JP6164217B2 - 熱電変換素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スピンゼーベック効果及び逆スピンホール効果に基づく熱電変換素子、及びその製造方法に関する。
近年、「スピントロニクス(spintronics)」と呼ばれる電子技術が脚光を浴びている。従来のエレクトロニクスは、電子の1つの性質である「電荷」だけを利用してきたが、スピントロニクスは、それに加えて、電子の他の性質である「スピン」をも積極的に利用する。特に、電子のスピン角運動量の流れである「スピン流(spin-current)」は重要な概念である。スピン流のエネルギー散逸は少ないため、スピン流を利用することによって高効率な情報伝達を実現できる可能性がある。従って、スピン流の生成、検出、制御は重要なテーマである。
例えば、電流が流れるとスピン流が生成される現象が知られている。これは、「スピンホール効果(spin-Hall
effect)」と呼ばれている。また、その逆の現象として、スピン流が流れると起電力が発生することも知られている。これは、「逆スピンホール効果(inverse spin-Hall effect)」と呼ばれている。逆スピンホール効果を利用することによって、スピン流を検出することができる。尚、スピンホール効果も逆スピンホール効果も、「スピン軌道相互作用(spin orbit coupling)」が大きな物質(例:Pt、Au)において有意に発現する。
また、最近の研究により、磁性体における「スピンゼーベック効果(spin-Seebeck effect)」の存在も明らかになっている。スピンゼーベック効果とは、磁性体に温度勾配が印加されると、温度勾配と平行方向にスピン流が誘起される現象である(例えば、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2を参照)。すなわち、スピンゼーベック効果により、熱がスピン流に変換される(熱スピン流変換)。特許文献1では、強磁性金属であるNiFe膜におけるスピンゼーベック効果が報告されている。非特許文献1、2では、イットリウム鉄ガーネット(YIG、YFe12)といった磁性絶縁体と金属膜との界面におけるスピンゼーベック効果が報告されている。
尚、温度勾配によって誘起されたスピン流は、上述の逆スピンホール効果を利用して電界(電流、電圧)に変換することが可能である。つまり、スピンゼーベック効果と逆スピンホール効果を併せて利用することによって、温度勾配を電気に変換する「熱電変換」が可能となる。
図1は、特許文献1に開示されている熱電変換素子の構成を示している。サファイア基板101の上に熱スピン流変換部102が形成されている。熱スピン流変換部102は、Ta膜103、PdPtMn膜104及びNiFe膜105の積層構造を有している。NiFe膜105は、面内方向の磁化を有している。更に、NiFe膜105上にはPt電極106が形成されており、そのPt電極106の両端は端子107−1、107−2にそれぞれ接続されている。
このように構成された熱電変換素子において、NiFe膜105が、スピンゼーベック効果によって温度勾配からスピン流を生成する役割を果たし、Pt電極106が、逆スピンホール効果によってスピン流から起電力を生成する役割を果たす。具体的には、NiFe膜105の面内方向に温度勾配が印加されると、スピンゼーベック効果により、その温度勾配と平行な方向にスピン流が発生する。すると、NiFe膜105からPt電極106にスピン流が流れ込む、あるいは、Pt電極106からNiFe膜105にスピン流が流れ出す。Pt電極106では、逆スピンホール効果により、スピン流方向とNiFe磁化方向とに直交する方向に起電力が生成される。その起電力は、Pt電極106の両端に設けられた端子107−1、107−2から取り出すことができる。
特開2009−130070号公報
Uchida et al., "Spin Seebeck insulator", Nature Materials, 2010, vol. 9, p.894. Uchida et al., "Observation of longitudinal spin-Seebeck effect in magnetic insulators", Applied Physics Letters, 2010, vol.97, p172505.
熱電変換素子の更なる高出力化が望まれる。
本発明の1つの観点において、熱電変換素子が提供される。その熱電変換素子は、可とう性を有する熱電変換シートを備える。熱電変換シートは、磁性体層と、磁性体層上に接触するように形成されスピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と、起電層上に接触するように形成された第1電極及び第2電極と、を備える。第1電極と第2電極は、熱電変換シートの長手方向に延在しており、且つ、長手方向に直交する第1方向において互いに離間している。
本発明の他の観点において、熱電変換素子の製造方法が提供される。その製造方法は、(A)可とう性を有する熱電変換シートを提供するステップを含む。ここで、熱電変換シートは、磁性体層と、磁性体層上に接触するように形成されスピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と、起電層上に接触するように形成された第1電極及び第2電極と、を備える。第1電極と第2電極は、熱電変換シートの長手方向に延在しており、且つ、長手方向に直交する第1方向において互いに離間している。製造方法は、更に、(B)熱電変換シートを、第1方向に平行な中心軸の周りに巻くステップを含む。
本発明によれば、熱電変換素子の更なる高出力化が実現される。
図1は、特許文献1に記載されている熱電変換素子を示す概略図である。 図2は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子を示す概略図である。 図3は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子を示す概略図である。 図4は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子の使用例を説明するための概略図である。 図5は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子の使用例を説明するための概略図である。 図6は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子の使用例を説明するための概略図である。 図7は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子の使用例を説明するための概略図である。 図8は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子の使用例を説明するための概略図である。 図9は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子の使用例を説明するための概略図である。 図10は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子の使用例を説明するための概略図である。 図11は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子の使用例を説明するための概略図である。 図12は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子の変形例を示す断面図である。 図13は、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子の他の変形例を示す平面図である。
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
1.構成
図2及び図3は、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子を概略的に示している。熱電変換素子は、熱電変換シート10を備えている。その熱電変換シート10は、可とう性(flexibility)を有している。ここで、可とう性とは、可塑性(plasticity)と弾性(elasticity)の両方の概念を含む。すなわち、熱電変換シート10は曲げることが可能である(図3参照)。
図2及び図3に示されるように、熱電変換シート10は、一方向に長い形状を有している。その熱電変換シート10の長手方向(延在方向)は、図中“S”で表される。尚、熱電変換シート10は曲げることが可能であるため、その長手方向(S方向)は、熱電変換シート10の各点でローカルに定義され得る(図3参照)。
また、熱電変換シート10は、基板20、磁性体層30、起電層40、第1電極51、及び第2電極52を備えている。磁性体層30は、基板20上に形成されている。起電層40は、磁性体層30上に接触するように形成されている。つまり、基板20、磁性体層30及び起電層40は、この順番で積層されている。この積層方向は、上記の長手方向(S方向)と直交しており、図中“T”で表される。尚、熱電変換シート10は曲げることが可能であるため、その積層方向(T方向)は、熱電変換シート10の各点でローカルに定義され得る(図3参照)。
磁性体層30は、スピンゼーベック効果を発現する材料で形成される。磁性体層30の材料は、強磁性金属であってもよいし、磁性絶縁体であってもよい。強磁性金属としては、NiFe、CoFe、CoFeBなどが挙げられる。磁性絶縁体としては、イットリウム鉄ガーネット(YIG,YFe12)、ビスマス(Bi)をドープしたYIG(Bi:YIG)、ランタン(La)を添加したYIG(LaYFe12)、イットリウムガリウム鉄ガーネット(YFe5−xGa12)などが挙げられる。尚、電子による熱伝導を抑えるという観点から言えば、磁性絶縁体を用いることが望ましい。
起電層(導電層)40は、逆スピンホール効果(スピン軌道相互作用)を発現する材料で形成される。より詳細には、起電層40の材料は、スピン軌道相互作用の大きな金属材料を含有する。例えば、スピン軌道相互作用の比較的大きなAuやPt、Pd、Ir、その他f軌道を有する金属材料、またはそれらを含有する合金材料を用いる。また、Cuなどの一般的な金属膜材料に、Au、Pt、Pd、Irなどの材料を0.5〜10%程度ドープするだけでも、同様の効果を得ることができる。あるいは、起電層40は、ITOなどの酸化物であってもよい。
これら磁性体層30と起電層40の積層により、熱電変換シート10は、スピンゼーベック効果と逆スピンホール効果を利用した熱電変換機能を有することになる。より詳細には、磁性体30は、スピンゼーベック効果によって温度勾配からスピン流を生成(駆動)する。そして、起電層40は、逆スピンホール効果によってスピン流から起電力を発生する。ここで、発生する起電力の方向は、磁性体層30の磁化方向と温度勾配方向との外積で与えられる。
第1電極51及び第2電極52は、起電層40で発生した起電力を効率的に取り出すために設けられている。より詳細には、第1電極51と第2電極52は、起電層40上に接触するように形成されている。また、第1電極51と第2電極52は共に、熱電変換シート10の長手方向(S方向)と同じ方向に延在している。更に、第1電極51と第2電極52とは、「Y方向(第1方向)」において互いに離間している。ここで、Y方向とは、熱電変換シート10の長手方向(S方向)と積層方向(T方向)の両方に直交する方向である。
また、第1電極51及び第2電極52の各々のシート抵抗は、起電層40のシート抵抗よりも低いことが好適である。つまり、第1電極51及び第2電極52は、低抵抗領域を形成している。尚、第1電極51及び第2電極52は、起電層40の材料と異なる材料で形成されてもよいし、同じ材料で形成されてもよい。
素子構成の一例は、次の通りである。熱電変換シート10の長手方向の長さは300mmであり、そのY方向の幅は30mmである。起電層40はPt膜であり、その厚さは10nmであり、そのシート抵抗は約50Ω□である。この場合、起電層40のY方向の抵抗値は約5Ωである。一方、第1電極51及び第2電極52の各々はCu膜であり、その厚さは1μmであり、そのY方向の幅は3mmである。この場合、第1電極51及び第2電極52の各々のS方向の抵抗値は約1Ωである。このような第1電極51及び第2電極52を用いることによって、起電層40で発生した起電力を効率的に取り出すことが可能となる。
2.使用方法
上述の通り、本実施の形態に係る熱電変換シート10は、可とう性を有しており、曲げることが可能である。実際に、熱電変換シート10は、曲げられた状態で使用されることが好適である。より詳細には、図3に示されるように、熱電変換シート10は、Y方向に平行な中心軸Cの周りに巻かれた状態で使用される。尚、図3の例では、第1電極51及び第2電極52が形成されている面が外側を向いているが、その面が内側を向いてもよい。
更に、熱電変換シート10は、起電層40においてY方向(図3の例では、−Y方向)に起電力が発生するように構成される。ここで、起電層40で発生する起電力の方向は、上述の通り、磁性体層30の磁化方向と温度勾配方向の両方に依存する。温度勾配方向は、使用形態(熱源の位置等)に依存するため、その使用形態に応じて磁性体層30の磁化方向を適切に設定すればよい(後述される)。いずれにせよ、起電層40においてY方向に起電力が発生するように、熱電変換シート10を構成することは可能である。
起電層40においてY方向に発生した起電力は、Y方向に互いに離間している第1電極51及び第2電極52を通して取り出すことができる。このとき、第1電極51はほぼ等電位となっている。また、第2電極52もほぼ等電位となっている。図3に示されるように、第1電極51及び第2電極52のそれぞれ適当な位置に、第1外部端子61及び第2外部端子62が取り付けられてもよい。それら第1外部端子61及び第2外部端子62を用いることによって、電力を外に取り出すことができる。
3.効果
本実施の形態によれば、可とう性を有する熱電変換シート10が利用される。よって、高出力化のために熱電変換シート10の面積を増やしたとしても、それを折り畳むことによって、熱電変換素子全体としての面積の増加を抑えることができる。逆に言えば、素子面積を増大させることなく、発電量すなわち出力電力を増加させることが可能となる。
更に、本実施の形態によれば、起電層40においてY方向に発生した起電力は、Y方向に互いに離間している第1電極51及び第2電極52を通して取り出される。それら第1電極51及び第2電極52は、Y方向と直交するS方向に延在している。これにより、第1電極51と第2電極52との間の電流経路が最短となり、起電層40における抵抗ロス(オーミック損失)が大幅に削減される。このことも、発電量すなわち出力電力の増加に寄与する。
4.様々な例
4−1.第1の例
本実施の形態に係る熱電変換シート10の使用方法(熱電変換素子の製造方法)の具体例を説明する。まず、図2で示された熱電変換シート10が提供される。次に、図4に示されるように、その熱電変換シート10が支持体70の周りに巻き付けられる。より詳細には、支持体70の軸方向(中心軸Cの方向)はY方向に平行であり、熱電変換シート10は、その中心軸Cを中心として巻回形状を有するように巻き付けられる。尚、図4で示される熱電変換シート10のうち、側面の屈曲した部分を除く部分は、以下「発電部」と参照される。
巻き付けの後、図5に示されるように、磁性体層30に対する磁化方向初期化処理が実施される。具体的には、素子全体に対して、−X方向の外部磁界HEが印加される。その結果、発電部における磁化方向は、熱電変換シート10の長手方向(S方向)と平行になる。
図6は、熱源が熱電変換素子からみて−Z方向に位置している場合を示している。この場合、温度勾配方向は−Z方向である。起電層40における起電力の方向は、発電部の磁化方向(S方向)と温度勾配方向(−Z方向)との外積で与えられ、本例の場合、−Y方向である。その起電力は、Y方向に互いに離間している第1電極51及び第2電極52を通して、効率的に取り出される。
尚、磁性体層30(発電部)の磁化方向は、本例ではS方向であるが、それに限られない。第1電極51と第2電極52の間に電位差が発生すればよく、そのためには、磁性体層30の磁化は、S方向の“成分”を含んでいればよい。
4−2.第2の例
本実施の形態に係る熱電変換シート10の使用方法(熱電変換素子の製造方法)の他の具体例を説明する。まず、図2で示された熱電変換シート10が提供される。次に、図7に示されるように、素子全体に対して、−X方向の外部磁界HEが印加され、磁化方向初期化処理が行われる。その結果、磁性体層30の磁化方向は、熱電変換シート10の長手方向(S方向)と平行になる。
磁化方向初期化処理の後、図8に示されるように、熱電変換シート10が熱源80の周りに巻き付けられる。より詳細には、円筒状の熱源80(例:排熱管)の軸方向(中心軸Cの方向)はY方向に平行であり、熱電変換シート10は、その中心軸Cを中心として巻回形状を有するように巻き付けられる。
本例の場合、図9に示されるように、温度勾配方向は、熱電変換シート10の積層方向(T方向)である。起電層40における起電力の方向は、磁性体層30の磁化方向(S方向)と温度勾配方向(T方向)との外積で与えられ、本例の場合、−Y方向である。その起電力は、Y方向に互いに離間している第1電極51及び第2電極52を通して、効率的に取り出される。
尚、磁性体層30の磁化方向は、本例ではS方向であるが、それに限られない。第1電極51と第2電極52の間に電位差が発生すればよく、そのためには、磁性体層30の磁化は、S方向の“成分”を含んでいればよい。
上記のように熱電変換シート10を熱源80に巻き付ける前に磁化方向初期化処理を行う場合は、一様な外部磁界HEを印加すればよい。そのため、簡易な製造装置(磁化方向初期化処理のための装置)を利用することができる。但し、磁化方向初期化処理の方法はこれに限られない。図10及び図11に示されるような方法での磁化方向初期化処理も可能である。
具体的には、図10に示されるように、熱源80の軸に沿って延在する磁化制御用配線81が設けられる。そして、図11に示されるように、その熱源80の周りに熱電変換シート10が巻き付けられる。この巻き付けの後、磁化方向初期化処理が実施される。詳細には、磁化制御用配線81に初期化電流Imが流される。その結果、磁化制御用配線81の周囲にS方向の磁界が発生し、それにより、磁性体層30の磁化方向がS方向に初期化される。この方法の場合、大面積の熱電変換シート10の巻き付け後に磁化方向初期化処理が行われるため、製造装置(磁化方向初期化処理のための装置)をコンパクトにできるという利点がある。
4−3.第3の例
熱電変換シート10を巻いたときに第1電極51と第2電極52との間に空間が残ったままだと、その空間において熱伝導が鈍り、発電効率が悪くなる。そのため、熱電変換シート10は、第1電極51と第2電極52との間に空間が残らないように形成されてもよい。
図12は、一例を示しており、より詳細には、熱電変換シート10のYT断面を示している。図12に示されるように、起電層40上に絶縁体90が形成されていてもよい。より詳細には、絶縁体90は、起電層40の露出面を覆い、且つ、第1電極51と第2電極52との間の空間を埋めるように形成されている。絶縁体90は、熱伝導度が高い(熱抵抗が低い)材料、例えばポリイミドで形成される。
このような絶縁体90により、熱電変換シート10を巻いたときの空間の発生が防止され、発電効率が向上する。
4−4.第4の例
起電層40の形成パターンは、上述の例に限られない。第1電極51と第2電極52との間に電位差が発生すれば、起電層40の形成パターンはどのようなものでも構わない。
図13は、一例を示しており、起電層40のSY平面パターンを示している。本例において、起電層40は、第1電極51と第2電極52との間を電気的につないでいるが、その形成パターンは“蛇行形状(meandering shape)”である。その起電層40において、−Y方向の起電力が発生する。但し、蛇行形状のため、起電力の打ち消し合いが発生する。
そこで、起電力の打ち消し合いがなるべく抑えられるように、起電層40中の発電効率分布が調整されると好適である。具体的には、起電層40は、発電効率の高い高効率起電部41と発電効率の低い低効率起電部42とを含むように形成される。高効率起電部41と低効率起電部42とは、例えば、発電効率の異なる材料で形成される。
高効率起電部41及び低効率起電部42では、それぞれ、−Y方向の起電力E1、E2が発生する。ここで、起電力E1は、起電力E2よりも大きい(E1>E2)。従って、高効率起電部41と低効率起電部42を交互に配置することによって、蛇行形状の起電層40でも、起電力の打ち消し合いを抑制することができる。図13の例では、第1電極51から第2電極52に向けて、高効率起電部41A、低効率起電部42A、高効率起電部41B、低効率起電部42B、高効率起電部41Cが交互に配置される。これにより、蛇行形状の起電層40においても、全体として十分な起電力が得られる。
尚、図13で示されるようなパターンが、熱電変換シート10上に繰り返し形成されてもよい。
起電層40の形成パターンは、蛇行形状に限られず、所望の特性に応じて適宜設計されるとよい。起電層40の形成パターンを適宜調整することによって、第1電極51と第2電極52との間の幅(熱電変換シート10のY方向の幅)を変えることなく、第1電極51と第2電極52との間の内部抵抗を制御可能である。それにより、所望の特性を得ることが可能となる。
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
可とう性を有する熱電変換シートを備え、
前記熱電変換シートは、
磁性体層と、
前記磁性体層上に接触するように形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と、
前記起電層上に接触するように形成された第1電極及び第2電極と
を備え、
前記第1電極と前記第2電極は、前記熱電変換シートの長手方向に延在しており、且つ、前記長手方向に直交する第1方向において互いに離間している
熱電変換素子。
(付記2)
付記1に記載の熱電変換素子であって、
前記熱電変換シートは、前記起電層において前記第1方向に起電力が発生するように構成されている
熱電変換素子。
(付記3)
付記2に記載の熱電変換素子であって、
前記磁性体層の磁化は、前記長手方向の成分を含んでいる
熱電変換素子。
(付記4)
付記1乃至3のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
前記熱電変換シートは、
前記起電層を覆い、前記第1電極と前記第2電極との間の空間を埋めるように形成された絶縁体
を更に備える
熱電変換素子。
(付記5)
付記1乃至4のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
前記熱電変換シートは、前記第1方向に平行な中心軸の周りに巻かれた形状を有する
熱電変換素子。
(付記6)
付記5に記載の熱電変換素子であって、
前記熱電変換シートは、軸方向が前記第1方向である熱源の周りに巻き付けられている
熱電変換素子。
(付記7)
(A)可とう性を有する熱電変換シートを提供するステップと、
ここで、前記熱電変換シートは、
磁性体層と、
前記磁性体層上に接触するように形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と、
前記起電層上に接触するように形成された第1電極及び第2電極と
を備え、
前記第1電極と前記第2電極は、前記熱電変換シートの長手方向に延在しており、且つ、前記長手方向に直交する第1方向において互いに離間しており、
(B)前記熱電変換シートを、前記第1方向に平行な中心軸の周りに巻くステップと
を含む
熱電変換素子の製造方法。
(付記8)
付記7に記載の熱電変換素子の製造方法であって、
前記熱電変換シートは、前記起電層において前記第1方向に起電力が発生するように構成されている
熱電変換素子の製造方法。
(付記9)
付記7又は8に記載の熱電変換素子の製造方法であって、
前記熱電変換シートを巻くステップは、
前記熱電変換シートを、軸方向が前記第1方向である支持体の周りに巻き付けるステップと、
前記熱電変換シートを巻き付けるステップの後、前記磁性体層の磁化が前記長手方向の成分を含むように全体的に磁化を行うステップと
を含む
熱電変換素子の製造方法。
(付記10)
付記7又は8に記載の熱電変換素子の製造方法であって、
前記熱電変換シートを巻くステップは、
前記磁性体層の磁化が前記長手方向の成分を含むように全体的に磁化を行うステップと、
前記磁化を行うステップの後、前記熱電変換シートを、軸方向が前記第1方向である熱源の周りに巻き付けるステップと
を含む
熱電変換素子の製造方法。
本出願は、2012年7月19日に出願された日本国特許出願2012−160242を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。

Claims (10)

  1. 可とう性を有する熱電変換シートを備え、
    前記熱電変換シートは、
    スピンゼーベック効果を発現する材料で形成された磁性体層と、
    前記磁性体層上に接触するように形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と、
    前記起電層上に接触するように形成された第1電極及び第2電極と
    を備え、
    前記第1電極と前記第2電極は、前記熱電変換シートの長手方向に延在しており、且つ、前記長手方向に直交する第1方向において互いに離間している
    熱電変換素子。
  2. 請求項1に記載の熱電変換素子であって、
    前記熱電変換シートは、前記起電層において前記第1方向に起電力が発生するように構成されている
    熱電変換素子。
  3. 請求項2に記載の熱電変換素子であって、
    前記磁性体層の磁化は、前記長手方向の成分を含んでいる
    熱電変換素子。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
    前記熱電変換シートは、
    前記起電層を覆い、前記第1電極と前記第2電極との間の空間を埋めるように形成された絶縁体
    を更に備える
    熱電変換素子。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
    前記熱電変換シートは、前記第1方向に平行な中心軸の周りに巻かれた形状を有する
    熱電変換素子。
  6. 請求項5に記載の熱電変換素子であって、
    前記熱電変換シートは、軸方向が前記第1方向である熱源の周りに巻き付けられている
    熱電変換素子。
  7. (A)可とう性を有する熱電変換シートを提供するステップと、
    ここで、前記熱電変換シートは、
    スピンゼーベック効果を発現する材料で形成された磁性体層と、
    前記磁性体層上に接触するように形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された起電層と、
    前記起電層上に接触するように形成された第1電極及び第2電極と
    を備え、
    前記第1電極と前記第2電極は、前記熱電変換シートの長手方向に延在しており、且つ、前記長手方向に直交する第1方向において互いに離間しており、
    (B)前記熱電変換シートを、前記第1方向に平行な中心軸の周りに巻くステップと
    を含む
    熱電変換素子の製造方法。
  8. 請求項7に記載の熱電変換素子の製造方法であって、
    前記熱電変換シートは、前記起電層において前記第1方向に起電力が発生するように構成されている
    熱電変換素子の製造方法。
  9. 請求項7又は8に記載の熱電変換素子の製造方法であって、
    前記熱電変換シートを巻くステップは、
    前記熱電変換シートを、軸方向が前記第1方向である支持体の周りに巻き付けるステップと、
    前記熱電変換シートを巻き付けるステップの後、前記磁性体層の磁化が前記長手方向の成分を含むように全体的に磁化を行うステップと
    を含む
    熱電変換素子の製造方法。
  10. 請求項7又は8に記載の熱電変換素子の製造方法であって、
    前記熱電変換シートを巻くステップは、
    前記磁性体層の磁化が前記長手方向の成分を含むように全体的に磁化を行うステップと、
    前記磁化を行うステップの後、前記熱電変換シートを、軸方向が前記第1方向である熱源の周りに巻き付けるステップと
    を含む
    熱電変換素子の製造方法。
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