JP5736804B2 - 連続式加熱炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置 - Google Patents

連続式加熱炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、鋼材の搬送方向に配列された複数の加熱帯を有し、各加熱帯に鋼材を連続的に搬送することによって鋼材を連続的に加熱する連続式加熱炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置に関するものである。
従来の連続式加熱炉の燃焼制御方法としては、特許文献1や特許文献2に記載されているものが知られている。特許文献1記載の燃焼制御方法は、非線形計画法を利用して鋼材を抽出目標温度に加熱するための最適炉温を算出し、算出された最適炉温になるように連続式加熱炉の炉温を制御するものである。特許文献2記載の燃焼制御方法は、温度変更量が最小となり、且つ、各加熱帯における温度が目標通りになる燃料流量を線形計画法を利用して算出し、算出された燃料流量になるように各加熱帯の燃料流量を制御するものである。
特許第3796808号公報 特開平7−258752号公報
しかしながら、特許文献1記載の燃焼制御方法によれば、非線形計画法を利用して連続式加熱炉の最適炉温を算出するために、計算時間が膨大となり、連続式加熱炉内に数本から数十本存在する全ての鋼材について最適炉温を逐次算出することは困難である。また、特許文献2記載の燃焼制御方法によれば、温度予測モデルを線形化し、1次元の伝熱方程式を計算することによって燃料流量を算出しているために、鋼材毎の最適炉温を精度高く算出することが難しい。このため、鋼材を抽出目標温度通りに加熱するための鋼材毎の最適炉温を短時間、且つ、正確に算出可能な燃焼制御方法の提供が期待されていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、鋼材毎の最適炉温を短時間、且つ、高精度に算出可能な連続式加熱炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置を提供することにある。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る連続式加熱炉の燃焼制御方法は、鋼材の搬送方向に配列された複数の加熱帯を有し、各加熱帯に鋼材を連続的に搬送することによって鋼材を連続的に加熱する連続式加熱炉の燃焼制御方法であって、2次元伝熱方程式に基づく2次元モデルを利用して各加熱帯における鋼材の温度を予測するステップと、1次元方程式に基づく1次元モデルを利用して予測された各加熱帯における鋼材の温度が前記2次元モデルを利用して予測された各加熱帯における鋼材の温度と一致するように、前記2次元モデルを利用して予測された各加熱帯における鋼材の温度に基づいて1次元モデルにおける各帯の代表放射率を決定するステップと、決定された代表放射率を用いた1次元モデルを利用して各加熱帯における鋼材の最適炉温を算出するステップと、算出された各加熱帯における鋼材の最適炉温に基づいて、各加熱帯の炉温を設定するステップと、を含む。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る連続式加熱炉の燃焼制御装置は、鋼材の搬送方向に配列された複数の加熱帯を有し、各加熱帯に鋼材を連続的に搬送することによって鋼材を連続的に加熱する連続式加熱炉の燃焼制御装置であって、2次元伝熱方程式に基づく2次元モデルを利用して各加熱帯における鋼材の温度を予測する2次元スラブ温度計算部と、1次元方程式に基づく1次元モデルを利用して予測された各加熱帯における鋼材の温度が前記2次元モデルを利用して予測された各加熱帯における鋼材の温度と一致するように、前記2次元スラブ温度計算部によって予測された各加熱帯における鋼材の温度に基づいて1次元モデルにおける各帯の代表放射率を決定する1次元スラブ温度計算部と、前記1次元スラブ温度計算部が決定した代表放射率を用いた1次元モデルを利用して各加熱帯における鋼材の最適炉温を算出する炉温最適化部と、前記炉温最適化部によって算出された各加熱帯における鋼材の最適炉温に基づいて、各加熱帯の炉温を設定する設定炉温決定部と、を備える。
本発明に係る連続式加熱炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置によれば、鋼材毎の最適炉温を短時間、且つ、高精度に算出することができる。
図1は、本発明が適用される連続式加熱炉の一構成例を示す模式図である。 図2は、図1に示す連続式加熱炉の平面構成を示す模式図である。 図3は、図1に示す連続式加熱炉内におけるスラブの位置の変化に伴うスラブの温度変化の様子を示す図である。 図4は、本発明の一実施形態である燃焼制御装置の構成を示すブロック図である。 図5は、本発明の一実施形態である加熱炉燃焼制御処理の流れを示すフローチャートである。 図6は、スラブ内部点、スラブ最左端内部点、スラブ最右端内部点、スラブ上表面内部点、スラブ上表面最左端点、スラブ上表面最右端点、スラブ下表面内部点、スラブ下表面最左端点、及びスラブ下表面最右端点の定義を説明するための模式図である。 図7は、スキッド部及びスキッド間部の定義を説明するための模式図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である連続式加熱炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置について説明する。
〔連続式加熱炉の構成〕
始めに、図1乃至図3を参照して、本発明が適用される連続式加熱炉の構成について説明する。図1は、本発明が適用される連続式加熱炉の一構成例を示す模式図である。図2は、図1に示す連続式加熱炉の平面構成を示す模式図である。図3は、連続式加熱炉内におけるスラブの位置の変化に伴うスラブの温度変化の様子を示す図である。
図1乃至図3に示すように、本発明が適用される連続式加熱炉は、スラブSの搬送方向に配列された第1加熱帯,第2加熱帯,第3加熱帯,及び均熱帯を備えている。各加熱帯にはバーナーが設置されており、加熱帯毎に炉温を調整することができるようになっている。各加熱帯には放射温度計が設置されており、各加熱帯の炉温を適宜計測することができる。この連続式加熱炉では、スラブSは、第1加熱帯側から装入され、第1加熱帯,第2加熱帯,第3加熱帯,及び均熱帯において順次加熱された後、均熱帯側から抽出される。具体的には、スラブSは、連続式加熱炉内に3時間程度滞留し、第1加熱帯に装入されてから均熱帯から抽出されるまでの間に1100〜1200℃程度に加熱される。
各加熱帯は、ミクロゾーンと呼ばれる複数の制御空間に分割されており、ミクロゾーン単位で炉温,スラブ位置,及びスラブ温度を制御可能に構成されている。本実施形態では、4つの加熱帯に対して20個のミクロゾーンが設定されている。具体的には、第1加熱帯には1〜9番目のミクロゾーンが設定され、第2加熱帯には10〜13番目のミクロゾーンが設定され、第3加熱帯には14〜17番目のミクロゾーンが設定され、均熱帯には18〜20番目のミクロゾーンが設定されている。各ミクロゾーンについては、スラブが装入されていない時間帯もあれば、1つ又は複数のスラブが装入されている時間帯もある。
連続式加熱炉の燃焼制御では、放射温度計によって計測された炉温からスラブSの温度を予測し、スラブSの温度が出側目標温度になるように各加熱帯の炉温を決定する。スラブSの装入温度や出側目標温度は、スラブSの大きさや品種に応じて変化する。例えば、第1加熱帯に装入されるスラブSには冷片と熱片とがあり、冷片の温度は常温、熱片の温度は400〜600℃程度である。このような連続式加熱炉においてスラブSを効率よく加熱することは、燃料原単位の節約に繋がるだけではなく、生産効率に大きな影響を及ぼす。
〔燃焼制御装置の構成〕
次に、図4を参照して、本発明の一実施形態である燃焼制御装置の構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態である燃焼制御装置の構成を示すブロック図である。図4に示すように、本発明の一実施形態である燃焼制御装置1は、炉温検出部3,データベース4,記憶部5,演算部6,及び加熱炉制御部7を備える。炉温検出部3は、各加熱帯の炉温を検出し、検出された炉温を示す信号を演算部6に入力するものである。データベース4は、連続式加熱炉において加熱される各スラブの幅,長さ,装入順序,装入温度,及び出側目標温度に関するデータを格納する。記憶部5は、後述する燃焼制御処理を実行するために必要な加熱炉燃焼制御プログラム5a及び各種制御データを記憶する。演算部6は、CPU等の演算処理装置によって構成され、加熱炉燃焼制御プログラム5aを実行することによって、将来炉温計算部6a,2次元スラブ温度計算部6b,1次元スラブ温度計算部6c,炉温最適化部6d,及び設定炉温決定部6dとして機能する。これら各部の機能については後述する。加熱炉制御部7は、演算部6から出力される制御信号に従って各加熱帯の炉温を制御するものである。
〔加熱炉燃焼制御処理〕
このような構成を有する燃焼制御装置1は、以下に示す加熱炉燃焼制御処理を実行することによって、スラブ毎の最適炉温を短時間、且つ、高精度に算出し、算出された最適炉温に従って連続式加熱炉の炉温を制御する。以下、図5に示すフローチャートを参照して、この加熱炉燃焼制御処理を実行する際の燃焼制御装置1の動作について説明する。なお、以下に示す燃焼制御装置1の動作は、演算部6が記憶部5に記憶されている加熱炉燃焼制御プログラム5aを実行することによって実現される。
図5は、本発明の一実施形態である加熱炉燃焼制御処理の流れを示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、連続式加熱炉の稼働が開始されたタイミングで開始となり、加熱炉燃焼制御処理はステップS1の処理に進む。なお、以下に示す加熱炉燃焼制御処理は、所定の制御周期毎(例えば1分毎)に繰り返し実行されるものとする。
ステップS1の処理では、将来炉温計算部6aが、現在からスラブ抽出までの各ミクロゾーンの炉温変化を求める。具体的には、始めに、将来炉温計算部6aは、データベース4に記憶されているスラブの装入順序に関するデータに基づいて、連続式加熱炉内に装入された全てのスラブについて、i帯(i=1〜4,i=1:第1加熱帯,i=2:第2加熱帯,i=3:第3加熱帯,i=4:均熱帯)における残り在炉時間ti(i=1〜4)及びミクロゾーン毎の残り在炉時間tj(j=1〜20)を算出する。次に、将来炉温計算部6aは、残り在炉時間後にスラブが抽出端から抽出されるものとして、各スラブの将来炉内位置を計算する。次に、将来炉温計算部6aは、各スラブの将来炉内位置からスラブが将来位置するミクロゾーンを算出する。
次に、将来炉温計算部6aは、ミクロゾーンの現在上部炉温度θRUj(j=1〜20)から現時点における各帯の予想設定炉温θRi(i=1〜4)を算出する。例えば、将来炉温計算部6aは、抽出側端部の20番目のミクロゾーンの現在上部炉温度θRU20を均熱帯の予想設定炉温θR4、抽出側端部の17番目のミクロゾーンの現在上部炉温度θRU17を第3加熱帯の予想設定炉温θR3、抽出側端部の13番目のミクロゾーンの現在上部炉温度θRU13を第2加熱帯の予想設定炉温θR2、抽出側端部の9番目のミクロゾーンの現在上部炉温度θRU9を第1加熱帯の予想設定炉温θR1として算出する。また、将来炉温計算部6aは、炉温応答時間後に各帯に存在するスラブの必要炉温の最大値に基づいて炉温応答時間後の各帯の予想設定炉温を決定する。
次に、将来炉温計算部6aは、炉温の応答性を考慮して帯毎の予想実績炉温を算出する。例えば、設定炉温を上昇させる場合、将来炉温計算部6aは、「前回の予想実績炉温+炉温変化限界値ΔθRit×経過時間」と「今回予想設定炉温」の小さい方を「今回予想実績炉温」とする。また、設定炉温を下降させる場合には、将来炉温計算部6aは、「前回の予想実績炉温+炉温変化限界値ΔθRit×経過時間」と「今回予想設定炉温」の大きい方を「今回予想実績炉温」とする。
次に、将来炉温計算部6aは、各帯の代表炉温と現在のミクロゾーンの炉温との差を定義する。具体的には、第1加熱帯については、将来炉温計算部6aは、抽出側端部の9番目のミクロゾーンの上部炉温を第1加熱帯代表炉温に設定し、1〜8番目のミクロゾーンの上部炉温及び1〜9番目のミクロゾーンの下部炉温と第1加熱帯代表炉温との差分を算出する。第2加熱帯については、将来炉温計算部6aは、抽出側端部の13番目のミクロゾーンの上部炉温を第2加熱帯代表炉温に設定し、10〜12番目のミクロゾーンの上部炉温及び10〜13番目のミクロゾーンの下部炉温と第2加熱帯代表炉温との差分を算出する。第3加熱帯については、将来炉温計算部6aは、抽出側端部の17番目のミクロゾーンの上部炉温を第3加熱帯代表炉温に設定し、14〜16番目のミクロゾーンの上部炉温及び14〜17番目のミクロゾーンの下部炉温と第3加熱帯代表炉温との差分を算出する。均熱帯については、将来炉温計算部6aは、抽出側端部の20番目のミクロゾーンの上部炉温を均熱帯代表炉温に設定し、18,19番目のミクロゾーンの上部炉温及び18〜20番目のミクロゾーンの下部炉温と均熱帯代表炉温との差分を算出する。
次に、将来炉温計算部6aは、各ミクロゾーンにおける予想実績炉温をタイムステップ毎に算出する。具体的には、第1加熱帯については、将来炉温計算部6aは、抽出側端部の9ミクロゾーンの上部炉温を第1加熱帯の予想実績炉温に設定し、1〜8番目のミクロゾーンの上部炉温及び1〜9番目のミクロゾーンの下部炉温と第1加熱帯の予想実績炉温との差分から各ミクロゾーンの予想実績炉温を算出する。第2加熱帯については、将来炉温計算部6aは、抽出側端部の13番目のミクロゾーンの上部炉温を第2加熱帯の予想実績炉温に設定し、10〜12番目のミクロゾーンの上部炉温及び10〜13番目のミクロゾーンの下部炉温と第2加熱帯の予想実績炉温との差分から各ミクロゾーンの予想実績炉温を算出する。第3加熱帯については、将来炉温計算部6aは、抽出側端部の17番目のミクロゾーンの上部炉温を第3加熱帯の予想実績炉温に設定し、14〜16番目のミクロゾーンの上部炉温及び14〜17番目のミクロゾーンの下部炉温と第3加熱帯の予想実績炉温との差分から各ミクロゾーンの予想実績炉温を算出する。均熱帯については、将来炉温計算部6aは、抽出側端部の20番目のミクロゾーンの上部炉温を均熱帯の予想実績炉温に設定し、18,19番目のミクロゾーンの上部炉温及び18〜20番目のミクロゾーンの下部炉温と均熱帯の予想実績炉温との差分から各ミクロゾーンの予想実績炉温を算出する。これにより、ステップS1の処理は完了し、加熱炉燃焼制御処理はステップS2の処理に進む。
ステップS2の処理では、2次元スラブ温度計算部6bが、2次元差分モデルを用いた伝熱計算(加熱シミュレーション)によって、ステップS1の処理によって求められた各ミクロゾーンの炉温変化に基づいて現在位置から抽出までのスラブの温度変化を計算する。具体的には、2次元スラブ温度計算部6bは、2次元差分モデルでの計算によって、各加熱帯における出側のスラブ温度を計算すると共に、各加熱帯における出側のスキッド部平均温度及びスキッド間平均温度を算出する。
2次元差分モデルは、スラブ温度差分計算のモデルと同じく、ADI(Alternative Direction Implicit Method)法を用いる。一般に、加熱炉内におけるスラブ温度を予測するためには、熱伝導方程式を利用する。これに対して、ADI法を利用した差分計算法は、通常の陽解法を利用した差分計算方法と比較して、タイムステップΔtに対する制限が長いことから、精度を損なわずに計算機負荷を下げることができる。これにより、ステップS2の処理は完了し、加熱炉燃焼制御処理はステップS3の処理に進む。
ここで、ADI法を利用したスラブ温度計算について説明する。いま2次元伝熱方程式を以下に示す数式(1)のように定義する。なお、数式(1)中、パラメータθは、スラブ温度、パラメータtは時間、x,yはスラブ内の座標値、パラメータaはk(Cp・ρ)とする。また以下では、簡単のため、x方向のメッシュ点をi(i=1〜m)、y方向のメッシュ点をj(j=1〜n)、メッシュ幅をそれぞれΔx,Δy、タイムステップ幅をΔtとして、ADI法による差分計算を行う場合を考える。
Figure 0005736804
伝熱方程式を差分形式に置き換える方法としては、陽差分近似と陰差分近似との2種類の方法がある。陽差分近似とは、現在(既知)のスラブ温度を用いて差分式を表現する方法であり、陰差分近似とは、将来時間(未知)のスラブ温度を用いて差分式を表現する方法である。ADI法とは、先に述べた伝熱方程式の2回の導関数のうち、一方を陰差分近似で置き換え、他方を陽差分で置き換え(奇数ステップ)、次回計算時は、陰差分近似と陽差分近似とを逆にし(偶数ステップ)、この2つの計算を交互に繰り返していく方法である。
そこで、以下では、奇数ステップ時に、x方向を陰差分形式、y方向を陽差分形式で表し、偶数ステップ時には、x方向を陽差分形式、y方向を陰差分形式で表すこととする。既に求めている時間tでのスラブ温度に基づいて、時間t+1でのスラブ温度を求める際の差分方程式は奇数ステップ時及び偶数ステップ時でそれぞれ以下に示す数式(2)及び数式(3)のように表される。数式(2),(3)に示す通り、差分方程式には複数個の未知数が含まれている。そこで、以下では、数式(2),(3)の解き方について説明する。
[奇数ステップ時]
Figure 0005736804
[偶数ステップ時]
Figure 0005736804
[奇数ステップ時]
奇数ステップ時の差分方程式を見ると、ある点(i,j)における将来のスラブ温度を求める際に、x方向に隣接するメッシュ点(i−1,j),(i+1,j)の将来スラブ温度が含まれている。すなわち、奇数ステップ時の差分方程式を解くためには、各メッシュ点の差分方程式のjが同じものをm(x方向のメッシュ点数)個集めて連立方程式を作り、未知数θi,j,t+1(Ii=1〜m)を求めることになる。また、全てのメッシュ点のスラブ温度を求めるためには、これをn(y方向のメッシュ点数)回行うことになる。以下、各メッシュ点におけるスラブ温度を算出するための差分計算式を示す。なお、奇数ステップ時には、(5)スラブ上表面最左端点(図6に示す点P5)、(4)スラブ上表面内部点(図6に示す点P4)、(6)スラブ上表面最右端点(図6に示す点P6)、(2)スラブ最左端内部点(図6に示す点P2)、(1)スラブ内部点(図6に示す点P1)、(3)スラブ最右端内部点(図6に示す点P3)、(8)スラブ下表面最左端点(図6に示す点P8)、(7)スラブ下表面内部点(図6に示す点P7)、及び(9)スラブ下表面最右端点(図6に示す点P9)の順に計算を行う。また、将来変換温度(未知数)には、「’」を付けて示している。
(1)スラブ内部点(i=2,…,m−1、j=2,…,n−1)
Figure 0005736804
(2)スラブ最左端内部点(i=1、j=2,…,n−1)
Figure 0005736804
(3)スラブ最右端内部点(i=m、j=2,…,n−1)
Figure 0005736804
(4)スラブ上表面内部点(i=2,…,m−1、j=1)
Figure 0005736804
(5)スラブ上表面最左端点(i=1、j=1)
Figure 0005736804
(6)スラブ上表面最右端点(i=m、j=1)
Figure 0005736804
(7)スラブ下表面内部点(i=2,…,m−1、j=n)
Figure 0005736804
(8)スラブ下表面最左端点(i=1、j=n)
Figure 0005736804
(9)スラブ下表面最右端点(i=m、j=n)
Figure 0005736804
[偶数ステップ時]
偶数ステップ時は、奇数ステップ時と同様に、n元連立方程式を解くことになる。また、全てのメッシュ点のスラブ温度を求めるためには、これをm回行うことになる。以下、各メッシュ点におけるスラブ温度を算出するための差分計算式を示す。なお、偶数ステップ時には、(5)スラブ上表面最左端点(図6に示す点P5)、(2)スラブ最左端内部点(図6に示す点P2)、(8)スラブ下表面最左端点(図6に示す点P8)、(4)スラブ上表面内部点(図6に示す点P4)、(1)スラブ内部点(図6に示すP1)、(7)スラブ下表面内部点(図6に示す点P7)、(6)スラブ上表面最右端点(図6に示す点P6)、(3)スラブ最右端内部点(図6に示す点P3)、及び(9)スラブ下表面最右端点(図6に示す点P9)の順に計算を行う。また、将来変換温度(未知数)には、「’」を付けて示している。
(1)スラブ内部点(i=2,…,m−1、j=2,…,n−1)
Figure 0005736804
(2)スラブ最左端内部点(i=1、j=2,…,n−1)
Figure 0005736804
(3)スラブ最右端内部点(i=m、j=2,…,n−1)
Figure 0005736804
(4)スラブ上表面内部点(i=2,…,m−1、j=1)
Figure 0005736804
(5)スラブ上表面最左端点(i=1、j=1)
Figure 0005736804
(6)スラブ上表面最右端点(i=m、j=1)
Figure 0005736804
(7)スラブ下表面内部点(i=2,…,m−1、j=n)
Figure 0005736804
(8)スラブ下表面最左端点(i=1、j=n)
Figure 0005736804
(9)スラブ下表面最右端点(i=m、j=n)
Figure 0005736804
[奇数ステップ時及び偶数ステップ時の連立方程式]
上述の奇数ステップ時の差分方程式を整理し、一般的な形で表すと、以下に示す数式(22),(23)のように表される。また同様に、上記偶数ステップ時の差分方程式を整理し、一般的な形で表すと、以下に示す数式(22),(24)のように表される。
Figure 0005736804
Figure 0005736804
Figure 0005736804
従って、各ステップ時における連立方程式はいずれも以下に示す数式(25)のように表現することができる。なお、以下では、係数をA,B,C,Dで表現し、変数をXkと表記する。また、変数の個数はkx(1≦k<kx)個とする。
Figure 0005736804
最後に後から2番目の新しい式を用いて最後の式からXkx−1を消去すると、唯一の未知数Xkxだけを含んだ1つの式が得られる。次に、未知数Xkx−1,Xkx−2,…,X2,X1を更新代入によって順々に求めることができる。以下に示す数式群(26)は、Xkx−2を消去して得られた式からXk−1を消去する例を示す。
Figure 0005736804
以上の解の求め方をまとめると、以下に示すようになる。
(1)各方程式の係数Ak,Bk,Ck,Dkを求める(k=1〜kx)
(2)係数Ak,Bk,Ck,Dkに基づいてαk,βkを求める(k=1〜kx)
(3)Xkxを求める
(4)Xkx−1から順にX1まで求める
2次元伝熱方程式を元にした2次元差分モデルは、精密なものであるが、非線形であり、複雑でもあるために、温度予測を実行する際には問題はないが、最適炉温を計算するための最適化計算を実行する際には計算時間が掛かりすぎたり、収束しなかったりする可能性がある。そこで、最適炉温を計算するための最適化計算を実行する際には、この2次元差分モデルと同程度の温度予測精度を有する1次元伝熱方程式を元にした1次元モデルを作成し、使用する。
ステップS3の処理では、1次元スラブ温度計算部6cが、2次元差分モデルによる各加熱帯の予測温度と1次元モデルによる各加熱帯の予測温度とが一致するように、ステップS2の処理によって算出されたスラブ温度の計算結果を用いて、1次元伝熱方程式を元にした1次元モデルのパラメータを決定する。以下、1次元モデルのパラメータとして、代表放射率を決定する際の処理の流れについて説明する。なお、以下では、スラブの板厚方向を複数点に分割し、各点の温度を刻み時間Δt毎に計算する。またこの際、各区間にはスラブ表面からの熱流速等の境界条件を与えるものとする。また、一般に、以下の数式(27)に示す微分方程式の解法としては、以下の数式(28)に示す明解法、以下の数式(29)に示す陰解法、以下の数式(30)に示すクランク・ニコルソン法があるが、本実施形態では、クランク・ニコルソン法を用いて差分計算を行う。
Figure 0005736804
Figure 0005736804
Figure 0005736804
Figure 0005736804
1次元モデルの代表放射率を決定する際は、1次元スラブ温度計算部6cは、以下に示すようにしてスキッド部及びスキッド間部における代表放射率εcgs,εcgmを計算し、スキッド部の代表放射率εcgsがスキッド間部の代表放射率εcgm未満である場合、正常と判断し、スキッド部の代表放射率εcgsがスキッド間部の代表放射率εcgm以上である場合には、スキッド部の代表放射率εcgsとスキッド部間の代表放射率εcgmとを同じ値に設定する。これにより、ステップS3の処理は完了し、加熱炉燃焼制御処理はステップS4の処理に進む。
[スキッド部スラブ温度計算(図7に示す点P10の温度計算,図7中、符号11a,11bはスキッドを示す)]
(a)初期計算
帯入時の2次元差分計算結果のパラメータB1を初期温度とする。
(b)代表放射率εcgs
初期代表放射率εcgsc,εcgsdを決定する。
(c)スラブ温度計算を計算回数分繰り返すことにより帯出側スラブ温度を算出
メッシュ点表面温度と炉温と代表放射率とから熱流束を求める。
(d)スラブ温度平均値θss1c,θss1dと2次元差分計算結果のスラブ温度平均値θss2とを比較
パラメータfc(=(θss1c−θss2)×(θss1c−θss2))とパラメータfd(=(θss1d−θss2)×(θss1d−θss2))とを算出する。fc−fd>0である場合、黄金分割法によって代表放射率εcgsc,εcgsdを更新し、その差がΔtolerance以下である場合、その時の代表放射率εcgscをεcgsとして格納する。一方、その差がΔtolerance以下でない場合には、更新した代表放射率で帯出側スラブ温度を再計算し、パラメータfcを求める。
[スキッド間部スラブ温度計算(図7に示す点P11の温度計算,図7中、符号11a,11bはスキッドを示す)]
(a)初期計算
帯入時の2次元差分計算結果のパラメータA2を初期温度とする。
(b)代表放射率εcgm
黄金分割法を利用して初期代表放射率εcgmc,εcgmdを決定する。
(c)スラブ温度計算を計算回数分繰り返すことにより帯出側スラブ温度を算出
メッシュ点表面温度と炉温と代表放射率とから熱流束を求める。
(d)スラブ温度平均値θsm1c,θsm1dと2次元差分計算結果のスラブ温度平均値θsm2とを比較
パラメータfc(=(θsm1c−θsm2)×(θsm1c−θsm2))とパラメータfd(=(θsm1d−θsm2)×(θsm1d−θsm2))とを算出する。fc−fd>0である場合、黄金分割法によって代表放射率εcgmc,εcgmdを更新し、その差がΔtolerance以下である場合、その時の代表放射率εcgmcをεcgmとして格納する。一方、その差がΔtolerance以下でない場合には、更新した代表放射率で帯出側スラブ温度を再計算し、パラメータfcを求める。
ステップS4の処理では、炉温最適化部6dが、ステップS3の処理によってパラメータの値が決定された1次元モデルを用いて各スラブの最適炉温を算出する。具体的には、始めに、炉温最適化部6dは、線形計画法のもととなるモデルを算出するために、以下に示す各状態量の影響係数を算出する。
(1)燃料流量Fuの影響係数Aij
Figure 0005736804
(2)抽出温度θS4mの影響係数B4i
Figure 0005736804
(3)第3加熱帯出側温度θS3mの影響係数B3i
Figure 0005736804
(4)第2加熱帯出側温度θS2mの影響係数B2i
Figure 0005736804
(5)熟熱度Δθの影響係数C
Figure 0005736804
(6)スキッド部温度θSKの影響係数D
Figure 0005736804
(7)スキッド間部温度θSUの影響係数E
Figure 0005736804
次に、炉温最適化部6dは、これらの影響係数を用いることにより、以下に示す加熱炉燃焼制御処理に用いられる状態量を算出する。
(1)燃料流量Fu
Figure 0005736804
(2)抽出温度θS4m
Figure 0005736804
(3)第3加熱帯出側温度θS3m
Figure 0005736804
(4)第2加熱帯出側温度θS2m
Figure 0005736804
(5)熟熱度Δθ
Figure 0005736804
(6)スキッド部温度θSK
Figure 0005736804
(7)スキッド間部温度θSU
Figure 0005736804
そして、炉温最適化部6dは、各帯の目標温度と燃料流量とからなる以下の数式(45)に示す目的関数を、以下の数式(46)〜(54)に示す制約条件に従って線形計画法を用いて解くことにより、炉内の各スラブの各帯における最適炉温を算出する。これにより、ステップS4の処理は完了し、加熱炉燃焼制御処理はステップS5の処理に進む。
(1)目的関数J
Figure 0005736804
(2−1)抽出温度θS4mに関する制約条件(θS4mL:抽出温度下限値)
Figure 0005736804
(2−2)第3加熱帯出側温度θS3mに関する制約条件(θS3mL:第3加熱帯出側温度下限値)
Figure 0005736804
(2−3)第2加熱帯出側温度θS2mに関する制約条件(θS2mL:第2加熱帯出側温度下限値)
Figure 0005736804
(2−4)熟熱度Δθに関する制約条件(Δθ:熟熱度上限値)
Figure 0005736804
(2−5)スキッド部温度θSKに関する制約条件(θSKU:スキッド部温度上限値)
Figure 0005736804
(2−6)スキッド間部温度θSUに関する制約条件(θSUU:スキッド部温度上限値)
Figure 0005736804
(2−7)各帯間炉温勾配の下限値に関する制約条件(θRiL:炉温勾配下限値)
Figure 0005736804
(2−8)各帯間炉温勾配の上限値に関する制約条件(θRiU:炉温勾配下限値)
Figure 0005736804
(2−9)各帯間炉温勾配の上下限値に関する制約条件(θRiU:炉温勾配下限値)
Figure 0005736804
ステップS5の処理では、設定炉温決定部6eが、ステップS4の処理によって算出された各帯におけるスラブの最適炉温に基づいて各帯の設定炉温を決定し、決定した設定炉温を示す制御信号を加熱炉制御部7に出力する。これにより、ステップS5の処理は完了し、加熱炉燃焼制御処理はステップS6の処理に進む。
ステップS6の処理では、加熱炉制御部7が、設定炉決定部6eから入力された制御信号に従って、ステップS5の処理によって決定された設定炉温になるように各帯の炉温を制御する。これにより、ステップS6の処理は完了し、一連の加熱炉燃焼制御処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である加熱炉燃焼制御処理によれば、2次元スラブ温度計算部6bが、2次元伝熱方程式に基づく2次元モデルを利用して各加熱帯におけるスラブの温度を予測し、1次元スラブ温度計算部6cが、1次元方程式に基づく1次元モデルを利用して予測された各加熱帯におけるスラブの温度が2次元モデルを利用して予測された各加熱帯におけるスラブの温度と一致するように、2次元モデルを利用して予測された各加熱帯におけるスラブの温度に基づいて1次元モデルにおける各帯の代表放射率を決定するステップと、決定された代表放射率を用いた1次元モデルを利用して各加熱帯におけるスラブの最適炉温を算出するステップと、算出された各加熱帯におけるスラブの最適炉温に基づいて、各加熱帯の炉温を設定する。すなわち、本発明の一実施形態である加熱炉燃焼制御処理では、2次元モデルによって調整された1次元モデルを用いてスラブの最適炉温を算出するので、スラブ毎の最適炉温を短時間、且つ、高精度に算出することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
1 燃焼制御装置
3 炉温検出部
4 データベース
5 記憶部
5a 加熱炉燃焼制御プログラム
6 演算部
6a 将来炉温計算部
6b 2次元スラブ温度計算部
6c 1次元スラブ温度計算部
6d 炉温最適化部
6e 設定炉温決定部
7 加熱炉制御部

Claims (3)

  1. 鋼材の搬送方向に配列された複数の加熱帯を有し、各加熱帯に鋼材を連続的に搬送することによって鋼材を連続的に加熱する連続式加熱炉の燃焼制御方法であって、
    2次元伝熱方程式に基づく2次元モデルを利用して各加熱帯における鋼材の温度を予測するステップと、
    1次元伝熱方程式に基づく1次元モデルを利用して予測された各加熱帯における鋼材の温度が前記2次元モデルを利用して予測された各加熱帯における鋼材の温度と一致するように、前記2次元モデルを利用して予測された各加熱帯における鋼材の温度に基づいて1次元モデルにおける各帯の代表放射率を決定するステップと、
    決定された代表放射率を用いた1次元モデルを利用して各加熱帯における鋼材の最適炉温を算出するステップと、
    算出された各加熱帯における鋼材の最適炉温に基づいて、各加熱帯の炉温を設定するステップと、
    を含むことを特徴とする連続式加熱炉の燃焼制御方法。
  2. 前記炉温を設定するステップは、前記1次元伝熱方程式から求めた影響係数を利用して線形計画法によって各加熱帯の炉温を算出するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の連続式加熱炉の燃焼制御方法。
  3. 鋼材の搬送方向に配列された複数の加熱帯を有し、各加熱帯に鋼材を連続的に搬送することによって鋼材を連続的に加熱する連続式加熱炉の燃焼制御装置であって、
    2次元伝熱方程式に基づく2次元モデルを利用して各加熱帯における鋼材の温度を予測する2次元スラブ温度計算部と、
    1次元伝熱方程式に基づく1次元モデルを利用して予測された各加熱帯における鋼材の温度が前記2次元モデルを利用して予測された各加熱帯における鋼材の温度と一致するように、前記2次元スラブ温度計算部によって予測された各加熱帯における鋼材の温度に基づいて1次元モデルにおける各帯の代表放射率を決定する1次元スラブ温度計算部と、
    前記1次元スラブ温度計算部が決定した代表放射率を用いた1次元モデルを利用して各加熱帯における鋼材の最適炉温を算出する炉温最適化部と、
    前記炉温最適化部によって算出された各加熱帯における鋼材の最適炉温に基づいて、各加熱帯の炉温を設定する設定炉温決定部と、
    を備えることを特徴とする連続式加熱炉の燃焼制御装置。
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