JP6166669B2 - 制御装置 - Google Patents
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Description
すなわち、応答遅れが大きな系に対して、所定時刻後に目標値と実測値を一致させるPFC制御において、目標値が変化する過渡状態において、目標値と実測値との乖離が発生するといった問題が顕著化しており、このため、応答遅れが大きな系に対して、従来手法に基づいたPFC制御を適用できないといった問題が存在した。
本発明に係る制御装置は、所定時間後の制御対象の出力目標値を与える目標値設定部と、前記出力目標値が付与された場合における所定時間後の制御対象の出力を、前記制御対象の動特性モデルに基づいて予測する予測部と、前記予測部が予測した所定時間後の制御対象の出力の予測値と前記目標値設定部で与えられた出力目標値とが一致するような入力を、PFC制御に基づいて決定する入力決定部と、前記出力目標値の時間変化に関する項を前記入力決定部へ入力し、当該入力決定部でのPFC制御を補正する補正部と、を有していることを特徴とする。
[加熱炉の概略]
本実施形態の制御装置1が制御する対象としては、圧延工程において鋳片を所定の温度まで加熱する加熱炉20や、高圧処理を行う物品に対する前処理として、当該物品を所定の温度まで加熱する加熱炉20などが想定される。
[従来の制御]
加熱炉20には、炉内の雰囲気温度を適切に制御し、被加熱物Wの温度(以下、単に物温と呼ぶこともある)をコントロールするための制御装置が設けられている。
図2は、加熱炉20内を1000℃まで一定速度で加熱し、200分時に温度外乱を与えた場合のカスケード制御適用結果である。図2より明らかなように、PIDカスケード制御では、加熱終了時(100分時)にオーバーシュートが発生するとともに、冷却速度が低いために、オーバーシュート後の冷却速度が不足し、逆にアンダーシュートするなどハンチングが発生している。また、200分時の温度外乱に対する変動はそこそこ小さく抑えられているが、逆にこれ以上変動を小さくすれば、加熱終了時のハンチングが大きくなってしまう。逆に加熱終了時のハンチングを小さくすると温度外乱時の変動が大きくなってしまう。
図3の制御装置1(PFC制御を行う制御装置)は、加熱炉20などの制御対象209を一次遅れ系とむだ時間系で近似できるものとし、この制御対象209に、所定時間後の制御対象209の出力目標値を与えるようにする。すなわち、出力目標値yd(t+te)を設定する目標値設定部202が設けられると共に、制御対象209の入側に積算部203が設けられ、この積算部203でuk=uk-1+akで算出された指令値を入力するようにしている。ここで、ukはyd(t+te)-ye(t+te)、akは、一次遅れ系のステップ応答の逆数で与えられるものとしている。
また、積算部203からの出力は、分岐してステップ応答部205へと入力される。ステップ応答部205は一次遅れ系のステップ応答の一定時間後のゲイン特性を有している。また、予測部204の出力はインパルス応答部206へと入力される。インパルス応答部206は、一次遅れ系のインパルス応答の一定時間後のゲイン特性を有するものとなっている。インパルス応答部206の出力はステップ応答部205の出力に加算された上で、制御対象209の出力に加算され、推定誤差を加味した未来時刻teでの物温の予測値ye(t+te)となる。つまり、予測部204の出力がむだ時間部210を通過した後の値が制御対象209の出力に加えられると共に、ステップ応答部205の出力とインパルス応答部206の出力とが加算された値が制御対象209の出力に加えられ、積算部203の入側へネガティブフィードバックされる。
なお、物温とは、加熱炉20内に配置された被加熱物自体の温度や被加熱物の近傍の温度のことである。
以上述べたような制御装置201は、所定の評価時刻te後の出力実測値y(t+te)と目標値yd(t+te)が一致するように制御するもので、入力uk(=u(t))を一定にホールドした際のte時刻後の出力y(t+te)の予測値ye(t+te)をモデルから予測し、ye(t+te)とyd(t+te)が一致するように、ukをサンプリング周期毎に決定するものとなっている。
図4は、加熱炉20内を1000℃まで一定速度で加熱し(現時刻からte時刻後までにydが変化する状況)、200分時に温度外乱を与えた場合の結果である。図4から明らかなように、PFC制御ではPID制御のようにオーバーシュートは発生せず、また外乱についても速やかに収まるなど、定常状態では良好な制御が行われているが、加熱時に目標値と実測値がずれてしまう(図4中のδ)。
[第1実施形態]
そこで、本実施形態では、上記した問題点を克服した応答遅れ系に対する制御装置1を有するものとなっている。
一方、積算部3からの分岐された出力ukは、さらに、ステップ応答部5へと入力される。ステップ応答部5は一次遅れ系のステップ応答の一定時間後のゲイン特性を有している。また、予測部4の出力はインパルス応答部6へと入力される。インパルス応答部6は、一次遅れ系のインパルス応答の一定時間後のゲイン特性を有するものとなっている。インパルス応答部6の出力はステップ応答部5の出力に加算された上で、制御対象9の出力に加算され、推定誤差を加味した未来時刻teでの物温の予測値ye(t+te)となる。
さらに、制御装置1は、補正部7(未来入力算出部)を有し、この補正部7の出力が、インパルス応答部6の出力とステップ応答部5の出力との加算後の信号にさらに加算されるものとなっている。
以上述べた制御装置1によれば、図5に示す如く、加熱源22の制御系を含め加熱源22温度目標値から物温までの動特性がむだ時間Lと時定数Tの一次遅れ系で近似された場合、物温目標値yd(t)がランプ状に温度上昇する過渡応答時に、加熱源22目標値ukも同じ温度上昇率で上昇することが想定される。すなわちuk+jが同じ上昇率で温度上昇するとした際に、ye(t+te)とyd(t+te)が一致するようにukを決定する。
[第2実施形態]
第1実施形態で述べた将来挙動の予測機能を有する応答遅れ系の制御装置1を、より高精度な制御を可能とする装置とするために、以下に述べるような一般化を考えることにする。
一般的な予測制御では、現在から時刻teまでu(t)をホールドするとしてye(t+te)を、式(5)で予測し、ye(t+te)とyd(t+te)が一致するようにu(t)を与える。
そこで、第2実施形態では、例えば、u(t+τ)をu(t)と、u(t)からの変化量du(τ)の和として、式(7)で与えるようにしている。
更に、むだ時間Lを含んだ系を考える。むだ時間Lを含んだ系は、式(10)で表現される。
図7は、第2実施形態の制御ブロックを示したものである。
この図に示すように、積算部3は、次式で表される特性を有するものとされている。
積算部3からの出力は、分岐してむだ時間部10を通った上で、第1予測部4Aに入力され、第1予測部4Aの出力は第2予測部4Bへと入力され、第2予測部4Bの出力が制御対象9の出力に加算されるものとなっている。
なお、加熱源22から物温までの応答遅れは、加熱源22と物温計測位置との位置関係によって変化する。そこで、以上述べた第1実施形態及び第2実施形態で述べた制御装置1において、物温計測位置に応じて、加熱源22から物温までの応答遅れそのものを入力できる入力機能、あるいは加熱源22と物温計測位置との距離などを入力し、距離情報などから応答遅れ(遅れ時間te、むだ時間L)に変換できる機能を有することで、さまざまな加熱源22と物温計測位置の関係に対応可能となる。
[第3実施形態]
次に、本発明に係る制御装置の第3実施形態について述べることにする。
図10に、第3実施形態に係る制御装置1のブロック図を示す。
図10からわかるように、第1実施形態では、昇温時の予測値の補正量を(T・e-(te-L)/T+te-T-L)×温度上昇速度にて与えていたが、一次遅れ系の入出力から未来値を予測した本実施形態(図10)の場合には、補正量を((T+L)・e-te/(T+L)+te-T-L)×温度上昇速度で与えるようにしている。
[第4実施形態]
本発明に係る制御装置の第4実施形態について述べることにする。
第1実施形態、第2実施形態の制御装置を用いることで、応答遅れが大きな系であっても、所定時刻後に目標値と実測値を確実に一致させることが可能となることは、前述した通りである。しかしながら、更なる高精度な制御を意図した場合、以下に述べるような問題点が発生することが考えられる。
その場合、被加熱物のWの物温を停止温度でキープしたいのであるが、ヒータ温度(加熱源22の温度)は、物温(被加熱物Wの温度)よりも高い状況となっており、急には温度降下しない。それ故、図11に示すように、物温は一旦キープ温度(物温目標値)以上に上昇し、オーバーシュートが発生することになる。その後、ヒータ温度の冷却に伴い、物温も降温してキープ温度(物温目標値)に一致するようになる。
そこで、第4実施形態では、第1実施形態の技術(図5)を更に改良した制御装置1を開示する。
なお、ヒータ温度の制御特性のような第1の動特性(変動動特性)は、炉の保温能力や内部温度や内部圧力などによって左右されるため、係る動特性を数式化してモデル化することは非常に困難である。そこで、モデルの代わりに実測値を用いるようにしている。
そのために、第4実施形態の制御装置1は、制御対象が、変動動特性からなる第1の動特性と、固定動特性からなる第2の動特性とを有するに際しては、目標値設定部2の出力が前記第1の動特性へ入力されると共に、第1の動特性の出力が第2の動特性12に入力されるように構成されている。
図12は、第4実施形態に係る制御装置1である。この制御装置1は、加熱炉20などの制御対象が、第1の動特性と第2の動特性とで構成されるものとしている。第1の動特性は、ヒータ温度の制御特性のように時間や状態によって応答が変化するものであり、第2の動特性は、時間や状態によって応答がほとんど変化しないものである。
第1動特性部11からの出力は、第1動特性部11の入力へネガティブフィードバックされると共に、予測部4に入力され、その出力が第2動特性部12(制御対象9)の出力に加算される。予測部4は一次遅れ系の伝達関数で構成され、予測部4からの出力は、むだ時間系の伝達関数で構成されたむだ時間部10に入力され、むだ時間部10の出力が第2動特性部12(制御対象9)の出力に減算の形で入力される。
以上述べたように、第1実施形態の制御装置では、第2動特性部12に対する入力がヒータ22(加熱源)の温度の目標値ukであったが、第4実施形態の制御装置1では、ヒータ温度の実測値(第1動特性部11の出力)を第2動特性部12の入力として与えている。ヒータ温度の実測値を第2動特性部12の入力することで、冷却時のヒータ温度の応答の変化を加味することができるようになる。
図13に示すように、ヒータ22の温度目標値が急峻に低下した場合(ヒータ22を急に停止した場合)であっても、物温と物温推定値がほぼ一致しており、オーバーシュート後のアンダーシュートすることなく、制御精度向上及び整定時間短縮を実現することが可能となる。
[第5実施形態]
本発明に係る制御装置の第5実施形態について述べることにする。
本実施形態においても、第4実施形態で説明した技術と同様に、制御対象の動特性が、時間や状態によって応答が変化する第1の動特性と、応答がほとんど変化しない第2の動特性とから構成されるとして、モデルを構築する。例えば、ヒータ温度の制御特性のような第1の動特性は、炉の保温能力や内部温度や内部圧力などによって左右されるため、係る動特性をモデル化することは非常に困難である。そこで、モデル出力の代わりに実測値を用いるようにしている。
図16に示す如く、制御前の状況が従来のPFC制御をベースとしているため、昇温時には目標値と物温は少し乖離しているが、温度停止時には、第4実施形態と同様に物温と物温推定値は一致しており、オーバーシュート後のアンダーシュートをすることなく、制御精度向上及び整定時間短縮を実現することが可能となっている。
なお、第5実施形態として、ヒータ22の制御応答を例示して説明したが、この実施形態に示した技術は、各種アクチュエータの制御に好適に適用可能である。例えば、トルク飽和や電圧飽和などの状況下にある電動モータの制御に第5実施形態に示した技術を用いることもできる。また、第5実施形態に示した技術は、PWM制御におけるデッドタイム影響による応答変化、油圧や空圧アクチュエータなども入力飽和や油温による応答変化などを扱うことができる。
2 目標値設定部
3 積算部
4 予測部
4A 第1予測部
4B 第2予測部
5 ステップ応答部
6 インパルス応答部
7 補正部
8 入力決定部
9 制御対象
10 むだ時間部
11 第1動特性部
12 第2動特性部
20 加熱炉
21 炉体
22 加熱源(ヒータ)
23 温度計
101 従来からの制御装置
201 従来からの制御装置
W 被加熱物
Claims (2)
- 所定時間後の制御対象の出力目標値を与える目標値設定部と、
前記出力目標値が付与された場合における所定時間後の制御対象の出力を、前記制御対象の動特性モデルに基づいて予測する予測部と、
前記予測部が予測した所定時間後の制御対象の出力の予測値と前記目標値設定部で与えられた出力目標値とが一致するような入力を、PFC制御に基づいて決定する入力決定部と、
前記出力目標値の時間変化に関する項を前記入力決定部へ入力し、当該入力決定部でのPFC制御を補正する補正部と、
を有していることを特徴とする制御装置。 - 前記制御対象が、変動動特性からなる第1の動特性と、固定動特性からなる第2の動特性とを有するに際しては、
前記予測部が前記第2の動特性を有するものとし、
前記目標値設定部の出力が前記第1の動特性へ入力されると共に、前記第1の動特性の出力が前記予測部に入力されるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
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JP2013033372 | 2013-02-22 | ||
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2014
- 2014-02-17 JP JP2014027531A patent/JP6166669B2/ja active Active
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CN110867848B (zh) * | 2019-10-28 | 2021-05-14 | 安徽工业大学 | 一种用于直流微电网群落的能量管理预测控制方法 |
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