JP2870712B2 - 耐久親水性に優れた熱融着性複合繊維 - Google Patents

耐久親水性に優れた熱融着性複合繊維

Info

Publication number
JP2870712B2
JP2870712B2 JP8770091A JP8770091A JP2870712B2 JP 2870712 B2 JP2870712 B2 JP 2870712B2 JP 8770091 A JP8770091 A JP 8770091A JP 8770091 A JP8770091 A JP 8770091A JP 2870712 B2 JP2870712 B2 JP 2870712B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
polyester
unit
mol
compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP8770091A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH04222221A (ja
Inventor
正夫 河本
和彦 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KURARE KK
Original Assignee
KURARE KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KURARE KK filed Critical KURARE KK
Priority to JP8770091A priority Critical patent/JP2870712B2/ja
Publication of JPH04222221A publication Critical patent/JPH04222221A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2870712B2 publication Critical patent/JP2870712B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Artificial Filaments (AREA)
  • Multicomponent Fibers (AREA)
  • Spinning Methods And Devices For Manufacturing Artificial Fibers (AREA)
  • Nonwoven Fabrics (AREA)
  • Paper (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた親水性を有する
熱接着性複合繊維に関するものであり、しかも該繊維を
用いた繊維集合体を製造する際に工程トラブルがなく順
調に製造を行うことができる繊維に関するものであり、
その目的とするところは、特に工程トラブルがなく、耐
久性に高度に優れた親水性を有し、しかも安全性も問題
とならないポリエステル系熱接着性複合繊維を提供する
ことにある。
【0002】
【従来技術】繊維間熱融着により不織布等を製造するた
めの熱接着性複合繊維は従来より知られている。例えば
ポリエチレンを接着成分とするポリエチレン−ポリプロ
ピレン複合繊維、共重合ナイロンを接着成分とするポリ
プロピレンとの複合繊維、あるいはエチレン−ビニルア
ルコール共重合体を接着成分とするポリエチレンテレフ
タレートとの複合繊維等がある。
【0003】近年、繊維分野特に不織布分野でポリエチ
レンテレフタレートを代表とするポリエステル繊維の役
割が大きくなり、生産効果、省エネルギー等の観点よ
り、熱接着により繊維集合体あるいは繊維製品、特に不
織布の要求が大となり、ポリエステル用の接着繊維が強
く望まれている。そこで、ポリエステルを接着相手とす
る熱融着性繊維が種々開発されているが、ポリエステル
繊維を接着させるには、化学構造および溶解度パラメー
ターの類似性よりポリエステル系ポリマーを接着成分と
して用いるのが、不織布の接着強度の上からも、また工
程通過性の上からも好ましい。実際、ポリエステルを接
着相手とする溶剤溶解型あるいはホット・メルト型の接
着剤としては、ガラス転移点の低い多くの軟化性の非晶
性共重合ポリエステルが提案されている。
【0004】しかるに、ガラス転移点の低い軟化性の非
晶性共重合ポリエステルを接着繊維として用いる場合に
は、繊維あるいは不織布製造工程で特有の装置、特有の
熱履歴を経由するため、つまり、ポリマーの軟化点以上
の温度での処理工程の所で、非晶性共重合ポリエステル
が軟化融着してしまい、繊維化が不可能な結果となり、
通常の接着剤用共重合ポリエステルは全く使用すること
ができない。
【0005】例えば、溶融ポリマーを紡糸口金より押し
出して繊維状とし、繊維束をケンスに収めるかボビンに
巻き取る際、単繊維間あるいは繊維束間での膠着が激し
く、紡糸繊維を得ることが困難となる。さらに続いて、
延伸、捲縮および切断等を行うと、さらに単繊維間の膠
着、融着が起こり良好な繊維を得ることができない。特
に、生産量を大とするためにトータルデニール数の大き
い繊維束を取り扱う場合には、繊維製造工程での問題点
はさらに顕著となる。またたとえ不完全ながら繊維化を
行ったとしても、例えば不織布化する場合、ネップの発
生等の問題でカード通過性が不良であったり、接着処理
時に粘着トラブルが続発し、不織布とすることができな
い。この紡糸およびそれ以降での繊維化ならびに不織布
製造工程で要求される工程性は非常に厳しいものであ
り、溶融ポリマーを重合槽より取り出して、ペレット状
に切断するチップ化工程およびペレットを紡糸機に直結
したエクストルーダーに供給する前の乾燥工程をトラブ
ルなく通過したとしても、繊維化あるいは不織布化でき
るものはほとんどない。
【0006】一方、共重合ポリエステルでも、その種類
によっては、共重合成分量を小とし、改質度を落とせ
ば、つまり、結晶化度が高いレベルを維持し、かつ結晶
化速度の速いポリマーとなり、繊維あるいは不織布製造
の工程性は良好となるが、このような繊維は、現在商業
的に大量生産されているポリエチレンテレフタレート
(以下PETと略記)あるいはポリブチレンテレフタレ
ート(以下PBTと略記)などのポリエステルとの接着
性が小となるのが一般であり、接着繊維として用いるこ
とはできない。
【0007】一方、得られたポリエステル系不織布に耐
久性のある親水性を付与出来るポリエステル系熱融着性
繊維に関してもその開発が求められているが、現実には
今だ開発されていない。特に最近ベビーおむつやおむつ
ライナー、生理用品などの衛生材料分野、外食産業向け
のカウンタークロス、台所用品の流し台の水切り袋など
の非衛生材料分野や、シップ薬の基布や固定用シート、
病院用手術衣、マスク等のメデイカル分野などに、不織
布が広く使用されてきている。これらの多くの不織布製
品の中で、特にベビーおむつや生理用品などのものにつ
いては、従来のもの以上に耐久性のある親水性能が求め
られていた。しかるに今迄のものは、親水化油剤等によ
る表面処理すなわち後加工方法によるものがほとんど
で、これは初期性能はあっても、ある程度使用した場合
に表面油剤が脱落し、性能が極端に低下するものが多か
った。
【0008】その中でも、おむつの表面材や生理用パッ
トの表面材の湿式用不織布用途では、製造工程上必ず水
中での抄紙工程を経るため、繊維表面への親水化剤のコ
ーティング方法では抄紙時に該親水化剤が脱落してしま
い、最終製品では十分な性能が保持されていないものし
か得られない。また木材パルプやレーヨン等の親水性素
材を混抄混綿した場合、熱融着性繊維が疎水性であって
は、得られる不織布、あるいはシートの親水性が失われ
てしまうという問題がある。
【0009】また、最近親水化剤であるポリオキシアル
キレングリコールとスルホン酸金属誘導体を変性ポリエ
ステル中へ練込んで耐久性のある吸液−保液性を付与す
る試みが提案されている。しかしながら、スルホン酸金
属誘導体は一般に人体に有害な化合物であり、このよう
な化合物を含有させた変性ポリエステル繊維で構成され
たウエットワイプ用不織布などは含水アルコールなどの
湿潤剤へ浸漬させると繊維中へ練込まれたスルホン酸金
属誘導体などが大量に溶出する問題点があった。該不織
布を使用した場合、被払拭物を汚染したり、身体に使用
する場合衛生上と安全性の問題が生じたりした。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリ
エステルとの接着性に優れ、かつ繊維および不織布製造
等の工程性が良好な繊維であり、しかも得られた乾式不
織布及び湿式不織布のいずれに対しても、水洗あるいは
温水で洗たく等を行った後であっても親水性が実質的に
低下しない、親水耐久性の極めて優れた熱融着性繊維を
提供することにある。
【0011】更に、繊維中からの親水化剤の溶出が少な
く、しかも溶出物が人体に対して安全性の点で問題とな
らない耐久親水性熱融着性繊維を提供することにある。
また本発明の他の目的は、木材パルプやビスコースレー
ヨンあるいはビニロンのような親水性素材を用いて熱融
着性繊維で不織布あるいはシートを得る場合にも、該熱
融着性繊維が親水性素材の親水性を阻害することなく、
親水性を発揮させることができる親水耐久性の優れた熱
融着性繊維を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の繊維は、ポリア
ルキレンオキサイド鎖を有する基がポリアルキレンポリ
アミン系骨格に結合した化合物であってかつ特定の条件
を満たしている化合物を、所定量で、特定のポリマーで
かつ特定のポリマー物性を有している結晶性のポリエス
テル中へ含有分散せしめ、この含有分散させたものを鞘
成分とし、融点150℃以上の熱可塑性ポリマーを芯成
分として、複合繊維とすることを特徴とする耐久親水性
を有する熱接着性複合繊維である。
【0013】すなわち本発明は、下記〔A〕の化合物を
0.2〜20重量%含有し、下記〔B〕の単位からな
り、下記〔C〕の物性値を有するポリエステルを鞘成分
とし、融点150℃以上で鞘成分を構成するポリエステ
ルより高い融点を有する熱可塑性ポリマーを芯成分と
し、かつ該鞘成分と該芯成分の重量割合が20:80〜
80:20である芯鞘型複合繊維である。
【0014】〔A〕 ポリアルキレンオキサイド鎖を有
する基がポリアルキレンポリアミン系骨格に結合した化
合物であって、かつHLBが6.0〜16.0の範囲
内、平均分子量が10000以上、アミン価が500以
下である化合物。 〔B〕 酸単位とグリコール単位からなり、該酸単位中
に占めるテレフタル酸単位とイソフタル酸単位の合計量
が60モル%以上で、かつ該グリコール単位中に占める
1,6−ヘキサンジオール単位と1,4−ブタンジオー
ル単位の割合が合計量で60モル%以上であること。 〔C〕 融点が90〜200℃、結晶融解熱が2.0c
al/g以上、最短結晶化時間が80秒以内。
【0015】本発明をより具体的に説明すると、本発明
で用いる、ポリアルキレンオキサイド鎖を有する基がポ
リアルキレンポリアミン系骨格に結合した化合物(以下
N−POA化合物と略称する)は公知である。たとえば
特開昭58−80391号公報には、同化合物が石炭ス
ラリーの分散剤として用いることができることが記載さ
れている。
【0016】N−POA化合物は、一般的な界面活性剤
の製法に従って製造することができる。たとえば苛性ソ
ーダ等のアルカリ触媒を含む加熱したポリアルキレンポ
リアミン系骨格化合物中へアルキレンオキサイドガスを
吹き込むことにより得ることができる。また骨格となる
ポリアルキレンポリアミン系化合物は、アルキレンポリ
アミン同志又はそれと尿素等の化合物を反応させること
により得ることができる。したがって、ポリアルキレン
ポリアミン系骨格化合物には、アルキレン基、アミノ
基、イミノ基以外の基、たとえばカルボニル基などが含
まれていてもよい。
【0017】N−POA化合物としては、後述する鞘成
分を構成するポリエステルとは実質的に反応性を有して
いないことが好ましい。ここで実質的に反応性を有しな
いことは、該ポリエステルとあまり共重合していないこ
とを意味する。N−POA化合物が該ポリエステルと反
応すると紡糸性が不良となるので好ましくない。すなわ
ちポリエステルの重合度を低下させ紡糸時の溶融粘度が
極端に低下することとなり、紡糸性が不安定となり断面
異常が発生し、その結果単糸切れ、断糸が多発してくる
とともに、連続運転が難しくなってくる。
【0018】なおポリアルキレンオキサイド鎖を有する
基は、ポリアルキレンポリアミン系骨格窒素原子に結合
されているのが好ましい。したがって本発明で用いるN
−POA化合物は、アミノ基、イミノ基の水素原子の実
質的に全てがポリアルキレンオキサイド鎖を有する基に
より置換されている場合も含んでいる。
【0019】N−POA化合物としては、分子量が1
0,000以上であることが必要であり、好ましくは1
0,000以上100,000以下である。分子量が低
すぎると鞘成分ポリエステルとの反応性が大きくなり前
述の問題点が発生してくる。また分子量が低すぎると、
ポリエステルと反応しなくても、相溶性が不良となり紡
糸時の曳糸性が不良となり、単糸切れ、断糸が多発して
くる。もちろん、分子量、アミン価、HLB値などの異
なる2種以上のN−POA化合物を併用してもよい。
【0020】N−POA化合物の好適な構造としては、
アミン部分、すなわちアミノ基やイミノ基にオキシエチ
レン単位とオキシプロピレン単位をランダム又はブロッ
ク状に共重合させたポリマーである。構造式の一例を次
に示す。
【化1】 ここでR↓1〜R↓7はポリアルキレンオキサイド鎖を有
する基または水素原子である。ただしR↓3に関して
は、上記(1)式より明らかなように、1分子中に
〔n〕×〔x〕個存在していることとなるが、これらは
同一である必要はない。また同様にR↓2、R↓4、R↓
5に関しても1分子中にそれぞれ〔x〕個存在している
こととなるが、これらR↓2、R↓4、R↓5もそれぞれ
同一である必要はない。骨格を形成するポリアミン分子
鎖のnは0〜10、特に0〜5が好ましい。nがあまり
大きくなると、本来のポリエステルの吸水性付与の練込
剤としての効果が十分でなくなってしまう。またxは1
〜20、特に1〜5が好ましい。xがあまり大きくなり
すぎると、紡糸時に繊維が着色しやすいこととなる。
【0021】R↓1〜R↓7のポリアルキレンオキサイド
鎖を有する基にはオキシエチレン単位とオキシプロピレ
ン単位が存在していることが必要であり(ただし、同一
の基内にオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位が
共存している必要はなく、すなわちあるポリアルキレン
オキサイド鎖を有する基にはオキシエチレン単位のみ
が、そして他のポリアルキレンオキサイド鎖を有する基
にはオキシプロピレン単位のみが存在していてもよ
い)、このオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位
の組成比によっては、親水性が低下してくる場合がある
ので、本発明の目的を阻害しない範囲でオキシエチレン
単位が主成分である方が好ましい。これの好適な範囲を
判断する目安としては、HLB値で判断するのが良い。
より好ましいポリアルキレンオキサイド鎖を有する基と
しては、N原子からオキシプロピレン単位(PO)がブ
ロック状に結合し、更にオキシエチレン単位(E0)が
ブロック状に結合した下記化2の構造が良い。
【0022】
【化2】
【0023】HLB値とは、界面活性剤の親水基と親油
基のバランスを表す方法として、1940年Griff
inが発表したHydrophile Lipophi
leBalanceであるが、HLB値は、HLB値=
20×M↓H/Mで求められる。(M;界面活性剤の分
子量、M↓H;親水基部分の分子量)分子中の親水基の
量が0%のときをHLB=0、100%のときをHLB
=20とし、親水基と親油基が等量あるときはHLB=
10となる。本発明のN−POA化合物の場合は、親水
基としてオキシエチレン単位を親油基としてポリオキシ
プロピレン単位をHLB値算出の基準とした。骨格のポ
リアルキレンポリアミン部分等は除いてHLB値を求め
る。
【0024】本発明で用いられるN−POA化合物のH
LB値の範囲は6.0〜16.0である。HLB値が1
6.0より高くなってしまうと、ポリエステル中へN−
POA化合物を添加して繊維化した後の初期の吸水性能
は十分に発現するが耐久性が不十分となってくる。特
に、洗たく耐久性が不十分となり、洗たく後の吸水性能
が低下してくる。これは、N−POA化合物の親水性の
要素が強くなりすぎるために、洗たく時にポリエステル
中に分散しているN−POA化合物が溶出してしまい、
その結果繊維としての吸水性能が低下してしまうためと
考えられる。一方、HLB価が6.0より低くなってし
まうと、N−POA化合物の疎水性の要素が強くなりす
ぎてくるために、本来の、ポリエステル繊維への吸水性
能の付与としては、満足のいくレベルまで到らない。
【0025】ポリアルキレンオキサイド鎖を有する基の
末端は水酸基であっても、非エステル形成性有機基で封
鎖されていても、またはエーテル結合、エステル結合、
カーボネート結合等によって他のエステル形成性有機基
と結合していてもよい。もちろん、前述したようにポリ
エステルと共重合していない方が好ましいのではある
が、ポリエステルの性能を大きく低下させない程度なら
ば共重合していてもよく、このことより末端はエステル
形成性有機基であってもよい。また基内や基の根元部に
もエチレンオキサイド単位、プロピレンオキサイド単位
以外の原子が存在していてもよい。
【0026】また、ポリアルキレンポリアミン骨格の全
てのアミノ基、イミノ基にポリアルキレンオキサイド鎖
を有する基が結合している必要はなく、未反応のフリー
のアミノ基、イミノ基が存在していてもかまわない。し
かし、あまり沢山のフリーのアミノ基、イミノ基が存在
すると、人体に対する毒性が強くなるため好ましくな
い。特に、繊維中にN−POA化合物を添加し、人体の
肌に直接接触する用途などに用いる場合には皮フ障害性
の問題が発生してくるため注意する必要がある。このよ
うな点から、本発明のN−POA化合物のアミン価とし
ては500以下が必要である。好ましくは100以下で
ある。なおアミン価とは、1gの化合物を中和するのに
必要とする酸の量をKOHで換算したミリグラム数であ
る。
【0027】なお、N−POA化合物の骨格を構成する
ポリアルキレンポリアミン構造は、複数個のアルキレン
基と複数個の窒素原子を有しており、このアルキレン基
としてはエチレン基、プロピレン基等の低級アルキレン
基が一般的である。もし該骨格が一個のアルキレン基し
か有していない場合や一個のアミノ基又はイミノ基しか
有していない場合には、N−POA化合物はポリエステ
ルとの親和性が低くなり、本発明の目的は達成されな
い。
【0028】本発明で用いるN−POA化合物が熱融着
ポリエステル系複合繊維の耐久親水性を付与するのに極
めて優れている理由については必ずしも明確ではない
が、ポリアルキレンポリアミン骨格がポリエステルとの
親和性に優れ、側鎖のエチレンオキサイド単位が親水性
(濡れ性)に優れ、側鎖のプロピレンオキサイド単位が
N−POAの耐溶出性と親水性をバランスさせるコント
ロール機能を有しており、この結果、良好な水に対する
濡れ性があって、しかもそれが極めて耐久性に優れてい
ることとなるものと思われる。このことは、前記一般式
(1)においてポリアミン骨格に、側鎖としてまずプロ
ピレンオキサイド単位が付加し、その側鎖の末端にエチ
レンオキサイド単位が付加している化合物がN−POA
化合物として最も好ましいことからも上記予測が支持さ
れる。
【0029】今迄説明してきたN−POA化合物の鞘成
分を構成するポリエステルポリマー中の含有量は、0.
2重量%から20重量%の範囲である。0.2重量%未
満では目的とする吸水性が不十分である。20重量%を
越えると紡糸性が不良となる。また酸化防止剤を含んで
いてもかまわない。特に、芯成分にポリエチレンテレフ
タレート等の高融点のポリマーを用いて複合紡糸する場
合、紡糸温度が高くなるためポリオキシアルキレングリ
コール部分は酸化分解、熱分解を発生しやすくなるの
で、これを防ぐためにヒンダードフェノール系の酸化防
止剤を添加して繊維化することは有効である。延伸性等
の工程性が不良であることがわかった。
【0030】次に鞘成分に用いるポリエステルについて
具体的に説明する。ポリマー構成単位としては、酸単位
が実質的にテレフタル酸(TA)単位単独または実質的
にテレフタル酸とイソフタル酸(IPA)単位とから、
すなわちテレフタル酸とイソフタル酸単位の合計量が全
酸単位の60モル%以上であり、グリコール単位は1,
6−ヘキサンジオール(HD)単位と1,4−ブタンジ
オール(BD)単位が合計量で60モル%以上であるポ
リマー単位からなり、融点が90〜200℃で結晶融解
熱(ΔHu)が2cal/g以上、最短結晶化時間が9
0秒以内である結晶性ポリエステルである。
【0031】このポリエステルは、生成ポリエステルの
全酸成分(オキシ酸を含む場合には、その2分の1を酸
成分、2分の1をジオール成分とみなす)に対する重合
%(以下、重合%は全酸成分に対するモル%で示す)と
して、TAを50モル%以上含むものが好ましい。TA
が50モル%未満では、繊維の品質、工程性が良好でな
く、またコスト的にも適当でない。そしてTAとIPA
の合計量は前記した様に60モル%以上であらねばなら
ず、60モル%未満の場合には、繊維の品質および工程
性が特に悪化する。経済性から、TAとIPAの成分量
は80モル%以上が好ましい。
【0032】一方、IPA成分があまり多くなりすぎる
と、結晶化度が低くなると同時に結晶化速度も極端に遅
くなり、接着繊維を製造する上での工程上のトラブルが
頻発してくるため好ましくない。ただし、前記したポリ
マー物性(結晶融解熱、最短結晶化時間)を維持するた
めには、適切なIPA共重合であることが好ましい。
【0033】さらにポリエステルは、BDとHDが合計
量で60モル%以上、望ましくは70モル%以上、さら
に好ましくは80モル%以上のものが用いられる。60
モル%未満では物性的に好ましくなく、やはり繊維の品
質、工程性が低下し、またコスト的にも適当ではない。
特にBDまたはHDが単独で60モル%以上である場合
が好ましく、BDとHDのいずれか一方が0モル%であ
ってもよい。IPAを用いることは、経済性からも、重
合設備上からも、生産効率上からも非常に好都合である
が、IPAは分子構造が非対称構造であるためにポリマ
ーの結晶性を低下させやすい。このため、目的とする接
着繊維を製造するための本発明のポリマー物性、つまり
結晶融解熱、最短結晶化時間を維持するためには、IP
Aの結晶性低下をカバーできるグリコール単位がHDと
BDを主体とする必要がある。
【0034】またポリエステルは、BDおよびHDを除
く脂肪族および/または脂環族の共重合単位の割合が3
0モル%以下である方が好ましく、0モル%でもかまわ
ない。30モル%を越えると、工程性が低下する傾向が
あり、高度の工程安定性確保の点より好ましくない。B
DおよびHD以外の脂肪族および/または脂環族共重合
成分は、融点あるいは硬さは低下させるが、結晶性低下
がなるべく小なるものが好ましく、したがって嵩高な側
鎖を有しない対称性のものが望ましいが、共重合量、目
的とする物性によっては、必ずしもこれに限定されるも
のではない。
【0035】その具体的例としては、アジピン酸、セバ
チン酸、ヒドロキシ酢酸、エチレングリコール(E
G)、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコ
ール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ
ールおよびプロピレングリコール、ネオペンチルグリコ
ール等がある。
【0036】鞘成分に用いられるポリエステルは上記の
構成単位条件を満足することが必要であるが、さらに商
業的生産レベルでの繊維および不織布製造工程安定性お
よび接着繊維、不織布としての品質を確保するために
は、以下の物性も満足していなければならない。すなわ
ち、鞘成分を構成するポリエステルは、融点が90〜2
00℃、望ましくは90〜185℃、さらに好ましくは
100〜175℃のものが用いられる。90℃未満で
は、繊維または不織布の耐熱性等が不足であり、実用性
能が不良である。一方、200℃を越えると、接着に高
温を要し、従来の装置が使用不可能であったり、あるい
は高温処理装置を使用したとしても成形物が変形した
り、風合が悪化し、またエネルギーの損失が多いので好
ましくない。
【0037】また鞘成分を構成するポリエステルは、結
晶融解熱(ΔHu)が2.0cal/g以上、望ましく
は2.5cal/g以上、さらに好ましくは3.0ca
l/g以上のものが用いられる。2.0cal/g未満
では繊維製造時に膠着が起こり易く好ましくない。ΔH
uの測定は、溶融ポリマーより微細な繊維状または薄膜
フイルム小片として取り出して冷却し、3日以上室温で
放置した試料を差動走査熱量計(DSC)にかけ、窒素
中10℃/分の速度で昇温し、融解時の吸熱ピークの面
積より求めて行う。
【0038】さらに、鞘成分を構成するポリエステル
は、最短結晶化時間(CTmin.)が80秒以内、望
ましくは70秒以内、さらに好ましくは50秒以内のも
のが用いられる。80秒を越えると繊維製造時に膠着が
起こり好ましくない。
【0039】CTmin.とは、溶融状態より所定温度
のシリコン浴または水浴中に投入した、実質的に無配向
のフイルム微小片を該浴中で放置し、白化を開始する時
間を結晶化開始時間とし、0〜120℃の温度範囲での
結晶化開始時間が最も短い温度での結晶化開始時間であ
る。CTmin.を求めるには、浴中に投入せず、空気
中で放置してもよいが、浴中の方が熱交換速度が大であ
り、冷却過程の影響を小とできるので好ましく、本発明
では、浴中での値を採用する。CTmin.を求めるに
は、温度を変えてCTmin.そのものを測定すること
は必ずしも必要でなく、0〜120℃の範囲のある温度
での結晶化時間が80秒以内であることが十分条件であ
る。CTmin.を示す温度は0℃近くの場合もあり、
また120℃近くのこともある。実際の繊維製造工程で
の結晶化時間は温度履歴等により異なるが、CTmi
n.を示す温度に設定すると工程での結晶化速度が速く
なることは当然である。また、紡糸時のごとく繊維に配
向がかゝると結晶化速度が大となる場合があるが、本発
明に定義するCTmin.をもって工程性と関連した尺
度とすることができる。
【0040】鞘ポリマーとなるポリエステルの二次転移
点が室温より低い場合は、結晶化速度ができるだけ速い
方が良い。紡糸時に捲き取るまでに配向結晶化が進んで
いなければ、単繊維間の膠着等のトラブルが発生し好ま
しくない。
【0041】本発明は、適切なポリマー単位からなり適
切なポリマー物性を有した結晶性ポリエステル中に適切
な親水化剤を含有せしめることにより初めて、耐久親水
性を有し、しかも溶出性が少なくかつ安全性に優れた熱
融着性繊維が可能になった。鞘成分を構成するポリエス
テル中には、少量の添加剤、たとえば、酸化防止剤、蛍
光増白剤、安定剤あるいは紫外線吸収剤などを含んでい
てもよい。また、該ポリエステルは、本発明で限定した
構成単位条件を満足する範囲内で、他の共重合単位を含
んでいてもよい。
【0042】本発明の繊維は、N−POA化合物を含有
した上記ポリエステルを鞘成分として、他の溶融紡糸可
能なポリマーを芯成分とした複合繊維である。熱接着性
かつ耐久親水性不織布としての目的と良好な繊維工程性
を維持させるためには、複合繊維構造とすることがベス
トであることがわかった。
【0043】芯成分としては融点150℃以上で鞘成分
を構成するポリエステルより高い融点を有する熱可塑性
ポリマーが用いられ、その例としては、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン
−6、ナイロン6.6、ポリプロピレン等がある。接着
繊維として十分な目的を達成させるためには、複合繊維
断面の全周長に対するN−POA化合物含有共重合ポリ
エステル成分の占める割合、すなわち繊維断面周率は5
0%以上が好ましい。この際、接着繊維の形態安定性を
重視する場合には芯成分ポリマーは接着処理温度より融
点が高い熱可塑性ポリマーを使用する必要があることは
言うまでもない事である。そして接着処理後の繊維形態
を保つ必要上、芯成分ポリマーは鞘成分ポリマーより高
融点、好ましくは40℃以上高い融点を有していること
が必要である。
【0044】本発明の芯鞘型複合繊維の複合する形態と
して断面形状の具体的な例を図で説明すると、図1の如
き完全一芯芯鞘型複合繊維、図2、図3、図5の如き芯
成分が異形形状の芯鞘型複合繊維、図4の如き多芯芯鞘
型複合繊維、図6の如き偏心芯鞘型複合繊維、図7、図
10の如き異形断面芯鞘型複合繊維、図8の如き貼合せ
型複合繊維、図9の如き多層型貼り合せ複合繊維、図1
1の如き多層型貼り合せの変形タイプの複合繊維等も含
まれる。図1〜図11中の(イ)成分はN−POA化合
物含有ポリエステルすなわち鞘成分であり、(ロ)成分
は融点150℃以上の熱可塑性ポリマーすなわち芯成分
である。繊維断面周長の約50%以上を(イ)成分ポリ
マーで占めることが望ましい。50%未満では本発明の
目的の良好な耐久親水性と熱接着性繊維が得られにくい
ので好ましくない。鞘成分と芯成分の複合比率は80対
20〜20対80重量%の範囲にする必要がある。鞘成
分が20重量%未満になると、本発明の目的とする良好
な親水性と良好な熱接着性が不十分となってくるため好
ましくない。また、80重量%を越えると、繊維物性、
特に糸強度が低下してくるため好ましくない。
【0045】本発明の繊維はN−POA化合物含有ポリ
エステルと他ポリマーとの複合繊維のみよりなる融着処
理繊維集合体として用いてもよいが、該繊維を10重量
%以上含む他繊維との混合融着処理繊維集合体として用
いてもよい。
【0046】繊維集合体として特に20〜100mmに
切断したものは乾式用不織布バインダーとして、また3
〜10mmに切断したものは湿式用不織布バインダーと
して好適であり、強度が大きく、耐久親水性を有しかつ
耐湿熱性のある不織布を得ることができる。なかでも混
合繊維として、ポリエチレンテレフタレートあるいはポ
リブチレンテレフタレートのごときテレフタル酸を成分
として含むポリエステルの場合には、接着繊維間のみな
らずテレフタル酸系ポリエステルとの間の接着も良好で
あり、強度の大きい不織布とすることができる。従来テ
レフタル酸系ポリエステルに接着する繊維がなく、大き
な問題であったが、本発明により、良好なポリエステル
系不織布の製造が可能となり、なおかつコスト的に低コ
ストで製造が可能となった。
【0047】また混合繊維として、木材パルプやレーヨ
ンあるいはビニロン等の如き親水性素材を用いた場合に
は、その親水性を阻害しないばかりかより積極的に発揮
させることが出来る。本発明の繊維は、種々の用途の広
い種類の不織布に有用であるが、特に湿式不織布用に顕
著な効果を発揮することが非常に大きな特徴である。具
体的な用途としては、例えば、親水性を必要とする衛生
材用途などが好適である。
【0048】また、本発明で用いているN−POA化合
物は、安全性が高く、例えば、通常用いられているアニ
オン系の界面活性剤での代表的なものとして、アルキル
ベンゼンスルホン酸ソーダ(ABS)などは魚毒性のデ
ーターで比較してみるとABS化合物がLC50が50
ppm以下であるのに対して、本発明のN−POA系化
合物は50000ppm以上であり、安全性は格段に高
い。しかも、前述したように、N−POA化合物は、ポ
リエステル中へ練込んだ場合、水中へ繊維を浸漬して練
込剤の溶出性をしらべてみるとABS系化合物は1ケ月
で繊維中から30%近くも溶出するに対して、N−PO
A系化合物10%以下であることが確認でき、溶出性も
かなり少なく好都合である。
【0049】本発明で言う耐久親水性の評価は、次のよ
うに水滲透性と水通過性の二つの方法により実施した。
水滲透性は、所定条件で作製した評価用紙を図12に示
す如く、ビューレット中から水を1滴滴下し、紙上に落
下した水滴が吸収され光を当てた時の光沢がなくなった
時間を肉眼で判定した。
【0050】また、水通過性については、図13で示す
如くコットンリンターパルプ上に測定する評価用紙を乗
せ、同様の方法によりビューレット中から水滴を1滴滴
下し、紙上に落下した水滴の集合状態がなくなるまでの
時間を肉眼で測定した。水滲透性と水通過性の二つの方
法で目付20〜80g/m↑2までの紙を評価した。
【0051】耐久性については、試験紙をJIS L0
217−103法に従って洗たくを10回くりかえし、
10回後の水滲透性測定及び水通過性測定を行って性能
を評価した。また実施例中の固有粘度〔η〕とは、ポリ
エステルをフェノールとテトラクロルエタンの等重量混
合溶剤中、30℃で測定した極限粘度(dl/g)であ
る。またポリエステルの融点(m・p)は微量融点測定
装置により熱板上の試料の偏光が消失する点、または流
動点を求めたものである。
【0052】
【実施例】次に本発明を実施例により説明するが、これ
によって本発明はなんら限定されるものではない。 (実施例1)重縮合反応装置を用い常法により260℃
で重縮合反応を行い、TA90モル、IPA10モル、
1,6ヘキサンジオール100モルよりなる共重合ポリ
エステルを製造し、その後重合器底部よりシート状に水
中に押し出し、シート・カッターを用いて切断しペレッ
ト化した。押し出し、切断調子は良好であり、良好な形
状のペレットを得た。添加剤を含有させない共重合ポリ
エステルの物性は、〔η〕0.90、m・p133〜1
35℃、ΔH約8.0cal/g、90℃での結晶化時
間約10秒であった。得られたペレットを真空乾燥器中
100℃で乾燥した。
【0053】ついで、該共重合ポリエステルを溶融し、
該溶融ポリマー中へ、下記式(2)で示されるN−ポリ
オキシアルキレンポリアルキレンポリアミン化合物で、
HLBが12.0、アミン価4.5、平均分子量が約5
0,000のものにヒンダードフェノール系酸化防止剤
を少量加えたものを所定量添加し、その後スタチックミ
キサーにより均一混合した後、このものを鞘成分とし、
一方〔η〕0.67のポリエチレンテレフタレートを芯
成分として、芯/鞘=50/50重量比で図1の断面の
芯鞘複合紡糸を行なった。紡糸ヘッド温度290℃で押
し出し600m/分で巻取った。巻取った繊維は単繊維
間および繊維束間での膠着はほとんどなく、長時間安定
に紡糸を行なうことができた。押出機中での鞘成分のペ
レット移送性は良好で問題なかった。この紡糸原糸を水
浴中70℃で4.2倍に延伸し、続いて水浴中95℃で
8%収縮させ、繊度2.0dr、強度3.5g/d、伸
度43%の繊維を得た。延伸工程での単糸間の膠着など
のトラブルはなかった。
【0054】得られた該延伸糸を繊維長5mmにカット
したもの70重量部とポリエチレンテレフタレート繊維
(2dr×5mm)30重量部を混合した後、角型タピ
ンー抄紙機で混抄し繊維紙を作製した。その後ヤンキー
ドライヤー型のフロエ板熱円筒上で140℃、1分間乾
燥し、接着して坪量20g/m↑2、40g/m↑2、8
0g/m↑2の手抄き紙をそれぞれ作製した。いずれの
場合も粘着のトラブルなどなく容易に抄紙することがで
き、かつ実用に耐えるだけの十分な強力を保持してい
た。
【0055】つづいて親水性の評価を実施したところ、
水滲透性、水通過性は表1に示す結果となり、比較例1
と比較して初期性能のみならずすばらしい耐久親水性を
有していることがわかった。また、上記親水性能評価用
作製紙を純水中(浴比1:50)へ、1ケ月間浸漬し、
繊維中に練込んだN−POA化合物の水中への溶出量を
Tatal Organic Carbon Anal
yser(島津社製TOC−500)を用いて測定した
所、繊維中へ練込んだN−POA化合物の約5%前後し
か溶出していないことが確認され、問題のないレベルで
あることがわかった。
【0056】
【化3】
【0057】(比較例1)実施例1とは親水化剤を含有
しない点のみが異なる共重合ポリエステルを鞘成分と
し、一方〔η〕0.67のポリエチレンテレフタレート
を芯成分として、芯/鞘=50/50重量比で図1の断
面の芯鞘複合繊維の紡糸を行なった。紡糸ヘット温度2
90℃で押し出し1000m/分で巻取った。得られた
紡糸原糸を実施例1と同様の方法により延伸し、その後
同様の条件で試験紙を作製した。つづいて親水性の評価
を実施したところ、表1に示す結果が得られ不十分であ
った。
【0058】
【表1】
【0059】注) 洗たくは、JIS L0217−1
03法に従って実施。液温40℃の水1lに2gの割合
で衣料用合成洗剤を添加溶解し、洗たく液とする。この
洗たく液に浴比が1対30になるように試料及び必要に
応じて負荷布を投入して運転を開始する。5分間処理し
た後、運転を止め、試料及び負荷布を脱水機で脱水し、
次に洗たく液を常温の新しい水に替えて同一の浴比で2
分間すすぎ洗いをした後脱水し、再び2分間すすぎ洗い
を行い風乾させる。以上の操作を10回くりかえし10
回後の測定サンプルとした。
【0060】(実施例2〜17)実施例1と同一のポリ
マー組成の共重合ポリエステルを用い、表2に掲げる条
件でテストを実施し、結果を示した。実施例2、3は親
水化剤の添加量を変更した。実施例4、5は親水化剤と
して分子構造が(2)式と同一のものであるがHLB価
が異なるものを使用した。実施例4はHLB=8.0の
もの、実施例5はHLB=15.0のものを用いた。実
施例6は親水化剤として分子構造が(2)式と同一のも
のであるが平均分子量が約20,000であるものを用
いた。実施例7、8は芯鞘複合比を変更してテストし
た。実施例9〜13は繊維断面形状を変更してテストし
た。実施例14は芯成分ポリマーにポリブチレンテレフ
タレートを用い、実施例15はナイロン6を用いて実施
した。実施例16、17は抄紙条件、即ち混抄繊維のポ
リエチレンテレフタレート繊維の混抄率を変更して実施
した。
【0061】いずれも繊維化工程性良好で、かつ試験紙
の強力の目安である裂断長も大きく、しかも親水性能も
洗たく10回処理後でも良好なレベルが維持されている
ことがわかった。また、溶出性についてもいずれも問題
となるレベルでないことが確認された。
【0062】(実施例18)添加財として分子構造が
(3)式のものを用いて行なった他は実施例1と同様の
方法で実施した。
【0063】
【化4】
【0064】(3)式中、R↓2〜R↓7はPOとEDの
ランダム共重合体であり、HLBは12.0、平均分子
量は約50,000である。その結果、繊維化工程性は
良好で、しかも耐久性のある良好な吸水性を有した繊維
が得られた。
【0065】(実施例19〜23)実施例19は重縮合
反応装置を用い常法により280℃で重縮合反応を行な
い、TA70モル、IPA30モル、1,4ブタンジオ
ール100モルよりなる共重合ポリエステルを製造し、
実施例20は、実施例1と同様の方法によりTA83モ
ル、IPA17モル、EG25モル、1,4−ブタンジ
オール75モルよりなる共重合ポリエステルを製造し、
実施例21は、TA100モル、1,6−ヘキサンジオ
ール90モル、ジエチレングリコール10モルのポリマ
ーを作製し、実施例22は、TA90モル、セバシン酸
10モル、1,6−ヘキサンジオール100モルのポリ
マーを作製し、実施例23は、TA100モル、1,4
−ブタンジオール20モル、1,6−ヘキサンジオール
80モルのポリマーを作製し、その後、実施例1と同様
の方法により親水化剤を添加した複合繊維を作製した。
その後、実施例1と全く同様の方法により試験紙を作製
した。紙強力は十分な裂断長を有し、かつ親水性も良好
な結果が得られた。また、繊維中に練込まれている親水
化剤の溶出性についても、いずれも問題となるレベルで
ないことが確認された。
【0066】(比較例2〜3)比較例2は、(2)式と
同一のN−POA化合物を用い、少量のヒンダートフェ
ノール系酸化防止剤を添加したものを、鞘成分の共重合
ポリエステル中にN−POA量で0.1wt%となるよ
うに練込み、その他は実施例1と同様の条件で実施した
場合である。吸水せいレベルとしては実施例1より低い
レベルであった。比較例3は、鞘成分の共重合ポリエス
テル中に25wt%となるよう添加し、その他は実施例
1と同様の条件で実施した場合である。しかしながら紡
糸時の粘度低下が激しく安定な紡糸をすることができな
かった。
【0067】(比較例4)添加剤として(2)式と同一
構造のもので、分子量が約8,000のものを用い、他
は実施例1と同一の方法により実施した。しかしながら
紡糸時の粘度低下が激しくビス落ち、単糸切れ、断糸が
頻発し安定な紡糸をすることができなかった。
【0068】(比較例5)添加剤として(2)式と同一
構造のものであるがHLB=5.0のもの、すなわち疎
水性基のPOセグメントリッチのものを用い、他は実施
例1と同一の方法で実施した。繊維化工程性は良好であ
ったが、吸水性能レベルとしては不十分であった。
【0069】(比較例6〜7)複合比率を芯/鞘=10
/90重量比で第1図の断面の芯鞘複合紡糸を行なった
以外は実施例1と同一の方法により実施した。複合比率
が不安定で単糸切れ、断糸が頻発し、評価試料が得られ
なかった。比較例7は、実施例1と同様の方法により共
重合ポリエステルを得、その後複合比率を芯/鞘=90
/10重量比に変更した以外は実施例1と同様の方法に
より繊維化し、試験紙を作製した。紙強力も親水性能も
不十分なものであった。
【0070】(比較例8〜9)それぞれ第2表記載の共
重合ポリエステルを鞘とし、実施例1と同様にして芯・
鞘複合紡糸を行なったが、いずれも単繊維間に膠着が認
められ、繊維束間にも膠着が発生した。そのため、評価
できるような良好な紙が得られなかった。
【0071】(比較例10)常法により重縮合反応を行
ない、TA82モル、IPA18モル、EG100モル
よりなり、〔η〕0.76、ΔH1.0cal/g、の
共重合ポリエステルを製造し、実施例1と同様の親水化
剤を同量添加し、実施例1と同じ方法により紡糸し紡糸
原子を得た。ついで延伸、収縮を行ない、繊度2.0d
r、強度4.5g/dr、伸度30%の繊維を得た。工
程性は良好で特にトラブルはなく、また単繊維間および
繊維束間での膠着は認められなかった。しかしながら実
施例1と同様にして試験紙を作製したところ、親水性能
はある程度良好であったが裂断長が0.1kmと非常に
強力の低いものであった。
【0072】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0073】(実施例24、比較例11)実施例1と同
様の方法により、N−POA化合物が含有されている共
重合ポリエステルを鞘、〔η〕0.67のポリエチレン
テレフタレートを芯として、芯/鞘重量比50/50の
ポリエステルバインダー繊維をつくり、この繊度2.0
dr、繊維長5mmのカットファイバーを得た。該カッ
トファイバー70重量部と親水性レイヨン(PB 15
05)繊度1.5dr、繊維長5mmのカットファイバ
ーを30重量部を混合した後、角型タピー抄紙機で混抄
し、繊維紙を作製した。その後、ヤンキードライヤー型
のプロエ板熱円筒上で120℃、1分間乾燥し、接着し
て坪量20g/m↑2、40g/m↑2、80g/m↑2
の手抄き紙を作製した。いずれの場合も粘着のトラブル
などなく、容易に抄紙することができ、かつ実用に耐え
うるだけの十分な強力を保持していた。また比較例とし
て、上記バインダー繊維で上記親水化剤を含有しない点
のみが異なるバインダー繊維を製造し、上記実施例と同
じく親水化レイヨンと混抄して試験紙を得た。
【0074】この両者の紙の親水性の評価を実施したと
ころ、水滲透性、水通過性は表6に示す結果となり、本
実施例の場合、初期性能のみならずすばらしい耐久親水
性を有していることがわかる。またこの比較例11か
ら、バインダー繊維と混抄する繊維が親水性繊維であっ
ても、バインダー繊維が親水性でない場合には、得られ
る紙の親水性は初期性能から悪いことが示される。
【0075】
【表6】
【0076】
【発明の効果】以上本発明は、特定のポリマー組成及び
ポリマー物性を有した結晶性共重合ポリエステルを用
い、しかも該結晶性共重合ポリエステル中へ特定の親水
化剤を含有せしめることにより、溶出性が少なく安全性
にすぐれる耐久性のある良好な親水性と、殊に、ポリエ
ステル繊維に対して良好な熱融着を有する耐久親水性熱
融着性複合繊維及び該複合繊維を一部又は全部使用した
不織布を工程性のトラブルなく提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合繊維の断面形状の一例を示した図
である。
【図2】本発明の複合繊維の断面形状の別の例を示した
図である。
【図3】本発明の複合繊維の断面形状の更に別の例を示
した図である。
【図4】本発明の複合繊維の断面形状の別の例を示した
図である。
【図5】本発明の複合繊維の断面形状のの一例を示した
図である。
【図6】本発明の複合繊維の断面形状の別の例を示した
図である。
【図7】本発明の複合繊維の断面形状の別の例を示した
図である。
【図8】本発明の複合繊維の断面形状の別の例を示した
図である。
【図9】本発明の複合繊維の断面形状の別の例を示した
図である。
【図10】本発明の複合繊維の断面形状の別の例を示し
た図である。
【図11】本発明の複合繊維の断面形状の別の例を示し
た図である。
【図12】水滲透性を測定する装置の概略図である。
【図13】水通過性を測定する装置の概略図である。
【符号の説明】
イ:非晶性ポリエステルからなる鞘成分 ロ:融点150℃以上の熱可塑性ポリマーからなる芯成
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D01F 8/14 D01F 6/84 301 D01F 6/92 307 C08L 67/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記〔A〕の化合物を0.2〜20重量
    %含有し、下記〔B〕の単位からなり、下記〔C〕の物
    性値を有するポリエステルを鞘成分とし、融点150℃
    以上で鞘成分を構成するポリエステルより高い融点を有
    する熱可塑性ポリマーを芯成分とし、かつ該鞘成分と該
    芯成分の重量割合が20:80〜80:20である芯鞘
    型複合繊維。 〔A〕 ポリアルキレンオキサイド鎖を有する基がポリ
    アルキレンポリアミン系骨格に結合した化合物であっ
    て、かつHLBが6.0〜16.0の範囲内、平均分子
    量が10000以上、アミン価が500以下である化合
    物。 〔B〕 酸単位とグリコール単位からなり、該酸単位中
    に占めるテレフタル酸単位とイソフタル酸単位の合計量
    が60モル%以上で、かつ該グリコール単位中に占める
    1,6−ヘキサンジオール単位と1,4−ブタンジオー
    ル単位の割合が合計量で60モル%以上であること。 〔C〕 融点が90〜200℃、結晶融解熱が2.0c
    al/g以上、最短結晶化時間が80秒以内。
JP8770091A 1990-04-26 1991-03-26 耐久親水性に優れた熱融着性複合繊維 Expired - Fee Related JP2870712B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8770091A JP2870712B2 (ja) 1990-04-26 1991-03-26 耐久親水性に優れた熱融着性複合繊維

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2-112498 1990-04-26
JP11249890 1990-04-26
JP8770091A JP2870712B2 (ja) 1990-04-26 1991-03-26 耐久親水性に優れた熱融着性複合繊維

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH04222221A JPH04222221A (ja) 1992-08-12
JP2870712B2 true JP2870712B2 (ja) 1999-03-17

Family

ID=26428948

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8770091A Expired - Fee Related JP2870712B2 (ja) 1990-04-26 1991-03-26 耐久親水性に優れた熱融着性複合繊維

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2870712B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5235356B2 (ja) * 2006-11-17 2013-07-10 日本エステル株式会社 ポリエステル樹脂
EP3859059A4 (en) * 2018-09-29 2023-03-22 Unitika Ltd. PROCESSES FOR THERMAL FORMING OF FIBER PRODUCTS
CN112359440A (zh) * 2020-09-30 2021-02-12 嘉兴华绰纺织股份有限公司 一种吸水性涤纶经编面料生产工艺

Also Published As

Publication number Publication date
JPH04222221A (ja) 1992-08-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101362617B1 (ko) 다성분 섬유로부터 제조된 부직물
KR101321738B1 (ko) 설포폴리에스터 및 이를 포함하는 다성분 압출물 및 섬유 제품
US6552123B1 (en) Thermoplastic polyvinyl alcohol fibers and method for producing them
JP5260551B2 (ja) スルホポリエステル由来の水分散性及び多成分繊維
JP2009525409A5 (ja)
EP0117937A1 (en) Polyester binder fibers
CN104321486A (zh) 湿抄组合物以及相关工艺
JP2911068B2 (ja) 複合繊維および不織布
JP2870712B2 (ja) 耐久親水性に優れた熱融着性複合繊維
JP2007092204A (ja) ポリエステル系熱接着複合繊維およびその製造方法
JP2506413B2 (ja) 耐久親水性を有する熱融着性複合繊維
JPH09268490A (ja) ポリエステル系耐熱湿式不織布およびその製造方法
JP2506419B2 (ja) 耐久親水性の熱融着性複合繊維
JP2870711B2 (ja) 耐久親水性を有する熱融着性複合繊維
JPH0491224A (ja) 吸水性能の優れた複合繊維および不織布
JPH0130926B2 (ja)
JP4302281B2 (ja) 熱可塑性ポリビニルアルコール繊維
JP6110144B2 (ja) 湿式不織布用ショートカット複合繊維
JP2807041B2 (ja) 熱接着性複合繊維
JP5063148B2 (ja) 抗菌性を有する熱接着性ポリエステル長繊維
JPS60163920A (ja) バインダ−フアイバ−用共重合ポリエステル
JP3728498B2 (ja) 複合繊維
JP5283542B2 (ja) 防黴性を有するポリエステル繊維
JP2870708B2 (ja) 耐久吸水性に優れたポリエステル繊維
JP2005264344A (ja) 低収縮性熱接着繊維およびそれを用いた不織布

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees