、フィルムライクとなる結果、得られる不織布が硬くなり、また通気性が低下するなど、実用上好ましくない。
本発明の不織布は、製品の機械的強度を高く保つために、単位目付当たりのタテ方向引張強力が、1.0(N/5cm)/(g/m)以上であることが好ましい。より好ましくは、1.2(N/5cm)/(g/m)以上、更に好ましくは1.5(N/5cm)/(g/m)以上である。ここで言う単位目付当たりのタテ方向引張強力とは、不織布のタテ方向(機械進行方向)の引張強度(N/5cm)を目付(g/m)で除した値である。不織布の単位目付当たりのタテ方向引張強力を好ましい範囲内にするには、繊度を小さくし単位面積あたりの繊維本数を増やす方法、および/または繊維同士の固着した部分の面積比率を大きくする方法により達成することができる。
不織布の単位目付当たりのタテ方向引張強力について、上限値は特に定めるものでは無いが、本発明の不織布においては概ね3.0(N/5cm)/(g/m)が上限である。
また、本発明の不織布の目付は、10〜300g/mの範囲のものを好ましく用いることができる。目付10g/m未満となると不織布を製造することが困難となり、目付300g/mを越えると、アルカリケン化前に実施する熱エンボスロール等での熱接着が不十分となるなど、層間剥離の問題が発生する傾向にある。
本発明の不織布は、常温時の垂れ下がり長さが60mm以下で、かつ常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差が35mm以下であることが好ましい。
常温時の垂れ下がり長さを60mm以下とし、より好ましくは55mm以下とし、さらに好ましくは35mm以下とすることにより、シートとして必要な剛性が得られるものである。不織布の常温時の垂れ下がり長さを好ましい範囲内にするには、繊維同士の固着した部分の面積比率を大きくする方法により達成することができる。
さらに、常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差を35mm以下とし、より好ましくは30mm以下とし、さらに好ましくは25mm以下とすることにより、高温下でも軟化し難いために、形態保持性に優れた不織布とすることができる。
常温時の垂れ下がり長さと常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差について、下限値は特に定めるものでは無いが0mm以上である。
本発明でいう垂れ下がり長さとは、剛性や軟化を示す指標であり、垂れ下がり長さを測定する試験の方法は次のとおりである。図3は、本発明の垂れ下がり長さを測定する手段を説明するための側面図である。
まず、垂れ下がり長さを測定しようとする不織布から、長さ200mmで幅20mmの測定片を切り取る。作製された測定片1は、図3に示すように、測定片1の一端2から100mmの部分を直方体の測定片載置ブロック3の上面に、機械的手段あるいは接着剤により固定する。このとき、測定片1の他端は、ブロック3から突き出た状態となる。この状態下で測定片1の突き出た先端と載置ブロック上面との鉛直方向の長さL0(本発明でいう「常温時の垂れ下がり長さ」)を測定する。測定後、測定片1がセットされたブロック3は、120℃の温度の雰囲気中に10分間放置される。この間に、測定片1のブロック3から突き出た部分が軟化し垂れ下がる。10分経過後の測定片4(図3において点線で描かれる)について、突き出た先端と載置ブロック3の上面との鉛直方向の長さL1を測定する。測定したL1からL0を差し引いた長さL2(本発明でいう「常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差」)を求める。この測定を不織布の表裏(各n=2)で測定、平均し、mm単位で小数点第一位を四捨五入することによりL0、L2の値をそれぞれ求める。このL0とL2の大小により、不織布の常温時の剛性と共に高温下での軟化、すなわち、高温下でのシートの形態保持性を評価することができる。本発明で規定するところの「常温時の垂れ下がり長さ」と「常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差」を同時に満足する不織布の方向としては、タテ方向(機械進行方向)でもヨコ方向(機械幅方向)でも何ら構わず、少なくとも一方向で満足していることが重要である。
また、本発明で言う常温は、20℃とし、測定条件として±10℃程度までは許容することができる。
本発明の不織布の吸水能力は170%以上であることが好ましい。170%以上であれば、吸水性を必要とする用途において必要最低限の性能を満たすことが可能である。より好ましい範囲は300%以上である。本発明における吸水能力は、JIS−L1912:1997の6.12.3吸水量に準じて測定した値である。
本発明の不織布に用いるセルロース系繊維は、短繊維、長繊維(フィラメント)のいずれでも良いが、機械的強度やリントフリーの観点からフィラメントから成る長繊維不織布であることが好ましい。
本発明において、不織布を構成する繊維の繊度は0.5〜10dtexが好ましい範囲である。繊度が0.5dtex未満の場合は、生産時に糸切れが生じやすいなど生産安定性の面から好ましくない。一方、繊度が10dtexを越える場合は、例えばフィルターなどに用いた場合にダスト捕集性能に劣る傾向にあり、紡糸生産時に冷却不良による糸切れが生じやすいなど生産安定性の面からも好ましくない。より好ましい繊度の範囲は1〜8dtex、さらに好ましい繊度の範囲は1.5〜6dtexである。ただし、本発明の性能を損なわない範囲で、0.5〜10dtex以外の繊維が含まれていてもかまわない。
繊維断面形状に関しては特に制限がなく、真円状の円形断面であっても良いし、また、多葉形、扁平形、楕円形、W字形、S字形、X字形、Y字形、H字形、C字形、田字形、井桁形、中空などの異形断面糸でも良い。
また、本発明の性能を損なわない範囲で、セルロース系繊維以外の繊維が含まれていてもかまわない。
本発明の不織布のYI値の範囲は、0〜30、より好ましくは0〜20、さらに好ましくは0〜15である。YI値が、30を越えると不織布の着色(黄味)が顕著であり、品位において好ましくない。
次に本発明の不織布の製造方法について詳細に説明する。本発明の不織布の製造方法は、熱可塑性セルロースエステルを主成分とする樹脂組成物を溶融紡糸して得られる繊維をウェブ化し、熱接着を施すことによりシート状物を得た後、得られたシート状物をアルカリケン化処理するものである。
本発明における熱可塑性セルロースエステルとは、セルロースの水酸基がエステル結合によって封鎖されているものを言い、具体的には、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートなどカルボン酸とのエステル結合を有するものであってもよく、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸などオキシカルボン酸あるいはそれらの重合体とのエステル結合を有するものであってもよい。カプロラクトン、プロピオラクトン、バレロラクトン、ピバロラクトンなどの環状エステルあるいはそれらの重合体とのエステルとなっているものであってもよく、さらにはこれらの混合エステルとなっているものでもよい。特にセルロースアセテートプロピオネートが、実用上可能な紡糸条件を採りやすく好ましいものである。
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネートとは、セルロースの水酸基の少なくとも一部がアセチル基およびプロピオニル基に置換されたものである。アセチル基および/またはプロピオニル基で置換されたエステル置換度は、2.0〜3.0であることが好ましい。エステル置換度が2.0未満の場合は、紡糸に必要な熱可塑性を得ることが困難となる。また、アセチル基の平均置換度(DSa)およびプロピオニル基の平均置換度(DSp)は、下記式を満たすことが好ましい。
2.0≦(DSa+DSp)≦3.0
0.1≦(DSa)≦2.5
0.1≦(DSp)≦1.5
DSa/DSp=1.0〜2.5。
アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度が上記式を満たす場合、可塑剤との相溶性が良く、また可塑剤の少量添加により、溶融紡糸可能な熱流動性を有するものとなるため、更には得られる繊維の機械的特性が良好な点からも好ましい態様である。
一方、高温下における寸法安定性を良好とするためには、アセチル基の平均置換度を高くすることが有効である。そのため、アセチル基の置換度は0.5≦(DSa)≦2.5であることがより好ましく、最も好ましくは1.0≦(DSa)≦2.3である。
本発明における熱可塑性セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)は、50,000〜250,000であることが好ましい。Mwが50,000〜250,000であることで、不織布が良好な機械的特性を示すとともに、本発明の目的である高温力学特性を満足させることができる。ただし、重量平均分子量が高すぎると溶融紡糸での紡糸性が低下する傾向にあるため、Mwは70,000〜220,000であることがより好ましく、100,000〜200,000であることが最も好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定により算出した値をいい、実施例にて詳細に説明する。
本発明における熱可塑性セルロースエステルを主成分とする樹脂組成物には、可塑剤を含有していても良い。この際、可塑剤としては、多価アルコール系化合物、特にグリセリン骨格を有した化合物およびポリアルキレングリコール系の化合物が好ましい。
ポリアルキレングリコール系の化合物の具体的な例としては、例えば、平均分子量が200〜1000であるポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどが挙げられ、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
また、可塑剤の含有量は、組成物全体に対して5〜20質量%であることが好ましい。可塑剤の含有量を5〜20質量%とすることで、生産効率の高い溶融紡糸法での生産が可能となり、それにより繊維断面を任意に制御することが可能となったり、複合紡糸が可能となったりする。更には、得られた繊維の高温下における力学的特性は良好であり、工程通過性の優れたものとなる。更には、良好な熱可塑性を生かして延伸を容易に行うことができる。可塑剤の含有量は、より好ましくは7〜20質量%であり、最も好ましくは10〜20質量%である。
本発明における熱可塑性セルロースエステルを主成分とする樹脂組成物には、ホスファイト系着色防止剤を含有していることが好ましい。ホスファイト系着色防止剤を含有している場合、成形温度が高い範囲においても着色防止効果が非常に顕著であり、得られるポリマの色調が良好になる。
ホスファイト系着色防止剤の具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル−4−メチル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、ビス(2.6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−t―ブチル−4−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−t−ブチル−2−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2.6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2.4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトであり、なかでもペンタエリスリトール系が好ましい。
ホスファイト系着色防止剤の配合量は、組成物全体に対して0.005〜0.5質量%であることが好ましい。配合量を0.005質量%以上とすることで加熱時の組成物の着色が抑制できる。より好ましい配合量は0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上である。一方、配合量を0.5質量%以下とすることにより、セルロースアセテートプロピオネートの分子鎖を切断し重合度を低下することによる劣化を抑制することができる。より好ましい配合量は0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
また、本発明における熱可塑性セルロースエステルを主成分とする樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、親水剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有していてもよい。
熱可塑性セルロースエステルを主成分とする樹脂組成物は、溶融紡糸によって繊維とした後、ウェブ化する。
このウェブ化の方法としては、一旦、短繊維を得た後、カードにてウェブ化するカード法や、長繊維を直接ウェブ化するスパンボンド法、メルトブロー法などを用いることができる。
特に、生産性や製造コスト、得られる不織布の機械的強度など総合的観点から、スパンボンド法を用いることが好ましい。スパンボンド法とは、紡糸口金から繊維を紡出し、冷却しながらエアサッカーにより牽引、延伸して連続フィラメントとし、これを開繊してネットコンベアなどの移動捕集面上に堆積させて繊維ウェブを形成する方法である。
また、スパンボンド法(S)とメルトブロー法(M)で得られるウェブの積層体、いわゆるSM積層、SMS積層、SMMS積層、SSMMS積層としたウェブを用いることも可能である。
セルロースアセテートプロピオネートを主成分とする樹脂組成物の溶融紡糸に際しては、樹脂組成物の熱分解を抑制することが重要であり、紡糸温度は180〜260℃が好ましく、より好ましくは190〜250℃である。紡糸温度が260℃を越えると、熱分解による紡糸での糸切れや、得られる不織布の黄変が著しくなる傾向にある。また、180℃未満では、溶融粘度が高く、溶融紡糸が困難となる傾向となる。
また、紡糸口金の単孔吐出量は0.43〜6.50g/min/holeの範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は0.50〜3.00g/min/hole、さらに好ましい範囲は0.60〜1.70g/min/holeである。単孔吐出量が0.43g/min/holeより小さいときは紡糸不安定となり糸切れが多発したり、吐出量が少なく紡糸ラインや口金内での樹脂組成物の滞留時間長くなる結果、熱分解が起こり不織布の黄変が顕著となる傾向にある。一方、単孔吐出量が6.50g/min/holeを越えると吐出後の糸の冷却が不十分となり、繊維同士の融着が発生する傾向にあり好ましくない。
スパンボンド法において、紡糸速度は1,000〜6,500m/minであることが好ましく、より好ましくは2000〜6000m/minである。紡糸速度が1000m/min未満は、エアサッカーに用いる圧縮空気の圧力を低く設定する必要があるが、一般的なスパンボンド紡糸設備において圧縮空気の圧力を安定的に供給することが困難となる傾向にある。一方、紡糸速度が6500m/minを越えると、紡糸安定性が悪化し糸切れが多発する傾向にあるばかりか、高圧の圧縮空気が必要となるためエネルギー消費量が大きく、コスト的に好ましくない。
得られたウェブを熱接着する方法としては、特に限定されるものでなく、熱風を不織布厚み方向に透過させるエアスルー法や、熱エンボスロールによる熱圧着、あるいは超音波発振装置とエンボスロールによる熱接着などを用いることができる。特に、生産性や、不織布の機械的強度の観点から、熱エンボスロールによる熱圧着が特に好ましい。
本発明において、熱エンボスロールの熱接着部分の形状は、円形、楕円形、多角形、十字型等の異形、あるいはこれらの組合せ等、何ら制限されるものではない。
熱接着をしたシート状物をアルカリケン化処理する方法は、アルカリ化合物を含有する水溶液を用いるものである。アルカリ化合物とは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどアルカリ金属の弱酸塩等が挙げられ、単独、もしくは混合して用いても良い。これらのアルカリ化合物水溶液の濃度は特に制約はないが、アルカリ化合物の強さ、処理温度に応じて変えればよい。特に好ましくは、強アルカリのアルカリ金属水酸化物であれば、0.5質量%以上10質量%以下の濃度で用いる。さらに好ましくは、1.0質量%以上5質量%以下であれば、処理時間が短く、かつアルカリの無駄も少ないため、望ましい。4級アンモニウム塩などのアルカリ減量促進剤を併用すると、加水分解を短時間で進めることが出来るので有効である。本発明のためのアルカリ処理は、通常染色加工に用いられているチーズ染色機、液流式染色機、ウインス、ジッカー、ビーム染色機の他、処理液をパッド付与した後に常圧スチーム、加圧スチーム、乾熱処理など、素材の形態や目的にあわせて用いればよい。
本発明の不織布は、機械的強度や耐熱性に優れるため、土木資材、農業資材、生活資材、工業資材に好ましく用いることができる。
以下、実施例に基づき本発明につき具体的に説明するが、本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。なお、下記実施例における各特性値は、次の方法で測定したものである。
(1)セルロースエステルの平均置換度
80℃で8時間乾燥したセルロースエステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加えて溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により平均置換度を算出した。
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×
TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace)]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料質量(g)
DSace:アセチル基の平均置換度
DSacy:アシル基の平均置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量。
(2)重量平均分子量
セルロースエステルの濃度が0.15重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件の下、Waters2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を算出した。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値を重量平均分子量(Mw)とした。
カラム :東ソー製TSK gel GMHHR−Hを2本連結
検出器 :Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒 :テトラヒドロフラン
流速 :1.0ml/分
注入量 :200μl。
(3)繊度(dtex)
不織布からランダムに小片サンプル5個を採取し、繊維同士が固着していない部分について走査型電子顕微鏡で500〜1000倍の断面写真を小片サンプル1個につき2枚、計10枚撮影した。各写真から10本ずつ、計100本の繊維の断面積を測定し、それらの平均値について小数点以下第三位を四捨五入して、繊維の断面積とした。得られた断面積と繊維に用いられるポリマの固形密度から長さ10,000m当たりの質量を繊度(dtex)として、小数点以下第二位を四捨五入して算出した。なお、ポリマの固形密度は、セルロースは1.50、セルロースアセテートプロピオネートは1.25、ポリエチレンテレフタレートは1.31として算出した。
(4)紡糸速度(m/min)
繊維の平均単繊維繊度(dtex)と各条件で設定した紡糸口金単孔から吐出される樹脂の吐出量(以下、単孔吐出量と略記する。)(g/min)から、下記式に基づき紡糸速度を算出した。
紡糸速度=(10,000×単孔吐出量)/平均単繊維繊度
(5)目付(g/m
JIS L1906:2000 5.2単位面積当たりの質量に準じて測定した。
(6)YI値
不織布からランダムに小片サンプルを3個採取して、MINOLTA SPECTROPHTOMETER CM−3700d(ミノルタ(株)社製)を用いて、D65光源、視野角は10度とし、色の三刺激値のひとつであるYI値を測定し、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入して求めた。
(7)不織布の厚さ(mm)
不織布よりランダムに小片サンプル10個を採取し、JIS L1906:2000 5.1厚さに準じてディスク径10mm、荷重10kPaで測定し、それらの平均値の小数点以下第三位を四捨五入して求めた。
(8)固着部分の面積比率(%)
不織布からランダムに小片サンプル3個を採取し、走査型電子顕微鏡で1枚の写真の中に繊維同士が固着し一体化している部分が写るよう倍率を50倍に調整したのちに、サンプル1個につき1枚、計3枚の不織布表面写真を撮影した。写真1枚あたりの繊維同士が固着し一体化している部分の面積S1’を測定し、それらの平均値の小数点以下第三位を四捨五入して繊維同士が固着し一体化している部分の面積S1(mm)を求めた。また、撮影した写真の総面積S2’を測定し、それらの平均値の小数点以下第三位を四捨五入して写真の総面積S2(mm)を求めた。さらに得られた値から下記式を用いて固着部分の面積比率RS(%)を求め、小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
RS=S1/S2×100。
(9)融点(℃)
示差走査型熱量計(島津製作所社製、DSC−60)を用いて、試料質量を2mgとし、昇温速度を10℃/分として測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点(℃)とした。
(10)質量減少率(%)
未処理の乾燥シート(不織布)の質量W0、ケン化処理後の乾燥シート(不織布)の質量をW1としたとき、(W0−W1)/W0×100で表した。シート(不織布)の乾燥は、脱水後60℃の乾燥機で2時間乾燥させることとした。
(11)タテ方向引張強力(N/5cm)
JIS L1906:2000 5.3引張強さ及び伸び率に準じてタテ方向の引張強力を測定した。尚、平均値について小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
(12)単位目付当たりのタテ方向引張強力(N/5cm)/(g/m
(11)にて算出したタテ方向引張強力を(5)にて算出した目付で除し、得られた値の小数点以下第二位を四捨五入して、単位目付当たりのタテ方向引張強力(N/5cm)/(g/m)を求めた。
(13)垂れ下がり長さ(mm)
前記[発明を実施するための形態]に記載の方法により、不織布の縦方向(機械進行方向)における常温(20℃)時の垂れ下がり長さと、常温(20℃)時と120℃時での垂れ下がり長さの差を求めた。
(14)吸水能力(%)
吸水能力の測定は、JIS L1912:1997 6.12.3吸水量に準じて実施した。吸水能力は以下の方法により求めた。すなわち、不織布からランダムに幅10cm×長さ10cmの試験片を5個採取し、1個の試験片の重さが1g未満のときは、1gになるまで試験片を重ねた。この試験片を0.01gの精度をもつカバーつきのひょう量ガラスで重さを量った。この試験片をステンレス金網に縁をクリップで止め、室温の水槽に水面下20mmに斜めに入れて気泡の出ないようにした。60秒後に試験片と金網を取り出し、一端のクリップを残して他のクリップを外し、垂直に120秒間つるし、水分を切った後金網から試験片を外し、ひょう量ガラスに入れて重さを量った。これを5回繰り返した。吸水能力WA(%)は,下記の式で小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
WA=(MN−MK)/MK×100
ここに、WA:吸水能力(%)
MK:5回の最初の重さの平均値(g)
MN:試験後の重さの平均値(g)。
合成例1
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)100質量部に、酢酸240質量部とプロピオン酸67質量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172質量部と無水プロピオン酸168質量部をエステル化剤として、硫酸4質量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100質量部と水33質量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333質量部と水100質量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6質量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度は2.0、プロピオニル置換度は0.7(セルロースエステル全置換度2.7)であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
製造したセルロースアセテートプロピオネート82.0質量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.9質量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1質量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.6万)を得た。
実施例1
合成例1にて得たセルロースエステル組成物ペレットを、真空乾燥機にて80℃で12時間乾燥させ水分率800ppmに調製したものを原料とし、単軸型溶融紡糸機を用いて、紡糸温度260℃にて溶融させ、吐出量1.68g/min/holeの条件で、0.3mmφ−0.60mmLの口金孔を有する口金より紡出させた。紡出糸条をエジェクター(エアサッカー)にて紡速5746m/分で紡糸し、移動するネット上に捕集してウェブを得た後、連続的に温度120℃の熱エンボスロールにて線圧100kgf/cmで熱圧着を行い、繊度2.9dtex、目付115g/mのセルロースアセテートプロピオネートスパンボンド不織布を得た。
得られた不織布を用いて、以下のアルカリケン化処理を行った。
水酸化ナトリウム2.25質量%
浴比1:50
95℃60分、浴中処理
ケン化処理後の不織布は、十分水洗の後、酢酸1g/l、60℃で中和洗浄を行い、100℃のオーブンで30分間乾燥した。ケン化後の質量減少率は31%で、得られたセルローススパンボンド不織布の固着部分の面積比率は8%であった。また、DSC測定において融点に帰属される融解吸熱ピークは認められなかった。
不織布の特性を評価したところ、繊度2.4dtex、不織布の厚さ0.58mm、目付79g/m、タテ方向引張強力130N/5cm、単位目付当たりのタテ方向引張強力1.6(N/5cm)/(g/m)、常温時の垂れ下がり長さ27mm、常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差23mm、吸水能力408%、YI値7であった。
実施例2
目付を38g/mとした以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、セルロースアセテートプロピオネートスパンボンド不織布を得た。
得られた不織布に対して、実施例1と同様の方法にてアルカリケン化処理を行い、セルローススパンボンド不織布を得た。ケン化後の質量減少率は27%で、得られたセルローススパンボンド不織布の固着部分の面積比率は8%であった。また、DSC測定において融点に帰属される融解吸熱ピークは認められなかった。
不織布の特性を評価したところ、繊度2.4dtex、不織布の厚さ0.22mm、目付28g/m、タテ方向引張強力35N/5cm、単位目付当たりのタテ方向引張強力1.3(N/5cm)/(g/m)、常温時の垂れ下がり長さ32mm、常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差23mm、吸水能力は485%、YI値7であった。
実施例3
吐出量1.14g/min/hole、紡速1986m/分とした以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、繊度5.7dtex、目付119g/mのセルロースアセテートプロピオネートスパンボンド不織布を得た。
得られた不織布に対して、実施例1と同様の方法にてアルカリケン化処理を行い、セルローススパンボンド不織布を得た。ケン化後の質量減少率は25%で、得られたセルローススパンボンド不織布の固着部分の面積比率は8%であった。また、DSC測定において融点に帰属される融解吸熱ピークは認められなかった。
不織布の特性を評価したところ、繊度4.1dtex、不織布の厚さ0.47mm、目付90g/m、タテ方向引張強力122N/5cm、単位目付当たりのタテ方向引張強力1.4(N/5cm)/(g/m)、常温時の垂れ下がり長さ52mm、常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差24mm、吸水能力は393%、YI値10であった。
実施例4
吐出量0.55g/min/hole、紡速2913m/分とした以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、繊度1.9dtex、目付95g/mのセルロースアセテートプロピオネートスパンボンド不織布を得た。
得られた不織布に対して、実施例1と同様の方法にてアルカリケン化処理を行い、セルローススパンボンド不織布を得た。ケン化後の質量減少率は25%で、得られたセルローススパンボンド不織布の固着部分の面積比率は8%であった。DSC測定において融点に帰属される融解吸熱ピークは認められなかった。
不織布の特性を評価したところ、繊度1.8dtex、不織布の厚さ0.44mm、目付72g/m、タテ方向引張強力120N/5cm、単位目付当たりのタテ方向引張強力1.7(N/5cm)/(g/m)、常温時の垂れ下がり長さ27mm、常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差24mm、吸水能力は412%、YI値25であった。
実施例5
吐出量0.54g/min/hole、紡速2088m/分とした以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、繊度2.6dtex、目付230g/mのセルロースアセテートプロピオネートスパンボンド不織布を得た。
得られた不織布に対して、実施例1と同様の方法にてアルカリケン化処理を行い、セルローススパンボンド不織布を得た。ケン化後の質量減少率は29%で、得られたセルローススパンボンド不織布の固着部分の面積比率は8%であった。DSC測定において融点に帰属される融解吸熱ピークは認められなかった。
不織布の特性を評価したところ、繊度2.2dtex、不織布の厚さ0.78mm、目付164g/m、タテ方向引張強力284N/5cm、単位目付当たりのタテ方向引張強力1.7(N/5cm)/(g/m)、常温時の垂れ下がり長さ17mm、常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差22mm、吸水能力は307%、YI値24であった。
実施例6
紡糸温度250℃、吐出量0.55g/min/hole、紡速1087m/分とした以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、繊度5.1dtex、目付114g/mのセルロースアセテートプロピオネートスパンボンド不織布を得た。
得られた不織布に対して、実施例1と同様の方法にてアルカリケン化処理を行い、セルローススパンボンド不織布を得た。ケン化後の質量減少率は27%で、得られたセルローススパンボンド不織布の固着部分の面積比率は8%であった。DSC測定において融点に帰属される融解吸熱ピークは認められなかった。
不織布の特性を評価したところ、繊度3.7dtex、不織布の厚さは0.57mm、目付は84g/m、タテ方向引張強力133N/5cm、単位目付当たりのタテ方向引張強力1.6(N/5cm)/(g/m)、常温時の垂れ下がり長さ26mm、常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差23mm、吸水能力は401%、YI値13であった。
実施例1〜6で得られた不織布の特性を表1に示すが、いずれの不織布も引張強力、高温下での剛性、吸水能力に優れたものであった。
比較例1
実施例1にて得られたセルロースアセテートプロピオネートスパンボンド不織布を、アルカリケン化処理せずにそのまま不織布とした。DSC測定において220℃に融解吸熱ピークが存在し、220℃に融点を有していた。
不織布の特性を評価したところ、繊度2.9dtex、不織布の厚さは0.30mm、目付は115g/m、タテ方向引張強力123N/5cm、単位目付当たりのタテ方向引張強力1.1(N/5cm)/(g/m)、常温時の垂れ下がり長さ38mm、常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差65mm、吸水能力は135%、YI値7であった。
比較例2
溶融紡糸法によって製造された繊度1.9dtex、目付80g/mのポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布につい不織布の特性を評価した。
不織布の固着部分の面積比率は16%で、DSC測定においてポリエチレンテレフタレートの融点に帰属される融解吸熱ピーク(260℃)を有していた。
不織布の厚さは0.36mm、タテ方向引張強力290N/5cm、単位目付当たりのタテ方向引張強力3.6(N/5cm)/(g/m)、常温時の垂れ下がり長さ12mm、常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差75mm、吸水能力は80%であった。
比較例3
キュプラアンモニウム法によって得られた再生セルロース長繊維をウォータージェットパンチすることにより製造された繊度1.9dtex、目付28g/mのセルロース長繊維不織布について不織布の特性を評価した。
該不織布は固着部分を有しておらず、DSC測定において融点に帰属される融解吸熱ピークは認められなかった。
不織布の厚さは0.25mm、タテ方向引張強力26N/5cm、単位目付当たりのタテ方向引張強力0.9(N/5cm)/(g/m)、吸水能力は1021%、常温時の垂れ下がり長さ98mmと剛性がないものであった。
実施例1〜6で得られた不織布の特性を表2に示すが、比較例1、2の不織布は、それぞれ220℃、260℃に融点を有しており、常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差が大きく、高温下での剛性に劣るものであった。
また、比較例3は、繊維同士の固着部分を有していないため、強度、剛性において劣ったものであった。
本発明の不織布の用途は、何ら制限されるものではないが、機械的強度や剛性に優れることから土木資材、農業資材、生活資材、工業資材いずれにも好ましく用いられる。

Claims (10)

  1. セルロース系繊維からなる不織布であって、繊維同士がバインダーを介することなく固着し一体化した部分を有しており、実質的に融点を有さないことを特徴とする不織布。
  2. 単位目付当たりのタテ方向引張強力が、1.0(N/5cm)/(g/m)以上である請求項1に記載の不織布。
  3. 常温時の垂れ下がり長さが60mm以下で、かつ常温時と120℃時での垂れ下がり長さの差が35mm以下である請求項1または2に記載の不織布。
  4. 前記セルロース系繊維が、長繊維である請求項1〜3いずれかに記載の不織布。
  5. 前記繊維同士の固着し一体化した部分は、一定の間隔で形成されている請求項1〜4いずれかに記載の不織布。
  6. 熱可塑性セルロースエステルを主成分とする樹脂組成物を溶融紡糸して得られる繊維をウェブ化し、熱接着を施すことによりシート状物を得た後、得られたシート状物をアルカリケン化処理することを特徴とする不織布の製造方法。
  7. 前記熱可塑性セルロースエステルが、セルロースアセテートプロピオネートである請求項6記載の不織布の製造方法。
  8. 前記セルロースアセテートプロピオネートのエステル置換度が2.0〜3.0、重量平均分子量が50,000〜250,000である請求項7記載の不織布の製造方法。
  9. 前記繊維をウェブ化する方法が、スパンボンド法である請求項6〜8いずれかに記載の不織布の製造方法。
  10. 前記熱接着が、熱エンボスロールによって行うものである請求項6〜9いずれかに記載の不織布の製造方法。
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