JP4302281B2 - 熱可塑性ポリビニルアルコール繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水溶性および生分解性に優れた熱可塑性ポリビニルアルコールを少なくとも一成分とする繊維とその溶融紡糸法に関する。また、本発明は、かかる繊維を含む糸、織物、編物、不織布等の繊維構造物と該繊維構造物を水で処理して得られる繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略称することもある)からなる水溶性繊維としては、1)原液溶媒と固化浴のいずれもが水系である湿式紡糸や乾湿式紡糸法による繊維、2)原液溶媒が水系である乾式紡糸法による繊維、3)原液溶媒と固化浴のいずれもが非水溶媒系の湿式紡糸や乾湿式紡糸(ゲル紡糸)法による繊維が知られている。
【0003】
これらの水溶性PVA繊維は、ステープルまたはショートカット繊維として乾式不織布や紡績糸、製紙分野などで用いられたり、マルチフィラメントとして織物や編物に用いられている。特に80℃〜90℃の熱水に可溶のショートカット繊維は繊維状バインダーとして製紙工業において重要な位置を占め、マルチフィラメントもケミカルレースの基布として多く用いられている。また近年の環境問題において、環境にやさしい生分解性繊維としても注目されている。
【0004】
しかしながら、一般的にこれら紡糸方法では、例えば、500m/分を超える高速紡糸が困難であること、繊維断面を異形度の大きい複雑な異形断面にすることが困難であること、紡糸工程で使用される各種溶剤の回収のための設備が必要であることなどの点において、溶融紡糸法に比較すると種々の制限を受け、特別な配慮が必要であることは否めなかった。
【0005】
PVAを溶融紡糸法で繊維化した例としては、特開昭50−152062号公報、特開昭50−152063号公報、特開昭63−105112号公報において提案されている。しかしながら、上記の従来技術においては、PVAの水溶性が不良であったり、繊維化の工程で単糸切れが発生するなどの課題を残しており、水溶性が良好でかつ繊維化における工程安定性の両者を満たす繊維はこれまで製造することができなかった。
【0006】
一方、使い捨ての繊維製品には不織布形態の構造物がしばしば使用され、PVA繊維からなる不織布も提案されており、用途によっては、完全に水溶性でなくても、水により不織布形態が崩壊する程度で使用されるものもある。しかしながら、これまで提案されてきた水溶性のPVA不織布は、湿式や乾湿式方で得られたPVA繊維を用いたものが殆どである。特開平5−345013号公報には、一部に溶融紡糸法によるPVA不織布が提案されているが、具体的には何の説明もされておらず、ましてや工程安定性や水溶性、水解性などのすべてを満足するためにはどのようなPVAを用いればよいのかという点について全く記載も示唆もしていない。
【0007】
上述した従来の水溶性PVA繊維が有する工程性や水溶性などの課題を解決するものとして、本発明者らは、特定の熱可塑性ポリビニルアルコール繊維およびその製造方法、特定の熱可塑性ポリビニルアルコール不織布を提案した(特願平10-357120号)。該提案で得られる熱可塑性ポリビニルアルコール繊維は、従来の湿式法、乾湿式法、乾式法、溶剤紡糸法における生産性の限界、繊維断面形状の制限、回収設備の設置を伴わず、水溶性ポリビニルアルコールを少なくとも一成分とする繊維を溶融紡糸法で安定して提供することができ、さらに従来の湿式法、乾湿式法、乾式法、溶剤紡糸法により得られるPVA繊維から製造されていた水溶性または水解性に優れる不織布を、溶融紡糸法で安定した工程性で提供することができる。しかしながら、用途によってはさらに高度な水溶性、生分解性が求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来の水溶性PVA繊維が有する工程性や水溶性などの課題を解決するものであり、さらに水溶性、生分解性を高めた溶融紡糸法により得られるPVA繊維とそれを含む繊維構造物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、溶融紡糸法により紡糸され、1,2−グリコール結合の含有量が1.8モル%〜3.5モル%である粘度平均重合度が250〜450であって、かつエチレン単位が4−13モル%導入された変性ポリビニルアルコールを少なくとも一成分とする熱可塑性ポリビニルアルコール繊維である。また、本発明は、上記熱可塑性変性ポリビニルアルコール繊維を少なくとも一成分として含む繊維構造物であり、この繊維構造物を水で処理し、該変性ポリビニルアルコールを溶解除去することを特徴とする繊維製品の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素になる。該PVAは水溶液の状態で活性汚泥で連続処理すると2日〜1ヶ月でほぼ完全に分解される。
本発明におけるPVAの1,2−グリコール結合の含有量は1.8〜3.5モル%であり、1.9〜3.2モル%が好ましく、2.0〜3.0モル%がより好ましい。1,2−グリコール結合の含有量が1.8モル%未満の場合には、水溶性および生分解性に対する効果が十分でなく、また溶融粘度が高くなるために紡糸性が低下する場合がある。また、1,2−グリコール結合の含有量が3.5モル%を超える場合には、PVAの熱安定性が悪くなり、溶融紡糸性が低下する場合がある。
【0011】
1,2−グリコール結合をPVAに導入する方法は特に限定されず、公知の方法が使用可能である。一例として、ビニレンカーボネートを上記の1,2−グリコール結合量になるよう共重合する方法、重合温度を通常の条件より高い温度、例えば75〜200℃で重合する方法などが挙げられる。後者の方法において、重合温度は90〜190℃であることが好ましく、100〜180℃であることが特に好ましい。
【0012】
PVAにおける1,2−グリコール結合の含有量はNMRのピークから求めることができる。まず、PVAを鹸化度99.9モル%以上に鹸化した後、十分にメタノール洗浄を行い、次いで90℃減圧乾燥を2日間したPVAをDMSO−D6に溶解し、トリフルオロ酢酸を数滴加えた試料を500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定する。
ビニルアルコール単位のメチン由来ピークは3.2〜4.0ppm(積分値A)、1,2−グリコール結合の1つのメチン由来のピークは3.25ppm(積分値B)に帰属され、次式で1,2−グリコール結合含有量を算出できる。ここでΔは変性量(モル%)を表す。
1,2−グリコール結合含有量(モル%)=100B/{100A/(100−Δ)}
【0013】
本発明において使用されるポリビニルアルコールは熱溶融可能なPVA系樹脂が用いられ、ビニルエステルの重合体をけん化することにより得られる。ビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、工業的には酢酸ビニルが多く用いられる。
PVAはα−オレフィン単位を含有していてもよい。それらは炭素数4以下のもので、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等が挙げられるが、強度物性、形態安定性を考慮すると、エチレンがより好ましい。α−オレフィン単位の含有量は、1〜20モル%であり、含有量が20モル%より大では、変性PVAの水への溶解性が低下する。
【0014】
本発明で使用されるPVAは、発明の効果を損なわない範囲であれば、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位、α−オレフィン単位以外の単量体単位を含有していてもよい。このような単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸などの不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類、オキシアルキレン基を有する単量体、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸またはイタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体、ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロリド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロリド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。
これらの単量体の中でも、入手のしやすさ、共重合性、溶融紡糸性および繊維の水溶性の観点から、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類、に由来する単量体が好ましい。
さらに、α−オレフィンがエチレンである場合において、繊維物性が高くなることから、特にエチレン単位が2〜15モル%、より好ましくは4〜13モル%導入された変成PVAを使用することが好ましい。
【0015】
ビニルエステル重合体の重合方法は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。重合に使用される開始剤としては、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられが、半減期が100℃で1時間以上であるものが好ましい。重合は、重合機内の圧力を大気圧より高い圧力に保てるものであれば形式を問わず、攪拌装置も公知のものでよい。また重合方式は、回分重合、半連続重合、連続重合のいずれでもよい。
【0016】
ビニルエステル重合体は公知の方法によってけん化される。例えば、アルコールに溶解した状態でけん化される。けん化反応に使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコールなどの低級アルコールが挙げられ、メチルアルコールが特に好適に使用される。けん化反応に使用されるアルコールには、40質量%以下であれば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼン等の溶剤を含有していてもよい。けん化反応に用いられる触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒、あるいは鉱酸などの酸触媒が用いられる。けん化反応の温度については特に制限はないが、20〜60℃の範囲が適当である。けん化反応の進行に伴って、ゲル状生成物が析出してくる場合には、その時点で生成物を粉砕し、洗浄後、乾燥することにより、本発明のPVA重合体が得られる。
【0017】
上記のようにして製造されるPVAの粘度平均重合度(以下、単に重合度と略記する)は200〜500であることが好ましく、230〜470がより好ましく、250〜450が特に好ましい。重合度が200未満の場合には紡糸時に十分な曳糸性が得られず、繊維化できない場合もある。重合度が500を越えると溶融粘度が高すぎて、紡糸ノズルからポリマーを吐出することができない場合がある。
【0018】
PVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVAを再鹸化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められるものである。
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
重合度が上記範囲にある時、本発明の目的がより好適に達せられる。
【0019】
またPVAの鹸化度は90〜99.99モル%であることが望ましく、93〜99.98モル%がより好ましく、94〜99.97モル%がさらに好ましく、96〜99.96モル%が特に好ましい。鹸化度が低い場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって満足な溶融紡糸を行うことが困難であり、後述する共重合モノマーの種類によってはPVAの水溶性が低下し、本発明の目的が達成できない場合がある。
一方、鹸化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することができず、安定した繊維化もできない場合がある。
【0020】
本発明においては、その目的や効果を損なわない範囲で、PVAに対し必要に応じて銅化合物等の安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、またはその後の工程で添加することができる。特に熱安定剤としてヒンダードフェノール等の有機系安定剤、ヨウ化銅等のハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属化合物を添加すると、繊維化の際の溶融滞留安定性が向上するので好ましい。
【0021】
また必要に応じて平均粒子径が0.01μm以上5μm以下の微粒子を0.05質量%以上10質量%以下、重合反応時、またはその後の工程で添加することができる。微粒子の種類は特に限定されず、たとえばシリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の不活性微粒子を添加することができ、これらは単独で使用しても2種以上併用しても良い。特に平均粒子径が0.02μm以上1μm以下の無機微粒子が好ましく、紡糸性、延伸性が向上する。
【0022】
本発明の熱可塑性ポリビニルアルコール繊維は、上記のPVA単独からなる繊維は勿論のこと、該PVAを一成分とし、融点が270℃以下の他の熱可塑性重合体との複合紡糸繊維や混合紡糸繊維をも含むものである。複合繊維の複合形態は特に限定されず、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、多層張合わせ型、放射状分割型、これらの組み合わせなど適宜設定することができる。例えば、PVAを海成分とし、他の熱可塑性重合体を島成分とする複合繊維であれば、海成分のPVAを除去することにより極細繊維を形成させることが可能である。また、PVAを芯成分とし他の熱可塑性重合体を鞘成分とする複合繊維であれば、後にPVAを除去すれば中空繊維を得ることが可能である。さらに、PVAを鞘成分とし、他の熱可塑性重合体を芯成分とする複合繊維を布帛とした後に水で処理して鞘成分を除去することにより、布帛の風合を向上させたり、一方、かかる複合繊維の鞘成分を積極的に残してバインダー繊維として作用させることも可能である。
複合繊維にする場合、PVAと組み合わされる重合体としては、融点が270℃以下の熱可塑性重合体であることが好ましく、例えば、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル及びその共重合体、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルおよびその共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン12、ナイロン6−12等の脂肪族ポリアミドおよびその共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンおよびその共重合体、エチレン単位を25モル%から70モル%含有する変性ポリビニルアルコール、ポリスチレン系、ポリジエン系、塩素系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系のエラストマー等の中から少なくとも一種類を選んで用いることができる。
【0023】
本発明に用いるPVAと複合紡糸しやすいという点からは、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート系共重合体、ポリ乳酸、ナイロン6、ナイロン6−12、ポリプロピレン、エチレン単位を25モル%〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0024】
上記のようなポリエステル共重合体を使用する場合、共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニール、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール化合物を使用することができ、共重合割合としては80モル%以下が好ましい。
【0025】
また、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルを一成分とする複合繊維から他方の成分を除去して、脂肪族ポリエステルからなる繊維を製造するに当たり、該他方の成分を水以外の薬品で抽出すると、脂肪族ポリエステル繊維の劣化、分解を伴うので、かかるポリエステルを一成分とする複合繊維を製造するにおいては、本発明に示したPVAを他方成分とすることが有効である。
さらに、本発明において、融点が270℃以下の熱可塑性ポリマーとして、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルを使用すると、ポリ乳酸自体が生分解性を有し、ポリビニルアルコール成分も生分解性を示し、複合繊維全体を生分解性とすることが可能である。
【0026】
本発明の繊維の製造は、単独紡糸、複合紡糸のいずれにおいても公知の溶融紡糸装置を用いることができる。すなわち、単独紡糸であれば、溶融押出機でPVAのペレットを溶融混練し、溶融したポリマー流を紡糸頭に導き、ギヤポンプで計量し、紡糸ノズルから吐出させた糸条を巻き取ることで得られる。また、複合紡糸であればPVAと他の熱可塑性重合体とを夫々別の押出し機で溶融混練し、引き続き同一の紡糸ノズルから吐出させればよい。
繊維の断面形状としては、丸断面のみならずC字形、3葉形、T形、4葉形、5葉形、6葉形、7葉形、8葉形等多葉形や十字形等各種の形状にすることが可能である。
【0027】
また、本発明においては、曳糸性を向上させるためにPVAに可塑剤を添加して紡糸することが好ましい。
可塑剤としては、PVAのガラス転移点や溶融粘度を低下させうる化合物であれば特に制限はなく、例えば、水、エチレングリコール及びそのオリゴマー、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびそのオリゴマー、ブチレングリコール及びそのオリゴマー、ポリグリセリン誘導体やグリセリン等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加したグリセリン誘導体、ソルビトールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加した誘導体、ペンタエリスリトール等の多価アルコール及びその誘導体、PO/EOランダム共重合物等を挙げることができる。これらの可塑剤は、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の割合でPVAに配合することが好ましい。
そして、繊維化工程で熱分解が起こりにくく、良好な可塑性、紡糸性を得るためには、ソルビトールのアルキレンオキサイド付加物、ポリグリセリンアルキルモノカルボン酸エステル、PO/EOランダム共重合物などの可塑剤を1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%配合することが好ましく、特にソルビトールのエチレンオキサイドを1〜30モル付加した化合物が好ましい。
【0028】
紡糸ノズルから吐出された糸条は延伸せずにそのまま高速で巻き取るか必要に応じて延伸される。延伸は通常熱延伸され、熱風、熱板、熱ローラー、水浴等のいずれを用いて行ってもよい。
【0029】
紡糸された繊維には、通常油剤が付与されるが、本発明の繊維を構成するPVAは水溶性であり、吸湿性も高い繊維であるので、水を含まないストレート油剤を付与することが好ましい。
【0030】
本発明の繊維が、PVA100%からなる単独繊維である場合、該繊維の水中での溶断温度は、用途によって異なるが、低温で溶解するものが経済性の面からは好ましい。溶断温度は、繊維に2mg/dtexの荷重をかけて、水中に吊るし、水温を上げていったときに繊維が溶断する温度とする。
また、本発明において、PVA100%からなる単独繊維が「水溶性」であるということは、溶解までの時間の長短に拘わらず、上記の方法で測定した時に所定の温度で溶断することを意味する。
PVAの種類や繊維の製造条件を変更することにより、本発明では約10℃〜100℃の溶断温度を持つPVAを少なくとも一成分とする繊維を得ることが可能であるが、低温で溶解するようなPVAを構成成分として含む繊維は吸湿しやすかったり、繊維強度が低かったりする場合があるので、取り扱い性、実用性及び水溶性のすべての特性のバランスをとるためには、40℃以上の溶断温度を有する繊維とすることが好ましい。
【0031】
溶解処理温度はPVAの水溶性や用途に応じて適宜調整すればよいが、処理温度は高いほど処理時間が短くなる。熱水を用いて溶解する場合には、50℃以上で処理するのが好ましく、60℃以上がさらに好ましく、70℃以上が特に好ましく、80℃以上が最も好ましい。またPVAからなる溶融紡糸繊維の溶解処理は該繊維の分解を伴うものであってもよい。
なお、水溶液には、通常は軟水が用いられるがアルカリ水溶液、酸性水溶液等であってもよいし、界面活性剤や浸透剤を含んだものであってもよい。
【0032】
以上のようにして得られるPVA繊維は、単独で、または他の非水溶性繊維や該PVAよりも難水溶性の繊維と組み合せて、糸状物、織物、編物、不織布等の繊維構造物とすることができる。この場合、PVA繊維は、PVAと他の熱可塑性重合体とからなる複合繊維や混合紡糸繊維であっても何ら差し支えない。
本発明のPVA繊維の使用態様は、用途に応じて変更できるので、特に限定されるものではないが、例えば、PVAをバインダー成分として繊維構造物中に積極的に残して使用してもよいし、一方、PVAを少なくとも一成分とする繊維と非水溶性繊維とから構造加工糸、混繊糸、紡績糸等の糸条を作成し、これを用いて織編物や不織布とした後に、水で処理してPVA成分を溶解除去し、最終製品内に空間を形成させることにより、嵩高性、ソフトタッチ、伸縮性、保温性等の機能性付与や風合の改善が可能である。後者のこのような機能性の付与は、例えば、ポリエステル繊維やポリスチレンを一成分とする繊維に対するアルカリ水溶液や有機溶剤による処理によって達成できるものであるが、本発明では、無害な水処理でそのような機能性の付与が可能となる点に大きな特長を有するものである。
【0033】
変性ポリビニルアルコール(変性PVA)を少なくとも一成分とする繊維から不織布を製造する場合、上記した繊維の製造方法により得られる繊維を用いて乾式法や湿式法(紙)で不織布とするものであっても、スパンボンド法式などにより溶融紡糸後直接不織布化するものであってもよい。
【0034】
以上のような特定のPVAを少なくとも一成分とする本発明の繊維、及び該繊維を含む糸、織編物、不織布等の繊維構造物は、例えば、製紙用バインダー繊維、不織布用バインダー繊維、乾式不織布用ステープル、紡績用ステープル、織編物用マルチフィラメント(構造加工糸、混繊糸)、ケミカルレース基布、空羽織物、縫い糸、水溶性包装材、おむつライナー、紙おむつ、生理用品、失禁パッド等の衛生材料、サージカルガウン、サージカルテープ、マスク、シーツ、包帯、ガーゼ、清浄綿、救急絆基布、パップ材基布、創傷被覆材等のメディカル関連製品、ラッピング材料、スプライシングテープ、ホットメルト用シート(仮止め用シートも含む)、芯地、植生用シート、農業用被覆材、根巻きシート、水溶性ロープ、釣り糸、セメント補強材、ゴム補強材、マスキングテープ、キャップ、フィルター類、ワイピングクロス類、研磨布、タオル、おしぼり、化粧用パフ、化粧用パック材、エプロン、手袋、テーブルクロス、便座カバー等の各種カバー、壁紙、壁紙等の裏糊として使用される通気性再湿接着材、水溶性玩具等の用途に用いることができる。
【0035】
【実施例】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものである。
【0036】
[PVAの分析方法]
PVAの分析方法は特に記載のない限りはJIS−K6726に従った。
変性量は変性ポリビニルエステルあるいは変性PVAを用いて500 MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)装置による測定から求めた。
アルカリ金属イオンの含有量は原子吸光法で求めた。
【0037】
[水溶性]
本発明のPVA繊維の水中での溶断温度は、繊維に2mg/dtexの荷重をかけて、目盛りつきの板と共に繊維の浸水長が約10cmとなるように水中に浸漬し、水温20℃から昇温速度1℃/分の条件で昇温したときに繊維が溶断する温度を調べた。また、これとは別に、90℃の水中で1時間撹拌したときの未溶解物の有無を目視観察した。
【0038】
[繊維の強度、伸度]
JIS L1013に準拠して測定した。
【0039】
[紡糸性]
PVAを溶融押し出し機を用いて溶融混練し、溶融したポリマー流を紡糸頭に導き、ギヤポンプで計量し、単独紡糸の場合は孔径0.25mmで、複合紡糸の場合は孔径0.4mmで、それぞれホール数24のノズルから吐出させた糸条を800m/分の速度で巻き取る試験を6時間行い、その時の紡糸調子で評価した。
◎:全く単糸切れなく、6時間巻き取ることができる。
○:6時間で1回の単糸切れは有るが、マルチフィラメントとして6時間巻き取ることができる。
○〜△:6時間で2回以上の単糸切れが生じるが、マルチフィラメントとして6時間巻き取ることができる。
△:単糸切れが著しく、マルチフィラメントとして約5分程度しか巻き取れない。
×:単糸切れが著しく、全く巻き取れない。
【0040】
実施例1
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口、開始剤添加口およびディレー溶液添加口を備えた50L加圧反応槽に酢酸ビニル24.6kg、メタノール5.4kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が21.0kg/cm2(2.1×106Pa)となるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)をメタノールに溶解した濃度0.1g/L溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を150℃に調整した後、上記の開始剤溶液190mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を21.0kg/cm2(2.1×106Pa)に、重合温度を150℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて800ml/hrで2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)を連続添加して重合を実施した。4時間後に重合率が50%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が35%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液286g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、37.2g(ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.08)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。アルカリ添加後約2分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVAを得た。得られたエチレン変性PVAについて前述の分析を行ったところ、重合度は450、けん化度は97.7モル%、エチレン変性量は4モル%、融点209℃、1−2グリコール結合2.4モル%であった(表1参照)。
【0041】
【表1】
【0042】
上記で得られた変性PVAを溶融押し出し機を用いて240℃で溶融混練し、溶融したポリマー流を紡糸頭に導き、ギヤポンプで計量し、孔径0.25mm、ホール数24のノズルから吐出させ800m/分の速度で6時間巻き取った。得られた紡糸原糸をホットローラー温度80℃、ホットプレート温度160℃で2.1倍(HDmax×0.7に相当)にローラープレート延伸し、83dtex/24fの延伸糸を得た。延伸糸の強度、伸度、水溶性および溶断温度を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
次いで筒編機を用いて該延伸糸から編み地を作成したが、工程で繊維のフィブリル化は全く発生しなかった。
【0045】
また、上記で得られたPVA延伸フィラメント、極限粘度0.68のポリエチレンテレフタレートよりなる破断伸度162%の未延伸フィラメント糸[94dtex/48f]および極限粘度0.67のポリエチレンテレフタレートよりなる破断伸度32%の延伸フィラメント糸[56dtex/12f]を合糸し、オーバーフィード率5.5%でインターレース混繊を施した後、延伸倍率1.072倍、フリクションディスク/糸加工速度(D/Y)=1.782、仮撚速度255m/分、第1ヒータ温度180℃の条件で仮撚加工を施して、ポリエステル系構造加工糸を製造した。
上記で得られたポリエステル系構造加工糸にダブルツイスターを用いて800回/mの実撚を付与した後、このポリエステル系構造加工糸を緯糸とし、また通常のポリエチレンテレフタレート構造加工糸[150dtex/60f:鞘糸94dtex/48f、芯糸56dtex/12f]に1800T/Mの実撚を付与して経糸とし、1/2ツイル織物を製造した。このときの緯糸:経糸の質量比は1:1であった。得られた生機を、ソーダ灰を用いて精練−リラックス処理を行った後、190℃でプレセットし、次いで熱水中に温度95℃で60分処理を行って、PVA延伸糸のすべてを溶解除去した。
またPVAを溶解除去した廃水を回収して、生分解性を調べた(表2)。
【0046】
なお、溶解除去されたPVA抽出成分の生分解性は以下の方法により評価した。
[抽出成分の生分解性]
活性汚泥量を9mgから30mgに増加させたこと以外はJIS−K−6950に準じて、無機培養地に活性汚泥30mgと抽出成分30mg(抽出液を乾燥したのち質量を測定して水溶液にしたもの)を加え、クーロメーター(大倉電気OM3001A型)を用い、25℃で28日間培養し、生分解に消費された酸素量を測定することにより28日後の生分解率を求めた。
【0047】
さらに得られた織物を常法どおり水洗、乾燥、染色加工を行った後、170℃の温度で幅出しをしないでシワを取る程度の張力でファイナルセットを行って織物を得た。
得られた織物は軽量感があり、かつ伸縮性を有し良好な張り腰を有するものであった。また、織物の切断面を電子顕微鏡で観察したところ高空隙構造が発現していることが観察された。
【0048】
実施例2
実施例1の繊維化に際して、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドが2モル付加された可塑剤を変性PVAに10質量%の配合割合になるように添加して、繊維化を行なったところ、可塑剤を添加しなかった場合に比べて繊維化工程性が安定しており、また、水に対する溶解挙動については、無添加のものに比べ溶解性が良好であるばかりでなく、溶解処理容器への溶解物の付着が少ないという特長が認められた。
【0049】
参考例1〜3
実施例1で用いたPVAの代わりに表1に示すPVAを用い、表2に示した紡糸温度で繊維化したこと以外は実施例1と同様にしてPVAの延伸糸を得た。紡糸性および得られた延伸糸の強度、伸度、水溶性、溶断温度、溶解液の生分解性を表2に示した。
【0050】
実施例6
実施例1で得られた紡糸原糸を第1ローラー85℃、第2ローラー160℃、第3ローラー30℃で、第1ローラーと第2ローラーの間で2.06倍(HDmax×0.72に相当)延伸し、第2ローラーと第3ローラーの間で3%収縮となるように延伸・熱処理を行ない、83dtex/24fの延伸糸を得た。
ついで、得られたPVA延伸糸を用い、250T/mの追撚を施して経糸とし、緯糸はそのままで平織物(経120本/インチ、緯95本/インチ)を作成し、これをケミカルレース基布とし、刺繍糸にはレーヨン糸を用い、デザインはインナー用途のチュールレースを選定し、ケミカルレースを作成した。ついで98℃熱水で処理してチュールを仕上たところ、PVA繊維からなる基布は完全に溶解され、刺繍の細かい模様も美しく仕上がっていた。
また溶解後のPVAの生分解性は良好で分解率97%であった。
【0051】
比較例1、2
実施例1で用いたPVAの代わりに表1に示すPVAを用い、表2に示した紡糸温度で繊維化したこと以外は実施例1と同様にしてPVAの延伸糸を得た。
しかしながら、比較例1では、粘度が高いために紡糸温度を高くせざるを得ず、分解、ゲル化したためと思われるが、紡糸性は良くなかった。また実施例1と同様に延伸し、90℃の水中で1時間溶解処理を施したが、一部未溶解物が残り完全には溶解しなかった。またその溶解液の生分解性も低いものであった。紡糸性および得られた延伸糸の強度、伸度、水溶性、溶断温度、生分解性を表2に示す。さらに実施例1と同様にツイル織物を製造し、PVA延伸糸を溶解除去した織物を得たが、PVAの未溶解物が残っているためと思われるが、織物の一部に硬い部分があり、使用できるものではなかった。
【0052】
比較例2ではPVAの熱安定性が悪いために、紡糸中にPVAが熱分解・ゲル化して極短時間(約5分)しか巻き取ることができなかった。得られた原糸を実施例1と同様にして延伸し、90℃の水中で1時間溶解処理を施したが、ゲル化したためか一部未溶解物が残り完全には溶解しなかった。紡糸性および得られた延伸糸の強度、伸度、水溶性、溶断温度、生分解性を表2に示す。また実施例1と同様にツイル織物を製造し、PVA延伸糸を溶解除去した織物を得たが、比較例1と同じように織物の一部に硬い部分があり、使用できるものではなかった。
【0053】
実施例7
実施例1で使用したPVAとD体の含有率が1%のポリ乳酸(融点;170℃)とをそれぞれ別の押し出し機で溶融混練して、変性PVAを海側に、ポリ乳酸が島側になるように235℃の紡糸パックに導き、ノズル径0.4mmφ×24ホール、吐出量24g/分で複合紡糸し、紡速800m/minで巻き取り、海島複合比率1:1、島数16の海島型複合繊維を得た。次いで、得られた紡糸原糸を150℃の熱風炉で2.8倍(HDmax×0.7)に延伸し、単繊維繊度4dtexの複合繊維を得た。引き続き該複合繊維を用いて筒編み地を作成し、95℃の熱水に1時間浸せきし、PVA成分を除去してポリ乳酸繊維からなる編み地を得た。得られた編み地は風合いが良好で、編み地を解いて調べた繊維の繊度は約0.17dtexの極細繊維になっており、物性も十分なものであった。またPVAを溶解除去した廃水を回収して調べた生分解性は良好で分解率98%であった。
【0054】
比較例3
実施例7で用いたPVAの代わりにポリエチレン(ミラソンFL60:三井化学)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして繊維化し、編地を作成した。この編地を90℃のトルエンを用いて抽出処理を行ったが、抽出後に得られた編地は風合がごわごわした劣悪なものであり、繊維物性も低いものであった。またポリエチレンを溶解除去した廃水を回収して、生分解性を調べたが、分解率2%で実質的に分解していなかった。
【0055】
比較例4
実施例7で用いたPVAの代わりに固有粘度0.51(フェノール/テトラクロロエタンの等質量混合溶媒にて30℃で測定)でスルホイソフタル酸5モル%、ポリエチレングリコール4質量%変性のポリエチレンテレフタレートを用いて270℃で紡糸したこと以外は、実施例7と同様にして繊維化し、編み地にした。この編み地を98℃の40g/LのNaOHを用いて抽出処理を行った。この抽出処理により変性ポリエチレンテレフタレートだけでなくポリ乳酸も溶解・分解し、ポリ乳酸の編み地は得られなかった。
【0056】
実施例8
実施例7で得られた延伸糸(単繊維繊度4dtex)を捲縮機で捲縮を付与し51mmにカットして短繊維を得た。この短繊維をローラーカードでカーディングし、ニードルパンチで絡合して不織布とした。この不織布を95℃の熱水に1時間浸せきし、変性PVAを除去してポリ乳酸からなるシート状物を得た。得られたシートは十分な強度を有し、風合の柔らかいものであった。またPVAを溶解除去した廃水を回収して調べた生分解性は良好で分解率95%であった。
【0057】
実施例9
実施例2に用いたPVAとD体の含有率が1%のポリ乳酸(融点;170℃)とをそれぞれ別の押し出し機で溶融混練して、変性PVAとポリ乳酸とを240℃の紡糸パックに導き、変性PVAとポリ乳酸とが1:2の比率の11層(ポリ乳酸6層、変性PVA5層)の多層貼り合わせ型複合繊維を紡速800m/minで巻き取った。得られた紡糸原糸を150℃の熱風炉で3倍に延伸し、5mmにカットしてカットファイバーを得た。このカットファイバーを水中に投じ撹拌分散させた後、この分散物を80メッシュのステンレス製金網を通して抄紙した。この紙を80kg/cm2の水流で複合繊維を分割・絡合し、引き続いて95℃の熱水に1時間浸せきし、変性PVAを除去してシート状物を得た。このシート状物は十分な強度を有し、柔らかい風合を有していた。また抽出したPVAの溶液を回収して調べた生分解性は良好で分解率97%であった。
【0058】
実施例10
実施例1で使用したPVAを溶融押出機を用いて240℃で溶融混練し、溶融ポリマー流を紡糸頭に導き、孔径0.25mmで24孔を有する紡糸口金から吐出させ、紡出糸条を20℃の冷却風で冷却しながら円型吸引噴射装置に導き、実質3000m/分の引取り速度で牽引細化させ、開繊したフィラメント群を移動式捕集コンベア装置上に捕集堆積することにより、長繊維ウェブを形成した。このウェブを、160℃に加熱した凹凸柄エンボスロールとフラットロールとの間で、線圧20kg/cmの圧力下で通過させ、エンボス部分熱圧着した、単繊維繊度が4.3dtexの長繊維からなる、目付30g/m2の長繊維不織布を得た。この不織布は95℃の温水に投入したところ、もとの不織布形態を止めず溶解し、溶解後のPVA溶液を回収して生分解性を調べると分解率95%と良好であった。
Claims (6)
- 溶融紡糸法により紡糸され、1,2−グリコール結合の含有量が1.8モル%〜3.5モル%であり、粘度平均重合度が250〜450であって、かつエチレン単位が4−13モル%導入された変性ポリビニルアルコールを少なくとも一成分とする熱可塑性ポリビニルアルコール繊維。
- 溶融紡糸法により紡糸され、1,2−グリコール結合の含有量が1.8モル%〜3.5モル%であり、粘度平均重合度が250〜450であって、かつエチレン単位が4−13モル%導入された変性ポリビニルアルコール及び融点が270℃以下である他の熱可塑性重合体とからなる複合繊維。
- ポリビニルアルコールの鹸化度が96モル%〜99.96モル%である請求項1又は2に記載の繊維。
- ポリビニルアルコールが可塑剤を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維を含む繊維構造物。
- 請求項5に記載の繊維構造物を水で処理し、繊維を構成するポリビニルアルコールを溶解除去することを特徴とする繊維製品の製造方法。
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