以下、本発明に係る摺動式スイッチ装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
本実施例では、本発明に係る摺動式スイッチ装置は、テスタに搭載されるロータリースイッチ装置とされる。
テスタ100及びそのロータリースイッチ装置105の基本的な構成及び動作は、図8〜図12を参照して説明した従来のものと同じであるので、対応する要素には同一の符号を用いて上述の説明を援用し、以下主に本実施例にて特徴的な部分について説明する。
図1(a)、(b)、図2(a)、(b)は、本実施例のテスタ100に搭載されたロータリースイッチ装置105における、接点部材112の導通パターン111に対する接離の状態を模式的に示す(各図の下段は導通パターン111に対する接点部材112の接離の状態を示し、上段はその状態に対応するスイッチのON/OFF状態を示す。)。
摺動スイッチ装置としてのロータリースイッチ装置105は、回路基板104上に形成された導通パターン111と、回路基板104上を摺動して導通パターン111に対して相対的に移動可能な接点部材112と、を有する(図9)。このロータリースイッチ装置105は、導通パターン111に対して接点部材112を移動させ、導通パターン111と接点部材112との接離の状態を切り替えて、測定回路140を構成する所定の測定目的に対応した所定の回路の開閉を行う。所定の回路としては、入力部141を構成する電流測定用の回路、電圧測定用の回路、抵抗測定用の回路などが挙げられる(図12)。以下、対象とする所定の回路を単に「回路」という。
本実施例では、導通パターン111は、回路の端子として、回路に直接接続された第1、第2の導通電極P1、P2と、抵抗Rを介して第2の導通電極P2と並列に回路に接続された第3の導通電極P3と、を有している。
そして、本実施例では、導通パターン111は、その第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3の配置に関し、次のように形成されている。すなわち、接点部材112が所定の方向(例えば図中矢印A方向:以下同様)に移動することで、接点部材112によって少なくとも第1の導通電極P1と第2の導通電極P2とが接続された回路の閉状態(図1(a))から回路の開状態(図2(b))に切り替わる際に、接点部材112によって第1の導通電極P1と第2の導通電極P2とが接続されかつ第1の導通電極P1と第3の導通電極P3とが接続された状態(図1(b))と、接点部材112によって第1の導通電極P1と第3の導通電極P3とのみが接続された状態(図2(a))と、を順次に経る。
特に、本実施例では、接点部材112が所定の方向に移動することで回路の閉状態から回路の開状態に切り替わる際に、接点部材112によって第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3のうち第1の導通電極P1と第2の導通電極P2とのみが接続された状態(図1(a))から、接点部材112によって第1の導通電極P1と第2の導通電極P2とが接続されかつ第1の導通電極P1と第3の導通電極P3とが接続された状態(図1(b))と、接点部材112によって第1の導通電極P1と第3の導通電極P3とのみが接続された状態(図2(a))と、を順次に経る。
導通パターン111の構成について更に説明する。導通パターン111を構成する第1、第2の導通電極P1、P2は、測定回路140を構成する所定の測定目的に対応した回路の端子として回路基板104上に形成されている。第1、第2の導通電極P1、P2は、接点部材112の回転軸線を中心として略同心円状に、異なる半径方向位置に円弧状に形成されている。第2の導通電極P2の両端部の位置(円周方向における角度位置)は、第1の導通電極P1の両端部の位置(円周方向における角度位置)よりも内側とされている。
一方、導通パターン111を構成する第3の導通電極P3は、接点部材112の回転軸線を中心として略同心円状に、第2の導通電極P2の両端部側に隣接して、第2の導通電極P2と略同じ半径方向位置に円弧状に形成されている。各第3の導通電極P3の第2の導通電極P2とは反対側の端部の位置(円周方向における角度位置)は、それぞれ第1の導通電極P1の端部の位置(円周方向における角度位置)と略同じ位置とされている。
導通パターン111は、利用可能な任意のプリント基板の作製要領に従って導電性の材料により好適に形成することができ、通常、回路基板104上の配線パターンの一部として銅箔で形成される。そして、本実施例では、第1、第2の導通電極P1、P2は、回路基板104上に形成された配線パターンを介して回路に直接接続されている。一方、第3の導通電極P3は、回路基板104上に形成された配線パターンを介して回路に第2の導通電極P2に対して並列に接続されている。そして、第3の導通電極P3と、第2の導通電極P2を回路に繋ぐ配線パターンとの間に、抵抗素子Rが直列に接続されている。
接点部材112の構成について更に説明する。図3は、本実施例で使用した接点部材112の構成を示す。接点部材(接点ばね)112は、ダイヤル106の裏面に取り付けるために鋭角に折り曲げて成形された基部113と、この基部113の一方の端部(ダイヤル106の裏面から鋭角に突出している側)に接続された複数のブラシ片(接触片)114とを有している。本実施例では、接点部材112は、ブラシ片114を2つ有する。本実施例では、各ブラシ片114は、同じ形状、構造とされている。各ブラシ片114は、それぞれの一方の端部である基端部114aが基部113に接続されている。また、他方の端部である先端部114bが回路基板104側に凸の湾曲部が形成され、この湾曲部が回路基板104に形成された導通電極116に所定の接触圧にて当接される接点部115を形成している。
本実施例では、2つのブラシ片114の先端部114bは、ブラシ片114の軸線方向沿って延びるスリット114cによってそれぞれ二股に分割されており、4カ所の先端部114bの各湾曲部が、それぞれ接点部115を構成する。そして、本実施例では、一方(半径方向内側)のブラシ片114の2つの接点部115が図1、図2における第1の接点部C1を構成し、他方(半径方向外側)のブラシ片114の2つ接点部115が図1、図2における第2の接点部C2を構成する。
接点部材112を構成する導電性の材料(ばね材)としては、厚さが0.1〜0.2mm程度のばね用リン青銅、ばね用ベリリウム銅、ばね用洋白などを好適に使用し得る。また、接点部材112は、基部113に設けられた固定用穴113a、113aを用いて、支持体としてのダイヤル106の裏面に、締結、熱カシメなどの適宜任意の固定手段によって固定される。
本実施例では、第1、第2の接点部C1、C2は、接点部材112の移動方向と交差(本例では略直交:以下同様)する方向に整列して(略直線上に)設けられている。したがって、図1、図2に示すように、第1、第2の接点部C1、C2は、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3の円周方向に沿って、略同じ角度位置で同期して移動する。接点部材112は、ダイヤル106が回路基板104の主面に対し略垂直な回転軸線を中心に回転させられることで、ブラシ片114の弾性力により接点部115を所定の接触圧にて導通パターン111に接触させた状態で回路基板104上を摺動しながら、その回転方向に沿って移動(回動)させられる。
なお、図中、分かりやすくするために接点部の位置は円で示されているが、導通電極と接点部との接触部は円形に限定されるものではなく、例えば移動方向と交差する方向に延在する帯状などであってよい。
また、ブラシ片114の先端部を分岐させるなどして接点部材112と導通パターン111との接触箇所の数を増やすことで、仮に接触不良がいずれかの接触箇所で発生しても他の接触箇所では導通を維持できるため、導通不良による不具合の発生を抑制する点で好ましい。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、例えば図11に示すように各ブラシ片114の先端部が分岐されていない接点部材を用いてもよい。このように、接点部材の接点部のうち少なくとも1つは、複数に分割されていることが好ましいが、接点部は分割されていなくてもよい。
上述のような構成において、接点部材112を図中矢印A方向に移動させて、回路を閉状態から開状態に切り替える際の動作について更に説明する。以下、接点部材112によって開閉(OFF/ON)される端子である第1、第2の導通電極P1、P2間を「第1スイッチ部SW1」、第1、第3の導通電極P1、P3間を「第2スイッチ部SW2」とも呼ぶ。
図1(a)の状態では、第1、第2の接点部C1、C2は、それぞれ第1、第2の導通電極P1、P2に接触している。この状態で、第1、第2の導通電極P1、P2間が電気的に接続されて、回路は閉じられている。すなわち、第1スイッチ部SW1が閉じており、第2スイッチ部SW2が開放されている。
次に、図1(b)に示すように、接点部材112が図中矢印A方向に移動(回動)して、第2の接点部C2が、同移動方向の下流側の第2の導通電極P2の一方の端部に到達すると、第1の接点部C1は第1の導通電極P1に接触したままで、第2の接点部C2が第2の導通電極P2から離れる前に第3の導通電極P3に接触した状態となる(メイク・ビフォア・ブレイク接点)。図4は、接点部材112の移動方向と略直交する方向に見た第2、第3の導通電極P2、P3の隣接部の近傍の断面図である。図4に示すように、接点部材112の移動方向において、第2の接点部C2が導通電極(第2、第3の導通電極P2、P3)に接触可能な領域の長さL1は、第2の導通電極P2の下流側の端部と第3の導通電極P3の上流側の端部との間の距離D1よりも長い。そのため、第2の接点部C2が第2、第3の導通電極P2、P3の間を跨いで両電極に接触することができる。この状態で、第1、第2の導通電極P1、P2間が電気的に接続されると共に、第1、第3の導通電極P1、P3間が電気的に接続されて、回路は閉じられている。すなわち、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2の両方ともが閉じている。この場合、第2スイッチ部SWは抵抗Rを介して回路に並列に接続されているため、殆どの電流は第1スイッチ部SW1を介して流れる。
次に、図2(a)に示すように、接点部材112が図中矢印A方向に更に移動して、第2の接点部C2が、同移動方向の下流側の第2の導通電極P2の一方の端部を通過すると、第1の接点部C1は第1の導通電極P1に接触したままで、第2の接点部C2が第2の導通電極P2から離れて第3の導通電極P3に接触した状態となる。この状態で、第1、第2の導通電極P1、P2間の電気的な接続が断たれると共に、第1、第3の導通電極P1、P3間が電気的に接続されて、回路は閉じられている。すなわち、第1スイッチ部SW1が開放され、第2スイッチ部SW2が閉じている。この場合、第2スイッチ部SWに接続された抵抗Rが回路に流れる電流を制限する。その結果、ロータリースイッチ装置105に比較的大きな電流が流れている状態でスイッチOFF動作を開始しても、抵抗Rによってその電流が制限される。
次に、図2(b)に示すように、接点部材112が図中矢印A方向に更に移動すると、第1、第2の接点部C1、C2は、それぞれ第1、第3の導通電極P1、P3から離れて、回路基板104上の導通パターン111が設けられていない部分(電気絶縁性の材料)に達する。この状態で、第1、第2の接点部C1、C2と、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3との電気的な接続が断たれて、回路は開放される。すなわち、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2の両方ともが開放される。このとき、図2(a)に示す状態において、電流が抵抗Rで制限されて流された後に回路が開放されるので、該開放時に第1、第2の接点部C1、C2と第1、第3の導通電極P1、P3との間にアーク放電が発生することはないか、又はその可能性が低減させられている。
ここで、例えばテスタ100などの電気測定器とされる機器の入力定格電圧などの条件によって異なるが、本実施例では、テスタ100の入力定格電圧が1000Vといった構成に応じて、抵抗値が50kΩの抵抗素子Rを用いた。ただし、これは一例であり、接点部材と導通パターンとの間のアーク放電の発生を十分に抑制できるように、適宜設定されるべきものである。当業者は、本発明の開示を参考に、機器の設計や実験などにより容易にその抵抗値を設定することができる。
なお、ダイヤル106が上記とは逆向きに回転させられ、接点部材112が上記とは逆向きの図中矢印B方向に移動(回動)させられる場合も、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3の他方の端部側で、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2は上記同様にして動作する。
このように、本実施例では、第1の導通電極P1と第2及び第3の導通電極P2、P3とは、接点部材112の所定の移動方向と交差する方向において異なる位置に配置され、第3の導通電極P3は、接点部材112の所定の移動方向において第2の導通電極P2よりも下流側に整列して配置されている。また、接点部材112は、第1の導通電極P1と接触する第1の接点部C1と、第2及び第3の導通電極P2、P3と接触する第2の接点部C2と、を有する。そして、第2及び第3の導通電極P2、P3は、接点部材112が所定の方向に移動して回路が閉状態から開状態に切り替わる際に、第2の接点部C2が第3の導通電極P3に接触した後に第2の導通電極P2から離れるように形成されている。また、本実施例では、第1の接点部C1と第2の接点部C2とは、接点部材112の所定の移動方向と交差する方向に整列して設けられている。そして、第1の導通電極P1は、接点部材112の所定の移動方向において、第3の導通電極P3の上流側の端部よりも下流側まで延在する。
本実施例では、このような構成により、回路を閉状態から開状態に切り替える際に、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3が接点部材112により電気的に接続された状態と、第1、第3の導通電極P1、P3が電気的に接続された状態とを、順次に連続的に経るようにすることができる。
すなわち、インピーダンスの低い経路がオープン状態になるとアーク放電が発生してしまうため、本実施例では、過渡的にはインピーダンスの高い経路と、インピーダンスの低い経路との両方に繋げる。そのために、本実施例では、回路基板に、抵抗に繋がる導通パターンと繋がらない導通パターンとを設け、接点部材が回路基板上の導通パターンのある箇所から無い箇所へ移動する際に、抵抗に繋がる導通パターンを経由するようにする。これにより、例えば大きな抵抗やスナバ回路を入れることができない回路であっても、簡易な構成で、スイッチをONからOFFに切り替える際のアーク放電を抑制することができる。
なお、本実施例では、接点部材112は、図中矢印方向A、Bの両方向に移動することが可能であり、両移動方向A、Bのそれぞれの下流側でスイッチがONからOFFに切り替わる。そのため、両移動方向A、Bのそれぞれの下流側の導通パターンの構成を実質的に同一(対称)とした。しかし、本発明は、斯かる態様に限定されるものではなく、例えば接点部材112が所定の一方向にのみ移動するような構成などにおいて、その方向の下流側の、スイッチがONからOFFに切り替わる部分の導通パターンのみを、本発明に従って構成することができる。
また、本実施例では、第2、第3の導通電極P2、P3の隣接する端部は、接点部材112の移動方向と交差する方向に沿って延在する端部同士が対向する形態としたが、他の形態としてもよい。例えば、図5(a)に示すように、第2、第3の導通電極P2、P3の隣接する端部を、それぞれ接点部材112の移動方向に傾斜した端部P21、P31同士が対向する形態としてもよい。また、図5(b)に示すように、第2、第3の導通電極P2、P3の隣接する端部を、それぞれ相補的に入り込む凹凸形状の端部P22、P32から成る櫛歯様の形態としてもよい。これにより、第2の接点部C2が第2、第3の導通電極P、P3の両方に接触した状態をより得やすくすることができる。
以上、本実施例によれば、比較的大きな電流が流れている状態でロータリースイッチ装置105の所定のスイッチ部をONからOFFに切り替えた場合でも、接点部材112と導通パターン111との間でのアーク放電の発生を抑制して、回路基板104の炭化による導通パターン111のショートなどの不具合の発生を抑制することができる。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例では、導通パターンの形態が異なることを除いて、テスタやロータリースイッチ装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。したがって、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
図6は、本実施例のテスタ100に搭載されたロータリースイッチ装置105における、接点部材112の導通パターン111に対する接離の状態を模式的に示す。
本実施例では、接点部材112が所定の方向に移動することで回路の閉状態から回路の開状態に切り替わる際に、接点部材112によって第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3のうち第1の導通電極P1と第2の導通電極P2とが接続されかつ第1の導通電極P1と第3の導通電極P3とが接続された状態(図6(a))から、接点部材112によって第1の導通電極P1と第3の導通電極P3とのみが接続された状態(図6(b))を経る。
導通パターン111の構成について更に説明する。第1、第2の導通電極P1、P2は、接点部材112の回転軸線を中心として略同心円状に、異なる半径方向位置に円弧状に形成されている。第2の導通電極P2の両端部の位置(円周方向における角度位置)は、第1の導通電極P1の両端部の位置(円周方向における角度位置)よりも内側とされている。
一方、第3の導通電極P3は、接点部材112の回転軸線を中心として略同心円状に、第2の導通電極P2よりも半径方向外側に隣接して、第2の導通電極P2とは異なる半径方向位置に円弧状に形成されている。第3の導通電極P3の両端部の位置(円周方向における角度位置)は、第2の導通電極P2の両端部の位置(円周方向における角度位置)よりも外側とされている。また、第3の導通電極P3の両端部の位置(円周方向における角度位置)は、第1の導通電極P1の両端部の位置(円周方向における角度位置)と略同じ位置とされている。
そして、第1、第2の導通電極P1、P2は回路に直接接続されている。一方、第3の導通電極P3は回路に抵抗素子Rを介して第2の導通電極P2に対して並列に接続されている。
接点部材112の構成について更に説明する。本実施例では、図3に示す実施例1で使用した接点部材112と同じ構成のものを使用した。すなわち、本実施例では、接点部材112の2つのブラシ片114の先端部114bは、それぞれ二股に分割されており、4カ所の先端部114bの各湾曲部が、それぞれ接点部115を構成する。そして、本実施例では、一方(半径方向内側)のブラシ片114の2つの接点部115が、図6における第1の接点部C1を構成する。また、他方(半径方向外側)のブラシ片114の2つ接点部115のうち、一方(半径方向内側)が図6における第2の接点部C2を構成し、他方(半径方向外側)が第3の接点部C3を構成する。
本実施例では、実施例1と同様に、第1、第2、第3の接点部C1、C2、C3は、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3の円周方向に沿って、略同じ角度位置で同期して移動する。
なお、第1の接点部C1を構成するブラシ片114は分岐していなくてもよいし、第2、第3の接点部C2、C3をそれぞれ別個のブラシ片(先端部が分岐していても、いなくてもよい。)114で構成してもよい。例えば、図11中の各ブラシ片114の先端部が分岐されていない3つのブラシ片114を有する接点部材112などを用いることができる。
上述のような構成において、接点部材112を図中矢印A方向に移動させて、回路を閉状態から開状態に切り替える際の動作について更に説明する。
図6(a)の状態では、第1、第2、第3の接点部C1、C2は、それぞれ第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3に接触している。この状態で、第1、第2の導通電極P1、P2間が電気的に接続されると共に、第1、第3の導通電極P1、P3間が電気的に接続されて、回路は閉じられている。すなわち、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2の両方ともが閉じている。この場合、第2スイッチ部SWは抵抗Rを介して回路に並列に接続されているため、殆どの電流は第1スイッチ部SW1を介して流れる。
次に、図6(b)に示すように、接点部材112が図中矢印A方向に移動(回動)して、第2の接点部C2が、同移動方向の下流側の第2の導通電極P2の一方の端部を通過すると、第1、第3の接点部C1、C3はそれぞれ第1、第3の導通電極P1、P3に接触したままで、第2の接点部C2が第2の導通電極P2から離れた状態となる。この状態で、第1、第2の導通電極P1、P2間の電気的な接続が断たれると共に、第1、第3の導通電極P1、P3間が電気的に接続されて、回路は閉じられている。すなわち、第1スイッチ部SW1が開放され、第2スイッチ部SW2が閉じている。この場合、第2スイッチ部SWに接続された抵抗Rが回路に流れる電流を制限する。その結果、ロータリースイッチ装置105に比較的大きな電流が流れている状態でスイッチOFF動作を開始しても、抵抗Rによってその電流が制限される。
次に、図6(c)に示すように、接点部材112が図中矢印A方向に更に移動すると、第1、第3の接点部C1、C3は、それぞれ第1、第3の導通電極P1、P3から離れて、回路基板104上の導通パターン111が設けられていない部分(電気絶縁性の材料)に達する。この状態で、第1、第2、第3の接点部C1、C2、C3と、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3との電気的な接続が断たれて、回路は開放される。すなわち、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2の両方ともが開放される。このとき、図6(b)に示す状態において、電流が抵抗Rで制限されて流された後に回路が開放されるので、該開放時に第1、第3の接点部C1、C3と第1、第3の導通電極P1、P3との間にアーク放電が発生することはないか、又はその可能性が低減させられている。
なお、ダイヤル106が上記とは逆向きに回転させられ、接点部材112が上記とは逆向きの図中矢印B方向に移動(回動)させられる場合も、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3の他方の端部側で、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2は上記同様にして動作する。
このように、本実施例では、第1の導通電極P1と第2の導通電極P2と第3の導通電極P3とは、それぞれ接点部材112の所定の移動方向と交差する方向において異なる位置に配置されている。また、接点部材112は、第1の導通電極P1と接触する第1の接点部C1と、第2の導通電極P2と接触する第2の接点部C2と、第3の導通電極P3と接触する第3の接点部C3と、を有する。そして、第2及び第3の導通電極P2、P3は、接点部材112が所定の方向に移動して回路が閉状態から開状態に切り替わる際に、第2の接点部C2が第2の導通電極P2から離れた後に第3の接点部C3が第3の導通電極P3から離れるように形成されている。また、本実施例では、第2の接点部C2と第3の接点部C3とは、接点部材112の所定の移動方向と交差する方向に整列して設けられている。そして、第3の導通電極P3は、接点部材112の所定の移動方向において、第2の導通電極P2の下流側の端部よりも下流側まで延在する。また、本実施例では、第1の接点部C1と第3の接点部C3とは、接点部材112の所定の移動方向と交差する方向に整列して設けられている。そして、第1の導通電極P1は、接点部材112の所定の移動方向において、第2の導通電極P2の下流側の端部よりも下流側まで延在する。
本実施例では、このような構成により、回路を閉状態から開状態に切り替える際に、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3が接点部材112により電気的に接続された状態と、第1、第3の導通電極P1、P3が電気的に接続された状態とを、順次に連続的に経るようにすることができる。
すなわち、本実施例では、回路基板に、抵抗に繋がる導通パターンと繋がらない導通パターンとを設け、接点部材の移動方向において、抵抗に繋がる導通パターンを繋がらない導通パターンよりも長くしておく。そして、接点部材が回路基板上の導通パターンのある箇所から無い箇所へ移動する際に、抵抗に繋がる導通パターンの方が繋がらない導通パターンよりも後で接点部材から離れるようにする。これにより、例えば大きな抵抗やスナバ回路を入れることができない回路であっても、簡易な構成で、スイッチをONからOFFに切り替える際のアーク放電を抑制することができる。
なお、実施例1と同様、本実施例の構成を、例えば一方向にのみ移動する接点部材112の移動方向の下流側の、スイッチがONからOFFに切り替わる部分の導通パターンのみに適用してもよい。また、本実施例では、第3の導通電極P3は、接点部材112の回転軸線を中心として略同心円状に、第2の導通電極P2よりも半径方向外側に設けたが、半径方向内側に設けてもよい。
以上、本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られる。また、本実施例では、スイッチがON状態からOFF状態になるまで第3の導通電極に接触した状態に維持される第3接点部C3が設けられる。これにより、1回のスイッチOFF動作において第3の導通電極に接触する接点部が導通電極のエッジ部を乗り越える回数を少なくすることができる。そのため、第3の導通電極を設けることで接点部材のブラシ片の消耗が早まる可能性を低減することができる。
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例では、導通パターンの形態が異なることを除いて、テスタやロータリースイッチ装置の基本的な構成及び動作は実施例1、2のものと同じである。したがって、実施例1、2のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
図7は、本実施例のテスタ100に搭載されたロータリースイッチ装置105における、接点部材112の導通パターン111に対する接離の状態を模式的に示す。
本実施例では、概して、導通パターン111は、実施例1における第3の導通電極P3と、実施例2における第3の導通パターンP3とのそれぞれに対応する電極部分が一体とされた、1つの第3の導通電極P3を有する。
導通パターン111の構成について更に説明する。第1、第2の導通電極P1、P2の構成は、実施例2と同じである。一方、導通パターン111を構成する第3の導通電極P3は、実施例2における第3の導通電極P3に対応する第1部分P3aと、実施例1における第3の導通電極P3に対応する第2部分P3bとを有する。つまり、第1部分P3aは、接点部材112の回転軸線を中心として略同心円状に、第2の導通電極P2よりも半径方向外側に隣接して、第2の導通電極P2とは異なる半径方向位置に円弧状に形成されている。また、第2部分P3bは、第2の導通電極P2の両端部側に隣接して、接点部材112の回転軸線を中心として略同心円状に、第2の導通電極P2と略同じ半径方向位置に円弧状に形成されている。図中、便宜的に破線によって区別しているが、第1部分P3aと第2部分P3bは連続しており一体的に第3の導通電極P3を形成している。第3の導通電極P3の両端部の位置(円周方向における角度位置)は、第1の導通電極P1の両端部の位置(円周方向における角度位置)と略同じ位置とされている。
そして、第1、第2の導通電極P1、P2は回路に直接接続されている。一方、第3の導通電極P3は回路に抵抗素子Rを介して第2の導通電極P2に対して並列に接続されている。
接点部材112の構成について更に説明する。本実施例では、図3に示す実施例1、2で使用した接点部材112と同じ構成のものを使用した。すなわち、本実施例では、一方(半径方向内側)のブラシ片114の2つの接点部115が、図7における第1の接点部C1を構成する。また、他方(半径方向外側)のブラシ片114の2つ接点部115のうち一方(半径方向内側)が図7における第2の接点部C2を構成し、他方(半径方向外側)が第3の接点部C3を構成する。
上述のような構成において、接点部材112を図中矢印A方向に移動させて、回路を閉状態から開状態に切り替える際の動作について更に説明する。
図7(a)の状態では、第1、第2、第3の接点部C1、C2は、それぞれ第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3に接触している。この状態で、第1、第2の導通電極P1、P2間が電気的に接続されると共に、第1、第3の導通電極P1、P3間が電気的に接続されて、回路は閉じられている。すなわち、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2の両方ともが閉じている。この場合、第2スイッチ部SWは抵抗Rを介して回路に並列に接続されているため、殆どの電流は第1スイッチ部SW1を介して流れる。
次に、図7(b)に示すように、接点部材112が図中矢印A方向に移動(回動)して、第2の接点部C2が、同移動方向の下流側の第2の導通電極P2の一方の端部を通過すると、第1、第3の接点部C1、C3はそれぞれ第1の導通電極P1、第3の導通電極P3の第1部分P3aに接触したままで、第2の接点部C2が第2の導通電極P2から離れて、第3の導通電極P3の第2部分P3bに接触した状態となる。この状態で、第1、第2の導通電極P1、P2間の電気的な接続が断たれると共に、第1、第3の導通電極P1、P3間が電気的に接続されて、回路は閉じられている。すなわち、第1スイッチ部SW1が開放され、第2スイッチ部SW2が閉じている。この場合、第2スイッチ部SWに接続された抵抗Rが回路に流れる電流を制限する。その結果、ロータリースイッチ装置105に比較的大きな電流が流れている状態でスイッチOFF動作を開始しても、抵抗Rによってその電流が制限される。なお、本実施例では、実施例1の場合と同様に、第2の接点部C2が第2の導通電極P2から離れる前に第3の導通電極P3の第2部分P3bに接触した状態となる(メイク・ビフォア・ブレイク接点)。ただし、本実施例では、第3の接点部C3が第3の導通電極P3の第1部分P3aに接触した状態に維持されているので、第2の接点部C2が第2の導通電極P2と第3の導通電極P3の第2部分P3bの両方に同時に接触する期間がない構成とされていてもよい。
次に、図7(c)に示すように、接点部材112が図中矢印A方向に更に移動すると、第1、第3の接点部C1、C3は、それぞれ第1、第3の導通電極P1、P3から離れて、回路基板104上の導通パターン111が設けられていない部分(電気絶縁性の材料)に達する。この状態で、第1、第2、第3の接点部C1、C2、C3と、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3との電気的な接続が断たれて、回路は開放される。すなわち、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2の両方ともが開放される。このとき、図7(b)に示す状態において、電流が抵抗Rで制限されて流された後に回路が開放されるので、該開放時に第1、第2、第3の接点部C1、C2、C3と第1、第3の導通電極P1、P3との間にアーク放電が発生することはないか、又はその可能性が低減させられている。
なお、ダイヤル106が上記とは逆向きに回転させられ、接点部材112が上記とは逆向きの図中矢印B方向に移動(回動)させられる場合も、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3の他方の端部側で、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2は上記同様にして動作する。
このように、本実施例では、第1の導通電極P1と第2及び第3の導通電極P2、P3とは、接点部材112の所定の移動方向と交差する方向において異なる位置に配置される。また、第3の導通電極P3は、接点部材112の所定の移動方向と交差する方向において第2の導通電極P2と異なる位置に配置された第1部分P3aと、接点部材112の所定の移動方向において第2の導通電極P2よりも下流側に整列して配置された第2部分P3bと、を有する。また、接点部材112は、第1の導通電極P1と接触する第1の接点部C1と、第2の導通電極P2及び第3の導通電極P3の第2部分P3bと接触する第2の接点部C2と、第3の導通電極P3の第1部分P3aと接触する第3の接点部C3と、を有する。そして、第2及び第3の導通電極P2、P3は、接点部材112が所定の方向に移動して回路が閉状態から開状態に切り替わる際に、第2の接点部C2が第2の導通電極P2から離れた後に、第3の接点部C3が第3の導通電極P3の第1部分P3aから離れ、第2の接点部C2が第3の導通電極P3の第2部分P3bから離れるように形成されている。また、本実施例では、第3の導通電極P3の第1部分P3aは、実施例2における第3の導通電極P3に対応するその他の特徴を備える。また、第3の導通電極P3の第2部分P3bは、実施例1における第3の導通電極P3に対応するその他の特徴を備える。
本実施例では、このような構成により、回路を閉状態から開状態に切り替える際に、第1、第2、第3の導通電極P1、P2、P3が接点部材112により電気的に接続された状態と、第1、第3の導通電極P1、P3が電気的に接続された状態とを、順次に連続的に経るようにすることができる。
なお、実施例1、2と同様、本実施例の構成を、例えば一方向にのみ移動する接点部材112の移動方向の下流側の、スイッチがONからOFFに切り替わる部分の導通パターンのみに適用してもよい。また、本実施例では、第3の導通電極P3の第1部分P3aは、接点部材112の回転軸線を中心として略同心円状に、第2の導通電極P2よりも半径方向外側に設けたが、半径方向内側に設けてもよい。
以上、本実施例によれば、実施例1、2と同様の効果が得られる。また、本実施例では、回路に流れる電流を抑制する際に第3の導通電極に接触する接点部の数を増やすことで、より確実にアーク放電の発生を抑制する効果が得られる。
その他
上述の各実施例では、摺動式スイッチ装置は、接点部材が基板の主面に略垂直な軸線を中心として回転可能であり、導通電極がその軸線を中心とする円弧形状であるロータリースイッチ装置であるものとして説明した。しかし、本発明は接点部材の移動方向を回転方向に限定するものではなく、例えば接点部材が直線的に移動し、導通電極が略直線状に形成された摺動式スイッチ装置などにも、本発明を同様に適用することができ、上述の各実施例と同様の効果を得ることができる。