以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
まず、一実施例に係る道路舗装機械の全体構成について、図面を参照して説明する。図1は、一実施例に係る道路舗装機械に含まれるアスファルトフィニッシャ1の平面図である。また、図2は、アスファルトフィニッシャ1の側面図である。
図1、2に示すように、アスファルトフィニッシャ1は、前輪2aと後輪2bに支持された車体3と、車体3のパワーユニット4内に搭載されているエンジン5の動力で駆動する作業機6及び発電機26と、アスファルト合材を収容するためのホッパ装置7を備える。オペレータは、操縦装置14を有する運転席15で、アスファルトフィニッシャ1を操縦する。作業機6は、スクリュ8及びコンベア9を含む。スクリュ8は、車体3の幅方向(図1で上下方向)に向けて支持されている。そして、コンベア9は、ホッパ装置7の底部とスクリュ8との間において、車体3の前後方向(図1、2で左右方向)に沿って設けられている。作業機6は、アスファルト合材をスクリュ8及びコンベア9によって搬送する。
また、アスファルトフィニッシャ1は、レベリングアーム11と、スクリード装置12を含む。レベリングアーム11は、前端部が作業機6の前後方向における中央の両側部に回動自在に支持され、後端部がシリンダ10で車体3に上下動可能に支持されている。スクリード装置12は、レベリングアーム11の後端に支持され、シリンダ(図示せず)で上下に回動可能であり、かつ、作業機6の幅方向に伸縮自在に設けられている。なお、このアスファルトフィニッシャ1の構成は、従来のアスファルトフィニッシャの構成と基本的に同じである。
次に、アスファルトフィニッシャ1に搭載される制御系統について説明する。図3は、アスファルトフィニッシャ1における作業機6と発電機26を駆動する制御系統の機能ブロック図である。
図3に示すように、制御系統は、アスファルトフィニッシャ1の全体を決められた手順に従って制御するためのコントローラ20を備えている。コントローラ20は、主としてマイクロコンピュータからなる。図3中、太い実線は作動油の吐出ラインを示し、細い破線は、コントローラ20からの電気信号ラインを示し、太い破線は電気ヒータ28を加熱するための加熱動力ラインを示す。
エンジンの出力軸(図示せず)には、油圧ポンプ21が接続されている。油圧ポンプ21の吐出ライン22は、電磁比例式の流量制御弁である電磁比例弁23を介して、吐出ライン22a、22b、22cに分岐されている。吐出ライン22aは、発電機26を駆動する発電機用油圧モータ27に作動油を供給するためのラインである。吐出ライン22bは、コンベア9を駆動する油圧モータ25に作動油を供給するためのラインである。吐出ライン22cは、スクリュ8を駆動する油圧モータ24に作動油を供給するためのラインである。
また、発電機26には、加熱制御盤32を介して、スクリード装置12のスクリードプレート(図示せず)を加熱するための電気ヒータ28が接続されている。発電機26で生成された電力が電気ヒータ28に供給され、電気ヒータ28でスクリードプレートが加熱できるようになっている。加熱の出力は、加熱制御盤32に対しコントローラ20が指令信号を送信することにより制御される。
電磁比例弁23は、コントローラ20からの指令信号により制御される。なお、図示しないが、電磁比例弁23は、具体的には、各油圧モータ24、25、27に対応する個別の電磁比例弁を含む。そして、コントローラ20の指令信号が出力されると、コントローラ20の指令信号に対応して各電磁比例弁の弁開度が各々調整され、油圧ポンプ21から供給された作動油が、各電磁比例弁を介して、各油圧モータ24、25、27側にそれぞれ流される。これによって、各油圧モータ24、25、27の駆動が行われる。
また、発電機用油圧モータ27は、Hi設定とLo設定の2段階に切り替え可能な2速油圧モータである。Hi設定とは、単位作動油量当たりの発電機用油圧モータ27の回転数が高い設定のことをいい、Lo設定とは、単位作動油量当たりの発電機用油圧モータ27の回転数が低い設定のことをいう。
本実施例では、発電機用油圧モータ27は、斜板式の2速油圧モータであり、Lo設定のときに斜板傾転角を大きくしてモータ1回転当たりに使用される作動油量を増大させる。反対に、発電機用油圧モータ27は、Hi設定のときに斜板傾転角を小さくし、モータ1回転当たりに使用される作動油量を減少させる。そのため、Hi設定の状態にある発電機用油圧モータ27は、Lo設定のときよりも少ない作動油を用いてLo設定のときと同じ回転数を実現できる。なお、本実施例では、発電機26の回転数は常に一定となるように制御される。そのため、発電機用油圧モータ27は、Hi設定のときの回転数とLo設定のときの回転数が同じになるように構成される。一方で、Hi設定の状態にある発電機用油圧モータ27の出力トルクは、Lo設定のときよりも低くなる。そのため、発電機用油圧モータ27がHi設定のときの発電機26の発電トルクは、発電機用油圧モータ27がLo設定のときに比べて低く設定される。その結果、Hi設定のときの発電量は、Lo設定のときの発電量よりも低くなる。
コントローラ20には、運転席に配置された運転席パネル29のコンベアダイヤル29aとスクリュダイヤル29bとが接続されている。
コンベアダイヤル29aは、コンベア9の動作を制御するためのダイヤルである。具体的には、オペレータがコンベヤダイヤル29aを一方向へ回転させるとコンベア9の駆動速度が増大し、コンベアダイヤル29aを反対方向へ回転させるとコンベア9の駆動速度が減少し、コンベアダイヤル29aを「切」位置まで回転させるとコンベア9の駆動が停止する。本実施例では、電磁比例弁23は、コンベアダイヤル29aのダイヤル操作に応じて、コンベア9を駆動する油圧モータ25に対して供給される供給作動油量を調整する。具体的には、電磁比例弁23は、コントローラ20からの指令信号に応じて弁開度を制御し、油圧モータ25に対する供給作動油量を調整してコンベア9の駆動速度を調整する。スクリュ8の回転を制御するためのスクリュダイヤル29bについても同様である。
さらに、アスファルトフィニッシャ1は、運転席に配置された加熱操作パネル30のモード切替ダイヤル30aを備える。
モード切替ダイヤル30aは、駆動源の出力配分の許容値を切り替える手動切替部の一例である。本実施例では、モード切替ダイヤル30aは、オペレータの手動操作に応じて、アスファルトフィニッシャ1の作業モードを切り替える。作業モードは、例えば、施工準備モードと、施工優先モードと、加熱優先モードとを含む。オペレータは、モード切替ダイヤル30aを切り替えることによって、施工準備モードと、施工優先モードと、加熱優先モードの各モードを任意に選択できる。
なお、施工準備モードは、施工準備段階に適した出力配分を実現するモードである。また、施工優先モードは、施工中の作業機6の作業量を優先するモードである。また、加熱優先モードは、施工中の電気ヒータ28の加熱を優先するモードである。
またモード切替ダイヤル30aは、オペレータの操作によって切り替えられると、切替位置に関する信号をコントローラ20に送信する。コントローラ20は、モード切替ダイヤル30aからの信号を受けて、加熱制御盤32に対し電気ヒータ28の加熱出力に対応する信号を送信する。これによって、電気ヒータ28に所望の電力が供給され加熱が行われる。
図4は、コントローラ20がモード切替ダイヤル30aの出力に応じてアスファルトフィニッシャ1の作業モードを切り替える作業モード切り替え処理の流れを示すフローチャートである。
最初に、コントローラ20は、モード切替ダイヤル30aから切替位置に関する信号を受信し、アスファルトフィニッシャ1が何れの作業モードにあるかを判定する(ステップS1)。
そして、施工準備モードにあると判定した場合(ステップS1の施工準備モード)、コントローラ20は、施工準備モードにおける駆動源の出力配分を決定する処理(以下、「施工準備モード出力配分決定処理」とする。)を実行する(ステップS2)。
同様に、コントローラ20は、施工優先モードにあると判定した場合(ステップS1の施工優先モード)、施工優先モードにおける駆動源の出力配分を決定する処理(以下、「施工優先モード出力配分決定処理」とする。)を実行し(ステップS3)、加熱優先モードにあると判定した場合(ステップS1の加熱優先モード)、加熱優先モードにおける駆動源の出力配分を決定する処理(以下、「加熱優先モード出力配分決定処理」とする。)を実行する(ステップS4)。
以下、各モードについて、図面を参照しながら説明する。図5乃至7は、施工準備モード、施工優先モード、加熱優先モードの各モードにおける発電機26及び作業機6を駆動する駆動源の出力配分を説明する図である。
図5は、施工準備モードにおける「電気ヒータ28の加熱出力(%)」、「作業機6の設定出力(%)」、及び「発電機用油圧モータ27の駆動状態」の関係を示す。
具体的には、図5は、施工準備モードでの「電気ヒータ28の加熱出力(%)」が100%であることを示す。「電気ヒータ28の加熱出力(%)」は、電気ヒータ28の最大出力に対する許容出力の割合である。本実施例では、電気ヒータ28の最大出力は、例えば、電気ヒータ28を最大出力状態で維持するために必要な電力量で表される。したがって、「電気ヒータ28の加熱出力(%)」が50%であることは、電気ヒータ28に供給可能な電力量の、電気ヒータ28を最大出力状態で維持するときに必要な電力量に対する割合が50%に制限されることを表す。また、「電気ヒータ28の加熱出力(%)」が100%であることは、電気ヒータ28の加熱出力が制限されないことを意味する。
また、図5は、施工準備モードでの「作業機6の設定出力(%)」が30%であることを示す。「作業機6の設定出力(%)」は、作業機6の最大出力に対する許容出力の割合である。本実施例では、作業機6の最大出力は、スクリュ8及びコンベア9のそれぞれの最大出力の合計に相当する。また、スクリュ8の最大出力は、例えば、スクリュ8を最大速度で回転させるために必要な作動油量で表される。同様に、コンベア9の最大出力は、例えば、コンベア9を最大速度で駆動させるために必要な作動油量で表される。したがって、「作業機6の設定出力(%)」が30%であることは、作業機6に供給可能な作動油量の、スクリュ8及びコンベア9の双方を最大速度で動作させるときに必要な作動油量に対する割合が30%に制限されることを表す。その結果、スクリュ8及びコンベア9のそれぞれの現在の出力の合計である作業機6の現在の出力は、作業機6の最大出力の30%に制限される。
また、図5は、施工準備モードでの「発電機用油圧モータ27の駆動状態」が「Lo設定」であることを示す。これは、発電機26の発電量が最大となるように、発電機用油圧モータ27が最大限の作動油を消費することを意味する。すなわち、施工準備モードでは、発電機用油圧モータ27の出力トルクを大きくするために油圧ポンプ21の供給作動油量のうちの大半の作動油量が発電機用油圧モータ27に供給される。
次に、図6を参照して、施工優先モードについて説明する。図6は、施工優先モードにおける「電気ヒータ28の加熱出力(%)」、「作業機6の設定出力(%)」、及び「発電機用油圧モータ27の駆動状態」の関係を示す。図6に示すように、「電気ヒータ28の加熱出力(%)」が100%の場合、上述の施工準備モードと異なり、「作業機6の設定出力(%)」は5%に設定される。
この場合、施工を行うに当たって、オペレータがダイヤル29a、29bを操作すると、スクリュ8及びコンベア9の駆動速度が上昇していく。スクリュ8及びコンベア9の駆動速度が上昇して作業機6の出力が5%以上になると、油圧モータ24、25に供給される作動油量が増加し、発電機用油圧モータ27に供給可能な作動油量が減少する。そのため、Lo設定の発電機用油圧モータ27の回転速度を維持することができなくなる。そこで、コントローラ20は、より少ない作動油で発電機用油圧モータ27を回転させるため、発電機用油圧モータ27(2速モータ)の設定をLo設定からHi設定に切り替える。発電機用油圧モータ27がHi設定に切り替えられると、発電機26は、発電トルクを低下させて発電量を減少させる。それに応じて、コントローラ20は、電気ヒータ28の加熱出力を50%に制限する。
また、作業機6の出力が80%以上になると、油圧モータ24、25に供給される作動油量がさらに増加し、発電機用油圧モータ27に供給可能な作動油量がさらに減少する。そのため、Hi設定の発電機用油圧モータ27の回転速度を維持することができなくなる。そこで、コントローラ20は、発電機用油圧モータ27の回転を停止させて発電を停止させる。そして、コントローラ20は、電気ヒータ28の加熱出力を0%に設定し、電気ヒータ28の加熱を停止させる。
次に、図7を参照して、加熱優先モードについて説明する。図7は、加熱優先モードにおける「電気ヒータ28の加熱出力(%)」、「作業機6の設定出力(%)」、及び「発電機用油圧モータ27の駆動状態」の関係を示す。加熱優先モードでは、図7に示すように、「電気ヒータ28の加熱出力(%)」が100%の場合、上述の施工優先モードと同様に、「作業機6の設定出力(%)」は5%に設定される。
この場合、施工を行うに当たって、オペレータがダイヤル29a、29bを操作すると、スクリュ8及びコンベア9の駆動速度が上昇していく。スクリュ8及びコンベア9の駆動速度が上昇して作業機6の出力が5%以上になると、コントローラ20は、施工優先モードの場合と同様に、発電機用油圧モータ27の設定をLo設定からHi設定に切り替える。発電機用油圧モータ27がHi設定に切り替えられると、発電機26は、発電トルクを低下させて発電量を減少させる。それに応じて、コントローラ20は、電気ヒータ28の加熱出力を50%に制限する。
なお、加熱優先モードでは、コントローラ20は、コンベアダイヤル29a、スクリュダイヤル29bが幾ら操作されても、作業機6の出力が80%以上とならないように、作業機6に対する供給作動油量を制限する。発電機26による発電を停止させないようにするためである。
また、仮に作業機6の出力が80%以上になることを許容すると、発電機用油圧モータ27に供給可能な作動油量が減少してHi設定の発電機用油圧モータ27の回転速度を維持できなくなる。そのため、コントローラ20は、発電機用油圧モータ27の回転を停止させて発電機26による発電を停止させる。そして、コントローラ20は、電気ヒータ28の加熱出力を0%に設定し、電気ヒータ28の加熱を停止させる。コントローラ20は、加熱優先モードでは、このような状況が発生するのを防止するため、作業機6の出力が80%以上とならないように、作業機6に対する供給作動油量を制限する。
次に、フローチャートを参照しながら、各モードにおける駆動源の出力配分の切り替えについて説明する。
図8は、施工準備モード出力配分決定処理を説明するフローチャートである。
オペレータによって、モード切替ダイヤル30aが施工準備モードに切り替えられた場合、コントローラ20は、施工準備モード出力配分決定処理を実行する。
最初に、コントローラ20は、電気ヒータ28の加熱出力を100%に設定し(ステップS11)、不揮発性記憶媒体に予め記憶された作業機6の設定出力(30%)を読み込む(ステップS12)。
また、コントローラ20は、コンベアダイヤル29a、スクリュダイヤル29bからの信号を受け、それらの信号に対応する作業機6の所要出力を導き出す(ステップS13)。所要出力は、コンベアダイヤル29a、スクリュダイヤル29bによって定められたコンベア9、スクリュ8の動きを実現するために必要な出力(供給作動油量)を意味する。そして、コントローラ20は、導き出した所要出力と設定出力(30%)とを比較する(ステップS14)。
所要出力が設定出力(30%)以上の場合(ステップS14のYES)、コントローラ20は、所要出力として設定出力(30%)を採用し(ステップS15)、所要出力を設定出力(30%)に制限する。
一方、所要出力が設定出力(30%)未満の場合(ステップS14のNO)、コントローラ20は、所要出力を設定出力(30%)に制限することなくそのまま採用し(ステップS16)、その所要出力が実現されるよう、油圧モータ24、25に作動油が供給されるようにする。
この構成により、コントローラ20は、ダイヤル29a、29bによって作業機6の出力がどのように調整されたとしても、電気ヒータ28の加熱出力を常に100%に維持することができる。また、コントローラ20は、オペレータが作業機6の出力を増加させることで電気ヒータ28の加熱出力を意図せず低下させてしまい、スクリードプレートの加熱に要する時間が知らないうちに増大してしまうといった状況が発生するのを防止できる。
また、オペレータは、設定出力(30%)以下の範囲内で、スクリュ8及びコンベア9の駆動速度を調整することができる。なお、コントローラ20は、加熱操作パネル30のモニタ(図示せず)に「施工準備中です。コンベア・スクリュの出力は最大30%に制限されます。」といったメッセージを表示し、その旨をオペレータに通知してもよい。
図9は、施工優先モード出力配分決定処理を説明するフローチャートである。
オペレータによって、モード切替ダイヤル30が施工優先モードに切り替えられた場合、コントローラ20は、施工優先モード出力配分決定処理を実行する。
最初に、コントローラ20は、作業機6の第1設定出力(5%)及び第2設定出力(80%)を読み込む(ステップS21)。また、コントローラ20は、作業機6の所要出力を導き出す(ステップS22)。そして、コントローラ20は、導き出した所要出力と第1設定出力(5%)とを比較する(ステップS23)。
所要出力が第1設定出力(5%)未満である場合(ステップS23のYES)、コントローラ20は、電気ヒータ28の加熱出力を100%に設定する(ステップS24)。そして、コントローラ20は、所要出力をそのまま採用し(ステップS25)、その所要出力が実現されるよう、油圧モータ24、25に作動油が供給されるようにする。
また、所要出力が第1設定出力(5%)以上である場合(ステップS23のNO)、コントローラ20は、導き出した所要出力と第2設定出力(80%)とを比較する(ステップS26)。
所要出力が第2設定出力(80%)未満である場合(ステップS26のYES)、コントローラ20は、電気ヒータ28の加熱出力を50%に設定する(ステップS27)。作業機6に供給される作動油量を増大させるために発電機用油圧モータ27に供給可能な作動油量を減少させるので、発電機26の発電量を低下させなければならないためである。そして、コントローラ20は、発電機用油圧モータ27の設定をHi設定に切り替え、且つ、発電機26の発電量を低下させる。その結果、コントローラ20は、スクリードプレートの加熱を弱めはするものの、所要出力が第1設定出力(5%)以上であっても、所要出力をそのまま採用することができる(ステップS25)。そして、コントローラ20は、その所要出力が実現されるよう、油圧モータ24、25に作動油が供給されるようにする。
また、所要出力が第2設定出力(80%)以上である場合(ステップS26のNO)、コントローラ20は、電気ヒータ28の加熱出力を0%に設定する(ステップS28)。作業機6に供給される作動油量をさらに増大させるために発電機用油圧モータ27に供給される作動油量を消失させるので、発電機26の発電を停止させなければならないためである。そして、コントローラ20は、Hi設定の発電機用油圧モータ27を停止させ、且つ、発電機26による発電を停止させる。その結果、コントローラ20は、スクリードプレートの加熱を停止させはするものの、所要出力が第2設定出力(80%)以上であっても、所要出力をそのまま採用することができる(ステップS25)。そして、コントローラ20は、その所要出力が実現されるよう、油圧モータ24、25に作動油が供給されるようにする。
この構成により、コントローラ20は、ダイヤル29a、29bによって作業機6の出力がどのように調整されたとしても、要求通りの出力で作業機6を駆動させることができる。
そして、オペレータは、何らの制限も受けることなく、0〜100%の出力範囲内でスクリュ8及びコンベア9の駆動速度を調整することができる。また、コントローラ20は、加熱操作パネル30のモニタ(図示せず)に「施工優先中です。コンベア・スクリュの出力は制限されません。」といったメッセージを表示し、その旨をオペレータに通知してもよい。
図10は、加熱優先モード出力配分決定処理を説明するフローチャートである。
オペレータによって、モード切替ダイヤル30が加熱優先モードに切り替えられた場合、コントローラ20は、加熱優先モード出力配分決定処理を実行する。
最初に、コントローラ20は、作業機6の第1設定出力(5%)及び第2設定出力(80%)を読み込む(ステップS31)。また、コントローラ20は、作業機6の所要出力を導き出す(ステップS32)。そして、コントローラ20は、導き出した所要出力と第1設定出力(5%)とを比較する(ステップS33)。
所要出力が第1設定出力(5%)未満である場合(ステップS33のYES)、コントローラ20は、電気ヒータ28の加熱出力を100%に設定する(ステップS34)。そして、コントローラ20は、所要出力をそのまま採用し(ステップS35)、その所要出力が実現されるよう、油圧モータ24、25に作動油が供給されるようにする。
また、所要出力が第1設定出力(5%)以上である場合(ステップS33のNO)、コントローラ20は、電気ヒータ28の加熱出力を50%に設定する(ステップS36)。作業機6に供給される作動油量を増大させるために発電機用油圧モータ27に供給される作動油量を減少させるので、発電機26の発電量を低下させなければならないためである。そして、コントローラ20は、発電機用油圧モータ27の設定をHi設定に切り替え、且つ、発電機26の発電量を低下させる。
その上で、コントローラ20は、導き出した所要出力と第2設定出力(80%)とを比較する(ステップS37)。
そして、所要出力が第2設定出力(80%)未満である場合(ステップS37のYES)、コントローラ20は、所要出力をそのまま採用し(ステップS35)、その所要出力が実現されるよう、油圧モータ24、25に作動油が供給されるようにする。その結果、コントローラ20は、スクリードプレートの加熱を弱めはするものの、所要出力が第1設定出力(5%)以上であっても、所要出力をそのまま採用することができる。
一方、所要出力が第2設定出力(80%)以上である場合(ステップS37のNO)、コントローラ20は、所要出力として第2設定出力(80%)を採用し(ステップS38)、所要出力を第2設定出力(80%)に制限する。Hi設定の発電機用油圧モータ27に供給される作動油量を維持するためである。具体的には、作業機6に供給される作動油量をさらに増大させると、Hi設定の発電機用油圧モータ27に供給される作動油量を維持できないためである。
この構成により、コントローラ20は、ダイヤル29a、29bによって作業機6の出力がどのように調整されたとしても、電気ヒータ28の加熱出力を常に50%以上に維持することができる。また、コントローラ20は、オペレータが作業機6の出力を第2設定出力(80%)以上に増加させることで電気ヒータ28の加熱出力を意図せず停止させてしまうといった状況が発生するのを防止できる。
そして、オペレータは、第2設定出力(80%)以下の範囲内で、コンベア9及びスクリュ8の駆動速度を調整することができる。
また、コントローラ20は、加熱操作パネル30のモニタ(図示せず)に「加熱優先中です。コンベア・スクリュの出力は最大80%に制限されます。」といったメッセージを表示し、その旨をオペレータに通知してもよい。
次に、図11を参照して、加熱操作パネル30の構成について説明する。図11は、加熱操作パネル30の概略図である。
図11に示すように、加熱操作パネル30には、電気ヒータ28の加熱状況を知らせる温度表示ランプ30bが備えられている。温度表示ランプ30bは、例えば、電気ヒータ28の温度が低温状態である場合は消灯しており、電気ヒータ28の温度が100℃から設定温度に到達するまでは点滅する。そして、電気ヒータ28の温度が設定温度に到達すると温度表示ランプ30bが点灯するようになっている。
なお、本実施例では、Lo設定の発電機用油圧モータ27を回転させるために必要な作動油の圧力は、油圧モータ24、25を回転させるために必要な作動油の圧力よりも顕著に大きい。そのため、油圧ポンプ21がLo設定の発電機用油圧モータ27と油圧モータ24、25とを同時に駆動する場合、油圧モータ24、25に供給される作動油の圧力は、絞り等によって低減される必要がある。そのため、作動油は、その絞り等で発生させる圧力損失によって加熱される。
この点に関し、アスファルトフィニッシャ1は、施工準備モードにおいて、Lo設定の発電機用油圧モータ27と油圧モータ24、25との同時駆動を許容する。しかしながら、アスファルトフィニッシャ1は、作動油の温度を過度に上昇させてしまうことはない。作動油の温度が異常高温になるまで施工準備モードが長時間にわたって継続されることはないためである。
なお、アスファルトフィニッシャ1は、温度センサ35(図1参照。)によって作動油温の検出を行っており、作動油温が所定値以上まで上昇した場合には、発電機用油圧モータ27を停止させ、作動油の過熱を防止している。
また、アスファルトフィニッシャ1は、施工優先モード及び加熱優先モードにおいてもLo設定の発電機用油圧モータ27と油圧モータ24、25との同時駆動を許容する。しかしながら、この場合においても、アスファルトフィニッシャ1は、作動油の温度を過度に上昇させてしまうことはない。アスファルトフィニッシャ1は、発電機用油圧モータ27をLo設定で駆動する場合には、作業機6の出力を設定出力(5%)以下に制限するためである。具体的には、オペレータは、作業機6の出力が設定出力(5%)以下に制限された状態、すなわち通常の舗装作業に適さない状態でアスファルトフィニッシャ1を長時間にわたって使用することはないためである。
以上の構成により、オペレータは、モード切替ダイヤル30aを操作することによって、上述の3つのモードを任意に選択することが可能である。そのため、オペレータは、作業段階に応じて最適なモードを選択して駆動源の出力を効率的に配分させることにより、アスファルトフィニッシャ1を効率的に動作させることができる。
具体的には、施工準備モードでは、電気ヒータ28の加熱出力が100%に設定され、且つ、スクリュ8及びコンベア9の出力が設定出力(30%)以下で許容される。また、施工準備モードでは、作業機6の出力に応じて発電機用油圧モータ27の設定がLo設定からHi設定に自動的に切り替わることもない。そのため、オペレータは、電気ヒータ28の加熱と散油作業を確実に且つ同時に行うことができる。
また、施工優先モード及び加熱優先モードが備えられているため、オペレータは、施工の種類に応じてアスファルトフィニッシャ1の動作を切り替えることができる。例えば、舗装面の仕上がりよりも作業効率が優先されスクリードプレートの加熱をあまり必要としない基層部分の舗装作業を行う場合、オペレータは、施工優先モードを用いることによって作業効率を高めることができる。或いは、冬季の工事、夜間の工事等、施工中においても常にスクリードプレートの加熱を行いたい場合、オペレータは、加熱優先モードを用いることによって常にスクリードプレートの加熱を継続させることができる。
また、アスファルトフィニッシャ1は、作業段階に応じて駆動源の出力を効率的に配分するため、作業機6及び発電機26を最大出力で同時に駆動できるような高出力の駆動源を必要としない。そのため、エンジン及び油圧ポンプ等の駆動源のコンパクト化を実現できる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施例では、油圧により発電機26及び各アクチュエータ(スクリュ8、コンベア9)を駆動させる構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、エンジンで発電機を駆動し、その発電機が発電した電力で電気ヒータ、スクリュ、コンベア等を駆動する構成としてもよい。この場合、スクリュ及びコンベアは、電動モータで駆動されてもよい。また、コントローラ20は、複数の作業段階のそれぞれに応じて、発電機が発電した電力の電気ヒータ及び電動モータに対する出力配分を切り替える。
また、上述の実施例では、手動切替部としてモード切替ダイヤル30aを例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、手動切替部は、ボタン式等の他の任意の方式を採用してもよい。
また、上述の実施例では、発電機用油圧モータ27を「Lo設定」と「Hi設定」の2段階で切り替え可能とする構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。2段階以上の多段階で切り替え可能であってもよいし、回転数を維持したまま供給作動油量を無段階に調整できるように構成されてもよい。